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国際環境援助協力の現状と課題(滋賀大学創立50周年記念論文集)

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国際環境援助協力の現状と課題

日 日日 寿 森 I `よ じ め に 先進国か ら途上国及 び東欧諸国への国際環境援助協力 は,1980年 代後半以降 広範 に実施 されるようになった。国際環境援助協力 は,そ れ以前 も災害救済等 の形では実施 されていた。 しか し環境破壊の影響は途上国国内にとどまってい たことか ら,先 進国の関心 は小 さ く,支 援の規模 も大 きくはなかった。 ところ が,チ ェルノブイリ原子力発電所事故や東欧諸国での環境汚染による越境汚染, オゾ ン層破壊や地球温暖化等の地球環境問題,熱 帯林破壊 と砂漠化 による生物 多様性の喪失等の問題が拡大するにつれ,先 進国は途上国の環境問題が 自国の 利益や環境 に直接影響 をもた らす と認識するようになった。同時に,先 進国は 途上国の経済発展のために供与 して きた開発援助が,か えって途上国の環境破 壊 を引 き起 こ して きた との批半Jも受けるようになって きた。 そ こで先進国は持続可能な発展 を可能にするために,開 発援助 を2つ の方向 で改革 して きた。 1つ は,受 取国の環境保全 を促進するための事業やプログラ ム,援 助機関の新設である。 このことにより,受 取国での環境基金の設立 を含 む環境政策の発展,環 境政策手段 としての経済的手段の利用の促進,環 境産業 の発展 と環境保全技術 の普及 ・開発が期待 された。他の 1つ は,環 境 アセスメ ン ト制度の導入や環境 に重大な影響 を及ぼす事業への資金支援の中止等,通 常 の開発援助事業 をより環境 に配慮 した ものにしたことである。そ して同時に技 術支援 を行 うことにより,受 取国の環境 アセスメン ト能力が強化 されると期待 ネ本稿は,(財 )村田学術振興財団助成 「アジア途上国の事例研究に基づ く国際環境援助の 再検討 ( 助成番号9 7 1 2 0 1 ) 」の研究成果の一部である。

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1 9 2 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) された。 これ ら2つ の方向は, ともに途上国の環境保全 を支援するとい う点 に おいて共通 してお り,従 って国際環境援助協力 とは,通 常 この両者 を含めた も の を指す。 そ もそ も対外 開発援助 は,受 取国の経済発展 を目的 として実施 されて きた。 このため,供 与国の援助 目的 と受取国の発展要求 とは基本的に矛盾 しないこと が前提 とされていた。 しか し構造調整融資等,必 ず しも両者の目的が一致せず, かつ供与国が受取国の合意遵守 に向けての努力 を明示的には観察で きない よう な援助 も行われるようになった。こうした形態の援助では,受 取国が合意遵守 のための努力 を行 わない誘因を持つため,供 与国の期待する援助の効果や持続 性 は確保 されに くい (森,1995)。 この点で国際環境援助協力 は,受 取国が経済成長 に重点 を置 く限 り,先 進国 の関心や援助の 目的 と受取国のそれ とは基本的に合致 しない。 しか も上記のよ うに,国 際援助協力が主 に先進国の利益や関心か ら実施 されて きた となれば, なお さらである。このため,国 際環境援助協力には,環 境 コンディショナリテイ の要素が含 まれ ざるを得 ない。つ ま り,環 境保全事業への資金支援 には,支 援 が有効 に機能するための枠組み作 りが要求 される。また開発援助事業 に環境 ア セスメン ト要件が導入 されると,資 金配分上の条件 (al10cative condidonality) が課 されることになる。これ らのコンディシ ョナ リテ イは,受 取国の関心や利 益 と一致する場合 には,受 取国の環境政策の改革 を大 きく後押 しするであろう。 しか し援助の目標 について供与国 と受取国の間で関心や利害 に対立が生 じると, 受取国は環境保全 のための努力 を行 う誘因を失い,供 与 された資金や技術 も効 果的には利用 されな くなる (Fairman and Ross,1996)。この意味で,国 際環 境援助協力が途上国の環境保全 に資す るためには,受 取国の環境保全への関心 をいかに向上 させて供与国の援助 目的に合致 させ るか,そ して受取国の環境保 全への努力 をいかに引 き出すかが,重 要な課題 となる。 そ こで本稿では,こ れまで国際的な環境援助協力が どの ように実際 され,そ れが受取国の持続可能な発展 に向けた努力 をどの ように引 き出 して きたのかを 概観する。その上で,現 在環境管理能力 を強化 させ ようとしている途上国に対

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国際環境援助協力の現状 と課題 193 して, 日本 はどの ような国際環境援助協力 を実施すべ きかを考察する。 工 対 外援助事業による環境破壊の防止 1.対 外援助事業への環境アセスメン トの導入 政府開発援助 に環境面の配慮が行 われるようになったのは,1970年 代後半の アメ リカが最初である。アメリカでは1969年に国家環境政策法が制定 され,国 内の開発事業 には環境 アセスメン トの実施が義務づけられていた。 しか し対外 援助事業 には適用 されていなかったことか ら,国 内の環境保護団体がその海外 適用 を求めて裁判 を起 こした。この結果援助庁 は対外援助事業の環境影響 を評 価 し,議 会 に対する報告義務 を負 うことになった。 その後1980年代半ばまでに,援 助供与国の多 くは対外援助事業に対する環境 アセス メ ン トを義務化 していった。 しか し導入当初は,住 民参加はほとんどな く,意 味のある代替案は考慮 されず,ア セスメン トの結果が事業実施の決定に 影響 を与えない等,環 境アセスメン トは必ず しも有効 に機能 したわけではなかっ た (Kennedy,1988)。 このため,開 発援助事業 による環境破壊 はな くならな かつた。そこで先進国の環境保護団体 を中心 に,開 発援助への反対運動が急速 に広がっていった。 この動 きに対応 して,援 助供与国は,ま ず受取国自身が環 境 アセスメ ン トを実施で きる制度 を構築するために,環 境立法や環境 アセスメ ン ト法の導入 を要求 し,そ のための技術支援 プログラムを実施 した。そ して OECDは 1985年及び86年に全加盟国に対外援助事業への環境 アセスメン ト手続 きの導入 を勧告 し,1992年 には開発援助マニュアルや環境 アセスメン トの好事 例集を発行 して,供 与国にその質的な一致 (coherence)を勧告 してきた (OECD, 1992;1997)。 この結果,世 界銀行等の国際開発金融機関や 日本の援助機関で も環境 アセスメ ン ト手続 きが導入 され,制 度 も少 しずつ改善 されてきたそ とは云え,各 国の援助機関の間には,環 境 アセスメン トの手続 きにも,そ の 1)OECDの 勧告 だけが 日本の援助機関や世界銀行 に環境 アセスメン ト手続 きを導入 させた 要因ではない。対外援助事業 による環境破壊 を巡 る国内外 での激 しい論争 もまた導入 を促

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1 9 4 滋 賀大学創立5 0 周年記念論文集 ( 第3 2 1 号) の 結果 を意思決定 に反映 させ るのを保証する制度 にも,厳 然たる相違がある (森, 1996)。まず 日本の援助機関 と世界銀行の環境 アセスメン ト制度では,「何 もし ない」 を含 む複数の代替案 を作成する義務がな く,ま た住民 との間の合意形成 を受取国政府の責任 とする等,ア メリカ援助庁の制度 と比較すると,環 境 アセ 3 ) スメン トの科学性や民主性 を保証するための手続 きが不十分である。 これは日 本 の援助機関や世界銀行が,開 発援助 に関 して借 り手 (受取国)責 任 を原則 と していることに帰因する。次 に世界銀行では,問 題 プロジェク トに対するNGOs のキャンペー ンヘの対応 として審査パネルが設置 され,不 十分 な手続 きの下で 実施 された環境 アセスメン トに対 して,受 取国の関係者が異議 を申 し立てる制 4 ) 度が確立 された。 しか し日本の援助機関にはこの制度 も整備 されていない。 この ように日本の援助機関では,環 境 アセスメン トの手続 きも,そ の結果 を 意思決定 に反映す る制度 も,ア メ リカ援助庁や世界銀行 と比較すると,整 備が 遅れている。 ここには供与国の国内の環境政策の進展 と,援 助機関を管理する 統治構造の相違が反映 されている と考 えられる。 2.環 境アセスメン ト制度の限界 援助機関が事業の立案時 にどんなに十分 な科学性 と民主性 を備 えた環境 アセ スメン トの実施 を要件 とした として も,途 上国で実施 される全ての開発事業で 環境 や社会的側面への影響が十分 に考慮 されるわけではない。第 1に ,援 助機 関の実施能力が十分でないか もしれない。援助機関には環境問題や環境 アセス メ ン ト手続 きを理解 し,そ の技能 を持つ人材が少 ないか もしれない。また仮 に そ うした人材が多 くいた として も,予 算消化のために多数の事業 を立案する圧 2)こ の比較 は,OECFが 1997年か ら適用 した新たな環境配慮のためのガイ ドラインを対象 として行 つた ものであるが,環 境 アセスメ ン ト手続 きは,初 期のガイ ドラインと比較す る と,か な り改善 されている。初期のガイ ドラインを対象 とした主要 7ケ 国の国際比較 につ いては,「環境 ・持続社会」研究セ ンター (1996)を参照 されたい。 3)こ の点 について世界銀行 は,受 取国に住民参加の技能や経済分析能力がない場合や,資 金支援の要請前 に受取国が事業の選定や企画等の投資決定 を既 に行 っている場合 には,十 分 な住民参加や代替案の検討がで きない ことを認めている (Worid Bank,1997b)。 4)審 査パ ネルの最初の 4年 間の実績 と課題 については,川 村 (1999)及びUmana(1998) を参照 されたい。

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国際環境援助協力の現状と課題 195 カがかか り,さ らに 1つ のポス トヘの在任期間が短い場合 には,業 績評価 に占 める事業評価の重要性 は小 さくなるため,援 助事業の環境影響 を十分 に検討す る誘因は小 さ くなる。 第 2に ,特 定の地域で複数の事業 を連続的に実施する場合や,同 一分野の中 で複数の事業 を実施す る場合 には,個 別事業条件 に対する環境 アセスメン トの みでは,十 分 な影響評価や代替案の作成は困難である。十分 な影響評価や代替 案の作成のためには,開 発政策や地域計画の立案段階で環境影響 を評価 し,意 思決定 に統合す ることが不可欠 となる。また事業案作成の際には,環 境要件の みでな く経済的ない し社会的要件 も考慮 される必要があるが,そ れ らが互いに 矛盾する場合 には,環 境要件や社会的要件 は無視 されがちになる。これを避け るためには,政 策やプログラムの立案段階で経済 ・社会 ・環境の統合的なアセ スメン トが実施 される必要がある (Scholten and Post,1999)。しか し供与国 が受取国の政策やプログラム等,個 別事業条件の より上流段階か らのアセスメ ン トを実施 しようとするほど,受 取国は内政干渉 と受け取 り,資 金支援その も のを拒否するであろう。 このため政策アセスメン トや地域 アセスメン トは,ア メ リカ援助庁 と世界銀行で しか実施 されてお らず,そ れ も部門調整融資や複数 のサブプロジェク トを含 む事業への支援 に限定 されている。 第 3に ,途 上国政府が政府開発援助か らの資金調達 をやめることで,環 境 ア セスメン ト要件 を骨抜 きにする可能性がある。途上国政府は,民 間資金の利用 可能性が高 まるにつれて,収 益性の高い分野のインフラの整備 を,従 来の政府 開発援助ではな く,民 間部門か ら資金 を調達 して実施する民活方式で行 うよう になって きた。民活方式では,途 上国政府は事業 を実施する民間企業 に新設 さ れる設備の所有権 と一定期 間の運営権 を譲渡するものの,代 わ りに民間企業は 自らの リス クで資金 を調達 し,事 業か らの収益 を得 なければならない。このた め途上国政府 にとっては,追 加的な財政負担 を行 うことな く,収 益性の高い分 5 ) 野 の設備 が整備 され る こ とが期待 された。 5 ) し か し現実には,事 業を成立 させるために,途 上国政府は為替変動 リスクや需要リスク の保証を行っていることが多い。このため通貨危機のように事業を取 りまく環境が大 き/

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196 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) 民活方式では,基 本的には資金は民間部門か ら調達 される。このため当該途 上国が設定 した環境 アセスメン ト手続 きを実施 しさえすれば,政 府開発援助の 環境 アセスメン ト要件 をクリア しな くて も,開 発事業 を実施することがで きる。 このため,当 該途上国の環境 アセスメン ト手続 きが十分 な科学性 と民主性 を備 えた ものなければ,仮 に環境 アセスメン トが実施 されて も,環 境面や社会的影 響 は十分 には検討 され考慮 されることはない。 また資金が先進国の輸出信用機 関や国際金融公社 (IFC)か らも調達 されている場合で も,対 外援助事業 と同 等の科学性 と民主性 を備 えた環境 アセスメ ン トの実施 と意思決定 は期待で きな い。それ らの機関では,必 ず しも各国の援助機関ほど透明性が高 くかつ厳格 な 環境 アセスメン ト制度が適用 されているわけではないためである (森,1998a)。 これ らの点は,途 上国の環境保全 を促進するためには,援 助機関が十分 な科 学性 と民主性 を備 えた環境 アセスメ ン ト手続 きを導入 し,そ の結果 を意思決定 に反映 させるだけでは限界があることを示 している。途上国の環境 を直接保全 す る事業や,そ の事業の効果 を持続 させ るような制度的,技 術的枠組みを構築 す るための支援が,同 時 に必要 とされる。 田 途 上国の環境保全に対する支援 1日 債務 ・環境 スワップ と政策ベース融資 途上国の環境保全のための資金支援 は,対 外援助 に環境 アセスメン ト手続 き が適用 されたの と同 じ時期 に開始 された。最初 に実施 したのはアメリカであつ たが,初 期 には国内の環境保全運動 を反映 して,農 業での紋虫剤管理のための 支援が中心であった。 しか し実際の事業では,農 業支援 に環境保全が うまく統 合 されなかったために,環 境保全の効果はあま り見 られなかった。そこで環境 保全事業の重点 は次第 に国立公 園の設立 ・管理へ とシフ トしていった (Ivory, 1992)。 途上国への環境保全のための支援が活発 になったのは,熱 帯林破壊 と生態系 \く変化 した場合には,政 府は事後的には自らの信用による借入 と同等かそれ以上の財政負 担 を迫 られることになる。詳 しくは,森 (1998b)を参照されたい。

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196 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) 民活方式では,基 本的には資金は民間部門か ら調達 される。このため当該途 上国が設定 した環境 アセスメン ト手続 きを実施 しさえすれば,政 府開発援助の 環境 アセスメン ト要件 をクリア しな くて も,開 発事業 を実施することがで きる。 このため,当 該途上国の環境 アセスメン ト手続 きが十分 な科学性 と民主性 を備 えた ものなければ,仮 に環境 アセスメン トが実施 されて も,環 境面や社会的影 響 は十分 には検討 され考慮 されることはない。 また資金が先進国の輸出信用機 関や国際金融公社 (IFC)か らも調達 されている場合で も,対 外援助事業 と同 等の科学性 と民主性 を備 えた環境 アセスメ ン トの実施 と意思決定 は期待で きな い。それ らの機関では,必 ず しも各国の援助機関ほど透明性が高 くかつ厳格 な 環境 アセスメン ト制度が適用 されているわけではないためである (森,1998a)。 これ らの点は,途 上国の環境保全 を促進するためには,援 助機関が十分 な科 学性 と民主性 を備 えた環境 アセスメ ン ト手続 きを導入 し,そ の結果 を意思決定 に反映 させるだけでは限界があることを示 している。途上国の環境 を直接保全 す る事業や,そ の事業の効果 を持続 させ るような制度的,技 術的枠組みを構築 す るための支援が,同 時 に必要 とされる。 田 途 上国の環境保全に対する支援 1日 債務 ・環境 スワップ と政策ベース融資 途上国の環境保全のための資金支援 は,対 外援助 に環境 アセスメン ト手続 き が適用 されたの と同 じ時期 に開始 された。最初 に実施 したのはアメリカであつ たが,初 期 には国内の環境保全運動 を反映 して,農 業での紋虫剤管理のための 支援が中心であった。 しか し実際の事業では,農 業支援 に環境保全が うまく統 合 されなかったために,環 境保全の効果はあま り見 られなかった。そこで環境 保全事業の重点 は次第 に国立公 園の設立 ・管理へ とシフ トしていった (Ivory, 1992)。 途上国への環境保全のための支援が活発 になったのは,熱 帯林破壊 と生態系 \く変化 した場合には,政 府は事後的には自らの信用による借入 と同等かそれ以上の財政負 担 を迫 られることになる。詳 しくは,森 (1998b)を参照されたい。

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国際環境援助協力の現状 と課題 破壊の急速 な進行が先進国にも広 く認識 されるようになって以降のことであっ た。1980年代 に累積債務危機が発生 して以降,途 上国は商品作物の輸出を拡大 したが,こ の結果熱帯林破壊や 自然資源の破壊が加速化 した。 このことが先進 国の環境NGOsの 危機感 を高め,従 来 までの小規模 の熱帯林保全事業 を超 えた 取 り組みの必要性 を認識 させ た。そこでワシン トンに本部 を置 く環境NGOsが 主導 して,債 務 ・環境ス ワップとい う熱帯林保全のための新 たな支援の枠組み を構築 し,こ れを用いて途上国政府 に環境基金 を設立 し,あ るいは途上国の環 境NGOsに 資金 を供与 して,熱 帯林保全のための国立公 園を設立 したと この方 式 は,途 上国政府や環境NGOsに 設立 された国立公園の所有権 を譲渡 した点で, 供与国の利益誘導や受取 国の主権侵害への懸念 を払拭す ることには成功 した (Sarkar,1994)。しか し熱帯林保全 とい う目標 については,必 ず しも満足 な 結果が得 られたわけではなか った。資金規模があま りにも小 さかったことか ら 資金 は債券価格 の低 い一部の途上国に集中 し,ま た国立公園が設立 されて も, 公 園や周辺の緩衝地では森林伐採が進行することも多かった。 そこで1988年以降になる と,供 与国政府が債務 ・環境スワップを主導するよ うになった。つ ま り供与国は自ら保有する公 的債権 を放棄することを通 じて, 受取国が環境保全事業 を追加的に実施するのを支援 しようとして きた。この方 式 は,一 方で環境NGOs主 導の もの よ りも多 くの対外債務の削減,そ して環境 保全のための資金供与 を 「可能」 に した。 しか し供与国は受取国に環境支出の 増大 を必ず しも遵守 させ ることはで きなかった。環境NGOs主 導の もの とは異 な り,環 境基金等の新たな資金供与のための制度が構築 されたわけではな く, また途上国の環境NGOsに 新 たな保全事業 を主導す るための資金 を供与 したわ けで もなかったか らである。そ こでアメリカは,現 地通貨の一定書J合を環境支 出のための基金 として預託することや,放 棄する債務の権利 を持 ち続けること 6)債 務 ・環境 ス ワップ とは,ま ず先進国の環境NGOsが 民 間企業の途上国向け債権 を市場 で割 り引かれた価格で購入 し,そ れ を当該途上国政府 に持 ち込 んで額面で国内通貨 に交換 し,そ の額の全部又 は一部 を途上国政府 ない し途上国の環境NGOsに 環境保全のために利 用 して もらうとい う枠組みである。 この ことによ り,先 進国の環境NGOsは 少 ない資金で 多 くの環境改善の便益 を期待 で き,途 上国は対外債務削減の便益が得 られた。

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1 9 8 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) で,環 境保全事業 の監視 メカニズ ムヘ の参加 を制度化 し,受 取 国の コ ミッ トを 確保 しようとした (Cord,1996)。 しか し債務 ・環境スワ ップの実施数は,1990_92年をピークに減少 して きて いる。ブレイデ ィ ・プランの実施や債務危機の終息 に伴 って途上国債務の市場 価格が上昇 し,債 務 ・環境スワップの実施 に必要な資金額が増大 したためであ る。そこで登場 したのが,新 規の資金支援 と引換 えに受取国の環境政策や経済 政策の変更 を要求する,政 策ベースの貸付である。具体的には,森 林政策の変 更 を条件 とした森林保全事業への支援や国際収支支援が挙 げ られる。 これ らのコンディシ ョナ リテイは,受 取国政府の関心 に合致 した場合 には, 受取国の政策改革 を強力に支援 し,環 境改善に大 きく貢献 してきた。例 えばフイ リピンに対する森林部門調整融資 は,政 権交代 により改革 を支持するグループ が政権 を握 っていたことが,融 資の受け入れ と,供 与機関が条件 とした森林政 の 策の変更 に大 きく貢献 したとされる。対照的にイン ドネシアでは,コ ンディショ ナ リテ イは支配的な政治勢力の権益 に悪影響 を及ぼ しうるもの とされ,か つ他 の供与国か ら無条件で資金供与 を受 けられたことか ら,部 門調整融資の受け入 れその ものを拒否 された (Ross,1996)。 2日 環境管理計画の作成への支援 これ らの経験 は,先 進国か らの支援が受取国の環境保全事業や環境 に悪影響 を及ぼす政策の変更 を促す には,受 取国自身の環境保全へ に対する関心の向上 と環境管理能力の構築が不可欠であることを明 らかに した。そこで国連環境開 発会議でアジェンダ21が採択 され,国 別の環境政策の作成が提言 されると,世 界銀行 はその無償資金の受取国に,無 償資金供与の適格の更新 を条件 にして国 D 家環境行動計画の作成 を促 して きた。 7 ) も っ ともフィリピンの場合で も, 巨 額の資金供与の一方で, 長 期管理の誘因を持つ植林 委託契約 を締結で きなか った こと, 対 象地域の住民か らの十分 な支持が得 られなかったこ とか ら, 植 林事業その ものは必ず しも成功 したわけではなかった ( K o r t e n , 1 9 9 4 ) 。 8 ) 世 界銀行が環境行動計画の作成 を条件 に したのは, 受 取国の環境管理能力が強化 されれ ば, 世 界銀行の設走 した手続 きを踏 まえて受取国 自身が環境 アセスメン トを実施で きる/

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国際環境援助協力の現状と課題 1 9 9 しか し世界銀行主導の国家環境行動計画の作成 は,現 在 までの ところ,受 取 国の環境管理能力の強化 に必ず しも貢献 しているわけではない。第 1に ,受 取 国によっては他 の供与国か らの支援 で既 に環境戦略 を構築 していた。 このため 世界銀行が新 たな戦略の作成 を促 して も,重 複する戦略 を作成するだけで,受 取国に自ら実行すべ きとい う所有意識が芽生 えなかった (World Bank,1996)。 第 2に ,対 処すべ き環境問題の優先度が必ず しも明確 な根拠 に基づいて確定 さ れたわけではなかった (Lampietti and Subramanian,1995)。これは被害額 の貨幣推計が一部の環境被害について しかで きないこと,そ れ も信頼できるデー タの欠如か ら正確 な推計がで きないことが一義的な要因ではある。 しか し作成 は多 くの場合国際 コンサルタン トを雇用 して行 われたため,受 取国の戦略作成 能力が活用 され,強 化 されたわけではなかった。 しか も優先順位 の決定は途上 国の少数の官僚 と世界銀行 のス タッフとで行 われたことか ら,地 域住民の参加 は排除 され, より地域 に密着 した情報 に基づいた計画 とはならなかった (鷲見, 1994)。最後 に,計 画では環境問題の解決 を環境政策の枠 内だけで考 え,開 発 の問題 として捉 えなかった。この結果,作 成 された計画は,経 済成長 を優先す る受取国ほ ど,持 続性 を持 ちえなかった (Larson,1994)。 3.環 境管理能力の強化への支援 一 東欧諸国への支援の経験一 他方東欧諸国への国際環境援助では,受 取国の環境管理能力の強化のための 技術支援 によ り焦点が当て られていた。 まず途上国 と同様 の環境基金が設立 さ れたが,財 源は債務 ,環境スワップによる資金供与ではな く,課 徴金や燃料税 の 等の経済的手段 を導入 し,自 ら国内で徴収することで調達 された。 もっともそ の使途 については,明 確 な環境戦略や資金配分のための優先順位や基準がな く, 予算審議 を受 けないために意思決定過程が不透明であつたことか ら,費 用効果 的で ない事業 に配分 された り,十 分 な事業選定が行 われない ことも多か った \ため,借 り手国責任 を堅持できること,ま た受取国自身の優先順位に従つて環境保全事業 への融資が行える等,世 界銀行にもメリットがあるためと考えられる。 9)た だ しポーラン ドの環境基金のみは,パ リクラブの枠組みの中で実施された債権放棄 ・ 交換 によつて設立 された。

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2 0 0 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) ( A n d e r s o n a n d Z y l i c z , 1 9 9 5 ) 。また使 途 を長期 にわた り特定化 す る こ とで, 全体 と しての財政支 出配分 が非効率 になる こ とも懸念 された (Lovel,1995)。 そ こで途上 国 と同様 に,国 家環境 管理計画 の作成 を通 じた制度 能力 の強化 が 必 要 とされた。 もっ とも東 欧諸 国 に対 しては計 画の作成 その ものの支援 で はな く,環 境 汚染 の実態調査へ の技術 支援 が 中心 に行 われた。 しか し優先 的 に調査 を行 う分野 につ いては,供 与 国 と受取 国 との間で必 ず しも一致 してい るわけで は な く,ま た戦略 は必 ず しも両者 の共通 の理解 に基づ いて確定 されたわけで は なか った。 しか も供与 された技術 支援 は,調 査 のみが対象 とされで,具 体 的 な 環境保全事業に結びつかないと批判 されてきた (Conn01ly,Gutner and Beda述, 1996)。 そ こで供与国は,受 取国への環境保全事業の発掘や形成への支援 を強化する ことで,潜 在的借 り手 と国際開発金融機関 との橋渡 しを促進するようになった (U.S.GAO,1994)。 そ して世界銀行 も東欧諸国の環境保全のための行動計 画 を自ら作成 し,そ の優先順位 に基づいて具体的な環境保全事業に対する支援 を行 うようになって きた (World Bank,1997a)。 4口 日本の国際環境援助の現状 この ように日本や世界銀行以外 の援助機関は,環 境保全事業への資金供与に はあ ま り積極 的ではなかった。 これは多 くの供与国の環境ODAが 無償資金で 占め られ,ま た受取国の末端処理装置の運転や維持管理への関心や能力 に高い 懸念 を持 っていたことか ら,小 規模のパ イロッ ト的な環境保全事業や,受 取国 の環境政策の発展のための支援 に焦点 を絞 って きたためである。 対照的に 日本 は,1980年 代後半以降資金面での援助協力 を拡充 して きた。こ れは主 に 3つ の要因がある (Cameron,1996)。 1つ は国際会議での環境ODA 増額 の公約である。 日本 はまず1989年のアルシュサ ミッ トで環境ODAの 増大 目標 を打 ち出 した。 これは1980年代後半以降の 日本の大幅な国際収支黒字への 国際的な批判 を回避す るために打 ち出 された資金還流論の一部 と見ることがで きる (柳原,1992)。 そ して1992年に国連環境 開発会議が開催 されると,環 境

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国際環境援助協力の現状と課題 201 0 D A の 供 与額 の さ らな る増大 を国際公 約 し,か つ新 設 され た地球環境 基 金 に も積極 的 に出資 した。 2 つ め は,中 国の環境汚染 の悪化 とその 日本へ の影響 の 懸念 である。1997年の国連環境開発特別総会で 日本 は 「21世紀 に向けた環境開 発支援構想」 (ISD)を 公表 したが,こ の重要 な要素 として,中 国か らの酸性 雨対策 を念頭 に置いた東 アジアの酸性雨のモニタリング ・ネ ッ トワークの構築 や環境情報のネ ッ トワークの構築が盛 り込 まれた。最後の要因は,温 暖化防止 会議が京都で開催 されたことである。 このことか ら,日 本の環境援助は,他 の供与国 と対照的 とも云 える特徴 を持 つ。 1つ め は,円 借款 を環境ODAに も適用 していることである。 これは,従 来の 日本 の対外援助 の支柱 であった とされる 「自助努力」の考 えを,環 境分野 にもそのまま適用 した と見 ることがで きる。 2つ めの特徴 は, 日本の持つ環境 保全技術 の移転 を促進するための資金支援の割合が高いことである。具体的に は,政 府が管理する上下水道,排 煙脱硫装置等の公害防止施設,環 境モニタリ ング技術 の移転が挙 げ られる。 この背景 には,要 請主義 ・内政不干渉の原則が 拳 げ られる。つ ま りこのアプローチ を取れば,受 取国の政策や政治に直接影響 を与 えることな く途上国の環境保全 を行い うると考 えて きた と云 うことがで き る。実際受取国の環境政策の発展のための支援 は,国 際開発金融機関 との協調 融資で しか実施 してこなかった。そ して環境援助の対象国を,長 年の援助支援 の実績のある東 アジアの相対的に所得の高い国に限定することで,移 転 された 環境保全技術 の運転や維持管理 に関する懸念 を払拭 しようとして きたと見 るこ とがで きる。 しか し日本 の環境ODAは ,仮 に環境保全技術 の移転その ものに成功 した と して も,途 上国の環境 を改善することを保証するものではない。受取国が移転 された環境保全技術 を活用 し,発 展 させて環境保全 を行 うための制度や社会 シ ステムを構築する誘因を与 えていないためである。例 えばタイヘの環境モニ タ リング技術 の移転事業では,環 境省の環境モニタリング能力 を向上 させ,自 ら 環境 モニ タリングを行 うことで環境政策 を発展 させることを目標 としていた。 しか し文化的 ・社会的背景の相違 を克服することはで きず,環 境政策の発展 は

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2 0 2 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) お ろか,環 境 モニ タ リング能力 の向上す ら困難 であ った (松岡他 ,1998)。 ま た公 害 防止施設 の設置 や下水 道整備へ の支援 で も,日 本 か らは末端処理技術 に よる汚染物質 の削減方法 の 1つ が移転 されただけで,政 府 や地方 自治体 ,周 辺 住 民等 の外 部 の機 関 に よる社会 的 な環境 管理 システムの構築 は支援 されたわけ で は なか った。 この ため汚染者 に排 出削減 の誘 因 を持 たせ る こ とはで きなか っ た (森,1999)。 しか も移転 され た環境保全技術 の運転 ・管理技術 は必 ず しも 現 地 で利 用 で きる もので はな く, しか も人材 の研修 が必 要 とされ るため,先 進 国か らの追加 的 な技術 支援 が なければ,十 分 な維持管理 はな されないか もしれ ない 。 この こ とは, 日本 の環境ODAは ,現 在 の ままの形態 で行 われ る限 り, 途 上 国の環境保全 には有効 に利用 されず,そ の対外 累積債務 を増大 させ るだけ に終 わる こ とを示唆 してい る。 Ⅳ 東 アジアの環境管理能力の強化 こうした中で,東 アジアの中にはアジェング21の作成 を契機 に,自 ら主導 し て国内の環境の状況 を把握 し,適 切 な管理 を行 うための法規制や制度 を整備す る国 も現れて きた。 これは1980年代後半以降に急速 な工業化 を実現する反面, 工業化や都市化の進展 による環境破壊が深刻化 し,無 視で きな くなったためで ある。 これ らの国々では,1980年 代 までは,工 業化 を推進するために土地利用 規制 を導入せず,ま た外資誘致のために大幅な優遇税制 を導入 したために工業 化 の進展 に比較 して財政収入が伸 びなかったことか ら,環 境汚染 に対応する措 置 をほ とん ど採 れず にいた (森,1997)。 しか し1990年代 になって工業化の進 展が顕著 になる と,外 資優遇措置 を見直す一方で,環 境管理のための行財政 シ ステムの強化 にも着手 した。 もっとも,全 ての国が同 じ環境管理戦略 を立案 し実施 して きたわけではない。 例 えばマ レーシアは,州 政府 に一定の権限を与 える連邦制 を取 りなが ら,州 政 府や地方 自治体 の行政能力不足 と 「規模 の経済性」か ら,排 水処理 と産業廃棄 物処理 に関 しては連邦政府が権限を持 ち,実 際の建設や運営 を民間企業に委託 す る方式で環境管理 を行 っている。

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国際環境援助協力の現状と課題 2 0 3 対 照 的 に タイで は, 中 央集権 シス テム を取 りなが ら地方分権化 を通 じた地方 自治体 の環境 管理 能力 の強化 に よ り, 環 境行 政 を強化 しようと して きた。つ ま り中央 政府が環境汚染 の著 しい地域 を指定 し, そ の地域 の環境改善 を, 新 設 さ れた環境基金か らの資金 を用いなが ら優先的に行 うとい うものである。 しか し タイで も,県 政府や地方 自治体の環境管理能力は決 して十分 とは云 えず,そ の ため汚染物質規制地域 に指定 されたサム トプラカーン県やパ タヤ特別市で も, 実質的には中央政府 の環境管理局が,水 汚染管理 に関わる業務,即 ち下水道整 備事業の設計,用 地選定,資 金調達,建 設,運 営 ・維持管理か ら,環 境モニタ リングや排水課徴金の導入 に対する社会的合意形成 に至るまで全て行 っている (Mori,1999b)。 その中でバ ンコク都のみは,工 場以外 の汚染者 による水質汚染や 自動車公害 に主導的に対応す る等,環 境管理能力 を強化 し,環 境行政の実効性 も高めつつ ある。バ ンコク都で これを行 えるのは,一 義的にはその地方行政上の特殊 な位 置づ けに帰 因す る。 しか し同時 に,中 央政府の支持 を背景 に,環 境モニタリン グや,発 生源調査,違 反汚染者 に対す る罰則適用等 を自ら主導 して環境管理能 力 を向上 させて きたことも看過で きない。実際環境管理局 は,共 同調査 を実施 す る等バ ンコク都 の環境管理能力の強化 を全面的に支援 し,そ して自らの規制 立案や執行権限 も徐 々に移譲 して きている。 こうしたタイの環境管理能力の強化 プロセスは,日 本,特 に大阪府で経験 し た ものに類似 している (Mo五,1999a)。 つ ま り日本で も,1967年 の公害対策 基本法では中央政府は,環 境汚染の著 しい地域での公害防止計画の策定 とその 事業費の補助害J合の嵩上げによ り,公 害防止 を推進 しようとした。 しか し計画 の内容 は,下 水道等の公共部門による末端処理技術の導入 に依存するもので し かな く,汚 染者 に排出抑制の誘因を持 たせ るものではなかった。その中で汚染 の著 しい地域の地方 自治体 は,通 産省や厚生省か らの支援 を受 けなが ら,発 生 源調査 や疫学調査 を進め,発 生源か らの汚染物質の排出量,環 境汚染,物 的及 び健康被害の間の因果関係 を科学的に解明 していった。この因果関係 に基づい て大阪府や四 日市市では総量規制 を導入 し,環 境基準 を達成するために必要な

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2 0 4 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) 汚染物 質削減量 と, そ のため に不可欠 な代 替 的技術情報 を汚染者 に提示 した。 この こ とが汚染者 に排 出抑制 の誘 因 を与 え, そ の後 の急速 な環境 汚染 の減少 を もた らした。そ こで公害裁判で汚染排出企業が敗訴するようになると,中 央政 府 はこの環境管理方式 を他 の工業地帯 を抱 える大都市 に適用 していつた。 この 結果 日本 の主要な工業都市での環境汚染 は減少 していった。 もっ ともタイでは,総 量規制 は一部の工業国地で導入が検討 されているだけ で,そ れ以外 の工業団地や地域では検討す らされていない。またバ ンコク都 と 他 の県や地方 自治体 との地方行政上の位置の格差 を考慮すると,日 本 とは異な り,バ ンコク都で実施 された調査や環境管理能力の強化の方法が他 の地方 自治 体 に適用可能である とは限 らない。 しか しタイで も,国 全体の環境管理能力の 強化 のために,法 規制の執行 の地方分権化 と汚染者 による環境汚染の立証責任 の法制化が議論 され始めている。そこで 日本の環境管理能力の強化の経験 は, 環境法規制の実効性 の向上 と環境政策の発展のための枠組みを再構築す る新 し い基本条件 を創出 した もの として,タ イが環境管理能力 を強化 してい く際の参 考 となるか もしれない。 ただ しこの 日本の環境管理能力の強化の経験 は,無 条件 に国際環境援助協力 を実施する際のモデル とはならないか もしれない。経済成長や所得向上 との両 立が確保 されなければ,受 取国に経済的な便益 をもた らさ可能性が高いか らで ある。実際大阪で総量規制が受け入れ られたのは,汚 染者たる企業が公害防止 投資,特 に設備の更新や効率化 を伴 う投資か ら高い利潤 を得 られたことが背景 にあった。 しか も国全体 として既成都市地域か ら他地域への工業分散化 を政策 的に推進 していたことか ら,総 量規制は当時の経済政策 とあま り矛盾するもの とはならなかった。 10)Weidner(1995)に よれば,伝 統的な規制 による政策手段 を実効的なものに した 「枠組 み」 とは,日 本の文脈 では,公 害防止協定 に代表 される規制執行の分権化,監 視 ・報告制 度,無 過失責任や立証責任の転換等の 「法的武器」が相 当す る とされる。

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国際環境援助協力の現状と課題 V 日 本 の国際環境 援助協力の将来 と課題 現在の途上国では,一 部の大都市地域 を除 くと,日 本で総量規制が受け入れ られたの と同 じ条件 を期待するのは困難であろう。 しか も円借款で供与 される 環境保全技術 は,必 ず しも受取国にとつて費用効率的で技術 的にも維持管理が 容易 なもの とは限 らない。それはまず予算消化要求 と 「融資可能」 な事業の発 掘 の困難 さとい う援助機 関側の事情 か ら,排 煙脱硫装置,上 下水道,廃 棄物処 理等の比較的規模の大 きな末端処理技術 の移転が選ばれがちなためである。そ して供与 される環境保全技術 は,汚 染削減の費用効率性 よりも緊急性が重視 さ れた 日本の環境政策の文脈の中で開発 されたことを反映 して,必 ず しも途上国 の環境汚染 を費用効率的に削減するようには設計 されていない。つ ま り円借款 による環境ODAは ,長 期 的 に も利益 を生む可能性 は低 く,む しろ受取国の対 外債務負担 を増大 させ るか もしれない。実際 この ことへ の懸念か ら,受 取国は 円借款 による環境ODAへ の支援要請 を減少 させている。 このことか ら日本の援助機関は,供 与国 としての主導性 を強めて きた。具体 的には,有 償資金協力促進調査制度 を創設 して環境保全事業 を積極的に発掘 し, また環境特別金利 を設定 して受取国の環境保全事業の受入れを容易 に しようと して きた。 しか し環境政策の発展 と経済成長 とが両立する領域が明 らかにされ, それ を担保す る条件が示 されなければ,供 与国の主導性 を強めて も,環 境円借 款 の受入れが容易 になるわけではない。 それを両立 させ るための 1つ の鍵 は,支 援 を通 じて汚染者や社会全体の環境 保全へ の関心 をどの ように高め られるか にある。例 えば,環 境保全事業の実施 が,受 取国が汚染者 に排 出削減や環境破壊の緩和の誘因を与 える社会 システム を構築する契機 となれば,政 府 は末端処理技術の導入に関わる財政負担 を減少 させ ることがで き,か つ生産プロセスの改善やクリーナープロダクシ ョンを行 う企業 によ り多 くの利潤獲得の機会 を提供で きるであろう。 ここには日本の経 験が活か される分野 もあるか もしれない。そ うでなければ,日 本の国内で実際 に環境政策 を導入 して両立の条件 を実証するか,他 の供与国や国際開発機関,

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2 0 6 滋 賀大学創立50周年記念論文集 (第321号) 受 取 国 との共 同研 究 に基づ いて明 らか に し,よ り費用効率 的で受 け入 れ可能 な 環境 保 全 戦略 を作 成す る こ とが不可欠 となる。 そ して もう 1つ の鍵 は,国 際環境援助協力 を地域住民の所得や生活水準の向 上 といかに運関 させ られるかにある。これは環境保全事業の効果の持続性 を確 保するため も,不 可欠 となって きている。そこでOECDが 新 たな開発戦略 を打 ち出 したのを契機 に, 日本で も開発援助 によって貧困緩和,教 育水準 と医療水 準 の向上,環 境改善 をどの ように効率的にない し包括的に達成するかが検討 さ れるようになった (OECD,1996)。 その中で,地 域の持続的な環境資源の利 用が不可欠であること,そ してそのためには,地 域 レベルでの貧困の解消,地 域 による自然資源のコン トロールの強化,地 域の組織 ・制度 。人材の強化等 に 対 しての支援が不可欠であることは指摘 されている (国際協力事業団,1998)。 しか し三井情報開発総合研究所 (1999)に もあるように,こ れらの分野の発展 を開発援助 を通 じて どの ように統合的に促 してい くかは,必 ず しも十分 に定量 的 に検討 されているわけではなぶ告 しか し国際環境援助協力 にも費用効率性 と持続性が要求 され,環 境保全技術 も末端処理型か ら生産技術 に組み込 まれた ものが主流 になるにつれて,国 際環 境援助協力 は今後 ます ます経済成長や貧困緩和,社 会開発 との両立が求められ るようになるであろう。 これを可能にする社会システムが提案 され,組 み込 ま れれば,国 際環境援助協力 は受取国の環境保全のみでな く,そ の真の経済発展 に貢献するもの とな り,受 取国にも喜んで受 け入れ られるものになると考えら れる。 1 1 ) こ れは 1 つ には, 途 上国の環境分野への公的支出データの利用制約のために,国 際環境 援助協力が受取国政府の財政構造 に及ぼす効果 を定量的に推計で きず,従 って受取国政府 の行動の変化 を通 じて もた らされる環境改善の効果 を検討で きないことが要因である。そ して また, 環 境 クズネ ッツ仮説で環境指標が悪化か ら改善 に向か うとされる 「転換点」は 汚染物質 によって異 な り, か つ多 くの国ではまだ 「転換点」 と推計 されている所得水準 を 超 えていない こ とか ら, 環 境汚染の指標 と所得水準や他の社会的分野の指標 との間の関係 を定量的に推計で きない ことも, 要 因 とされる。

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The Features and Challenges of Environmental Aid

Akihisa Mori

This paper studies the environmental technology transfer to developing countries, which is essential for global environmental management in the

process of industriahzation. It constructs the global environmenta1 0正 )A flows database and finds the features of」apanese environmenta1 0DA based on international comparison: Japan attaches much more importance on the transfer of environmental technology and little on the development of environmental policy and management systern in recipient countries. This feature partly reflects 」apanese approach to foreign assistancei avoidance of policy intervention and emphasis on the concept of self― effort. But it also signifies transferred technology does not utilize fully for environmental management 、 vithout the firm coHllnitrnent of recipient government and social environmental management capacity building。

The case study 、 vork in Thalland finds one condition to sustainable environmental technology transferi integration of environmenta1 0DA pro」ect and/or technology transfer to the creation of the environmental manage― ment system.For successful integration,」 apan should propose a social environmental management system and show how well it works in」 apan and/or recipient countries, and contributes to the sustainable development.

参照

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5月18日, 本学と協定を結んでいる蘇州大学 (中国) の創 立100周年記念式典が行われ, 同大学からの招待により,本

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 1999年にアルコール依存から立ち直るための施設として中国四国地方

平成 30 年度は児童センターの設立 30 周年という節目であった。 4 月の児―センまつり

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