尾 高
茂
高エネルギー加速器研究機構 (KEK)
LHC 実験
ヒッグス粒子を探そう
東京理科大学 物理学特別講義 B (平成23年度後期) Lecture No. 9
2011 年 11 月 24 日
[1] Higgs 粒子探索の基礎知識
[2] LHC 加速器
[3] LHC 実験装置
[4] LHC 近況
自発的対称性の破れ
粒子がある程度存在した方が空間のエネル
ギーが小さく成る (という理論が作れる)
→
自発的対称性の破れ
真空 = 最もエネルギーの低い状態
真空 = この粒子の海
中を動く粒子はこの影響を受ける
物性物理では常識: この粒子 = 電子対
→ 超伝導の BCS 理論
E= −ax2 + bx4 南部陽一郎 2008 年度ノーベル物理学賞受賞対称性が破れると質量の無い粒子が現れる
→ 南部-Goldstone (NG) boson
Peter W. Higgs
Higgs found at ATLAS; April. 15, 2008
ヒッグス・メカニズム
Brout–Englert–Higgs mechanism、あるいは Higgs–Brout–Englert–Guralnik–Hagen–Kibble mechanism、 Anderson–Higgs mechanism;通称 Higgs mechanism
素粒子の世界では
元々質量が無いはずの相互作用を媒介する粒子
(ゲージ粒子) に質量を与えることができる (NG
boson がゲージ粒子に吸収される)
余りの自由度が質量を持った粒子として残る
→
ヒッグス粒子 (Higgs boson)
これを電弱相互作用に適用
重い W 粒子 (弱い相互作用を媒介する粒子;
陽子の 80 倍の質量)
→
ワインバーグ・サラム理論
(グラショー・サラム・ ワインバーグ理論)中性の Z 粒子を予言
→ 発見 (1973, 1983)
実験で測定された W、Z 粒子の性質を非常に
良く説明できる
⇒
ATLAS 測定器 1979 年度ノーベル物理学賞66
電弱統一理論
SU(2) ×U(1)ゲージ理論
質量の無いゲージ場
結合定数
Aµ(i) Bµ g2 g1スピンの無い (スカラー) 複素場
φ = φ1+iφ2 φ0 +iφ3 SU(2) 二重項
ポテンシャル・エネルギー
V( )
φ = −µ2φ2+λ φ4最低エネルギー状態 = 真空:
φvacuum= 1 2 0 v φ
vacuum≠ 0
と成る様にゲージ変換を固定
ゲージ場の混合
12 Aµ (1) −iA µ(2)(
)
=Wµ 1 g2 2+g 1 2 g2Aµ (3) −g 1Bµ(
)
=Zµ (i = 1, 2, 3) 1 g2 2+g 1 2 g1Aµ (3) + g 2Bµ(
)
=AµW と Z の質量項が現れ
る
φ の 4 つの成分の内の 3 つが W と Z の縦波成分に変わる 光子の様に横波成分のみ (W 粒子) (Z 粒子) (光子)ヒッグス場の残りの成分
φ = 1 2 0 v + H ヒッグス粒子 (H)
ヒッグス場 基本定数が減る訳ではないので、正確には「統一理論」ではない V(|φ|) を変えない成分 V(|φ|) を変える成分 v2 =µ2/λ 量子電気力学は U(1) ゲージ理論電弱統一理論の予言
tanθW =g1/g2と置くと
質量
mW 2 = v2g2 2 4電磁相互作用定数
αEM = 1 137.036 ≡ gEM2 4π = g 2 2 sin2θW 4π mZ 2 =v 2 g 2 2 + g 1 2(
)
4 = m W2 cos2θW弱い相互作用の
フェルミ結合定数
GF = 1.166 ×10 −5 GeV−2(
)
≈ g2 2 4 2mW2 = 1 2v2 v ≈ 250 GeV この他に、レプトン、ニュートリノ、クォークと Z 粒子との相互作用 結合定数なども g2 と sin2θ W の組み合わせで与えられる量子力学的な高次補正を考慮すると、全ての実験結果を
非常に良い精度で再現する
ところが、ヒッグス粒子の質量 m
H=
µ
は予言できない
標準理論
ただし
一種類ではないかもしれない 実在の粒子ではないかもしれない (物性の電子対の様な、、、)
SU(3)
C×SU(2)
W×U(1)
Yゲージ
理論
⊗ 3 世代のクォーク・レプトン
⊗ Higgs メカニズム
Higgs メカニズムでクォークやレプ トンの質量を与える事もできるHiggs メカニズムが正しい
なら Higgs 粒子が存在す
るはず
Higgs 粒子の発見・測定
⇒
標準理論の完結、その先へのヒント
強い相互作用標準理論への疑問 (私見)
クォーク・レプトンは何故三世代あるのか?
何故、陽子と電子の電荷の和は 0 なのか?
通常の物質は第一世代だけでできている 第二世代、第三世代は、質量以外は第一世代の完全なコピー 自然は何故こんな「無駄」を創ったのか? ベータ崩壊の電荷保存を仮定すれば 10-21 の精度で検証されている 「大統一理論」は 0 を自然に予言する しかし、Kemiokande 実験は最も単純な大統一理論を否定 クォーク・レプトン間に何らかの基本的な対称性があるはずヒッグス粒子が解答へのヒントを与えてくれるかも知れない
Higgs 粒子が物質の重さを生み出す
通常の意味での「物質の重さ」は重力の効果 (重力質量)
高エネルギー物理学 (実験) はまだ重力を扱えない
ここでの質量 =
慣性質量
E = mv 2 2 , E 2 = (pc)2 + (mc2 )2通常の「物質の質量」は陽子と中性子の質量
これらは「強い相互作用」で決まる
Higgs メカニズムの寄与は、あったとしても 1% 程度
Higgs 粒子 メカニズムが W、Z に大きな質量を与える
重いクォークやレプトンの質量も決めている
可能性がある
大きな余剰次元があれば別
LHC でブラックホール?
別の
自発的対称性の破れ
「重い = 大きな質量」と読み替えて下さい (業界の慣用表現)
用語解説
σ
L
N
=
測定事象 (event) 数
反応断面積 (cross section)
: 反応に固有の性質
ルミノシティ
反応断面積
ルミノシティ (luminosity)
: 加速器の性能を表す
ビーム密度やビーム衝突頻度で決まる 上の式で定義されると考えてよい 瞬間的な値を言うときは cm-2s-1、長時間の積分値 (積分ルミノシ ティ) を言うときは断面積の逆数で表すことが多い 1034 cm-2s-1 だと 1 pb の反応は平均して 100 秒に一回起こる 1 fb-1 (インヴァース・フェムトバーン) のデータを溜めれば、1 pb の 反応は平均 1000 回、10 fb の反応は平均して 10 回観測される 単位として素粒子物理学では barn (b: バーン) をよく使う: 1 b = 10-24 cm2 1 pb (ピコバーン) = 10-12 b = 10-36 cm2, 1 fb (フェムトバーン) = 10-39 cm2いろいろな反応の反応断面積測定が実験の主要な目的の一つ
ウラニウム原子核 程度の大きさ よく使う概算: 1 年 = 107秒 本当は 1 年 = 3.155...×107 秒 だが、加速器の休止時間 や調整時間などを考慮す ると、実験に使えるのは 多くても 1/3 程度ビーム粒子 標的粒子 (target)
基本反応
実験
衝突確率は断面積で決まる 粒子密度や繰り返し頻度も event 数に寄与する → ルミノシティ 衝突型実験ではこれもビーム 素粒子反応は剛体球の弾性散乱ではないので、断面積は入射エネルギーや反応の種類に依存するHiggs 粒子探索の基本
Higgs 粒子は Higgs メカニズムを起こす粒子の一部
→
重い粒子と反応し易い
ビームとして使える粒子は軽い粒子のみ
二次的反応で生成
→
生成確率が小さい
崩壊も同様: 重い粒子に崩壊し易い
⇒
重い粒子の生成を精密に測定せよ!
重い粒子はさらに崩壊するので測定は簡
単ではない
(例外) 2 光子への崩壊 きれいな事象 → 高ビーム強度で長時間実験を 行えば有望 (Higgs 粒子が軽い場合のみ) t H t t P g g P q' W o r Z H q''' W o r Z q q'' P P q' H W o r Z q P P W o r Z H P P t t g g t t 陽子陽子衝突での主な生成反応 Vector Boson 融合 トップ・クォーク付随生成 W/Z 付随生成 グルーオン融合 H t γ W γ Hこれまでの Higgs 粒子探索
私が最初に関わったのは 1980 年頃西ドイツ DESY 研究所の 30 GeV 電子陽電子衝突実験 (PETRA)
トップ・クォーク生成が必要だったので全くリーチの外だった 同じ事を KEK の TRISTAN (60 GeV, 1986-1995) でも経験
LEP での直接観測で見つ からなかった範囲
114 GeV
この範囲に存在する可能性が高い現実的に成ったのは LEP 実験で Z 粒子生
成が可能に成ってから
電子陽電子衝突, CERN, 1989-2000 最高衝突エネルギー 200 GeV⇒
標準理論の Higgs 粒子は 114 GeV まで
に無い
Z 粒子の精密測定結果は比較的軽い Higgs
粒子を示唆
HZ
e
e
+ −→
一般的に、「発見」にはハドロン衝突型の方が有利
米 FNAL の陽子-反陽子衝突型加 速器 ビーム衝突の 重心系エネルギー 陽子-(反)陽子衝突での反応断面積 Higgs 粒子生成断面積はビームエネ ルギーとともに増加 ただし、重心系エネルギーが数 10 TeV でも数 pb 程度 現実的な測定効率を考慮すると、 100 fb -1 以上の積分ルミノシティが必要 100 fb-1 = 1034 cm-2s-1 ✕ 1 年大強度、巨大ハドロン衝突型
加速器
ハドロン (hadron): 一般には核子、中間 子などの強い相互作用を行う素粒子を指 すが、加速器のビーム粒子としては安定 な粒子しか使えないので、ここでは陽子 または反陽子のことTevatron
(テバトロン)
米国シカゴ市郊外の FNAL (フェルミ国立加速器研究所) に
建設された陽子反陽子衝突型加速器
衝突の重心系エネルギー = 1.96 TeV
世界初の超伝導磁石を用いた加速器
トップ・クォークを発見
今年 (2011 年) 9 月に運転終了
今年夏 (7 月) までの結論
「
95% の信頼度で 156 から 177 GeV/
c
2の範囲内に標準理論の予言するヒッグ
ス粒子は無い
」
衝突エネルギーとともに反陽子生成量が
性能を制限
新しく建設されたビーム 入射用加速器 Tevatron究極の探索計画
Higgs 粒子が実在の粒子なら質量は 1 TeV (1,000 GeV) 以下
それ以上なら新しい理論が必要
1 TeV まで探索可能な加速器
電子陽電子衝突型なら衝突エネルギー 1 TeV 以上
陽子陽子 (陽子反陽子) 衝突型なら 10 TeV 以上
何れにしても、生成確率が低いので膨大なデータが必要
陽子陽子 (陽子反陽子) 衝突型ならエネルギーが高い程有利
⇒
SSC
(Superconducting Super-Collider)
米国テキサス州ダラス郊外ワックスハッチ (Waxahachie)
20+20 TeV 陽子陽子衝突型加速器
周長 87 km (~東京 23 区)
1990 年に建設開始
、多くの日本人研究者が実験計画に参加
LHC 計画へ
1993 年 10 月、米国政府が SSC 計画中止
トンネルの 1/3 ができていた
残された道は
TeV 領域の電子陽電子衝突型加速器
リニアコライダー
→ ILC (International Linear Collider)
現時点でも未だ技術開発段階
陽子陽子衝突型加速器
LHC (Large Hadron Collider)
: CERN が独自に進めていた
SSC よりかなり小さくエネルギーも低いが、ビーム強度を大きくする事で同
等の成果を期待
[2] LHC 加速器
CERN LEP トンネルを再利用
地下 100 m、周長 27 km
超伝導電磁石を用いた陽子陽子衝
突型加速器に改造
ビームエネルギー 7 TeV
衝突エネルギー 14 TeV
参考:山の手線の周長が約 32 km 1984: 検討ワーキング・グループ設置 1994: CERN 理事会で計画承認 1995: 技術報告書提出・承認 1998: 実験室等の掘削開始 2000: LEP 実験終了 2002: LEP 撤去完了 2003: 掘削作業終了 2005: 超伝導磁石設置開始 2007: 超伝導磁石設置完了 2008: LHC 完成LHC (Large Hadron Collider)
アルプス
レマン湖 ジュネーブ空港ジュネーブ市街
CERN メイン キャンパス
研究所: 加速器を用いて素粒子物理学を探究する欧州合同の研究所 沿革: 1954 年:欧州 12 カ国の国際研究機関として設立 1959 年:28 GeV の陽子シンクロトロン (PS) 完成 1971 年:陽子陽子コライダー (ISR) 完成 1976 年:450 GeV 大型陽子加速器 (SPS) 完成 1983 年:陽子反陽子コライダーで W 粒子と Z 粒子を発見 1989 年:50+50 GeV 電子陽電子コライダー (LEP) 完成 2008 年:LHC 完成 運営: 年間予算:1,100 MCHF (約 1,000 億円) [2011 年] GDPに比例して加盟国が出資 職員数:約 2,400 人 加盟国:ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン, オランダ, スイス, ベルギー, スウェーデンなど欧州 20 カ国 オブザーバー国:日本、米国、ロシアなど 6 カ国 + EU、ユネスコ その他: 利用者: 10,000 人以上、全世界の素粒子研究者のほぼ半数
CERN
(欧州合同原子核研究機構)
European Organization for Nuclear Research Organisation Européenne pour la Recherche Nucléaire
CERN 加盟国
ブドウ畑の中にある。背景はジュラ山脈
CERN という略称は設立準備段階のフランス語名 Conseil Européen pour la Recherche Nucléaire
(原子核研究の為の欧州委員会) から
ジュネーブ郊外のスイス・ フランス国境上
WWW (World Wide Web) 誕生の地
1989 年:CERN の研究者 Tim Berners-Lee が WWW を提案
高エネルギー物理学研究者の情報共有計算機環境に依存しない文書型式 (HTML)、プロトコル (HTTP)
1993 年:イリノイ大学学生の Marc Andreesen らが Mosaic を開発
Window 形式の WWW browser:画像表示、ページレイアウト Netscape/Mozilla/Firefox と進化する browser の原型 私の Mac にもインスト−ルしてホワイトハウスのページなどを見た。 1995 年:大学、研究機関、大企業が WWW サイトを立ち上げ始める この頃、電総研 (今の産総研) に「日本の WWW サイト」という様な名前のページ があった。そこに載せられるくらいしか無かったということ 私も text editor で自分のウェブページを作った。 1992 年:森田洋平が KEK に日本最初のウェブページを開設 この頃、私は WWW で論文検索などが行えることは知っていたが使ったことは 無かった。
トム・ハンクス、アイレト・ズラーと監督のロン・ハワード
映画「天使と悪魔」に登場
反物質爆弾を作っている?
反物質を作っている当事者 (日本人) の解説 http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/hayano/angles_and_demons_fact_vs_fiction/FACT.html CERN の解説 http://public.web.cern.ch/public/en/Spotlight/SpotlightAandD-en.html http://angelsanddemons.cern.ch/ 2009 年 2 月リサ・ランドール?
「ゴルゴ 13」にも登場
2011 年 2 月
主リング周長 26.6 km 陽子ビームエネルギー 7.0 TeV (7×1012 eV) ルミノシティ 1034cm-2s-1 バンチ間隔 25 nsec (40 MHz) バンチ当りの陽子数 1011 二口径双極電磁石 1232 台 双極電磁石長と磁場 14.2 m,8.33 Tesla 衝突点でのビーム半径 16 µm バンチ衝突当りの陽子衝突 19 LHC 諸元 イオン源で生成された陽子ビームは、LINAC2 → BOOSTER → PS → SPS と受け渡され、順次加速さ れて LHC に入射される LHC で 450 GeV から 7 TeV に加速された後、実験 のための衝突モードに移行する
LHC 加速器システム
日本による LHC 加速器協力
LHC トンネル内に設置された超伝導4極マグネット ビーム衝突点では、陽子ビームを10 ミクロンの太さに 絞りこむ。このためにレンズの役割をする超伝導4極マ グネットが必要で日本と米国とが設計・製造した。 その他、超伝導ケーブルの製造(古河電気工業)や、電 磁石用特殊鋼(新日鉄、川鉄)、極低温ヘリウム冷却設 備(IHI)など、日本信託基金を財源として調達した。日 本企業によるLHC建設への貢献とその高い技術が評価 を受けている。 1995年6月23日 与謝野文部大臣がCERN理 事会に出席し日本によるLHC建設協力を表 明した。非加盟国の中では日本が最初であっ た。その後も日本は資金協力を行い、総計 138.5億円の建設協力を行った。 http://www.kek.jp/newskek/2008/sepoct/ LHCfirstbeam/photo5.html[3] LHC 実験装置
どんな事象を調べたら良いか?
基本は重い粒子の生成
最小標準理論での Higgs 粒子の崩壊分岐比
Higgs 粒子の質量クォークへの崩壊 (cc, bb) は膨大な
ゴミのせいでほとんど絶望的
bb
は特定の生成過程の性質を利用
すれば可能かも
WW, ZZ の閾値に近い為に複雑に変化最も有望な低い質量領域 (M
H< 200
GeV) では Higgs 粒子の質量によっ
て分岐比が複雑に変化する
γγ
は分岐比は小さいが奇麗な事象な
ので m
H< 150 GeV では有望
ττ
も有望
⇒
様々な事象を監視する必要がある
M
H> 150 GeV では
WW
/
ZZ
が優勢
特に 200 < m
H< 500 GeV では、生
成断面積も大きく、
ZZ
→ 4 レプトン
で
簡単に観測できる (
Golden Channel
)
Higgs 粒子探索の方法 (1)
不変質量分布
Invariant mass distribution
2 2 2
p
E
m
=
−
不変質量:
どの慣性系で測定しても同じ
粒子固有の性質 (いわゆる質量)
重い粒子の崩壊で生成される粒子を全て測定できたとすると、
エネルギー運動量保存則から
∑
∑
= ==
=
n i i n i ip
p
E
E
1 0 1 0,
2 1 2 1 2 0 2 0 2 0∑
∑
= =
−
=
−
=
n i i n i ip
E
p
E
m
p
0p
1p
2p
n従って
崩壊生成粒子のエネルギーと運動量を測定すれば、
親粒子の質量が分かる
注:高エネルギー物理学の世界では、質量や運動 量をエネルギーの単位で表す。E = mc2 (c = 1)。 1 eV は電子を 1 V の電位差で加速した時に与 えられるエネルギー。1 GeV = 109 eV。陽子の質 量は 0.938 GeV。習慣的に、運動量は GeV/c、 質量は GeV/c2 と書くことが多い。新粒子探索の王道
H → ZZ → e
+e
−µ
+µ
− 4 個の崩壊生成粒子を含む事象 (event) を見つける 沢山の event について m を求めて分布を作る(
)
2 2 2 − + − + − + − + + + + − + + + = E E Eµ Eµ p p pµ pµ m e e e e 4 粒子の不変質量を計算する ヒッグス粒子 (H) があれば、その質量の位置に分布が山 (peak) を作るはず ただし、別の物理過程、粒子判別の間違いなどによって余計な event も混入する (background) 測定器の粒子判別能力、エネルギー運動量測定能力が 重要 event 選択の段階でも background を減らす工夫が必要 例えば、e+e-、µ+µ- の不変質量が Z の質量に一致することを要求 する background が多いと、その統計的な揺らぎでヒッグス粒 子の peak が見えなく成ってしまう 測定精度が悪いと、peak が広がってしまって background の影響が大きく成る例えば
Higgs 粒子 m = 300 GeV/c2 background34
Higgs 粒子探索の方法 (2)
崩壊生成粒子にニュートリノなど、測定不可能な粒子が含まれている場合
ν
ν
− + − +→
′
→
W
W
H
例えば:
特徴的な分布を使って background をできるだけ減らす
最後は既知の反応から予想される event 数と比較
質量に依存する分布から質量を求める
「既知の反応」を良く知っている必要がある
十分に前方まで隙間無くエネルギーを測定すれば、
ニュートリノの横方向運動量は測定可能
少なくともニュートリノ生成の確認は可能
(ハドロン衝突では超前方へのエネルギー流出は避けられな い) mH= 160 GeV の場合 ∆φllLHC で発生する現象
ATLAS 測定器・内部飛跡検出器のシミュレーション例pp
→ H + X; H → ZZ →
µ
+µ
−µ
+µ
−高い
粒子分離能力
と
粒子識別能力
が重要
特に高エネルギー
レプトン (
e
,
µ
,
τ
)
← これらは重い粒子生成の証拠
(黄色の線)
ビーム軸方向から見た飛跡データ ソレノイド磁場の影響で粒子飛跡は円 弧状に成っている ここでは荷電粒子しか見えない 曲がり方から運動量は分かるが、 個々の粒子が何なのかは分からない 黄色の直線に近い大きな運動量の 粒子だけが見たいもの ρ [m] = p [GeV] 0.3× B [Tesla]それ以外に大量の粒子が
生成される
測定器への要求
高い運動量・エネルギー測定能力
高い粒子分離能力
高い粒子 (レプトン、光子) 識別能力
隙間の無いエネルギー測定
これらは汎用測定器一般に求められること
一般的に大きいほど有利
制作費、製作期間などとの兼ね合い
データ処理能力との兼ね合いも
測定器内の反応が異なるので粒子を判別できる (CMS 実験の例)
粒子測定・識別の概要
μ+, μ-: 飛跡を残しながら物質を突き抜ける γ, e : 電磁カロリメータ内でシャワーを起す π, K, p, n: ハドロンカロリメータ内でシャワーを起こす ハドロンカロリメータ 電磁カロリメータ 飛跡検出器 ミューオン検出器 荷電粒子: 飛跡を残す 超伝導ソレノイド 運動量の再測定 ここまではコンパクト この部分が大きくなる ニュートリノ: 何も情報を残 さない (何も 無いというこ とが情報) 横方向エネ ルギー損失CMS
pp衝突実験
ALICE 重イオン衝突実験 LHCb Bの物理実験 TOTEM 全断面積測定実験装置
ATLAS
pp衝突実験
LHCf 超前方生成 Higgs 粒子探索を主要な目的の一つとするのは ATLAS と CMS測定器の詳細 (ATLAS 実験)
内部ソレノイド磁場 2 Tesla 超伝導空芯ソレノイド磁石 (電磁カロリメータの内側) 内部飛跡検出 シリコン・ピクセル + シリコン・ストリップ + TRT (単独で電子識別能力もある) ミューオン検出 超伝導空芯トロイド磁石 2 Tesla 高精度チューブチェンバー (MDT) + トリガー専用チェンバー (RDT, TGC) 電磁カロリメータ 液体アルゴン/アコーディオン・カロリメータ|
η
| = 2.5 までの
e
,
µ
,
γ
を識別
|η| = 5 まで隙間の無いエネルギー測定 鉄-シンチレータ (外周部) + 銅-液体アルゴン (エンドキャップ部) + 銅/タングステン-液体アルゴン (前後方部)W
粒子や
τ
の測定には横方向エネルギー
損失の情報も重要 (ニュートリノの測定)
|η| = 2.5 まで: ビーム軸から 9.4° 以上 |η| = 5 まで: ビーム軸から 0.77° 以上 設置場所に応じてそれぞれ十分な放射線耐性 ただし、10 年保たないものもある 測定器が長くなる日本の研究機関は ATLAS 実験に参加
KEK, 筑波大学, 東京大学 (ICEPP), 早稲田大学, 東京工業大学,
首都大学東京, 信州大学, 名古屋大学, 京都大学, 京都教育大学,
大阪大学, 神戸大学, 岡山大学, 広島工業大学, 九州大学, 長崎総
合科学大学
他の実験に参加している機関も若干あるがここでは割愛CMS には参加していない
アトラス国際
共同実験
現在、アトラス共同実験には、38 ヵ国 174 の大学・研究所から約 3,000 名の 研究者が参加 (注: 研究機関数や研究者数は集計方法 によって変わる。下記リストでは 200 以 上の研究機関がある。)Albany, Alberta, Ankara, Annecy LAPP, Argonne, Arizona, Arlington UT, Athens, Athens NTU, Baku, Barcelona, Beijing, Belgrade IP, Belgrade Vinca, Bergen, Berkeley LBNL, Berlin HU, Bern, Birmingham, Bogazici Istanbul, Bologna, Bonn, Boston, Brandeis, Bratislava, Brookhaven BNL, Bucharest IFIN-HH, Buenos Aires, Cambridge, Carleton, Casablanca, CERN, Chicago, Clermont-Ferrand, CNESTEN Rabat, Columbia, Copenhagen NBI, Cosenza,
Cracow AGH-UST, Cracow IFJ PAN, Dallas SMU, Dallas UT, DESY, Dogus, Dortmund, Dresden, Duke, Dumlupinar, Edinburgh, FHWN, Frascati, Freiburg, Gazi, Gaziantep, Geneva, Genova, Giessen, Glasgow, Goettingen, Grenoble LPSC, Hampton, Harvard, Hefei, Heidelberg KIP, Heidelberg PI,
Heidelberg ZITI, Hiroshima IT, Indiana, Innsbruck, Iowa, Iowa State, Istanbul Tech U, JINR Dubna, Johannesburg, KEK, Kobe, Kosice, Kyoto, Kyoto UE,
La Plata, Lancaster, Lecce, Liverpool, Ljubljana, London QMUL, London RHBNC, London UC, LPNHE-Paris, Lund, Madrid UA, Mainz, Manchester, Marrakesh, Marseille CPPM, Massachusetts, McGill, Melbourne, Michigan, Michigan SU, Milano, Minsk AC, Minsk NC, MIT, Montreal, Moscow FIAN,
Moscow ITEP, Moscow MEPhI, Moscow SU, Munich LMU, Munich MPI, Nagasaki,Nagoya, Nanjing, Napoli, New Mexico, Nijmegen, Nikhef, Northern
Illinois, Novosibirsk BINP, Ohio SU, Okayama, Oklahoma, Oklahoma SU, Olomouc, Oregon, Orsay LAL, Osaka, Oslo, Oujda, Oxford, Pavia,
Pennsylvania, Petersburg NPI, Pisa, Pittsburgh, Politehnica Bucharest, Portugal LIP, Prague AS, Prague CU, Prague TU, Protvino IHEP, Rabat, RAL,
Regina, Rio de Janeiro UF, Roma I, Roma II, Roma Tre, Saclay CEA, Santa Cruz UC, Santiago, Seattle Washington, Shandong, Sheffield, Shinshu,
Siegen, Simon Fraser Burnaby, SLAC, Spain Granada, Stockholm, Stockholm KTH, Stony Brook, Sussex, Sydney, Taipei AS, Tbilisi IP, Tbilisi SU,
Technion Haifa, Tel-Aviv, Thessaloniki, Timisoara WU, TOBB, Tokyo ICEPP,Tokyo MU,Tokyo Tech, Toronto, Trieste ICTP, TRIUMF, Tsukuba, Tufts,
Turkey Atomic EA, UAN Bogota, UC Irvine, Udine, UFJF, UFSJ, UI Urbana, Uppsala, USP, Valencia, Valparaiso, Vancouver UBC, Victoria, Waseda,
Weizmann Rehovot, Wisconsin, Witwatersrand, Wuerzburg, Wuppertal, Yale, Yerevan, York
この絵では、まだ、南アフリカが 入っていない
1994 年にグループ発足
超伝導ソレノイド電磁石
シリコン・ストリップ検出器
KEK で設計、東芝で制作 CERN へ搬入 (2001 年 9 月) KEK で制作 英オックス フォード大で の組立Thin Gap Chamber (TGC)
KEK でのチェンバー制作 神戸大での検査 CERN での組立 実験ホール内での 最終組立得られるデータから如何にして Higgs 粒子の信号を抽出するか?
nb (nano barn) =10-33 cm2 米 FNAL の陽子-反陽子衝突型加 速器 (稼働中) ビーム衝突の 重心系エネルギー 陽子-(反)陽子衝突での反応断面積 デザインルミノシティ (1034cm-2s-1) での反応レート 全反応: 109 Hz b クォーク生成: ~107 Hz W 粒子生成: 2 kHz 150 GeV Higgs: 0.3 Hz S/ N ~ 1 0 -10 109 Hz = 1 GHz はビーム衝突頻度 (40 MHz) よりも高レート;すなわち、一回の ビーム衝突で複数の反応が起こる 一事象中にも沢山のゴミがある事を 忘れては成らない事象選択
(ATLAS 実験の場合)
•
オンラインで 3 段階の選択
– Level 1
: 高速検出器 (カロリメータとミュー
オン・トリガーチェンバー) で粗い選別
– Level 2
: オンライン計算機ファームで他の
低速検出器からの情報を追加して選別
– Event Filter
: データ結合後にさらにオンラ
イン計算機ファームで詳細な解析と選別
⇒ データ保存 (
~200 Hz
)
•
オフライン解析
– 各事象ごとに ~1.6 MB のデータ
– ~300 MB/s →
~3 PB/年
– オフラインでの詳細な解析と多段階の選
択を経て測定結果が得られる
– 膨大な計算機資源が必要
~ 10 ms s o ftw a re h ar d w ar e 2.5 µs ~ sec.⇒
GRID
地球規模での分散計算機環境
1 PB (ペタ・バイト) = 1,000 TB = 1,000,000 GB 並列化されたパイプライン 方式で処理ユーザ
Job 投入 データ取得
LCG (LHC Computing Grid) / WLCG (Worldwide LCG)
GRID
沢山の計算機システムをネットワークで結んで、 仮想的な一つの計算機システムを作る 共通の認証システム、統一されたファイル カタログ、高速データ転送 基盤ソフトウェア GLOBUS 上にそれぞれの運 用形態 (思想) に合わせたソフトウェア群 EGEE/gLite (欧州), OSG (米国) など 日本でも NAREGI システムが開発されているLCG/WLCG
LHC データ解析の為の GRID EGEE、OSG にまたがる地球規模の GRIDTier0 (CERN)、Tier1 (11 機関)、Tier2 (~100) の階層構造
WLCG はその為の国際協定 日本国内では東大 (ICEPP) に Tier2 ユーザから見ると巨大なバッチ/ストレージシステム 基本的にはデータが何処にあるのか、プログラムが何処で 走るのかは気にしなくて良い (計算機の雲) 東京大学 (ICEPP) Tier2