平成24年3月 10 日の岐阜花き流通センター「園芸セミナー-現地見学-」で、
武藤園芸(各務原市)
、小関園芸(坂祝町)
、オグリ(坂祝町)
、丸富園芸(富加町)
、
辻農園(関市)を視察いたしました。
武藤園芸(武藤達志)
(岐阜県各務原市)
生産品目で特徴的なものとして、ベルフラワー(オトメギキョウ:Campanula portenschlagiana)とラベン ダー(Lavandula angustifolia)があります。 いずれも挿し木後出荷までに1年を必要とし、生産効率を求める生産体系には合わず、生産者が激減してい る植物です。15 年前は岐阜県でも5~6名が生産していましたが、現在では武藤園芸だけが生産しており、 市場で一定の評価を得ています。また、武藤園芸では花が大きくて開く系統のベルフラワーの選抜を行って おり、種苗登録は行っていないもののオリジナル品種です。 訪問した 3 月 10 日はベルフラワーの出荷が始まる時期で、連休明けまで出荷が続きます。 ベルフラワーの生産は、2月に露地で低温にあわせた親株を温室内に搬入し、伸長したシュートを用いて挿 し木を行います。ベルフラワーは高温に弱いため、挿し木は遮光した挿し木室で行います。露地で休眠させ た親株は貯蔵養分を蓄えているため、休眠親株から伸長したシュートは充分な養分を保持しており、遮光し た暗所でも発根が行われるものと思います。 挿し木・発根した個体は、夏に充分な日射を当てて潅水・施肥を行い、株を生育させます。この間に数回の ピンチを行って株がコンパクトになるように仕立てて秋をむかえます。 秋の低温と共に自然状態で休眠させます。充分に休眠させることで、加温温室に搬入後の萌芽の揃いが良く なると共に、花芽分化も一斉に行われます。 ベルフラワーは温度と湿度が高いと徒長する傾向があるため、加温温室の昼間の温度管理には充分な気配り が必要です。また、循環扇を最大限活用して充分な蒸散を行わせて、徒長を防ぐ管理を行っていました。 ラベンダーも1年をかけて苗を育成して出荷する品目です。露地で充分に休眠させた親株を加温温室に搬入 して芽を吹かせ、伸長したシュートを挿し木して苗を育成します。下の写真は露地から搬入直後の株です。 挿し木後は露地で数回のピンチを繰り返して株のボリュームを高めます。北海道富良野のラベンダーが有名ですが、耐寒性はあるものの、高温と多湿で枯れ込むことがあるため、夏の管理が重要です。 充分に株が充実したものは自然状態で冬季の低温にあわせて休眠させ、出荷期を想定して順次加温温室に搬 入します。 次の商品として斑入りのヒイラギを選抜していました。きれいな斑入りですが、挿し木発根率が低いのが難 点とのことでした。斑入りの面積が大きいので、光合成能力が低いことが関係しているかもしれません。
小関園芸(小関正司)
(岐阜県坂祝町)
小関園芸では生産面積は小さいのですが、消費需要に応じた多品目・高付加価値商品の生産を目指していま す。これまでアメリカンブルー、ヒペリカムなど4品種の種苗登録を行っており、他生産者に対する差別化 (いわゆる防衛特許)として有利に働いています。 生産している植物はシクラメン以外は栄養繁殖性の植物で、挿し木施設に工夫がされています。温床線を埋 設した荒めの山砂で挿し木ベッドが作られており、ミスト装置があり、上は寒冷紗で遮光と保湿を図ってい ます。山砂の上に挿し木トレーを置いて管理しますが、山砂の上にトレーを置くため水はけが良く、かつ一 定の保水状態を維持できます。当然、山砂の中には温床線が埋設してあるため一定の地温が確保され、発根 効率は高く維持されます。 小関園芸が品種登録したアメリカンブルー・ブルーコーラルは、匍匐性がなく立ち性で、分枝性が良く成長 が早いため開花数が著しく多いという特徴があり、市場でも高い評価を得ています。同様に品種登録してい るヒペリカム・ゴールドフォームはレモンイエローの葉色が特徴で、寄せ植え素材として高い評価を得てい ます。ヒペリカムは開花時の黄色の花や赤い果実が特徴ですが、出荷時期が限られます。しかし、ヒペリカ ム・ゴールドフォームは葉物としての鑑賞価値が高いため、周年需要が見込まれます。特徴的な商品として、スタンダード仕立てのヒイラギがあります。ヒイラギはクリスマス商品というイメー ジが強いのですが、スタンダード仕立てにしたことで周年需要を開拓しました。節分にヒイラギを仕掛けた いと言っておられました。 もう一つの珍しい植物としてキッコウリュウ(亀甲竜)があります。鉢の部分に大きな球根が見えると思い ますが、原産地は南アフリカで、ナガイモ科のツル植物です。温室内には20 年生という大きな球根を持つ 個体もありました。 温室の屋根にスプリンクラーが設置してあり、夏には屋根の上に散水することで、温室内の温度を数度下げ ることができます。また厳冬期は散水による保温効果があるとのことです。
オグリ(小栗敬助)
(岐阜県坂祝町)
以前はセントポーリア専門の生産をしていましたが、現在ではジュウニノマキ(十二の巻)などの観葉植物 も生産しています。 20 年前に訪問した時に感動したベンチ移動システムが健在でした。ハンギングクレーンでベンチを吊り上げ て移動させます。ベンチは3段に積み上げることも可能で、以前は夜間に3段積みを行って暖房スペースの 節減にも取り組んでいたとのことです。 現在は、オランダのムービングベンチシステムが広く導入されていますが、それ以前にオリジナルのベンチ 移動システムを考案し開発していた先見性に脱帽です。 ジュウニノマキ(十二の巻)は南アフリカが原産の植物で、ミニ観葉植物として人気が高まっています。 ジュウニノマキ(十二の巻)をよく見ると様々な系統があることが判ります。左の写真はオグリ園芸で大量に生産している系統で、葉の幅が広く、葉裏の斑がはっきりしています。これに対して普通にみる系統は立 ち葉で葉が細かったり、内向きにカールしたものもあります。立ち葉で細葉の系統は野生種に近く、子株の 発生も旺盛です。 オグリ園芸で生産している葉が幅広で横に広がり斑がはっきりした系統は鑑賞価値が高く、繁殖効率はやや 下がりますが、市場で高い評価を受けています。