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2つの図書館

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Academic year: 2021

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滋 賀 大 学 附 属 図 書 館 情 報

宮寓 24 壕 計

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THE SHttGA UNttVERSttTY L]BRARY BULLETttN

発行 平 成 13年 10月 15日

編集

滋 賀 大 学 附属 図書 館

2つ

の 図 書 館

似 て非なるものの典型 とでもいえるのが 2つ の図書 館、すなわち電子 図書館 と従来 の蔵書 図書館 である。 何が似ているか といえば、情報 (図書)を 収集 し、保 管 し、組織化 し、必要 とされている情報を利用者に提 供 す る機 関 とい う意 味 で両者 に共通 す る ものが あ る。そのためネ ッ トワー ク上に分散 して存在 している ディジタル化された情報を対象 としたシステムに対 し ても電子 「図書館」 とい う名称が与えられたのであろ う。 しか し2つ の図書館が利用者 にもた らす ものは根 本的に異なっている、 と思 う。 附属 図書館において も電子図書館的機能を もった各 種サー ビスが充実 し始めた。今春 よ り電子ジヤーナル の トライアルを実施 したが、その結果、膨大な学術情 報を、迅速極 ま りない速 さで検索 し、冊子体の学術雑 誌同様 のイメー ジで入手できるよ うになった。その う え これ らの ことが、いつでも、 どこか らでもできるよ うになった ことはつ くづ くあ りがたい と実感 させ られ る。そ していよいよ今年度 よ り、本格的に電子 ジヤー ナル を導入す る ことができる段 階 までい きそ うであ る。巷間でも紙媒体の書物でな く、ネッ ト上か ら 「推 理小説」な どをダウンロー ドさせて販売する動きにみ られるように、出版界のみな らず世を挙げて書物の電 子化をめざす波が押 し寄せている。 しか し、とあえて言いたい。電子図書館的機能を推進 す る重要 さはよ くわか っているが、 これによって蔵書 図書館の果 たす役割がいささかでも軽ん じられ るもの ではない ことをはっき りさせておきたい。 また同時に 両者が どのよ うな点で異質であ り、 どうすれば共存で きるのかを理解 してお くことは とても大切であろう。 われわれ (とりわけ学生)が 図書館を利用するとき 2つ の 目的があると思 う。経済学者、内田義彦は 『読 書 と社会科学』 (岩波書店)の なかで,「読書」には大

別 して 2つ の利用があるとい う。 1つ は必要な情報を 得 るための読書であ り、 もうひ とつは情報を うけ とる 眼を養 うための読書である。 これを大学図書館が果た す役割 と置き換 えてみるとわか りやすい。 その 1つ は 「情報を得 るため」の図書館の役割であ る。附属図書館の重点計画でも授業用参考図書を充実 させて 「学習図書館」 としての役割を果 たす ことを強 調 しているが、 これは学生に とって、思考や問題解決 に有用な情報を得 るための図書整備をするとい うこと である。電子 ジヤーナル導入をは じめ とした電子図書 館化にむけた多 くの取 り組み もこの趣 旨に沿 ったもの である。 この結果、調べ ものの ときは、まず コンピュー タ端末の前に座るとい う習慣は学生にとってもはや常 識 となってお り、 これまでの学習スタイル とは一変 し た風景がみ られているのである。 しか し私が,い配 しているのは、学生に限 らず、 この 時代の大学図書館を 「情報提供サー ビス機関」 として とらえる風潮が とても強 くなってきているとい うこと である。 どれだけ情報に通 じていても、また他人 と競 り合 え る情報を持 っていても、必ず しもこの時代を生きぬけ る とは限 らない。情報 とは、本来的には物理的刺激 と しての情報な どはな く、われわれを とりま く情報の海 の中か ら意味を追いかける主体が形成されては じめて 情報 と名づけ られ る価値が生 じるものなのである。情 報化社会 といわれ る時代 にあ って最 も大切 な こ とは、 内田のい う P情報を うけ とる眼を養 う」ことであろう。 換言すれば氾濫する情報に押 し流 されずに 自分の視点 にもとづ く 「概念装置」をもった人間を形成すること が とても大切 だと考えている。 したが つて図書館 の第 2の 役割 とは、 自分 をみつ め社会を見通す 「概念装置」を形成す る支援をす るこ ― -1-―

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と、そのために図書館がなすべきことは、 目前の用の ための 「情報」を提供す ることだけではな く、利用者 に とって生涯を員 く 「自分 自身の言葉」を創 りだすよ うな支援をす ることだ と思 う。そ して自分 とは何なの かを 見出す言葉に出会えるような図書館作 りを しなけ ればな らないのである。 しか し、 自分を見出す言葉 と いっても、電子図書館の検索機能で ヒッ トしたものを 読めばす ぐに見つかるな どとい うものではない。 「自 分の 言葉」 とは多 くの場合、検索語 として分類 される よ うな情報ではない。む しろ非情報的なもの とさえい えるような ものである。 われわれの若 き時代に読んだ本のなかで、確かに今 の 自分に力を及ぼ していると思われるものを思い起 こ してもらいたい。その本の情報的な もの (あらす じや 主人公の名前や語 った言葉な ど)は 頭に残 っていない が、 どんな雰囲気の人物であったのかは残 っているも のだ。あるいは、その ときの 自分の感激や、何に悩ん でいたのか とか、主人公の行動イメー ジ、場合によっ ては読んだ本の装丁の具合 (どんなデザインの表紙で あったか、 レイアウ トや紙魚のつ きかたな ど)な どは 鮮明に蘇 ることが多いであろ う。 これ らはわれわれの 心 に沈殿 している非情報的なものであって、 このよう な沈殿 された ものがず っ しりと重 く堆積す る ことに よってわれわれ 自身の「情報を うけ とめる眼を養 って」 い るのであろう。 われわれは困難 を前 に した場合、「情報 によ って」 物事を判断 している と思 っているか もしれないが、思 いのほか非情報的な沈殿物をかきまわ しなが ら目下の 判断を しているのか も しれない。先に述べた 「自分の 言葉」 な るもの も、情報 としての ことばであるよ り は、かたちにな らないイメージ として自分に対 してだ け迫 って くる言葉である とい うこともできる。「自分 の言葉」を見つけることができるのは読書ばか りでは ない ことは当然であるが、少な くとも他人の言葉か ら 自らの想像力を通 じて、 自分を確かめ、納得すること のできる場は読書以外を考えた とき日常生活において それほ ど多 くはない。 しか も、「自分の言葉」を見つける作業は、誰も代わ っ てや って くれるものでもな く、 自分か ら始めなければ 何事 も始 まらないわけである し、図書館や書店にはあ れほ どた くさんの本があっても 「自分の言葉」を見出 せ る本 と出合 えるか どうかはまった くわか らない、 と い う効率の悪さである。その うえ 1冊 や 2冊 出会 った くらいでは事足 りず、何十年 と湯水を浴びせ るように 続けなければ、変化の兆 しす ら見えて こない。 これは 思えば気が滅入 りそ うな道程である。 この作業を遂行 するためには、まだまだ困難が待ち構えている。現代 の よ うに誰 もが何かに追われていて多忙ななかでは、 1冊 の本を読む時 間を確保 す る ことさえままな らな い。勉強や仕事以外のための読書時間を確保す るため に、 どれだけの工夫 と努力が必要かは、誰 もが痛感 し ていることであろう。 にもかかわ らず、そ うした困難を打ち破 らなければ、 自分を見出 し、 自分 の言葉 を自lりだす営み は衰弱 し、 萎えて しまう時代に生 きているのである。図書館はこ うした昔境に立たされている学生をは じめ市民の味方 になっていかねばな らないのだ と思 う。 こう考えてみると、図書館はこれまで以上に従来の 蔵書図書館の大切 さをあ らためて見直すべ きなのだ と 思 う。すなわ ち、「概念装置」を形成 した り 「自分の 言葉」を見出す ことに関 しては、た とえ見事に電子図 書館化されたとして も、それだけではほ とん ど無力で あ り、蔵書型図書館をもっと充実させてい くしかない のである。 このように述べ ると、従来の冊子体書物は今後ます ます電子本 としてディジタル化 してい くのだか ら、そ のコレクシ ョンに力を入れればいいのだ、そのメリッ トのほ うが大きい、 とい う意見が聞 こえて くる。 しか しそれは読む人間の ことを考えていない議論だろうと 思 う。 少な くとも現段階では、モニ ターデ ィスプレイに表 れ る情報は、 目前の何かの役に立つ ことが明白な情報 に限 られるのではないだろうか。モニ ター (監視)と い う名前に象徴 されるように、 ここに表示 されるもの は最終結果ではな く、加工中の 1つ の過程を 「監視」 しているだけなのだ。だか ら、最新の成果を表示する 必要のある学術情報や料理の レシピ、あるいはしょっ ちゅう変わる列車 ダイヤな ど、一時的に必要な情報や 変幻 自在に融解 して表示 してもよい情報、すなわち人 間の記憶 に沈殿 させる必要のない情報を表示するには 適 した装置なのである。 しか し、前にも述べたよ うに、「概念装置」を形成 するための読書に とっては、ただ 「情報」だけをむき 出 しに して呈示 した としても、読む人間に とっての「意 味Jにつなが らなければ直ちに忘却 され るだけである。 書籍は重 く、場所を とり、紙魚がつきやすい欠点を もっているが、その欠点が逆に、一冊 ごとに異なる書 物の固有の表情 として立ち現れ、いま読んでいる自分 の有 りようや、読んでいる場所や時間の有 りようとと もに、ページをめ くる、 とい う能動的な行為 と結びつ き、生涯を通 じて人間の記憶 として刻 まれることを指 摘 しておきたい。 (附属図書館教育学部分館長 こ ん どう ふ みよ し)

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