80 (16) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
ヤ トウ セイ ジ谷藤誠司(昭和2
医学博士「 点画1094号平成2年5月18日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
脳膿瘍に関する研究 一特に脳膿瘍の形成過程と治療について一 (主査)教授 丸山 勝一 (副査)教授 小林 損雄,串田つゆ香論 文 内 容 の 要 旨
目的 CTにより脳膿瘍の形成過程を発症から膿瘍の消退 及び治癒まで経時的にとらえ,脳膿瘍の治療法選択に 関与する因子を膿瘍期,膿瘍の大きさなどを中心に検 討した. 対象および方法 CT導入以来経験した症例のうち経時的に観察でき た63例の脳膿瘍を対象とし,①CT stage分類,②術前 CT所見,③膿瘍の大きさ,④抗生物質の投与期間,⑤ 脳圧降下薬使用の有無,⑥ステロイド療法,および⑦ 意識障害の程度のそれぞれについて治療成績との関連 を検討した. 結果 1)63例の初回CTにおける膿瘍形成期は早期脳炎 期2例,晩期脳炎期35例,早期被膜形成期23例,晩期 被膜形成期3例であり,CT上脳炎期から被膜形成期 に移行する時期は発症から2~3週間であった. 2)脳膿瘍の大きさとしては径3ないし4cmが外科 療法もしくは保存療法の選択の境界値である. 3)穿刺排膿術は49例に86回施行したが,膿瘍の平均 的大きさは約4cmで,早期被膜形成期に施行したのが 61回約71%で最も多かった.初回穿刺膿術時の大きさ は41例約83%が3cm以上であった. 4)初回穿刺排膿術で縮小しない症例や保存療法中 増大の認められる症例に対しては,抗生物質の膿瘍被 膜内洗浄や注入が有効であった. 5)被膜形成期で,抗生物質の長期投与,あるいは穿 刺排膿術により膿瘍の縮小が得られない7例11.1%に 対して二次的被膜外摘出術を行った, 6)脳膿瘍の消退までの抗生物質の投与期間は,保存 療法も外科療法もともに平均7週間を要した.また細 菌培養で嫌気性菌の検出が約42%と嫌気性菌の増加が 認められた. 7)抗浮腫薬としてのステロイドは半昏睡以上の意 識障害のある患者に使用した. 結論 1)早期脳炎期では,外科的適応はなく保存療法を行 うべきである.また晩期脳炎期も同様保存療法による べきで,穿刺排膿術の適応はない.・しかし脳室に接し ているものや巨大で頭蓋内圧充進による高度意識障害 がある例では早期に穿刺排膿術の必要性がある. 2)早期被膜形成期では,4cm以上あれぽ意識障害 の有無に関わらず早期に穿刺排膿術の適応がある.ま た,意識障害が軽度で1~2週間の抗生物質の投与後 3cm以上の場合は穿刺排膿術の適応がある.3cm以下 であれば保存療法とする. 3)晩期被膜形成期では,3cm以上の場合には穿刺 排膿術の適応がある.しかし3cm以下であり,意識障 害や神経欠落症状がない場合は保存療法で十分であ る. 4)被膜形成期で,抗生物質の長期投与及び穿刺排膿 術によっても膿瘍の縮小が得られない症例では被膜外 摘出術を考慮すべきである. 5)膿瘍の大きさが3cm以下であれば,いかなる膿 一690一81 瘍形成期でも保存療法のみで消退する可能性が高い.
論 文 審 査 の 要 旨
脳膿瘍の外科的治療を行なうにあたって,膿瘍の大きさ,手術的治療選択の時期は,予後を左右する重要な 因子であるが,それらについての定見は得られていない. 本論文は,CTにより経時的に観察し得た脳膿瘍症例により,膿瘍の大きさ,病期等と治療成績との関連を 詳細に検討し,早期脳炎期もしくは膿瘍径3cm以下では保存療法を,被膜形成期で4cm以上,脳室に隣…接,も しくは高度意識障害の場合には穿刺排膿術を,被膜形成期で抗生物質や穿刺排膿術に反応しない場合には被膜 外摘出術をそれぞれ選択すべきことを明らかにし,脳膿瘍の病期と大きさとを,CTにより早期に把握して治 療方針を決定するとの重要性を指摘したもので,学術的に価値ある論文である. 主論文公表誌 脳膿瘍に関する研究一特に脳膿瘍の形成過程と治療 について一 東京女子医科大学雑誌 第60巻 第2号 151-162頁(平成2年2,月25日発行) 副論文公表誌 1)脳膿瘍の外科 Neurologia medico-chirurgica 20(6): 613-618, 1980 2)脳膿瘍に関する研究(第5報)内頚動脈閉塞症 に続発した脳膿瘍 脳神経外科 7(8):773-777,’1979 3)Brain abscees in congenital cyanotic heartdisease(チアノーゼ性先天性心疾患に合併し
た脳膿瘍)
JNeurosurg 58(6):913-917,1983
4)Fo㎜e Fruste of von Recklinghausen’s dis- ease:Unilateral association of an orbital neurofibroma, a trigeminal neurinoma, and
an acoustic neurinoma(レックリングハウゼ ン氏病の不全型.眼窩内神経繊維腫,三叉神 経神経鞘腫,聴神経三三の1例合併) Neurosurgery 18(2):208-211,1986 5)脳神経外科における院内感染対策 Today’s Therapy’88 12(2):50-54,1988 6)小児脳膿瘍の外科的治療 ’