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ブナ科植物の果実(堅果)の成分と味について-香川大学学術情報リポジトリ

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香川生物(KAGAWA SEIBUTSU),㈹:25−28,1982

ブナ科植物の果実(堅果)の成分と.味について

藤 原 滝 雄

高松市立玉藻中学校

TheIngr・edient and Taste of Acor・nSin15 Species of

Family FagaceaeinJapar)

Takio FuJIWARA,7bmamoHigh

は じ め に 香川県下に自生,または植栽されているブナ 科Fagaceaeの植物は,筆者の調査(藤原,1979) によると,クヌギQ髄βγβ%∂α¢%£宜ββ宜竹脇,ツ ブラジイCαβ£αれOpβ宜∂ ¢≠8p宜dαね,シリブカガ シ劫β肌宜αggαるγαなど5属24種である。これ らの形態や分布を調べて−いるうちに,果実(堅 果)の成分は,種間や属間で違いがあるのか, また果実は食べることができるのかという疑問 ぶ¢九00J,7七尾朗乃(虎紬760,Jαpα彿 をもった。 そこで,果実の成分や味を調べ,検討してみ たので報告する。 対象にした果実と分析方法 分析に使った果実は,クヌギ,アベマキなど 17種で,完熟したものを採取し,約1か月自然 乾燥させたものである(第1表)。学名と和名は 北村・村田(1979)に従った。 第1表 対象にした種子と採集地 採 集 地 採集年月日 学 名 コナラ属 Q%βγC%βL クヌギ Q。aCutissi刑αCarTuther・s アベマキ Q。Variabilis Blume

カシワ Q・dentataThunberg

ミズナラ Q。mOngOlicaFischer・ex

¶ユr・CZlVar・.gγ0βββ∂の●γα払(Bl。) コナラ Q・8βγγα孟αMur・r・ay ナラガシワ QαJ宜β乃αBlume

ウバメガシ Q phillyraeo弱es Asa Gray

チリメソかンQ¶pん古物γαβ0宜dββf。¢γ官印α (Matsum”) イチイガシ Qlrgilva Blume

アカガシ Q・aCutaThunber・g

ツクバネガシQhSeSSilijblia Blume アラカシ Q。gね耽¢αmunber官

シラカシ QlmyrSinaefolia Blume

シイ属 Caslanopsis spach

ツブラジイ C。¢≠βp宜dαぬ(munber・g) スダジイ C。¢祝叩滋如ねⅥ訂・.ぶ宜βろogd五官(M奴im) マテバシイ属 Pasα托ia oer・Sted シリブカガシPglabra(Thunberg) マテバシイ P.β血宜8(Makino) 香川県高松市室新町 川ぶち 1979 1018 〝 綾歌郡綾上町 萩の戸神社社章 〝 〝 〝 岡山県真庭郡川上村 蒜山 1980 10 19 ′′ ′′ /′ 香川県綾歌郡綾上町 長柄ダム東岸 〝 〝 長柄ダム西岸 〝 三豊郡三野町 弥谷寺 〝 高松市六条町 善教寺の庭 〝 仲多度郡琴平町金刀比羅宮社叢 〝 高松市菅沢町 熊野神社社叢 〃 仲多度郡琴南町 落合神社社叢 〃 高松市西植田町 藤尾神社社叢 〃 仲多度郡琴平町 大歳神社散策 〝 大川郡白鳥町石清水八幡宮社叢 〝 高松市栗林町 栗林公園 ′′ ′′ 〝 9 〝 25 10 11 〝 10 10 脚〃1979198。 〝 1116 1979 10 24 〝 1025 〝 1018 〝 1025 〝 1024 〝 善通寺市大麻町 大麻神社社叢 〝 10.23 〝 高松市栗林町 栗林公園 10 24 24 一25−

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(2)

○ 粗脂肪 粗脂肪の含有率は,粗たん自質とは逆に,マ テバシイ属とシイ属が低い。 ○ 粗繊維 マテバシイとシリブカガシは同属でありなが ら,それぞれ03珍,10労となり,大きい差 が見られる。 シイ属のツプラジイとスダジイは,どちらも 05珍で等しい。アベマキとクヌギもそれぞれ 09労,119ちになっており,ほぼよく似てい る。 ○ 糖質 糖質を最も多く含むもの∼ま,マテバシイ,ス ダジイ,ツブラジ イである。 ○ 灰分 灰分は,マテバシイとカシワに多く含まれ, シイ類は少ない。 ○ カロリ・一 粗たん白質,粗脂肪,糖質のそれぞれに4 cal/包,9cal/セ,4cal/短を乗じて算出した 定量にあたっては,社団法人香川県薬剤師会 検査センタ」一に依頼した。成分の分析は,それ ぞれの種について,ほぼ生垂100gの子葉を用 いて,くり返しなしにおこなった。成分の内容 は,水分・粗たん白質・粗脂肪・粗繊維・糖質 ・灰分とカロリ・−であるbクンニソ(渋さ一あ くのもとになる物質)やビタミソ類は分析して いない。味は果実を採取して,1週間以内に, 生の子葉の部分をかじり,調べたものである。

結 果 と 考 察

1)成分 分析の結果は第2表に示した。この表から次の ようなことがわかる。 ○ 粗たん自質 含有率の高いのは,マテバシイで,次にミズ ナラ,カシワ,スダジイの順になる。 属間では,マテバシイ属(平均値46飾), シイ属(平均値329ら),コナラ属(平均値28 珍)の順になり,わずかずつの差が見られる。

第2表 果実(生,子葉100g当)の成分

\ 成分 水 分 粗たん自質 粗脂肪 粗繊維 糖 質 灰 分 カ ロリ−

和名 (%) (珍) (珍) (労) (労) (cal/100g) クヌギ 447 2 5 15 11 489 13 219 アベマキ 425 29 2 3 0 9 501 13 233 カシワ 483 3 6 17 21 42 4 19 199 ミズナラ 400 3 8 14 19 515 14 234 コナラ 42 3 2 5 18 22 498 14 225 ナラガシワ 441 36 17 16 475 15 220 ウバメガシ 47 2 22 15 10 469 12 210 チリメンガシ 49 3 2 9 11 17 440 10 198 イチイガシ 401 2 5 06 541 14 238 アカガシ 36 9 2 2 15 2 4 55 7 13 245 ツクバネガシ 457 2 5 10 08 485 15 213 アラカシ 40 4 2 8 13 06 534 15 237 シラカシ 376 24 23 0 6 557 14 253 ツプラジイ 363 30 06 05 58 6 10 252 スダジイ 322 3 4 0 4 05 62。.5 10 267 シリブカガシ 420 3 0 07 10 522 11 227 マテバシイ 23 5 62 07 03 674 19 301 −26−

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(3)

第3表 クリの成分(生,可食部100g当)(吾川・芦田,1981による) 成 分 水分(g) たん白質(g 脂質(g クリ 602 2 7 03 繊維(g) 糖質(g) 灰分(g) カロリ1−(cal/100g) 10 345 13 156 ものであるが,カPリ・−が高いのは,マテバシ イ,スダジイ,シラカシ,ツプラジイ…・…・の順 となる。 シイ属のツプラジイとスダジイは,非常によ く似た成分で,他属とは明らかに区別できる。 食用になるかどうかについては,クリCα8一 第4表 味とあくぬき ≠α㈲βα ¢γβ朋ぬ の成分(第3表)と比較しても わかるように,どの果実もクリの果実とよく似 ており,栄養分的には問題はない。しかし,渋

がきの渋ぬきと同じように.,渋ぬき(あくぬき)

をどうするかが問題となる。 2)味 ここでいう味とは,渋さ,甘さを意味してい

る。渋さは俗にあくといい,その原\困はクンニ

ソである。 味と簡単なあくぬきの方法を調べたのが第4表 である。味はあくまでも感覚的なもので客観性 は乏しい。あくぬきを必要としないで食べられ るのは,シイ炉のツブラジイとスダジイだけで ある。シイの実は白くて,きめが細かく,甘い。 ちなみに高知市の日曜市では,10∼11月ごろに なると生シイや焼きシイが露天で売られている。 しかし,これは,あくまでも主食や副食の一・部 とするのではなく,珍味なものとして売られ■て− いると考えられる。 本県におけるツプラジイは,主として山間部 の比較的に大きい神社の社董に見られるが,そ う容易に手に入らない。 他の果実(どんぐり)については,あくがあ るので,そのあくぬきに手間がかかる。あくぬ きがたやすくできるならば,米の粉や小麦紛な どに混ぜて,食料品や菓子製品をつくることは できると思われる。 大昔にブナ科植物の果実を食べていた事実は 渡辺(1979)が報告している。それによると, 山口県熊毛郡平山町岩田遺跡では,イチイガシ, ツブラジイ,福岡県春日市門田遺跡では,イチ イガシ,アカガシが出土されている。また,現 代でをま,奈良県北部や京都府北部で,アラカシ

やシラカシを数日∼30日水でさらした後,かに

めしとして米に混ぜたり,じざいもちとして単

独で食べるという民俗例を報告している。 香川県にも,果実の出土例や民俗例はあるか 属 和 名 味とあくぬき あくが強く,非常に クヌギ 渋い。2∼3か月水に アベマキ さらしても,炊いても コナラ 渋みはとれない。

囲 カシワ

やや渋く,何回もく ミズナラ り返し水から炊いて, かっ色の水が出なくな コナラ ナラガシワ ったら,水にさらすと あくはとれる。 ウバメガシ コナラ やや渋いが,落葉カ チリ メ ンガシ シほどでほない。あく

イチイガシ アカガシ 月さらす。 ツクバネガシ アラカシ ツブラジイ 渋みは全くなく,甘 シイ スダジイ い。あくぬき不要。 シリブカガシ 非常に渋く,あくは マフ ̄/ヽ なかなかとれない。 シイ マテバシイ やや渋い。冷水にさ らすとあくはとれる。 −27−

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謝 辞 この研究にあたり,果実の成分分析をしてい ただいた社団法人香川県薬剤師会検査センタ・− 検査主任木村康男,同検査技師曽根正樹両氏に また貴重な資料をいただいた名古屋大学教授渡 辺誠氏に心から謝意を表する。 引 用 文 献 藤原滝堆い1979.香川県のブナ科植物について。 香川生物学会第31回総会での発表資料. 北村四郎・村田源‖1979、原色日本植物図鑑木 本編〔Ⅱ ■ト保育社,大阪. 吾川春寿・芦田浮け1981.総合栄養学事典(三 訂)補日本食品標準成分表。同文書院,東京 渡辺誠.1979..縄文時代の植物食。雄山閣,東京 もしれないが調査はしていない。 要 約 ブナ科植物17種の果実の成分や味から,種間 や属間の違い,食用について検討してきた。 1)含有率が最も高いのは,粗たん自質では, マテパシイ,粗脂肪ではアベマキ・シラカシ, 粗放経ではアカガシ,糖質ではマテパシイ,灰 分ではカ・ンワ・マテバシイ ,そして,カPリ・− が高いのはマテバシイである。 2)アベマキ・ウバメガシ・シリブカガシなど 多くの果実は,あくが強く渋い。しかし,ツプ ラジイ・スダジイは,あくがなく甘い。しかも 色が白く,きめが細かく,舌ざわりがよい。 −28−

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参照

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