艦隊これくしょん 奇天烈艦隊チリヌルヲ
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あ
ら
すじ
︼
偶 然 が 偶 然 を 呼 ん で 集 ま っ た 五 艦 の 娘 達 に 振 り 回 さ れ る か わ い そ うな 提 督と 、 その 巻 き 添 え を食ら うか わ いそうな 駆逐艦 のお 話。目
次
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任一日目: とあ る青 年 提 督の 苦労 1 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任ニ日目: 全てはここか ら始 まった 7 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任三日目:類 は 友を 呼ぶ 17 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任四日目:ヲ っ 。 26 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任五日目:マスター叢雲 38 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 六 日目:因縁 の 対 決 。リ級対ル級 47 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任七日目:追跡 と偶然と 一目惚れ 65 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 八 日目:叢雲 大先 生 の 熱血指導 77 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 番 外編:妖 怪猫 吊る し 85 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 九 日目: 結 成、 第 二艦隊 ! 94 │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 日目:チ級 と ヌ級、初め てのおつかい ? 103 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 一日目: 決死の戯 れ、青 年と リ級。 117 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 ニ日目:義 と 愛 の 名 の 下 に 127 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 三日目:叢雲、小説を書 く ︵ 前 ︶ 136 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 三日目:叢雲、小説を書 く ︵後︶ 146 │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 四日目:ブイン基 地 アイドル頂上 決戦 ! 156 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 五日目: 夢の中の アルペジオ 169 │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十六 日目:ケッコン、 そ れ は戦いの縮 図 184 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十 七日目:動 き 出 す戦 艦棲姫 195 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十八 日目:旗艦 其の 一 205 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任 十九 日目:旗艦 其の ニ 214 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 日目:旗艦 其の 三 225 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 一日目:旗艦 其の 四 241 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 ニ日目:旗艦 終 254
│ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 三日目:ヲ級、 横 須賀 へ 行 く 267 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 四日目:ヌ級、 し ゃ べ る 279 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 五日目:妖精 たちの 反撃・表 293 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 五日目:妖精 たちの 反撃・裏 303 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十六 日目: ちうにび ょ う 其の 一 315 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十 七日目: ちうにび ょ う 其の終 324 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十八 日目:那珂 ち ゃんリターンズ !? 336 │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任二 十九 日目: ご 注文 は潜水 艦 ですか ? 352 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任三 十 日目: 強 襲、離島棲鬼 359 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任三 十 一日目: 孤 軍 奮 闘 其の 一 367 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任三 十 二日目: 孤 軍 奮 闘 其の 二 379 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任三 十 三日目: 孤 軍 奮 闘 其の 三 387 │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ │ 着 任三 十 四日目: 孤 軍 奮 闘 其の 四 400 │ │ │ │ │ 番 外編:ドッキドキ !鹿島 の 司令部査察任務 前 編 409 │ │ │ │ │ 番 外編:ドッキドキ !鹿島 の 司令部査察任務 中 編 418 │ │ │ │ │ 番 外編:ドッキドキ !鹿島 の 司令部査察任務 後編 429
着
任一日目:
とあ
る青
年
提
督の
苦労
人気 の トレンド という も のは 、 時 代 と共に 変化 す る。 あ る ときは サッカー選 手 、 あ る ときは 野球選 手 、 あ る ときは メイド、 あ る ときは アイドル。 そして 、今 時 代 の 最 先 端を行 く トレンド は ﹃提 督 ﹄ 。 ﹃提 督 ﹄ というのは女の子の形 を した 艦艇、 通称 ﹃艦娘﹄ で ハーレm ⋮⋮ではなく 自分 の 部隊を編成 し 、 海 を荒ら す 深 海 棲艦 たち をや っつ け る のが 仕事 であ る。 今日も提 督たちは 己 の 部隊 に 磨 き を かけ 、 まだ 見 ぬ敵に 立 ち 向 かう のだ 。 こ の 物 語 の 主 人 公 は そ の 提 督 と 呼 ば れ る 職 に つ い て い る、 こ れ と いった特 徴 の無い普 通 の 青 年であ る。 彼 が 着 任 し た の は ブ イ ン 基 地 。 周 り は ど こ を 見 て も 彼 と 同 じ 新 米 提 督で 埋め 尽くさ れ てい る。 ︵よ ー し 、 周 り の 連 中 に 置 い て か れ な い よ う に 自 分 も が ん ば ら な い と !︶ 青 年 は こ れ か ら 始 ま る 提 督 生 活 に 心 躍 ら せ な が ら 自 分 の 執 務 室 へ と 向 かった 。 こ れ が 、今 か ら約一 年前の 話 であ る。 そして 現 在 、 提 督が 板 についてきた 青 年は 新 米 提 督たちの 間 で 鬼門 と 言われ てい る﹃沖ノ島 海 域﹄ への 出撃を開始 し よ うとしていた 。 ﹁ え 、 え ー っと⋮⋮まず 始め に 、 今 か ら出撃 す る沖ノ島 海 域 についての 注意事項 なのですが⋮⋮ ﹂ 青 年 は 作 戦 会 議 室 で 今 回 の 作 戦 を 説 明 す る。青 年 の 話 を 聞 く 者 達は 皆、 なに やら険 しい 顔 つきで作戦 を聞 き 続 けていた 。 ﹁ え ー ⋮⋮ 以 上 が 今 回 の 作 戦 な の で す が ⋮⋮ 何 か 質 問 等 あ り ま す で し ょ うか ?﹂ 青 年 の 言 葉 が 切 れ る と 同 時 に 、 作 戦 会 議 室 は 異 様 な 静 寂 に 包 ま れ た 。誰も言葉を 発す る ことなく 、 ただただ 、 提 督であ る青 年 を真顔 で じっと 見 つ め てい る。 その 視線 に 耐 え られ なくなったのか 、 青 年は 隣 にい る相棒 と も 呼べ る駆逐艦 に 声を かけた 。 ﹁む、叢雲 さ ん。 何か 質 問はあ り ますか ?﹂ ﹁ えっ 、 ち ょ っ⋮⋮な 、 何で 私 が アンタ に 質 問しなき ゃ いけないの !?特 に無い わよ !そ れより、 作戦 を理解 してなさそうな 連 中がそっちにい る でし ょ う !?そっち を どうにかしなさい よ !﹂ 青 年の救 援要請を ずっぱし 切り 捨てた 駆逐艦﹃叢雲﹄ 。 相棒 に 見 捨て られ、 い よ い よ後 が無くなった 。目 の前にい る 彼女た ちとはでき る だけ 接触 したくないのが彼の本 音 であ る が 、 しかし作戦 開始 の時 間 まで も う時 間 が無い 。 こ れ以上 の ロス は作戦に支 障 がで る と判 断 した 青 年は 、 意を 決して 一 番前の席についてい る者 に 声を かけた 。 ﹁ あの⋮⋮何か 質 問はあ る かな ?﹂ ﹁ヲ っ ﹂ 再 び 訪れる沈黙。 ﹁ ああ 、 や っぱ り ⋮⋮ ﹂ と 青 年は 心 の中で 涙を 流すが 、 こ れもも う何 度 も 経 験 し た や り 取 り だ 。も う こ の 程 度 で め げ る よ う な タ マ じ ゃ な い 。青 年は 気を取り直 し 、再 び 意思 の 疎通を図ろ うとした 。 しかし 、 そ れ とほぼ 同 じ タイミング で ﹁ヲ っ ﹂ という 言葉を 発した
少 女の 隣 にい る少 女が 口を開 く 。 ﹁ルー﹂ ﹁ ⋮⋮え ?え ー ⋮⋮あ 、 う ん。 そうだね⋮⋮ ?﹂ ﹁ル ー﹂ と い う 言 葉 を 発 し た 少 女 は ど こ か 気 合 が 入 っ た よ う な 顔 つ きで 提 督であ る青 年 を見るめる。 青 年はと り あえずあ り きた り な答えでお 茶を濁 し 、 目 の前にい る少 女 達 に 対 し て 再 び 作 戦 の 説 明 を 始 め る。 こ の 時 点 で す で に 青 年 の 心 は ﹃ 中破 ﹄ していた 。 出 来 る だけ 難 しい 言葉 は 使わ ず 、 身 振 りや 手振 りを多め に 使 ってな ん とか 伝 え よ うと 、 青 年は 必 死にが ん ばった 。 そ れ が幸いしたのか │ │ ﹁ヲ っ ﹂ ﹁ルー﹂ ﹁ヌゥ﹂ ﹁リ !﹂ ﹁チ ⋮⋮ ﹂ 青 年の ﹁わ かった ?﹂ という 言葉 に 対 して 、 彼女 達 全 員 が 同 時に 返 事を した 。 し か し 、 こ こ で 安 心 し て は い け な い 。青 年 は は っ き り と 覚 え て い た 。 前 に も 同 じ や り 取 り を か わ し て 、後 か ら 大 惨 事 に 発 展 し た 事 を。 青 年は作戦 会議室 か ら出 て 行 く彼女 達を見送 った 後、 まだ 残 っていた 叢雲 に 指 示 を出 した 。 ﹁叢雲、後 はお前に 任 せ る。 何とか 被害を最小限 にとど め てく れ﹂ ﹁言 わ れ な く て も わ か っ て る わ よ。 は あ ⋮⋮ 何 で 私、 あ の 時 ﹃ あ ん な 事﹄ したのかし ら ⋮⋮ ﹂
そ れ か ら 数 分 後、叢 雲 率 い る 第 一 部 隊 は 沖 ノ 島 海 域 へ と 出 撃 し て いった 。 新 米 提 督が 避 けては 通れ ない 最初 の 鬼門﹃沖ノ島 海 域﹄ 。 親玉 にたど り 着くまでの 道 の り が 長 く 、 運 が 悪 け れ ば 親玉 と 遭遇 す る こ と な く 帰 還 す る な ん て こ と は ざ ら に あ る。 さ ら に 道 の り が 長 い ゆ え に 敵 と の 戦 闘 の 数 も 多 く な る た め 消 耗 が 激 し い 。 さ ら に さ ら に 、 親玉 には フラグシップ 戦 艦 が 一艦、 残り は全て エリート艦艇 という素 敵 仕様。 何 も知ら ず 出撃 して 痛 い 目 にあった 提 督は数 知れ ず 、 現 に ブイン基 地にい る提 督の半 分 は 今 なお ﹃沖ノ島 海 域﹄ で 足 止 め状 態なのだ 。 ﹁頼む か ら、 何 も起 こ ら ず無 事 に帰 還 してく れ﹂ 。青 年は 心 の 底 か ら 自分 の 艦隊 が ﹃ 何 事も 無く ﹄ 帰ってく る こと を願 う 。 しかし数時 間後、 その 願 いはいと も た や すく 踏み にじ られ た 。 ﹃提 督 聞 こえ る !?緊 急 事 態 よ !!﹄ ﹁ッ !?状況を 報告し ろ !﹂ 通信を 入 れ てきた 叢雲 に 状況を説明 す るよ うに求 める青 年 。 艦娘達 の 身 に何かあったのか ?奇 襲を受 けてい る のか ?まさか 、 誰 か 轟沈 してしまったのか ?普 通 の 提 督な ら ば 、 ここで 自分 のか わ いい 艦娘 の 身を心配 す る とこ ろ だが 、 この 青 年はまったく別の 事を考 えて いた 。青 年は 心 の中でつぶ や いた 。 ﹁嫌 な 予感 がす る﹂ と⋮⋮ 。 ﹃ あのお 馬鹿 たち 、他 所の 艦隊 に 突撃 していっち ゃ ったの よ !!﹄ 青 年の 心 が大破した 。 しかし 、 こ ん なとこ ろ で も た も たしてい る暇 は無い 。今 こうしてい る間 に も、 彼女 達 は ﹃ 敵 ﹄ を倒 すた め に攻 撃を行 ってい る のだ 。青 年 は 移動 しなが ら叢雲 に 状況を詳 しく 説明 す るよ うに求 め た 。 ﹃沖 ノ 島 を 攻 略 し て 帰 投 し て た ら、鎮 守 府 正 面 海 域 で 他 の 艦 隊 が 演 習
を行 っていたの よ !そ れを﹃ 敵 ﹄ と 勘違 いした み たい !﹄ ﹁ お う ふ ⋮⋮ と り あ え ず 、 こ っ ち は 緊 急 回 線 使 っ て 演 習 中 の 提 督 た ち に 通信 入 れる か ら、 そっちは 間を取り持 ってく れ !﹂ ﹃も う !何で 私 がこ ん なことしなき ゃ いけないの よ っ !!﹄ その 後、 青 年の 逸早 い 連 絡と 叢雲 の尽 力も あ り、 幸い 轟沈 す る艦娘 はいなかった 。 しかし 演習を行 っていた 艦隊 の 艦娘 十 二艦 中 、 大破 四艦、 中破六 艦、 小 破 二 艦 と い う 悲 惨 な 状 況。青 年 は 演 習 を 行 っ て い た 提 督 二 人 に 平 謝りを続 け 、 最 終 的 には 、 破 損 した 艦娘 が入渠す る際 に 使 用す る資 材 を 全 負担 す る ことで 話 がついた 。 ど こ か 誇 ら し げ な 様 子 で 帰 投 し た 五 艦 と 心 底 疲 れ た 様 な 顔 で そ の 後ろを 歩く 叢雲。 も う こ れ 以 上 好 き 勝 手 さ せ る わ け に は い か な い 。青 年 は 五 艦 組 に 対 して 通 じ る か 分 か ら ないお 説 教 を す る こと を 決 意 す る。 そ ん なことなど 露知ら ず 、 青 年の 姿を 発 見 した 五艦 は 、 我 先に 褒め て もら おうと 青 年の周 り に 群 がった 。 ﹁ルー﹂ ﹁ヌゥ﹂ ﹁リ !﹂ ﹁チ ⋮⋮ ﹂ 普 段 は 真顔 しか 見 せない 連 中が 、 何か を期待 す るよ うな ワクワク し た 笑みを見 せ る。 普 段 反 応 が 薄 い 連 中 が そ わ そ わ し な が ら 自 分 の 前 に 頭 を 差 し 出 す 。 その ギャップ が 青 年の 固 い 意志 に ヒビを 入 れ た 。 しかし 、 ここで 引 き 下 が るわ けにはいかない 。今日 こそは 、 今日 こ そはと 、 青 年は 自分 に 言 い 聞 かせ る。青 年は 目を あ わ さない よ うに 視 線を下 げた 。
﹁ヲ っ ﹂ 視 界に 飛 び 込ん できたのは 、 軍服 のすそ を ち ょ こ ん と 握 った正 規 空 母 の 少 女が 上目遣 いでそ わ そ わ してい る姿 だった 。 青 年 の 決 意 が わ ず か に 崩 れ た 。青 年 は 頭 の 中 で 素 数 を 数 え な が ら 深 呼 吸 を し 、視 線 を 別 な 場 所 へ と 移 し て 意 識 を 何 と か つ な ぎ と め る。 だが 、 そ ん な 青 年へ 追 い 討 ち を かけ るよ うに 、 艦娘達 は 青 年へと 擦り 寄 った 。 軽 空 母 の 少 女 ?は 青 年 の 右 手 を 握 り 自 分 の 頭 へ と 持 っ て い く 。 ど う やら、頭を なでてく れ と 催促 してい るよ うだ 。 重 巡 洋 艦 の 少 女 は 無 邪 気 に 青 年 の 右 足 へ と 抱 き つ い た 。褒 め て く れる まで 離 さないという 意思を 示してい るよ うだ 。 戦 艦 の 少 女は 青 年の 左 側にし ゃ が み こ み、 青 年の 左 手に 自分 の 頭を こす り つけた 。セルフ なでなで を してい るよ うだ 。 重雷装巡洋艦 の 少 女は 青 年の 背後 に 回り こ み、 空いてい る右肩 に 顔 を の せ な が ら 自 分 の 体 を 密 着 さ せ る。 そ の バ ス ト は 傍 か ら 見 て も 豊 満 であった 。 正 規 空 母 の 少 女はなお も 健在 。 逃 げ場 を完 全に失った 青 年が 取 った 行動 は唯 一 つ 。 ﹁ が⋮⋮が ん ばったね 。みん な 、 え ら いぞ ー﹂ 完 全崩 壊 した 意思 は ゴミ箱 へ捨て 、 結局いつ も の よ うに 甘 え る 彼女 達 にご 褒美を与 え る のであった 。 海の 底より現れ た 謎 の敵に 立 ち 向 かうた め に 生 ま れ た存在 ﹃艦娘﹄ 。 提 督は ﹃艦娘﹄ と共に 、今日も 未 知 の 脅威 に 立 ち 向 かう 。 こ れ は 、 偶然が 重 な り合 い ﹃ 未 知 の 脅威﹄ を懐 に 抱 え 込む ことになっ てしまったとあ る提 督の物 語。
着
任ニ日目:
全てはここか
ら始
まった
荷 物整 理 に 追われ、 特に何 も す る ことなく 初日を 終えた 青 年 。 ど う せ 他 所 の 提 督 た ち も 同 じ 状 況 だ ろ う し 特 に 急 ぐ 必 要 は 無 い だ ろ う 、 とそのまま眠 り についた彼だったが 、 次の 日、 周 り の 提 督たち が ﹁俺も う南 西諸島沖 まで 行 った ん だぜ !﹂ や ﹁初建造 で 軽 空 母 とか 超ラッキー だった ﹂ といった 話題 で 盛り上 がってい る の を聞 いて 、 自 分 が 完 全に 出遅れ たこと を悟 った 。 こ う し て は い れ ら な い 。青 年 は す ぐ さ ま 旗 艦 で あ る 叢 雲 を 鎮 守 府 正 面 海 域 へ 送り出 す 。 そしてその 後、 司令部 の 開 発 ドック へと 向 かっ た 。 開 発 ド ッ ク は 艦 娘 の 装 備 を 開 発 す る こ と が 出 来 る 場 所 だ 。資 材 を 大 量 に 投資 す れ ば 高 性 能 の 装備 が 出 来 上 が り、 逆 に 資 材 をケチれ ばそ れ相応 の 出 来とな る。 青 年は 叢雲 が戦ってい る間、 同 時 進行 で 装備 の 開 発 を し よ うと 考 え ていた 。 ここで 少 しで も いい 装備を開 発でき れ ば 、 出遅れ た 差を少 し で も 縮 められる。青 年はそう 信 じていた 。 だがしかし 、 彼はここで ミ スを犯 した 。 ﹁艦 娘 は 出 撃 中 に 出 会 う こ と が あ る っ て 聞 い た し 、 無 理 に 建 造 す る 必 要 ない よ な 。今 は武器 開 発だ ﹂ 戦 力増 強 を運 に 任 せ 、 青 年は 与 え られ た 資 材 を 全て 叢雲 の強 化 につ ぎ 込ん だ 。俗 に 言 う 、﹁最初 か ら飛 ばし 過 ぎて 後 が 苦 しくな る現象﹂ で あ る。 この時 、 この ブイン基 地 内 で 青 年と 同 じ 考 え を持 った 提 督が何 人 い た だ ろ う か ?も し 青 年 と 同 じ 事 を 考 え て い る 者 が 後 数 千 人 少 な け れ ば 、後 の 惨劇 が 起 こ る ことは無かっただ ろ う 。 青 年が着 任 してか ら三日後。ブイン基 地 、 まさかの 資 材 枯渇。 加 減 を 知 ら な い 新 米 提 督 で 溢 れ か え っ て い た ブ イ ン 基 地 。早 く 戦 力を増 強させて先に 進み たい 、 珍 しい 艦艇を 作って周 り か ら ち や ほ やさ れ たいと先 走 った 提 督たちが ガンガン資 材 を使 った結 果、 消費 が 供 給 を上回 ったのだ 。 近 くの 泊 地 、 も しくは 鎮守府 か ら資 材の 援助 が来 る までの 間、 ブイ ン 基 地 に い る 提 督 た ち に 対 す る 資 材 の 供 給 は 一 時 的 に 停 止 。 し か も 供 給 再 開 の 日 時 は 未 定。ブ イ ン 基 地 の 提 督 た ち は ろ く に 出 撃 す る こ とす ら出 来ない 状況 に 陥 ってしまった 。 青 年 も例外 ではない 。 武器 開 発に 資 材 を投資 しまくったせいで 、 彼 の所 持 す る資 材 も残り少 ない 。多 く 見 積 も ってあと 五、 六 回出撃 でき る かどうかだ 。 しか も、 運任 せにしていた 艦娘 との 出会 いはまったく 無 し 。 そ れ に 加 え て 開 発 さ れ た 武 器 は ど れ も 低 火 力 の も の ば か り で 、 叢雲 の戦 闘力 は 以 前とほと ん ど 変わ っていない 。 結 果 として 、 資 材だけが 消費 さ れ 戦 力 はまったく 増 強さ れ なかった のだ 。 こ の 状 況 に 青 年 は 頭 を 抱 え て い た 。も う 出 遅 れ た と か 言 っ て い る 場 合 じ ゃ な い 。 何 と か し て 今 の 状 況 を 打 開 し な い と 。青 年 は 必 死 に 打 開 策 を考 え る が 、 いい案は浮かばずにただ時 間 だけが 過 ぎて ゆ く 。 そ ん な 青 年 を 遠 巻 き か ら 眺 め る も の が い た 。青 年 の 相 棒 で あ る 叢 雲 だ 。心 底 落 ち 込 ん だ 表 情 で う な 垂 れ て い る 青 年 の 姿 を 見 た 叢 雲 は 、 小 さくた め 息 を吐 きなが ら青 年へと 近 づき 声を かけた 。 ﹁ ち ょ っ と 、今 日 の 出 撃 は ま だ な の ?い い 加 減 待 ち く た び れ た ん だ け ど ﹂ ﹁ えっ⋮⋮あ 、 い や、 その⋮⋮しば ら く 出撃 は⋮⋮ ﹂ ﹁ ぐ ち ぐ ち う る さ い わ ね 。 ま だ 資 材 は 残 っ て い る ん で し ょ う ?だ っ た ら一回 く ら いいいじ ゃ ない ﹂ ﹁ い や、 で も ⋮⋮ ﹂ ﹁ 何 ?言 いたいことがあ る な ら はっき り言 いなさい よ﹂ ﹁ ⋮⋮⋮⋮ ﹂ 結 局 、押 し 負 け た 青 年 は 叢 雲 に 南 西 諸 島 沖 へ 出 撃 す る よ う に 命 令。 叢 雲 は 軽 い 足 取 り で 港 へ と 向 か っ て い っ た 。青 年 は そ の 背 中 を 黙 っ
て 見 送 る。完 全 に 姿 が 見 え な く な っ た 後、青 年 は ﹁も っ と 提 督 を 気 遣 ってく れる 子に来て もら いたかった ﹂ と 、 誰も いない 司令室 でぼそ り と 愚痴を こぼした 。 出撃 か ら 数十時 間後、 月明 か り の 指 す 司令室 で 青 年は 叢雲 か ら 帰 投 す る との 連 絡 を受 けた 。 特に大きな 被害を受 け る ことなく 、 無 事 敵 艦 隊を撃沈 できたそうだ 。 青 年はほっ 、 と 胸を なでお ろ す 。 なけなしの 資 材で 出撃 させて 、 何 も成果 なしだった らも う 笑 うしかない 。も し 轟沈 したとな れ ば 、 そ れ こそ本当に 笑 い 事 ではすまない 。 無 事任務を 全うした 叢雲 に 感謝 し 、 疲れ て帰ってきた彼女 を精一 杯 ねぎ ら おうと決 め た 青 年は 明日 に 備 えて 早め に就 寝 す る のだった 。 翌日、 連 絡どお り叢雲 は 司令部 へと戻ってきた 。青 年は 笑顔 で 叢雲 を迎 え入 れ た 後、 あちこちに 傷を つけた彼女 を 入渠させ よ うとしたの だが 、 そ れ に 待 った を かけ るも のがいた 。 ﹁ ち ょ っと 待 って 。 その前に 見 せたい も のがあ る の ﹂ そ れ は 叢 雲 自 身 だ っ た 。叢 雲 は ド ッ ク の 隅 に 山 積 み に な っ て い る 荷 物 の 裏 手 へ と 回 り 込 む。青 年 も 叢 雲 の 後 に 続 い て 荷 物 の 裏 手 へ と 回り込ん だ 。 次の 瞬間、 自分 の 目を疑 いたくな るよ うな光景が 青 年の 視 界に 飛 び 込ん でく る。 そこにあったのは 、 提 督 及 び 艦娘 たちと敵 対関係 にあ る深 海 棲艦 の 一 種 ﹃重雷装巡洋艦﹄ 、 通称 ﹃チ級﹄ 。 その 残骸 が 荷 物の 裏 手にひっそ り と 隠 してあったのだ 。 ﹁バ ラ せ 鋼 材 や 弾 薬 く ら い に は な る で し ょ。少 し は 足 し に な る か し ら ?﹂ 青 年 は 叢 雲 の 言 葉 を 聞 い て 心 底 驚 い た 。艦 娘 や 装 備 を 解 体 し て 資 材 に 還 元 す る こ と は 可 能 だ と 聞 い て い た 。深 海 棲 艦 を 解 体 し た 例 は
聞 いたことはないが ﹃重雷装巡洋艦﹄ と 銘 打つ チ級を解 体す れ ば 、 い く ら か 資 材 を回収 でき る か も し れ ない 。 そして 、 今回 の 出撃 では前 回 と 比 べて 倍以上 の 資 材 を 獲 得 できたと 報 告 も 受 け て い る。チ 級 を 解 体 し た 際 に 発 生 す る 資 材 と 出 撃 中 に 回 収 した 資 材 。 この 二 つが 合わ さ れ ば 、 かな り の 資 材 増加 が 見込める だ ろ う 。 ここに来て 、 よ う や く 青 年は 叢雲 の 真意を理解 した 。 昨 日叢雲 が強 引 に 出撃を迫 ってきたのは 、 出撃 中に 資 材 を見 つけてく る ことが 目的 だったのだと 。 改 め て 、 青 年は 叢雲 の 姿を 眺 める。背 中か ら 伸び る連装 砲の砲 身 は おかしな 方向 へとひし ゃ げてお り、 すでに武器としての 意 味 を成 して い な い 。左 手 に 装 備 さ れ た 三 連 装 魚 雷 発 射 管 は 大 部 分 が 破 損 し て お り、 中の 構造 が む き 出 しの 状 態だ 。 潮 風 に吹か れ、 さ らり となびいていた 美 しい 長髪 は 爆風 でぼさぼさ に乱 れ、服も あちこちが焦げ 付 いてい る。 ﹁ な 、 な に よ そ の 目。 別 に ア ン タ の た め じ ゃ な い わ よ !?私 が こ れ か ら も 出 撃 し 続 け る た め に は 必 要 だ か ら と 思 っ て 回 収 し た だ け で あ っ て 、 そ れ以外 の 意 味な ん て無い ん だか ら !﹂ 僅 か に 頬 を 赤 ら め た 叢 雲 は 早 足 で そ の 場 を 去 っ て い っ た 。青 年 は その 後ろ姿を笑顔 で 見送る。 そうか 、 自分も そ れ な り に 期待 さ れ て る のか 。相棒 の 気遣 いに 心を 打た れ いて も たって も い られ なくなった 青 年は 、 叢雲 が 持 ち帰った チ 級を解 体す る た め に作業 員を 呼び 出 そうとした 。 ﹁ ⋮⋮ !﹂ し か し 、 そ こ で タ イ ミ ン グ よ く 正 午 を 知 ら せ る サ イ レ ン が 鳴 り 響 く 。青 年は 一 時 行動を 中 断 した 。 昼 食 前 に わ ざ わ ざ 呼 び 出 し て 仕 事 を さ せ る と い う の も 何 だ か 気 が
引 け る。 しかし 、 このまま放 置 しておけば 事情を知ら ない 者 に 見 つか り騒 ぎにな る可能 性 も あ る。 ﹁よ し 、自分 で 運 ぼう ﹂ 青 年は 近 くにあった 台車を寄 せ 、 四肢を だ らり と 垂れ下 げた チ級を 乗せた 。 騒 ぎにな ら ない よ うに 上 か ら真 っ白な シーツを かぶせた 後、 青 年は 全 身 に 力を 入 れ、 ずっし り と 重 くなった 台車を押 し 出 す 。 こ う い っ た 力 仕 事 を 提 督 自 ら が 行 う と い う の は 本 来 あ り え な い こ とだが 、青 年は 今、 体 を動 かしたくて 仕方 が無かったのだ 。 叢雲 があ れ だけ 頑 張ってく れ たのだか ら、 自分もも っと 頑 張 ら ない と 。や る 気 に 満 ち 溢 れ た 青 年 は 台 車 の 重 さ に 四 苦 八 苦 し な が ら チ 級 を解 体 ドック まで 運ん だ 。 途 中 で 運 よ く 作 業 員 と 出 会 え れ ば 、 と 内 心 期 待 し て い た 青 年 で は あったが 、 作業 員 どこ ろ か 誰一人 として 出会 うことなく 解 体 ドック に 到着した 。 ど こ か に 作 業 員 が 残 っ て い な い だ ろ う か 。青 年 は 大 き な 声 で 呼 び かけ る が 返 答は帰ってこない 。 昼 休み 中のた め か 、 今解 体 ドック に作 業 員 はいない よ うだ 。 とな れ ば 、青 年のと る べき 行動 は唯 一 つ 。 ﹁仕方 ない 。誰 か帰ってく る まで 待 つか ﹂ 昼 休 み を 返 上 す る 気 満 々 で ド ッ ク に 居 座 る こ と を 決 意 し た 青 年 は 、 台 車 を 移 動 さ せ よ う と 一 度 台 車 を 止 め て お い た 場 所 ま で 戻 る こ と に した 。 しかし 、 そこで 事件 が 起 こった 。 ﹁ ⋮⋮ チ ⋮⋮ ﹂ ﹁ っ !!!?!?!?!!?﹂
な ん と 、 先ほどまでぴく り と も動 かなかった チ級 が 、 台車 か ら降り て ズルズル と地 面を這 い 回 っていたのだ 。ボロボロ の 状 態と 、 深 海 棲 艦 な ら ではの ミステリアス な 姿 が 相 まって 、 今 の チ級 はさなが ら井 戸 か ら這 い 出 てきた 某 呪いの ビデオ の 人よ うだ 。 叢雲 が何 事も 無く 持 ち帰ってきたか ら、 この チ級 は 完 全に機 能を 停 止してい る。 そう 思 っていた 青 年だったが 、 そ れ は大きな 間違 いだ 。 確 か に チ 級 は 叢 雲 の 攻 撃 を 受 け て 戦 闘 不 能 状 態 ま で 追 い や ら れ た 。 しかし 、 そ れ は 轟沈寸 前の大破 状 態であって 、 完 全に やられ た わ けで はなかったのだ 。通 常 、 轟沈 す れ ばその 身 はすぐに海へと 沈み回収不 能 とな る。 が 、叢雲 は チ級 が海へと 沈む 前に 回収 してきた 。 逆 に 言 えば 、 そ れ はまだか ろ うじて 艦艇 としての機 能を維持 してい た チ級 が 生 きていた 証 なのだ 。 そして時 間 経 過 に より、 わ ずかばか り 回復 した チ級 は 再 び 行動を開始 したのであ る。 チ 級 は ゆ っ く り と 青 年 に 近 寄 る。チ 級 の 姿 を 見 た 青 年 は 腰 を 抜 か し 、 未だにその場か ら動 けずにいた 。 何とか 立 ち 上 が ろ うと 必 死に 足 を動 かすが 、 パニック に 陥 った 青 年の体は 思 う よ うに 動 かない 。某 呪 い の ビ デ オ の 人 と 同 等 の 容 姿 で 這 い 寄 ら れ れ て 平 常 心 を 保 て る 人 間 などい るわ けがない 。 す で に チ 級 は 青 年 の 目 前 ま で 迫 っ て い る。最 悪 の 結 末 が 青 年 の 頭 をよ ぎ る。 恐 怖 に 耐 え 切れ なくなったのか 、 青 年はぎ ゅ っと 瞼を閉 じ た 。 ﹁ ⋮⋮⋮⋮ ?﹂ しかし 、青 年が 襲われる ことは無かった 。 何 も起 こ ら ないことに 疑 問 を感 じた 青 年は 、 閉 じていた 瞼をゆ っく り と 開 けた 。 そこには未だに チ級 の 姿 があ る。 しかし 、 先ほどとは 明 ら かに 違 う光景が 広 がっていた 。 ﹁ンゥ ⋮⋮ モグモグ ⋮⋮ ﹂
チ級 が を口 に含 ん でいた ﹃ 何か ﹄ を飲み込ん だ 。 その 後、 すぐに 顔 を 地 面 に 近 づけ 口 か ら舌を出 して 必 死に ﹃ 何か ﹄ を口 に含 も うとして い る。 ﹁ あ れ は⋮⋮ 鋼 材 ?﹂ チ級 の 目 の前に 落 ちていたのは 、小 さな 鋼 材だった 。 先に も述 べたとお り、 艦娘や装備を解 体す る と 僅 かではあ る が 資 材 が発 生 す る。今チ級 が 食 べてい る のは 、 い ら ない 装備を 破 棄 した 際 に 発 生 した 資 材が 、 作業 員も知ら ないうちに ﹃ 偶然 ﹄ 落 ちた も のだった 。 僅 かばか り冷静 さ を取り 戻した 青 年は 、 ゆ っく り と 立 ち 上 が り 改 め て 状 況 を 確 認 し た 。チ 級 は 目 の 前 の 鋼 材 に 夢 中 で 青 年 は 眼 中 に 無 い 。 しかし 、 そ れ はあくまで ﹃今﹄ だけであって 、 あ れを食 べ終えた 後 は どうす る だ ろ う 。 も しかした ら、 危 害を加 えてく る可能 性だってあ る。 何とかす る な ら今 のうちだ 。青 年は結 論を出 した 。 ﹁ ⋮⋮時 間を 稼ごう ﹂ 頼 み の 綱 で あ る 叢 雲 は 入 渠 中 で チ 級 に 立 ち 向 か う 手 立 て が 無 い 。 な ら ば 、 入渠が終 わる まで時 間を 稼げばいい 。 時 間 にして 約二、 三 十 分。 そ れ までの 間、 チ級 に 行動を起 こさせない よ うにす れ ばいい 。 そ の手 段 はすでに チ級自身 が 披露 してい る。 青 年 は 解 体 ド ッ ク に 隣 接 す る 資 材 倉 庫 へ 全 速 力 で 向 か い 、 そ し て 、 残 り 僅 か と な っ た な け な し の 鋼 材 を 軍 服 の ポ ケ ッ ト 全 て に あ り っ た け 詰め込ん だ 。 再 び全 速力 で 解 体 ドック へと戻った 青 年 。 息 を切ら しなが ら、 まだ チ 級 が そ の 場 に い る こ と を 確 認 し た 青 年 は 忍 び 足 で チ 級 へ と 近 づ き 、 ポケット か ら鋼 材 を一 つ 掴ん で チ級 へと放 り投 げた 。 鋼 材はこと ん、 と 音を たてて地 面 に 落 ちた 。 その 音 に 反応 した チ級
は 音 のしたほうへと 顔を向 けた 。 ﹁ ⋮⋮ チ ⋮⋮ ﹂ チ級 は ゆ っく り と地 面を這 いず り、 青 年が 投 げた 鋼 材 を ねっと り と した 舌 で絡 め て 口 に含 む。 そしてこ り、 こ り、 と 鋼 材 を 噛 み砕 き 、 ご く り と 音を たてて 飲み込ん だ 。 そ れを見計ら って 、 青 年は 再 び 鋼 材 を 放 り投 げ る。 そして チ級も再 びその 鋼 材 を口 へと含 み 噛 み砕 く 。 今 の やり取り が 少 し楽しくなってきたのか 、 青 年は 調 子に乗って 一 歩 近 づいて み た 。チ級 は 青 年のほうへと 顔を向 け る が 、 そ れ以外 は特 に 動 き を見 せない 。 そして 、再 び 鋼 材の やり取り が 始 まった 。 ◇ ﹁ まったく 、提 督ってばどこに 行 ったのかし ら﹂ 入渠してか ら約二 十 分、 修理を 終えた 叢雲 は 自身 の 提 督であ る青 年 を探 していた 。 入 渠 中 に 聞 こ え た サ イ レ ン か ら し て 今 は 食 堂 に い る だ ろ う と 予 想 した 叢雲 だったが 、 食堂 に 青 年の 姿 は無かった 。 だとす れ ば 司令室 だ ろ うか ?叢雲 は 司令室 へと 足を向 け る、 たど り 着いた 司令室 は無 人。 食 堂 に い な け れ ば 司 令 室 に も い な い 。 な ら ば 提 督 は ど こ へ 行 っ て しまったのだ ろ うか 。 そこで 叢雲 の 頭をよ ぎったのは 、 入渠前に 見 せ た あ の 場 所 だ っ た 。叢 雲 は 入 渠 ド ッ ク へ と 向 か い チ 級 を 隠 し て お い た場所 を確認 す る が 、 そこには チ級 の 姿 はない 。 おそ ら く 、 提 督が 指 示 を出 して作業 員 に 引 き渡したのだ ろ う 。も し かした ら、 解 体 ドック で 解 体作業 を見 てい る のか も し れ ない 。 そう 考
えた 叢雲 は 身を翻 し 解 体 ドック へと 向 かう 。 道 中 、 叢雲 は ドック にい る と 思われる青 年の リアクションを想像 し た 。深 海 棲 艦 か ら ど れ だ け 資 材 が 取 れ る か は 未 知 数 だ 。も し か し た ら 何 も取得 できないか も し れ ない 。 で も、 逆 に大 量 の 資 材が手に入 る 可能 性だってあ る。叢雲個艦 ︵個人︶ としては是 非後者 の 方 であって 欲しいと 思 っていた 。 そうす れ ば 、提 督の 喜 ぶ 顔 が 見れる のだか ら。 ﹁ っ て 、 何 考 え て る の よ 私 は !別 に そ ん な こ と の た め に 獲 っ て き た わ けじ ゃ ないでし ょ うが !﹂ 少 し 恥 ず か し い 想 像 を し て し ま っ た 叢 雲 は ぶ ん ぶ ん と 頭 を 振 り 自 身 の 思考をリセット した 。 そ う こ う し て い る 間 に 解 体 ド ッ ク へ と 到 着 し た 叢 雲。今 度 こ そ 青 年は 見 つか る だ ろ うか ?少 し 期待 しなが ら、 叢雲 は 解 体 ドック 入 り口 の扉 を開 けた 。 ﹁ ほ ーら、今度 の 鋼 材は大きいぞ ー﹂ ﹁チ ⋮⋮ ﹂ 自 分 の 想 像 の 斜 め 上 を 行 く お か し な 光 景 に 、叢 雲 の 思 考 は 停 止 す る。 叢 雲 が 見 た の は 自 分 た ち の 敵 で あ る 深 海 棲 艦 を 餌 付 け し て い る 青 年の 姿 だった 。 しば ら くして ハッ、 と 我 に 返 った 叢雲 は慌てて 青 年の 元へと 駆 け 寄 った 。 ﹁ ち ょ っと アンタ !何 や って ん の よ !?﹂ ﹁ おぉ 叢雲。見ろよ、 こいつ 鋼 材に 目 がない み たいだぞ ﹂ ﹁ ど う で も い い わ よ そ ん な 情 報 !て い う か 、 そ い つ は ア タ シ が 狩 っ て きた奴 よ ね !?何で 生 きて る の よ !﹂ ﹁ さあ ?俺 が 見 つけたときには も う 動 いてた ん だけど ﹂
場は 混沌 に 包 ま れ た 。 何 故 こ の よ う な 危 険 行 為 を 行 っ て い る の か と 厳 し く 攻 め 立 て る 叢 雲。叢雲 に攻 め立 て られ顔を真 っ 青 にしてい る が 、 右 手にはち ゃ っか り鋼 材 を握 ってい る青 年 。 そして 、 その 鋼 材 を必 死に 取ろ うと 首を右 往左往 させ るチ級。 十 人 が 見れ ば 、 十 人 が 近寄り たくないと答え る で あ ろ う異 様 な光景だ 。 この異 様 な 三 すく み は 、 昼 食を 終えた作業 員 たちが ドック に戻 る ま で 続 け られ た 。
着
任三日目:類
は
友を
呼ぶ
今、青 年はあ る 問 題を抱 えていた 。 資 材の 供 給が停止してか ら という も の 、 資 材 不足 に 頭を悩 ませてい た 青 年だったが 、 つい 最近 になって火の 車状 態だった 資 材 残量 に大打 撃を与 え る 存在が 現れ たのだ 。 重雷装巡洋艦﹃チ級﹄ 。 元 々 は 叢雲 が 資 材の 足 しにと 持 ち帰った チ級 の 残骸 が 、 時 間 経 過 に より回復 し活 動を再開 したのがすべての 始 ま り だ 。 弱 り 果 て た 小 さ な 命 が 、必 死 に 生 き よ う と す る あ の か 弱 い し ぐ さ 。 そ れ に 心 を 打 た れ て つ い つ い 手 を 差 し 伸 べ て し ま っ た 経 験 が な い だ ろ うか ? そ の 行 動 が 最 後 ま で 面 倒 を 見 る こ と を 前 提 と し た も の な ら 問 題 は ないのだが 、 ただ ﹁ か わ いそうだか ら﹂ という 理 由だけで 後 先 考 えず に手 を差 し伸べてしまう 者も い る。 ﹁チ ⋮⋮ ﹂ ﹁ ⋮⋮こ れ で 最後 だか ら な ﹂ この 青 年 も後 先 考 えなかった 者 の 一人 であ る。 弱 り きった チ級 が 必 死に 鋼 材 を口 にす る様や、 不気 味な 姿 とは 裏腹 に 従 順 に 言 う こ と を 聞 く と い う ギ ャ ッ プ が 青 年 の 心 を 鷲 づ か み に し た 。 そ こ へ 帰 っ て き た 作 業 員 た ち 。最 初 は 不 気 味 が っ て い た 彼 ら だ っ た が 、提 督 で あ る 青 年 が 親 身 に 接 す る 姿 を 見 て 警 戒 を 緩 め て し ま っ た 。 そしてすぐさま 心を鷲 づか み にさ れ、 野郎総出 で 傷 ついた チ級を 猫か わ いが り してしまったのだ 。 そ の 結 果 が 今 の 現 状 で あ る。 い つ の 間 に か 完 全 回 復 し た チ 級 は 青 年の 後ろを ぴった り とついてま わり、 何かと 餌を要 求してく るよ うに なった 。も ち ろん、 今 所 持 してい る貴重 な 資 材 を こ れ以上消費 す るわ けにはいかないと 青 年は チ級 の 要望を拒 否す る のだが 、 いか ん せ ん言葉 が 通 じないた め か 意思 の 疎通 がうまくいかない 。 そこへ 現れ たのが ネゴシエイター叢雲 だ 。 深 海 棲艦 の 言葉をわ ずかではあ る が 理解 できた 叢雲 は 、 情 け 容赦 な い チ級 に 現状を理解 して もら おうと 説得を行 う 。 しかし 、 お 互 いの常 識 の 相違 が 説得を難航 させた 。 叢雲 が ﹁むやみ に 鋼 材 を食 べてはいけない ﹂ と 言 えば 、 チ級 は ﹁ム ヤミモタベル ?﹂ と 返 す 。 ﹁ いっぱい 食 べ る な ﹂ と 言 えば ﹁イッパイタ ベタイ﹂ と 返 す 。 ﹁食 うな !﹂ と 言 えば ﹁オイシイ﹂ と 返 す 。 延 々 と 続 く 間 の 抜 け た や り 取 り。叢 雲 は あ ま り 寛 容 深 い 性 格 で は ない 。 彼女の イライラ が 限 界に 達 す る までに時 間 はかか ら なかった 。 口 で 言 っ て ダ メ ら 手 を 出 す の み。叢 雲 は つ い に 実 力 行 使 に 出 る こ とにした 。 ﹁ そ ん なに 食 いたけ りゃ、自分 で 取 ってきなさい よ !﹂ 身軽 な 跳躍を見 せ る叢雲。 空中で体 を ぐ るり とひね り、 目 の前にい るチ級 に 向 かって ローリングソバットを ぶちかます 。 叢雲 の攻 撃をもろ に 受 けた チ級 の体は 、 ま る で 風 にとばさ れ た 紙切 れ の よ う に 宙 を 舞 う 。重 力 に 引 か れ て 地 面 に 落 下 し た 後 も 勢 い は 衰 え る ことなく 、 チ級 は 舗装 さ れ た地 面を二転、 三転 し 、 そのまま海へ と 落 ちていった 。 本 当 な ら 自 慢 の 三 連 装 魚 雷 も お ま け で ぶ ち 込 ん で や り た い と こ ろ だったが 、 後ろ で 見 てい る青 年が 気を悪 くす る か も し れ ないと 考 えた 叢雲 は 、追撃 す る ことなくその場 を後 にした 。 まだ 波紋 が 残る 海 面を青 年は 少 し 寂 しそうな 顔 で眺 める が 、 このま ま 資 材 を食 い尽くさ れるより は マシ だと 気持 ち を切り替 え 、 青 年は 司 令部 へと 消 えていく 叢雲 の 背 中 を追 いかけた 。 この 日、チ級 が 青 年の 司令部 に戻 る ことは無かった 。 ◇
夢 を、 夢 を見 ていた ん です 。 とて も 楽しく 、 穏 や かで 、 平 和 な夢 を。 ﹁HEY提 督ぅ !ティータイム ご 一緒 しませ んカー ?﹂ ﹁金 剛か 。 この 仕事 が終 わる までち ょ っと 待 っててく れ﹂ ﹁んも ぅ 、早 く終 わら せください ヨー !﹂ ﹁ダメ です よ金 剛さ ん。提 督は 今忙 しい ん ですか ら﹂ 出鼻を くじか れ てふてくさ れ た ﹃金 剛 ﹄ は 執務室 に 置 か れ た 上質 な ソファー に 腰掛 け 、 一足 先に 一人 で ティータイムを始め た 。頭 に手 を 当て ﹁やれやれ﹂ と 小 さくた め 息 を こぼした 秘書艦 の ﹃赤城﹄ は 、 ティー セットを 机に並べ 始め た 金 剛に 近 づき 注意を促 すが 、 金 剛本 人 は 聞 く 耳持 たずの 様 子 。 この やり取りを見る の何 度目 だ ろ うか 、 と 青 年は筆 を 止 め て 目 の前 にい る二人 の 艦娘を 眺 める。 い つ も 真 面 目 で ち ょ っ と ド ジ な 所 が あ る 食 い し ん 坊 の 赤 城。青 年 の 部隊 に 配 属さ れ た 初め ての正 規 空 母。書類 整 理 で 困 ったとき も、 艦 娘同士 が 喧 嘩 を したとき も、 戦 闘 中 逆境 に 立 たさ れ たとき も、 いつ何 時で も青 年 を 支え 続 けた 有能 な 秘書艦。 底抜 けに 明る くて 諦め の 悪 い 紅茶 が大好きな 金 剛 。情 に 厚 く 、 困 っ てい る艦娘 の 相談 に よ く乗っていた 。 そのおかげか 、 まだ 配 属さ れ て か ら の時 間 は浅いに も関わら ず周 り か ら の 信頼 は 厚 い 。 ﹁よー し終 わ った 。 そ れ じ ゃ あ 休憩 にし よ うか ﹂ ﹁待 ってまし ター !﹂ ﹁ ⋮⋮ 提 督は 少 し 金 剛さ ん に 甘 くあ り ませ ん か ?﹂ 金 剛の 誘 い を受 けた 提 督 を見 た 赤城 は わ ずかに 顔を 歪ませた 。 自分 の 言 うことには乗 り気 じ ゃ ないのに 対 して 、 金 剛の 言葉 には素 直 に 応 答 す る。確 か に 仕 事 の 話 と お 茶 の 話 で は お 茶 の 話 の ほ う が 気
は 進 む だ ろ う が 、 そ れ で も こ れ は あ か ら さ ま す ぎ で は な い だ ろ う か 。 赤 城 は 付 き 合 い の 長 い 自 分 の 言 葉 よ り も 金 剛 の 言 葉 に い い 反 応 を 示 す 青 年 を見 て む く れ ていた 。 そ の 様 子 を ば っ ち り 目 撃 し た 金 剛 。 こ れ は い い お も ち ゃ を 見 つ け たと 、金 剛は ニヤニヤ しなが らむ く れる赤城 に 向 かって 声を かけた 。 ﹁ あ っ れ ー ?赤 城 サ ー ン、 ど う し て そ ん な に 怒 っ て い る の で す カ ー ?も しかして 、提 督 を取られ ち ゃ ったか ら拗 ねて るん です カー ?﹂ ﹁ なっ !?べ 、 別に 拗 ねてな ん かいませ ん !﹂ ﹁ だ っ た ら ぁ 、私 が こ う や っ て 提 督 を 独 り 占 め し ち ゃ っ て も 文 句 は ない わ けです ネー ?﹂ ﹁ こ 、金 剛 !?﹂ 意 地 悪 な 笑 み を 見 せ た 金 剛 は 反 対 側 の ソ フ ァ ー に 腰 掛 け た 青 年 の 左隣 に 移動 し 、青 年の 左腕 に 抱 きつき 頬 ず りを はじ め た 。 突 然 の 行 動 に 動 揺 す る 青 年 だ っ た が 、 ま ん ざ ら で も な い の か 顔 を 真 っ 赤 に さ せ た ま ま 止 め よ う と す る し ぐ さ を 見 せ な い 。 そ れ が さ ら に 赤城 の 感情を逆撫 でした 。 デ レ デ レ す る 提 督 に 喝 を 入 れ よ う と 赤 城 が 一 歩 前 に 踏 み 出 す 。 し かし 、 次の 瞬間、 そこへ 新 たな る 刺 客 が乱入してきた 。 ﹁ 戻 っ た ぞ 提 督 ー。任 務 は 無 事 成 功 ⋮⋮ っ て 、 何 や っ て ん だ テ メ ェ ら !!﹂ ﹁ あ ら あ ら、 天 龍 ち ゃん ってば 、 すごい 変わり様﹂ 遠征 に 出 ていた 龍 田 、 天 龍率 い る 第 三部隊 が帰 投 したのだ 。 金 剛が 青 年に 頬 ず り す る様を目撃 した天 龍 は 、 遠征 の 疲れ など 感 じ させない 勢 いで 青 年に 掴み かかった 。 ﹁ ど う い う こ と だ !?ど う い う こ と だ テ メ ェ !何 で こ ん な ぽ っ と 出 の 新 入 り な ん かにそそのかさ れ て ん だ よ !?﹂
﹁待 て 待 て 待 て 待 て !誤 解 だ !お 前 の 考 え て い る よ う な 関 係 じ ゃ な いか ら !﹂ ﹁ そ ん な ぁ !あ れ だ け 激 し く 迫 っ て き て お い て 、他 の 女 の 前 で は そ ん な 事を言 う ん です カ !?﹂ ﹁ っ !!⋮⋮ テメェ、覚悟 はできて ん だ ろ うな ?﹂ ﹁ だか ら違 う ん だって !﹂ 青 年 の 胸 ぐ ら を 掴 み 今 に も 殴 り か か り そ う な 天 龍。 そ の 様 子 を 後 ろ か ら 眺 め ニ コ ニ コ す る 龍 田 。相 変 わ ら ず 青 年 の 隣 か ら 離 れ よ う と しない 金 剛 。青 年と天 龍 の 仲裁 に入 り なが らも、 ち ゃ か り青 年の 右腕 に 自分 の 腕を 絡 め てい る赤城。 太 陽 の 暖 かな 日差 しが 差 し 込む司令室 に 怒号 と 笑 い 声響 き渡 る。 今日も青 年の周 り は 騒 がしい ││││ ゆ さ ゆ さ 。 ︵誰 だ ろ う 。誰 か が 体 を ゆ す っ て い る。 そ れ に 何 だ ろ う 。 お 腹 の 辺 り が や けに 重 い ︶ 青 年は 自分 の 見 てい る風 景に 違和感を覚 えた 。 おかしい 、 体 を触 っ てい る のは 目 の前の天 龍 と 左隣 の 金 剛と 右 側の 赤城 だけで 、 お 腹 は 誰 に も触られ ていない 。 そ れ に 、 天 龍 に 揺 さぶ られ てい る 割には 視 界が ま っ た く 揺 れ て い な い 。目 の 前 の 風 景 と は 明 ら か に 矛 盾 し た 感 触 が 青 年の 思考を加速 させ る。 そして 青 年は 気 づいた 。 そうか 、 こ れ は夢か 。目 の前で 泣 きそうな 顔 を し な が ら 掴 み か か っ て い る 天 龍、 そ の 後 ろ で こ ろ こ ろ と 笑 う 龍 田 、 左腕 に 抱 きつく 金 剛 、 仲裁 に入ってく る赤城、 全て夢な ん だ 。青 年が全て を理解 した 瞬間、 彼の 視 界は 徐々 に 暗転 していった 。 真 っ 暗 な 視 界の中 、 胴 体 を覆 う 布団 の 感覚 だけが 青 年の体に戻って いく 。 そ りゃ そうだ 、 まだ着 任 して六 日目 なのにあ ん な戦 力を保持 し
てい るわ けが無い 。 で も いつか 、 ああいう 風 に 出会 った 艦娘 たちと 少 し 騒 がしい 日 常 を おく れ た ら いいな 。青 年はこ れ か ら の 出会 いに 希望を抱 きなが ら、 重 たい 瞼をゆ っく り と 開 いた 。 ﹁チ ⋮⋮ ﹂ 想像 して欲しい 。目を覚 まし 瞼を開 けた ら、 眼前 二 十 センチメート ル 先 に 左 目 と 口 し か な い の っ ぺ ら ぼ う の 顔。 こ の 不 意 打 ち が ど れ だ けの破 壊力を持 ってい る か を。 ﹁亜qsw で frtgy ふじこ lp;@:﹂ 青 年 の 心 臓 は ど く ん !と 大 き く 跳 ね 上 が っ た 。 全 身 か ら 汗 を 噴 き 出 しなが ら声 に も な ら ない絶 叫を上 げた 青 年は 、 突 然 現れ た 謎 の恐 怖 か ら 少 し で も 遠 ざ か ろ う と 被 っ て い た 布 団 を 跳 ね 除 け 畳 の 上 を ゴ ロ ゴロ と 転 げ 回り なが ら壁際 まで 移動 した 。 はあはあ 、 と 肩 で息 を す る青 年は 壁 に 背 中 を預 け 、 自分 の眼前にい た 相 手が 誰 なのか を確認 した 。 ﹁チ ⋮⋮ ﹂ ﹁ はあ 、 はあ⋮⋮何だ 、 お前か⋮⋮ ﹂ 青 年 を起 こしていたのは 、 昨 日叢雲 に海に 突 き 落 とさ れ た チ級 だっ た 。見覚 えのあ る顔を確認 した 青 年は 一度 大きく 深 呼吸し 、 よ う や く 落 ち 着 き を 取 り 戻 す 。 そ し て も う 一 度 チ 級 に 視 線 を 向 け た 。 ⋮⋮ ち ょ っ と 待 て 。冷 静 さ を 取 り 戻 し た 青 年 は 視 線 の 先 に あ る 光 景 に 違 和感を覚 えた 。 まったく手入 れを さ れ ていないぼさぼさの ショートカット の 髪、 彼 女が 艦娘 であ る こと を 物 語る 両 腕 に 装備 さ れ た 巨 大な 魚雷 発 射管、 怪 しげに光 を 放つ 左目。 そして 、 他 の チ級型 と区別す る た め に作業 員 に
描 かせた 左肩 の 真 っ 赤 な丸印 。青 年は 、 目 の前にい る深 海 棲艦 が 自分 になついてい るチ級 で 間違 いないと 認識 した 。 おかしいのはここか ら だ 。 ﹁ヌゥ﹂ その チ級 の 右隣 に 、見覚 えの無い物体が 鎮座 してい る のだ 。 謎 の 物 体 が 突 然 発 し た 声 に 少 し 動 揺 す る 青 年 。チ 級 の 隣 に あ る 物 は 一 体何な ん だ 。青 年はかす ん だ 目 で 謎 の物体 を凝視 す る。 規 則 性 の 見 ら れ な い 無 差 別 に 配 置 さ れ た 砲 台。 両 脇 か ら は み 出 る は が れ た 鉄 板 の よ う な 出 っ 張 り。 前 面 に 並 ん だ 歯 の よ う な 白 い 模 様。 青 年は 寝 ぼけた 頭 で 自分 の 記憶を辿る。 しかし 、 その よ うな物体 を室 内 に 配置 した 記憶 は存在しなかった 。 ﹁ヌゥ﹂ ﹁ っ !?﹂ 再 び 驚 愕 す る 青 年 。声 を 発 す る 謎 の 塊 か ら 若 干 青 み が か っ た 人 の 手が 飛 び 出 してきたのだ 。 しかし 、 そ れ だけではない 。青 年が 若 干 視 線を下 へ 向 け る と 、 謎 の塊か ら は 人間 の 足 の よ うな も のまで 生 えてい る。 ﹁ っ !!⋮⋮ま 、 まさか⋮⋮ ﹂ こ こ に き て よ う や く ま と も に 活 動 を 始 め た 青 年 の 脳 が 答 え を は じ き 出 した 。 確 か に 青 年 は チ 級 の 隣 に あ る 手 足 の 生 え た 謎 の 物 体 を 室 内 に 配 置 した 覚 えはない 。 しかし 、 その 謎 の物体と 同 じ も の を資料 で 見 たこと があった 。 深 海 棲艦 の 一 種 ﹃軽 空 母﹄ 、通称﹃ヌ級﹄ 。 チ級 と 同様、 提 督たちと敵 対関係 にあ る深 海 棲艦 がどういう わ けか
増 えてい る のだ 。 ﹁チ ⋮⋮ ﹂ チ級 はまだ 事情を飲み込め ていない 青 年の 事 などお 構 いなしに 、 左 手 に 装 備 さ れ た 巨 大 な 魚 雷 発 射 管 で 青 年 の 右 手 を ゆ っ く り つ つ く 。 こ れ は チ級 が 青 年に 鋼 材 を ねだ る ときの サイン だ 。 しかし 、 青 年の 右 手 を つつくと 同 時に 、 チ級 は 右 手に 装備 さ れ た 魚 雷 発 射管 で 隣 にい るヌ級を こ ん、 こ ん、 とつついてい る。右 手のしぐ さは 初め て 見る青 年だったが 、 そ れ が何 を意 味す る のか を 何故かはっ き り と 理解 できた 。 ︵ あぁ⋮⋮そいつに 飯をやれ と⋮⋮ 言 ってい る のか ︶ チ級 が ヌ級を連れ て来た 理 由 。 そ れ はとて も 単 純 な も のだった 。 昨 日、 叢雲 に海に 突 き 落 とさ れ た チ級 は 、 叢雲 に 言われ たとお り自 分 で 鋼 材 を 探 し に 海 を 放 浪 し て い た 。鋼 材 の 取 れ る 岩 場 を は し ご し て 、 よ う や くお 腹一 杯になったとこ ろ で 再 び 青 年のい る司令部 へと戻 ろ うとしたその時 、 彼女の 視 界にあ るも のが 飛 び 込ん できた 。 ﹁ ⋮⋮ ヌゥ ⋮⋮ ﹂ な ん と 、 大破した 状 態の ヌ級 が 岩 場に 引 っかかっていたのだ 。 少 し 前 ま で 他 の 艦 隊 と 激 戦 を 繰 り 広 げ て い た ヌ 級。相 手 の 艦 隊 が 追撃を してこなかったた め 何とか 一 命は 取り 留 め た も のの 、 すでに 艦 艇 と し て の 能 力 を 維 持 す る だ け で 精 一 杯 の ヌ 級。波 に 流 さ れ る が ま またど り 着いた 岩 場に ﹃ 偶然 ﹄ いたのが 、 食事 に や ってきた チ級 だっ たのだ 。 事情を聞 いた チ級 は何とか ヌ級型を助 け よ うとす る が 、 この海 域 で は ヌ級 の主 食 であ る ﹃ボーキサイト﹄ はほと ん ど 取れ ない 。 体 力 の 限 界が 近 い ヌ級 が 沈む のは も は や 時 間 の問 題 だった 。
早 く何とかしないと 。チ級 は ヌ級を助 け る 手 立 て を考 えた 。 そこで チ級 の 頭 に浮か ん だのは 、 自分を助 けてく れ た命の恩 人 の 顔 だった 。 チ級 は両 腕 の 魚雷 発 射管 の 上 に ヌ級を 乗せ 、 一 晩かけて 青 年のい る 司令部 へと 向 かった 。 ﹃ 偶然 ﹄ 他 の 艦隊 と 出会わ なかった 二艦 は 、 正 面 入 り 口 か ら 堂 々 と 司 令 部 内 へ 進 入 。司 令 部 内 を 巡 回 し て い る 警 備 員 の 目を ﹃ 偶然 ﹄ かいくぐ り、 青 年の 自室 があ る執務室 に無 事 到着 。 奥 の 自室 で 寝 てい る青 年 を 発 見 し 現 在に 至る という わ けだ 。 つ ん つ ん、 と 青 年の 右 手 を つつき 続 け るチ級 と 、 後ろ で も じ も じし てい るヌ級。 その 様 子 を見 て 、青 年は 思わ ず 言葉を漏ら した 。 ﹁ ⋮⋮こ ん な 出会 い 、望ん でない ん だけど⋮⋮ ﹂ 青 年 が 望 ん だ 出 会 っ た 艦 娘 た ち と の 少 し 騒 が し い 日 常 。新 た な 仲 間 ﹃ヌ級﹄ と 出会 い 、 青 年はその夢に 一 歩 近 づいた 。 い や、 近 づいて しまった 。 こ れ か ら 青 年 は 嫌 と い う ほ ど 経 験 す る こ と に な る。自 分 の 望 ん で いた 以上 に 騒 がしい 日 常 を。
着
任四日目:ヲ
っ
。
少 し前か ら 問 題を抱 えていた 青 年に 、更 な る 問 題 が圧し 掛 かった 。 新 たな 仲間、 軽 空 母 ﹃ヌ級﹄ が 加わり、 青 年の 部隊も そ れ な り の戦 力 が整ったのだが 、 そ れ は 同 時に 消費 の 増加も意 味す る。 ﹁ こち ら﹂ の常 識を理解 していない ﹁深 海 棲艦﹂ 。 本 能 の 赴 くままに 資 材 をむ さぼ る 彼女たちは 加減 という も の を知ら なかった 。 資 材 の 供 給 が 再 開 さ れ た に も 関 わ ら ず 一 向 に 減 り 続 け る 資 材 の 残 量。他 の 部隊 が 安泰ムードを見 せ る 中 、 青 年の 部隊 だけは未だに 予断 を許 さ れ ない 状況 が 続 いていた 。 そこで登場したのが 叢雲 大先 生 だ 。 深 海 棲艦 の 言葉をわ ずかではあ る が 理解 できた 叢雲 は 、 青 年の 懇願 を しぶしぶ 聞 き入 れチ級 と ヌ級 の教 育係 に 任 命さ れ た 。 資 材には 限り があ る、 沢 山 食 べた ら すぐに無くな る。叢雲 は 司令部 の 仕 組 みを 噛 み砕 いて 二艦 に 説明 した 。 しかし 、 ここで 新 たな問 題 が発 生。チ級 はまだ 言葉 が 通 じ る分、 教 え る 側として も 楽だったのだが 、 ヌ級 の 言葉 は チ級以上 に 分 か り づ ら く 意思 の 疎通 は 困難を 極 め た 。 途 中 で 我 慢 の 限 界 に 達 し た 叢 雲 が ヌ 級 に ロ ー リ ン グ ソ バ ッ ト を ぶ ちかました 回 数は優に十 を超 え る。 だがしかし 、 そ れ が 功を 奏したのか ヌ級 は積極 的 に 叢雲 の 言 うこと を 聞 く よ う に な っ た 。ヌ 級 は 叢 雲 の 言 葉 を 理 解 し よ う と 積 極 的 に 行 動 し 、間 違 い を 起 こ せ ば す ぐ に 間 違 い を 正 そ う と 機 敏 な 動 き を 見 せ た 。 叢雲 は 内心 ﹁自分 には教 育者 としての才 能 があったのか ﹂ と 思 って いたが 、 実際 は命の危機 を感 じた ヌ級 が 叢雲 の機 嫌を損 な わ ない よ う 必 死になっていただけだということ を、 本 人 は 知る 由 も ない 。 こうして 、 丸 々二日間 かけて 行われ た 叢雲 の 新人 教 育 は無 事成功 ? という形で幕 を閉 じた 。 司 令 部 を 押 し つ ぶ そ う と し て い た 大 き な 問 題 を 解 決 で き た こ と を手放しで 喜ん だ 青 年は 、 功労者 であ る叢雲 と共に 司令室 で 小 さな祝 勝 会を上 げた 。 とこ ろ がどっこい 、 まだ終 わり ではあ り ませ ん。 という より、 ここ か ら が本番といって も過言 ではない 。 叢雲 と祝 勝会を上 げた 翌朝、 青 年の 司令部 に 一通 の 書状 が届け られ た 。相 手先は ブイン基 地 総司令部。一 体何 事 だ ろ う 、 と 不思議 に 思 い な が ら も 青 年 は 包 み か ら 書 状 を 取 り 出 し て 内 容 を 確 認 し た 。書 状 に 書 か れ ていた 内容 は 、要約 す る と 以下 のとお り だ 。 ﹃ お 前 の 司 令 部 に い る 深 海 棲 艦 に つ い て 話 が あ る。 ち ょ っ と ブ イ ン 基 地 総司令部 まで来い ﹄ 青 年の時 間 が止まった 。 お偉いさ ん か ら まさかの 個人指名。 しか も、 今 まで 誰 に も 教え る こ となく 隠 していた 青 年の 司令部内 だけの極 秘事項 が 、 どういう わ けか 一 番偉い 人 たちに 知られ ていたのだ 。 青 年 の 頬 を 冷 や 汗 が 流 れ 落 ち る。 本 来 深 海 棲 艦 と 青 年 た ち 提 督 は 敵 対 してい る関係 だ 。 その敵 を保護 していたとな れ ば 、 青 年にはそ れ 相 応 の 罰 が 科 せ ら れ る こ と に な る だ ろ う 。提 督 の 権 利 剥 奪 ?謹 慎 ? 禁 固 刑 ?も し く は そ れ 以 上 ⋮⋮ 。脳 内 に 最 悪 の 結 末 が 再 生 さ れ る。 青 年は 深 い 、 とて も深 いた め 息 を こぼした 。 ︵ 全 て を 知 ら れ て い る 以 上、下 手 に 嘘 を つ い て ご ま か そ う と す る の は 逆効果 だ ろ うなあ⋮⋮どうし よ う 。 ⋮⋮い や、 も うどうし よ う も ない か 。も ういい や、 開 き 直 ってしまおう 。 お偉いさ ん が 相 手 ?そ ん なの 知 る か 。 権 利 剥 奪 ?そ ん な も ん 知 る か !も う ど う に で も な れ っ て ん だ !!︶ 半ば や けくそになった 青 年は 叢雲 と 、 連れ てく るよ うに 指 示さ れ た チ級、ヌ級 の 二艦を つ れ て ブイン基 地 総司令部 へと 向 かった 。 道 中 、他 の 提 督たちか ら の奇怪な 視線 が 青 年たちに 突 き刺さ る。
﹁ 何だ よ あ れ ⋮⋮ アイツ深 海 棲艦連れ て る ぞ !気持 ち 悪 ぃ !﹂ ﹁ う わ っ 、マジ だ !悪趣 味だなぁ 。叢雲 ち ゃん か わ いそ ∼﹂ ﹁相 当な 変人 だ よ な 。近寄ら ない よ うにし よ うぜ⋮⋮ ﹂ ﹁ 敵 を保護 だと ?提 督の恥さ ら し め﹂ 指を差 さ れ、 避 け られ、 気 味 悪 が られ なが らも、 青 年たちはただ 黙々 と歩くの み。 そ ん な中 、 青 年の 後ろを 歩いていた 叢雲 が 青 年にだけ 聞 こえ るよ うな 小 さな 声 で 言葉を 発した 。 ﹁ 好き放 題言われ て るわ ね 、私達﹂ 青 年は 後ろを ち らり と 覗 いた 。 そこにはいつ も どお り、 凛 とした 表 情 の 叢雲 が歩いてい る。 そうか 、 よ く よ く 考 え れ ばこうして 会話出 来 る の も こ れ で 最 後 な の か 。青 年 も 同 じ よ う に 小 さ な 声 で 叢 雲 に 答 え た 。 ﹁ そうだな⋮⋮ 悪 いな 、最後 までこ ん な ん で ﹂ ﹁ 別 に か ま わ な い わ。ア ン タ が 幸 薄 そ う な の は 出 会 っ た と き か ら 感 じ てたし ﹂ ﹁ そ ん な 俺 の所に 配 属さ れ たお前は 俺以上 に幸 薄 い奴だ よ な ﹂ ﹁ まったくその 通り だ わ ⋮⋮ 認め たくないけど ﹂ そ れ以降、 誰一人 として 言葉を 発す る ことは無かった 。 余所 見も せ ず 、 回り道も せず 、 青 年たちは 一直線 に 総司令部 へと 続 く 道を進み続 け る。 そ し て 、 い よ い よ 終 わ り の 時 が き た 。ブ イ ン 基 地 総 司 令 部 の 正 面 ゲ ー ト へ と た ど り 着 い た 青 年 た ち 。 こ の ゲ ー ト を く ぐ れ ば 終 わ る。 相棒 であ る叢雲 との 出会 い 、 本来あ り え る はずの無い 二艦 の 艦娘 との 出会 い 、 そして 、 始 まったばか り の 青 年の 提 督としての 生 活 、 全てが 終 わりを迎 え る。
﹁短 い 間 だったけどさ⋮⋮本当に 感謝 して るよ。 あ り がとう 、叢雲﹂ ﹁ ま 、感 謝 さ れ と い て あ げ る わ。 ⋮⋮⋮⋮⋮⋮ 私 も ⋮⋮ あ り が と ⋮⋮⋮⋮ ﹂ 青 年たちは ブイン基 地 総司令部 の ゲートを くぐった 。 ﹁ つ ーわ けで 、 そのままそいつ ら の 面倒見 たって ﹂ ︵ ええええええええええええええええええええええ !!?︶ この 返 答 を一 体 誰 が 予想 できただ ろ うか 。上 層 部 は 、 引 き 続 き 青 年 に 深 海 棲艦を預 け る 決 定を下 した 。 今回青 年 を 呼び 出 した 総司令部 の 真意 は 、 ブイン基 地 内 でう ろ う ろ してい る深 海 棲艦 が 、 青 年の 司令部 へ入っていくとこ ろを目撃 したと いう報告が 事実 かどうか を確認 す る た め だったのだ 。 ちな み に 、 目撃 さ れ たのは 叢雲 の ローリングソバット で 蹴り出 さ れ た ヌ級 であ る。 報 告 を 求 め ら れ た 青 年 は 、事 の あ ら ま し を 包 み 隠 さ ず 全 て 話 し た 。 上 層 部 の 提 督 た ち は 皆、 に わ か に 信 じ 固 い 話 だ と い う 顔 を し て い た が 、 青 年に 寄り添 う チ級 と ヌ級 がおとなしくしてい る の を見 て 、 青 年 の 話 が 事実 であ る こと を認識 した 。 深 海 棲 艦 が 人 間 に な つ く な ど 、今 ま で 聞 い た こ と が な い 。 し か し 、 青 年 の 司 令 部 に い る チ 級 と ヌ 級 は ど う い う わ け か 青 年 に な つ い て い る。 こ れ は 今 までに 類 のない 、 非 常に 興 味 深 い 事例 だと判 断 した 上 層 部 は 深 海 棲艦 の 生 態 調査 お よ び 観察も 兼ねて 、 二艦 の 深 海 棲艦を今 まで どお り青 年に 任 せ る こと を 決 定 したのだ 。 し か し 、青 年 に 報 告 怠 慢 や そ の 他 も ろ も ろ の 罪 状 が あ る の も 事 実 だ 。よ って 総司令部 は 、 罰 として 青 年 を 半年 間減 給 処分 とし 、 さ ら に 、 通 常の 提 督としての業 務 に 加 え 、 深 海 棲艦 について 分 かった 事を逐一 報 告 す る 義 務 を 言 い 渡 し た 。想 像 を 遥 か に 越 え た 破 格 の 軽 さ の 罰 で あ る。
﹁ ⋮⋮な ん つ ー か 、拍 子 抜 けだな ﹂ ﹁ ええ⋮⋮ついさっきまで 思 いつ め てた 自分 が 馬鹿ら しい わ﹂ 夕日を背 に 、司令部 へと帰 宅 す る一人 と 三艦。 総 司 令 部 入 り す る 前 の あ の 覚 悟 と は 一 体 な ん だ っ た の か 。 あ の シ リ ア ス な 空 気 と は 何 だ っ た の か 。 お 互 い 今 生 の 別 れ の つ も り で 言 葉 を交わ していたせいか 、 青 年 も叢雲も お 互 いの 顔を まと も に 見れ ずに いた 。 真面目 な 台詞を言 った 後 の 、 あの む ずが ゆ い恥ずかしさといった ら とて も言葉 では 表現 できない 。 ﹁チ ⋮⋮ ﹂ ﹁ヌゥ﹂ そ ん な 一人 と 一艦 の 気持 ちなど 露知ら ず 、 後ろを 歩く 二艦 は ﹁オナ カスイタ﹂ と 青 年に晩 飯を催促 す る のだった 。 ◇ 次の 日、 港には 提 督であ る青 年と 旗艦 であ る叢雲、 深 海 棲艦 の チ級 と ヌ級 の 姿 があった 。 資 材の 供 給が 開始 さ れ、 深 海 棲艦 の 二艦 が 加減を覚 えた 今 こそ 出撃 の時 。叢雲 単機の 出撃 ではない 。チ級 と ヌ級を部隊 に 加 えた 、 青 年 提 督 率 い る真 の ﹁ 第 一艦隊﹂ がついに 出撃 す る のだ 。 叢雲 大先 生 の教えその 一、働 かざ るも の 食 うべか ら ず 。 食 べてばっか り いないで 少 しは 働 け 、 と教 育を受 けた チ級 と ヌ級 は 今日 か ら 本格 的 に 叢雲 の 指揮 の 下 で活 動 す る ことになった 。 今回 の 出撃内容 はごく単 純 な も のだ 。 い や、 出撃 という より遠征 と
言 ったほうがいいか も し れ ない 。 叢雲 と 深 海 棲艦 たちの 連 携 を確 か める た め に 、 今回 第 一艦隊 は 鎮守 府 海 域 の南 西諸島沖 まで 資 材の 採掘 に 出る ことにした 。 また 、 補 給 艦 の 存 在 が 確 認 さ れ て い な い 鎮 守 府 海 域 で 生 き 残 っ た 深 海 棲 艦 が ど の よ うにして 消費 した 燃料や 弾 薬を補 給してい る のか 、 そ れを知る こと も今回 の 遠征 の 目的 の 一 つであ る。 叢 雲 が チ 級 か ら 聞 い た 話 で は 、補 給 艦 の 利 用 を 許 さ れ る の は ﹃エ リート深 海 棲艦﹄ 以上 の み で 、 そ れ以外 の 深 海 棲艦 は海 面 に浮か ん で い る ご く わ ず か な 廃 材 や、岩 場 で 取 れ る 天 然 の 資 材 を 探 す の だ と い う 。深 海 棲艦 社 会 の 上下関係も なかなか 厳 しい よ うだ 。 準 備 を 整 え た 三 艦 は 南 西 諸 島 沖 へ 向 け て 出 撃 し た 。深 海 棲 艦 の チ 級 と ヌ 級 は 旗 艦 で あ る 叢 雲 の 後 を し っ か り 追 い か け る。進 行 方 向 を 変 え た り 一 時 停 止 し て み た り と 、叢 雲 は わ ざ と 途 中 で 動 き を 変 え る が 、 二艦 はその 動 きに も ち ゃん と 反応 して 方向転換 した り 停止した り す る。 と り あえず簡単な 陣 形は組 め そうだ 、 と 叢雲 は 思 っていた 以上 の 成果 に 満足 した 。 そ う こ う し て い る 内 に 目 的 地 点 で あ る 南 西 諸 島 沖 へ 到 着 し た 叢 雲 率 い る 第 一部隊 は 、青 年の 指 示 通り資 材の 回収を始め た 。 叢 雲 は チ 級 型 と ヌ 級 型 に こ こ ら 一 帯 で 資 材 を 集 め る と 指 示 を 出 す 。 チ級 と ヌ級 はお 互 い 顔を見合わ せ 、 小 さくうなずきあうと キョロキョ ロ と周 囲を見 渡し 始め た 。 最初 に 動 いたのは チ級 だ 。 そ れ に 続 く よ うに ヌ級、 叢雲も移動を開 始 す る。チ 級 は い つ も 自 分 が は し ご し て る 岩 場 の ル ー ト を 通 っ て 資 材 を回収 す る ことにした 。 と い っ て も、岩 場 か ら 取 れ る 天 然 の 資 材 の 量 も た か が 知 れ て い る。 結局 最初 の 岩 場で 回収 できたのは 少 しの 鋼 材と 、 ヌ級 の よ うに海流で 流 れ 着いた 残骸 か ら取れ た わ ずかばか り の 燃料 だけだった 。 ︵ たったこ れ だけ⋮⋮ ︶ 取得 できた 資 材の 少 なさ を見 て 叢雲 は 思 った 。 まさか 、 今 までに破