〔
論 説
〕
空
の
安
全
一
技 術
、政
策
、そ し
て法
一
羽
原
敬
二 *1
,
はじめ
に1)航
空輸 送
の安
全確保
は、国
や航
空会社
な どの直
接関係者
の努
力 だけ
で な く、
利 用者
を含
めた 社会
全体
の正 しい 理解
と協力
に よっ て培
われ るべ き もので ある という
認 識 は、最
も重要
な前提条件
である。 こ の た めに、航
空輸
送の安全確保
に係わ る課 題 と して 、今後取組
むべき措
置が 、航 空輸
送安全対 策委
員会
の報告書
で は、次
の よう
に示さ れ てい る。(
1
)航空会社
の安全 管
理体 制
の再構 築
大手航空会社
で導
入さ れてい る安
全管
理 システ ムを再検証
し、改 善
を 図る と と もに、未導
入の航空会社
におい て もその導
入 を検討す
る。航
空会社
の安
全管
理 シス テム の導入
に係
わる制度化
を 検 討 し、
その導
入に関 す る ガ イ ドライン を作
成 する。(
2
)
安 全 情 報の収 集・
分 析の 強 化航 空
会
社 に お ける安全
情報
の収集 ・
分析
の あ り方
につ い て再検
証 し、
日常業務
に関 する潜在
的 なリス ク を生 じるハ ザー
ドを適
切に事前把握 ・管
理 する。 国 自 ら も安 全 情 報 を積 極 的に収 集・
分 析 し、
安 全 基 準の見 直 し な ど、
予 防 的 安 全 対 策 を 図っ て い くた めに、
国に対 する報 告 制 度の 方 法、 報 告 しやすい環 境の整 備・
シ ステム構 築 等につ い て検討
し、
入 手 し た 安 全 情 報 に対 する調 査・
分 析 を 強 化 する。(
3
) 訓 練 方 法の見 直 し 現 行の ヒュー
マ ンフ ァ クター
訓 練 を再 検 証 し、
ス レ ッ ト・
ア ン ド・
エ ラー
マ ネジメ ン トの概 念 を訓練
要件
に取
り入 れるな ど、
訓 練の内 容 を検 討・
基準
化 する。(
4
)
業 務の実 施 方 法の見 直 し現場
の意見
や安
全 情 報の解析
を 踏 ま え、
ヒュー
マ ン エ ラー
を 防 止す
る観
点 か ら、
規 定・
マ ニ ュ ア ル類を見直
し、
そ れ に伴 う教育
・
訓練
を推
進す
る。 編 集 部 注* 関 西大 学 商 学 部 教 授 本 稿は、
2006年2月18H に 開催さ れ た法 学研究 所 第36
回シ ン ポ ジウム の報 告 内 容に関し て、
基 礎 概 念の説 明 を加 えたものである。 参 考 資 料 とし て当日配 布 資料の一
部 分 を本冊 子 の 巻 末に 「第36
回シン ポ ジ ウム資料 」として掲 載 した。1
)報 告 書 『航空 輸送の安 全 確 保に向け て 』 平成ユ7
年8
月 (http://ve・wu ・.
rmlit.
go.
jp
/koku/04_
outline/08_
sh kai/13_
anzentaisaku /index、
html.
)口本 乗 員 組 合 連 絡 会 議 事 故 解 析 委員 長、
機長舘野洋 彰 「私の視 点 システム 事 故 失 敗をカバー
策どう組み込む」 朝凵新 聞大 阪 本 祉 版2006年4
月26
日付 朝 刊.
(
5
)
航 空 会 社に対
す る 監 督・
監 査の強 化航 空 会 社の 特 性に合わ せ た 監 督
・
指 導 が 可 能 とな るよ う な 体 系 的 かつ専
門 的 な 監 査 手 法 を導 入す
る た め に、
監 査専
従 部門 を設 立 する など、
体 制の 強 化お よび担 当 職員
の能 力 向 上 を 図る た めの研修
を充実 す
る。(
6
)
整備
の外注化
へ の対
応の検討
今後拡大
が予想
さ れ る外注整 備
に対す
る国の監 視 を的確
に実施す
るため の方法
を検討す
る。円 滑で
安
全な航
空 運送事 業
を 遂行
た め に は、
航 空に関す
る法律
や規則
が適切
に整備
さ れて い る という
だけで は、 当然
な が ら不十
分である。 周辺要素
として、 航
空管制機材
や航行援
助施
設 な どの施 設 類の 整 備 およ び維 持管
理、航 空 交 通 流に
無
理が生 じない管制
空 域の設定
、管
制 官の 教 育 や 周 知 情 報の徹底 、 作業
環 境 や 勤務
実態
の適
正化
・
改善
など が、
正常
に機能
してい な け れ ば ならない 。静 岡 県 焼 津 市の 上 空で
2001
年に発 生 した 日本 航 空 機 同 士の異 常 接 近事
故で は、
類 似 した便 名 の航 空 機 が 複 数 飛 行 して い た こ と、
三宅 島の噴 火に よ り、 付 近の空 域が 制 限 さ れて い た ため、
混 雑 し た 状 態で あっ たこ と、
空ll1衝 突 防 止警報
装 置(
TCAS )
が 作 動 した場 合の対 処 法 が、
明 確 に規 定 さ れてい な かっ た こ と、
通 常 な らば、
異常接
近の3
分 前 に 出るべ き管
制レー
ダー
画 面 上の 警 報が、
設 計 上の 間 題 か ら 約2
分30
秒 も 遅れて 出 され た ことなど、
言い 問違
い を し易い 条 件 が 多か っ たこ と に加 え、
管 制 官 が 部 下 を 実 地 訓 練 中で、
集 中 力 が 低 ドしやす かっ た ことが 指 摘 さ れて い る。 この よ う な状 況で発 生 し た 言い 間 違い を 不 注 意に よ る もの と判 断 して、
処 罰 するだ けでは、
組 織 に再 発 防 止体
制 を構 築 する こ とは容 易で は ない 。 人 問の 失 敗 を注 意力
だけで防 止 する こ とは不
可 能である。 失敗
するこ とを 前 提に し て、
それに対 処 す る方 策 をシ ス テム の 中に組み込 むこ とが 巨 大シス テム を設 計 する際の基 本 原 則である。 人 間 は、
シ ス テム の中では非 常に限 定 的 な役 割 を 担っ てい るに過 ぎない。 シ ス テム性 事 故 が 発 生 し た 場 合に、
最 も重 要 なこ とは、
原 因 を 調 査 して、
シ ス テ ムに内 在 す る不 備 を洗い 出 し、
適 切 に改 善 するこ とである。 その ため には、事
故 関 係 者か ら可 能 な 限 り詳しい 情 報が提 供 さ れね ばな ら ない 。事
故当事者
が法
的責
任 を厳
し く追 及さ れ れ ば、
有 効 な 証 言 は得
られ に く くな り、
シス テ ム の不備
に対
する根
本 的 な 改 善 も困難
に な る。 関 係 当 事 者の責 任 を 追及
するのみ で は、
再 発 防 止 に繋
が らず、
社 会 全 体の 利 益に も な ら ない。
実 行 行 為 者 を 処 罰 して事 故の解 決・
処 理 を 図ろう
と する現 行の法 制 度を見直
し、事故
の 再発
防止 に寄与す
る方策
を共有
するこ とが 必要で ある。事故
調 査 体 制のあ り方
につ い て は、 日本 学術 会議
が、事 故 当事者
が な ぜ最後
の 引き
金 を 引 くこ と に なっ た か を明ら か に し、
同種事故
の 再発
防 止に関す
る教
訓 を得
ることが社 会
正義
に も繋
が る と提 言 してお り、
シス テム性事 故
に対
する 正 しい考
え方
が社会 的
に認識
さ れ ることが求
め ら れ て い る。こ の た び、 関 西 大 学 法 学 研 究 所におい て以上の よ
う
な 問 題 意 識に基づ き、 航 空 機の運 航、 航 空 管 制、 空 港の管 理・
運 営、 航 空 事 故 調 査の各立場か ら、 現 場の生の 声を聞 くと同 時に、 本 質 を探 り、
本 格 的 な 課 題 解 決へ の取 組 み を行 う際に必 要 となる 正確 な 共 通 認 識を得る た め、
「空の安 全 」一2 一
と題 するシ ン ポジ ウム を 開 催 した。
そこ で
、
本 稿で は、
その 報 告 内 容 に関 し、
航 空 運 送 事 業にお ける安 全 確 保の 専 門 的 概 念 を 正 しく理解
す
るう
えで 重要
な シ ステムお よび手法
につ い て、
以下で説
明し、
まと め て おく
こと とし た。且
.
Safety
Management
System
(
SMS
)
の構 築
と
運 用
1 .安
全管
理 システ ム と航
空法規
の関係
2)わ が国の
航
空法
の体系
、 米 国のFAR
(
Federal
Aviation
Regulations
:米
国 連 邦 航 空 規 則)
、 その 他 諸外
国の航
空法
は、ICAO
(
lntemational
CiVil
Aviatlon
Organization
:国 際 民 間 航 空 機 関 )Annex
に基づ い て制 定
さ れてい る。 その内
容は、
航 空 機の安 全
な 運航
を 行う
上で、
何 を 守 ら な く て はならない かを規定
した安全
規制
で あ り、
その 規定
を 具 体 的に どの よう
な 仕 組み で実 践 するか は運 航 者に委 ね ら れてい る。 こ の運 航の安 全 確 保 と向、
巳に必 要 な 組 織 およ び運 営の あ り方が安 全 管 理で あるが、
運 航 業 務は、
規 模、
内 容、
また は形 態 が 様々 で ある ため、
実 態 としての統一
性 に おい て、
運 航 者 間で 開 き が ある。 運 航につ い て、
質 的 な 開 きが あるこ とは 容 認 さ れるべ きでは な い 。 し か しな が ら、
法 規に よっ て完 全 な 同一
性 を求 めるこ と は、
運 航 形 態 が多
様であ り、
組 織 風 土が深 く関 係 するた め、
極めて困 難で ある。わが 国で は
、
航 空 法 第 百 条 を受 けて、
航 空 運 送 事 業お よ び 航 空 機 使 用 事 業の許 可お よび事 業計
画 変 更 審 査 要 領 (安 全 関 係 )に よ り、
運 航 に係 わる法 規の 要 件 を 満 た す ため に必 要 な 施 設、
人員 、
お よ び そ れ ら を 運 用 するた めの規 程 が 適 切に備 わっ てい る こと、
さ らに安 全 管 理が適 切に行 われ てい るこ と が要 求さ れ てい る が、
そ れ は項
目的な要件
に留
まっ てい る。航 空 輸
送
規 模が拡 大す
る につ れ て、従
来 と同 じ安
全性
を確保
・
改善す
る に は、安
全管
理 が不 可 欠 との考
えか ら、
1990
年代
に安
全 管理 の手法
に関す
る研 究
が 進め ら れ、
近年
急 速 に実施段
階に移 行 し てい る。その共 通 した 考 え 方は
、
安 全 管 理に求め られ る要 件 を具体
的に指 針 として示
し、個
々 の航 空会
社
の安
全管
理体
制が実態
とし て その要件
に合致
する こ と を、第
三 者が 監 査 ま た は認 可 する シス テ ムである。
基本
理念 とし て は、
リス クマ ネジ メン ト手 法
を通 じて 、安
全 対策
が これ まで の 結 果 対 応(
reactive)
か ら、
発 生す
る前
に その芽
を摘
む未然対応 (
proactive)
に よっ て 実施
さ れ る こと を目指
してい る。
2
.ICAO
の提 唱 する安全
管 理 システ ム3〕ICAO
は、
国が指
針を示 し、 それ に基づ い て 国の 認 可 する安 全 管 理 を 航 空 会 社 に義 務づ けよう としてい る。 工CAO
は、 国が 設定
する航 空会
社が遵 守 すべ き安 全 を 管 理 する上で の 要 件 を、
安 全2
) 中 溪IL樹 「安全管理 と は (上)」 「航 空技 術 』No,
612、
社 会 法人日本 航空技 術 協会、2006
年3
月 号、
56−−65
ペー
ジ。
プロ グ ラム
(Safety
Programs )
と 安 全 管 理シス テム (Safety
Management
Systems )
に区 分 して い る。安
全 プロ グ ラムは、航
空機
の運航者 、航
空管
制、飛行場、
航 空機 整備
に係
わ る サー
ビス提 供者
が安
全な 運航の た め に遵守す
べ き法
規や指示
とその プロ グ ラ ム 目的
を達
成す
る た めの種
々 の活動
である イ ン シ デン トの報告 、事故調
査、安
全 監 査、
お よび安
全推
進な どに係
わ る規定
を含
ん でい るLt 安 全 管 理シ ス テム は、 安 全プロ グラムに基づ い た諸 活 動が有 効に実 施 さ れる た め に必 要 な 組 織 体 制、 組 織の責 務、 およ び組 織 運 営の方
針 や手
順 を含
む シス テ ム面か らの取 組みである。ICAO
は、ICAO
Annex
(
標 準 勧 告 方 式)
に おい て 、各締
約 国が安全
プロ グラ ム を設 定 することを求めてい るが
、
同 時に各
締 約 国が運航
者、整
備サー
ビス提 供 者、航
空管
制サー
ビス提 供 者、
飛 行 場 運 営 管 理 者の各々 に国 が 認 可 する安 全 管 理 シ ス テム を 実 施 する よう 新た に求 めて い る。 これは
、
法 規 に よ る制 度と は別に、
国に よ り示 さ れる指 針に従っ て具 体 的 実 施 体 制 が 認 可 さ れる もの で ある。3
,航
空 運 送 事 業に お ける安 全 管理 システム の展 開4)航 空 運 送 事 業に おける
Safety
Management
System
(
以下SMS
と表
記〉
の適 用 範囲 は、
運 航や整 備 だ けで な く、
空 港ハ ン ドリン グ業 務に まで及ぶ。 安 全 管 理シ ステ ム は、
本 来、
組 織のマ ネ ジメン トが 目 的であるた め
、
どの 産 業 または 事 業 にも共 通 して機 能 する方 法である。SMS
は、
職 種 横断
的シ ステム で あり、組織
の全 階層に関係す
るもの で ある。FAA
(
Federal
Aviation
Administratioll
:米国連 邦 航 空 局)
は、
バ リユー
ジェ ッ ト航 空機
の事
故後
5〕、
こ の 原 因 を 重 大に受 け 止め、直
ちに全 航 空 会 社 を 対象
に行っ た90
日安
全 監 査(
90days
SafeUy
Review
)
の中で、
SMS
の基 盤 と なるSystem
Safcty
の考 え 方 を打 出した。
1986
年ス ペー
ス シ ャ トル・
チ ャ レ ン ジ ャー
号の 爆 発 事 故、
1998
年 巨 大 油 井プ ラ ッ トホー
ム、
パ イパー
ア ルフ ァー
の爆
発 火災事 故
な ど、
世 界 的に も大
規模
な産業災害
が次々 と発 生 し てい た。 こう
し た大
災害
に共
通 し て み ら れ る特徴
は、
マ ネジ メン トの要
因が事
故 発 生原 因に深 く
か か わ っ て い る という事
実であっ た。 4) 大 森 晴 夫 「これ か らの安 全 管理一
セ イフ ティ・
マ ネジ メ ン ト」 『航 空 技 術 』2005年81・
1、
No.
605、
社団法人 日本 航 空 技 術 協 会、
44−49
ペー
ジ。5
)1996年5
月1/日午 後2時13分 頃、
フ ロリ ダ州マ イア ミ空 港 発バ リュー
ジ」、
ッ ト航 空592
便DG−9−32
は、
ジ ョー
ジア州ア トラ ン タ に向 けて離 陸 約10分 後、
火 災の ため空港か ら約19km のエ バー
グ レー
ズの湿地帯に墜 落 した、 調査の結 果、
前 方 貨 物 室に積 載 さ れて い た使 用 期 限 切 れ また は期 限 間 近のOz
ジェ ネレー
ター
が 何 ら かの衝 撃で作 動 し、
火 災を発生 したこ と が判 明 した。Oz
ジェ ネレー
ター
は、
外 部 委 託の整 備 会 社 が 他の機 体か ら取り外し た もの で あ り、
本来 な ら ば直ちに廃 棄さ れ なけれ ば な ら ない ものが 廃棄さ れず、
安全 キャ ッ プ も取 り付 けら れてい な かっ た。 安全 キャ ッ プ は プラス テ ィ ック製で、1
個1
セン ト以下と さ れ、 バ リュー
ジJ一
ッ ト との委託 契約で は、
安全キャ ップ はバ リュー
ジェ ッ ト側 が 用意し なけれ ば な ら な かっ た。
さ ら に、
1
司社は社 内の連 絡 ミス に よ り、
こ の使用期 限切れまた は期限間 近の02
ジェ ネレー
ター
に使用済みの誤っ た 表 示を添 付してい た。一 4 一
こ う し た 背 景 に対 応 して先 進 諸 国 は
、
安 全 管 理シ ス テム を構 築 する要 件 と して、ISO9001
の品質
マ ネジメ ン トシ ス テム(
QMS
:Quality
Management
System
)
を選 択 した。安
全 確 保にお け るマ ネジメ ン トの果たす役
割 を 重 視 する考
え 方は、
必 ずしも新 しい もの で は ない が、
QMS
は、
その考
え方
を体系
的に組
み立て てい る。 全産業共
通のQMS
という
一
般化
さ れた経 営管
理シ ス テムの基盤 の
、
ヒに安
全管
理シス テム を築 く取組
み を行 う
こと と なる。この
考
え方
を航
空業界
にい ちは やく導
入したの が、英 国
航 空局 、
カ ナダ 航 空局 、
オー
ス ト ラ リア
航
空局
で あり、
そ れ をSMS
と呼
ん で い る。
IATA (国 際
航 空 運送 協 会
:lnternational
Air
Transport
Association)
お よ びIGAO
が それ に倣い、米
国のFAA
もこ の 用 語 を使
用し、FAA
の検 査
官
用の ハ ン ドブ ッ ク に含
ま れて い る。 これ ら を統合
したも
のが 、IATA
のSMS
およ びICAO 事 故
防 止マ ニ ュ ア ル2004
年度改 定案
のSMS
に おい て示 さ れ、
両者
の内容
は ほ ぼ同じも
の で ある。こ の よ
う
に、SMS
はQMS
の構造
を 踏襲
した内容
であ
る。航
空業 界
で は、
環境
マネ
ジメ ン トを 除 き、 規 格や指 針の多
くは米 国のAS
規 格 などが 主 流である た め、 基 本 的に は欧 州の 規 格 か ら生 ま れたISO (
国 際 標 準 化 機 構 )の普 及 が 進ん で い る と はい え ない。ISO
9001
のQMS
は、
顧 客に 焦 点 を あてた改 善、
リー
ダー
シッ プ、
プロセ スア プロー
チ、
シ ス テ ム アプロー
チ、
要 員 の参
加、
継 続 的改
善(
PDCA
サ イクル)、
デー
タに即 した改善 、
供 給 者 との互 恵 関 係の8
つ の基 本 的 な 考 え 方 か ら構 成さ れてい る。 これ らは、
概 ね 安 全 監 視の 要件
である が、
SMS
の 特 徴 は、
独 立 した飛 行 安 全 計 画 責 任 者、
非 懲 罰の報 告 制 度、
目常 的 監 視 と飛 行デー
タの分 析、
リスクマ ネジメ ン トの実 施
、
緊 急 時 対 応 計 画にある。4
.
SMS
の特徴
6)(
1
)
独 立した安
全責任 者
EAA
基準
16
(
EAA
HBAT99 −
19
,
HBAW99
−
19
)
で は、
安 全 部 長(
Director
ofSafety
)
が安 全管
理 の 中 心に据 え られ、
その もと で安 全 管 理 プロ グ ラム は特 にSMS
と名づ け られ てい ない が、
実質
的に は
9
.
MS
と なっ て い る。
英 国 で はSafety
Marlager、
IGAO
で はAPA
(
Accident
Prevention
AdVisor)
と呼
ばれ てい る が、
実 態は 同 じで ある。
安
全責任者
は、安
全管
理 につ い て十分
な専
門 的知
識 と経
験 を有
し、経営者
層に直結す
る地位
を占
め てい る立場
の 人材
とさ れ てい る。経営
陣直結
の条件
は、
マ ネジ メ ン ト レ ビュー
に おい て安
全 対策
重点課
題 を適切
に提
起し、
マ ネ ジメン トの 意 思 決定
を得
ら れ やす くす
る た め である。
(
2
)
安全
報 告 制 度 安 全 報 告 制 度の基 本 要 素は、 運 用 現 場な どの あらゆる階 層か らの情 報 をフ ィー
ドバ ッ ク で きる よう
に、
情報循
環の仕
組み を設 ける こ と、
得ら れ た情 報を活 用 する こ と、
入手
情 報 を的 確 に検
討 する こと、提 供 さ れ た情
報
源へ の 回答
を行 う
こ と、安
全 情 報の共 有 を図る こ と、
組 織 外の危
険 情報
の入手
に努め るこ と、 受 身
の 情 報収集
で はな く危 険 情 報 を積 極 的に収
集 する活 動 を 実 施 するこ と、情 報の提 供 を 促 進 する こ と、 で ある。
6
)大 森 晴 夫、
前掲 論文、
5Q−54
ペー
ジ。
危
険情 報
には、
いく
つ かの レベ ル の ものがある が、SMS
では、
これ をさ らに深 く
分析
す る。 具 体 的に は、事故
やイ ン シ デ ン ト、 ヒ ヤ リ・
ハ ッ ト情 報の処 理で ある。 これら は、 既に起こ っ て し まっ た事
実 や 結 果である が、SMS
で は、起
こ りう
る事態
ま た は起
こ る かも しれない事
象 まで を対 象と して い る。 つ ま り、
ハ ザー
ド(
hazard
:潜在
的危険
要 因)
を洗い 出 し、
把 握 する こ とであ り、
その た め に、
ハ ザー
ド報
告が求め ら れて い る。 ハ ザー
ド は リスク(
risk)
を 生 み出 す 可 能 性の あ る状 況をい い、
そこか らい くつ もの リス クが発生する こ とに なる。ハ ザ
ー
ドにつ い て は、
ICAO
事 故 防 止マ ニ ュ アル 第2
版 改 訂 案に例 示さ れ て お り、
非 常 に広範
囲の概 念で あるが、
長 時 間 勤 務や過 重 な 労 働 負 荷 量 などの 勤 務 状 態 およ び労 働 環 境、
ハ ンガー
の 照 明の暗 さ、
マ ニ ュ アル の使い やす さ また は読み難 さ、
などが 挙 げ ら れる。ハ ザ
ー
ド報告
を促
進 するため に、
あ えて、
ハ ザー
ドの内容
は限定
さ れず、
ハ ザー
ド で あ る か どう
か は、
評 価の段 階で判 断さ れ る。 ハ ザー
ド報告
は、
SMS
の プロ ア ク テ ィ ヴ な対
応 を特徴
づ ける もの である。情
報の提
供 を促 進 するこ とにつ い て は、
国際 的に重 要 な 条 件 とし て、
情 報提供者
に対す
る懲罰
免 責 制 度が ある。 報 告 したこ と に よっ て不 利になる状 況で は、
表 面 的 な 原 因 究 明 し か行 えず 、結
局は、
現 場 に依存
する対 策
に陥
る。 すな わち、「
よく注意す
れ ば、事 故
は防
げる」
とい う本質
的 に誤っ た対策
となっ て し まう
。当然
な が ら、
重過失や意 図的
な もの につ い て は、諸
外 国とも 非免
責
である。 わ が国の事情
に関し て は、今後解
決 し な け ればな ら ない多 く
の課題 が残
っ て い る が、
こ れ らの
課
題 は、
現在、FAA
に事
務局
が置
か れ て い るGAIN
(
Globa
正AViation
Infolmatiol
/Network
:国 際 航空情 報 ネッ トワー
ク)会
議で議 論が進め ら れ てい る。情
報
の 提 供 を促進
する他
の方策
と し て は、情報
提供 者
へ誠実
に検
討 結 果を回答
する こ と、 提 供
さ れ た
情報
が確実
に検
討さ れ、活
用さ れ るこ と、
な どの対
応が役
立つ 。 この よう
な安
全情 報 を収
集す
る た め に、SMS
で は安
全 文化 (
Safety
Culture)
の構築
を要件
とし てい る。
組
織外
の 共 有の事
故・
イ ン シ デ ン ト デー
タベー
ス として は、
NASA
に よ るASRS
(
Aviation
Safety
Rep
。rtingSystem
:自
発 的 安 全 情 報 報 告シス テム)
、 日本に おける航 空 安 全 情 報 ネッ トワー
ク(
ASI −
net:
Japan
A
血ationSafety
lnformation
System )、
お よ び小型機航
空安全情 報 ネッ トワー
ク が ある。 航空 情
報
ネ ッ トワー
ク に はIGAO
のADREP
(
Accident11ncident
Data
Reporting
System
:ICAO 事 故 ・
イン シ デ ン ト報告 制
度)
の情報
も入力
さ れて い る。(
3
)
日 常 的監
視 と飛行
デー
タの 分 析オペ レ
ー
シ ョ ン モ ニ ター
ともい われ、 運 航につ い て の モニ ター
また は監 視の利 用で ある。FDR
(Flight
Data
Recorder
) を 活 用 し、
個々 の航 空 機の運 航 軌 跡 等 を 分 析・
評 価 す るFDM
(
Flight
Data
Monitori
)7)を 実 施 する ことを意 味 して い る。 こ の他 に、
LOSA
(Line
Operati
。nsSafety
Audit)
と呼ばれる運 航便
の操
縦席 後部
座席 (
ジ ャ ン プシー
ト)
に同乗
して運 航 状態
の観察
を行
う
方 法 が ある。運 航
・
整 備に共 通の もの と して、
巡 回・
巡 視 が挙
げ ら れる。 安 全 担 当者
は、
運 用の現場
を日常
7)ICAO ではFlight Analysis
,米 国で はFOQA (Flight Operational
Quality
Assurance)と呼んでい る。的
に見
回る必要
があ
る という考
え方
であ
る。投函
意見
や ア ン ケー
ト な ど、紙面
に よ る方法
の他
に、
現場
に直接
出向
い て、
自 ら潜在
的な危険要 因
を探
し出す
こ とに意義
が ある。業務
連絡
のた めの会
合
で は な く、懇
談会
の オ ブ ザー
ブ を 通じて、 隠さ れ た問 題点
を発
見 する こ と も 求め ら れ る。SMS
で は、 これ らの情 報 収集活
動 をproactive
という
。た だし
、
問 題 が ない わけで はない 。 リア クテ ィ ヴ(
reactive)
な活動
に対
して は、
既に結 果 が出
てい る た め、
周 囲の 理解
が 得 ら れ や す く、
予算
の設定 も
比 較 的容
易で、
目に見え
る成 果 を 得 や すい という
実 利性
が あるが、
プロ ア ク テ ィヴ(
proactive)
な活
動に対 して は、
日常 的に行わ れ て い る活 動に関 する結 果 が 分 か りに くい た め、
評 価 さ れに く く、
予 算 を 設 定 するこ と に困 難 が 伴 う な ど、
対 策の推 進に直 接 繋 が りに くい という、
担 当 者には 不 利 な側 面 がみ られる。(
4
) 危 険 要 因 (ハ ザー
ド)の 特 定 とリス クマ ネ ジメ ン トこれ が
SMS
の 中 心 部 分 と な る作 業
で ある。 危
険要 因
はハ ザー
ド である。SMS
に お ける リス ク マ ネ ジメ ン トは、
ハ ザー
ド報告
に より集
め ら れた情
報に基づ きリス ト(
PHL
:Prhnary
Hazard
List)
を作 成す
る。 これ がハ ザー
ドの認
識 とな り、 次にこ のハ ザー
ド か らも たら さ れ ると推
測 さ れ る リスクをで きる限 り想 定 する。
これ らの リス ク につ い て は、
リス ク アセ ス メ ン ト・
マ ト リ ク ス の判 断 基準
に沿
っ て重 要 度 を 判 断 して、
リス ク処 理の優 先 順 位 付け
と分
類 を 行う。
こ
う
して ま と め ら れ た デー
タ に 基 づ き、 最 重 要事
項に関 する対策案
を まとめ る。 それ を安 全 レ ビュー
会 議
ま た は委
員 会な どのマ ネジメ ン トレビュー
会議
に諮
り、
経営
層に よ る資
源 配 分等
対 策 要否
の意
思決 定
を 仰 ぐ。経営陣
に対
して、
リス クの程度、受容水準、処
理 コ ス ト、措
置を講 じ な か っ た場合
の損害
コ ス ト、
な どの費
用対 策効
果 を含
めて判断材料
とな るすべ て の情報
を 開示 する。 こ の時に、 安 全 責 任 者責
務は終
了 する。 こ れ に よ り第1
次の対 策が実 施 される が、 その 対 策が実 際に効 果 を 発 揮 して い るかどう か を 調 査ま た は効 果を測 定 する こ と が 必要で ある。 対象
に よっ ては、
長 期 監 視が 必 要となる。対
策
が効
果を発
揮して い ない 場合
に は、もう
一
度
原点
に戻 り 、改善
また は修
正 を図る。 こ のサ イク ル の 繰 り返 しにより、
最 も効
果 的な対 策へ と収束
さ せる こ とになる。 これ らの活
動は、
経 過 が分 かる(
traceable
) にするた め、 記 録 さ れ、 対 策の 実 施 とフ ォ ロー
ア ッ プ など につ い ての責 任 と権 限 が 明 ら かになる ように、QMS
の 原 則に基づ い て記 録 と文 書 化 が 求め ら れる 。 効 果 を測 定 する場 合 に、
必 要 となる重 要 な 基 準に リス クの受 容 レベ ルが ある 。 これは、
リス ク が全 く存
在 しない 状 態 を意 味 する もの で はない 。ハ ザ
ー
ド報告
に は、
既に発 生 し て しまっ た事象
の報 告 も含
まれ る。実
際に は、事
故や インシ デ ン トの発 生 原 因の調 査 活 動か ら も た らさ れ る再 発 防 止 活動
は、
SMS
で は、
リ ア ク テ ィ ヴ な活動
に 分 類さ れ てい る。 結 果 に基づ く防 止 対 策で は、
現 実に は、
原 因 と結果
に み られ る直
接の因果
関係
以 外の対 応 を検 討 する こと は難 しい 。 したが っ て、
リ ア ク テ ィ ヴ な活 動
も重 要である が、
そ れ だけ
で は不十分
と さ れ、SMS
は、
ま だ発
生 し てい ない事 象
に対
して 予防
的 に活動す
るこ と を求
め て い る。検 討
の対象
に は、
インシ デン ト情報
をは じ め とす
る リア クテ ィヴ情 報
以外
に、安全意
識 調 査結
果、
巡 回報告
な ど が含
まれ る。リス クマ ネジメ ン トの
実
施につ い て は、費
用対効
果 を考慮
し なけれ ば な ら ない 。 これ に は2
つの側 面が
あ
る。1
つ は、事故
に よ る損害
と当面
の リス ク低減 費
用 とを比較
し、安
全 対策
に投 資
を優先
さ せ る意思決定
で ある。
もう
1
つ は、
どん な軽微
な危険事象
に も個別
に徹底
して 取組
むの は、
実
は軽微
な リス クのモ グ ラ叩 きに過 ぎず、
小さ な リス クの処
理 に埋没
し て、大 き
な リスク を見失
う結
果、
や が て大
規模
な事 故
が発 生す
る ことに な る。
そ れ より
も、
まず
全体
の リス クを 認 識 し、
そ れ か ら個
々 の リス ク に関す
る軽
重の判断
に基づ く優先
順位付
け を行
い、有
限で貴
重な経営資源
(人、 物、 資 金、 時 間等 )
を 真に重 要 な危
険 要 因 発生源の低 減 対 策に重 点 投 資 する こ とが 効 果 的 な 戦 略 的 意 思 決 定である。リス ク マ ネジ メ ン ト は、 危 機 管 理 と混 同さ れ てい るこ と が
多
い が、危機管
理は、
発生 して し ま っ た事象
が それ 以 上拡 大せず 、
速や か に原 状 回復
を図る こ と が 日的である。 つ ま り、
被害
の拡 大 防1
ヒ と 迅 速 な 原 状 回 復 を 実 施 する た めの 方 策 であ り、
い わゆ る受 け 身の 安 全 対策 (
Passive
Safety
)
が 主 な 内 容である。 したがっ て、 これは、 緊 急 時 対 応 計 画 (Emergency
Response
Plan
)
の対
象
となる。(
5
) 緊 急 時 対 応 計 画航 空
機事
故、
重 大 な イン シ デ ン ト、
ハ イジャ キ ン グ、
テ ロ リ ズム、
自然 災 害 など が発 生 した場
合に は、
被 害の拡 大 防IE
と沈静化 、復
旧 を 目的 と した事後
対 応計
画 が 求 め ら れる。これ に は
、
地 上 支 援 体 制があ り、
被 害 者 救 助、
親 族等
関係
者へ の対 応、
現場
との連絡
通報 、
社 内の 緊 急 連 絡 訓 練 などが 含 まれ る。 大 規 模 災 害には演 習が不 口∫能 な ため、
これ をシ ナ リ オ上で そ れ ぞ れの役割
と活動 内容
を確
か め る図 上 訓練
が ある。5
.
ヒュー
マ ンエ ラー
に係
わる事
故防
止対策
と しての 自発
的安
全報告
制 度の活
用8〕ヒュ
ー
マ ンエ ラー
に よ る事
故 を 防 止す
る た め に大 きな効
果が期待
で きる方策
が、
自らの誤解
や錯覚
な どに よ る誤っ た 判断 、操作 、
作 業等
に起 因 する事
例 を 自発 的に報 告 する制 度
で ある。
誰
で もが引
起す
可能性
のあ
る ヒ ュー
マ ン エ ラー
の事 例
を自発 的 安
全報 告制 度 (
Safety
Reporting
Systcm )
に よっ て収集
し、
その情報
を有効
に活
用す
る ことが事 故防
止の重 要な要件
と な る。諸外 国
お よび わが国
の当局
に お い て も、
同 制度
を充
実さ せ、積極
的に危険事 象体験
を報告
するこ と を促す制 度
の確
立に試行
錯 誤 し な が ら取組
んでい る。
自 発 的
安 全報
告 制 度は、 以 下の点でProactive
な 安 全 対 策、事 故
防 止方策
の確 立・
運 用に寄 与 する と考え
ら れ る。(
1
)組
織の安全
を支
える安全
文 化の醸成
安全
は、
どの分 野に おい ても、
ハー
ドウエ ア、
ソ フ トウエ ア、
ヒn,
一
一
マ ンウエ ア、
ソー
シ ャ ル ウエ ア の4
つ の要 素で支 え
られ、
その基 盤が安 全文
化である。種
々 の大事 故
が 起こ る た びに、
組 織にお ける安 全 文 化の 欠 如 が指
摘 さ れるの は、
安 全 を 支 える土台
の脆 さ が、事
故の背 景
になっ て い るた めで ある。 こ の 安 全 文 化 を構
成 する要 素に、
報告
の文 化 が ある。 自発 的にヒュー
マ ンエ ラ 8) 国土 交 通省航 空局航 空 輸 送安全対 策 委 員会(http:〃www
.
mhtgo.
jp
/koku/04_
outline !08−
shingikaY13_
anzentaisaku /houkoku.
pdf)一
に伴 うヒヤ リ・
ハ ッ ト体験
を報
告 する習 慣 ができ
れ ば、報告
の文化
を充実す
る こ とに よっ て安
全文
化の構
築に大 き く寄
与 する こ とになる。(
2
)事
故・
イン シデ ン ト と類 似 内 容の情 報 収 集事
故は、一
般 に様 々な 要 因 が 関 係 し、
そ れ らが 連 鎖 して 発 生 する こ とが多
く、 その 中で ヒ ュー
マ ンエ ラー
が 関 与 してい る事 例 が 少 な く と も70
か ら80
%はある とい われて い る。 通 常は、
ヒ ュー
マ ン エ ラー
が 生 じて も、
重 大 な 事 態になる前に当 事 者 自身
が気
付 くか、
他の人の助 言 やハー
ドウ エ アか らの警告
ま た は 通告
な ど に よっ て、大事
に至る前 に正 常 な 状 態に修 復 さ れ る。事
故・
イン シ デ ン ト は、危険
な状 態
に な るまで誰
も気付
か な か っ た り、
偶 然 機 材の不 具 合のため に、警
告や 通 告が発
せ ら れ な か っ たり、
また は そ れ を無視 す
る という
ヒュー
マ ンエ ラー
が 重 なっ て起こ る も の で ある。重 大 な 事 故
・
イン シデ ン トや 重 大 な状 態 には 至 ら な か っ た場 合
で も、
ヒ ュー
マ ン エ ラー
が生 じ た状 況、
当事
者の心 理 状態
、 脅 威 など は、事故
やイン シ デ ン ト に 至っ た場 合
とほ とん ど同様
であ る とい える。 した が っ て、
ヒヤ リ・
ハ ッ ト体 験の 報 告に基づき、
ヒュー
マ ン エ ラー
が生 じやすい 状 況や心 理 状態
な ど を分 析 すれ ば、事故
の未然防
止の た めの安
全対策
に役
立て る こ とが で きる。
(
3
)
ヒ ュー
マ ンエ ラー
に よっ て 生 じ た危 険
な状態
か ら脱
出・
回復す
る手段
の共有
ヒヤ リ
・
ハ ッ トは、 ヒュー
マ ンエ ラー
や危 険 な 状 態に近づい たが、 重 大 な事
態に至 らなかっ た 事 例である。 こ の回 復の過 程 も含め て報 告 を する こ とに よっ て、 ヒュー
マ ンエ ラー
に よ る重 大な 事 態 か ら 脱 出 する手 段 を 関 係 者で共 有 する こ とがで きる。 た とえ、
ヒュー
マ ンエ ラー
が 生 じて も 、 早期
にエ ラー
に気 付い て正常
な状 態に戻 し、
危 険 な 状 態、事故
や イン シ デ ン トに至 ら ない運 航を 可能
とす
るこ とに繋が る。(
4
)
ヒュー
マ ンエ ラー
に起 因 する事 故・
イン シデ ン トの発 生 可 能 性 を低 減 させ る行 動の認 知自 発 的 報
告
が多
数 なさ れ れば、
どの よう な 状 況.
ドで ヒュー
マ ンエ ラー
を起 こ しや すい か を 認 知 で き、事
故 防 止 対 策 を 策 定 する場 合 に、
精 度の高い リス クアセ ス メ ン トによる 有 効 な処 置 が な さ れ る。(
5
)
ヒュー
マ ンエ ラー
の誘 引 と なるハ ザー
ドの低
減・
改 善 対 策 担 当 部 門へ の提 言 お よび 当 局への
要請
紛 ら わ しい
誘導
路の名称、案
内表
示の ない 誘 導 路、
間 違い やすい コー
ルサ イン やATC
ク リア ラン ス 、 使う
側に とっ て分かり
にく
い規程類
な ど、
ヒュー
マ ンエ ラー
を 生 じ やす
い対象
につ い て、
自発 的 安 全 報 告に よ る事
実に基づ けば、
担当部
門や当
局に改善
を 要請
し やす くな る。(
6
)
情 報の共 有に よ る現 場の リス ク感性 向
上 お よ び基本 ・確
認行為
に忠 実
な 運航業務
の重要性
の再 認 識ヒュ
ー
マ ンエ ラー
の情報
は、第
三者
の客観
的情報
より
も、
そ れ を体験
し た本
人 が一
人称
で述べ る生々 しい 情 報の方 が、1
穏 さ れてい るエ ラー
の 本 質 を 実 感 しや すい 。 そのた め、 他 人の経 験 を知 ることに よ り、
エ ラー
に 対 する警 戒 心 と感 性 を高め る こ とがで きる。(
7
)
現 場での安 全 確 保 に とっ て重 要 な 暗 黙 知の伝 承お よ び形 式 知へ の 還 元自発 的安
全報告
に より、
他 人の体 験や失 敗を通じて習得
した知
恵を共 有 する ことから、
規 則やマ ニ ュ ア ル で は
表
現 さ れ にく
い暗
黙知
を伝承
で き、
同じエ ラー
を犯す
可 能性
を減少
さ せ る こ とに なる。 さらに、 現 場か ら報 告 され た多
くの事
例に 基 づ き、 ヒ ュー
マ ン エ ラー
が 生 じ に くい ように、
チ ェ ッ ク リス ト、 マ ニ ュ ア ルや 規 定 類、 作 業手
順を改善
する こと に よっ て、 形式
知に収 集 情 報 を 活 か すこ とがで きる。(
8
)Proactive
な 安全
対策
に不 可欠
な 要 素である謙
虚 な態 度
や自律
心の醸成 ・維
持人 間の 限
界
を 知り
なが ら、自
分 もい つ エ ラー
を犯 すか わ か らない という謙虚
な気
持 ちが育
まれ、
基 本お よび確
認 行 為の 重 要1
生 を よ り強 く認 識 する こ と につ な がる。 その結 果、
ヒュー
マ ンエ ラー
に対 する感 性が磨かれること に もなる。6
.
FDM
(
Flight
Data
Monitoring
)
の概念
と展開
FDM
を取 巻 く
環 境 は最 近非 常
に変 化
し て き た。1960
年 代
に、
DFDR
(
Digita
ユFlight
Data
Recorder )
の デー
タを解析
し て運航
の改善
に役
立て るプロ ジェ ク トが、
欧 州の航
空会社
で始
まり、
2000
年
にIGAO
がFDAP
(
Flight
Data
Aiialysis
Program
:飛行
デー
タ解析
プロ グ ラム)
を世界標準
として
義務化す
るこ と を 決 定す
る に至 り、
全 世 界 的 な航 空 安 全 を確
保 するための プロ グラ ム に なっ て きた。
2005
年 末、
IGAO
は さ ら にSafety
Manage
エncntSystem
の一
環と し て、他
の施
策と共にFDAP
を実施
する こ とを 提案
して きた。FDM
は、
もとも と各航
空会社
の中で育
っ て きた歴史
的背景
か ら、
FOQA
(
Flight
Operat・
ional
Quahky
Assurance )、
SESMA
(
SpecMc
Event
Search
andMaster
Allalysis
)、
DFOM
(
Daily
Flight
Operation
MQnitoring)
など、 様々 な 名 称で呼
ば れ てい る。FDM
は、 航 空 会社
に運 航の 中に存在
する リス ク を 認 識 さ せ、 その 程度
を示 し て評価
させ 、 そ れ に対 する処 置を と ら せ、 リス ク を低 減さ せ る措
置 をとっ た後
の変 化 をモ ニ ター
する閉ルー
プの プロ セス である。FDM
で得 ら れ た情報
を航 空会社
の安
全管
理 シス テ ム(
SMS )
の 中に組 込む こ と に よっ て、
平素
の運航
デー
タ に潜
んで い る将来
の事故
につ な が る可能性
の あるハ ザー
ドか ら リ ス ク を 発 見 する手 段 と して活 用で きる。7 ,
ヒュー
マ ンファ ク ター (Human
Factors )
の概 念9>ヒュ
ー
マ ン フ ァ ク ター
という
言 葉は、
その意
味を 正確 に表
す 適 切 なH
本 語がない 。 こ の言 葉 が 航 空 業界
で使 わ れ 出 し た 当 初 は、
操 縦 士 が 関 与 した航 空 機 事 故の原 因と解 釈 さ れ、 人 的 要 因、
人 間 要 素 と訳 さ れ た り、
以 前 か ら あっ た 入 間工学と同一
視 して考 え られ た り、
不 正 確 な 理 解 ま た は 誤っ た 認 識 が あっ た。 ヒュー
マ ン フ ァ ク ター
は、
英 語で はHuman
Factors
と表 記 さ れ、
語 尾にS
が 付い た用 語であるが、
複数
のS
で は なく
、常
に単 数
で扱
われ る。Mathematies (
数学)
やPhysics (
物
理学 )
と似
てい る た め に、学
問 と とら れ やす
い が、学問
を表す
用語
で はない 。 わが国
では「
ヒュー
マ ン フ ァ ク ター
9)日本 航 空 株 式 会 社 技 術 研 究 所ヒュー
マ ン フ ァ ク ター
グルー
プ 「ヒ ュー
マ ン・
フ ァク ター
ガ イ ドブッ ク』1995
年12
月、
13−18
ペー
ジ。一 10一
ス
」
とは言
わず
に、既
に 「ヒュー
マ ン フ ァ ク ター
」 と して定 着 してい る。ヒ ュ
ー
マ ン フ ァ ク ター
は、
人 間 がう
ま く生 きるた めの能 力で あ り、 実 学とい え る もので ある。す
な わ ち、環境
の中で生 きる人 間 を ある が ま まに とら えて、
その行 動や機 能、
限 界 を 理 解し、
そ の知
識 を基
に人 間 と環境
の調和
を探 求
し、改 善す
るこ とである。ヒュ
ー
マ ン ファ ク ター
は、
その手段
とし てい ろい ろな既 存
の学問研究
の成果
を利
用す
る。 利 用す
る学
問は、
認知心
理学、
生理学、行動科学
、社会
心理学、
人体測 定学、
工学
な ど多岐
に わ た っ て おり
、学
際 的 な 取組
み が求
め ら れ る。 関連す
る学 問
の中
か ら人間
と環境
の調和
に関す
る知識
をう
ま く引 出して活
用 する ことが 必要で ある。8
.
ヒュー
マ ンエ ラー
の分 類 と対 策1°)エ ラ
ー
の分 類や概 念は さ まざ
ま に 論 じ られてい る が、
エ ラー
の原 因 を大 き く
3
つ に類 別 し、
ラン ダムエ ラ
ー
(
RandQm
Err
〔〕r:無作
為エ ラー
)
、
シ ステマ テ ィ ッ ク クエ ラー
(
Systematic
Error
;系
統 的エ ラー
)、
ス ポラ ディ クエ ラー
(
Sp
。radicError
二突 発 的エ ラー
)とする分 類 が、
その対 策 も含
め た もの であるた め、
最 も理 解 し易
い と 考 え られる。 具 体 的には、
教 育・
訓 練に よる知 識・
技
量 が身
に付い てい な かっ た 場 合、 知
識・
技 量は定 着 してい て発 揮で きたが、
環 境 に よ る阻 害要
因で期待
値 と 異 なっ て し まっ た 場 合、 身
に付い て い る はずの知 識・
技 量・
能 力 が 突 発 的に発揮
で きな か っ た場
合、
の3
分 類である。対
策
とし て もそ れ ぞ れ につ い て、
ラン ダムエ ラー
には、
再 教 育・
訓 練、
ま た はチ ェ ッ クを 実施
し、客観 的期待 値
に見
合う知
識・
技
量・
能力
を身
に付 けて、
再度 見極
めるこ と が 求め られ る、
シス テマ テ ィ ッ クエ ラ
ー
には、環 境
の再調
整、
プロ シー
ジャー、
手 順、
表 記 を 見 直 すこ とに よ り、実施者
の有
する知
識・
技
量・
能力
が期待
通り
に活
用で きる よう
に な る、
ス ポ ラ デ ィ ッ クエ ラ
ー
に は、
脳の特性
か ら発 生す
るエ ラー
で ある た め、
対処す
る ことは極
め て難 しい とさ れ てい る。ヒュ
ー
マ ン フ ァ ク ター
訓 練やCRM
が その対策
と なっ て お り、PMC
(
Psycho −
motorGycle
:脳の情
報処
理機 能)
、 メン タ ル ロー
テー
シ ョ ン、
お よび視覚
・
聴 覚
な どの錯覚
を含
むヒュー
マ ン フ ァ クタ
ー
の認識
が役
立つ 。9
.
IOSA
(IATA
Operational
Safety
Audit)
の仕 組
み と内容
11)10SA
と は、1
組「
A
Operational
Safety
Audit
の頭文字
を とっ た略称
で、
!ATA
に よっ て国 際 的に標準 化 さ れた運 航にか かわる
安全監査
シ ス テ ム また はプロ グ ラ ム の こ と を指 す
。10) 同
.
ヒ書、70−72
ペー
ジ。
11)小 杉 直 史 「10SA (lrXTA Operational Safety Audit )につ い て (上)」 『航空技 術 』2005年4月 号No
.
601、
社団法 人 航 空 技 術 協 会
、
42−
46ペー
ジ、
同 (下 )、
2005年5月 号No、
602、
58−63
ペー
ジ。ISM (10SA Standards Manual) 監 査 基 準
、
ガ イ ドラ インを定め たもの。 監 査 員の訓 練・
審 査・
審 査 基 準、
監 査 組 織の認 定基準な ど が含ま れる
IPM (IOSA Program Manual ) IOSA の実 施 方 法を定め た もの
航 空 運 送
事業
に関 して は、従
来か ら、各
国とも監督当
局に よ る規制
、監督
、業
務検
査、安
全 性 確 認検査
な ど、様
々 な形態
で行
政上 の検
査が実施
さ れ てき
てい る。 し か し、
1980
年
代か ら一
般 化 して きた運航委
託 やコー
ド シェ ア に よ る 運航
につ い て は、特
に外
国航
空会社
の安
全性
を評 価で き る仕 組み は確
立 して い な か っ た。1985年 12
月に カ ナ ダの ガ ン ダー
で 起き
たDC −
8
型機
の 墜落事 故
は、
DOD
(
Department
ofDefense
:米 国 国 防 総 省)
が 民 間 航 空 会 社Arrow
Air
をチ ャー
ター
した便で空 挺 部 隊248
名 が 全 員 死 亡 した た め、
こ の事 故 を 契 機に、 米 国 軍 人 およ び軍 関 係 者 を 民 間 航 空 会 社の航 空 機に搭 乗 さ せる場 合に は
、
事 前に当 該 航 空 会 社の安 全 品 質 を 確 認 し な け ればな ら ない こ とを 規 定 した法 律 がユ
986
年
に成 立 し、DOD
は これ を 受 けて1992年
に品質
保 証 シ ス テム要 求 を定
め た。 そ して、1998
年
9
月
に カ ナ ダの ノ ヴァ ス コ シ ア沖
に墜 落 したス イス 航 空MD
−
11
型機
には、
コー
ドシェ ア契約
に よ る デル タ航 空の乗 客が
多
数 搭 乗 し てい た。 こ うした 事 故 を 契 機に、
コー
ド シェ ア便につ い て も、
自社 運 航便
と 同等 水準
の安 全 性の確
認が必 要である と さ れ、
1999
年8
月にDOD
とATA
(
Air
Transport,
Associal,
ioi
!ofAine
エ’
ica
:米 国 航 空 輸 送 協 会)
が共 同でコー
ドシ ェ ア に関 する安 全 監 査プロ グ ラム を
設定
し た。さ ら に
、DOT
(
Department
ofTransportation
:米 国
運輸省)
も米 国
の航
空 会社
とコー
ド シェア を
行 う海外
の航
空会社
の安
全 監 査 プロ グ ラム を2002
年
2
月に策定
し た。 これ に より、米
国の航
空会社
が外
国 航 空 会 社 とコー
ド シェ ア運 航 を 実 施 する場 合に は、事
前に安 全 監 査 を 実 施して承 認
を得る と共に、 運航
開始後 も定期
的に安
全監査
を実施す
る ことが 必要 となっ た。外
国航
空会社
との コー
ド シェ ア運航
につ い て安
全 監査
を義務化
し、
ただし立法化
せず行
政権
限 だけ で実施
し てい る国、法制化
し てい る国、行
政指導
に より安
全 監 査 を要求
し てい る国、航
空会
社
の方
針に よ り実施
し てい る場 合
な ど、
世 界 中の多 く
の航
空会社
が、
コー
ド シェ ア相手先航
空会
社
の安
全 監 査 を受
けな けれ ば な ら なくなっ てい る。
さらに、 コ
ー
ドシェ ア と平行
して世 界 的にア ライ ア ン ス が広
く行
わ れ る よう
になっ てき
た状
況 下で、 ア ラ イア ン ス として の統
一
性
を維持
し 、 顧客
に対す
る責任
を 全うす
る た め に は、各参加
企業
が同等
の安全性
を有
してい なけれ ば な ら ない との考
え方
か ら、安
全性
の確認
をア ラ イァ ン ス加
盟の条 件とする方 式が採 用さ れて い る。 具 体 的には、
ア ラ イア ンス の安
全監査に合 格 し なけれ ば、
会 員 企 業にな れ ない 制 度である。IATA
におい て も、
新 規にIATA
に加 盟 を 希 望 する航 空会
社は、IATA
の 安 全 監 査 チー
ム に よ る監 査 を受
けて 合 格 し な け れ ば、
会 員にな れ ない という
OQS
(
Operational
Quali
しySystem
)
が1998
年か ら 実 施 さ れて い る。