第
2
版
労働法
地方上級・労働基準監督官・国家総合職
最新
平成26年
問題掲載
■各公務員採用試験の傾向と頻出度を分析
■問題と解説が見開きだから学習しやすい
■各公務員採用試験の傾向と頻出度を分析
■問題と解説が見開きだから学習しやすい
は し が き
1 「最新の過去問」を掲載 2014年に実施された国家公務員や裁判所職員の本試験問題をいち早く掲載してい ます。公務員試験は年々変化しています。今年の過去問でいち早く最新の試験傾 向を把握しましょう。 2 段階的な学習ができる 公務員試験を攻略するには,さまざまな科目を勉強することが必要です。したがっ て,勉強の効率性は非常に重要です。「公務員試験 過去問 新クイックマスター」 では,それぞれの科目で勉強すべき項目をセクションとして示し,必ずマスター すべき必修問題を掲載しています。このため,何を勉強するのかをしっかり意識 し,必修問題から基本問題→応用問題とステップアップすることができます。問 題ごとに試験種ごとの頻出度がついているので,自分にあった効率的な勉強が可 能です。 3 満足のボリューム(充実の問題数) 本試験問題が解けるようになるには良質の過去問を繰り返し解くことが必要で す。「公務員試験 過去問 新クイックマスター」は,なかなか入手できない地方 上級の問題を数多く収録しています。類似の過去問を繰り返し解くことで知識の 定着と解法パターンの習得を図れます。 4 メリハリをつけた効果的な学習 公務員試験の攻略は過去問に始まり過去問に終わるといわれていますが,実際に 過去問の学習を進めてみると戸惑うことも多いはずです。「公務員試験 過去問 新クイックマスター」では,最重要の知識を絞り込んで学習ができる講義ページ, 基本事項を確認できる章末チェック,効率的な学習の指針となる出題傾向分析, 受験のツボをマスターする10の秘訣など,メリハリをつけて必要事項をマスター するための工夫が満載です。 みなさんが本書を徹底的に活用し,合格を勝ち取っていただけたら,わたくした ちにとってもそれに勝る喜びはありません。 2014年11月吉日 株式会社 東京リーガルマインド LEC総合研究所 公務員試験部試験名 年 度 労働契約の 成立・配転・出向 労働契約の 終了・解雇 労働契約の 終了・解雇 出題数 セクション 地 上 労基 国家総合職(旧国Ⅰ) 休憩・休日・ 休暇 労働時間 賃 金 06︱ 08 09︱ 11 12︱ 14 06︱ 08 09︱ 11 12︱ 14 06︱ 08 09︱ 11 12︱ 14 2 1 7 14 13 2 4 ★ ★ ★ ★ ★ ★ × 4 ★ ★ ★★ ★× 8 ★ × 5 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ × 4 ★ ★ 採用試験ごとの出題傾向と対策が はっきりわかる!
出題傾向の分析と対策
・・・・・・・・・ 過去問・必修問題 ・・・・・・・・・ 解雇が制限されている期間とその解除,解雇予告手当 の支払いが不用な場合を正確に区別しましょう。 問 労働基準法に規定する使用者の解雇権に関する次の記述として, 妥当なのはどれか。 (特別区 2002) 1: 使用者は,労働者が業務上負傷し療養のために休業する期間において, 天災事変その他やむをえない事由で事業の継続が不可能となった場合, その事由について行政官庁の認定を受けなくても,その労働者を解雇す ることができる。 2: 使用者は,労働者が業務上疾病にかかり療養のために休業する期間にお いて,打切補償を行ってその労働者を解雇しようとする場合,解雇の事 由について行政官庁の認定を受けなければならない。 3: 使用者は,労働者を解雇しようとする場合,天災事変その他やむをえな 事 事 受 問題 基本レベル 頻出度 地上★★★ 労基★★★ 国家総合職★★ 26 問 解雇に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 (国Ⅰ 2011) 1: 労働基準法は,使用者が解雇をしようとする場合において,天災事変その他 やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責 めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合を除き,少なくとも30日前にその 予告をするか 30日分以上の同法所定の平均賃金を支払わなければならないこ ととしており,解雇予告をせず予告手当も支払わないでされた解雇は無効であ るから,解雇の通知後 30日の期間が経過したとしても解雇の効力は生じない とするのが判例である。 2: 使用者が経営不振などの経営上の理由により人員削減を行う整理解雇の有効性 は,人員削減の必要性,人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要 2 労働契約の終了・解雇 ❷ 第 章 4 解雇の無効 ··· ⑴ 解雇無効 労働者の解雇が無効と判断された場合,労働者の労働契約上の地位が確保され, 民法 536 条2項の規定から使用者は解雇期間中の賃金の支払いが必要となります。 民536条2項 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することがで きなくなったときは,債務者は,反対給付を受ける権利を失わない。この場合 において,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを債権者 に償還しなければならない。 ⑵ 中間収入の控除 解雇期間中に他の職について収入を得た被解雇者は,これを使用者に償還すべ きですが,一方で被解雇者は,解雇期間について平均賃金の6割以上の休業手当 を保障されている(基 26 条)ので,解雇期間中の賃金のうち平均賃金の6割まで の部分については,償還の対象とすることは許されません(判例・通説)。 労働者 使用者 賃金支払い 労務提供 債権者 債務者 債務者 債権者 ビジュアルイメージで理解を サポート図 表
志望先ごとの重要度が一目瞭然。 星の数が多いほど 頻出度がアップ! 勉強の効率性もアップ!頻出度
必修問題の後で知識の再確認!インプット
段階的に無理なくレベルアップ!必修問題から実践問題
チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題1 〈就業規則〉 1〇 就業規則は,合理的な労働条件を定めているものであれば法的規範性を有 し,不利益変更も,合理的なものである限り労働者を拘束する(秋北バス 事件,最大判昭 43.12.25)。さらに,判例は,就業規則が,労働者に対し一 定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨定めているときは,そのよ うな就業規則の具体的内容が合理的なものである限り,就業規則が当該労 働契約の内容をなしているということができる,としている(電々公社帯 広局事件,最判昭 61.3.13)。そして,これらの判例法理は,内容の合理性と 周知を条件に就業規則が労働契約の内容となることを定めた労働契約法7 A 1 〇 任意的・恩恵的な給付は賃金にはあたらないが,支給基準や支給内 容があらかじめ労働協約,就業規則などにより明確に定められ,使用 者に支払義務のあるものは労働法 11 条にいう賃金にあたる。 A 2 × 労働協約による場合は,現物支給によることができる。したがって, 労働の対価であれば通貨以外の現物支給も賃金にあたる。 Q1 退職金も,明確に労働協約,就業規則などに規定がある場合は,使用者 に支払義務のあるものは賃金にあたる。 Q2 労働基準法上の賃金は,通貨で支払われるものに限られるから,自社製 品などの現物支給が賃金にあたるとされる余地はない。 Q3 通勤に要する費用は本来労働者が負担すべきものであるから,使用者が これを労働者に費用として支給すれば賃金にあたるが,通勤定期券を現 物支給する場合には,賃金にあたらない。 Q4 使用者は,労働者に対して債務不履行などによる損害賠償債権があると 地上 地方公務員上級(※1) 特別区 東京都特別区職員(※2) 労基 労働基準監督官 国家総合職 国家公務員総合職 国Ⅰ 国家公務員Ⅰ種(※3) (※1)道府県,政令指定都市,政令指定都市以外の市役所などの職員 (※2)現在,特別区の専門科目に労働法は出題されません。 (※3)2011年度まで実施されていた試験区分
●
公務員試験の名称表記について
本書では公務員試験の職種について,下記のとおり表記しています。 本書の問題と解説は,見開きで掲載しています。問題を解く にあたって答え・解説が見えないようにしたい方は,巻末の 黒紙を切り取って本にはさみ,目隠しとしてご利用ください。
巻末の黒紙で解説を目隠ししましょう!
前回解いた日を確認したり, 苦手な問題をマークしたり, いろいろな使い方を考え, 工夫してみてください。チェック欄
章ごとに大事な知識を 一気に確認!章末CHECK
その単元の出題傾向等から, どのような対策を取る必要が あるのかを紹介しています。 必修問題において,そ の単元を理解するた めに必要な知識を記 載しています。 必修問題を解くヒン ト,ひいては単元全体 のヒントです。 インプットに登場した 用語を理解するため の追加説明です。 インプットの内容を理 解するうえでの考え 方などを示していま す。 インプットに出てくる 事柄の具体例を示し ています。 インプットを学習する うえで,付随的な知識 を盛り込んでいます。
●
本書のアイコンの意味について
本書では,より学習しやすくなるように,以下のアイコンで要点を示しています。受験生達が間違えや すい部分について,注 意を促しています。 インプットに出てくる 専門用語など,語句の 意味の紹介です。
はしがき 本書の効果的活用法 労働法をマスターする10の秘訣
第1編 個別的労働関係法
第1章 就業規則 ……… 1 SECTION① 就業規則 問題1∼8 ……… 4 SECTION② 懲戒 問題9∼10 ………26 第2章 労働契約 ……… 39 SECTION① 労働契約の成立・配転・出向 問題11∼17 ………42 SECTION② 労働契約の終了・解雇 問題18∼29 ………60 第3章 労働条件 ……… 93 SECTION① 賃金 問題30∼42 ………96 SECTION② 労働時間 問題43∼52 ……… 128 SECTION③ 休憩・休日・休暇 問題53∼61 ……… 152 第4章 年少者・女性その他 ……… 181 SECTION① 年少者・女性 問題62∼65 ……… 184 SECTION② パートタイム・派遣労働者 問題66∼70 ……… 198第2編 集団的労働関係法
第1章 労働組合 ……… 217 SECTION① 労働組合 問題71∼77 ……… 220 SECTION② 団体交渉 問題78∼84 ……… 242 SECTION③ 争議行為 問題85∼95 ……… 262 第2章 労働協約 ……… 299 SECTION① 労働協約 問題96∼105 ……… 302公務員試験 過去問 新クイックマスター 労働法 第3章 不当労働行為 ……… 333 SECTION① 不当労働行為 問題106∼118 ……… 336
第3編 労働法総合
第1章 労働法総合 ……… 373 SECTION① 労働法総合 問題119∼132 ……… 376■INDEX
……… 412 【凡例】 法令名等 本文中で略記した法令名等は下記の通り。 育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法) 労働基準法(労基法) 労働契約法(労契法) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(雇用機会均等法) 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働紛争解決促進法) 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法) 労働者派遣事業の適切な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法) 労働基準法施行規則(労基則) 労働組合法(労組法) 基 労働基準法 契 労働契約法 組 労働組合法 育 育児介護休業法 派 労働者派遣法 均 雇用機会均等法 民 民法労働法をマスターする
10
の秘訣
1 過去問は合格への羅針盤。 2 条文をおさえろ(暗記!)。 3 判例は読み込もう!。 4 漫然と勉強するな。まずは過去問を解け。 5 二度でる問題は,三度でる。 6 関連する法律は,一度は全文に目を通す。 7 過去問を使って知識のエッジを研ぎ澄ませ。 8 手を広げるな。ど真ん中を繰り返せ。 9 厚生労働省のHPを活用せよ。 10 できないことは気にするな!本番が勝負だ!労
働法
第
1
編
公務員試験 過去問
新クイックマスター 労働法
第
1
章
SECTION ①就業規則
SECTION ②懲戒
就業規則
1
第 1 章 就業規則 労 働 法 試験名 年 度 出題数 セクション 地 上 労基 国家総合職 (旧国Ⅰ) 懲戒 就業規則 第 章
出題傾向の分析と対策
地方上級 地方上級で頻出のテーマとはい えませんが,そろそろ出題があっ てもよい時期といえます。労働基 準法上,就業規則についてどのよ うな義務規定あるのか,さらに, 労働基準法で課せられている届出 義務違反等について,その就業規 則の民事上の効果はどのようにな るのか,判例もしっかり理解しておくことが必要です。労働契約法が施行されて, 就業規則に定める労働条件が労働契約の内容となる場合については7条の規定す るところですが,秋北バス事件の判例を中心に,就業規則に関する判例は依然と してきちんと押さえておくべきでしょう。また,懲戒は就業規則よりはよく出題 されているテーマですから,判例を中心に学習を進めましょう。 労働基準監督官 労働基準監督官の場合には,就業規則は必ずマスターすべき頻出項目です。地 方上級ではみられない労働基準法施行規則等からの出題もあります。 国家総合職 地方上級と同様,就業規則は頻出のテーマとはいえませんが,懲戒は重要なテー マです。 06︱ 08 09︱ 11 12︱ 14 06︱ 08 09︱ 11 12︱ 14 06︱ 08 09︱ 11 12︱ 14 1 1 1 1 3 1 1 1 ★ ★ ★★ ★ ★ ★ ★ ★ ★就業規則
1 地方上級と総合職の場合には,労働基準法と労働契約法の条文に加えて, 重要な判例を確認していきましょう。一方,労働基準監督官の場合には,施 行規則や行政通達について,細かい部分にも目を配っていきましょう。もち ろん,行政通達などはすべてに目を通す必要はありませんので,過去問で問 われている部分について,しっかり暗記をしていくことが大切です。学習と対策
・・・・・・・・・
過去問・必修問題
・・・・・・・・・
就業規則
就業規則について,労基法,労契法上の規定を正確に マスターしましょう。 問 労働基準法及び労働契約法に規定する就業規則に関する記述とし て,通説に照らして,妥当なのはどれか。 (特別区 2008) 1: 使用者は,労働者を常時一人でも使用していれば,就業規則を作成し, 行政官庁に届け出なければならない。 2: 使用者は,就業規則の作成または変更にあたり,当該事業場に労働者の 過半数で組織する労働組合がある場合においては,その労働組合と協議 し同意を得なければならない。 3: 就業規則には,始業および終業の時刻,賃金の決定に関する事項および 安全衛生に関する事項はいかなる場合にも必ず記載しなければならない が,解雇の事由を含む退職に関する事項は記載する必要がない。 4: 使用者は,就業規則を,常時各作業場の見やすい場所に掲示し,または 備え付けるなどの方法によって,労働者に周知させなければならない。 5: 就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,当該労 働条件がその労働契約の一部分であっても,すべて無効となる。❶
作成義務 届出義務 意見聴取義務 周知義務 常時10人以上 の労働者を使 用する使用者 届出がなくて も就業規則は 有効 労働者側の同 意を得ること は必要ない 労働基準法上 の周知義務は 方法も法定さ れている第 1 章 就業規則 過去問・必修問題 の
解 説
チェック欄 1回目 2回目 3回目 頻出度 地上★★★ 労基★★★ 国家総合職★★ 〈就業規則〉 1× 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は,法定の記載事項を備えた就業 規則を作成し,行政官庁に届け出なければならない(作成・届出義務,基 89 条前段)。すなわち,作成・届出義務を課せられるのは,常時「10 人以上」 を使用している使用者に限られる。 2× 使用者は,就業規則の作成・変更にあたり,当該事業場の労働者の過半数 で組織する労働組合がある場合はその組合,それがない場合は労働者の過 半数を代表する者の意見を聴かなければならない( 意見聴取義務,基 90 条 1項)。ただし,この義務は,文字どおり意見を聴取する義務にとどまり, 協議し,同意を得るまでの義務はない(通説)。 3× 就業規則に記載すべき事項は,法定されている(必要記載事項,労働基準 法 89 条1号∼ 10 号)。この必要記載事項には,就業規則を作成したら常に 必ず記載しなければならない事項である絶対的必要記載事項(同条1号∼ 3号)と,何らかの定めをしている(制度として行っている)場合には必 ず記載しなければならない事項である相対的必要記載事項(同条3号の2 ∼ 10 号)がある。そして,本肢の事項のうち,始業および終業に関する事 項(同条1号),賃金の決定,計算および支払方法などに関する事項(同条 2号),解雇の事由を含む退職に関する事項(同条3号)は,絶対的必要記 載事項である。他方,安全衛生に関する事項(同条6号)は,相対的必要 記載事項である。本肢は,安全衛生に関する事項,解雇の事由を含む退職 に関する事項の位置付けが妥当でない。 4〇 使用者は,就業規則を,常時各作業場の見やすい場所に掲示し,または備 え付けること,書面を交付すること,その他厚生労働省令で定める方法(コ ンピュータを使用した方法が想定されている)によって,労働者に周知さ せなければならないとされている( 周知義務,基 106 条1項)。 5× 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分 については,無効となり,この場合において,無効となった部分は,就業 規則で定める基準によることとなる(契 12 条)。したがって,就業規則で 定める基準に達しない労働条件が労働契約の一部分である場合は,その部 分のみが無効となるのであって,すべて無効となるわけではない。4
就業規則
就業規則❶
1
第 章1 労働基準法上の労働者
···
基第9条 この法律で「労働者」とは,職業の種類を問わず,事業又は事務所 に使用される者で,賃金を支払われる者をいう。 労働基準法上の労働者とは,雇用され,賃金を支払われる者であることから,パー トタイマー,短時間労働者,外国人労働者であっても労働基準法上の労働者となり ます。ただし,労働基準法は同居の親族のみを使用する事業もしくは事務所,家事 使用人には適用されません(116 条2項)。2 就業規則
···
⑴ 就業規則の作成と届出義務
基第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は,次に掲げる事項につい て就業規則を作成し,行政官庁に届け出なければならない。 就業規則を作成する際に,必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項と, その職場において規定を設けるならば,必ず記載しなければならない相対的必要記 載事項が法定されています。また,89 条に列挙されているもの以外にも,就業規 則に規定を盛り込むことは可能です(任意的記載事項)。 ① 絶対的必要記載事項 始業および終業の時刻,休憩・休日・休暇,賃金(臨時の賃金等を除く)の支払 いや昇給,解雇の事由を含む退職に関する事項は必ず記載しなければなりません。 ② 相対的必要記載事項 退職手当や臨時の賃金等,安全および衛生に関する定め,表彰及び制裁の定め 等は,会社がそのような定めをする場合に,就業規則に記載が必要となるものです。 届出がなされてなくても就業規則は無効にはならず,使用者と労働者は 就業規則の適用を受けます。第 1 章 就業規則
⑵ 就業規則の 意見聴取義務
基第90条 使用者は,就業規則の作成又は変更について,当該事業場に,労働 者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の 過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者 の意見を聴かなければならない。⑶ 就業規則の 周知義務
使用者は,労働基準法や命令の要旨,就業規則等を常時各作業場の見やすい場 所へ掲示し,または備え付けること,書面を交付すること等によって,労働者に周 知させなければなりません(基 106 条1項)。⑷ 就業規則と法令・ 労働協約
基第92条 就業規則は,法令又は当該事業場について適用される労働協約に反 してはならない。 ○2 行政官庁は,法令又は労働協約に牴触する就業規則の変更を命ずること ができる。 就業規則は労働協約(P299 ∼参照)に反してはならないとの定めは,就業規則 に定める労働条件が労働協約のものより下回る場合はもちろん,労働協約の基準を 上回る労働条件を定める就業規則も無効となります。労働協約は労働組合と使用 者の合意によって形成されるもので,労使の合意により成立した労働協約が使用者 の一方的に作成する就業規則より優先することとなるのは,労使自治の尊重という 労働法の理念からは当然だからです。 労働者側の合意は必要ありません。全面的に反対意見が付されても就業 規則は有効です。また,労働者の過半数とは,正社員に適用される就業 規則を定める場合でも,パート労働者も含めた全労働者の過半数です。 必ずしも書面の交付が求められていないことに注意しましょう1
就業規則
❶
第 章3 就業規則と労働契約
···
⑴ 就業規則と労働契約
契第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において,使用者が合 理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には, 労働契約の内容は,その就業規則で定める労働条件によるものとする。⑵ 就業規則の変更による 労働条件の不利益変更
労働契約が締結された後に,使用者は労働者と合意することなく,就業規則の変 更により,労働者に不利益な労働条件の変更はできません(契9条)。しかし,大 企業ではすべての労働者と合意することは不可能ですから,労働契約法 10 条では 就業規則の変更による労働条件の不利益変更の要件が定められています。 かつ 労働契約法10条 変更後の就業規則を 周知させていること 就業規則の変更が 合理的であること 合理的であるとは 以下の基準によって判断される 労働者の受ける不利益の程度 労働条件の変更の必要性 変更後の就業規則の内容の相当性 労働組合等との交渉の状況 その他の就業規則の変更に係る事情 労働契約法10 条に規定されている周知は,労基法上定められている法定 の周知方法によって,実際に労働者にその内容を認識させることまでを 求めるものではなく,実質的にみて事業場の労働者集団に対して就業規 則の内容を知り得る状態においていたことで足ります。 労働契約法は労働契約や労働条件の有効性に関わる法律(民事ルール), 労働基準法は違反した場合に刑罰や行政上の不利益を受けるか否かに関 わる法律です(刑事・行政ルール)。第 1 章 就業規則
⑶ 就業規則の強行的・直律的効力
契第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,そ の部分については,無効とする。この場合において,無効となった部分は,就 業規則で定める基準による。 就業規則 労働契約 実際の労働条件 時給800円 時給700円 時給800円 時給700円 時給800円 時給800円 労働者の合意があっても,就業規則に定める労働条件に達しない部分につ いては無効となります。契約全体を無効にするのではないことにも注意! 秋北バス事件(最大判昭 43.12.25) 「労働条件を定型的に定めた就業規則は,一種の社会的規範としての性質を 有するだけでなく,それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり, 経営主体と労働者との間の労働条件は,その就業規則によるという事実たる 慣習が成立しているものとして,その法的規範性が認められるに至っている (民法 92 条参照)」「と解すべきであるから,当該事業場の労働者は,就業規 則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず,また,これに 対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず,当然に,その適用を受ける ものというべきである」。 「新たな就業規則の作成又は変更によつて,既得の権利を奪い,労働者に不 利益な労働条件を一方的に課することは,原則として,許されないと解すべ きであるが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建 前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものであるか ぎり,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適 用を拒否することは許されないと解すべき」。判例
みちのく銀行事件(最大判平 12.9.7) 55 歳以上の行員を職務内容を変更せずに一律「専任職」に就けたうえ給与 などを減額する旨の就業規則の変更が問題となった事案で判例は,賃金を約 3割から5割近くまで減額する一方,労働時間短縮や退職金額増額などの代 償措置がとられなかった当該就業規則の変更は,原告ら高年層の行員に一方 的に大きな不利益を与えるものであって,高度の必要性に基づいた合理的な ものとはいえない。判例
問 労働基準法及び労働契約法に規定する就業規則に関する記述として,判例・ 通説に照らして,妥当なのはどれか。 (特別区 2003) 1: 最高裁判所の判例では,就業規則が,労働者に対し一定の事項につき使用者 の業務命令に服従すべき旨を定めているときは,その規定内容が合理的なもの である限りにおいて労働契約の内容をなしているものであるとした。 2: 使用者は,就業規則を作成するにあたり,当該事業場に労働者の過半数で組 織する労働組合がある場合にはその労働組合,そのような組合がない場合に は労働者の過半数を代表する者と協議し,その同意を得なければならない。 3: 最高裁判所の判例では,就業規則変更により,既得の権利を奪い労働者に不 利益な労働条件を一方的に課すことは一切許されず,当該規則条項が合理的 でも,個々の労働者はこれに同意しないことを理由に,その適用を拒めるとし た。 4: 使用者は,事業場単位で就業規則を作成することとされ,社員と臨時従業員の ように同一事業場に労務内容や待遇を大きく異にする労働者のグループが存 在する場合でも,それぞれ別個に就業規則を作成することは一切許されない。 5: 行政官庁は,法令または労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることが できるが,この場合,使用者が所定の手続をとらなくても,当該変更命令によっ て就業規則それ自体が当然に変更される。
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★1
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題
1
〈就業規則〉 1〇 就業規則は,合理的な労働条件を定めているものであれば法的規範性を有 し,不利益変更も,合理的なものである限り労働者を拘束する(秋北バス 事件,最大判昭 43.12.25)。さらに,判例は,就業規則が,労働者に対し一 定の事項につき使用者の業務命令に服すべき旨定めているときは,そのよ うな就業規則の具体的内容が合理的なものである限り,就業規則が当該労 働契約の内容をなしているということができる,としている(電々公社帯 広局事件,最判昭 61.3.13)。そして,これらの判例法理は,内容の合理性と 周知を条件に就業規則が労働契約の内容となることを定めた労働契約法7 条に結実した。 2× 使用者には,就業規則の作成・変更について,当該事業場に労働者の過半 数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合の,そのような組合が ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務がある(意 見聴取義務,基 90 条1項)が,これは文字どおり「意見を聴」く義務にすぎず, 同意を得るまでの必要はない。 3× 判例は,「新たな就業規則の作成又は変更によって,既得の権利を奪い,労 働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として,許されな い……が,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建 前とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものである かぎり,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,そ の適用を拒否することは許されない」とした( 秋北バス事件,最大判昭 43.12.25)。すなわち,判例によれば,不利益変更は一切許されないわけで はない。判例法理は労働契約法 10 条に結実した。 4× 1つの事業場に,勤務形態や労働条件の異なる労働者が存在している場合 においては,各労働者に応じて,別個の就業規則を定めたり,1つの就業 規則中に各労働者のみに適用される条項を設けることも許される(通説)。 5× 法令・協約に違反する就業規則も放置すれば事実上行われる危険があるの で,これを防止するため使用者に就業規則の変更義務を課すのが,変更命 令制度(基 92 条2項)の趣旨である。したがって,この変更命令は,使用 者に就業規則の変更義務を課すにとどまり,その内容を直接変更する効力 を有するものではない(通説)。1
問 就業規則に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 (大阪府 1997 改題) 1: 就業規則とは,労働組合と使用者またはその団体との間の,賃金・労働時間な どの労働条件その他に関する文書による協定をいう。 2: 常時 50 人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成し,所轄の都道 府県労働委員会に提出しなければならない。 3: 使用者が,就業規則を作成するに際し,事業所に労働者の過半数で組織する 労働組合がある場合にはその労働組合と団体交渉を行い,その同意を得てい なければ,就業規則はその効力を生じない。 4: 行政官庁は法令または労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることがで きるが,この変更命令は就業規則の内容を直接変更する効力を有しない。 5: 就業規則で定める基準に達しない労働基準を定める労働契約は,その労働契 約全体が無効のものとなる。
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★2
〈就業規則〉 1× 就業規則とは,使用者が(一方的に)労働条件・服務規律などの事項につ いて定めたきまりをいう。本肢は,労働協約の定義である。 2× 作成した就業規則の届出先は「所轄労働基準監督署長」である(労働基準 法施行規則 49 条)。なお,就業規則の作成義務を負うのは,常時「10 人」 以上の労働者を使用する使用者である(基 89 条)から,「50 人」以上の労 働者を使用する使用者には作成義務が生じ,この点では本肢は妥当である。 3× 使用者には,就業規則の作成・変更について,当該事業場に労働者の過半 数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合の,そのような組合が ない場合には労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務がある(意 見聴取義務,基 90 条1項)が,これは文字どおり「意見を聴」く義務にす ぎず,同意を得るまでの必要はない。また,意見聴取なしに作成・変更さ れた就業規則の効力に関しては争いがあるが,就業規則については使用者 に一方的な制定権があるから,同条項は取締規定にすぎず,意見聴取の有 無は就業規則の効力に無関係であると解されている(通説)。 4〇 法令・協約に違反する就業規則も放置すれば事実上行われる危険があるの で,これを防止するため使用者に就業規則の変更義務を課すのが,変更命 令制度(基 92 条2項)の趣旨である。したがって,この変更命令は,使用 者に就業規則の変更義務を課すにとどまり,その内容を直接変更する効力 を有するものではない(通説)。 5× 就業規則所定の労働条件が労働契約所定の労働条件よりも有利な場合は, 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約はその部分に ついては無効となり(強行的効力),無効となった部分は就業規則所定の基 準による(直律的効力)ことになる(契 12 条)。すなわち,ここで無効とな るのは,就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約の部 分のみであり,労働契約全体が無効となるわけではない。
4
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題2
問 就業規則に関する次の記述のうち,労働基準法又は労働契約法上妥当なのは どれか。 (特別区 1992) 1: 使用者は,使用する労働者の人数の多少にかかわらず,必ず就業規則を作成し, これを行政官庁に届け出なければならない。 2: 就業規則は法的な拘束力を有しないので,就業規則に定める基準に達しない 労働条件を内容とする労働契約は,原則として有効である。 3: 就業規則には,賃金,臨時の賃金,退職手当などの金銭に関する労働条件を 定めることはできない。 4: 使用者は,就業規則を変更しようとするときは,当該事業場に労働者の過半数 で組織する労働組合がない場合においては,当該事業場の過半数を代表する 者の意見を聴かなければならない。 5: 使用者は,法律で限定的に列挙された事項以外の事項を就業規則に記載する ことはできず,これに違反した場合は,行政官庁から就業規則の是正勧告を受 け,それに従わない場合は,当該記載事項は無効となる。
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★3
〈就業規則〉 1× 労基法上,就業規則の作成義務を負うのは「常時 10 人以上」の労働者を使 用する使用者に限られる(基 89 条)。 2× 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分 について無効となり,この場合において無効となった部分は,就業規則で 定める基準による(契 12 条)。就業規則は法的効力を有し,その基準に達 しない労働契約は無効なのである。 3× 賃金に関する事項(基 89 条2号)は絶対的必要記載事項であり,必ず記載 が必要である。また,臨時の賃金に関する事項(同条4号)・退職手当に関 する事項(同条3号の2)は相対的必要記載事項として,いずれも就業規 則に定めることができる。 4〇 使用者は,就業規則の作成または変更について,当該事業場に労働者の過 半数で組織する労働組合がある場合にはその組合,労働者の過半数で組織 する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を 聴かなければならない(意見聴取義務,基 90 条1項)。この意見聴取義務は, 労働者の過半数で組織する労働組合がない場合も,免除されるわけではな い。使用者は,就業規則を変更するときも,本肢のような形で,労働者側 の意見を聴取しなければならない(同条項)。 5× 就業規則の記載事項は労働基準法 89 条に列挙されているが,この列挙事項 に限らず,それ以外の事項をも就業規則に記載することができる。同条 10 号も「前各号に掲げるもののほか,当該事業場の労働者のすべてに適用さ れる定めをする場合においては,これに関する事項」を記載しうると定め ている。
4
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題3
問 就業規則に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 (地上 1990) 1: 就業規則は,労働契約に対して優越的な効力を有するから,就業規則におい て定める労働条件と労働契約において定める労働条件が異なっている場合,ど ちらの労働条件が有利であるかを問わず,その部分について就業規則が適用 される。 2: 就業規則の法的性質をどのように解するかについて,法規範説と契約説とがあ るが,いずれの説によっても労使間の合意は,就業規則が労働者と使用者を 拘束する要件とはなっていない。 3: 使用者が就業規則を作成または変更するには,当該事業場の労働者の過半数 で組織する労働組合,または労働者の過半数を代表する者の同意を得る必要 があり,同意を欠く就業規則は無効である。 4: 使用者が,就業規則を労働者に不利に変更した場合においても,その変更が 合理的なものである限り,これに同意しない個々の労働者がその適用を拒否す ることは許されないとするのが判例である。 5: 労使双方の協議により作成された就業規則のなかに,その変更は組合との協 議により行う旨の規定がある場合には,協議を経ないで行われた就業規則の変 更は無効である。
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★4
〈就業規則〉 1× 就業規則所定の労働条件が労働契約所定の労働条件よりも有利な場合は, 労働契約法 12 条が適用される。逆に,労働契約所定の労働条件が就業規則 所定の労働条件よりも有利な場合は,労働契約所定の労働条件が優先する (通説)。 2× 就業規則の法的性質については,就業規則はそれ自体であたかも法律のよ うに労働者・使用者を拘束する法規範であり,その制定にあたっては労働 者の同意や両者の合意は不要であると解する法規範説と,就業規則はそれ 自体では拘束力のない契約のひな型にすぎず,労働者がそれに同意しまた は両者が合意することによって初めて労働契約の内容となって労働者を拘 束すると解する契約説とが対立している。契約説に立てば,労使間の合意が, 両者を拘束する要件となる。しかし,契約説の中でも就業規則を約款と理 解し,契約内容は就業規則によるという事実たる慣習が存在するとみて, 内容の合理性を条件に就業規則の拘束力を認める見解が有力である。そし て,労働契約法7条と親和的である。 3× 使用者には,就業規則の作成・変更について,労働者の過半数で組織する 労働組合がある場合にはその労働組合の,そのような組合がない場合には 労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務がある(基 90 条1項) が,同意を得るまでの必要はない。 4〇 判例は,新たな就業規則の作成または変更によって,既得の権利を奪い, 労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として,許され ないが,労働条件の集合的処理,特にその統一的かつ画一的な決定を建前 とする就業規則の性質からいって,当該規則条項が合理的なものであるか ぎり,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適 用を拒否することは許されないとした(秋北バス事件,最大判昭 43.12.25)。 そして判例法理は労働契約法 10 条に結実した。同条では,周知も要件となっ ていることに注意のこと。 5× 判例は,就業規則の制定権が実質上使用者にあることなどから,当該約款 は使用者に協議義務を負担させるにとどまり,違反の就業規則を失効させ るものではないとしている(三井造船玉野分会事件,最決昭 27.7.4)。
4
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題4
問 就業規則に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。 (地上 1996) 1: 退職に関する事項は,就業規則における必要記載事項にはあたらないから,退 職に関する事項を欠いている就業規則であっても,有効に成立する。 2: 労働基準法 90 条1項にいう「意見を聴かなければならない」とは,単に労働 組合または代表者の意見を聴取するのみでは足りず,使用者は,就業規則の 作成・変更について労働者と協議し,その内容について同意を得ることが必要 であることを意味する。 3: 使用者が,適法な手続に基づいて就業規則を作成または変更した場合であっ ても,当該規則について労働基準法所定の方法による周知を怠ったときは,当 該規則全体が無効になるとするのが判例である。 4: 就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約であっても,労 使合意のうえで締結されたものであれば有効である。 5: 労働者は,就業規則が事業場における合理的な労働条件を規定する限り,そ の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず,また,これに対し て個別的に同意を与えたかどうかを問わず,当然にその適用を受けるとするの が判例である。 (参考)労働基準法 90 条 ① 使用者は,就業規則の作成又は変更について,当該事業場に,労働者の過半 数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で 組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を 聴かなければならない。
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★5
〈就業規則〉 1× 退職に関する事項(基 89 条3号)は絶対的必要記載事項であり,この点で 本肢は妥当でない。ただし,絶対的必要記載事項を欠いた就業規則でも, その効力発生についての他の要件を具備する限りで有効である(行政解釈)。 2× 使用者には,就業規則の作成・変更について,労働者の過半数で組織する 労働組合がある場合にはその労働組合の,そのような組合がない場合には 労働者の過半数を代表する者の意見を聴取する義務がある(意見聴取義務, 基 90 条1項)が,これは文字どおり「意見を聴」く義務にすぎず,同意を 得るまでの必要はない。使用者の意見聴取義務は,労働者の同意を得る義 務を含まない。 3× 使用者は,就業規則を常時各職場の見やすい場所に掲示するなどして,そ の存在と内容を労働者に周知させる措置を講じなければならない(周知義 務,基 106 条1項)。そして,労基 106 条1項の手続きによる周知までは必 要ないが,何らかの形での周知と内容の合理性がないと,就業規則は労働 契約の内容とはならない(契7条)。フジ興産事件(最二判平 15.10.10)も 周知が必要とする。 4× 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分 について無効となり,この場合において無効となった部分は,就業規則で 定める基準によることとなる(契 12 条)。 5〇 就業規則は,それが合理的な労働条件を定めているものである限り,経営 主体と労働者との間の労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習 が成立しているものとして,その法的規範性が認められるに至っている(民 92 条参照)と解すべきであるから,当該事業場の労働者は,就業規則の 存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず,また,これに対 して個別的に同意を与えたかどうかを問わず,当然に,その適用を受ける ものというべきである,とするのが判例である(秋北バス事件,最大判昭 43.12.25)。フジ興産事件は周知手続が必要とするが,個々の労働者が現実 に知ることまでは要求していない。
5
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題5
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★★ 労基★★★ 国家総合職★★ 問 労働基準法や労働契約法における就業規則に関するA∼Dの記述のうち,妥 当なもののみを全て挙げているのはどれか。 (労基 2014) A: 使用する労働者が一時的に 10 人未満となることはあっても常態として 10 人以 上であれば,使用者は,就業規則を作成し,行政官庁に届け出なければなら ない。この場合の労働者には,パートやアルバイトなども含まれる。 B: 就業規則のうち,退職に関する事項は相対的必要記載事項に分類される。また, 退職に関する事項とは,労働者からの申出による任意退職,定年制による退職, 契約期間満了による退職等をいい,使用者による解雇の事由は含まれない。 C: 使用者は,作成した就業規則について,これを必ず労働者に書面で交付して 周知しなければならない。したがって,就業規則を,常時各作業場の見やすい 場所へ掲示して周知したり,コンピュータを使用した方法で周知することは許 されない。 D: 労働契約法によると,就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めた労 働契約は,その部分については無効であり,無効となった部分は,就業規則で 定める基準による。 1: A 2: B 3: A,D 4: B,C 5: C,D6
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題 〈就業規則〉 A〇 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成し行政官庁に 届け出なければならないが,この場合の常時 10 人以上とは,一時的に 10 人 未満となることがあっても,常態として 10 人以上である場合である。また, 労基法上の労働者は,使用者に使用されて賃金を支払われる者であるから, パートやアルバイトも労働者としてカウントされる。 B× 就業規則に記載すべき内容は,労働基準法によって法定されているが,退 職に関する事項は絶対的必要記載事項である(基 89 条3項)。この退職に 関する事項には,解雇の事由も含まれる。 C× 使用者は作成した就業規則を,常時各作業場の見やすい場所へ掲示し,ま たは備え付けること,書面を交付すること,その他コンピュータを使用し た方法などよって,労働者に周知させなければならない(基 106 条)。即ち 必ずしも書面の交付による必要はない。 D〇 就業規則に定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約は,その部分 については無効であり,無効になった部分は,就業規則で定める基準によ る(契 12 条)。 以上から,AとDが妥当であり,肢3が正解となる。
3
6
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★7
問 就業規則に関する次の記述のうち,最も妥当なのはどれか。 (労基 2013) 1: 常時5人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成し,行政官庁に 届け出なければならないが,当該労働者は正社員のみが対象となっており,パー トタイムやアルバイトの雇用形態の労働者は含まれない。 2: 就業規則の作成において記載すべき事項には,始業及び終業の時刻,安全及 び衛生に関する事項などの,いかなる場合でも必ず記載すべき事項と,休憩 時間,職業訓練,表彰及び制裁に関する事項などの,制度として行う場合には 記載すべき事項があり,それらの各事項は労働基準法及び労働組合法に明記 されている。 3: 就業規則の作成において,退職手当の定めをする場合は,適用される労働者 の範囲,退職手当の決定,計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期 に関する事項を記載しなければならない。 4: 使用者は,就業規則の作成又は変更について,当該事業場に労働者の2分の 1以上で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の2 分の1以上で組織する労働組合がない場合においては労働者の2分の1以上 を代表する者の同意を得なければならない。 5: 就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合においては,その減給は, 1回の額が平均賃金の1日分の3分の1以上,総額が一賃金支払期における賃 金の総額の5分の1以上となってはならない。第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題
7
〈就業規則〉 1× 就業規則の作成・ 届出義務を負うのは,パートタイムやアルバイトの雇用 形態の労働者も含んで常時 10 人以上を使用する使用者である(基 89 条)。 労働基準法における「労働者」とは,職業の種類を問わず,事業または事 務所に使用されるもので,賃金を支払われる者であるから(基9条),正社 員のみならず,パートタイムやアルバイトの雇用形態の労働者も含めて常 時 10 人以上を使用する使用者は就業規則を作成して行政官庁に届けなけれ ばならない。 2× 安全および衛生に関する事項は, 相対的必要記載事項であり,休憩時間は 絶対的必要記載事項である。いずれも労働基準法により法定されているが, 労働組合法には記述はない。 3〇 本肢は,労働基準法 89 条に照らし妥当である。 退職手当に関する定めは,絶対的必要記載事項ではなく制度として行う場 合には記載すべき相対的必要記載事項であるが,その定めをする場合には, 適用される労働者の範囲,退職手当の決定,計算および支払いの方法なら びに退職手当の支払いの時期に関する事項を記載しなければならない(基 89 条3号の2)。 4× 就業規則の作成または変更については,当該事業場に,労働者の過半数で 組織する労働組合がある場合にはその労働組合,ない場合には,労働者の 過半数を代表する者の意見を聴かなければならない(基 90 条1項)が,そ の同意を得る必要はない。また,過半数とは2分の1以上ではなく,2分 の1を超える必要がある。 5× 就業規則で 減給の制裁を定める場合においては,その減給は1回の額が平 均賃金の1日分の半分を超え,総額が一賃金支払期における賃金の総額の 10 分の1を超えてはならない(基 91 条)とされている。3
問題
❶
就業規則
基本レベル 頻出度 地上★★ 労基★★★ 国家総合職★★ 問 就業規則に関する次の記述のうち,最も妥当なのはどれか。 (労基 2011) 1: 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成し労働基準監督 署長へ届け出るとともに,その許可を得なければならない。一方,常時 10 人 未満の労働者を使用する使用者は,就業規則の作成義務はあるものの,労働 基準監督署長への届け出で足りる。 2: 就業規則の作成又は変更に当たっては,使用者は,労働者の過半数で組織す る労働組合がある場合においてはその労働組合,労働者の過半数で組織する 労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て, 労働基準監督署長に届け出なければならない。 3: 就業規則で,労働者に対して減給の制裁を定める場合においては,その減給は, 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。また,減給の総額が 一賃金支払期における賃金の総額の 10 分の1を超えてはならない。 4: 就業規則が法令に反していたとしても,当該反する部分については就業規則 の労働契約規律効や最低基準効は適用される。一方,労働協約に反する就業 規則の条項の効力は当然に否定されるので,当該労働協約の適用を受けない 労働者についても,同様に効力は否定される。 5: 事業場に退職金に関する制度が存在し,それを就業規則に記載した場合には, 「絶対的必要記載事項」として就業規則の効力が認められることとなる。しかし, 就業規則の一部を退職金規程として別規則とした場合には,当該規程は就業 規則ではないため,労働基準監督署長への届出義務等就業規則に係る労働基 準法における規定の適用は受けない。8
第 1 章 就業規則 チェック欄 1回目 2回目 3回目 問題 〈就業規則〉 1× 常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は,行政官庁(所轄労働基準監督 署長)に対し就業規則の作成および届出の義務を負う(基 89 条)が,就業 規則に関し,労働基準監督署長の許可は必要ない。また,常時 10 人未満の 労働者を使用する使用者については,就業規則の作成義務も 届出義務も生 じない。 2× 使用者は,就業規則の作成または変更にあたって,本肢所掲の労働組合ま たは労働者の代表者の同意を得る必要はないので,本肢は妥当でない。 使用者に義務付けられているのは,当該事業場労働者の過半数で組織する 労働組合,それがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴くこ とであり,これによって就業規則に労働者の意思を反映させようとする趣 旨である。ただし,この義務は,意見聴取の義務にとどまり,同意を得る までの義務ではない(通説)。 3〇 本肢は,労働基準法 91 条の条文どおりであり,妥当である。 懲戒事由となる事案が1回であった場合は,平均賃金(1日分)の2分の 1の範囲内でなければならず,懲戒事由となる事案が数回であった場合は, 当該賃金支払期における賃金総額の 10 分の1以内でなければならないとい うことである。 4× 法令に反する就業規則の部分については,就業規則の労働契約規律効や最 低基準効は適用されず,また,労働協約の適用されない労働者については, 労働協約に反する就業規則の効力は否定されないので,本肢は妥当でない。 5× 退職金に関する制度を就業規則に記載した場合,当該事項は「相対的必要 記載事項」であり,また,当該規程を別規則とした場合でも,当該規程は 就業規則であり,労働基準法の規律に服するので,本肢は妥当でない。
3
8
・・・・・・・・・
過去問・必修問題
・・・・・・・・・
懲 戒
❷
労基法上,懲戒としての減給につきどのような規定が あるのか,また使用者による懲戒の限界について判例 を中心に学習します。 問 使用者が行う懲戒処分に関する次の記述のうち,妥当なのはどれ か。 (地上 1997) 1: 労働基準法上,減給処分は,1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え てはならず,かつその総額が一賃金支払期における賃金の総額の 10 分の 1を超えてはならないとされている。 2: 職務内容と他の従業員の学歴とのつりあいという観点から募集対象者の 学歴が中学卒または高校卒と限定されている場合であっても,学歴を低 く詐称することは,企業秩序維持にかかわる真実告知義務違反とはなら ないとするのが判例である。 3: 懲戒処分は,企業秩序違反に対する制裁罰であるから,私生活上の行為 を懲戒事由とすることは,一切許されない。 4: 退職を勧告し,退職願または辞表を提出させる諭旨退職制度が設けられ ている場合,それが懲戒の一種として制度上定められていたとしても, 当該退職は依願退職の形になるので,同処分について法的に争うことは 認められない。 5: 使用者は,企業の存立と運営とに不可欠な企業秩序を定立し維持する権 限を本来的に有し,他方,労働者は,労働契約の性質・内容上当然に企 業秩序遵守義務を負うから,法令上,使用者は懲戒の制度を設ける場合 に就業規則に規定を置くことまでは要求されていない。 使用者が労働者を懲戒処分する場合には,懲戒事由と内容につい て,就業規則に明記されていることが必要です。第 1 章 就業規則 過去問・必修問題 の