樹皮に馴養した嫌気汚泥を用いる水素発酵-香川大学学術情報リポジトリ

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樹皮に馴養した嫌気汚泥を用いる水素発酵*

桑原 正章,山口 映,鍵利 達夫

MICROBIAL PRODUCTION OF HYDROGEN USING ANAEROBIC

SLUDGE ACCLIMATIZED TO BARK

MasaakiKuwAHARA,Akira YAMAGUCHIand Tatsuo KAGIMURA

HydrogenwasevoIvedflomglucosebyanaerobicsludgeacclimatizedtoezomatsubark…Inaexperimentusing ajar触menter,2.06lofgascomposedof42%hydrogenwaspIOducedfiOm10gofglucoseduringfbrmentationat 370Cfbr24hI.,Xyloseandcellulase−digest ofcelluloseweIealsoseIVedassubstratesofhydrogen production. Inthef由mentation且uid,aCeticacidandn−butyricacidwereaccumulatedataconcentrationO.20andO.18%,re− spectiveユy。Althoughevolutionofmethanef上OmCellulosewasinhibitedby2−bromoethanesulfbnicacid,prOduction OfhydrogenftOmglucosewasnota能ctedbythisinhibitor エゾマツ樹皮に馴巻した嫌気汚泥は,グルコースから水素を急速に発生させた.ジャ・−ファーメンタ・−を用いた発 酵では,370C,24時間において10gのグルコースから,水素42%を含む2い06Jのガスが得られた.キシロースやセル ロー・スのセルラーゼ消化液からも水素が得られたL.また,発酵液中には酢酸と n一酪酸がそれぞれ0.20および0”18% 蓄積したu メタン発酵阻害剤2−ブロモエタンスルホン酸によりセルロー・スからのメタンの生成は抑えられたが,グ ルコ・−スからの水素の発生は影響を受けなかった. 緒 口 微生物など,生物を用いて生産されるエネルギーはバイオエネルギ・−と姶称されている.嫌気発酵の一・種であるメ タン発酵は広く実用化されており,さらに,古くから発酵生産の根幹であったアルコ・−ルは将来の燃料としての用途 が飛躍的に拡大すると考えられるく1) 本研究は林産工業の各段階で発生する廃棄物のうち,特に針美樹樹皮を対象として微生物的手段によりエネルギー 物質に変換することを目的としている.林産廃棄物はセルロース,ヘミセルロ・−スおよびリグニンの三主要成分から なり,前二者を含むホロセルロース分が微生物変換の基質となる.また,ホロセルロース分の利用のためにはリグニ ンは障壁となり,何らかの手段によりリグニンを除去することが必要(2)と考えられる小 これまで,われわれは樹皮 を基質とするメタン発酵を・試み(a),化学的前処理を行いKlasonリグニン区分を除去した場合にガス発生が向上する こと,さらに,NaOH処理と白色腐朽菌処理を組合せることによっても樹皮の発酵性が改良されることを認めた..こ れらの実験の過程で,樹皮に馴馨した嫌気汚泥を用いると,グルコースやセルロ・−スの糖化液から水素が極めて急速 に発生する現象が見出されたので本報において述べる. 実 験 方 法 1爪 嫌気発酵 (i)嫌気汚泥の調製 高松市下水処理場で採取した嫌気汚泥を種汚泥培地(60メッシ.ユ以下に粉砕したエゾマツ樹 皮5.0%,グルコース1.0%,酵母エキス0‖5%,ペプトン0・・25%,K2HPO40−2%,KHヱPO.0.2%,CH3COONall・0%, *樹皮の嫌気発酵(第2報).(第1報は引用文献(鋤こ当る.)

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54 香川大学農学部学術報告 第36巻 第1号(1984) MgSO4・7H200」−05%,ZnSO4・7H20001%,−ca(OH)20月1%,FeSO。・(NH4)zSO4・6H20001%)に添加し,pH70に 調整した後に300cに保持した (ii)水素発酵 フラスコスケールでの轟酵は次のように行った…100mJ容三角フラスコに糖などの発酵基質を各 各5gとり,無機塩溶液(NH4ClO・3%,K2HPOヰ012%,MgSOヰ・7H200・05%,酵母エキス0い01%)(ptI7.¢80mJ, 種汚泥15g(湿重畳)を添加後発酵装置(8)に取り付仇 ■7ラスコ内の液相および気相をアルゴンガスで置換し,恒 温水槽中で水上置換により100mJ容ポリエチレン製メスシリンダーに捕集した,また,実験によってはメタン発酵 阻審剤2−ブロモエタンスルホン酸(4)を5mMとなるように加えて発酵を行った“ジャーフア・−メンタ・−・スケールで の発酵は次のように行った・NBS社製以OFLO−C30の1Jジャ巾−−・中に培地1J(グルコ・−ス10g,酵母エキス2g, (N札)1SO41L・紬,KユHPOヰ2、9g,KH2PO41い5g,MgC12・6モ‡201hOg,CaC120.15g,FeSO4・7H200.25mg,NaS・ 9H2010g,レザズリン0・2mgを含む)(pH7い0)に種汚泥200mJを添加し,370Cで培養した.発生ガスは飽和食 塩水中で水上置換により輔集した 2‖ 発酵試料の前処理 エゾマツ樹皮は前報(3)に従い,1%NaOHで抽出後,洗軌 乾燥した.セルロ・−ス試料の糖化液は次のように調 製した・・アビセルSF(■7ナコシ薬品)5g,セルラ≠ゼ3S(ヤクルり1」Og,リン酸緩衝液(0.5M,pH5.取水80 mJからなる反応液を370cに72時間保持した.この反応液を腐心分離して不溶物を除去し,上澄液を糖化液として 使用した 3リ ガスクロマトグラ■フィー 日立ガスクロマトグラ・7163型を用いた. (i)ガス分析 PolapakQ(60∼80メッシ.コ.)を充填 したガラスカラム(3mmx2m)を用い,TCDにより行っ たり分析条件は次のとおりである,カラム温度300C,枚 出器温度100OC,キャリアガスAr(40ml/min) (ii)揮発性脂肪酸の分析 発酵液を遠心分離(3,000 Ⅰpm,5min)し,その上澄液1.OmJに濃硫酸1滴を加え て酸性とし,内部標準物質(安息香酸メチル)を0‖01% 含んだエチルエーテル1りOmJを加えて抽出後,エーテ ル屈を分析に供した.分析にはSP−1200(Uniport5%, 60∼80メッシュ)を充填したガラスカラム(3mmx2m) を用い,FIDにより行った.分析条件は次のとおりであ る−.カラム温度 900C,インジぷ.クション1300C,キャ リアガス N2伊Omg/min). TO−〓ニpぎ叫OAむSdU 結 果 1.ジャーファー・メンターを用いる水素発酵 フラスコスケールでの発酵を検討中,エゾマツ樹皮に 馴馨した汚泥を用いた場合,5gのグルコー・スから3‘70c, 40時間の発酵で49%の水素および40%のCO2を含む 340mJのガスが得られた,このことはグルコースを基 質とする水素発酵の可能性を示すものである、そこで ジャーファーメンターを用いる水素発酵を試たい Fig.1 に示すように,ガスの発生は約3時間のIagの後急速に 進行し,10gのグルコ・−スから24時間で吸%の水素およ び48%のCOヱを含む2.06Jのガスが得られた‖ 特に発 酵3∼4時間では対数増加的なガス発生が認められた. ガス発生に伴い発酵液のpHが低下したが,これは後述

Fig小1… Production ofhydrogen fl・Om glucose uslng

anaerobicsludgeaccJimatizedtobark.

TolOOOmlof themedium containingl.0% glucose,0.2%yeastextract,013%(NH.)2SO4, 029%K2HPO4,0い15%KH2PO.,0..1%MgC12い

6H20,0・015%CaC12,2‖5×10 ̄る%托SO417鴎0,

1、0%NaS”9H20and2.,0×10−6%resazurin,

200mlof anaerobic sludge acclimatized to

ezomatsu bark was addedand incubated at

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ニ∈︶pUArOAむS沌U 0 0 0 0 5 5 0 0 4 ︵12︶p“ざ︼OAむSdU 12 24 Hours

Figl2lE鮎ct ofinitiaIpH of the fbrmentation mediumonevolutionofgas Anaerobicfermentationwascarriedoutina lOO−ml鎖ask containing5%glucose as a Substrateat370C 1,pI17”5;2,pH7・0;3,pH6小6;4,pH 6小0;5,pH5.5;6,pH50 0 5 10 15 Days Fig”3..E鮎ctof2−bromoethanesulfbnicacid(BES)on gasevolution紐Om glucose,Cellulose and ezo− matsuba工k

Anaerobic fbrmentation was carried outin a lOO−mlflaskcontaining5%substrateat37OCin thepresenceorabsenceof5mMBES 1:Glucose,−BES 2:Glucose,+BES 3:AvicelSF,−BES 4:AvicelSF,+BES 5:NaOHrtreatedezomatsubark,−BES 6:NaOH−treatedezomatsubark,+BES するように揮発性脂肪酸の蓄積によるものと考えられ る. 2り ガスの発生に及ぼす初発pIiの影響 嫌気発酵の場合,発酵液の初発pH は発酵に大き な影響を与える..pH50∼7.5の範囲で検討したとこ ろ,Fig“2に示すようにpH70付近で最も高いガス 発生.がみられた.これは樹皮からのメタンガス発生と 同じ傾向である. 3い 揮発性脂肪酸の誓培 メタン発酵は酸発酵の過程を経る(5)1水素発酵の場 合にも揮発性脂肪酸が蓄積される可能性が考えられる1. 樹皮に馴養した汚泥および馴馨しない汚泥を用いて排気発酵を行わせた.発酵液中の脂肪酸の濃度は4日日において, 酢酸については,馴養汚泥および非馴馨汚泥を用いた場合それぞれ0リ20%および0‖02%,n−酪酸については0.10% および0109%,プロピオ■ン酸については0・・01%および痕跡盈であったり また,ト酪酸,n一昔革酸は極めて微塵であっ た・このように,馴養汚泥では酢酸およびn一酪酸発酵が,非馴養汚泥では酢酸発酵が行われていることが認められた. 4い 水素発酵に及ぼすメタン発酵阻審剤の影響 嫌気条件においてCO2あるいはCl一単位の還元過程を阻著することによりメタンの生成を抑え,水素を発生させ ることも可能と考えられるlそこでグルコース,セルロース(アビセル)およびNaOH処理エゾマツ樹皮等,すで にメタン発酵の基質となる炭素源を用い,メタン発酵阻書剤の一層である㌻ブロモエタンスルホン酸 5mM)存在下 でのガス発生を検討したいFig3に示すよ・うに,グルコ・−スを基質とした場合,5日間の培養において阻審剤添加で 395mJ,無添加で348mJのガス発生がみられた,1日後におけるガス中の水素含盈はそれぞれ49および4$%でほぼ 同様の水素発生であったい一方,アビセルを基質とした場合ガス発生は緩慢であったが,阻審剤無添加の場合15日間 で55%のメタンを含む878mJのガスが得られた.このガス中には水素は検出されなかった.阻春剤添加の場合ガス 発生は40mJとなり,水素も検出されなかった‖ さらに,NaOH処理エゾマツ樹皮からは52%のメタンを含む225mJ のガスが得られたが,阻書剤添加により発酵は抑えられた..以上の結果はセルロースに対しては通常のメタン発酵が

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香川大学農学部学術報告 第36巻 第1号(1984)

Tablel.EvolutionofgasfiOmXyloseandcellulase−digestsofcellulosepreparations

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Substrate Sugarconc. GasevoIved*l H2COnC.

% mJ % ち7 45 45 11 29 * ︶ 9090824316 54 2 ′0 つ︺ 2 ︵ ’一 5.0 Xylose Cellulase−digestofAvicelSF ll5 3.4 Ce11ulase−digestofNaOH−treated O.15 ezomatsu bark Cellulase−digestofholocellulose O.28 f土action ofezomatsubark AnaerobicfbrmentationwascarIiedoutinalOO−ml且askat370C *1DuIing2−dayfermentation *2During14−dayfbrmentation 行われるが,グルコ・−スに対しては特異的に水素発酵が行われることを示している. 5.キシロースおよびセルロ・−・ス糖化液からの水素の発生 次いでグルコ1−ス以外の糖試料からの水素発酵について検討した.主としてグルコ1−・スを含む,セルロースのセル ラーゼ糖化液,木材へミセルロ1−スの構成糖の一つであるキシロース,さらに水素の発生が脂肪酸を経る可能性があ るか否かを推定するため酢酸およびn一酪酸をも基質としたい 結果をTablelに示したu キシロースからのアビセル 糖化液からと同様ガスは急速に発生した… しかし糖化液において発酵がFig3に示すと同様4日間で停止したのに 対し,キシロースからのガスが継続して発生し,14日間で960mJに達した.水素は糖化液の場合45%,キシロ、−ス の場合3′7%であった‖NaOH処理樹皮および樹皮のセルロース区分の糖化液からも水素は発生したが,量的にはキ シロースあるいはアビセル糖化液に劣った.−・方,酢酸およびn一酪酸からはガス発生は全くみられなかった・ 考 察 −・般にメタン発酵は二段発酵(5)であるとされ,第1段階は多糖類,脂肪,タンパクなどが加水分解を受けた後揮 発性脂肪酸に変換される酸発酵であり,第2段階は月旨肪酸からガスが生成するメタン発酵である・前者には通性嫌気 性菌群が,後者には絶対嫌気性菌群が関与する.また,セルロースは絶対嫌気性菌によっても分解,ガス化される‖ メタンはCO2,ギ酸やピルビン酸等の炭素が道元されることにより生成するが,この過程ではCoenzymeMやF420 など特殊な補酵素が関与する(6).もし,この過程で水素が過剰に供給されるか,CoenzymeMのようなCrキャリ アの還元が行われない場合には水素の発生,苔墳がおこる可能性がある. Buswell(7)の公式に従えばグルコース1gからはメタンとCO2を50%ずつ含む744mlのガスが発生するはずで ある..しかし,われわれの実験においてはグルコースからはメタンは発生せず,40%以上の水素を含むガスが得られ た.このことはエゾマツ樹皮に馴馨した嫌気汚泥には水素を過剰に生産する微生物相,すなわちCわ勇力ばね刑㌧湧功一 moα地肌その他の絶対嫌気性菌(8)が高い濃度で存在することを示している=発酵液中には酢酸とn−酪酸が他の脂 肪酸よりも高い濃度で存在したが,この発酵パターンはC・血の両c〟椚(8)が高い頻度で存在することを示しているも のと考えられる。.Minodaら(9)は嫌気発酵の際に生成する脂肪酸の濃度から,発生し得る水素の盈を算出し,酢酸 あるいはn一酪酸を生成する系においては1モルのグルコースあたり2モルの水素が発生し得るとしている“これを もとにすると,ジャーファーメンターから得られた水素は理論収率の35%という借になるいCoenzymeMの括抗体 である2ブロモエタンスルホン酸を添加した場合セルロースからのメタン発酵が抑えられたのに対し,グルコース の場合阻書剤の添加においても無添加の場合と同塵の水素が生成した‖ このことば樹皮馴養汚泥中にはセルロースの 分解とメタン発生に関与する微生物群と,グルコースからの水素の生成に関与する微生物群の両者が混在しているこ とを示している. 水素発酵には嫌気性細菌を用いる方法と光合成微生物あるいは藻類(10)を用いる方法が考えられ得るり前者におい

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ては単一・の微生物の純粋培養を利用する方法(11)と,この報告で示したようなミクロフロー・ラを用いる方法が考えら れるu Minodaら(9)は牛ルーメン微生物を2−ブロモエタン存在下で嫌気的に培養することにより水素が得られると 報告している.純粋培養およぴミクロフローラともそれぞれ得失があるが,ミクロ■7ロト−ラを用いる方法では微生物 相を一・定に保つための何らかの手段,例え.ば汚泥馴巷法などが必要であるが,微生物管理が極めて単純であることが 利点となるであろうu 何故に樹皮馴養汚泥に水素発酵に適する嫌気性細菌群が存在するかについては検討中である.. 本研究は文部省,エネルギー特別補助金および昭和58年度特定研究経費によって行われた. 引 用 文 献 (1)新村 明:発酵とエ業,39,490(19鋸). (2)山田和彦:発酵と工業,41,562(1983) (3)桑原正章,鍵村達夫,高木克己:木材学会藷,30, (印刷中). (4)WALCH,W.E‖,WoKFE,R。S:).BacteYlol,137, 264(1979) (5)外相健三:エネルギー資源と微生物(鈴木周一 編),62,東京,共立出版(1979) (6)TAYLOR,G。T,:ProgYeS$inhdu3tYialMicYObi− O10gy(Bull,MLed.),16,231,Amsterdam, EIs¢Vi¢r(1982) (7)BuswELL,A,M.,MuELLER,H。F.:Lnd.hg α♂乃.,44,550(1952) (8)ZEIKUS,J.Gl:A肌‖ 凡升.〟たr∂鋸oJ.,34,423 (1980) (9)MINODA,Y,KoDAMA,r.,IGARASHI,Y:Re− SearChonEnergyflOmBiomass(Yamamoto,Y. ¢d.),249(1984) (10)八木達彦:エネルギー資源と微生物(鈴木周一 編),75,東京■,共立出版(19′7凱 (11)蓑田泰治:エネルギー特別研究昭和57年度研究成 果報告,233(1983)u (1984年5月31日 受理)

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