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研究課題 : 認知症高齢者が表出する BPSD( 行動心理学的徴候 ) に対する包括的ケアアプローチに関する研究 -BPSD 軽減のための身体的 情緒的側面からのケアモデルの開発を目的とした実践的取り組み 代表研究者 : 木村裕美 ( 佐賀大学医学部准教授 ) 1. 研究の背景高齢化の進展や高齢者人

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Academic year: 2021

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研究課題 : 「認知症高齢者が表出する BPSD(行動心理学的徴候)に対する包括的ケアアプロー チに関する研究 -BPSD 軽減のための身体的、情緒的側面からのケアモデルの開発 を目的とした実践的取り組み –」 代表研究者 : 木村裕美(佐賀大学医学部 准教授) 1.研究の背景 高齢化の進展や高齢者人口の増加とともに認知症高齢者の増加は必須である。介護保険による居宅 で生活している要介護度認定者の 3 分の 1 は「一定の介護を必要とする認知症がある」という結果で あった。さらに介護保険 3 施設においてはその率は高く、8 割といわれている。平成 24 年には全国で 認知症者は 300 万人を超えたとの報告がなされ当初の予測よりも 10 年早いペースといわれ、その対策 が一層急がれるところである。 国の施策は、「認知症になっても安心して生活し続けられる社会を早期に構築する」として、効果 的に対策を推進し、認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクトが設立された。平成 24 年には 新規事業の市町村認知症施策総合推進事業として、地域包括支援センター等に認知症地域支援推進委 員を配置し適切なサービスの提供のための関係機関との連携調整や地域の実情に応じた認知症高齢者 やその家族への支援を実施するものである。 また、認知症を知り地域をつくるキャンペーンでは、 認知症の状態や心持、家族の関わり方や地域住民の接し方、早期発見、早期診断の重要性の情報を幅 広く国民に届け、理解を深めようとするものである。認知症サポーターキャンペーンは、地域で認知 症高齢者やその家族にできる範囲で手助けをするものであり 2014 年までに 400 万人を養成する目標が 掲げられている。 アルツハイマー等は、前頭前野の機能低下を起こし認知機能障害を発生させストレスへの脆弱性を も起こすと考えられている。認知症の「周辺症状」とも呼ばれる BPSD は徘徊や妄想・攻撃的行動・不 潔行為など進行に従い頻繁に出現し、急速に本人の QOL の低下を招きかつ介護の負担をも増大させる。 そこで BPSD を軽減させる適切なケア介入を行う事で BPSD を回避できるのではないかと考えた。介護 者が BPSD の徴候に気づき、『ケアの方向性を変更する』ことができた場合に、BPSD の防止や回避がで きるのではないかと考える。また、BPSD を起こすことは認知症者が意思を言葉や行動で表現できない という負のストレスによるものである。しかし、心身ともに快ストレスをもたらすケアは、加齢に伴 う脳機能低下の進行を緩やかにし、QOL 向上の獲得に必要不可欠である。BPSD を軽減、回避するため の快ストレスをもたらす認知症高齢者に対するケアプログラムは未だ明確ではない。 2.研究目的 本研究の目的は、BPSD を表出する認知症高齢者を対象に快ストレスをもたらすケアプログラムを開 発し、介入を試み BPSD の軽減および回避と快ストレスをもたらすケアを検証することである。 3.研究方法 対象者は、S 県内の 3 施設のうち、介護老人福祉施設・グループホーム・小規模多機能型居宅介護・ 地域密着型特定施設に入所者している BPSD を表出する認知症高齢者 57 名である。 1)コントロール期(12 週間):平成 25 年 7 月~11 月

(1)唾液中アミラーゼ活性値測定(以下、アミラーゼ活性値)および VAS(Visual Analogue Scale: フェイススケール)評価、質問紙調査について

①定期アミラーゼ活性値測定として、一日のうちで測定時間および測定部位(舌上)を定めて、BP SDが発症していない時に対象者 1 名につき 1 週に 1 回(全 12 回)アミラーゼ活性値を測定した。

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②BPSD 出現時に、アミラーゼ活性値測定と VAS 評価、BPSD 発症のきっかけ、気づき、BPSD-AS を測 定した。対象者 1 名につき 1 週間に 2 回程度とした。

基本属性、BEHAVE-AD、クリクトン高齢者行動評価尺度、認知症高齢者の QOL 評価表、Barthel-Index、 GBS 尺度、 Mini-Mental State Examination、高齢者うつ尺度を面接にて質問紙調査を実施した。 2)介入期(6 週間):平成 25 年 12 月~平成 26 年 3 月 (1)介入内容および方法 ①身体的運動介入 身体的運動介入として対象者に対して、1 週間に 2 回合計 12 回(6 週間)スクエアステップ(以後 SSE とする)を実施した。1 回の実施時間は 30 分~60 分程度であった。対象者が精神的に落ち着いて 参加できる時間として、施設ごとに開始時間を決定した。対象者個々の ADL に合わせ、独歩、杖使用、 歩行器使用、手引き歩行、車いすにてSSE用のマットの上を 3 往復のステップを踏んだ。毎回実施 時には「365 歩のマーチ」の音楽を流した。ステップパターンは認知機能の状態に合わせて、可能な 者は 1 回に 1 パターンを実施し、ステップパターンの理解が不可能なものは、マットのマス目を意識 しながら、1 マスに足を入れるように促した。車いすの者は、足首を上下させステップをしているイ メージを促し介助にて実施した。研究スタッフは、対象者がモチベーションアップや達成感、快感情 を体験できるように声掛け、リズム取り、手拍子、タッチング等でコミュニケーションを図った。 ②情緒的介入 情緒的介入として、バリデーション法を用いたコミュニケーションを 12 回実施した。時間帯は指 定せずに対象者が落ち着いて対話できる時とした。内容は今日の出来事について、家族について、日 常生活について、昔のことについてなどである。バリデーション技法としては、①事実に基づいた言 葉を使う、②本人の言うことを繰り返す、③はっきりした、低い優しい声で話す、④タッチングなど を活用した。 (2)アミラーゼ活性値測定および質問紙調査について ①介入時のアミラーゼ活性値を測定 SSE 実施前後でアミラーゼ活性値を測定した。また、バリデーション実施前後にアミラーゼ値を測 定した。 ②その他のアミラーゼの測定と質問紙調査 定期アミラーゼ活性値測定、BPSD 発症時、VAS 評価等はコントロール期と同様に実施し。身体的運 動介入および情緒的介入がすべて終了した翌週から、コントロール期と同様の質問紙調査を実施した。 3)解析方法 調査の結果、コントロール期 57 名、介入期 55 名を有効回答として統計解析を行った。アミラーゼ 活性値測定には、NIPRO 酵素分析装置 唾液アミラーゼモニターを使用した。すべての統計解析には Windows 版 SPSS20.0 を用いて、統計学的有意水準を 5%未満とした。 4.倫理的配慮 対象者には研究の趣旨と内容について説明し、理解を得た上で協力を求めた。研究への参加は自由 意志であり、参加しない場合であっても不利益にならないことを書面と口頭で十分に説明した。認知 症により言葉の理解が十分でない場合には、その家族に同様の説明を実施した。さらに協力に同意が 得られた方には同意書の記名を得た。なお、データは匿名化し、研究以外の目的以外には使用しない こと、および個人情報の漏洩に注意した。

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5.結果 1)対象者の概要 対象者は男性 6 名(10.5%)、女性 51 名(89.5%)、平均年齢は 85.6 歳 SD6.9(男性 81.8 歳 SD6.3 女性 86.1 歳 SD6.9)であり、介護度は、要支援 2 が 4 名(7%)、要介護 1 が 5 名(8.8%)、要介護 2 が 11 名(19.3%)、要介護 3 が 22 名(38.6%)、要介護 4 が 10 名(17.5%)、要介護 5 が 5 名(8.8%) であった。認知症高齢者の自立度は、Ⅰが 8 名(14.0%)、Ⅱが 8 名(14.0%)、Ⅲが 28 名(49.1%)、 Ⅳが 13 名(22.8%)であった。障害高齢者の日常生活自立度は、J1 および 2 が 6 名(10.5%)、A1 および 2 が 29 名(50.9%)、B1 および 2 が 18 名(31.6%)、C1 および 2 が 4 名(7.0%)であった。 主な疾患は複数回答で、心疾患が 28 名(49.1%)、脳血管疾患 10 名(17.5%)、筋骨格系疾患 9 名 (12.3%)、精神疾患(認知症を除く)7 名(12.3%)、消化器疾患 7 名(12.3%)などであった。 2)コントロール期 (1)定期および BPSD 発症時のアミラーゼ活性値について 定期アミラーゼ活性値の平均は、100~149 kIU/L は 14 名(24.6%)が最も多く、次いで 150~199 kIU/L は 12 名(21.1%)であった。BPSD 発症時のアミラーゼ活性値の平均は、150~199 kIU/L は 13 名(22.8%)で最も多く、次いで 100~149 kIU/L9 名(15.8%)、250~299 kIU/L は 9 名(15.8%) であった。定期と BPSD 発症時の平均アミラーゼ活性値を比較したところ有意な差が認められ、定期の アミラーゼ活性値が低かった。 3)介入期 (1)対象者の変更 コントロール期終了後、体調不良や入院などにより、介入が出来なくなった者が女性 2 名あり、介 入対象者は 55 名となった。 (2)定期および BPSD 発症時のアミラーゼ活性値について 介入期の定期アミラーゼ活性値の平均は、200~249kIU/L が 14 名(25.5%)で最も多く、次いで、 50~99 kIU/L が 11 名(20.0%)で多かった。BPSD 発症時のアミラーゼ活性値の平均は、200~249kIU/L が 13 名(23.6%)で最も多かった。介入期の定期と BPSD 発症時の平均アミラーゼ活性値を比較した ところ有意な差は認められなかったが、コントロール期に比べて定期および BPSD 出現時の平均アミラ ーゼ活性値が低い傾向にあった。コントロール期と介入期の平均定期アミラーゼ活性値の比較では、 有意な差は、認められなかったが、介入期の平均アミラーゼ活性値が低くなっていた。コントロール 期と介入期の BPSD 出現時のアミラーゼ活性値の比較では、有意な差は認められなかった。 定期アミラーゼ活性値は、介入期で対象者 55 名の平均を基準にしたときに、高い者が 44.4%、低 いものは 55.6%と二極化が認められた。しかし、介入期には低いものが 63.7%で増加が認められた。 (3)SSE 実施とアミラーゼ活性値について SSE 実施前の平均アミラーゼ活性値は、200~249kIU/L が 14 名(25.5%)で最も多く、次いで、50 ~99

kIU/L が 11 名(20.0%)であった。SSE 実施後の平均アミラーゼ活性値は、200~249kIU/L が 14 名(25.5%) で最も多く、次いで 150~199 kIU/L が 10 名(18.2%)であった。SSE 実施前後で、平均アミラーゼ 活性値を比較したところ、有意な差は認められなかった。さらに SSE 実施前最高値と SSE 実施後最小 値を比較したところ有意な差が見られた(p<0.01)。SSE 実施前後で VAS を比較すると、有意な差が 認められた(p<0.05)。SSE 実施前と比べて SSE 実施後の平均アミラーゼ活性値が上昇した人は、22 名(40.0%)、下降した人は 31 名(56.4%)であった。 (4)バリデーション実施とアミラーゼ活性値について バリデーション実施前のアミラーゼ活性値の平均は、200~249kIU/L が 14 名(25.5%)で最も多く、次いで

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50~99 kIU/L が 11 名(20.0%)であった。バリデーション実施前後で、平均アミラーゼ活性値を比較したところ 有意な差が認められ(p<0.01)、バリデーション実施後の平均アミラーゼ活性値が低かった。バリデーション 実施前後の VAS の比較では、有意な変化は認められなかった。バリデーション後に平均アミラーゼ活性値が 上昇した人は 17 名(30.9%)、下降した人は 38 名(69.1%)であった。 6.考察 対象者は、障害高齢者の日常生活自立度が J1 から A2 までの者が 6 割を占め、歩行は自立や見守り または一部介助の状態であった。しかし、認知症高齢者の自立度がⅢまたはⅣが 7 割を占め、指示、 介助、誘導への興奮拒否がみられた。SSE はステップパターンの理解に困難を示したが、拒否はほと んど認められなかった。ストレスを評価するための唾液採取においてもほとんどのものが測定するこ とができた。 定期アミラーゼ活性値は、コントロール期では二極化が認められたが、介入期には低値群が 6 割を 占め増加していた。コントロール期において定期と BPSD 発症時の平均アミラーゼ活性値は有意な差が 認められ、BPSD 出現時にはストレスが高くなっていることが示唆された。このことは、認知症高齢者 において BPSD を発症することで QOL に影響するといわれていることからも、BPSD は不快のストレス であることが考えられた。認知症高齢者がストレスと感じる BPSD をいかに発症させないように、個々 にあったケアをすることは重要であり、また発症のきっかけとなることを回避することは重要である。 本研究において、身体的運動介入として実施した SSE の前後のアミラーゼ活性値の比較では有意な 差は認められなかったが、VAS の比較では有意な差が認められた。実施後は表情が穏やかになり笑顔 が見られるなど、音楽を聴きながら体を動かすことを楽しんでいる様子が伺えた。SSE 実施後にアミ ラーゼ活性値が下降した人は半数を占め一定の効果が認められたと考える。 情緒的介入としてバリデーション実施により、アミラーゼ活性値は有意に低下したが、VAS の変化 は認められなかった。また、バリデーション後にアミラーゼ活性値が下降した人は 7 割を占め効果が あったと考える。バリデーションは認知症の高齢者であっても、人として尊重し、共感者となり関わ ることで安寧をもたらす技法である。今回の研究では、10 分~15 分程度ではあったが介護スタッフが 対象者とゆっくりとした時間を共有し、家族や昔の思い出話をすることでストレスを和らげる効果が 得られたと考えられる。 7.今後の課題 認知症高齢者がますます増加する今日、QOLを向上させることは重要な取り組みである。ストレ スである BPSD をできるだけ出現させないためにもきっかけとなる原因を介護者が理解することも重 要である。 本研究では、短期間の介入で BPSD の状況やストレスを生理学的指標にて評価した。今後は認知症 高齢者の日常生活の中で、長期的に運動や情緒的ケアを取り入れて効果を検証する必要があると考え る。そして、認知症高齢者にとってより効果的なケアアプローチを開発する必要があると思われる。 学会発表:木村裕美、田本朋美、藤本裕二、神崎匠世、宮島優、畑中有美、 杉かずよ:認知症高齢 者の BPSD に関する研究 ‐BPSD 出現時のストレスに着目して‐,第 15 回日本認知症ケア学会 大会,2014 年 5 月 31 日‐6 月 1 日. 受賞:平成 26 年度石崎賞

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(9)

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参照

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