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アブラナ科蔬菜における種子表面構造の微細形態的観察-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

アブラナ科読莱における種子表面構造の微細形態的観察

垣渕和正・藤目幸横

MICROMORPHOLOGICAL OBSERVATIONS OF SEED SURFACE

STRUCTURE IN CRUCIFEROUS VEGETABLES

Kazumasa KAKIBUCHIand Yukihiro FuJIME

Seed coat structures of some Cruciferous vegetables were observed by scanning electronmicroscope

1Di董ferent characters were observed among the species usedinthe experiment Brassica oleracea L had alarge net structureB campeStris Lhad a smallnet StruCtureinlarge obscure net structure Bjuncea Czern had a sma11net structurein clearlarge net structure RahanusSalivus L had a medium size net structure

2 Seed coat structure of Flhybrid had the simi1ar net struCture tO that o董

motherline

3 Evenin some species,thereis alittle variationin seed coat stIuCture

Key words:Cruciferous,Seed coat,taXOnOmy,micromophology,SEM

緒 口

植物種子の構造は様々な知見をもたらしてくれる.VanderBurgら(1)は,トマT種子をⅩ線解析

することによって甫の生育の予測を試み,二宮(2)はピー・ル麦の種子を画像処理することでエキス成 分の予測を行っているまた,一・般に種子の表面構造の特徴は,植物の同定に用いられ,実用化さ れている例えば広島県警では,76科280種類の種子を実体顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察 し,その特徴をデータベ・−ス化して犯罪捜査に利用することを検討している(3) アブラナ科疏菜の種子では渋谷・岡村が,カブ(4)と他のβrαィS.Sよc・α属種子(5)の表皮構造を分類して いる走査型電子顕微鏡によるアブラナ科植物の種子表面構造の観察も行われているが,種子表面 構造による種の分頬の可儲性については意見が分かれている(6).そこでここにはβ化ゞ5まc・αOJerαC・gα L,Bcampestris L,Bjuncea Czern小,Rahanus sativus Lの数種類及びBrassica oleracea Lと β c・αmクg.s汀よ−.s Lの1代交配雑種について種皮表面を走査型電子顕微鏡で観察し,その微細形態に 一・定の傾向が認められたので報告する

材料及び方法

供試材料にほ,第1表に示したβrα5・ざよ−cαOJerαC・gαLの4種構および1代交配雑種2系統,β c・αmクgSfrま5L.の5種煩および1代交配雑種3系統,βル乃C・gαCzern.の5種類,尺αんα乃祝5・5d滋用5 数種疏菜の花芽形成並びに花芽発育過程に関する研究(第6報) 本研究の一部は平成4年度園芸学会秋季大会で発表した

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香川大学農学部学術報告 第46巻 第2号(1994)

TablelSpecies,Cultivars and F.1ines usedin the experiment 80

Spice Common name Cultiver F.1ine

Bras.sicaoleracea L cabbage ‘Rubyball’

broccoli ‘wasemidori’ cauliflower ‘Snow crown Chinese kale ‘Kairan

‘wasemidori’בKairan ‘Kairan’בWasemidori’ BrassicacamPestris L rape ‘osome

‘Haruitiban’ hong−tSai−tai ‘Kousaitai’ broccolirab ‘40da.ys’ tsai−hsin ‘wasekeirsaishin’ ‘40days’×’Haruitiban’ ‘40days’בwasekeトsaisin ‘wasekei−Saisin’בHaruitiban’ ‘Katsuona

BrasSicajuncea Czren mustard

‘Kikarashina ‘Hakarashina ‘Kekyutakana

‘Kairyoumiike−00batakana Rahanus.s・ativus L Japanese radish‘Minowase

L1種類の合計20種類の種子を用いた βoJerαCgαLとβcαm夕βSfrま.sLは花を利用する疏菜を中心とし,キャベツの‘ルビーボ・−ル’, ブロッコリーの‘早生線’,カリフラワーの‘スノークラウン’とカイランの‘ヵイラン’(β oJβrαC・eαL)およびコマツナの‘おそめ’,ナバナの‘春−・番’,コウサイタイの‘コウサイタイ’, ブロッコリ1−ラブの‘40days’とサイシソの‘早生系サイシV’(Bcampestris L)を用いた. βノ祝乃CeαCzeI・nではカツオナの‘かつを菜’,カラシナの‘黄カラシナ’と‘薬カラシナ’及びタ カナの‘結球高菜’と‘改良三池大乗高菜’のタカナ・カラシナ類の品種を,尺αんα柁祝S5・α才iび祝S Lは日本ダイコンの‘みの早生’を供試した(第1表) また,1代交配雑種種子は母本を除雄し,父本からの花粉を交配して成熟させ,種子を鞠から取 り出した後にデシケークー内で約2年間保存したものを供試したい 他の種類ほデシケ1−・タ・−もしく は5℃の冷蔵庫で保存した市販の種子を用いた 各種棟の種子を5∼12粒採取し,4%のグルタールアルデヒドで単固定した(7)その後,臨界点 乾燥とPt・Pd蒸着を行ない,走査型電子顕微鏡(日立S−800型)で赤道付近の種子表面を観察した 結 果 各種塀の種子はそれぞれ異なった表面構造を持っていた.以下に各種類の種子表面構造の特徴に ついて示したい なお,撮影倍率及び角度は,表面構造の特徴を最も良く示すものを選んだ 1βr・α8ざgeα0‘er・αeeαL(第1図) βrα5・.5左上αOJg′・αC・eαLの種皮の斑紋はすぺての種類において,他の種類より比較的大きな多角形の 網目構造であったい すなわち直径75/Jm程度の5∼6角形の斑紋が種皮全体を覆っていた(第1図

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−1).斑紋には3種類 あり,キャベツの‘ル ビーボール’では個々の 斑紋の中火が盛り上がっ ていた(第1図−2). それに対して,カリフラ ワーの‘スノ…クラウ ン’およびカイランの ‘ヵイラゾ では中央部 の盛り上がりは無く(第 1図一3,4),斑紋の 夜の部分がわずかに盛り 上がるだけで∴斑紋の境 界を示していた.またブ ロッコリーの‘早生緑’ では両者の中間を示し, 斑紋の縁の部分と中央部 が盛り上がっていた(第 1図−5). 1代交配雑種のなか で,ブロッコリーの‘早 生疑’を母本として,カ イランの‘ヵイラン’を 交配して得られた種子表 面は,母本であるブロッ コリーの‘早生緑’の特 徴,つまり斑紋の夜の部 分と中央部の両方が盛り 上がる特徴を示した(第 1図−6).‘ヵイラ ン’を母本にして‘早生 緑’を交配した逆の組合 せでは,母本である‘ヵ イラン’と同様に斑紋の 中央部は盛り上がってお らず∴斑紋の周辺部がゆ るやかに隆起していた (第1図−7). 2.βr(‡gβわαCαmpeβfr∼ざ L.(第2囲) βrα∫∫fcα Cαm夕e∫frf∫ L.の種皮は,75/上m程度 の大型の斑紋の中に10

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香川大学農学部学術報告 第46巻 第2号(1994)

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Fig 2 Seed cort str・uCture OfBrasSicacampestYis L

l)‘Wasekei−Saishin’,2)‘Osome’,3)‘Haruitiban’,4)‘40days’,5)Lwasekeirsaishin’,6) ‘Kousaitai’.7)‘40days’בHaruitiban−’,8)‘40days’בWasekei,Saishin’,9)‘wasekei−Saishin’× ‘Haruitiban’ 〃m程度の小型の斑紋が認められた(第2図−1)い 大型の斑紋は種類によってその明瞭さが異な り,コマツナの‘おそめ’でははとんど認められず,ナバナの ‘春−・番’でも不鮮明であった(第 2図−2,3)り それに対してブロッコリ・−ラブの‘40days’,サイシソの‘早生系サイシソ’では 大型の斑紋も比較的明瞭に認められ(第2図−4,5),コウサイタイの‘コウサイタイ,では微細 な斑紋と大型の斑紋も共に棲めて明瞭に認められた(第2図一6) 1代交配雑種では‘40days’を母本にして‘春一・番’を交配した場合,または‘早生系サイシ ソ’を母本にして‘春−L番’を交配した場合,両者とも母本の特徴が現われ,大型の斑紋は比較的 明瞭に認められた(第2囲一7,9)い‘40days’を母本にして‘早生系サイシソ’を交配した場合 にも,種子には母本の特徴が認められ,比較的明瞭な大型の斑紋が認められた(第2図−8)

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3. βrα∫SgCαJu几Ce(王 Czern.(第3図) βrα∫∫fcαノ祝花CeαL.の 種皮には明瞭な70J上m程 度の多角形の斑紋と,そ の内部に1帥m程度の小 型の斑紋が認められた (第3図−1).大型の 斑紋の中央部はくぽんで おり,周辺部では盛り上 がっていた.その大型の 斑紋の中に小型の斑紋が 多数存在した(第3図− 2,3,4,5).ただ し,カラシナの‘薬から しな’では他の種頬に比 べ小型の斑紋が不明瞭で あった(第3図−6). 4. 尺αんα托以ざ βαfわug L.(第4図) ‘みの早生’の種皮で ほ,50J上m程度の明瞭な 斑紋が認められた.斑紋 は1種類のみで,その内 部に小型の斑紋は認めら れなかった. 考 察 渋谷・岡村(5)はβrα∫∫− Zcα属種子の表面を観察 し,βrα∫∫gCα OJgr(ZCgα L.の斑紋は不明瞭で小さ く,且cα椚ク♂∫£rよ∫L.で

Fig.3.Seed cort structure ofBrassicajuncea Czern.

1),2)‘Katsuona’,3)‘Kikarashina’,4)’Kekkyutakana’, 5)‘Kairyoumiike−00batakana’,6)‘Hakarashina’. もその斑紋が不明瞭であ り,且J〟乃CeαCzern.ではその斑紋が大型で明瞭であるとしている.渋谷■岡村の報告では,種子の 表面を実体顕微鏡で観察していると考えられ,本実験で観察されたβ.oJgrαCgαの斑紋における微細 な隆起や,且cα∽夕g∫frf∫の微細な斑紋は実体顕微鏡の解像度の点からはっきりと確認されなかった ものと考えられる.ダイコンの種子では近藤(8)が今回の観察と同様な斑臥すなわち明瞭な中型の 網目状の斑紋をスケッチで示している. 中村(6)は走査型電子顕微鏡でのβrα∫∫よcα属種子の観察例を取りまとめており,それによると走査 電顕による種子表面構造から種の分類ができるとしている報告と,斑紋のパター∵/には変異が大き く,分頬には適していないという両方の報告があるとしている.

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香川大学農学部学術報告 第46巻 第2号(1994)

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Fig.4.Seed cort structure of Rahanus sativus L(‘Minowase’)

本実験では走査型電顕を用いて種皮の微細構造を観察した結果,種子表面構造の特徴には種の間 に明瞭な差異が認められた, 1.βr(‡βざgCα0ヱer(才CeαL. 斑紋は75〃m程度の大型で,多角形,斑紋の縁にわずかな隆起があるものと,斑紋の中央部が盛り 上がるもの及び両者の中間の3種ある. 2.βrαざgわαeαmpegfrょぎL. 75/上m程度の大型の斑紋の中に,1恥m程度の小型の網目状の斑紋がある.大型の斑紋は品種に よって明瞭なものと,比較的不明瞭なものがある, 3..βrαざβgCαJ以れCeαCze「n. 中央部がくぼんだ明瞭な70/上m程度の大型の斑紋があり,その内部に10/上m程度の網目状の小型の 斑紋がある. 4.Rαんα几比ざざαfわuざL. 50/Jm程度の中型の斑紋のみで小型の斑紋はない. 以上の特徴は同一種内で大きな差はなく一定であり仁種の同定や,分類に用いることができると 考えられる.渋谷・岡村(4,5)や青葉(9)は,吸水種子の薄膜切片を観察することで仁種皮の特徴を見出 そうとしているが,切片を作成するのにはかなりの手間と熟練が必要とされる.しかし,本実験の 走査型電子顕微鏡観察による方法では,特に熟練を要する操作も必要なく,微細な特徴を容易に見 出すことが可能であった, 一方,同一種の中でも斑紋の特徴が微妙に異なっているものが観察された.この違いおよび相似 点ほ品種の分化と顆縁関係に起因する吋能性が考えられる.また,種子の斑紋は種皮の棚状組織層 が肥厚した部分とされており(9)仁種皮は吸水によって膨張し,形態的な変化を示すことから(4−5),供 試種子の水分含量の速い,もしくは固定液からの吸水なども影響していたことが考えられる・ 1代交配雑種の種子の斑紋は,母本の特徴に類似していた.種皮は胚皮が発達したものであ り(岬,それによって直接母本の影響がでたものと思われる.

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摘 要 アブラナ科の4種・20品種について,種子表面の微細形態を走査型電子顕微鏡を用いて 観察した 1.種皮表面には斑紋があり,種ごとに異なった特徴を持っていたβrαゞSま(α OJクrαCeαLは大型の斑紋,βcα椚ク♂S丈れ√SLは不明瞭な大型の斑紋の中に小型の網目状の斑 紋があり,β メ祝乃CgαCzernは明瞭な大型の斑紋の中に小型の斑紋を持ち,凡止∽肌 sα汀∽那Lでは中型の斑紋が認められた 21代雑種の種子表面は,母本と同じ斑紋の特徴を備えていた 3同一Lの種内でも種類によっては,種皮の特徴にわずかな差異が認められた

引 用 文 献

(1)Van derBuRG,WJ,AARTSE,JW,ZwoL,R (6)中村俊一郎:農林種子学総論pp150−151..養 A,JAuNK,H and BINO,RJ:Predicting 賢堂,東京(1985)

tomato seedling morphology by X−ray analysis (7)垣渕和正・藤日章披:数種疏菜の花芽形成並びに 花芽発育過程に関する研究..第4報ハ オ・クラの花 芽分化および花芽発達過程に関する走査電顕像 香大農学報.46,61−69 (8)近藤萬太郎:日本農林種子学 後編pp 235− 281.養賢堂,束京(1934) (9)青葉高:ツケナ類=植物としてこの特性.虔文協 編,野菜園芸大百科9pp325−340,農文協,東 京(1989) qゆ 熊沢正夫:植物器官学“pp41−52.裳華臥.東 京(1974) (1994年5月31日受理) Of seedsJAmer SocHort,119:258−263 (1994) (2)二宮正士:テクスチャー・解析による種子表面形態 評価手法の開発農環研ニュース,23:1−5 (1993) (3)安倍隆芳・佐久間澄意・糸麻好次・中水兵−・森 川俊雄:形態的特徴による系統的種子鑑別法科 学警察研報法科学編,45:46−50(1992) (4)渋谷茂・岡村知政:種子の表皮塾に依る本邦蕪背 品種の分摂.園学雑,22:43−46(1952) (5)渋谷茂・岡村知政:βr‘ユSSicd属種子の形態的特性 に就いて.園学雑,24:47−50(1954)

Fig 2 Seed cort str・uCture OfBrasSicacampestYis L  

参照

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