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(1)

工業技術研究所と技術者教育

著者名(日)

植田 佳典

雑誌名

工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告

34

ページ

1

発行年

2012

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002091/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

**巻頭言**

工業技術研究所と技術者教育

東洋大学理事・総合情報学部教授 植田佳典

       時代背景

 1947年から1949年に生まれた、団塊世代といわれる

806万人の大人口集団が出現し、戦後社会は団塊世代から 大きな影響を受けてきた。朝鮮戦争(1950年一1953年)特 需で好景気が続いた日本は団塊世代が中学を卒業するころ には年率10%を超える高度経済成長が始まった。彼らが 中学を卒業する1962年一1964年は高度経済成長期にあり、 地方で中学を卒業して都会で働くために故郷を後にした団 塊世代は金の卵と呼ばれ、日本経済の高度成長を下から支 えた。  団塊世代の20%前後が大学に進学しているが、文部科 学省「学校基本調査」によると、団塊第1期生が大学4年 生のときの学生数は、約118万人であり、2009年度の学 生数は、約279万人であった。進学率は約58.8%である。 同じ進学率を仮定すると、国立社会保障・人口問題研究所 の「日本の将来推計人口」(平成18年12月推計)によれ ば、2020年の学生数は250万人程度と予測される。2040 年の18歳人口は男女共に40万人を割り込むことが示され ている。  彼らが大学を卒業し社会人にとなって間もないころ、第 4次中東戦争に端を発した第1次オイルショック(1973年) に見舞われたのに続いて、第2次オイルショック(1978 年)が日本経済を覆い、高度経済成長に陰りがみられるよ うになった。しかし高度経済成長によって勢いのついた経 済は、1972年日米繊維協定に始まり鉄鋼、カラーテレビ、 自動車など日米間で貿易摩擦をもたらすが、日本は一方で は経済大国と呼ばれるようになり、経済にリードされた日 本社会は急速に変容していった。  1980年代には土地への投機と過剰な消費が実体経済と 遊離し、この現象は1990年代初頭まで続いた。山手線内 の土地価格が、全米の土地価格を上回る、とする新聞記事 が目につくようになった。1985年9月のプラザ合意以降 日本企業は円高に音をあげ、生産設備を海外に移転せざる を得なくなり、日本企業の国際化は必然となった。  牛肉を主とした畜産物、米や、かんきつ類の輸出制限問 題、東芝機械のココム違反問題などが米国で問題視され、

日本経済は長い停滞期へと突入する。1991年1月から

2002年初頭までの期間は、よく失われた10年と称され

る。  この後も、激しい競争にさらされた企業のグローバリゼ ーションは一段と進み、製造部門にとどまらず企画、サー ビスの分野に広がり、大競争時代へと深化する傾向を示し ている。         社会人としての資質  このような大競争時代の社会人に求められる資質は、も っと基本となる人間力すなわち基本的な生活習慣を身につ

けた意欲と志が重要である、とCOCNは指摘している。

また、企業人が口をそろえて必要性を認めるのがコミュニ ケーションカである。加えて哲学的な考察に裏打ちされた 確かな倫理観であり、国際性であろう。これらは国際的に 生きる社会人としての行動力を生む。  さらに、大学・大学院教育で身につけるべきことの本質 は知力ということになる。つまり幅広い知識や深い専門性、 本質をつかみ取る洞察力が重要になる。また、批判的な視 点は洞察力を深め独創性を生む。  このような能力を育てることこそが人材育成教育になる が大学の場だけではおそらく不可能であり、これこそが産 学協同のテーマであろう。

       工業技術研究所の役割

 東洋大学は東京帝国大学の哲学科を首席で卒業した、新 進気鋭の若き哲学者井上円了が1887年に設立した。2012 年には、創立125年を迎える。文学部を母体とするが現在 は総合大学へと発展しており、総合大学としての利点を有 している。工業技術研究所は1962年に工業技術研究会と して発足し、現在の工業技術研究所に至っており、川越キ ャンパスを活動の中心としている。現在は理工学部、総合 情報学部、生命科学部、法学部、社会学部、ライフデザイ ン学部、大学院に所属する専任教員が研究員として研究活 動を続けている。  川越キャンパスは設立当初から産学協同教育を掲げてお り、工業技術研究所にはその考えが現在でも脈々と流れて いる。現在もいくつかの技術者教育に関連するプロジェク トが精力的に実施されている。今後とも総合大学としての 強みを生かしながら、人材育成に積極的な姿勢を貫くこと は、東洋大学が社会から必要とされる大学であり続けるた めの、なくてはならない条件となるであろう。

一1一

工業技術No.34(2012)

参照

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