実務に現われた労働法・経済法-1-著者
高津 幸一
著者別名
K. Takatsu
雑誌名
東洋法学
巻
15
号
2
ページ
33-56
発行年
1972-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00006103/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja実務に現われた労働法・経済法︵一︶
高津 幸 一
一、 二、 三、 裁判所の労働経済政策と判例分析 米国反トラスト法の域外適用 景品付販売の問題点裁判所の労働経済政策と判例分析
e 裁判所と政策 労働法、経済法の分野においては、同じ結論を導くにもその論理および表現の両面において多様性が特に顕著であ る。これは判決においても全く同様である。しかも、判決が他の事件において引用される場合に、各当事者および裁 判所がそれらを評価するに際して判例としての研究が不足しているために、明示・黙示にピントのはずれた引用がな 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 三三東洋法学
三四 きれ、当該事件にとってはおかしな結論を導くことになることがしばしばある。また.裁判所の行う労働・経済政策 は.裁判所の関与しうる活動分野に当然の眼界ー法律上の争訟の解決だけであり、しかも訴なければ裁判なしとい うーがあるために.しばしばその意図と結果とに齪臨をきたすことがある。さらに.裁判所は法律上の判断が職責 であって.経済政策の立役者ではないという建前の論理があるために.裁判所の経済政策は.意図的に.あるいは無 意識的に隠秘されることにもなる。 労働法.経済法が私法的分野において十分な発展を遂げていく鷲とは、個人の自露を基調とす蒸社会にと哨.畔駄極め て望ましいこととである。そして.嚢由ー国民主権 民主主義ー平和のラインにおいて.世界の代表格になろ うとしている購本にとって.これは重要なことなのである、その場合に私法的解決の場で裁判所が果す役割の大きい ことはいうまでもない。そこには.第一次大戦後の経済法理論と実践に大きな活動をしたドイッの民事裁判以上のも のが期待されるといってもよいのではなかろうか。 一般経済法の分野において私はこのような問題にしばしば触れてきたが、ここでは.集団的労働法の分野における 団体交渉の閥題についてと、個跳的労働法の分野における解雇の間題について.裁判所の応対の仕方をみてみようと 思う。これらは.いずれも.それぞれの分野における代表的な 少くとも裁判所においてはー閥題である。 労働・経済政策においてはその結果が重要である。集団的労働法においては労使間の円滑な交渉を妨げるような政 策は是認されないし、個別的労働法においては自由な労使の結合を妨げるような政策は是認されない。しかし.行為 と結果の関係は前述のように単純明快ではない。裁判所は.土地家屋を持たない庶民の保護という名目の下において行った活動によって、宅地を庶民の手の届かぬものにしてしまった。宅地価格の異常な上昇は、地代家賃統制が実効 性を失った後においても、土地・家屋の明渡を著しく制限し、もしくはその手読に長期問かかるようにした裁判所の 活動が、賃料や権利金を高騰させ、その結果かかる事態を生ぜしめたのではないと誰がいえよう。裁判所はこの問題 に傍観者であったわけではないのである。 判例の研究にそいては具体的事実の分析が重要であることは、いい古されたことである。しかし、この具体的事実 とか具体的状況の分析というものは、労働法、経済法の分野においては著しく困難である。だからといって、抽象的 一般論の段階で判例を論ずるのは、一般私法における以上にナンセンスなのである。 口 団体交渉 団体交渉をすることを命ずる仮処分命令について考察しよう。 従来の事件で、このような仮処分命令申請が認められた事例のうち、公刊されている主要なものの具体的事情は類 型化してみると次のとおりである。 第一は、会社が特定の執行委員の参加を拒否していた場合︵大阪地決昭三〇・四二二労民集六巻三号三一八頁︶、 会社が懲戒解雇者が出席するのでは応じられないとしていた場合︵東京地決昭四〇・七・九労民集一六巻四号五六六 頁︶、会社が解雇きれた組合三役を交渉委員にした団体交渉を拒否していた場合︵鳥取地米子支判昭四一・五二九 労民集一七巻三号六四六頁︶などにおいて、仮処分命令自体がそのような拒否はいけないとして具体的な団交障害な 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 三五
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三六 いし一方当事者の拒否理由を根拠のないものとして除去し、一つのルールを定めて団交の実施を命じたものである。 第二は、事業場の閉鎖は組合と協議の上で行なうとの労働協約があるのに突然会社が閉鎖を通告した場合︵札幌地 室蘭支決昭四〇・︸二・九労民集一六巻六号二〇二頁︶.会社の合併の場合︵東京地決昭四一・九土七労民集︸ 七巻五号一〇九三頁︶など.会社の行動が組合の存続に直接に影響する場合であって.現状を放置しておくと短時霞 中に組合の存続そのものの基盤に重大な変化が生ずる緊急の場合に団交を命じたものである。 第三は. って他と団交しないとか︵福井地決昭三四・三土六労民集一〇巻二号二一莞頁︶. スト突入後一ヵ月をたっているが組合の申入に対して会社が単純な拒否を繰り返していたという︵福井地決昭四〇・ 六・二六労民集一六巻三号五五五頁︶ように.会社に全く団交の意図がない場合であウて.命令により交渉の糸隣が できるという場合である。 これに対して.仮処分命令申請を却下した事例︵東京地判昭三二・二・二労民集八巻六号八七二頁、東京地決昭 三五・一一土二労民集二巻六号一三四一頁︶においては.比較的詳細な法律論が展開され.憲法二八条は労使間 に具体的な権利義務を設定するものではなく。使用者の正当でない団交の拒否は違法ではあるが、労働者のために損 害賠償請求権を発生せしめるにとどまり.この規定に基づいて当然に労働者が使用者に団交に応ずることを求める請 求権を有するわけのものではない、との趣旨を明らかにしている。 この問題について、従来の学説は.判例iことに却下判例ーとの関連において.団体交渉権が私法上の請求権 たりうるかということに集牢した議論をしてきた。これについては.少くとも一般論としては.私は.一歩進んで次のように考える。 団体交渉については、具体的権利義務を定める根拠規定がないばかりか、実質的にみても裁判所が給付を命ずる場 合にはその内容が客観的に特定しなければならないと解すべきところ、団体交渉を命ずる仮処分においてはその内容 の特定のための方途さえなく、また最も重要な団体交渉の結果には裁判所が関与しようがないから、結局裁判所は団 体交渉をするよう命ずることはできないと解すべきである。そう解しても、別に労働委員会の制度があるから、労働 組合に対する救済は損われることにはならない。紛争の最終的解決を求められるべき裁判所が内容不特定の命令を発 することは、その真意に反して、一方当事者の政策的行為の道具となる虞れがあり、その結果裁判所の紛争解決機能 にマイナスになることも予想される。さらにこのような仮処分命令が発せられた後に行なわれた本案訴訟の審理の結 果、当該具体的事情の下では団交の拒否と目すべきものがなく、命令が一方当事者の道具にすぎないことが判明して も、全く原状回復の方途を欠くものであるから、かかる仮処分は仮処分の暫定的性格の上からも許されないのであ る。 しかし、公刊された判例との関連で問題をみたとき、この種の一般論の議論だけでは実は不足なのである。即ち、 先に述べたような、より具体的な事情の分析が不可欠なのである。従来の議論の不足を反映してか、最近、公刊判例 のような特殊の事情がない一つの事件において仮処分命令が発せられたのを経験した。なお、この事例は無審尋であ るため、事実の認定は或いは歪められていたかもしれないが、仮処分命令申請書自体からみても、先に述べたような 特殊な事情は記載されていない。即ち、会社は団交のルールを決めた上で初めての団交に臨もうと考え、その案を提 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ . 三七
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三八 示するなどして積極的姿勢を示したのに対し、組合は団交団交と唱えるだけでそのルールを定めようともせず.また 会社の希望折衡日時を断り続け.ルールのない団交を求めて会社を困惑させ団交拒否の外形を作ることにより組合鐵 の団結を強めようとして.そのために仮処分命令を申請した疑の濃厚な事件に対して、浦和地裁が下した団交を命ず る仮処分命令がそれである。これは.一般に判例分析が怠られ.裁判所もそこまで手が回らなかったために生じた事 例の典型的なものといえるのではなかろうか、 この閥題の一般論においても、かなむ重要な研究不足があ准ことが労働経済政策の面から指摘されてよいであろう、 一般論についての前述の私見はそれを志向したものである。ここで重要なのは.このような問題が裁判所に持込ま れたのぱ何故か.その原因農体を解決するにはどうすればよいか.仮処分命令を発す灘ことにより間題が解決でき悉 か.それとも逆に混乱に陥るか.ということがポィントである。そうして.もしこれだけのことを老.えずに裁判所が このような労働閥題に専ら﹁法律的﹂方法により手を付けたとしたらそれは大変な誤りで.裁判所の意図と社会的効 果との大きなくいちがいを発生きせるのではなかろうか。日解 雇
解雇権の濫用というものが.一般の民法上の権利濫用から区別されるような際立った存在となったのは、就労の少 なかった昭和二十年代において、 ﹁一旦離職すると容易に職につくことができず、解雇により容易に生活をおびやか されるに反し、使用者は労働者を求めるに比較的容易である﹂として、 ﹁極刑﹂である解雇は.労使双方の事情.社会経済的事情を考慮して、信義則ーことに解雇の動機ーと法益権衡1ことに解雇が企業の合理的維持増進に寄 与する度合ーーを申心に種々評価し制限すべきであると老えられたことに由来する。なお、不当労働行為の疑ある場 合で証拠上明らかでない場合を救済するという場合もあった。 この解雇権濫用の法理が近時濫用される傾向にあり、また当初この法理が高く評価された就職難琵失業の時代は去 り、経済事情が変化し、ことに若年労働者については現在では求人難が顕著であるから解雇権濫用などというのは時 代遅れであるという批判は既に数年の歴史を持つに至った。職務上の技能発揮の有無を詳細に立証しようとして延々 と続く訴訟事件ーその多くが仮処分事件iをみるとき、この見解は相当に傾聴に価する。ただ、この問題は、当 該職種と職務の社会的位置づけということに深い考慮を払いながら、特殊労働法的権利濫用の一般的前提要件という 論点と、濫用法理の社会的作用という論点において、さらに深く検討してみる必要があるように思われる。 法の、ある分野において、特に、権利濫用を認める判例が多いということがあっても、そのこと自体は何ら不当な ことではない.、それが常に十分な反省の下になされている限り、むしろそこから民法の一般条項から脱皮した新しい 判断枠組を作り出すという、法の進化を生むことにもなろう。解雇には正当事由を要するという説もこのようなもの の一つと考えてもよいが、そこでは枠組の設定が余りにもおろそかにされているため、その価値は少ないといわぎる をえない。 特殊労働法的権利濫用法理が民法の一般条項から抜け出すために必要な枠組はどのようなものであるか。これを明 らかにし、その残された部分を民法上の厳格な権利濫用論に押し戻すことによって初めて、立証責任の転換を高唱し 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 三九
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うるような特殊労働法的解雇権濫用が確立されるのである。この枠組の設定は、一方では権利濫用の実体があいまい であることによって.他方では労働事件における数多くの和解の成立によって、困難・不明確となっていることは否 めない。だからといってこの作業を一切しないというのは許されない。 この意昧において.一つの枠組として、私は.当該労働の常態的代替性というものを考えている。これは.当該労 働者の職務が何時でも他の者によウて代替できるようなものであると愚.特殊労働法的権利濫用の法理によ勢解雇が 制限できるとするものであ慕、同種労働者が他にいない場合は勿論、固定的対入関係が職務の申核をなす場合などは、 かりに同職種の労働者が他にいても常態的代替性があるとは評価されないから.民法の厳格な判例理論によ畔燈とい.噂・ ことになる。逆にこのようなものを除き.残った制限された範囲内では技能比較も容易となり.もし解雇に合理的理 由があればその立証は多分に容易であり、それ故にこそ逆に合理的理由の立証できない解雇は許きれないとする特殊 労働法的権利濫用法理が明瞭に活動しうるわけである。 この立場からみると.豊富な経験を有する国際的ピジネスマンで大変な腕利きという売込で月給五四万円という ﹁労働者﹂が一向に技能を発揮しないから解雇する.というような場合には. ﹁報告書を提出しなかった﹂、 ﹁誤ま った報告を提出した﹂. ﹁取引上会社の信頼を失墜せしめた﹂という解雇の具体的理由は.少くとも第一次的には立 証しないでよいー解雇の自由ーということになり.この場合の解雇権濫用は民法の一般原理の一部として特殊な 事情が存在することを労働者に立証きせるべきものである。また.米国の大学の大学院で言語学を専攻したもので. 会社は同人が英語教育事業の実施並びに研究開発にその能力を発揮して会社の業績に多大の貢献をすることを強く期待していたという者の解雇の場合にも、職務怠慢の具体的事情を立証しなければ解雇権の濫用となるという判断はお かしいのであり、むしろ労働者の方が権利の濫用fとくにシカーネーを立証すべきだ、ということになるであろ うQ この立場からは、特殊労働法的な解雇制限としての濫用法理は、 ﹁労働者一般﹂に適用きれるのではないというこ とになる。労働基準法九条、労働組合法三条は、いずれも労働者の定義として﹁職業の種類を問わず﹂としてへいわ ば如何に地位が高くとも労働者たりうることを明らかにしているが、 ﹁労働者一般﹂が常に同一の扱いを受けねばな らないということを要求しているのではなく、問題の類型によっては労働者の範囲が制限されるともいうべき現象が 生じても、奇異とするには足りないであろう。 このような角度から、整理解雇、懲戒解雇という、比較的研究の進んだ分野同様に個別的普通解雇の法理を明確に していくことができるのではなかろうか。 最後に、解雇権濫用法理の社会的作用をみよう。これが求人難の時代に若年労働者に対して適用されることが奇異 の念を与えることは明らかであるが、きらに、私は、労働者保護という名目の下に発展した解雇権濫用の法理は、結 局は終身雇傭のみを美徳とする観念を、労働者および社会一般に固定させ、強化させようとしていることを指摘した い。裁判所の考えをおし進めれば労働の流動性が高まること自体も余り歓迎されそうにない。ヨーロッパにおいては 労働の国際的自由化が進行しつつある時代に、終身雇傭の美徳はどこまで維持すべきであろうか。それが究極的には 労働条件の固定化を生み、解約の心理的阻止と相俊って階級的固定を生むのではないか、という疑問を感ぜぎるを得 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 四一
東 法 塗 潤二 ない。
二 米国反トラスト法の域外適用
(一) 序 購本法人は米蟹内における活動についてだけでなく.購本国内における活動についても米国反トラスト法に注意せ ねばならない鑑とがあ蒸.米国の贋家的利益がからめば.米瞬の諸機関は麟・れを反トラスト法違反とする、砿瓢臨があむ うるからである。そうして.米騒の裁判所は.欧州からの批判を浴びながらも.必ずしも国際法的正当性︵国家存亡 の危機などという超法規的なものを含めても︶の論証できない活動をもしているのである。しかも.国際法の上位規 範性を主張しても.独占に関する問題のように実体法が他の法領域に比べて不明確であり、形式的にも民事刑事行政 のからんだ領域では.どのような国際法の原理が適用されるかも明らかでないから.米国においてこれまでの先例が 大幅に変更される具体的な見込は全くない。欧州では近時その点についての警告をするものが少なくない︵代表的な ものとして醜 ⇔冨鑓ρ︾二ごδのの鑓嘗訟冒︵一窃¢も りき︾馨画⑬誘簿魯簿⑫騰驚Φ謹唇鐵む 肇O箒ご添竃馨魯簿像ゼ︾離むっo Q韓げ ≦騨錺9畦富象窪馨8ωご oΦ簿富房由①鍔審屡く○一し9窯騰碁碧やお只お8︶嚇ヵΦ︸旨欝αのび図。繍肖図欝簿R践8ユ巴の ≦鼠窯欝αqΦ躊α窃ご窪富○︸寄麟凶鐘欝寓器o窪ω︵お①“︶などがある︶。 広範な反トラスト法適用を正当化する理由としては.まず行為地を間題とするなら行為の型によっては故意に反トラスト法適用を免れるために規制の少ない国で契約をすることになろうし、また国籍を問題とすれば反トラスト法上 有利な地位を得るために、米国法人は外国法人へと逃避していくことになろう︵この種の現象と問題については、 溶ε誘a欝類こ↓訂2簿δ塁薫29ぎ3露暮す鋸︸蝉ρ酢段鷺欝霧︸器︵δ一廓び銭く沁9♪蕊も 。︵お認︶︶という消極 的なものと、米国企業の保護という積極的なものとが、自由競争促進および過度集申防止の名のもとに結びつけられ ている。 反トラスト法に基づく手続としては、いうまでもなく、私人訴訟、国家訴訟、刑事訴訟、行政手続、捜査手続など 多様のものがあるから、その手続の開始・継続、および適用すべき実体法との関係で、米国外における活動、ことに 外国法人の活動について、適用があるかどうかは一様には言えない。米国では両罰ということが一般的に受入れられ ており、会社からは巨額の罰金を取り重役は刑務所に送るという判決は珍しくない︵GE、ウニスティングハウス等 の価格協定事件を想起せよ︶。しかし、国によっては自然人のみが刑事制裁の対象となっており、また国によっては 反トラストに関して違法性の意識が不明確である、という事実も承認されており、他国がその国の企業に与えている 営業の自由を、刑事制裁によって奪うのは妥当でないという一般論も承認されているから、刑事制裁そのものについ てはさほど瀕発する虞はない。 口 二つの先例 それではまず、米国市場への悪影響という問題を扱った二つの有名な事件⋮アルコア事件と王CI事件ーをみ 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 四三
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四鷹 てみよう。 米国アルコァ社︵世界最大のアルミニゥム生産者︶はカナダにアルミニゥム・リミテドという子会社︵株主の大部 分と役員が共通で、実際の活動の本拠は米国︶を設立していたが.この子会社が、ドイツ・フランス・スイス・イギ リスの会社と共にスイス会社アリャースを設立し.このスイス会社の持株数に応じて株主各国会社の生産割当が行な われた..、その後協定を変更し.割当量を越えると超過料金をスイス会社に支払い、これを持株数に応じて分割すると いう方法が採用されるに至噛た.この行為が.特定物の製造販売につき米霞州間および園際取引を制限する違法な協 定として.﹄ ・.罰則の対象となるかどうかということが争とな輪、た.これは.米国からみ ると.協定会社が米国ヘアルミニ幽、ムを輪出すると割当生産量を超過することになり易いから.米国への輪出を制限 する方が有利となる.という性質の協定であったわけである。 裁判所は門¢あ≧。︾ぎ簿汐蕪属Oρ亀︾簿霧8黛縛蕊閏称轟鳥蔭⑪︵ド逡韓己.カナダ会社︵本店はト獄ント市︶あ ての始審令状は米国にある親会社に有効に送達されたとしたうえ、実体的には米国内への影響︵違反の効果︶があれ ばシャーマン法違反となるとし.本件では影響があるから︵これは.前述のように間接的であり.第一審は影響なし としていた︶.違反となるとした。そうして.さらに.欧州や南米における商品の供給制限は.その国と米国との 間に取引があれば、米国に影響するといえる。しかし.それら全てを違法なものとすると.国際紛争を生ぜしめるか ら、それだけである場合には適用外としておくのが安全である。即ち.反トラスト法違反とするには、米国の輪出人 に対して影響を及ぼす意図があ︵、たという証明が必要である。また.かウに米国の輪出入に影響を及ぼす意図の下になされた行為であっても、現実の影響が生じたという結果の発生がなければ違反とはならないとしている。 米国デュポン社はイギリス会社ICIとナイロン製品の世界市場を分割し、北米大陸をデュポンの、欧州を王C1 の独占的市場とし、相互に特許権の独占的実施権を与え、南米に共同の子会社を設立していたが、工C王は英国会社 ブリティシュ・ナイロン・スピナ⋮ズに一手製造権︵再実施権︶を付与していた。 裁判所は[鍔ψく.同鱒需ユ巴︵浮①簿睡8一ぎ︵ごω嘗δ930男望薯8麟︵お臼︶︵ψ口客イソ 糾8男9も℃鱒嶺 ︵這総︶︵G o・ウ客イ︶]、 米国の取引に有害な効果の及ぶのを防止することは外国の主権を侵すものではないとし、 ICIとスピナーズとの契約は米国のナイロン・ストッキング製造業者をイギリスの市場から締出したから、米国内 に作用した、として、右契約をもシャーマン法一条違反と認め、王CIに対し、侵害訴訟の制限︵これも問題があ る︶のほか、デュポンヘの特許実施権の返還を命じた。かくして、米国裁判所はイギリス法上は適法な右契約を無視 し、スピナーズから、その重要な資産である、イギリス国内でナイ・ン・ストッキングを排他的に製造する権利を奪 おうとしたのである︵イギリスにおける救済には触れないこととする︶。 日 その後の関連判決 その後においても、反トラスト法の域外適用を容易に認めようとするいくつかの判例が出ている。 テキサス居住のスチーりがメキシコで時計にブ臓ヴァの名を付して販売したことがランハム法︵商標法であって、 反トラスト法の隣接法の性格を有する︶に違反するとして、ニューヨークのブロヴァウォチ社が差止と金銭賠償を求 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 四五
瀞果 肱葎 法 漫ず 四ムハ めた事件で、地方裁判所は米国内においては違法な行為がなきれなかったと認定したが.控訴審で破棄きれた。最高 裁は[も o$Φ5<働じ ご巳○轟≦簿巳β9●も禽dも っ鵠9おωρ卜 o総︵お総己.米国の立法は.反対の立法上の意図が 明らかでない限り.米国の領域の限界を越えないが.米国は.外国または外国人の権利が侵害きれない限り、国屍が 公海上または外国でなした行為について、それを規制する権能を国際法により奪われるものでないとしている。もっ とも、米国のメキシコ国境よりの地域でスチー琴の時計が売られたことをも認定してい灘、 外国会社に対する始審令状の送達と土地管轄を容易に認める二つの事例がきらに現われた。まず.スイスで締結さ れ.スイスの事業者を大部分の構成員撫す萎カルテルに関するスぜスの時計会社の事件では7謬撫 馨爆ン爵瓢魯譲瓢忘雛 鑑も 綜蕊轡隠二黛鉱國蔑韓羅獣ご欝9㌶韓鴇ぎ糞㎞雛韓鴨⑦漕嚇聯お︵お雛﹂.アメリカにある子会社に有効に令状が送 達され.二.幽ー躍ーク南部地区裁判所の土地管轄も認められるとした︵この事件では.スイスの国策と米国反トラス ト法の抵触という.より興味深い問題点もあった︶。 次に.イタリアの自動車製造会社アルファ買メオ社が二.一ー翼ークのホフマンモーターズ社に付与していた一手販 売権を消減させたうえ.自己の子会社に安く供給したことによる灘ビンソン・パットマン法違反を理由とする損害賠 償講求事件では凹麟Φ籍簿霧鼠oε議9誉蘭ダと賦灘霧審o島 っも簿鋭博鱒禽男も っ趨噂蓼︵お濫︶︵Q 絵暗﹃P劉栢ヒ・ アルファ濃メオ社あての令状はイタリァ本社あての書留郵便で送達されたがこの方法も有効であるとされ.また、同 社は二.幽⋮濯ークで取引した等の理由によリニューヨーク南部地区裁判所の土地管轄に服するときれた。 最近において.米国市民間の民事訴訟の事例ではあるが.被告が原告を東南アジア地域での ︵台湾・タイから南
ベトナムヘの︶肥料・セメントの船舶輪送業務から追放したとの理由で損害賠償を請求した事案で電餌050留㌣ 暁畦段9ざρ∼勺働o詫8閃働増国器叶い陣旨ρ日oこ8湛男節αo o鼠︵一80 0y8辞。号温①9 090 00ωOけo o謡︵一〇8︶]、 行為地法では違法でなくとも、米国法上違法な行為は不法行為を構成しうるとした。これは、コスタリヵにおいて同 国官憲を利用してなした行為につき、行為地法を適用し、反トラスト法違反たりえないとした事件ヲ送①鼠8昌ω? 轟一峯Oρ∼q昌濤a冴鉱け○ρ︸曽o 。dωω奨︵お8︶]の老え方を変更したもので、一方が外国企業であっても同 様であろうと評されている。この事件で特に重要なのは、米国の国内市場への影響ということが何等立証されていな いということである。米国への影響は抽象的なものでよいかという、従来からの論点に一つの解答を与えているとい えるであろう。なお、判決は、南ベトナム輪入業者の資金が、米国船での輪送を条件として米国から出ているため、 市場は米国外交政策の産物であって、米国人により支配されているということをも理由として記している。
四結 び
反トラスト法は、従来の法分野の分類に従えば、民事︵一五世紀以来、不法行為法・契約法の分野から発達してき たもので、他に比べてはるかに歴史が古い︶、刑事︵米国では日本においてと異なり極めて重要である︶、行政︵手 続的には準司法的行政手続と、国家による民事訴訟手続とがある︶の各分野を包含しているから、その各側面におけ る検討とそれぞれにおける解決というものを無視することはできない。しかし、他方、これらが全体として一っの調 和を保つことにより反トラスト法の秩序が維持されるのであるということも忘れてはならないであろう9 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 四七東洋法学
鱗八 米国のこれらの判例︵ただし.はじめに紹介した四事例と他の事件︶を参考にして.も っo穿ぐ畦欝﹂出こご窪鍍9窃 同馨R轟鉱舅鉱霧溶霧砕の浮9算︵お総︶は、西ドイッの競争制限禁止法九八条二項がその適用範囲にアウスヴィルヶ ンする競争制限につき適用されるとしていることの解釈として.そのためには保護法益の侵害.国内市場への影響. 現実の作用の三つが必要だとしている。そうして.保護法益は自由競争と経済活動の自由の確保.即ち.売手の競 争の自由と買手の活動の自由︵またはその逆︶の確保であむ.圏内市場への影響とは当該商晶の当該分野において国 内市場へ影響した部分だけが違法︵無効︶であるということであり.現実の作用というのはこれらの法が予防的作用 は持沿ていないから自由優害の可能性があるだけでは規制の対象としての要件が足蔭ないという鵯とであ為としてい る。欧州系統の書物には.ほぼこれと同様の考え.またはそれ以上に域外適用を制限的に解する考えを示し.それら の線に立った国際的ルールを確立し.米国の行き過ぎ︵これは、具体的事件における判決の結論よりも.その理由づ け.および.その解釈論においてはなはだしい︶を防止したいという意向を主張しているものが多い。 ∞ 農 景品付販売の問題点 e 景表法 不当景品類及び不当表示防止法︵以下﹁景表法﹂と略称︶は、不当な顧客の誘引を防止するため必要ある場合に備 えて、昭和三七年に独占禁止法の特例法として立法されたものであって︵同法一条、三条︶.事業者が自己の供給する商品または役務の取引に付随して相手方に物品等を提供することおよび取引に関して実際のものよりも取引の相手 方に薯しく有利であると誤認される表示をすること等を規制するものである。この法律は、不当な景品や不当な表示 が氾濫した場合には、購入者に商品の選択を誤らせ、彼等にその真に欲していない商品を購入させることとなり、そ の反面かかる不当な行為をしない事業者がその顧客を失うこととなり、また不当な景晶や表示の競争を促すことにも なり、公正な競争を阻害する作用をなす、ということに着眼して立法されたものである。そこで、この法律およびそ れに基づく公正取引委員会の告示の解釈にあたっては、この立法趣旨を常に念頭におかねばならないのであって、そ の目的を逸脱して事業者の自由な広告宣伝競争を抑圧することのないように注意せねばならないのである。そうでな ければ、この法律が既存の経済力のみを温存し、競争にょる経済秩序の常時の変遷というものを否定する道具と堕し て、独禁政策上それ自体由々しきこととなってしまうであろう。このことは、景品に関して特にいえるのであって、 欺隔的表示に関していかに厳重な取締がなされようともそれ自体が独禁政策と抵触することは殆んどないのと比し ︵もっとも、この問題を独禁法またはその関連法の問題として扱うべきかどうかには疑問が投げかけられる、なお、 この種の一般問題としては、高津﹁民商法と独禁法の競合﹂公正取引二五一号参照︶、景品に関しては極めて容易に この問題を惹起するのである。景表法による排除命令は従来殆んどそのまま確定しており、審判手続が求められたの は乳酸菌飲料の事件、軽四輪自動車の事件などで数が少なく、しかも先駆的地位にある前者の事件は、法理論的には 興味ある問題を提起し、一つの解決を与えたという意味において重要な意義を有するものの︵藤堂﹁パルンの景表法 違反事件に対する審決について﹂公正取引二三六号︶、具体的事案としては争う価値の乏しいものであった︵高津 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 四九
東洋法学 五〇
﹁パルン不当景品事件﹂経済法一三号︶。 現在のところ.ある事業者はこの問題を非常に甘く考え.法の精神に真向から背いて不当な景品による顧客奪取に 躍起となっており.他方.ある事業者はこの問題を余りにも神経質に考え.景品を出すことが殆んど禁じられている かの如くに老えている。そこで.この間題について.その限界を探究する作業を少々試みてみたいと思う。 この間題は.公取委告示との関連で三つの分野に分けられる.第一は.事業者に対する景品の提供であ彗.第二 は.消費者に対する取引付随の景品提供であ蔭. .消費者に対するオープン懸賞による景品提供であ礁、 口 轡㌔ 例 ここで設例を出して、それを中心に以後の議論を進めよう。 次の行為は、独禁法または景表法に違反するであろうか。 A 玩臭である商品甲.乙.丙︵小売価格五千円∼二千円︶の製造業者の年末謝恩セールにおいて.各ニダース入 り大箱に貼付された点数カード︵それぞれ三.二.一点を表示︶を取引先の閥屋に集めきせ.合計点数一五〇点で腕 時計︵五千円相当︶.一二〇点でトランジスターラジオ︵四千円相当︶.九〇点でお仕立券付ワイシャッ︵三千円相 当︶等を提供する行為 B 雑誌社が.スーパー店頭の掲示及びチラシ、自社発行雑誌及びスーパー店雑誌への広告掲載の方法により、シ ンボルマークのペットネームを募集し、嘗製葉書にペットネーム.住所.氏名.年令.行きつけのスーパー店名を記載して応募させ、一等一名に奨学金一〇万円を提供する行為
日事業者制限
昭和四二年公取委告示第一七号﹁事業者に対する景品類の提供に関する事項の制限﹂第一項は、 ﹁別表に掲げる商 品の生産をする事業者⋮⋮は、その生産もしくは販売にかかる商品を買い受けて販売⋮⋮する事業者に対し、⋮−相 手方当事者の当該商品に係る取引高⋮⋮が自己の定める一定の基準に該当することを条件として景晶類を提供しては ならない。ただし、相手方事業者一名につき年一〇万円を超えない範囲内の景品類であって、正常な商慣習に照らし て適当と認められξものを提供する場合についてはこの限りでない﹂と規定し、別表申には、食料品、衣料品、家庭 用品、医薬品、書籍、自動車等、ほどんど全ての生活用品を掲記している。 きて、設例Aの場合においてまず考えなければならないのは、謝恩セールで予定している取引量であり、一事業者 に与えられる点数が三千点にものぼるようなものであるかどうかということが問題となる。次に、この広告主が、 ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ ヤ この企画の実施前一年間に同一の事業者に景晶類の提供をしたことがあるかどうかが問題となる。そのいずれもが否 定きれる場合には、景品の時価とそれを得るに必要な点数とを考慮すると、設例Aにおいては、同一事業者に与えら れる景品の額は年一〇万円を超えず、正常な商慣習に照らしても原則として適当と認められるものと解せられる。 それでは、商品の発売後日が浅く、はじめての謝恩セールであって、取引予定量があらかじめはっきりとはわからな いということであればどうなるか。この場合に、景品の額が一〇万円を越える論理的な可能性があるというだけで景表 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 五一東洋法学
五二 法違反となるか。そうではなく.さらに次の点を考えるべきである。即ちまず.提供予定の景最の構成が一事業者にと って巨額の景品となることが予定されているかどうかということである。設例Aでは、最高額の景贔が時価五千円相当 であり、しかもそれは一贔しかなく、次順位以下の景品も時価それぞれ四千円、三千円相当のもの一点ずつということ であるから.これらの景品により一事業者が︸○万円に近いものを受けるとすると同一景品の山に埋もれてしまうで あろう。次に.設例Aにおいて重要なことは. .決して設例に示され汰小売価格ではなく簿価格であ る︶に比して与えられる点数が低く. 、、.・不正競争秩序に影響するような顧客の誘引は通常 あり得ないということであ灘。 .景晶付販売は単に 事業者に当該商晶に対する注意を換起するにとどまり.正常な商慣行を害する虞が殆んどないといえるからである。 事業者制限告示が出きれてから後の排除命令が.腕時計の輸入総代理店に対する件︵昭和賜四年六月︶と.浴槽・ 風呂釜等に関する六社に対する件︵昭和四六年三月∼七月︶の合計七件のみであり.いずれも海外旅行という明らか に大型の景品が付され.それを得ること懲体が目的化きれるお諾・れのあるような事例であったことは.十分に念頭に おかれてよい。設例Aの場合は.取引予定量が明らかに多いというとことでなければ違反にはならないであろう。四取引付随行為
昭和三七年公取委告示第五号﹁懸賞による景晶類の提供に関する事項の制限﹂第一項本文は、懸賞により提供する 景品類の価額の最高額を.取引価額の二〇倍と金一万円のいずれか低い方とする旨規定している︵なお.取引価額が五万円以上の場合については.但書で例外が認められているが、その場合でも最高は五万円である︶。懸賞の態様を 規定する備老第一項は、当初典型的な懸賞の方法ーー取引の相手方に抽せんで券を与え、くじの方法により景品類を 提供すること等ーのみを掲げていたが、その後、懸賞の範囲に入るかどうか判断し難い態様の行為が普及したため 多くの問題が提起され、昭和四〇年の右告示の改正により次の各態様が規制の対象として追加され、規制の範囲が拡 大されることとなった。即ち、商品もしくはこれに添付した物等を提示することを応募の条件として、またはその募 集の内容が商品またはこれに添付した物に記載されている場合において、将来発生する事実、将来確定する事実その 他応募の際一般には明らかでない事実について、予想または推測を募集し、その正誤または優劣により特定の者を選 び景品類を提供すること︵六号︶、同様の方法により、宣伝文、キャッチフレーズ、感想文、絵、図案、写真その他 の作品商品名等を募集し、その優劣により特定の者を選び、景晶類を提供すること︵七号︶、がそれである、さら に、昭和四四年には、備老第二項が追加され、併用式︵半オープン式︶をも規制の対象に加えることとなった。即 ち、同一企業画において⋮⋮前項第六号から第八号までに掲げる方法と商品もしくはこれに添付した物⋮⋮を提示し ないで応募できる方法とを併用する場合であってもこれら各号の適用を妨げるものではない、とされるに至ったので ある。なお、新聞業、チ.、コレート業、写真機業、カラーテレビ業、雑誌業等においては特別の告示が定められ、新 聞業、雑誌業については緩和措置がとられている。例えば後者に関しては、昭和四四年公取委告示第十八号により、 前記告示備考第一項二号、六号、八号に該当する方法によって景品類を提供する場合には、前記告示第一項の規定に かかわらず、景品類の価額の最高額は常に一万円までが認められることになっている。前記告示備考第一項七号に定 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 五三
東洋法学 五難
める方法による懸賞については定めていないが.これをも同様の範囲まで許容するものと解する余地はある。しか し.この方法が雑誌業にふきわしくないということであれば、特甥の許容はないということになろう。 昭和四五年六月に公正取引委員会が発表したところに・φ⇔と、昭和四四年中には景品に関する排除命令は二三件. 要望書は一件.行政指導は三一〇件ということで.前記告示の前述のような改正︵追加︶と歩を同じくして、公正取 引委轟会が景晶付販売に関してかなり強い姿勢をもひて臨んでいることがうかがわれる.最近の排除命令のうち.限 界を探る意味で参考になる株式会社東美および株式会社エスマートに対す蒸件︵昭和四五年一二月命令︶では.小売 店等の販売店がクイズやアンケートの回答を募集し.応募者の申から抽せんで景品類を提供する場禽に.その応募用 紙を店内に置くことは﹁景晶付販売﹂としての規制の対象となるとされている.そこに示きれた論理の正灘性に疑問 の余地はあるが.公取委の考えを知る上で重要なものである。 設例Bの企画を見ると.自社発行雑誌に懸賞広告を掲載するわけであるが.雑誌に付されているものを提示して応 募させるわけでないことは勿論、雑誌を見なければその実質的な要領がわからない︵詳細は雑誌のみに書かれてい る︶とか.優秀な応募ができない︵答のヒントが雑誌に書かれている︶ということではなきそうである。また、 ﹁詳 しくは同誌で﹂等と広告きれているわけでもなさそうである。そうであれば.備老第一項六号、七字に規定する懸賞 の方法であるとはいえなくなり.従って備考第二項に規定する懸賞の方法であるとはいえなくなる。 次に、スーパー店との関連であるが、設例Bにおいては、企画をスーパ⋮店が発案したものでもなければ、スーパ ー店が景品を供与するわけでもないのであろうから、かりにスーパー店における広告が公道に面して行われないことがあっても、また、スーパー店雑誌にも広告が掲載されるとしても、企画者である景品供与者との取引に付随して景 品の供与が行われているものではないことは明らかで、前述の東美・エスマート事件とは行為の主体との関連におけ る性質が全く異なるのである。ただ、この企画を、現在のスーパー店の系列化の下で、ある特定の系列のス⋮パー店 だけで行うということであれば、行きつけのス⋮パー店の名称を記入させることと相挨って懸賞規制の問題となる虞 がないではない。 ㈲ オープン懸賞 取引に付随せず、一般消費者を対象として経済上の利益を提供する旨広告する、いわゆるオープン懸賞広告につい ては、新たに︵昭和四六年七月︶公取委告示﹁広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合 の不公正な取引方法﹂が定められ、昭和四六年九月一濁から実施されることとなった。これは、これまで述べてきた 景晶付販売の規制強化の延長線上の問題であるが、景表法が﹁総引に付随して﹂なす景晶について規制することを明 らかにしているため、同法に基づく指定としてではなく、独禁法二条七項により不公正な取引方法として指定された ものである。 そこでこのような告示が、独禁法と景表法の両法によって形作られている法律の秩序を乱すものではないか、即 ち、景表法が独禁法の特例として定められた基本的考え方に反し、結局法律の規定に抵触する告示となるのではない か、ということが十分に疑われうるわけである。ただ、この問題は、審決の違法を争う東京高裁の手続において初め 実務に現われた労働法・経済法︵一︶ 五五