種類物売買における危険移転の時期
著者
新田 孝二
雑誌名
東洋法学
巻
9
号
1
ページ
36-73
発行年
1965-05
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00007835/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja種類物売買における危険移転の時期
目 次 一 は し が き 二 特 定 発 生 の 基 準 三危険移転要因としての受領遅滞 四危険移険要因としての特定と受領遅滞の﹁役割﹂分担関係 五結びにかえて│昭和三 O 年十月十八日の最高裁判決をめぐって新
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程類物売買における危険移転時期に関し民法は五三四条二項により四O
一条二項のいわゆる﹁特定﹂を危険移転時 期の標準としている。特定を生じる方法につき、とりわけ同項前段の﹁債務者カ物ノ給付ヲ為久ニ付キ必要ナル行為 ヲ完了シ﹂たときとは、立法者によればイエ l リ γ グの口止2
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目。に従って債務者が物を債権者に現実に提供 したときだという。そこで、債務者の現実の提供に先立って債権者の行為ないし協力を要する取立債務のばあいを考 えてみると、債権者が取立に来ないときは債務者の現実の提供は実現されない。債務者の現実の提供が、たとえ債権 者の不受領によってであろうともそれが実現されないかぎり特定は生じえない。だからといってこのばあい危険移転 も生じないとしてよいだろうか。債務者の履行が可能であるにかかわらず債権者が受領しないことを受領遅滞という が、受領遅滞は危険移転にたいしどのような位置にあるのか。もし危険移転に無関係であるとすれば受領遅滞にはど のような性格づけがなされるのであろうか。反対に受領遅滞が危険移転の要因だとすれば受領遅滞と特定との関係い いかえれば両者の﹁役割﹂の分担はどのようなものとなるべきか。 一般的なことがらから述べよう。そもそも双務契約の実体はふたつの給付の交換が、当事者の主体的意思 U 契約を 媒介として実現されるということの中に存する。もし、当事者いずれかの側に存する事由によって給付交換の実現が 阻まれたばあい、それによって生じた不和益は、第一次的には主体的意思を媒介として、表示された意思に違反した 種 類 物 売 買 に お け る 危 険 移 転 の 時 期 七八 (故意・過失)側に帰せられる(過失主義)。 もし種類物売買において当事者の故意過失に工らずに目的物が滅失・ 設損したばあいには、この損害帰属決定基準としては右の過失主義の働く余地はない。このばあいにおいてもなお契 約の中味、すなわち契約を通して両当事者間に存在するに至った社会関係の中から損害帰属決定基準を取り出すこと が 合 目 的 的 で 山 の ろ う 。 あ ら か じ め 次 の 点 は お こ と わ り を し て お く 。 契 約 成 立 後 ふ た つ の 給 付 は そ れ ぞ れ 独 立 の 存 在 を 有 し 、 物 に 関 し て は 物 を 給 付 す べ き 者 が 債 務 者 と な り 、 そ の 対 価 、 金 銭 に 関 し て は 金 銭 を 給 付 す べ き 者 が 債 務 者 と な る 。 危 険 移 転 の 問 題 は 物 の 滅 失 ・ 段 失 に 関 す る か ら 一 方 の 物 の 給 付 の 側 面 だ け を 考 察 す れ ば 充 分 で あ る う ( 対 価 に 関 し て も 同 じ 論 理 が 働 く の だ か ら ) 。 給付の実現を目指して債権者、債務者聞に成り立つ社会関係は、債務者の現実提供﹁行為﹂と債権者の受領﹁行 為﹂を構成要素とする。そうしてこの社会関係は、契約の中味から生じる給付実現の経過の差異、すなわち債務者が まず現実提供﹁行為﹂を先行すべきばあい(持参債務、送付債務﹀ と債権者の方で取立のために受領﹁行為﹂を先行 すべきばあいハ取立債務﹀との差異に則してふたつの類型に分けられる。 は け 債務者の先行行為を要する類型においては、債務者が物を現実に債権者に提供したときは社会関係を構成する 債務者側の要素は呆されたことになる。民法が五三四条二項を過して指示した四
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一条二項の﹁債務者が物ノ給付ヲ 為九ニ付キ必要ナル行為ヲ完了シ﹂たとはこのことを指している。これは履行を目指す債務者の単なる事実行為にす ぎないけれども、立法者がこれに危険移転の効果を結びつけたのは債務者に要求された椛成要素の一方が呆された以上それ以後に生じた損害を債務者に帰すべきでないという利益絞呈に基くものである。これが危険移転要因としての 特定の機能的意義であり、したがって特定は、この類型に固有の危険移転の﹁役割﹂を分担する。 つぎに債務者の先行行為を要する類型においては、債権者の先行行為、すなわち債権者が取立に来るとか債務 者の履行に必要な容器を準備するとかの行為がなされないかぎり、ついに債務者の現実の捉供←弁済の機会は到来し (ロ) ないことになる。たとえ債権者の不受領という事態によって惹き起されたとしても債務者の現実の提供が実現されず 特定も生じない以上は危険移険をも生じない、としてよいものだろうか。立法者はこのような事態における当事者の 利益較豆に基き、債権者が受領遅滞に陥った時から[分離・通知日口頭提供された物の]危険は債権者に移るものと した。これが危険移転要因としての受領遅滞の機能的意義であり、したがって受領遅滞は、この類型に固有の危険移 転の役割を分担する。要するに特定と受領遅滞とは、契約にもとづく社会関係の類型的な差異に対応した相互に独立 の危険移転の要因なのである。 危険移転要因としての特定と受領遅滞とを導き出したそれぞれの法政策的根拠はしたがって社会関係の類型的な差 兵を前提としているのであって、これの混同は許されるべきではない。と同時に、特定と受領遅滞の危険移転要因と しての対等な位置も崩されるべきではない。種類物売買における危険移転時期に関する従来の学説はこの点の考呈に 深く立入らなかったため、理論上のみならず実務上の問題処理を不透明なものにしているように思われる。 ( 1 ) ( 2 ) 岡松参太郎、民法理由下二四
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五 頁 岡裕、前掲七二頁 程類物売買における危険移転の時期 九四 0 特定発生の基準 種類物売買における危険移転時期として五三四条二項により指示された四
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一条二項は、本来、種類物債権の特定 を定めた規定である。それによると、とりわけ、当事者間に特定の合意がないときは﹁債務者カ物ノ給付ヲ為スニ必 要ナル行為ヲ完了シ﹂たときに特定を生じる。ところで、 ﹁債務者カ物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行為ヲ完了﹂したと 一体なにを指しているのであろうか。立法者が本条を作りあげた思考過程を振り返ってみよう。当時のドイツで は三つの考え方があった。 は. その一は ﹁債務者カ給付久ヘキ物ヲ他ノ物ヨリ取分ケタル時ハ取分︹あるいは分離︺主義 ﹀ 5 2 r 巳 仏 ロ ロ ∞ 田 仲 } 戸 。 。 片 山 0 ﹀﹂、そのこは﹁債務者カ物ノ給付ヲ為久ニ必要ナル行為ヲ完了シタル時(交付主義、引渡行為完了主義 円 目 。 ﹃ OH ロ ロ m m H r o o 門 戸 。 ) ﹂ 、 その三は ﹁債権者ニ於テ其物ヲ受取りタル時ハ受取主義H E
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己 H O C H -o ) ﹂の三つであ る。これら三つの説を検討してみると、まず﹁第一説ハ其時期ヲ定ムルコト早キニ失久ルモノト云ハサルヲ得久。何 トナレハ単ニ債務者カ物ヲ取分ケタルノミニテハ実際上尚ホ債務者ノ自由ヲ以テ随意ニ其取分ヲ変更吋ハルコトヲ得へ ク債権者ハ常ニ不利益ヲ被ムルノ地位ニアル結果ヲ生九ヘケレハナリ。査シ債権者ハ何レノ物カ取分ケラレ従テ債権 ノ目的物トナリシヤニ付キ挙証ヲ為 λ コト殆ント不能ナルヘケレハナリ。又タ第三説ハ其時期ヲ定ムルコト脱キニ過 クルモノト云ハサルヲ得九。何トナレハ給付ノ目的物タル代替物カ一定シテ動カ九ヘカラサルモノトナリ得ヘキハ敢 テ債権者ノ現ニ其物ヲ受取ルヲ伎タサルヘケレハナリ:::。市シテ第二説ニ至テハ其時期ヲ定ムルコト最モ当ヲ得タルモノト云ハサルヲ得ス。何トナレハ債務者ニ於テ既ニ其物ノ引渡ニ必要ナル行為ヲ完了シタル場合ニ於テハ最早容 易ニ之ヲ変更司ハルコトヲ得サルニ至ルヘケレハナリ︹例之吐い物品ヲ運搬入ニ托シタル場合ノ如キニ於テハ債務者ノ行 為ハ完結シタルモノニシテ再ヒ之ヲ変更司ハルコトヲ得サルヘシ︺﹂と。その結果、立法者は、﹁故ニ本法-一於テモ亦第 二説ニ従ヒ債務者ノ行為完了ノ時ヲ以テ目的物カ特定物トナルノ時期ト為九コトヲ規定シタリ﹂。立法者が分離を以っ て特定を生ぜしむるは早きに失すといってこれを拾て去ったことの当否はしばらく拾こう。第二一説と第三説との取捨 選択の過程をみれば、債務者が給付をなすに必要な行為を完了したといいうるためには、第三説、すなわち債務の消 滅を来たすところの債権者ヘ物が引渡され受領されること、までは必要でないこと、そうして釘二説の、物を運搬入 に托したという債務者の行為があればよいとしていること、これは、現実の弁済提供に他ならない。現実の弁済提供 があったとき債務者の為すべきことがなされたのである。これが四
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一条二項前段の特定を生じる基準である。そこ で、契約に基いて、履行を目指す債権者債務者間に存在するに至った社会関係の類型的に区別せられる三つの契約類 型、持参債務、取立債務、送付債務につき特定の生じる時期を述べれば次のようになる筈である。 持参債務のばあいには、債務者が履行地に物を持参して債権者に提供したとき。 取立債務のばあいには、取立てに来た債権者に物が提供されたとき。 送付債務のばあいには債務者が物を運搬入に交付したとき。 ところで、右の﹁特定は現実の弁済提供によって生じる﹂とすることは正当なものであるにかかわらず、日本民法 草創期からすでにそれは就中、取立債務ヘ適用するにさいし崩れ、雨来、学説の変還を重ねることになった。 程類物売買における危険移転の時期 四四 ① 提 供ー
説
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﹁特定は弁済提供によって生ずる﹂とする立場を提供説と呼ぶことにする。提供説の本来のあり方 は、すでに示した図式のようになるべき筈であるが、日本民法草創期からすでに受領遅滞を﹁債務者カ物ノ給付ヲ為 久ニ必要ナル行為ヲ完了﹂するに至る一方法として特定の中ヘつつみ込んでしまった。ここに雨後の論争の胞芽があ った。ここに私が提供説と呼ぶ立場、たとえば石坂氏は特定を生じる方法につき次のように説く。 ﹁持参債務ノ場合 債務者カ債権者ノ住所ニ到リ債務ヲ履行久ヘキ場合ニハ其給付ノ物体ヲ債権者カ受領丸 ルコトヲ得ヘキ地位ニ置キタル時特定ス故ニ単ニ給付ノ準備ヲ為シタルヲ以テ足レリトセス又送付ノ通知ヲ為シ タルコトヲ以テ足レリトセ久現実ニ履行ノ提供アルコトヲ要ス:::然レトモ債権者カ債務ノ段行ヲ受クルコトヲ 拒ミ又ハ之ヲ受クコト能ハサル場合即、債権者ノ遅滞ノ場合ニハ提供アルモ債権者ノ受領ナキヲ以テ物体ハ特定 九ト雌モ債権ハ消滅セス又事実上ノ提供ニ依リテ特定ヲ生九ト同シク言語上ノ提供-一依リテモ亦特定ヲ生ス即、 債権者カ予メ受領ヲ恒ミタル場合ニハ債務者カ履行ノ準備ヲ為シタル旨ヲ通知シ其受領ヲ催告九ルニ依リテ物体 ハ 特 定 九 ( 第 四 百 九 十 三 条 但 書 ﹀ 取立債務ノ場合 債権者カ債務者ノ住所ニ到リ給付ノ物体ヲ取立ツル場合ニハ債務者カ物体ヲ債権者カ受領 スルコトヲ得ヘキ地位ニ置キタル時特定ス市シテ此場合ハ債務ノ履行-一付キ債権者ノ行為ヲ要スル場合ナルヲ以 テ債権者カ取立ノ為メニ来ラサルトキハ言語上ノ提供ニ依リテ特定 λ ( 第 四 百 九 十 三 条 ﹀ 送付債務ノ場合送付債務トハ債格者ノ希望ニ依リ履行地以外即、目的地ニ給付ノ物体ヲ送付九ル場合ヲ言 フ此場合ニハ発送ニ依リテ給付ノ物体ハ特定九:::而シテ此拐合ニ発送ハ限行ノ捉供ニプラス債権者ニ到達シテ( 9 ) 始メテ提供ト為ルモノトス﹂と ( 傍 点 は 筆 者 に よ る ) 。 石坂氏の特定を生じる方法の説明にみるように、和前としては交付主義に拠りながら、取立債務において事実上こ の立場を否定するような説明が、少くとも大正十年迄は文配的であった。受侃遅滞を特定の中に加えた提供説は、債 権者の受領遅滞があったばおい、交付主義を否定せざるをえないような羽目に陥る。この点から提供説批判が始ま る 。 (2) 履
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丁 地〈3
克己 ﹁何時に債務者が物の給付を為すにつき必要なる行為を完了したりと為すべきやは:::各場合に 於ける債務の内容殊に履行の場所を標準として決すべきもの﹂とする説を履行地説と呼ぼう。履行地説は大正十一 年、石田博士の論説をもって鳴矢とする。履行地説は、提供説が交付主義によりながら事実上交付主義を否定するよ うな矛盾に陥ったのは提供説が弁済提供←受領遅滞を危険移転に関らしめたからだと指摘する。弁済提供←受領遅滞 が危険移転に関係するか否かは一箇の問題であるが、履行地説はこれを消極に解し、ここから織って交付主義を否定 し去り、特定の時期は履行場所を標準として決すべきだという結論を導き出す。石田博士のこの部分の叙述は、博士 の論文の中核をなすものであり、色々の問題を含む部分なので、やや長いがそのまま引用しておく。 ﹁ 民 法 四O
一条第二項前段は如何なる立場に基きて規定されたるものなりや、若し交付主義に基きたるものなりと せば債務者が物の給付を為すに必要なる行為を完了する時とは交付の時なりと結論せざるを得ざるなり。抑も右の規 定は独民法二四三条第二項を其佳移したるものなるが故に先づ独民法の規定の立場を検せざるべからず。独民法二四 三条第二項は草案二一四条に基くものにして草案一一一四条は交付主義を採用せること明なり(豆急 40 ・E
同 " ∞ -H S 。然 種類物売買における危険移転の時期 四回 目 るに草案二一四条に関し第二委員会に於て議論生じ危険が債権者に移転する時を以て特定生ずとなすときは交付前に 危険移転生ずるは唯債権者の遅滞の場合あるに過ぎざるを以て明に狭きに失し、送付債務の場合に於ては不都合な り 。 故 に や 舟 小 川 恥 ル ハ ︺ い わ - P A V 恥ならざる可からずとの説生じ、遂に民法二四三条の如き規定を見るに至れり。独民 法が三
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条第二項に於て債権者が提供せられたる物を受領せざるに因り遅滞に陥りたるときは其時より危険移転生 ずる旨を規定し、又四四六条に於て売買の場合は目的物の引渡に依りて危険移転生ずる旨を規定せる点より考ふると きは、特定の時期に関し交付主義を採りたるが如きも、他方民法四四七条に於て売主が買主の請求に因り売買の目的 物を履行地以外の場所に送付するときは発送に因りて危険移転生ずと規定し、又二四三条第二項の特定に関する規定 に於て交付の時と謂わずして、債務者が物の給付を為すために債務者側に於て必要なる行為を完了したるときと規定 せるは:::交付前に特定生ずべきことを示し、この点に於て交付主義を排したるものと詔ふを得ベし:::。翻って我 民法に就て見るに、石坂博士は民法四O
一条第二項は交付主義に従うものなるも而も交付と履行とは同一にあらず 債権者が給付を受領する場合は両者区別なきも債権者遅滞及送付債務の場合には両者は区別するを得べしとせらる (日本民法一三六頁)。然れども交付主義に従うものとなしながら交付前に於て特定生ずる場合を認むるは甚だ不統一に して未だ一定の主義と為すの価値なし。加之独民法三O
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条四四七条の如き規定なき我民法に於て何を基準として債 権者遅滞及送付債務の場合は交付前に特定生ずと為し得るや、引がい叫川島都いれ山小一わ炉一 J 札 W A mめ
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U h v わかかわい 、 、 、 、 、 ば其自身矛盾せるものと謂はざる可からず。串克前述の如く特定の問題を危険移転より出発したる独民法の不統一と 同一の誤りに陥りたる説なりと謂はざるを得ざるなり。従って致民法は分限主的戒を排すると共に交付主義も排し、只だ交付主義を大いに加味して債務者が物の給付を為すにつき必要なる行為を完了したる時に特定生ずと為したるもの と解すベく、何時に債務者が物の給付を為すにつき必要なる行為を完了したりと為すべきやは凡て学説と実際とに委 ね各場合に於ける債務の内容殊に履行の場所を標準として決すべきものとなしたり。之を要するに債務者が物の給付 を為すにつき必要なる行為を完了した時期、即ち特定の時期につきては一定の主義に依るべきにあらずして具体的場 合に於ける債務につきて決すべき法律問題なりとす﹂)(傍点は信者による)と。 そこで履行地を椋準とした特定発生時期の説明をみれば、次のように説かれる。 ﹁持参債務:::物の給付を為すにつき必要なる行為を完了するが為めには給付の目的物を持参して債権者が受領 することを得ベき地位に置くことを要す。我国の通説は持参債務の場合は現実の提供を為したるときに特定生ず と な す ( 石 坂 氏 一 四 二 一 具 、 鳩 山 氏 二 五 頁 、 中 島 氏 一 七 二 一 良 ) 。 多 く の 場 合 は 現 実 の 提 供 を 為 し た る 時 と 符 合 す る を 以 て 通説の如く解するも結果に於て大過なしと雄も目的物を債権者が受領することを得べき地位に置くと、現実の提 供とは常に同一なりと解すべきにあらず。蓋し提供は履行期に於て之を為すことを要し且つ債権者其他受領の権 限を有する者に対して履行準備の事実を開示することを要するも、特定は之を必要とせざるを以てなり。﹂ ﹁取立債務:::取立債務に於ては履行準備が其頂点に達し債権者の協力さへあらば即時に給付を実行し得べき 地位に置きたる時に債務者が物の給付を為すに付き必要なる行為を完了せしものと謂うを得ベし。然るに我国の 通説は取立債務の場合には言語上の提供に依りて特定生ずとなす(石坂氏一四五頁、 鳩 山 氏 二 六 頁 、 中 島 氏 一 七 三 頁
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然れども物の給付を為すにつき必要なる行為の完了には言諾上の提供は必要にても又十分にてもあらず。 種類物売買における危険移転の時期 四 五四 ノ、 従って特定の時期と言語上の提供の時期と同一なりとなすことを得ず。査し前述の如く特定は提供の如く履行期 に於て為すべき要なく、且つ債権者の所在不明又は行方不明のため言語上の提供の不能なる場合に於ても債務者 は一方的に物の給付を為すにつき必要なる行為を完了して特定を生ぜしむることを得ざる可からず。若し通説の 如く解するときはこの場合には債務者が特定を生ぜしむる方法なきに至り、民法四
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一条第二項に於て債務者の 一方的行為に依り特定を生ぜしむる方法を定めたる立法趣旨に反するに至る:::﹂ 石田氏は﹁債権者並に債務者の住所又は営業所以外の場所を履行地と定めたる債務にして五日人は 仮りに他地渡債務と名付け﹂、いわゆる送付債務と区別する。﹁他地波債務は目的物が履行地に存在する場合もあ 送付債務 るべく、又履行地に送付する場合に於ても必ずしも債務者より送付するに限らず、債務者に目的物を売却したる 第三者より送付する場合あるべく、要は目的物を履行地に於て債権者に給付すべき義務あるものにして送付の有 無並に其方法は問う所にあらざるを以て送付債務におらずして持参債務取立債務の結合したる殊種の債務なりと 解すべきなり。従って他地波債務を送付債務と同じく発送に依りて特定生ずと為すことを得ざるは持参債務につ き発送に依りて特定生ずと為すことを符ざると同一なり﹂と。 そうして石田氏の意味する送付債務とは、債務者が好芯上、物を版行地以外の坊一的ヘ送付するばおいを指し、 ﹂の場合には発送により特定生じるという。すなわち、 ﹁辺町、送付依務というは、:::版行の場所は債務者の 住所にして取立債務の性質を有するも債務者は特に目的物を似松者の住所又は指定の場所に送付する﹂場合、ま た﹁履行の場所は債権者の住所地又は共以外の拐所にして持参似務又は他地拡似務の性質を有するも債務者は債権者の訪求(希望)により目的物を履行地以外の場所に送付する場合にして、:::執れの場合に於ても発送により 債務者が物の給付を為すにつき必要なる行為を完了したりと詞うを得べきを以て発送に依り特定生ずるものと す ﹂ と 。 は け 提供説がドイツ民法三
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条 二 項 の 趣 旨 、 つまり受領巡滞←危険移転、を白木民法四O
一条二項前段の特定 の問題として受入れ、受領遅滞を特定の要件としたために交付主義の相前を自ら拾てざるをねなくなったこと、履行 地説のこの点の指摘はすぐれたものである。しかし受領遅滞←特定を否定するのは正しいが、受領巡滞←危険移転ま でをも否定することには疑問がある。この点は次節で、危険移転要因としての受領遅滞の問題として述べるであろ う。ただここで一言つけ加える。石田博士がドイツで三O
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条二項(受領遅滞←危険移転)が独民二四三条二項(特定) の要件とされているといわれているが、今では、その考え方につき有力な反対が唱えられている。 (ロ) 履行地説は受領遅滞を特定の要件としない前提として、受領遅滞の要件たる弁済提件と特定とを機能において 峻別する。ごく大筋のところを引用しておく。 ﹁種類債務の特定とは給付の物体が種類によりて定るべき不確定の状 態より解かれて一定の物の上に限らるるに至り、従って今迄でと異なりたる原則が其債権関係の上に適用を見るに至 る事項を云ふものにして、換言せば債務の内容が程類より特定に転換し、債務関係が種類債務より其同一性を害せず して特定債権に転換する事項を云ふ。:::提供は:::履行準備の完了したことを債権者に通知し其受領を催告する債 務者の法的行為なるに反し、特定は単に種類債務が其同一性を害することなくして特定債務に転換する事項︿ミ宝石 にすぎず。:::特定の生ずる時期に於て偶々提供と符号する場合おりと躍も、之がために特定其ものと提供とを同祝 程 類 物 売 買 に お け る 危 険 移 転 の 時 期 四 七四 /¥ 意 す 見 る カ~ ~ま あ 観 る{念
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20の )混 濁 な り日 」ー乙 (傍線は筆者による)と。しかし、特定が履行に先行する必須事項だという点には有力な反対 提供を特定と峻別する履行地説は、提供←受領遅滞を危険移転要因としない。この考え方はやがて受領遅滞の性質 につき、受領遅滞は債権者の債務不履行だという考え方となって受け継がれていく。これも次節に述べるところに譲 る 。 ヤ サ 石田博士によれば取立債務のばあい債務者が履行準備をしさえすれば通知を要せずして特定が生じるという。 債権者は、何時特定を生じたか知らないうちに物の滅失の損害を負担しなければならないというのは債権者にとって 酷である。履行地説に立つ人でも、この点では石田氏に反対し、通知が必要だといっている。 (ニ) 取立債務の履行地は債務者の住所地である。債権者が取立に来なければ債務者はいつまでも給付義務を免れる わけにはいかない。債務者が給付義務を免れうるのは債権者が受領遅滞に陥ったときである。ところで不履行説によ れば受領遅滞は危険移険の要件ではないし、おまけに債権者の故意過失がないかぎり債権者は受領遅滞の買を負わな いのだから、弁済前の不可抗力による物の滅失・致損はほとんどのばあい債務者だけが負うことになろう。この帰結 は誰からも承認されないであろう。事実、不履行説もこういうばあい﹁特定﹂による危険移転を認めている。 ﹁特定﹂の発生時期は﹁債務者の履行準備の行為がその頂点に達し、債権者の協力さへあらば即時に給付し得ベき程 度に達し﹂たときだという。しかし、この内容は不明確である。むしろ、これは受領遅滞の要件、分離についての立 言に他・なら立い。ま先、送付債務の履行地は債権者の住所地または第三地である。履行地説によると債務者は履行地 こので履行をしないかぎり、それ以前に特定は発生しえない筈である。しかし、ラ l ベルによって比較法上確定されたと ころによると発送によって特定を生じるとされている。もっとも履行地説も、送付債務につき発送による特定を認め ている。このことはすでに履行地説がその本旨を捨てたことを意味するであろう。 ﹁債務の目的の特定化の要件としての債務者の給付に必要なる行為の完了の忠義をそのものの 占有権の喪失であると解丸一白立場を占有喪失説と呼ぼう。占有喪失説は提供説の犯した・弁済提供を特定の要件と (3) 占有喪失説 する過ちを批判する点で、そうしてまた、特定と提供の峻別を強調する点で履行地説と同様であるが、履行地説は特 定発生基準としての交付﹁主義﹂なるのを認めないのに反し、占有喪失説はこれを認める点において具る。占有喪失 説は、むしろ、交付の解釈において提供説に反対するのである。占有喪失説は、提供説も履行地説も就中、送付債務 につきそれぞれの立場の本旨に反して発送による特定を認めざるを得えなかった非を難じ、占有喪失による特定発生 を導いてくる。すなわち、 ﹁債務者が債務の目的物を運送設備に交付すると同時にその目的の特定化を生ずる場合 を、広かれ狭かれ、或る範囲に於て認むべきものとせば、その発送主義の理由は殆ど言を須ゐずしてその運送設備の 独立性に求むべきものであることが明瞭である。蓋し運送取扱人は自己の責任に於て運送を実行する独立の営業者で あって(参照商法第三二二条、第三三七条、第三五 O 条 、 第 六 一 九 条 ) 、 債務者の履行の補助者(開広三宮おお o r -F ) と認む ベき者ではない。目的物が一度債務者の手を離れてこれ等の者の手に渡れば、最早債務者は善良なる管理者の注意を 用ゐて物を保管するも(参照民法第四 O O 条)、事実上それは不可能である。﹂﹁更に一歩を進め元運送設備は独立の占有 者であって、債務者の占有代理人にも、債権者の占有代理人にも非ざることを承認するとせば、総べての場合に於い 種類物売買における危険移転の時期 四 九
五 0 てーー即ち所謂送付債務たると否とを問わず、発送に因りて債務者が占有権を喪失すべきことは明白である。この場 合債権者は何時占有を取得するかは別問題であるが、債務者の側に於いては、この時を以って占有を失ふのであるか らして、最早この時よりして危険を負担せざることとなるのではなからうか﹂と。 占有喪失説は占有喪失をもって特定発生の基準とする結果、持参債務、取立債務、送付債務の区別は不用だとい う。しかも、履行地説と同じく、特定と提供を峻別し、特定は提供の先行事項だという立場をとる。しかし、取立、 持参債務のばあいには債務者の物の占有喪失以前に受領遅滞が先行するのが通例である。そうすると、占有喪失説で いくと取立、持参債務のばあいには特定発生の余地、危険移転の余地がなくなることになる。この矛盾は、占有喪失 説が送付債務のばあいに力点をおくあまり交付の解釈を弁済提供から占有喪失へすりかえ、かつ危険移転要因として の受領滞遅を否認したからである。われわれは占有喪失説のこの挫折から、かえって次のような展望を与えられるの ではないか。それは、取立債務についてのみ受領遅滞による危険移転が語られうるのだ、と。
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化がその本来の意義であることを前提とし、危険移転の効果は特定 u 特定物化の諸効果のひとつに過ぎないとしてい 以上の諸説を通覧するとき留意すべきことは、諸学説は特定が危険移転の要因である以前に、種類物の特定物 る点である。提供説が受領遅滞による特定から危険移転を導き出すのは、実は受領遅滞のときに松類物債務は特定物 債務に転換したのであり、その結果、五三四条一項により危険移転が生じるのだと考えるからに他ならない。また履 行地説、占有喪失説が特定と弁済提供とを峻別し、特定は弁済提供に先行すべき平項だと強調する所以は、特定 U 特 定物化が弁済提供のためには物理的に欠くべからざる事だと考えるからである。ここでも特定とは種類物の特定物化を意味するという観念が前提とされている。昭和二八年の薬師寺論丸一問、従来の学説が特定を説く際に前提としてい た﹁特定物化﹂観念を切断した。この結果、 ﹁特定物化﹂を前提とする諸学説は立論の基盤をゆすぶられることとな ろ う 。 ところで、その特定が何時生じるかの基準について薬師寺教授は、提供説とほとんど同じ立場に立つ。ただひとつ 提供説と具るのは、送付債務につき提供説が発送による特定を認めるのにたいし薬師寺教授は発送による履行を認め る点である。この理由として、教授は﹁通説が、所詞送付債務につき、目的物の発送による特定を認めんと欲するの は、ドイツ民法四四七条を模範として明文なき我民法上も、これと同一に解しうるとするものの如くである。 し、同条は前条において、売買における目的物に関する危険は、目的物の引渡によりて買主に移転することを認めた し か ことに対する絞和規定として、送付債務の債務者を目的物の危険負担に関し保護するために設けられたものである。 ::この規定は、目的物の引渡即ち履行の完了(給付必要行為の完了ではない﹀により、危険が買主に移転するとする前 条を絞和して、目的物の発送により、危険が買主に移転するとするのだから、目的物の発送が、給付必要行為の完了 に値いするか否かは、本条の全く関知しないところである。従って本条から、目的物の発送が、給付必要行為の完了 になるということを導出することは、ドイツ法の解釈としても、無理である﹂という。おそらく教授の意味するとこ ろは、独民四四七条は、前条が目的物の引渡即ち履行の完了による危険移転を認めるのを緩和して、発送をもって履 行の完了とし、その結果危険移転を認めたものだと解されているようである。発送即履行の完了なら債権関係は消滅 してしまっているからもはや特定による危険移転を問題とする余地はないではないか。 程類物売買における危険移転の時期 五
五 (イ) 教授の理解する﹁緩和﹂の内容には疑いがある。送付債務のばあい、引渡による履行完了を緩和して発送によ る履行完了を認めるのではなく、引渡しによる危険移転を緩和して発送による危険移転を認めたのが独民四四七条の 趣旨なのである。 (ロ) 教授の右の誤解は、日本民法が採用した口広
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常 任 。 。 号 のF
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と混同したためではF
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おは危険移転時を判定する基準として選ばれた・債務者側の行為を指すものにすぎず、この 時点においてはいまだ履行を語ることはできない。 工、ごううミ 0 7 1 v T y r e ι f 刀 ヤ サ 発送即履行の完了と理解するとき、危険移転要因に関する卑見を加えて申せば、民法解釈学には、特定による 危険移転を語る余地がなくなるであろう。けだし、持参、取立債務において債務者の提供した物を遅滞なく債権者が 受領するかぎり、弁済提供即履行となり、特定による危険移転を問題にする余地がない ( 債 権 者 が 受 領 し な い と き 危 険 移転が問題となるのは取立債務のばあいであるが、これは特定の問題ではなく、受領遅滞による危険移転の問題である)。 特定に よる危険移転が問題になりうるのは、送付債務においてだけである。教授が送付債務においても特定による危険移転 を否定されるとすれば、特定による危険移転は一体これをどこに求むべきなのであろうか。 ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) 詳しくは浅井清信﹁債権法に於ける位段負担の研究﹂ 岡松参太郎﹁民法理由﹂下二四l
五 頁 本 一 柏 田 、 六 三 頁 参 照 己 主25
明概念が現実の弁済提供と同義であることを比絞法上限定したのは同ち。f
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-唱 え ヲ ( 昭 和 十 七 年 ) 五 二 九 一 良 以 下 参 照回 ︻ ] ﹁ ω H m 片岡 ( 7 ) 取立伯郡につき正当にもこのような説明をするのはただ団長順﹁街杭法﹂ 法総論﹂(昭和十八年)十八頁だけである。 ( 8 ) 椋謙次郎﹁民法要義﹂昨日之三、一七、八頁、岡裕、前拘二四、五日(以上明治三 O 年)、川名栄四郎﹁抗権法要論﹂(明 治三七年﹀五四頁、松田芳雄﹁白根総論﹂(明治四一年)一一一七日、間山芳夫﹁似松法総論﹂(大正五年)二六頁、中島弘 治﹁民法的根法論﹂(大正八年﹀四五一一品、政谷幸次郎﹁前杭法総論﹂ハ大正九年﹀一一ムハロ、中日玉吉﹁民法釈義﹂巻之 三杭杭総論上一七 O 頁、石坂音四郎﹁日本民法前杭総論上治﹂一四三、六一八(以上大正十年)、須賀宮三郎﹁白根総論﹂ハ大正 十三年﹀二七瓦(但し大正八年版はこれと異る)、三猪信三﹁債程法犯要﹂一上回九日、拐山幹一﹁改版依松総論﹂三八、九頁 (以下大正十四年)、大谷美隆﹁債権法総論﹂上巻(大正十五年﹀二八瓦、沼義雄﹁民法要論﹂的根総論三 O 頁、吾孫子勝 ﹁債椛法要論﹂五回頁(以上昭和三年)、宮井政章﹁民法原論﹂三巻(昭和四年)九五百・、防本 E M m ﹁依程総論﹂(昭和五年) 一三六頁、近藤英吉柏木竪﹁註釈日本民法﹂(昭和九年﹀六二頁、前野順一﹁依粧法訴義﹂ハ総論﹀二四瓦、田島順﹁債椛法﹂ 二三瓦(以上昭和十五年)、岡村玄治﹁改訂債杭法総論﹂十五瓦、柏木啓﹁判例債粧法総論﹂上(昭和二五年﹀五六一只、山 中原雄﹁倍程法総論﹂(昭和二八年)五二京、石本雅男﹁債栴法総論﹂(昭和三一年﹀三九頁、吉田久﹁日本民法論﹂伯杭 編総論(昭和三十二年﹀一一一一貝、津曲蔵之丞﹁債程総論﹂上港四三頁、於保不二雄﹁債権総論﹂二五頁(以上昭和三四年﹀、 金山正信﹁債権総論﹂(昭和三九年﹀二四頁 ( 9 ﹀石坂、前拐一回三
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六 頁 (叩)送付伯拐についてはその後、提供説の立場を崩さずに説明しようとの試みがなされている。送付債務という初念を認め ず持参債務として取扱おうとする立場(中島、前掲一七五・六頁、宮井、前掲九六・七頁)、債務者の好意上送付するばあ いは発送による特定を認めようとする立場(鳩山、二五・六頁、三瀦五一一具、嘉山、三九頁﹀があり、これらをさらにつき つめた形で勝木博士は次のように説く。博士は厳格なる送付債務、似て非なる送付債務、送付取立債務の三観念を区別し、 さらに似て非なる送付債務を本来持参債務なるばあいと、本来取立債務なるばあいとに区別する。そうして、厳格なる送付 と、似て非なる送付的務中本来持参債務にして好意上第三地に送付するばあいとは、目的物が到達して債権者が受領しうる 状態に白かれた時に特定し、似て非なる送付債務中本来取立債務にして好意上第三地に送付するばあいと、送付取立債務の (昭和十五年﹀二三只と岡村玄治﹁改訂倍程 種類物売買における危険移転の時期 豆五 四 ばあいとは、債務者より債桂者に対して発送又は到岩を通知し、その受領を催告するに因りて特定するとされる(前掲一四
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三 頁 ) 。 (日)石田文次郎﹁桓類債務の特定を論ず﹂法学論叢七巻三・四号(大正十一年)、小池隆一﹁日本債権法総論﹂(昭和八年) 二八頁、末弘政太郎﹁債権総論﹂(昭和十二年﹀二八頁、林信雄﹁債権法総論﹂(昭和十六年)八二一九、浅井清信﹁日本債 権法総論﹂四二瓦、﹁債権法に於ける危険負担の研究﹂(昭和十七年)六四四頁、西村信雄﹁債権法総論﹂(昭和二五年) 五一一具、我妻栄・有泉亨﹁債権法﹂コシメンタ l ル(昭和二六年)十八頁、﹁民法 E ﹂ ( 昭 和 二 九 年 ﹀ 二 六 、 七 一 具 、 私 坂 佐 一 ﹁民法提要﹂債権総論(昭和=二年﹀三八頁、永田菊四郎﹁新民法要義﹂第三巻上債権総論(昭和三六年﹀五一一氏、吾妻光 俊﹁債権法﹂(昭和三七年﹀十三頁、小出尿二﹁債権法総論﹂十八頁、細田弥彦﹁民法 E ﹂十一瓦、明石三郎﹁債権法要 論﹂一一一一一良(以上昭和三八年﹀、問、﹁穏類債務の特定﹂関西大学法学論集六巻一号、我妻栄﹁新訂債権総論﹂(昭和三九 年 ﹀ 三 一 一 一 員 。 (ロ)石田、四号六二l
四 頁 (臼)石田、四号六回、五瓦 ( M ) 石田、四号六豆、六頁、反対、近藤・柏木、前拐六二頁 (日)石田、四号六六頁 ハ日)石田、四号六七瓦 (口)石田、四号六九瓦 ( 日 ) ぐ ・ 凸 P O B E 2 0 円 、 ﹀ 三 巴 r o m のr 己 品 。 ロ ロ ロ 品 目 ロ - m m ロ ロ m m g E o f ﹄N
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、 ∞ -uょ。? (叩﹀石田、三号十六、十八、十九頁 ( m ω ) 薬師寺﹁桓類債務の特定﹂法学志林第五 O 巻記念論住民﹁法と社会﹂二八l
一 ニ 一 瓦 (幻)たとえば我妻、新訂債権総論︹三四六︺ (幻)石田、前掲三号二 O 頁 (お)浅井﹁債権法における危険負担の研究﹂(昭和十七年﹀六四 O 口、向、﹁粒知山山務の特定﹂総合判例研究芯香、民法的 一 一 七l
八五も同旨のように忠われる。ただし、浅井教授は、これを特定の要件とする点は、私と見る。( M ) 山石田新﹁桓類債務に於ける危険移転の時期﹂法学新報四三巻十二号(昭和八年﹀二三頁 (お)﹁吾が国に於いても、旧民法が程類債務の肢行に付き引波主誌を採ってゐたに対し、その見地を拾てて独逸民法の交付 主義を明一一目した規定を受け入れた沿草からは、寧ろ吾が釘四 O 一条に相当する独逸民法第二四三条の解釈を参考とすべき筈 である。然るに吾が国の通説はこのことには余り留芯せず、 1 ・口が回とは全然点問点を民にせる似務者主義の危険負担を規定 せ る 独 逸 民 法 一 ニ OO 条第二項に関する独逸の学説を採用して、北九処から本条の解釈を生み出してをることは、法文解釈の手 法として当を得たるものとは認めがたいのである。﹂岩田、前拘十号二 O 瓦 (お)山石田、前向十号十九頁 (幻)岩田、前向十二号二三頁 (お)岩田、前掲十号二二頁 ( m m ) 薬師寺志光﹁程類債務の特定﹂法学志林五 O 巻記念論集﹁法と社会﹂二二一貝以下。その後、﹁特定物化﹂の諸効果と解 されているものを検討して﹁特定物化﹂を否定するのは舟橋諒一﹁﹃特定物﹄と程類債権の﹃特定﹄﹂法政研究二二巻二、三、 四合併号(昭和三 O 年﹀二九九頁以下。古くは、田島、前掲二六頁。 (却)薬師寺、前拐二八頁 (出)格、前掲十七頁 危険移転要因としての受領遅滞 債権者の受領遅滞は私の想定するところでは、債権者の受領のための﹁行為﹂が債務者の現実提供﹁行為﹂に先行する 契約類型における危険移転の要因であり、特定とは相互に独立・対等の関係にある。しかし従来の学説は受領遅滞に 私の右の想定と兵った椛成を与えている。受領遅滞に関する学説は次のふたつに分けられる。ひとつは、受領遅滞は 危険移転という効果に結びつきはするが、この結びつきは間接的であって、直接的には特定日特定物化の要件である 種類物売買における危険移転の時期 主 五
五 六 (位) と説く説。この説を特定説と呼ぼう。特定説はこの論述からも知られるとおり、特定に関する提供説に対応する。も うひとつは受領遅滞は危険負担とは結びつかない。けだし、受領遅滞は債権者の受領義務違反であり債務不履行とな るからだと説く説。この説を不照行説と呼ぼう。不履行説は特定に関する照行地説に対応する。これらの学説の解釈 学上の争点は受領遅滞の効果として結びつく五三六条二項の﹁債権者ノ責ニ帰九ヘキ事由﹂の解釈にある。 特定説によれば受領遅滞は直接的には特定 H 特定物化の要件だという。債権者はもともと受領義務を負うもの 、 ‘ . , , 噌i , , . ‘ 、 ではないから、受領遅滞以後、この説に従えばすなわち特定物化以後、物が当事者双方の買に帰すべからざる事由に よって滅失したときは五三六条一項により危険は債務者が負うこととなろう。だが、 ﹁債権者の側においである容態 (作為または不作為)が在しなかったならば債務者の側における履行が可能であったろうと考えられ、しかもその容 態は債権者がこれを避止することを得た筈である:::とみられる場合ーーしたがって現実にこれを避止しなかったこ とが少なくとも社会的に非難される場合ーーに:::債務者の利益のために債権者の容態が非難さるべきものとして考 慮 さ れ る の で あ る 。 ﹂ その結果、五三六条二項が適用され、債務者は反対給付請求権を失わずに済むのだという。五 三六条二項の﹁債権者ノ交ニ帰九ベキ事由﹂の解釈としては、債権者にたいする社会的非難を考慮する怠味が含まれ ていなければならないのであるから、債権者の故意過失というよりももっと綬かに、広汎な内容を有するものと解釈 すべきである、と説く。特定説の次の諸点については疑いがある。 1 1 滞は特定説 H 特定に関する提供説によると特定を生じさせる要件であった筈である。そうだとすると、危険は特定の 結果的には、なるほど受領遅滞が危険移転に結びつくから債務者の保誌に欠けるところはない。しかし受領遅
のときに債権者に移転しているのだから、ことあらためて五三六条を引い合いに出すことは余計なこととなる筈では . 、 、 ミ 0 4 山 N L , 刀 (ロ) 特定説が受領遅滞を特定の時期に危険移転の要因として持出すことを控え、王三六条を適用する際に引合いに 出すのは、受領辺滞による特定を認めると、債務者は菩官義務を負うことになる ハ 日 比 四 OO 条)。受領を遅らせている のは依松者であるにかかわらず、そのために債務者が特定前よりも主い注芯義務を負わされるのは不都合である。そ こで債務者の注意義務を軽減する要因として受領遅滞をここで引合いに出さねばならなかったのである。 ( 特 定 ← ﹀ 主口管義務を発生させた受領遅滞に、 ふたたび、普管義務軽減というわが身を濯ぐ役目を負わせるのは矛盾ではなかろ う か 。 ヤ オ 五三六条二項の﹁債権者ノ買ニ帰スヘキ事由﹂の解釈につき、債権者の故意過失よりも広汎な内容のものと解 する点については賛成である。 ただし、こういう解釈の根拠を、同条一項の適用から債務者を救い出すため﹁債格者 にたいする社会的非難﹂日︹信義則︺に求めていくことに理論上の不透明さを感じる。ともかく特定説によっても受領 遅滞は危険移転の要因なのであるから、同条一項への迂路は無用である。 以上の難点は、そもそも特定説が受領遅滞←特定 1 Y 危険移転という遠廻りをすることに起因している。加之、 特定を租類物債粧が特定物債権に変ることだと理解しているため問題をいっそう複雑にしている。特定をもって程類 物債粧が特定物債権に変ることだと理解することに、最近有力な反対説が出されている。受領遅滞←危険移転と理解 すれば、特定説の難点は全部解消する。 和類物売買における危険移転の時期 五 七
五人 (2) 不履行説は一(弁済提供←﹀受領遅滞と特定とは機能領域をまったく異にするものだという。この考え方は、特定 と受領遅滞とを相互に独立なものとして区別すべしとする私の想定と一致するかのようにみえる。しかし、私の想定 は両者とも危険移転を生じる要因と考えるのに反し、不履行説は受領遅滞を危険移転の要因とはみないから、彼我の立 場は根本的に兵る。不履行説によれば﹁債務者が物の給付を為すに必要な行為の完了は種類債務の特定の要件であ り、履行の提供は主として債権者遅滞の要件を為しており、しかも、程類債務の債務者が債権者を遅滞に陥らしめる がゆえに特定を生ぜしめようとしているのではないから、債務者が物の給付を為すに必要な行為の完了と履行の提供 とは必ずしも同一の意味に解する要はない﹂(傍点は答者の附したもの)という。 ここで﹁受領遅滞が特定を生じない﹂ といっているのは、もっとっきつめていえば、受領遅滞を危険移転の要因とみないということなのだが、それはどう ( 叩 ) いう理由によるのか。その理由は、債権者に受領義務を認め、受領遅滞を債務不履行の一態様とすることによる。そ の結果五三六条二項の適用は債権者の債務不履行の効果とされ、 ることとなり不履行説の次の二点には疑いがある。 ﹁債権者ノ責ニ帰九ヘキ事由﹂は故意過失を意味す (イ) 受領遅滞は債権者の債務不履行か危険移転要因かの争いは弁済捉供の効果を定めた四九二条の﹁不履行-一因リ テ生スヘキ一切ノ責任﹂の解釈において差異を生じる。不履行説は受領遅滞をもって債格者の債務不履行と秘成する 立場から、本条の解釈においても受領遅滞があれば依務者の債務不履行は程在せず、受領遅滞がなければ債務者の債 務不履行が存在するというように債務者の依務不履行と似杭者の依務不股行とを
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仏 日 の関係にあるもの とみる。これにたいし、受領遅滞を危険移転要因とする立場では﹁弁済ノ犯供ノ効果ハ提供ノ時ヨリ其効果ヲ生久ルコトハ民法第四百九十二条ニ規定スル所又債務者カ弁済ノ提供ヲ為九カ為メニハ債務者ニ遅滞ノ穴任ノ生九ヘキ時期 ノ 到 来 司 ハ ル ノ 以 前 -一 於 テ 進 γ テ之ヲ為九コトヲ妨ケサルヲ以テ此場合-忍一テハ債務者カ股行ノ提供ヲ為ササルモ所詞 債務ノ履行ヲ遅滞シタルモノトシテ不履行ノ責ヲ負フヘキノ理ナキハ多一一一口ヲ要セ λ シテ明カナリ然ルニモ拘ハラ九民 法第四百九十二条ニ於テ﹃不履行ニ因リテ生九ヘキ一切ノ宍任ヲ免レシム﹄ト規定シタルヨリ推論九ルトキハ其所詞 不履行ハ債務者ノ義務違反ヲ前提ト九ル不履行ノ芯ニ非九シテ債務カ股行セラレ九シテ残存 λ ル事実上ノ状態ヲ窓味 シ債務者カ此状態ヨリ生久ル結果ニ付責任ヲ負ハサルノ詔ナリト解久ルヲ相当ト九:::是レ不特定物ノ債務ニ在テハ 目的物-一関九ル危険ハ常ニ債務者ノ負担ニ帰シ履行行為ノ完了ニ因リ其危険債権者ニ移転スヘキモノナルモ法律ハ債 務者ノ方面ニ於テ履行ヲ為スニ必要ナル行為ヲ完了スルト同時ニ其物ヲ特定セシムルコトニ因リテ早ク既ニ之ニ関九 ル危険ヲ債権者ニ移転シ履行-一因リテ生久ヘキ法律上ノ効果ヲ履行ノ提供ニ因リテ生セシメ債務者ノ正当ナル利益ヲ 保護司ハルト同一ナル精神ニ基ツキタルモノニジテ債務履行ニ関スル債務者ノ責任ヨリ見ルモ又債権者ノ遅滞ヲ認メタ ル立法上ノ理由ヨリ論九ルモ民法第四百九十二条ニ所謂﹁不履行﹂ノ意義ヲ一派ノ論者ノ主張九ルカ如キ債務者ノ義 務違反ヲ構成スル狭義ノ履行ノ意ニ解スヘキモノニ非ス:::若シ反対論者ノ主張ニシテ正当ナリトスルニ於テハ提供 其効果ヲ生九ルカ為メニハ常ニ債務者ニ遅滞ノ責任ノ生スヘキ時期ノ到来ヲ侠ツコトヲ必要トシ其以前ニ於テハ何等 ノ効果ヲ生セサルコトトナリ民法第四百九十二条ニ於テ特ニ﹃其提供ノ時ヨリ﹄ト規定シタル立法ノ趣旨ニ紙蝕ジ之 ヲ 抹 殺 司 ハ ル ニ 等 シ キ 結 果 ヲ 生 司 ハ ル ヲ 以 テ : : : 此 解 釈 ハ 是 認 可 ハ ル コ ト ヲ 得 丸 ﹂ (横田芳雄﹁債権者ノ遅滞ヲ論 λ ﹂新報三二 巻六号(大正十一年)五二
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五 百 ﹀ 種類物売買における危険移転の時期 五 九/ "
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同 不履行説にたいする疑問の第二は、不履行説が受領遅滞を危険移転の要因としないとしながら、特定を生じさ せる方法の中に就中、取立債務のばあい受領遅滞の事例を加えて説明している点である。その結果として不履行説に 従うと、受領遅滞の事例においては、債務者の免責、反対給付不喪失(私の芯味する危険移転) の効果は特定の方から でも、受領遅滞の方からでも行ける。すなわち、主三四条二項と五三六条二項の法条競合を生じるわけである。この ことは特定と受領遅滞との法政策的根拠の差異が明瞭にされていないことを示すものである。ここでもやはり、受領 遅滞を危険移転の要因とすべきことが暗示されているといえないだろうか。 ( m M ﹀同和、前拘七 C . R ・ ハ 明 治 三 O 年﹀、川名栄四郎﹁倍程法要論﹂(明治三七年﹀一四一頁、杭田秀雄﹁債松総論﹂(明治四 一年)二四四頁、鳩山秀夫﹁債権法総論﹂(大 E 豆年)一五一一具、石坂音四郎﹁日本民法第三編債権第六巻﹂一二四三頁(以 上大正五年﹀、中島弘道﹁民法債程法論﹂ハ大正八年)宜 O 一一貝、磯谷幸次郎﹁債権法総論﹂三三三頁、中島玉吉﹁民法釈 義﹂巻之三、債程総論上三六 O 頁(以上大正十年)、須賀喜三郎﹁債権法総論﹂(大正十三年)は、ム川険移転に結びつかない という。七五瓦、三間信三﹁債権法担要上﹂一七一一具、嘉山幹一﹁改版債権総論﹂一一一一 O 頁(以上大正十四年)、大谷美隆 ﹁債桂法総論﹂上巻(大正十五年﹀一三四頁、沼義雄﹁民法要論﹂倍程総論、一四五六頁、吾孫子勝﹁債枢法要論﹂八三瓦 (以上昭和三年﹀、官井政章﹁民法原論﹂三ち(昭和四年﹀九五瓦、近藤英吉・柏木終﹁註釈白木民法﹂(昭和九年﹀一一 O 引、前野順一﹁債権法詩義﹂(総論)一 O 四貝、田島服﹁依秘法﹂一 O 一 一 丸 ( 以 上 昭 和 十 五 年 ) 、 勝 木 正 邦 ﹁ 債 権 法 概 論 ﹂ (総論)﹂(昭和二四年)昭和二七年版では三八五只、柏木即日﹁判例似杭法総論﹂上(昭和二五年﹀二三 O 瓦、石本雅男﹁債 程法総論﹂(昭和三一年)一 O 六、吉田久﹁日本民法論﹂的松総論(昭和三二年)一五四一氏、作曲肢之丞﹁債権総論﹂上巻 一 四 二 一 貝 、 於 保 不 二 雄 ﹁ 債 権 総 論 ﹂ 一 一 O 日(以上昭和三四年)、企山正信﹁似椛総論﹂(昭和三九年﹀=二三頁 (お﹀末弘厳太郎﹁債権総論﹂(昭和十二年﹀一八二五、我京栄﹁仙松総論﹂ハ昭和十五年﹀昭和三九年版では︹三四三︺、︹三 四六︺林信雄﹁債権法総論﹂(昭和十六年)一六 O 瓦、浅井治信﹁日木似松法総論﹂一四六目、西村信雄﹁債椛法総論﹂(昭和 二 五 年 ﹀ 一 O 六頁、我妻栄、有泉亨﹁債権法﹂コ γ メンタ!ル(昭和二六年)四二頁、﹁民法 E ﹂ ( 昭 和 二 九 年 ) 七 二 一 氏 松坂佐一﹁民法提要﹂債権総論(昭和三一年﹀一一三頁、高梨公之﹁債権法総論﹂ハ昭和三三年)二八一一具、片山金章﹁受 領遅滞(伯格者遅滞)﹂民法演習 E ( 昭和三四年﹀五七瓦、永田菊四郎﹁新民法要義﹂第三巻上位程総論一三 O 、 一 一 氏 、 中 尾茂夫、持寿夫、山下末人﹁全訂債権法概説﹂一一五瓦(以上昭和三六年)、吾安光俊﹁依椛法﹂(昭和三七年(八三頁、 小出版二﹁依枢法総論﹂六五頁、細田弥彦﹁民法 E ﹂四六瓦、明石三郎﹁依椛法嬰論﹂一九一瓦(以上昭和三八年)、 (出)たとえば明示的には、石坂﹁日本民法第三編債権第六巻﹂一二四四頁︹註二︺、勝木正見﹁依枢法概論(総論﹀﹂三八五 瓦、近一時・柏木﹁註釈日本民法(債権縞総則)﹂上巻一 O 九 五 、 於 保 、 前 掲 一 一 一 一 只 (お)末川博﹁契約法(総論)﹂一 OO 頁、柏木、前掲(下)一七四頁等‘尚履行地説の石田(﹁依粧法総論説設﹂二三三一九﹀ 小池(前掲一六六、一七三頁)占有喪失説の岩田(債権法新論一八、九頁﹀、は受領遅滞に過失を必要としないという。 ハお)たとえば柚木、民商法雑誌三四巻四 O 八 頁 ( 幻 ) ( 却 ﹀ 参 照 (お﹀浅井﹁総合判例研究叢書﹂民法的二五頁 (鈎﹀(お﹀参照、立法上独民四三三条二項のような受領義務を定めるのがよいと論じるのは、乾政彦﹁債桂者ノ引取義務﹂法 学志林十一巻四号(明治四二年)四 O 三 頁 以 下 。 (川切﹀不版行説への転換の最初の兆候として﹁受領遅滞ハ主観的要件ヲ必要ト λ ルモノニアラザルヲ以テ解釈上多少疑問アリ ト雌モ債務者ノ股行遅滞以後ニ於ケル履行不能ト同ジク債権者ノ不受領ガ履行不能ノ原因ヲ為シタルトキハ依格者ノ究ニ知 久ベキ事由ニ因ルモノト解九ルヲ正当ト九ベシ。:::余ハ嘗テ反対ノ見解ヲ採レリ。﹂鳩山、増訂債権法各論ハ上﹀(大正 十三年)一三六頁。尚、梅、前掲五七頁も債権者の﹁過失﹂をいうので、この立場か。特定につき捉供説をとりつつ受領遅 滞に受領義務を認めるのは、岡村、前掲一 OO 瓦、小出前掲八 O 頁、山中、前拘六四頁、金山、前掲一一一一良。特定につき 履行地説をとり、それの論理的発展として受領遅滞を債務不履行だと明確化したのは我妻氏である(昭和三九年新訂版︹三 四三︺三三八頁︹三四六︺二四 O 頁) 種類物売買における危険移転の時期 ーよー /'¥
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危 険 移 転 要 因 と し て の 特 定 と 受 領 混 滞 の ぺ役割﹂分担関係 以上二、三で述べたことを整理しよう。提供説 H 特定説において受領遅滞が危険移転に結びつくと説くのは正しい が、受領遅滞が特定の要件であると説くことには難点があった。提供説 H 特定説の検討から特定と受領遅滞が危険移 転にたいし相互に独立の要因であるべきだという想定が導き出された。また、履行地説 U 不履行説において特定と 受領遅滞が区別さるべきことを説くのは当を得たもののように思えたが、区別の結果、受領遅滞を債務不履行の領域 ヘ押し出してしまったことに難点があった。履行地説 H 不履行説の検討から受領遅滞も危険移転の要因であるべきだ という想定が導き出された。そこで、ここでは特定と受領遅滞が危険移転において、契約により当事者間に存立する に至った社会関係の・どの類型に固有な危険移転を分担するかをみよう。 債務者の先行行為を要する類型、すなわち持参債務と送付債務においては特定により泡険移転を生じる。特定を生 じる基準は立法上承認された交付主義に従い、現実の弁済提供である(ラ l ベ ル 前 持 、 持参債務においては債権者に対す る現実の提供、大判大八・十二・二五民録二五・二四 O 二 、 東 京 地 判 昭 二 ・ 三 ・ 十 一 日 新 報 一 O 九 ・ 二 六 、 送付債務においては運送人に たいする物の交付、横浜地判大十一・七・二六新聞二 O 三 五 ・ 十 八 ﹀ 。 特定はこの類型に固有な危険移転を分担する。 債権者の先行行為を要する類型、すなわち取立債務においては受領遅滞により危険移転を生じる。受領遅滞の要件 につき次の二点は注意を要する。ひとつは受領遅滞につき伯務者の故意過失を要しないことでおむ)受領遅滞が危険移転要因だとすれば当然のことである。もうひとつは債権者を遅滞に陥れるために要する債務者の行為に関する。債 権者が取立に来るのを漫然と待っているだけで債権者を受領遅滞に陥れることはできない。債務者は物を分離し、こ のことを債権者に通知しなければならない。立法上捨てられた﹁分離﹂機能はこの類型において妥当する。立法者が 危険移転要因として特定のみを念頭において交付主義を一般化し、分離の機能的意義を顧みることなく分離機能を拾 て去ったことが、種類物売買における危険移転時期につき多くの論争をまき起す原因になったと思われる。分離の方 法については、たとえば債務者が銀行を通じて債権者に金銭の一定額を支払うばあい、債務者が(銀行との融資契約に よ り ﹀ 口座に振込んだことを通知したのみでは﹁分離﹂があったとはいわれない。債務者は具体的に金額についても 通知しなければならない。けだし、銀行と債務者聞の融資契約は、対債権者においては内部的事情にすぎず、これを もって債権者にたいして受領遅滞の効果を生じさせるのには不充分だからで丸一ヤこのことは危険移転の事例ではな いが次に述べる判決理由の趣旨に従い当然に承認しうるものと思う。 ﹁本件売買契約ノ履行地ハ爪珪北岸ナル﹁久ラバヤ﹂及ピ﹁九マラン﹂ノ二港ナルコト当事者間ニ争ナク右ニ 港問ノ距離相当大ナルコト地理上明白ニレテ斯ノ如ク履行地二以上併存シ其間ノ距離相当大ナル契約ニ於テ売主 ガ引渡ノ準備ヲ為シタリトシテ買主ニ対シ代金ト引換-一之ガ引取方ヲ催告スルニ当リテハ少クトモ各履行地-一準 備シタル貨物ノ数量ヲ買主タル相手方-一通知スルコトヲ要スルモノト謂ハザルベカラズ歪シ買主ニ於テ右程度ノ 記我ヲ欠ク催告ヲ受ケ之ニ従ヒ代金ト引換一一貨物ヲ引取ラントセバレ何ノ履行地ニ幾何ノ貨物準備セラレタリヤ 不明ナルニ依リ各版行地へ総代金ニ相当九ル金額守拐行可ハルコトヲ要ネルニ至リ二重ニ代金ノ準備ヲ為サザルベ 種 類 物 売 買 に お け る 危 険 移 転 の 時 期 --'- -ノ、
/'¥ 四 カラザル結果ヲ生ズレバナリ﹂ハ東京控判大十五・五・十三評論十六・民三 O 八 ) ( 危 険 移 転 の 事 例 は 、 京地判昭二・九・ 二六新報ごニ六・二 O 、 京区判昭二・六・一七、新報二一七・五、横浜地判大七・十・一二評論十一民四七、この事件は買主 が契約品を取りに来ないので、売主は履行を催告しながら催告期間中これを他に売却したものである。判決は、先主が契約ロ間 全部を引渡すに必要なる一切の準備を完了したことにより特定の発生を認定し、 ﹂こから冗主の変更桂の消滅を導き出し、売 主の売却行為は変更桔消滅の効果を侵害したのだという。本件は、分離の方法が不完全であり、したがって受領遅滞も危険移 転も生じないとすべきであったろう。この他、最判昭三 0 ・十・十八、この事件は五でとりあげる)。受領遅滞はこの類型に 固有の危険移転を分担する。 (位)労基法二六条との関連において民法五三六条二項を受領遅滞による危険移転の効果とみ、﹁債権者ノ武ニ仰スヘキ事由﹂ を債務不服行要件としての故意過失でなしに、危険負担要因とみるべきことを力説するのは、島田信義﹁危険負担における 帰買事由の一考察
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民法五三六条二項と労働基準法二六条に関連して│﹂早稲田法学三三巻一・二冊一五五瓦以下 (位﹀柏木、民商法雑誌三四巻四 O 七頁参照 五 結 び に か え て 昭和三O
年十月十八日の最高裁判決をめぐって 種類物売買における危険移転を扱った昭和三O
年十月十八日の判例を材料に、それに加えられた判例評釈がどのよ うな立場からの批評であるかの位置づけを試みることによって、私の考え方の真意をより明瞭なものにし、本稿の結 びにかえよう。事例、昭和二八年附第二一六七号、同三
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年十月十八日第三小法廷判決、破棄差戻、第一容図館地裁、第二審 札幌高裁函館支部、集第九巻第十一号一六回二頁 ︹ 事 実 ︺ 買主 X は昭和二一年二月売主 Y から漁業用タ l ル 二 、000
屯を買い受けることを約し、その受渡の方法 は買主が必要の都度その引渡方を申し出で、売主が引渡場所を指定し、民主がその容器であるドラム缶を談場所に持 込み、右タールを受領し、昭和一一一一年一月末日までに全部を引き取ることと定め、只主は契約とともに手附金二O
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、000
円を売主に交付した。右タ l ルは、売主が A 製鉄会社から買い受けて同会社の製鉄所椛内の溜池に貯蔵し ておいたものを買主に転売したものであって、売主は約旨に従い引渡場所を買主に通知し、同年八月頃までに約四分 の一のタ l ルを引渡したが、その後になって買主はタ l ルの品質が悪いといってしばらくの間引取りに行かず、その 間売主はタールの引渡作業に必要な人夫を配置する等、引渡の準備をしていたが、十月頃これを引き揚げ、監視人を 置かなかったため、同年冬頃 A 会社の労働組合員がこれを他に処分してしまい、タールは滅失するにいたった。それ から三年たって昭和二四年十月十二日買主は売主にたいし内容証明郵便をもって、右郵便到達後十日以内に右引渡し 場所を買主に通知すべき旨履行の催告をしたのに、売主は、右期限を過ぎても引渡し場所も指定せず該タ l ルの引渡 しをしなかった。そこで買主は売主の右不履行を理由に残余の部分につき契約を解除し、右手附金から前記引渡しを 受けたタ l ルの代価を差引いた残金の返還および昭和二十二年二月一日から右金員完済にいたるまで年一割による 金員の支払いを求めた。第一審、第二容ともに買主を勝訴させた。しかし、最高裁は要旨﹁漁業用タ l ルの売買にお いて、受渡の方法を、先ず買主が必要の都度引渡方を申し出で、これに対して売主が引渡場所を指定し、次いで、買 種 類 物 売 買 に お け る 危 険 移 転 の 時 期 六 五六 六 主が容器をその場所に持ち込み、タールを受領する旨約定した場合に売主が引渡場所を指定し、タールの引渡作業に 必要な人夫を配置する等引渡の準備をなしたからと云って、売主は﹃物ノ給付ヲ為九ニ必要ナル行為ヲ完了シ﹄たこ とにはならたびと述べて原判決を破棄、本件を第二審裁判所に差戻した。 差戻し前、第二容が示した﹁特定﹂観念の検討から入っていこう。第二容は判決理由の中で次のように述べてい る 。 ﹁本件売買契約が当初から特定物を目的としたものかどうか、これを認めるに足る明らかな資料はないけれど も、すくなくとも右タールは控訴人︹売主︺が前記のごとくその引渡をなすに必要なる行為を完了したときにおいて 売買契約の目的物として特定し、爾後控訴人︹売主︺ は引渡をなすまで善良なる管理者の注意を以てその物を保管す る責任を負うていたものであるから、従って控訴人︹売主︺が本件タ l ルの保管に関し注意義務をつくさなかった買 任は免れ得ない。:::前記滅失による鹿行不能は控訴人︹売主︺ の責に帰すべき亭由によるものというべきであるか ら、被控訴人︹買主︺の債務不履行を理由とする前記契約解除の意思表示は有効であ犯﹂と。第二容は提供説にした がい受領遅滞による特定を認める。ただし、この特定の中味は﹁種類物の特定物化﹂に他ならず、したがって特定物 化売主の善管義務とつながり、ここから、売主の菩管義務違反←売主の債務不屈行が導き出されたのである。受領遅 滞 lv 危険移転と結びつければ原判決とは正反対の!私には妥当と思われる