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ダイズさび病抵抗性遺伝子 Rpp の準同質遺伝子系統を用いたダイズ宿主抵抗性の解析

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Academic year: 2021

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Study of Host Resistance of Soybean Against

Phakopsora pachyrhizi the Causal Agent of

Soybean Rust Using Rpp Near Isogenic Lines

発行年

2019

その他のタイトル

ダイズさび病抵抗性遺伝子 Rpp の準同質遺伝子系

統を用いたダイズ宿主抵抗性の解析

学位授与大学

筑波大学 (University of Tsukuba)

学位授与年度

2018

報告番号

12102甲第9068号

URL

http://hdl.handle.net/2241/00156853

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氏名 MD. ZAKIR HOSSAIN 学位の種類 博 士( 農学 ) 学位記番号 博 甲 第 9068 号 学位授与年月日 平成 31年 3月 25日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 審査研究科 生命環境科学研究科 学位論文題目

Study of Host Resistance of Soybean Against Phakopsora pachyrhizi the Causal Agent of Soybean Rust Using Rpp Near Isogenic Lines

(ダイズさび病抵抗性遺伝子Rppの準同質遺伝子系統を用いたダイズ宿主抵抗性の解析) 主査 筑波大学教授 農学博士 山岡 裕一 副査 筑波大学教授 博士(農学) 三浦 謙治 副査 筑波大学准教授 博士(農学) 岡根 泉 副査 筑波大学助教 博士(農学) 石賀 康博

論 文 の 要 旨

ダイズは、食料、油脂原料、家畜飼料など様々な用途に世界中で利用され,産業上重要な作物である。ダ イズの重要病害の一つとしてPhakopsora pachyrhiziによって引起こされるダイズさび病が挙げられる。P. pachyrhiziは元々東アジア地域に分布していたが、現在は世界中に分布拡大し、特にダイズの主要産地である ブラジルとその周辺諸国およびアメリカ合衆国に本菌が侵入した2000年代以降は、本病害の防除が極めて大 きな課題となっている。病害防除の手段の一つとして抵抗性品種の利用がある。本菌に対するダイズさび病 抵抗性遺伝子は、これまでに8つ(Rpp1~7Rpp1-b)発見されているが、それぞれの機能についてはほとん ど解明されていなかった。本研究は、このうちRpp1~4の準同質遺伝子系統(NILs)を利用し、これらダイズさ び病抵抗性遺伝子の機能を解析したものである。 著者は、緒言の中で、ダイズ生産におけるさび病防除の重要性、これまでの抵抗性の評価方法および抵抗 性遺伝子の発見の経緯、遺伝子の機能解析における準同質遺伝子系統利用の重要性について解説した。 始めに著者は、ダイズさび病抵抗性遺伝子Rpp1~4の準同質遺伝子系統(Rpp1NIL~ Rpp4NIL)、その反復 親である感受性品種のBRS184、および抵抗性遺伝子の供給源となった各抵抗性品種に、ダイズさび病菌T1-2 菌株の夏胞子を接種し、罹病度、病斑あたりの胞子堆数、胞子生産量などの指標に基づき、感染型を比較し た。その結果、Rpp1NIL、Rpp2NIL、Rpp4NILは、これら3遺伝子の供給源となった抵抗性判別品種とは異な る弱抵抗性を示したが、Rpp3NILは明瞭な抵抗性反応を示すことを確認した。 そこで、著者は、Rpp3NILと感受性品種BRS184を供試し、ダイズさび病菌T1-2菌株の夏胞子接種個体(接 種24時間後に採取)と非接種個体から得たトランスクリプトーム・データの解析を行い、4518個の発現が変 動している遺伝子 DEG (Differentially expressed genes) を検出した。これらの遺伝子について、Protein family databases (PFAM)、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes Pathway (KEGG)、Eukaryotic clusters of Orthologous Groups (KOG)および Gene Ontology (GO) のデータベースを用いて、解析を行った。その結果、フェニルプ ロパノイド経路に関連する遺伝子の52%は、発現量が変化していたこと、ならびにベン図分析の結果、1742 遺伝子がRpp3が介在する抵抗性に特異的であることを明らかにした。これらの遺伝子は、細胞の成長と維持、

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エネルギー及び環境情報のセンシング、代謝、酸化、シグナル伝達、転写関連、防御の7つのカテゴリーに 類別できた。このうち、防御クラス遺伝子と類別された遺伝子のほとんどが、ダイズのファイトアレキシン であるグリセオリンの生合成を先導するフェニルプロパノイド経路とイソフラボノイド経路に関連してい ることが分かった。この解析結果より、著者は、Rpp3を介した抵抗性にはグリセオリン合成が深く係わって いると考察した。 次に著者は、防御クラス遺伝子の相対発現量を明らかにするため、Rpp1NIL~ Rpp4NILとBRS184を供試し、 接種直前、接種後12、24、48、96時間後のグリセオリン生合成に関連する12遺伝子について、定量的逆転写 ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-qPCR法)による定量を行った。その結果、これら12遺伝子は、さび病菌の接 種により発現が上昇することが分かった。glycinol 4-dimethylallyltransferase (G4DT) とchalcone reductase (CHR)を除く10遺伝子は、ダイズさび病菌接種後12時間で発現量が最も高く、G4DTとCHRはそれぞれ接種24 時 間 後 と 96 時 間 後 で 発 現 量 が 最 も 高 く な っ た 。 ま た 、 arogenate dehydratase 6 (ADT6) と cinnamic acid-4-hydoroxylase (C4H)では接種24時間後、G4DTでは接種48時間後、chalcone synthase (CHS) とglycinol 2-dimethylallyltransferase (G2DT)では接種48時間後に、 Rpp3NILでその他のNILsとBRS184に比較し有意に発 現が増加しており、Rpp3NILがグリセオリン合成にこれらの遺伝子を効率的に利用していると考察した。さ らに、1) これまで異なる生合成経路で律速段階となると考えられている2つの酵素の遺伝子、ADT6と 4-hydroxy-3-methylbut-2-enyl diphosphate synthase (ispG)がほぼ同調的に発現していること、 2) 生合成経路の 中で連続して機能すると考えられていた2遺伝子、CHSとCHRが対照的な発現パターンを示すこと、3)グリセ オリン生合成の最終段階に関与すると考えられている G4DT と phytyltransferase 3 (PT3)が対照的な発現パ ターンを示すことを明らかにした。また、グリセオリン生合成の最終段階に関与する3遺伝子、G4DT、G2DT および PT3の発現パターンが異なることを明らかにした。 以上の結果より、著者は、ダイズさび病抵抗性遺伝子Rpp3を介した防御応答には、ダイズのファイトアレ キシンであるグリセオリンの生合成を先導するフェニルプロパノイド経路とイソフラボノイド経路が関与 していると結論した。

審 査 の 要 旨

本研究は、ダイズさび病抵抗性遺伝子Rpp1~4の準同質遺伝子系統を利用し、これらダイズさび病抵抗性遺 伝子の機能を解析し、これら4遺伝子のうち少なくともRpp3を介した防御応答には、ダイズのファイトアレ キシンであるグリセオリンの生合成を先導するフェニルプロパノイド経路とイソフラボノイド経路が関与 していることを明らかにした。また、この解析の中で、グリセオリン生合成の最終段階に関与すると考えら れているG4DT、G2DT および PT3の発現パターンが異なること、これまで協調的に機能することはないと 考えられていたADT6とispGがほぼ同調的に発現すること、CHSとCHRが対照的な発現パターンを示すことな ど、これまでに知られていなかった現象を明らかにした。これらの成果は、植物の防御応答メカニズムの解 明や関与する遺伝子の機能解析などの植物の感染生理に関する研究分野に大きく貢献するとともに、抵抗性 品種の育種や抵抗性の誘導など、病害防除に関する応用分野の研究にも貢献するものと、評価することがで きる。 平成31年 1月22日、学位論文審査委員会において、審査委員全員出席のもとに論文の審査及び最終試験を行 い、本論文について著者に説明を求め、関連事項について質疑応答を行った。その結果、審査委員全員によ って合格と判定された。 よって、著者は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものとして認める。

参照

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