• 検索結果がありません。

EU競争法における事業者の権利保障―欧州委員会による適正手続確保に向けた取組を中心として 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "EU競争法における事業者の権利保障―欧州委員会による適正手続確保に向けた取組を中心として 利用統計を見る"

Copied!
26
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

EU競争法における事業者の権利保障―欧州委員会に

よる適正手続確保に向けた取組を中心として

著者

多田 英明

著者別名

Tada Hideaki

雑誌名

東洋法学

58

2

ページ

21-45

発行年

2014-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006916/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

(2)

《 論    説 》

EU競争法における事業者の権利保障

――欧州委員会による適正手続確保に向けた取組を中心として

 

  

 

はじめに   欧州連合の競争法(以下、 「EU競争法」とする)の反トラスト分野の規制は、事業者・事業者団体(以下、 「事 業 者 」 と 一 括 す る ) に よ る カ ル テ ル 等 を 禁 止 す る E U 運 営 条 約 一 〇 一 条、 市 場 支 配 的 地 位 を 有 す る 事 業 者 に よ る 濫用行為を禁止する一〇二条を中心とする(以下、単に一〇一条、一〇二条とするものは、本条約のものとする) 。 E U 競 争 法 の エ ン フ ォ ー ス メ ン ト に は、 刑 事 上 の 制 裁 は 用 意 さ れ て お ら ず ( 1 ) 、 欧 州 委 員 会 に よ る 行 政 上 の 措 置 が 中 心 と な っ て い る ( 2 ) 。 す な わ ち、 両 条 の 違 反 行 為 に 対 し て は、 実 施 規 則 で あ る 理 事 会 規 則 二 〇 〇 三 年 一 号 ( 3 ) ( 以 下、 単 に 「 実 施 規 則 」 と す る ) の 下、 欧 州 委 員 会 に よ る 調 査 手 続、 決 定 手 続 を 経 て、 排 除 措 置( 七 条 )、 制 裁 金( fines ) 賦 課(二三条) 、履行強制金賦課(二四条)を命じる決定が採択され る ( 4 ) 。   E U 競 争 法 の エ ン フ ォ ー ス メ ン ト に お い て は、 違 反 行 為 者 に 対 し、 極 め て 高 額 の 制 裁 金 が 賦 課 さ れ る 点 が

(3)

特 徴 的 で あ る。 制 裁 金 に つ い て は、 違 反 行 為 を 行 っ た 事 業 者 に 対 し、 当 該 事 業 者 の 前 事 業 年 度 の 総 売 上 高 の 一 〇 % ま で の 金 額 を 賦 課 す る こ と が で き る と さ れ て お り( 実 施 規 則 二 三 条 二 項 )、 近 年 著 し く 増 大 し て い る ( 5 ) 。 欧 州 委 員 会 の 統 計 ( 6 ) に よ る と、 カ ル テ ル( 一 〇 一 条 違 反 ) に 対 す る 制 裁 金 は、 一 九 九 〇 年 ― 一 九 九 四 年 の 五 年 間 合 計 で 五 億 三 九 六 九 万 一 五 五 〇 ユ ー ロ( 約 七 五 五 億 円、 一 ユ ー ロ = 一 四 〇 円 換 算 と す る )、 一 九 九 五 年 ― 一 九 九 九 年 の 五 年 間 合 計 で 二 億 九 二 八 三 万 八 〇 〇 〇 ユ ー ロ( 約 四 一 〇 億 円 )、 二 〇 〇 〇 年 ― 二 〇 〇 四 年 の 五 年 間 合 計 で 三 四 億 六 二 六 六 万 四 一 〇 〇 ユ ー ロ( 約 四 八 四 八 億 円 )、 二 〇 〇 五 年 ― 二 〇 〇 九 年 の 五 年 間 合 計 で 九四億一四〇一万二五〇〇ユーロ(約一兆三一八〇億円)となっている。二〇一〇年 ― 二〇一四年九月三日までの 五 年 弱 の 期 間 で み て も、 八 八 億 一 七 一 六 万 二 六 七 四 ユ ー ロ( 約 一 兆 二 三 四 四 億 円 ) と な っ て お り、 特 に 二 〇 〇 〇 年 以 降 の 増 加 が 著 し い。 そ の 間 の 事 件 数( 欧 州 委 員 会 決 定 数 ) に つ い て は、 前 述 の 期 間 別 に、 一 〇 件、 一 〇 件、 三 〇 件、 三 三 件、 二 七 件 と 推 移 し て お り、 制 裁 金 額 総 額 を 単 純 に 事 件 数 で 割 っ て み て も、 一 件 あ た り に 賦 課 さ れ る 制 裁 金 額 の 増 加 傾 向 に は 変 わ り な い。 ま た、 カ ル テ ル 事 件 に お け る 個 別 の 事 業 者 に 対 す る 制 裁 金 額 上 位 に つ い て も、 二 〇 〇 八 年 の 自 動 車 ガ ラ ス 事 件 に お け る Saint Gobain 社 に 対 し て は 七 億 一 五 〇 〇 万 ユ ー ロ( 約 一 〇 〇 〇 億 円 )、 二 〇 一 二 年 の テ レ ビ・ P C 用 ブ ラ ウ ン 管 事 件 に お け る Philips 社 と LG Electronics 社 に は、 そ れ ぞ れ 七 億 五 二 九 万 六 〇 〇 〇 ユ ー ロ( 約 九 八 七 億 円 )、 六 億 八 七 五 三 万 七 〇 〇 〇 ユ ー ロ( 約 九 六 三 億 円 ) の 制 裁 金 が 賦 課 されるなど、極めて高額に上ってい る ( 7 ) 。   こ の よ うに 、 E U 競 争 法 違 反 を 理 由 に 賦 課 さ れ る制 裁 金 額 が 著 し く 高 額 化 する 中 、 E U 競 争 法 手 続 に お ける 事 業 者 の 権 利 保 障 に つ い て、 適 正 手 続 確 保 の 観 点 か ら 疑 問 が 呈 さ れ る よ う に な っ た ( 8 ) 。 施 行 規 則 二 三 条 五 項 は、 「 第 一 項、 第 二 項 に 従 い 採 択 さ れ た( 制 裁 金 賦 課 を 賦 課 す る 欧 州 委 員 会 ) 決 定 は、 刑 事 罰 と し て の 性 格 を 有 す る も の で

(4)

はない( shall not be of a criminal law nature )」とする。他方、EU全加盟国が締約 国 ( 9 ) となっている欧州人権条約 六 条 一 項 は、 「 す べ て の 者 は、 そ の 民 事 上 の 権 利 及 び 義 務 の 決 定 又 は 刑 事 上 の 罪 の 決 定 の た め、 法 律 に よ り 設 置 さ れた独立かつ公平な裁判所による妥当な期間内の公正な公開審理を受ける権利を有する。 (以下略) 」と規定してい る。 ま た、 二 〇 〇 九 年 一 二 月 に 発 効 し た リ ス ボ ン 条 約( E U 基 本 条 約 の 修 正 条 約 ) に よ り、 E U 基 本 権 憲 章( The Charter of Fundamental Rights of the European Union )がEU基本条約(EU条約、EU運営条約)と同一の法 的 価 値 を 有 す る も の と さ れ る に 至 っ た( E U 条 約 六 条 一 項 )。 か か る 状 況 の 下、 E U 競 争 法 違 反 行 為 者 に 賦 課 さ れ る 制 裁 金 額 の 高 額 化 と い う 実 態 の み な ら ず、 公 正 な 行 政 に 対 す る 権 利 を 規 定 す る E U 基 本 権 憲 章 第 四 一 条 に 照 ら し、違反行為者に対する基本権の保障という点からも、これまで以上にEU競争法のエンフォースメントにおける 適正手続の確保が要請されることとなった。   か か る 状 況 の 下、 欧 州 委 員 会 は 二 〇 一 一 年 一 〇 月、 適 正 手 続 確 保 の 要 請 に 応 え る べ く、 「 ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス・ パ ッ ケ ー ジ 」 を 公 表 し た。 同 パ ッ ケ ー ジ は、 ① 欧 州 委 員 会 に お け る 審 査 手 続 の 透 明 性 と 予 見 可 能 性 を 目 的 と す る 「 E U 運 営 条 約 一 〇 一 条 及 び 一 〇 二 条 の 手 続 実 施 に 係 る ベ ス ト プ ラ ク テ ィ ス に 関 す る 欧 州 委 員 会 告 示 」( 以 下、 「 B P 告 示 」 と す る ) )((( 、 ② 従 前 の 決 定 )(( ( を 改 正 し た「 特 定 の 競 争 法 審 理 に お け る 聴 聞 官 の 役 割 と 職 務 権 限 に 係 る 欧 州 委 員 会決定」 (以下、 「聴聞官職務権限規程」とする ) )(( ( のほか、③一〇一条・二〇一条、および合併の事例の評価におい て提出される経済証拠の取り扱いに関するスタッフワーキングペーパー「EU運営条約一〇一条・一〇二条及び企 業結合に関する事案における経済証拠の提出とデータ収集に係るベストプラクティス 」 )((( により構成される。このほ か、 欧 州 委 員 会 競 争 総 局 は 二 〇 一 二 年 三 月 二 〇 日、 欧 州 委 員 会 内 部 の 作 業 文 書 で あ る「 反 ト ラ ス ト 手 続 マ ニ ュ ア ル 」 )((( をウェブサイト上に公開した。本マニュアルは、一部作成中ながら、A四版で二七〇頁を超える大部のものと

(5)

なっている。本マニュアル公開の背景には、ブリュッセルを本拠とする弁護士と欧州委員会競争総局の元幹部職員 による公開請求を認めた二〇一一年九月二六日のオンブズマンの決定があっ た )(( ( 。   また、経済開発協力機構(OECD)の競争委員会は二〇一二年四月、 「手続上の公平と透明性に関する報告書 」 )((( (以下、 「OECD報告書」とする)を公表した。同報告書は、第三作業部会が二〇一〇年二月・六月、二〇一一年 一〇月の三度にわたり開催したラウンドテーブルおける議論、およびそれに先立ちOECD加盟各国等が提出した 文 書 )(( ( を踏まえたものであり、EUも欧州委員会における手続について、①法律、手続、政策、決定に係る透明性の 問題全般、②審査段階における透明性と手続における公平性、③最終決定段階(行政上の聴聞制度、和解手続と排 除 措 置 に 係 る 協 議 )、 ④ 司 法 審 査( 審 査 基 準、 裁 判 所 の 審 理 と 決 定 の 時 期 ) の 論 点 ご と に 自 己 評 価 し た 文 書 を 提 出 している。   以下、本稿では、BP告示と聴聞官職務権限規程を踏まえた現行の欧州委員会におけるEU競争法違反行為に対 す る 手 続 の 概 要 を 整 理 す る( 第 二 章 )。 そ の 上 で、 現 行 の 欧 州 委 員 会 手 続 に お け る 事 業 者 の 権 利 保 障 に つ い て、 適 正 手 続 確 保 の 観 点 か ら 検 討 を 行 う( 第 三 章 )。 な お、 欧 州 委 員 会 手 続 に お け る 手 続 に は、 反 ト ラ ス ト 分 野 の 競 争 法 違反行為に係るものと、合併規則の下での企業結合規制に係るものとがあるが、上述のBP告示は前者のみを対象 とするとこ ろ )(( ( 、本稿では前者に限定して検討する。

(6)

二.現行の欧州委員会における競争法違反行為に対する手続 (一)序   欧州委員会による競争法違反行為に対する手続は、実施規則、及び施行細則である欧州委員会規則二〇〇四年第 七 七 三 号 )(( ( ( 以 下、 「 施 行 細 則 」 と す る ) に 規 定 さ れ て い る )(( ( 。 現 行 の 実 施 規 則 は、 二 〇 〇 四 年 五 月 の 中 東 欧 諸 国 を 中 心とする一〇か国のEU加盟 (第五次EU拡大) を控え、 従前の実施規則 (理事会規則一九六二年一七 号 )(( ( ) を改正し、 それまでの欧州委員会がEU競争法執行の要に位置する中央集権的な執行体制から加盟国競争当局と裁判所も執行 の一翼を担う分権的執行体制への移行と、 一〇一条三項の下での個別適用免除制度の廃止を眼目とするものである。 これに加え、現行の実施規則には、EU競争法の執行における蓄積を取り込む形で、調査手続関連の規定が大幅に 拡 充 さ れ、 調 査 手 続 に 関 す る 章( 第 五 章 )、 聴 聞 手 続 と 秘 密 保 持 に 関 す る 章( 第 八 章 ) が 置 か れ た。 な お、 従 前 の 手続は、BP告示により修正されてい る )(( ( 。   次節では、第三章での検討の前提として、正式手続を経 て )(( ( 、一〇一条・一〇二条違反行為に対する最終決定(禁 止決定)採択に至る手続の流れを概観する。 (二)欧州委員会における手続の流れ   欧 州 委 員 会 の 手 続 は、 調 査 手 続( investigative stage ) と 禁 止 決 定 手 続( procedures leading to a prohibition decision ) の 二 段 階 に よ り 構 成 さ れ る。 第 一 段 階 で あ る 調 査 手 続 は、 さ ら に 初 期 評 価( initial assessment ) と 欧 州 競 争 ネ ッ ト ワ ー ク( European Competition Network 、 E C N ) 内 で の 事 案 配 分 の 段 階、 調 査 手 続 開 始 の 段 階 に 分

(7)

けられる。まず、 初期評価と事案配分の段階では、 欧州委員会は、 第三者による通報、 または職権(リーニエンシー 申請、 市場調査、 ECN等との情報交換等)により違反事実に接すると、 調査の対処範囲(対象者、 市場、 違反行為) を 暫 定 的 に 決 定 す る 初 期 評 価 を 行 い( B P 告 示 一 二 段、 以 下、 本 節 に お け る「 段 」 は 本 告 示 の も の と す る )、 E C N内での事案の配分を行う(一四段) 。   欧州委員会は、初期評価の結果、さらなる調査を続行するに足る理由があり、かつ調査の対象が十分に絞り込ま れていると考える場合には、調査手続の開始を決定する(施行規則一一条六項(以下、本節における「条」は本規 則 の も の と す る )、 お よ び 一 七 段 )。 調 査 手 続 開 始 が 決 定 さ れ る と、 最 初 の 進 捗 状 況 会 合( state of meeting ) を 経 た 上 で( 六 三 段 )、 欧 州 委 員 会 は 調 査 に 着 手 し、 対 象 事 業 者 へ の 情 報 請 求( 一 八 条 )、 ヒ ア リ ン グ( interview ) に よる供述聴取 (一九条) 、事業者への立入調査 (二〇条) 、事業者の役員等の私宅を含む事業所以外への立入調査 (二一 条)を行 う )(( ( 。欧州委員会には、秘密保持の義務が課されており、規則により入手・交換した情報、職務上の保秘義 務 の あ る そ の 他 の 情 報 を 開 示 し て は な ら ず( 二 八 条 二 項 )、 ま た 本 規 則 に よ り 収 集 し た 情 報 の 目 的 外 使 用 は 禁 止 さ れている(二八条一項) 。欧州委員会は、違反行為の挙証責任を負っており(二条) 、事業者側には自己負罪拒否特 権が認められている(規則前文二三段)が、絶対的な権利が認められているわけではなく、判例法によると、完全 な沈黙を通すことは企業の防衛権を超え、欧州委員会の業務に対する不当な妨害とな る )(( ( 。事業者には、通報を含む 欧 州 委 員 会 フ ァ イ ル の 重 要 提 出 文 書 の 公 開 版( non-confidential version ) へ の ア ク セ ス が 認 め ら れ て お り、 意 見 を 述 べ る 機 会 が 与 え ら れ る( 七 一 ― 七 四 段 )。 欧 州 委 員 会 に よ る 調 査 が 十 分 に 進 ん だ 段 階 で、 二 度 目 の 進 捗 状 況 会 合 が開催される(六三段) 。   欧州委員会は、詳細な調査の結果、当該事業者による違反行為ありとの暫定的な結論に達した場合には、当該事

(8)

業者の行為に対する異議、異議の理由、異議の根拠となる証拠について述べられた異議告知書を送付す る )(( ( 。これに より、欧州委員会における手続の第二段階である禁止決定手続が開始される。その際、欧州委員会は、構造上の措 置 を 含 む 排 除 措 置 の 内 容( 八 三 段 ) の ほ か、 制 裁 金 賦 課 を 命 ず る 意 向 に つ い て 述 べ る( 八 四 段 )。 な お、 法 的 義 務 に基づくものではないが、手続の透明性を高めるべく、異議告知書には、制裁金算定に関する事項についても盛り 込むように努めるものとする。制裁金算定に関する情報は、 異議告知書送付後に当事者に提供することもできるが、 いずれの場合も当事者には、意見提出の機会が与えられる(八五段) 。   異議告知書を受領した事業者は、書面により反論することとなるが、防御権行使のため、欧州委員会文書の閲覧 が 認 め ら れ て い る( 二 七 条 二 項 )。 ま た、 事 業 者 は、 口 頭 聴 聞 の 権 利 を 有 し、 異 議 告 知 書 に 対 す る 回 答 書 作 成 期 限 内 に 聴 聞 官 が 主 宰 す る 聴 聞 を 請 求 で き る( 二 七 条 一 項、 お よ び 一 〇 六 段 )。 口 頭 聴 聞 で は、 書 面 で 提 出 し た 主 張 を 口頭で行い、また書証を補充すること、関連する他の事項を欧州委員会に通知することも認められる。当事者は口 頭聴聞の際、 制裁金賦課にとって重要であると考える点について、 自己の主張を提出できる(九〇段) 。口頭聴聞は、 出 席 者 が 自 由 に 意 見 を 述 べ る こ と を 保 障 す る た め 非 公 開 で 行 わ れ( 一 〇 七 段 )、 事 案 担 当 班 の 欧 州 委 員 会 職 員 と と もに、競争総局長ないし総局次長が出席する。また、加盟国競争当局、チーフ・エコノミストの班、法務部を含む 欧州委員会の関連部局も聴聞官により出席を要請される(一〇八段) 。   異議告知書への回答後、または聴聞官による聴聞後、三度目の進捗状況会合が開催され、違反行為がある場合に は、 当該行為を禁止する決定が採択されるとともに(七条) 、 制裁金が賦課されることとなる(二三条二項) 。なお、 欧州委員会は、決定採択に先立ち、加盟国競争当局代表者から構成される制限的取引慣行及び支配的地位に関する 諮問委員会(

Advisory Committee on Restrictive Practices and Dominant Positi

ons

以下、

(9)

の場で加盟国当局の専門家の意見を聴取することとされており、また決定案は、欧州委員会内の経済政策担当部局 と当該事案に関する部局に照会される。なお、決定を採択する欧州委員会(二八名の欧州委員の合議体)へ提出さ れる文書には、法務部、欧州委員会の他の総局、諮問委員会より寄せられた意見が含まれ る )(( ( 。   欧州委員会決定を不服とする者は、一般裁判所へ決定取消訴訟を提起することができ(EU運営条約二六三条) 、 さらに一般裁判所判決を不服とする者は、EU司法裁判所へ上訴することが認められている(同二五六条一項) 。 (二)ベストプラクティス告示   BP告示による主要な修正点として、一.正式手続の早期開始、二.進捗状況会合の開催、三.調査段階での重 要 提 出 文 書( key submissions ) の 開 示、 四. 手 続 の 節 目 ご と の 対 外 的 公 表、 五. 和 解 手 続 の ガ イ ダ ン ス が 挙 げ ら れ る )(( ( 。   一.の正式手続の早期開始については、カルテル事件では、通常、異議告知書の採択と同時に正式手続が開始さ れるが、予備評価の段階が終了次第、正式手続を早期に開始する場合もあることが示された(二四段、以下、本節 に お け る「 段 」 は 本 告 示 の も の と す る )。 こ れ は、 従 来、 事 案 に 対 す る 調 査 が 相 当 程 度 進 ん だ 段 階 で よ う や く 正 式 手 続 が 開 始 さ れ て お り、 事 業 者 は 不 安 定 な 状 態 に 置 か れ て い る と の 批 判 が 寄 せ ら れ て い た こ と に 応 え る も の で あ る )(( ( 。   二.の進捗状況会合は、手続の重要な段階で手続の現状について、当事者に情報を提供すること、また競争総局 と 当 事 者 間 の 間 に 透 明 性 と 対 話 を 確 保 す る こ と を 目 的 と す る も の で あ り( 六 一 段 )、 競 争 総 局 長 な い し 総 局 次 長 が 議 長 と な る の が 通 例 で あ る( 六 二 段 )。 進 捗 状 況 会 合 は、 ① 手 続 の 開 始 直 後、 ② 調 査 が 十 分 に 進 ん だ 段 階、 ③ 異 議

(10)

告知書が発出された後の三度開催される。①の手続開始直後の会合では、当事者にその段階で明らかになった問題 点、予想される審査の範囲について通知し、当事者に当該問題点に初めて対応する機会を提供し、また競争総局が 続 く 審 査 の た め の 適 切 な 枠 組 み を 決 定 す る 際 の 一 助 と な る も の で あ る。 ② の 審 査 が 十 分 に 進 ん だ 段 階 の 会 合 で は、 当事者に審査後の事件の現状、明らかになった競争上の懸念について、欧州委員会の暫定的見解を理解する機会を 提供する。また、本会合は競争総局、および当事者が事件の結果に影響を与える特定の争点・事実を解明する目的 で用いられる。③の異議告知書発出後の会合は、 異議告知書に対する当事者の回答または口頭聴聞の後に開催され、 欧州委員会の本件に対する対処方針が通知される(第六三、 六四段) 。   三.の調査段階での重要提出文書の開示については、欧州委員会への申告を端緒とする事件では、欧州委員会へ の 通 報 を 含 む 重 要 提 出 文 書 ( key submissions ) の 公 開 版 を 当 事 者 に 開 示 し、 初 期 の 段 階、 な い し 遅 く と も 手 続 開 始直後に見解を表明する機会を与えることとされている(七一段) 。また、四.の手続の節目ごとの対外的公表は、 実施細則二条二項により手続開始決定を公表する旨規定されており、具体的には競争総局のウェブサイト上に公表 し、 記 者 会 見 を 行 う こ と と さ れ て い る( 二 〇 段 )。 な お、 異 議 告 知 書 発 出 時 に は、 異 議 告 知 書 の 重 要 事 項 を 表 明 す る記者会見を行い(九一段) 、決定採択時には報道発表を行うとされている(一四七段) 。 (三)聴聞官職務権限規 程 )(( (   聴聞官は、一九八二年以降の欧州委員会における反トラスト、および企業結合手続において当事者の聴聞を受け る 権 利 を 確 保 す る 上 で 鍵 と な る 対 話 者( interlocutor ) で あ り、 事 案 担 当 班 と 当 事 者 の 間 の 紛 争 で は、 独 立 し た 調 停 者( arbiter ) と し て の 役 割 を 果 た し て い る。 今 般 の 聴 聞 官 職 務 権 限 規 程 に よ り、 異 議 告 知 書 発 出 後 の 手 続 段 階

(11)

に限られていた聴聞官の役割は、調査段階と和解手続を含む手続全般に拡大された(一条二項。以下、本節の条文 は聴聞官職務権限規程のものとする) 。聴聞官は、一名ないし複数が任命され(一条一項) 、二〇一四年一二月一日 現 在、 Joos Stragier 氏 と Wouter Wils 氏 の 二 名 が 任 命 さ れ て い る )(( ( 。 聴 聞 官 は、 行 政 組 織 上 は、 競 争 政 策 担 当 欧 州 委員に直属しているが(二条二項) 、任務の遂行に当たっては独立して行動することとされている(三条一項) 。   聴聞官の任務には、一.口頭聴聞の主宰、二.手続全般における手続上の権利の効果的行使の保障、三.聴聞を 受ける権利の確保、四.欧州委員会の調査における問題への対処、五.欧州委員会文書へのアクセス権と事業者の 秘密に関する利益の保障、六.競争政策担当欧州委員への聴聞の結果と手続上の権利行使に関する報告、七.競争 政策担当欧州委員への手続から生じる問題についての意見陳述があ る )(( ( 。   このうち、二.の手続全般における手続上の権利の効果的行使の保障については、和解手続とカルテルの確約手 続 も 含 め、 当 事 者 は 自 己 の 手 続 上 の 権 利 の 実 効 的 な 行 使 に 疑 義 が あ る 場 合 に 聴 聞 官 に 接 触 す る こ と が で き る。 三. の聴聞を受ける権利の確保については、 第三者の聴聞要請(五条) 、 および口頭聴聞への参加要請の諾否の決定(六 条) 、欧州委員会文書へのアクセスに関する紛争(七条) 、および異議告知書の回答期限延長に関する紛争を巡る決 定(九条) 、口頭聴聞実施後の競争政策担当欧州委員への報告(一〇条、一四条) 、最終決定は当事者が聴聞を経た 異議のみに基づいていることの確認(一六条)が含まれる。   四.の欧州委員会の調査における問題への対処については、当事者は、①欧州委員会の要求文書が弁護士秘匿特 権( legal professional privilege )の対象であると考える場合、②欧州委員会による情報要求の回答が自己負罪特権 を侵害すると考える場合、③情報要求の回答期限が短すぎると考える場合、④手続の状況について通知されていな いと考える場合には、聴聞官へ接触し、聴聞官が紛争を仲介する。また、五.欧州委員会文書へのアクセス権の確

(12)

保については、聴聞官は、欧州委員会文書へのアクセスを巡る当事者、情報提供者、欧州委員会の間の紛争を解決 し、また事業者の秘密に関する利益の確保については、欧州委員会文書へのアクセス請求について、秘密性の利益 と事業者のアクセス権を比較衡量して決定する。このほか、欧州委員会決定公表時の秘密情報の開示についても決 定する。さらに、六.の聴聞の結果と手続上の権利行使に関する報告については、聴聞官は、聴聞の後、聴聞自体 と 手 続 全 般 に わ た る 手 続 権 行 使 に つ い て 競 争 政 策 担 当 委 員 へ 報 告 す る( 中 間 報 告 )。 ま た、 聴 聞 官 は、 最 終 決 定 採 択前に欧州委員会へ提出する最終報告書では、手続上の権利行使の尊重、および最終決定草案は当事者が聴聞を経 た異議のみに基づいているかについて証言することが求められる。聴聞官による最終報告書は、手続の当事者に対 し、欧州委員会の最終決定とともに送付され、EU官報に掲載されることとされている。 三.検討 (一)序   現 行 の 施 行 規 則 の 下 で の 欧 州 委 員 会 の 手 続 に つ い て は、 種 々 の 批 判 が 見 ら れ る。 批 判 の 根 源 は、 現 行 の 手 続 は、 刑事上の罪を決定するものであるため、独立かつ公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利を定める欧州人 権条約六条一項に適合しないのではないかという点にある。すなわち、施行規則二三条五項は、制裁金について刑 事罰ではないと規定するものの、制裁金額が高額化の一途を辿る中、実態としてみれば、欧州人権条約にいう刑事 罰金であり、六条一項に規定される手続を経た上で、制裁金が賦課されるべきであるという議論である。   こ の 点、 欧 州 人 権 裁 判 所 は、 二 〇 〇 六 年 の Jussila 事 件 判 決 に お い て、 競 争 法 違 反 事 件 は、 核 と な る 刑 事 法( the hard core of criminal law ) 違 反 事 件 と は 異 な り、 刑 事 罰 を 念 頭 に お い た 権 利 保 障 は 必 ず し も 厳 密 に 適 用 さ れ る わ

(13)

け で は な い と 判 示 し た )(( ( 。 ま た、 同 裁 判 所 は、 二 〇 一 一 年 の Menarini 事 件 判 決 に お い て、 核 と な る 刑 事 法 の 外 の あ る 場 合 に は、 事 実 問 題 と 法 律 問 題 の あ ら ゆ る 点 に つ い て 破 棄 す る 権 限 を 有 す る 司 法 組 織( a judicial body ) に 上 訴 する可能性があることを条件に、調査権限と決定権限を兼ね備えた行政や非司法組織が第一審として刑事罰を科し ても、欧州人権条約六条に適合すると判示してい る )(( ( 。   E U の 裁 判 所 判 決 に つ い て み る と、 二 〇 一 一 年 の KME Germany 事 件 E U 司 法 裁 判 所 判 決 )(( ( に お い て は、 一 般 裁 判所の欧州委員会決定に対する審査のあり方が争われた。本判決は、銅製産業用チューブのカルテルを理由に制裁 金を賦課された事業者が、欧州委員会決定(原決定)を支持した一般裁判所判決の取消を求めて上訴したものであ る。その中で、原告事業者は、一般裁判所は原決定について適切な審査をしておらず、また合理性を欠く程度まで 過剰に欧州委員会の裁量に従うことにより、欧州人権条約六条、および基本権憲章四七条に反し、実効性のある司 法的救済を提供していないと主張した。また、原告事業者のうち原決定により課徴金を賦課された Chalkor は、欧 州委員会における競争法違反行為に対する手続は、欧州人権条約にいう刑事手続であり、欧州委員会は独立かつ公 平な裁判所ではない以上、一般裁判所には、事実問題と法律問題の双方について審査が求められると主張し た )(( ( 。こ れに対し、EU司法裁判所は、EUの裁判所(一般裁判所とEU司法裁判所)は、事実問題と法律問題について審 査を行い、欧州委員会決定を取消し、また制裁金額を変更するための証拠を評価する権限を有しており、本件にお いて一般裁判所は、事実問題と法律問題について完全かつ無制限の審査を実施したと判示し た )(( ( 。   このように、欧州委員会決定については、EU裁判所がしかるべき司法機関として審査を行っており、欧州人権 条約、およびEU基本権憲章に照らして、適正手続の観点から問題はないとするのが、EU司法裁判所の見解であ る。この見解には批 判 )(( ( も見られるが、次節では、上記EUの見解に従い、EUの裁判所では適正な司法審査が確保

(14)

されているとした上で、現行の欧州委員会における手続における問題点について検討する。 (二)欧州委員会の組織上の問題   欧州委員会の組織上の問題として、①最終的な決定が二八名の委員の合議体である欧州委員会により採択される 点、②欧州委員会の案件担当班が調査、訴追、審判の役割を兼ねている点、③聴聞官が競争総局および競争政策担 当欧州委員に直属している点が批判されている。   ① の 最 終 的 な 決 定 が 合 議 体 で あ る 欧 州 委 員 会 に よ り 採 択 さ れ る 点 に つ い て、 Forrester 弁 護 士 は、 政 治 任 用 に よ る委員から構成される合議体の欧州委員会が、多数決により最終決定を採択するEUの体制は、世界の競争当局に 例を見ないものであり、採択される決定に政治的考慮が影響を与える構造的な可能性が否定できず、政治家で構成 される政治的組織が刑事的峻厳さを有する制裁 (

penalties of criminal severity

) を課す行政上の決定を行うのは望 ましくないと指摘す る )(( ( 。   この点に関連し、EU運営条約には、欧州委員は自己の任務と両立しない行動を慎まなければならず、また、各 加盟国は、委員の独立性を尊重し、委員による任務遂行に影響を与えてはならないと規定されている(二四五条) 。 他方、最終決定を採択するのは、手続上は合議体の欧州委員会ではあるが、実態を見ると、欧州委員会は事案担当 班 が 起 案 し た 最 終 決 定 案 に「 ゴ ム 印 を 押 す( rubber-stamp )」 の が 通 例 で あ る と い う 指 摘 も あ り )(( ( 、 欧 州 委 員 会 が 実 質的に最終決定案にどの程度の影響を与えているのかは定かではない。   最終決定が合議体としての欧州委員会により採択されるという批判を回避するためには、欧州委員会の役割を調 査、訴追に限定し、最終決定の採択権限を独立した司法機関へ委譲することが考えられる。EU運営条約二五七条

(15)

一項には、一般裁判所に付属する専門裁判所( specialised courts )を設置できる旨規定されており、競争法に関す る 問 題 を 扱 う 専 門 裁 判 所 の 創 設 も 可 能 で あ る )(( ( 。 し か し な が ら、 欧 州 委 員 会 が 同 条 約 二 四 九 条 に 規 定 さ れ る「 決 定 」 を採択することにより競争法違反行為に対する排除措置を命じ、制裁金を賦課するという事件処理の枠組みの見直 しは、競争法分野に留まらず、EUの統治機構、EU法体系の見直しにも繋がりうる問題であり、実現のためには EU基本条約(EU条約、EU運営条約)の改正を伴う作業が必要となる。このため、欧州委員会による最終決定 採択権限の独立した司法機関へ委譲は、競争法に関する問題を専門に扱う裁判所設置の有無にかかわらず、短期的 には実現困難なものと思われる。そうであるとすると、現在のEUの統治機構、および法体系を前提に、欧州委員 会手続における対象事業者の権利保障の方法を検討することが現実的な解決策である。その際、鍵となるのが、現 行の手続において終始主導的役割を担っている事案担当班の役割の見直しである。   ② の 欧 州 委 員 会 が 調 査、 訴 追、 審 判 の 役 割 を 兼 ね て い る と い う 指 摘 に つ い て は、 欧 州 人 権 裁 判 所 の Jussila 事 件 判 決、 お よ び Menarini 事 件 判 決 に よ り 容 認 さ れ て い る。 し か し な が ら、 Forrester 弁 護 士 は、 案 件 担 当 班 が 複 数 の役割を兼ねている現状では、調査過程で告発者としての先入観( prosecutorial bias )が生じ、欧州人権条約六条 に い う「 独 立 し た 公 平 な 裁 判 所 」 と い う 概 念 と 両 立 し な い と す る )(( ( 。 こ の 点、 欧 州 委 員 会 は、 欧 州 委 員 会 内 部 に は、 重層的なピア・レビューの体制が構築されており、ピア・レビュー・パネル( Peer Review Panels )が競争政策担 当欧州委員の了解を得て競争総局内に置かれるほか、法務部が決定案の法的問題について助言を与え、また最終決 定採択前に開催される制限的慣行委員会の場で、欧州委員会と加盟国競争当局の専門家が議論する機会が用意され て い る こ と を 挙 げ、 事 業 者 の 権 利 を 保 障 す る 体 制 が 構 築 さ れ て い る と す る )(( ( 。 し か し な が ら、 Forrester 弁 護 士 は、 制限的慣行委員会の議論は形式的なものであり、三〇年間にわたり欧州委員会決定の採択に対し反対票が投じられ

(16)

たことはないと指摘す る )(( ( 。また、欧州委員会内部のピア・レビュー体制の実態については、外部からは窺い知るこ と は で き ず、 国 際 商 業 会 議 所( International Chamber of Commerce 、 I C C ) の 報 告 書 )(( ( は、 英 国 高 等 法 院 王 座 部 首 席 裁 判 官( Lord Chief Justice ) の Gordon Hewart 卿 の 格 言 を 引 き な が ら「 正 義 は 単 に 行 わ れ て い る と い う だ け ではなく、明白かつ疑いなく行われていることが外部から見えるものではければならない」ことを指摘する。   欧州委員会の手続においては、事案担当班が事案の初期評価から最終決定案起案までを担当し、合議体の欧州委 員会が最終決定を採択する。しかしながら、欧州委員会による決定の採択が形式的なものであるとすれば、事案処 理手続において実質的な役割を担っているのは事案担当班である。現行の事案担当班の役割から最終決定案起案を 分離し、競争総局内の別の担当官が最終決定案を起案する体制を構築することができれば、問題は解消する。事案 担当班の役割の決定は、競争総局内部の問題であり、EUの統治機構、法体系を変更することなく、実現できるも のと思われる。   ③の聴聞官が、競争総局および競争政策担当欧州委員に直属している点については、BP告示、聴聞官職務権限 規 程 で も、 聴 聞 官 が 独 立 し て 職 務 を 遂 行 す る こ と が 謳 わ れ て い る( 同 告 示 七 九 段、 同 規 程 三 条 一 項 )。 し か し な が ら、聴聞官は、競争総局の一部ではないが、競争政策担当欧州委員に所属している(同規程二条二項) 。このため、 聴聞官は、事例担当班と同じ組織の下にありながら、事業者に対する手続の適切性について判断を求められ、また 対象事業者と欧州委員会の間で手続を巡る紛争が生じた場合に仲介することとされているが、職務遂行の独立性確 保という観点からは疑義がある。   聴聞官の所属について、 組織上も独立性を担保するためには、 様々な可能性が考えられる。 具体的な所属先として、 ①欧州委員会事務総長( Secretariat General )、 ②欧州委員会法務部、 ③欧州委員会委員長と競争政策担当欧州委員、

(17)

④ 欧 州 委 員 会 委 員 長 と 欧 州 委 員 会 事 務 総 長 等 が 提 案 さ れ て い る )(( ( 。 聴 聞 官 の 所 属 は、 行 政 組 織 上 の 問 題 で は あ る が、 いずれの見解も、聴聞官を欧州委員会競争総局および競争政策担当欧州委員から分離することにより聴聞官の中立 性を高めようとする点では共通している。また、組織上の独立性に留まらず、聴聞官を欧州委員会外部、すなわち 学 界、 実 務 家( 弁 護 士 )、 E U 裁 判 所・ 加 盟 国 裁 判 所 裁 判 官、 加 盟 国 競 争 当 局 職 員 か ら 選 出 す る こ と と し、 欧 州 委 員会から全く独立したものとすることも提案されてい る )(( ( 。 (三)聴聞の機会と聴聞官の役割   欧 州 委 員 会 手 続 に お け る 聴 聞 は、 聴 聞 官 の 主 宰 す る 手 続 に よ っ て 行 わ れ る が( 聴 聞 官 職 務 権 限 規 程 一 〇 条 )、 聴 聞手続については、当事者が欧州委員会に提出した書証を口頭により補足する機会に過ぎず、聴聞としての実質を 欠いていると指摘されてい る )(( ( 。この点、欧州委員会は、自己の手続において問題とされている点について、聴聞官 の役割を強化することにより対処しようとしている。すなわち、現行の聴聞官職務権限規程では、聴聞官の役割を 調 査 段 階 と 和 解 手 続 を 含 む 手 続 全 般 に 拡 大 し た 上 で( 同 一 条 二 項 )、 欧 州 委 員 会 と 対 象 事 業 者 と の 間 で 問 題 が 生 じ た場合には、当事者は聴聞官へ接触し、聴聞官が紛争を仲介することとされている。   し か し な が ら、 欧 州 委 員 会 の 手 続 に お け る 聴 聞 の 位 置 づ け そ の も の は 変 わ っ て お ら ず、 MacGregor と Gecic の 両 氏 は、 現 行 制 度 の 問 題 点 と し て、 ① 口 頭 聴 聞 に は 証 拠 法 則 ( rules of evidence ) と 事 実 認 定 手 続 を 欠 い て い る こ と、②口頭聴聞の実施時期と他の会合との関係、③聴聞官の限定的役割の三点を指摘す る )(( ( 。①については、聴聞実 施に際し、証人と専門家からの証言聴取と専門家の意見の提供に関する手続が規定されておらず、欧州委員会は聴 聞への参加を強制ないし義務づけることはできない。また、証人を尋問し、反対尋問することはできず、新たな議

(18)

論を提出することもできない。証人が自主的に口頭聴聞へ出頭したとしても、偽証に対する制裁がないため、真実 を語る義務はなく、聴聞が非公開であることもあり、証言が真実であることの担保はない。欧州委員会が、聴聞の 実質化により、対象事業者の権利保障を考えるのであれば、聴聞官の役割を強化するだけではなく、聴聞の位置づ けについても再検討した上で、聴聞手続についても別途詳細な規程を定める必要があろう。   ②の口頭聴聞の実施時期と他の会合との関係については、口頭聴聞の実施時期は手続の第二段階で行われる異議 告知書の発出後とされているが、BP告示による第一回目の進捗状況会合は、手続の第一段階である調査段階で開 催される(同告示六三段(一) )。口頭聴聞と進捗状況会合ともに証拠法則と手続的規定を欠いている以上、口頭聴 聞が聴聞官主宰の下で行われるということを除き、両者の間には差異がない。また、BP告示では、対象事業者と 欧 州 委 員 会 に 加 え、 欧 州 委 員 会 へ の 通 報 者 と 第 三 者 を 交 え た 三 者 会 合( triangular meetings ) を 例 外 的 に 開 催 す る 可 能 性 を 用 意 し て い る( 同 六 七 段 )。 三 者 会 合 は、 極 力 異 議 告 知 書 発 出 前 に 開 催 す る こ と と し て お り( 同 六 九 段 )、 正式の聴聞を代替することはできない(同六八段)とされているが、実質的には代替される可能性がある。BP告 示 に よ り、 進 捗 状 況 会 合 と 三 者 会 合 が 開 催 さ れ る こ と と な っ た の は、 事 業 者 の 権 利 保 障 に と っ て は 前 進 で あ る が、 その反面、聴聞の位置づけが不明確になった点は否めない。欧州委員会手続における会合の回数を増やすことより も、聴聞手続の実質化を図る方が事業者の権利保障の上では、有効であろう。   また、③の聴聞官の役割については、聴聞官の役割は、聴聞の主宰に留まり、意思決定者ではないため、事案に つ い て 審 理、 な い し 欧 州 委 員 会 の 最 終 決 定 を 起 案 す る こ と は で き な い。 先 に 案 件 担 当 班 の 役 割 に つ い て 述 べ た 際、 最終決定案の起案を別の担当者へ委ねる点を議論したが、組織的にも聴聞官の独立性が担保できるのであれば、聴 聞手続の実質化と合わせ、聴聞官に最終決定案の起案を委ねるという体制も考えられよう。

(19)

  このほか Forrester 弁護士は、 現在の体制を前提とした場合に、 聴聞が最終決定採択者である欧州委員会委員(特 に競争政策担当委員)不在の下で行われている点を問題点として指摘する。最終的な決定権者が聴聞に参加してい ないとすると、欧州人権条約六条一項の規定に反する可能性がある。しかしながら、現行の再度における最終決定 権 者 で あ る 欧 州 委 員 会 の 全 委 員 が 聴 聞 に 参 加 す る こ と は 現 実 的 で は な く、 競 争 政 策 担 当 欧 州 委 員 に 限 っ て み て も、 現実的ではない。このため、 少なくとも全ての事案の聴聞に競争政策担当欧州委員の官房職員が参加することとし、 極めて重要な事例については、競争政策担当欧州委員自身が出席することとする見 解 )(( ( もあるが、一考に値する。 おわりに   EU競争法は、 米国反トラスト法と並ぶ二大競争法としての地位を確立しており、 執行の任にある欧州委員会は、 二八加盟国、人口五億人超の世界最大の市場であるEU域内市場における競争秩序を維持すべく、カルテルのみな ら ず、 市 場 支 配 的 地 位 の 濫 用 行 為 な ど を 積 極 的 に 規 制 し て い る。 近 年 で は、 オ ペ レ ー テ ィ ン グ・ シ ス テ ム( O S ) とウェブ・ブラウザの抱き合わせ、OSの相互運用性情報の開示拒否などの濫用行為が問題とされた一連のマイク ロソフト社を巡る事件や、高額の制裁金が賦課されたインテル社による濫用行為が問題とされた事件など、世界の 耳目を集める事件にも果敢に取り組んできてい る )(( ( 。   また、実際の事件処理のみならず、反トラスト、企業結合分野における各種ガイドライン類の公表や、ガイドラ イン公表に至る過程で公表される文書類(グリーン・ペーパー、ホワイト・ペーパー等)においても、競争政策に 関する様々な問題意識や議論が提示され、世界各国の競争当局による競争政策立案に大きな影響を与えている。こ のほか、欧州委員会は、OECDや国際競争ネットワーク( International Competition Network 、ICN)の場に

(20)

おいても、世界の主導的競争当局として常に議論をリードしてきている。   そうであればこそ、実体規定の実効性を担保する手続についても、事業者の手続保障が確保された高い次元の制 度、規定の具備が求められる。今般の「ベストプラクティス・パッケージ」のうち、BP告示は欧州委員会におけ る手続の全段階における手続の詳細を明らかにし、また聴聞官職務権限規程は聴聞官の役割を強化するなど、欧州 委員会手続に対する批判に一定程度応えるものとなっている。しかしながら、現行の執行体制を前提とするもので あるため、聴聞官の役割自体は引き続き限定されており、対象事業者の手続保障の観点からはなおも改善すべき課 題は多い。   本稿では、欧州委員会決定の司法審査を行うEU裁判所については、欧州人権条約、およびEU基本権憲章に照 らして対象事業者の権利保障について疑義は生じないとの前提で、 欧州委員会における手続について検討を行った。 しかしながら、前述のEU司法裁判所の判決に対しては、批判も寄せられているのも事実である。EUの裁判所に よる司法審査が、欧州人権条約との関係で問題ありとなると、欧州委員会における手続にも影響を与えることとな る。また、EU条約六条二項には、EU自身が欧州人権条約の締約国となることが規定されており、欧州委員会手 続における事業者の権利保障についても、再度検討が必要である。これらの点については、稿を改めて検討するこ ととしたい。

(21)

(1)   E U 加 盟 国 の 競 争 法 に は、 英 国 競 争 法( 一 九 九 八 年 競 争 法 ) の よ う に、 違 反 行 為 者 に 刑 事 罰 を 科 す 立 法 例 も 存 在 す る。 英 国 競争法の刑事罰については、 Richard Whish & David Bailey, C o m p et iti on L a w 7 th ed. ( Oxford University Press, 2012 ) 四一〇頁 以下参照。 ( 2)   こ の ほ か、 民 事 上 の 措 置 と し て、 E U 競 争 法 違 反 行 為 の 被 害 者 は、 加 盟 国 国 内 法 に 基 づ い て 損 害 賠 償 請 求 を 行 う こ と も 可 能 であるが、 損害賠償請求訴訟の提起状況は概して低調である。欧州委員会は二〇一三年六月、 私的執行を促進し、 競争法違反行為 者 に 対 す る 損 害 賠 償 の 実 効 性 を 高 め る べ く、 競 争 法 上 の 損 害 賠 償 請 求 に 関 す る 指 令 案( Proposal for a Directive on certain rules governing actions for damages under national law for infringements of the competition law provisions of the Member States and

of the European Union

)を提出した。本提案は、 二〇一四年四月に欧州議会により承認され、 同年一一月一〇日にEU理事会(閣 僚 理 事 会 ) に よ り 承 認 さ れ た( 欧 州 委 員 会 二 〇 一 四 年 一 一 月 一 〇 日 付 プ レ ス リ リ ー ス IP14/1580 )。 本 提 案 の 解 説 と し て、 松 下 満 雄 「 競争法上の損害賠償請求に関する EU 指令案について 」 (国際商事法第四一巻第一〇号一四三七頁)がある。 (3)   Council Regulation ( EC ) No 1/2003 of 16 December 2002 on the implementation of the rules on competition laid down in

Articles 81 and 82 of the Treaty [2003] OJ L1/1.

( 4)   欧 州 委 員 会 に お け る E U 競 争 法 の 執 行 手 続 に は、 上 記 の 正 式 手 続 の ほ か、 確 約 手 続( 実 施 規 則 九 条 )、 カ ル テ ル を 対 象 と す る 和 解 手 続( settlement procedures ) も 用 意 さ れ て い る。 E U 競 争 法 の 手 続 を 詳 細 に 解 説 す る 邦 語 文 献 と し て、 井 上 朗『 E U 競 争 法の手続と実務』 (民事法研究会、 二〇〇九年) 、 池田節雄『EU独占禁止法 : その実務と対応策』 (ジェトロ、 二〇〇九年)がある。 ( 5)   欧 州 委 員 会 は、 制 裁 金 額 の 算 定 に つ い て、 二 〇 〇 六 年 に「 制 裁 金 算 定 ガ イ ド ラ イ ン 」( Guidelines on the method of setting

fines imposed pursuant to Article 23

( 2 ) a ) of Regulation No 1/2003, [2006] OJ C210/2 )を公表している。 ( 6)   欧 州 委 員 会 競 争 総 局 ウ ェ ブ サ イ ト Cartel Statistics ( http://ec.europa.eu/competition/index_en.html )。 な お、 同 統 計 に は、 EU裁判所 (EU司法裁判所、 一般裁判所) により修正された制裁金額の統計も掲げられているが、 判決が下されるまで数年を要し、 欧 州 委 員 会 決 定 時 か ら タ イ ム ラ グ が 生 じ る と こ ろ、 こ こ で は 欧 州 委 員 会 が 決 定 に よ り 賦 課 し た 統 計 を 採 用 し た。 な お、 E U 裁 判 所による修正を経ても、制裁金額が増大傾向にあることには変わりはない。

(22)

( 7)   統 計 出 所 同 上。 な お、 個 別 の 事 業 者 に 対 す る 制 裁 金 額 の 最 高 額 は、 一 〇 二 条 違 反 を 理 由 に 二 〇 〇 九 年 五 月 に イ ン テ ル 社 に 対 し て 賦 課 さ れ た 一 〇 億 六 〇 〇 〇 万 ユ ー ロ( 約 一 四 八 四 億 円 ) が 最 高 額 で あ る( http://ec.europa.eu/competition/antitrust/cases/ dec_docs/37990/37990_3581_18.pdf )。 (8)   制裁金の高額化を議論の契機とする論考として、   - Ian S. Forrester, Due process in EC competition cases: A distinguished institution with flawed procedures ( 2009 ) 34 ELRev. 817,   - J ür ge n Sc hw ar ze & R ain er B ec ht old , D efi cie nc ies in E ur op ea n C om m un ity C om pe tit ion L aw : C rit ica l a na ly sis o f c ur re nt

practice and proposals for change

Gleiss Lutz Rechtsanwälte, 2008

) ,   - Donald Slater, Sébastien Thomas, Denis Waelbroeck, Competition law proceedings before the European Commission and the

right to a fair trial: no need for reform?

Global Competition Law Centre Working Paper 04/08, College of E

urope, 2008 )   等がある。 (9)   EU条約六条二項には、 EU自身が欧州人権条約へ加盟することが規定されており、 二〇一〇年七月に加盟交渉が開始された。 加 盟 交 渉 に 関 す る 詳 細 は、 欧 州 評 議 会 ウ ェ ブ サ イ ト( http://www.coe.int/t/dghl/standardsetting/hrpolicy/Accession/de fault_ en.asp ) 参 照。 ま た、 E U 条 約 六 条 二 項 に よ る E U の 欧 州 人 権 条 約 へ の 加 盟 に よ る 反 ト ラ ス ト 手 続 へ の 影 響 に つ い て 論 じ る も の と して、

Wolfgang Weiß, Human rights and EU antitrust enforcement: news

from Lisbon ( 2011 ) 31 ECLR 186. ( 10)   C om m iss ion n oti ce o n be st pr ac tic es fo r th e co nd uc t o f p ro ce ed in gs c on ce rn in g A rti cle s 10 1 an d 10 2 T F E U [2 01 1] O J C308/06. ( 11)   D ec isio n o f 2 3 M ay 2 00 1 o n t he fu nc tio n a nd te rm s o f r efe re nc e o f t he h ea rin g o ffi ce r in ce rta in co m pe tit ion p ro ce ed in gs [2 00 1] OJ L162/21. ( 12)   Decision of 13 October 2011 on the function and terms of reference of the hearing officer in certain competition proceedings [2011] OJ L275/29.

(23)

( 13)   DG Competition Sta f Working Paper, Best Practices for the Submission of Economic Evidence and Data Collection in Cases

Concerning the Application of Articles 101 and 102 TFEU and in

Merger Cases. ( 14)   欧州委員会競争総局ウェブサイト ( http://ec.europa.eu/competition/antitrust/antitrust_manproc_3_2 012_en.pdf ) にて入手可。 ( 15)  

Ingrid Vandenborre & Thorsten Goetz, EU Competition Law Procedu

re,

2012

3 JECL & Pract 578, at 579.

( 16)   OECD Competition Committee, Procedural Fairness and Transparency, Key Points, 2012. 本報告書の主要部分の翻訳紹介と し て、 佐 藤 宏「 O E C D 競 争 委 員 会 の 競 争 法 の『 手 続 上 の 公 平 と 透 明 性 』 に 関 す る 報 告 書( 二 〇 一 二 年 )( 一 )( 二 )」 国 際 商 事 法 務第四一巻第一号一八三頁、同第二号三七四頁(二〇一三年)がある。 ( 17)  

Competition Committee, Directorate for Financial and Enterprise

A faires, OECD,   - P ro ce du ra l F air ne ss : T ra ns pa re nc y Iss ue s in C iv il an d A dm in ist ra tiv e E nfo rc em en t P ro ce ed in gs , D A F /C O M P ( 20 10 11 ( 5 October 2011 ) ( hereinafter "OECD 2010" ),   - I ns tit uti on al an d Pr oc ed ur al A sp ec ts of th e R ela tio ns hip b etw ee n C om pe tit ion A ut ho rit ies , a nd U pd ate o n D ev elo pm en ts in

Procedural fairness and Transparency, DAF/COMP

( 2011 ) 122 ( 6 July 2012 ) ( hereinafter "OECD 2011" ). ( 18)   欧州委員会は、 別途、 企業結合規制に係る手続については、 二〇〇四年一月に「合併規制手続の実施に係るベストプラクティ ス( Best Practices on the conduct of EC merger control proceedings )」 ( http://ec.europa.eu/competition/mergers/legislation/ proceedings.pdf )を公表している。 ( 19)   Commission Regulation relating to the conduct of proceedings by the Commission pursuant to Articles 81 and 82 of the EC Treaty [2004] OJ L123/18. ( 20)   こ の ほ か、 欧 州 委 員 会 へ の 通 報 の 扱 い に 関 す る 告 示、 欧 州 委 員 会 の 文 書 ア ク セ ス に 関 す る 告 示 等 も 定 め ら れ て い る。 原 文 は、 欧州委員会競争総局ウェブサイト( http://ec.europa.eu/competition/antitrust/legislation/legislati on.html )参照。 ( 21)  

Council Regulation No 17, First Regulation implementing Article

s 85 and 86 of the Treaty [1962] OJ 13/204.

( 22)   本 告 示 に よ り、 欧 州 委 員 会 に お け る 手 続 が 修 正 さ れ て い る が、 新 た な 権 利 又 は 義 務 を 創 設 す る も の で は な く、 E U 運 営 条 約、

(24)

施行規則、施行手続、EU司法裁判所判例法による権利や義務を変更するものではない(第七段)としている。 ( 23)   なお、 施行規則九条の下、 正式手続を経ずに規定される確約手続 ( commitments ) により、 事案を集結する途も用意されている。 確約手続の詳細は,前掲・井上一二三頁以下参照。 ( 24)   情報請求と立入調査における基本的権利について考察するものとして、鞠子公男 「EU競争法の情報要求と立入調査 (上) (中) (下) 」国際商事法務第四二巻第四号五〇三頁、同第五巻七〇五頁、同第六巻八六七頁(二〇一四年)がある。 ( 25)   前掲・池田九四 ― 九五頁。 ( 26)   な お、 カ ル テ ル 事 案 に つ い て は、 異 議 告 知 書 送 付 前 に、 和 解 手 続( settlement procedures ) に よ り 事 案 を 解 決 す る 途 も 用 意 されている。和解手続の詳細は、前掲・井上一三七頁以下参照。 ( 27)   OECD ( 2011 ) 122, op .c it. , p193. ( 28)   欧州委員会二〇一一年一〇月一七日付プレスリリース( IP/11/1201 )。 ( 29)   A nn e M ac G re go r & B od ga n G ec ic, D ue P ro ce ss in E U C om pe tit ion C as es F oll ow in g th e In tro du cti on o f t he N ew B es t

Practices Guidelines on Antitrust Proceedings,

2012

) 3 JECL & Pract 425, at 433.

( 30)   聴 聞 官 自 身 に よ る 聴 聞 官 の 役 割 に 関 す る も の と し て、 Wouter P.J. Wils, The Role of the Hearing Officer in Competition Proceedings before the European Commission, ( 2012 ) 35 W.Comp. 431. また、聴聞官の役割を批判的に考察するものとして、 Ben

Holles, The Hearing Officer: Thirty Years Protecting the Right to

be Heard, ( 2013 ) 36 W. Comp. 5, at 19. ( 31)   欧 州 委 員 会 競 争 総 局 ウ ェ ブ サ イ ト The Hearing Officers に よ る( http://ec.europa.eu/competition/hearing_officers/hearing_ officers.html )。 ( 32)   聴 聞 官 の 任 務 に 関 す る 記 述 は、 聴 聞 官 オ フ ィ ス の ウ ェ ブ サ イ ト( http://ec.europa.eu/competition/hearing_officers/index_ en.html )上の情報による。 ( 33)  

Jussila v Finland, App no 73053/01

( ECtHR, 23 November 2006 ) , para 43. ( 34)  

A. Menarini Diagnostics S.r.L. c. Italie App no 43509/08

EctHR, 27 September 2011

(25)

( 35)   Ju dg em en ts in C as es C -27 2/ 09 P K M E G er m an y an d O th er s v C om m iss ion [2 01 1] E C R I-12 78 9, C -38 6/ 10 P C ha lk or A E

Epexergasias Metallon [2011] ECR I-13085 and Case C-389/10 P KM

E Germany and Others v Commission [2011] ECR I-13125.

( 36)   Chalkor, para 37. ( 37)  

KME Germany, para 106.

( 38)   Ma cGrego r & G ecic , op . c it. pp. 429-432, Ulri ch Sol tész , Due Proc ess and Ju dici al Revi ew ― Mi xed Si gnals from Lux embour g in C ar te l C as es ( 20 12 32 E C LR 2 41 , I C C C om m iss ion o n C om pe tit ion , D ue P ro ce ss in E U a nt itr us t p ro ce ed in gs , D oc um en t No.225/667, 8 March 2010, pp. 2-9. ( 39)   同 氏 は 論 文 の 中 で、 ブ リ ュ ッ セ ル の 競 争 法 弁 護 士 で あ れ ば、 政 治 的 影 響 力 が 行 使 さ れ た と 思 わ れ る 複 数 の 事 例 を 列 挙 可 能 で あると述べている(八三二頁) 。 ( 40)  

MacGregor & Gecic,

op .c it. , at 437. ( 41)   Confederation of British Industry (英国産業連盟)の提案( The need for an EU Competition Court, 15 June 2006 )を素材 に競争法裁判所の創設について論じるものとして、 Arianna Anderangeli, Toward an EU Competition Court: "Article-6-Proofing"

Antitrust Proceedings before the Commision?

( 2002 ) 30 W. Comp. 595. ( 42)   Forester, op .c it. , p. 836. ( 43)   OECD 2011, op .c it. , pp. 204-206. ( 44)   Forester, op .c it. , p. 834. ( 45)   ICC, op .c it. , at para 2.1.5. ( 46)   Holles, op .c it., pp. 19-20. ( 47)   Ib id . ( 48)   Forester, op .c it. , p. 833. ( 49)  

MacGregor & Gecic,

op

. c

it.

(26)

( 50)   Holles, op .c it., pp 26-27. ( 51)   こ れ ら の 事 件 の 概 要・ 経 緯 は、 欧 州 委 員 会 競 争 総 局 ウ ェ ブ サ イ ト( http://ec.europa.eu/competition/sectors/ICT/overview_ en.html )に整理されている。 ―ただ   ひであき・法学部准教授―

参照

関連したドキュメント

ΐῌῌ

Arriba Soft Corp., ΐΐ F.Supp... Google

[r]

車両の作業用照明・ヘッド ライト・懐中電灯・LED 多機能ライトにより,夜間 における作業性を確保して

車両の作業用照明・ヘッド ライト・懐中電灯・LED 多機能ライトにより,夜間 における作業性を確保して

車両の作業用照明・ヘッド ライト・懐中電灯・LED 多機能ライトにより,夜間 における作業性を確保して

バッテリー内蔵型LED照 明を作業エリアに配備して おり,建屋内常用照明消灯 時における作業性を確保し

バッテリー内蔵型LED照 明を作業エリアに配備して おり,建屋内常用照明消灯 時における作業性を確保し