2.予防
1)予 防 接 種
入 院 している多 くの免 疫 不 全 患 者 への感 染 源 にならないためにも、病 院 で勤 務 するすべての
職 員 に対 してインフルエンザワクチンの接 種 を推 奨 する。ただし過 去 にインフルエンザワクチンで
重 症 なアレルギー反 応 があった者 は禁 忌 である。接 種 可 能 かどうかの相 談 は感 染 管 理 担 当 課 で
行 う。患 者 への予 防 接 種 は札 幌 市 のインフルエンザワクチン接 種 事 業 に準 じて実 施 する。
目 的 ・発 症 防 止 ・重 症 化 ・合 併 症 の予 防
効 果 ・接 種 後 2週 間 程 度 で発 現 し、約 5か月 持 続
接 種 回 数 ・生 後 6か月 以 上 ~13歳 未 満 :2回
・13歳 以 上 :1回
副 反 応
・局 所 症 状 (腫 脹 ・発 赤 ・疼 痛 )
・全 身 反 応 (発 熱 ・悪 寒 ・頭 痛 ・倦 怠 感 ・嘔 吐 )
・通 常 2~3日 で消 失 する
接 種 禁 忌 者 ※
・明 らかな発 熱 を呈 している者
・重 篤 な急 性 疾 患 にかかっていることが明 らかな者
・インフルエンザワクチンによってアナフィラキシー を呈 したことがあることが
明 らかな者 厚 生 労 働 省 :『予 防 接 種 ガイドライン』抜 粋
接 種 後 の注 意
・接 種 当 日 は運 動 全 般 と過 度 な飲 酒 は避 ける
・入 浴 時 は接 種 部 位 に刺 激 を与 えないように清 潔 にする
※不 活 化 ワクチンは胎 児 に影 響 を与 えるとは考 えられていない為 、妊 婦 は接 種 不 適 当 者 に含 まれて
いない。ただし 14 週 までは自 然 流 産 が起 こりやすい時 期 であり避 けた方 が良 いという考 え方 もある。
※鶏 卵 ・鶏 肉 にアナフィラキシーがある者 は接 種 を受 けることが出 来 ない。
厚 生 労 働 省 :『予 防 接 種 ガイ ドライン 2014 』より
2)院 内 持 ち込 み防 止
★については、札 幌 市 の定 点 報 告 が 1.0 を超 えた時 点 から開 始 し、終 了 時 期 は ICT が判 断
職 員
・自 己 管 理 に留 意 し、手 指 衛 生 ・含 嗽 を積 極 的 に行 う
・症 状 出 現 時 速 やかに上 司 に相 談 する
・★全 職 員 勤 務 中 マスク着 用
・★出 勤 時 病 院 入 口 で手 指 消 毒 を行 う
面 会 者
・★来 院 時 病 院 入 口 で手 指 消 毒 を依 頼 する注 意 喚 起 を掲 示 し、手 指 消
毒 剤 の設 置 数 を増 やす
・病 棟 への立 ち入 りはナースステーションへの声 掛 けを規 則 とし、窓 口 で
症 状 スクリーニングを行 う
・有 症 者 (発 熱 、咳 嗽 、鼻 汁 、咽 頭 痛 )の面 会 は禁 止 と する
・★小 学 生 以 下 の面 会 を禁 止 する
外 来 患 者
・★来 院 時 病 院 入 口 で手 指 消 毒 を依 頼 する注 意 喚 起 を掲 示 し、手 指 消
毒 剤 の設 置 数 を増 やす
・各 診 療 科 窓 口 にポスターを掲 示 し「発 熱 ・咳 ・くしゃみ・鼻 汁 」に該 当 する
患 者 に申 し出 てもらい、マスク着 用 を依 頼 し他 の患 者 と1m以 上 離 れた
3.発生時の対 応
1)外 来 患 者 (インフルエンザ確 定 者 、または疑 い者 )
患 者 配 置
・サージカルマスク (持 参 していない場 合 病 院 のマスク) を装 着 してもらい、
他 の患 者 と待 合 区 域 を別 にする
感 染 防 止 対 策
飛 沫 ・接 触 予 防 策
・患 者 が接 触 した医 療 器 具 、環 境 は環 境 除 菌 クロスで清 拭 する
・ 職 員 はサー ジカルマスク ・グロ ーブ で 対 応 する 。処 置 に 応 じて、シー ルド
付 マスク・ガウンを追 加 する
感 染 対 策 実 施 期 間
・外 来 受 診 中 は終 始 対 策 を実 施 する
・次 回 受 診 等 は、発 症 から7日 間 (発 症 日 を0日 として換 算 )、あるいは発 熱
が持 続 する場 合 は、解 熱 後 48時 間 経 過 するまで対 策 を実 施 する
患 者 指 導
・咳 エチケット
報 告
・感 染 管 理 担 当 課 へ 速 や か に 連 絡 す る
・関 連 す る 他 部 門 へ の 連 絡 を 行 う
(検 査 や レ ン ト ゲ ン 、 入 院 の 場 合 は ベ ッ ド コ ン ト ロ ー ル 担 当 な ど )
2)入 院 患 者
患 者 配 置
・個 室 隔 離 、あるいはカーテン隔 離 を行 う
・感 染 が確 定 した時 点 で原 則 個 室 隔 離 とする
・複 数 の患 者 が同 一 病 棟 で発 生 し、個 室 管 理 が困 難 な場 合 にはコホート
(集 団 隔 離 )する。その場 合 には必 ずカーテンを閉 め、飛 沫 を遮 る
感 染 防 止 対 策
飛 沫 ・接 触 予 防 策
・病 室 入 り口 には防 止 策 を情 報 共 有 の為 に表 示 を行 う【資 料 1】
・使 用 する医 療 器 具 は専 用 とし、使 用 後 は環 境 除 菌 クロスで清 拭 する
・ドアノブや手 すりなど高 頻 度 接 触 表 面 は、環 境 除 菌 クロスで各 勤 務 清 拭
する
・リハビリや外 来 受 診 は往 診 とする
・職 員 は患 者 病 室 に入 室 する前 に、手 袋 ・ガウン (エプロン)・サージカルマ
スクを着 用 し、病 室 から退 室 する前 に防 護 具 を全 て脱 ぎ、感 染 性 廃 棄 容
器 に廃 棄 する。処 置 に応 じて、シールド付 マスクを追 加 する
感 染 対 策 実 施 期 間 ・発 症 から7日 間 (発 症 日 を0日 として換 算 )
・発 熱 が持 続 する場 合 は、解 熱 後 48時 間 経 過 するまで
患 者 指 導
・咳 エチケット
・マスクは使 用 の都 度 交 換 する
・隔 離 エリアから出 る場 合 は手 指 消 毒 とマスク着 用 を行 う
・面 会 は禁 止
報 告
・感 染 管 理 担 当 課 へ 速 や か に 連 絡 す る
・関 連 す る 他 部 門 へ の 連 絡 を 行 う ( 栄 養 科 ・清 掃 ・リ ハ ビ リ ・透 析 室 ・
放 射 線 治 療 室 ・そ の 他 検 査 や レ ン ト ゲ ン ・ベ ッ ド コ ン ト ロ ー ル 担 当
等 患 者 に 関 連 す る 部 署 )
※咳 エチケット:咳 が出 る時 は、ティッシュなどで口 や鼻 を覆 い、飛 沫 の飛 散 を最 小 限 にする
鼻 汁 や咳 、唾 液 などに触 れた後 の手 洗 いを徹 底 する
使 用 後 のティッシュは速 やかにごみ箱 に廃 棄 する
3)濃 厚 接 触 入 院 患 者
定 義 :インフルエンザ感 染 者 と同 室 、あるいはマスクなしで接 触 した患 者
患 者 配 置
・濃 厚 接 触 が判 明 した時 点 で隔 離 とする
・同 一 患 者 からの複 数 の濃 厚 接 触 患 者 が発 生 した場 合 、コホート (集 団 隔
離 )する。その場 合 には必 ずカーテンを閉 め、飛 沫 を遮 る
・コホート病 室 に新 たな入 床 は不 可 (同 抗 原 に罹 患 直 後 の 患 者 は可 )
感 染 防 止 対 策
飛 沫 ・接 触 予 防 策
・職 員 はサージカルマスクで対 応 する
・病 室 入 り口 には防 止 策 を情 報 共 有 の為 に表 示 を行 う【資 料 1】
・使 用 した医 療 器 具 は環 境 用 除 菌 クロスで清 拭 する
・ドアノブや手 すりなど高 頻 度 接 触 表 面 は、1日 1回 環 境 用 除 菌 クロスで清
拭 する
・予 防 投 与 は主 治 医 の判 断 で行 う
・リハビリや外 来 受 診 はマスク着 用 で出 頭 とする
感 染 対 策 実 施 期 間
・最 終 接 触 日 から5日 間 (接 触 日 を0日 として換 算 )
・同 抗 原 の 発 症 日 の 異 な る 患 者 の 複 数 濃 厚 接 触 患 者 を コ ホ ー ト す る 場
合 、隔 離 期 間 は遅 い患 者 に合 わせる
患 者 指 導
・上 気 道 症 状 の出 現 、悪 寒 や発 熱 など疑 わしい症 状 が出 現 した際 、速 や
かに訴 える
・室 外 行 動 は必 要 最 小 限 にし、手 指 消 毒 とマスク着 用 を行 う
・洗 面 は自 室 内 の洗 面 台 で行 う
・面 会 は禁 止
報 告
・感 染 管 理 担 当 課 へ 速 や か に 連 絡 す る
・関 連 す る 他 部 門 へ の 連 絡 を 行 う ( 栄 養 科 ・清 掃 ・リ ハ ビ リ ・透 析 室 ・
放 射 線 治 療 室 ・そ の 他 検 査 や レ ン ト ゲ ン ・ベ ッ ド コ ン ト ロ ー ル 担 当
等 患 者 に 関 連 す る 部 署 )
4)濃 厚 接 触 職 員
定 義 :マスクなしのインフルエンザ感 染 者 と会 話 や会 食 を行 った職 員
感 染 防 止 対 策
飛 沫 ・接 触 予 防 策
・勤 務 中 サージカルマスク装 着 を継 続 する
・マスクを外 す休 憩 や飲 食 は別 室 にて1人 で行 う
・手 指 消 毒 を徹 底 する
・職 員 への予 防 投 与 は原 則 実 施 しない
感 染 対 策 実 施 期 間 ・最 終 接 触 日 から 7 日 間 (接 触 日 を 0 日 として換 算 )
・家 族 が感 染 者 の場 合 、発 症 家 族 の解 熱 後 7日 間 とする(解 熱 日 を0日 )
発 症 者 が行 う報 告
・上 気 道 症 状 の出 現 、悪 寒 や発 熱 など疑 わしい症 状 が出 現 した際 、速 や
かに上 司 に報 告 する
・自 宅 で症 状 が出 現 した場 合 は、出 勤 前 に報 告 する
所 属 長 が行 う報 告
・感 染 管 理 担 当 課 へ 速 や か に 連 絡 す る
5)職 員 が発 症 した場 合
感 染 防 止 対 策
飛 沫 ・接 触 予 防 策
・迅 速 検 査 は可 能 な限 り、検 査 感 度 の高 い発 熱 24時 間 経 過 後 に受 ける
・ステーション、休 憩 室 の高 頻 度 接 触 面 を環 境 除 菌 クロスで清 拭 する
(PC画 面 ・PHS・PDAなどは、液 晶 専 用 クロスで清 拭 する)
・回 復 し出 勤 した後 も発 症 日 から7日 間 (発 症 日 を0日 として換 算 )は勤 務
中 サージカルマスク装 着 を継 続 し手 指 消 毒 を徹 底 する。マスクを外 す休
憩 や飲 食 は別 室 にて1人 で行 う
・当 該 部 署 の職 員 は全 員 勤 務 中 サージカルマスクを装 着 し手 指 消 毒 を徹
底 する。発 症 日 から7日 間 (発 症 日 を0日 として換 算 )
感 染 対 策 実 施 期 間 ・症 状 出 現 時 から休 務 し、解 熱 後 48時 間 を経 過 した後 出 勤 可 能 となる
・出 勤 後 も発 症 後 7日 間 (発 症 日 を0日 として換 算 )防 止 対 策 を継 続 する
発 症 者 が行 う報 告
・上 気 道 症 状 の出 現 、悪 寒 や発 熱 など疑 わしい症 状 が出 現 した際 、勤 務
中 であっても速 やかに上 司 に報 告 する
・自 宅 で症 状 が出 現 した場 合 は、出 勤 前 に報 告 する
所 属 長 が行 う報 告
・感 染 管 理 担 当 課 へ 速 や か に 連 絡 す る
・職 員 が 発 症 前 日 に マ ス ク な し で 接 触 し た 患 者 や 職 員 が い る 場 合 、
関 連 す る 部 門 へ の 連 絡 を 行 う
4.予防投与
対 象
・濃 厚 接 触 したハイリスク患 者※ ※
※※ハイリスク患 者 とは
慢 性 肺 疾 患 (COPD、喘 息 )、慢 性 心 疾 患 、腎 不 全 、免 疫 抑 制 状 態
(ステロイド、HIV など)、癌 糖 尿 病 および妊 婦 、乳 幼 児 (6 歳 未 満 )、
高 齢 者 (65 歳 以 上 )の患 者
・ハイリスク以 外 の患 者 は、主 治 医 の判 断 で予 防 投 与 は可 能 とする
・職 員 への予 防 投 与 は原 則 実 施 しない
費 用 負 担 ・病 院 負 担
・医 事 担 当 職 員 にコストフライを依 頼 する
報 告 ・投 与 患 者 と投 与 内 容 を感 染 管 理 担 当 課 に報 告 する
表 1 院 内 採 用 の予 防 投 与 薬
商 品 名 ( 一 般 名 ) 投 与
経 路
用 量 ・ 用 法
タ ミ フ ル カ プ セ ル
【 般 】
オ セ ル タ ミ ビ ル リ
ン 酸 塩 カ プ セ ル
内 服 1 )成 人 : オ セ ル タ ミ ビ ル と し て 1 回 75m g を 1 日 1 回 、 7
~ 10 日 間 経 口 投 与 す る
2 )体 重 37.5k g 以 上 の 小 児 : オ セ ル タ ミ ビ ル と し て 1 回
75m g を 1 日 1 回 、 10 日 間 経 口 投 与 す る
タ ミ フ ル
ド ラ イ シ ロ ッ プ 3 %
【 般 】
オ セ ル タ ミ ビ ル リ ン
酸 塩 シ ロ ッ プ 用
内 服 1 )成 人 : オ セ ル タ ミ ビ ル と し て 1 回 75m g を 1 日 1 回 、 7
~ 10 日 間 、 用 時 懸 濁 し て 経 口 投 与 す る
2 )小 児 : オ セ ル タ ミ ビ ル と し て 次 の 1 回 用 量 を 1 日 1 回 、
10 日 間 、 用 時 懸 濁 し て 経 口 投 与 す る 。 但 し 、 1 回 最 高 用 量
は オ セ ル タ ミ ビ ル と し て 75m g と す る 。 幼 小 児 の 場 合 : 2
m g /k g (ド ラ イ シ ロ ッ プ 剤 と し て 66.7m g /k g )
リ レ ン ザ
【 般 】ザ ナ ミ ビ ル 水 和
物 吸 入 剤
吸 入 成 人 及 び 小 児 に は 、ザ ナ ミ ビ ル と し て 1 回 10m g( 5m g ブ
リ ス タ ー を 2 ブ リ ス タ ー ) を 、 1 日 1 回 、 10 日 間 、 専 用 の
吸 入 器 を 用 い て 吸 入 す る
イ ナ ビ ル 吸 入 粉 末 剤
【 般 】
ラ ニ ナ ミ ビ ル
オ ク タ ン 酸 エ ス テ ル
水 和 物 吸 入 剤
吸 入 1 )成 人:ラ ニ ナ ミ ビ ル オ ク タ ン 酸 エ ス テ ル と し て 40m g を
単 回 吸 入 投 与 す る 。ま た 、20m g を 1 日 1 回 、2 日 間 吸 入 投
与 す る こ と も で き る
2 ) 小 児 : 10 歳 未 満 の 場 合 、 ラ ニ ナ ミ ビ ル オ ク タ ン 酸 エ ス
テ ル と し て 20m g を 単 回 吸 入 投 与 す る 。 10 歳 以 上 の 場 合 、
ラ ニ ナ ミ ビ ル オ ク タ ン 酸 エ ス テ ル と し て 40m g を 単 回 吸 入
投 与 す る 。ま た 、20m g を 1 日 1 回 、2 日 間 吸 入 投 与 す る こ
と も で き る
5.アウトブレイク時の対応
・ 病 院 感 染 対 策 マニュアル「アウトブレイクへの対 応 (P.11-1~11-5)」に準 ずる
・ インフルエンザの場 合 として以 下 を追 加 する
環 境 清 拭
・ 廊 下 の 手 す り 、 ト イ レ の 接 触 面 、 洗 面 所 の 接 触 面 、 ド ア ノ ブ 、
自 販 機 の 接 触 面 を 含 め た 、病 棟 内 の す べ て の 高 頻 度 接 触 面 を 環
境 除 菌 ク ロ ス で 1 日 2 回 清 拭 す る
・職 員 の職 場 環 境 (ステーション、休 憩 室 、トイレ)の す べ て の 高 頻 度 接
触 面 を 環 境 除 菌 ク ロ ス で 1 日 2 回 清 拭 す る
患 者 使 用 器 具 ・歩 行 器 や 車 い す は 専 用 化 と し 、使 用 ご と に 環 境 除 菌 ク ロ ス で 清
拭 す る
リ ハ ビ リ ・該 当 病 棟 のすべての患 者 に往 診 等 を検 討 する
個 人 防 護 具 ・病 室 にマスクを配 置 し、使 用 の都 度 交 換 するように患 者 に説 明 する
図 1 発 生 時 の対 応 フロー
患者発生
【 患 者 対 応 】
・ 隔 離
・ 抗 ウ イ ル ス 薬 治 療
・ 病 室 表 示
・ 飛 沫 接 触 予 防 策 開 始
・ 指 導
【 接 触 者 対 応 】
・ 隔 離
・ 主 治 医 へ の 報 告
・ 予 防 投 与 の 検 討
・飛 沫 接 触 予 防 策 開 始
・ 指 導
【 報 告 】
・ 感 染 管 理 担 当 課
夜 間 休 日 の 分 は 翌 日 平
日 朝 に 報 告
・ リ ハ ビ リ 等 関 連 部 署
・ 家 族