医療費の地域格差要因
― 高 齢 者 の 医 療 支 出 分 析 か ら ―
17 04 0103
門脇 優樹
概 要
近 年 、 国 民 医 療 費 が 増 加 し て い る 。 そ の 中 で も 、 老 人 医 療 費 が 大 き な ウ エ イ ト を 占 め て い る 。 ま た 、 医 療 費 に は 地 域 間 格 差 が 存 在 し て お り 、 最 大 で 約 1.5 倍 の 格 差 が あ る 。 こ の よ う な 非 効 率 な 状 態 が 続 け ば 、 将 来 的 に 医 療 制 度 の 維 持 が 困 難 に な る 恐 れ が あ る 。 そ こ で 本 稿 で は 、 現 行 の 政 府 の 政 策 の 問 題 点 を 指 摘 し 、 先 行 研 究 を 概 観 し た 後 、 老 人 医 療 費 の 地 域 間 格 差 の 要 因 を 分 析 し 、 そ の 要 因 を 介 護 と 疾 病 予 防 行 動 に あ る と 結 論 付 け 、 政 策 提 言 を 行 う 。目 次
Ⅰ . は じ め に
Ⅱ . 現 行 の 政 策 と 問 題 点
Ⅱ ― 1. 医 療 費 増 大 に 対 す る 見 直 し 政 策 Ⅱ ― 1― 1. 保 険 料 の 見 直 し Ⅱ ― 1― 2. 公 費 負 担 の 増 加 Ⅱ ― 1― 3. 患 者 自 己 負 担 の 増 加 Ⅱ - 1- 4. 入 院 時 食 事 療 養 費 制 度 Ⅱ ― 1― 5. 診 療 報 酬 ・ 薬 価 等 の 改 定 Ⅱ ― 1― 6. 介 護 保 険 制 度 の 成 立 と 医 療 保 険 制 度 と の 棲 み 分 け Ⅱ ― 2. 現 行 政 策 の 問 題 点Ⅲ . 先 行 研 究
Ⅳ . 老 人 医 療 費 の 都 道 府 県 別 分 析
Ⅳ ― 1. 仮 説 Ⅳ ― 2. 推 計 式 と 諸 変 数 Ⅳ ― 3. デ ー タ Ⅳ ― 4. 分 析 結 果 Ⅳ ― 5. 分 析 結 果 の 考 察Ⅴ . 政 策 提 言
Ⅴ ― 1. 健 康 診 断 の 義 務 化 Ⅴ ― 2. 法 改 正 に よ る 責 任 の 明 確 化 Ⅴ ― 3. 出 張 介 護 サ ー ビ ス の 導 入Ⅵ . お わ り に
参 考 文 献 ・ デ ー タ 出 典
Ⅰ . は じ め に
少 子 高 齢 化 が 進 行 し て い る 。 そ れ に 伴 い 、 国 民 医 療 費 も 増 加 し て い る 。1994 年 度 か ら 2004 年 度 ま で の 10 年 間 で 、 6.3 兆 円 増 加 し て い る ( 図 Ⅰ - 1 参 照 )。 ま た 、 過 去 10 年 間 の 医 療 費 の 伸 び 率 を 見 て み る と 、 国 民 医 療 費 の 年 平 均 伸 び 率 は 2.7% と な っ て い る 。そ の 中 で も 老 人 医 療 費 の 年 平 均 伸 び 率 は 4.6% と 、国 民 医 療 費 の 伸 び 率 を 上 回 っ て い る 。 1 図Ⅰ-1. 国民医療費の推移 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 85 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 ( 兆 円 ) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ( % ) 国民医療費 国民医療費の国民 所得に対する割合 資 料 : 厚 生 労 働 省 大 臣 官 房 統 計 情 報 部 『 国 民 医 療 費 』 今 後 、 高 齢 者 が 増 加 す る と 予 測 さ れ る こ と か ら 、 老 人 医 療 費 の 増 加 に 何 ら の 対 策 も 講 じ な け れ ば 、 将 来 の 医 療 費 は 大 幅 に 増 大 さ れ る と 考 え ら れ る 。 現 に 、 前 田(2004)は 、2015 年 の 国 民 医 療 費 は 約 41 兆 円 、2025 年 に は 約 49 兆 円 に 達 す る と 予 測 し て い る 。2004 年 時 の 国 民 医 療 費 は 約 32 兆 円 な の で 、 国 民 医 療 費 は 約 1.5 倍 に 膨 ら む こ と に な り 、 医 療 保 険 財 政 の 悪 化 は 確 実 だ と い え る 。 そ こ で 、 本 稿 で は こ れ ら の 事 態 を 避 け る た め 、 国 民 医 療 費 、 特 に そ の 中 で も 大 き な シ ェ ア を 占 め る 老 人 医 療 費 の 増 加 要 因 を 探 る 。 1 厚 生 労 働 省 『 老 人 医 療 事 業 報 告 』 よ り 算 出ま た 、 老 人 医 療 費 に は 地 域 間 格 差 が 存 在 す る 。 図Ⅰ-2. 都道府県別 1人当たり老人医療費(全国平均値との差額) -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 福 岡 県 大 阪 府 高 知 県 佐 賀 県 沖 縄 県 鹿 児 島 県 大 分 県 香 川 県 兵 庫 県 愛 媛 県 徳 島 県 福 井 県 宮 崎 県 滋 賀 県 鳥 取 県 岐 阜 県 福 島 県 宮 城 県 群 馬 県 茨 城 県 栃 木 県 岩 手 県 山 形 県 長 野 県 全 国 平 均 と の 差 ( 万 円 ) 資 料 : 厚 生 労 働 省 保 険 局 『 老 人 医 療 事 業 報 告 』 図 Ⅰ ―2 は 、2004 年 度 の 都 道 府 県 別 1 人 当 た り 老 人 医 療 費 の 格 差 を 示 し た 図 で あ る 。 こ れ を み る と 、 最 も 医 療 費 が 高 い 福 岡 県 は 9 6 万 5 千 円 で 、 最 も 低 い 長 野 県 の 6 3 万 5 千 円 の 約 1.5 倍 と な っ て い る ( 全 国 値 は 7 8 万 円 ) こ の よ う な 地 域 間 格 差 は 、 厚 生 損 失 を 生 じ さ せ る 。 泉 田 (2001) に よ る と 、 最 も 医 療 費 が 小 さ い 都 道 府 県 の 医 療 需 要 を 基 準 と し て 厚 生 損 失 の 推 計 を 行 う と 、 損 失 の 推 計 値 は 約 100 億 円 に な る と 指 摘 し て い る 。ま た 、こ の ケ ー ス に 限 定 し て 医 療 費 の 地 域 差 に よ る 保 険 者 の 超 過 負 担 額 を 約 4 3 億 円 と 推 計 し て い る 。 こ れ を 国 民 保 険 制 度 全 体 に 拡 張 す る と 、 約 2800 億 円 が 地 域 ご と の 医 療 費 の 差 に よ っ て 、 国 保 保 険 者 が 負 担 し て い る と 指 摘 し て い る 。 ま た 政 府 は 2005 年 に 医 療 制 度 改 革 大 綱 を 発 表 し た が 、 そ の 中 で 、 医 療 制 度 の 都 道 府 県 単 位 の 運 営 、 ま た 新 た に 創 設 さ れ る 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 の 都 道 府 県 を 単 位 と し た 運 営 な ど 、 今 後 ま す ま す 各 都 道 府 県 の 負 担 は 増 大 す る 。 し か し 、 こ の よ う な 非 効 率 な 損 失 が 発 生 す る 中 で の 都 道 府 県 へ の 負 担 の 増 大 は 、 財 政 を 圧 迫 し 最 終 的 に は 医 療 制 度 自 体 が 崩 壊 す る 恐 れ が 生 じ る 。 本 稿 で は こ の よ う な 問 題 意 識 の も と 、 老 人 医 療 費 の 地 域 間 格 差 の 要 因 を 分 析 し て い く 。 具 体 的 に は 、 現 状 分 析 や 先 行 論 文 の 研 究 か ら 、 疾 病 予 防 行 動 が 老 人 医 療 費 を 抑 制 す る と い う 仮 説 を 提 示 し 、 実 証 分 析 を 行 い 検 証 す る 。
本 稿 の 構 成 は 以 下 の と お り で あ る 。 Ⅱ 章 で は 、 現 行 の 政 府 の 政 策 を 分 析 し 、 問 題 点 を 指 摘 す る 。 続 く Ⅲ 章 で は 、 医 療 費 の 増 加 要 因 に 関 す る 先 行 研 究 を 概 観 し 、 そ の 問 題 点 を 指 摘 す る 。 Ⅳ 章 で は 、 仮 説 を 提 示 し 、 都 道 府 県 別 老 人 医 療 費 の 増 加 要 因 分 析 を 行 う 。 Ⅴ 章 で は 、 分 析 結 果 に 基 づ き 、 政 策 提 言 を 行 う 。 Ⅵ 章 で は 、本 稿 の 統 括 を 行 う と と も に 、残 さ れ て い る 課 題 に つ い て 指 摘 す る 。
Ⅱ . 現 行 の 政 策 と 問 題 点
Ⅱ ― 1 . 医 療 費 増 大 に 対 す る 見 直 し 政 策 Ⅱ ― 1― 1. 保 険 料 の 見 直 し 国 民 医 療 費 の 増 加 を 受 け 、 医 療 保 険 財 政 を 維 持 す る た め に 数 回 の 保 険 料 の 見 直 し が 行 わ れ て き た 。2003 年 か ら は 、保 険 料 負 担 の 公 平 性 を 確 保 す る 観 点 か ら 、 賞 与 に つ い て も 月 収 と 同 様 に 保 険 料 が 徴 収 さ れ る こ と と な っ て い る 。 Ⅱ ― 1 ― 2. 公 費 負 担 の 増 加 国 民 に 対 す る 医 療 保 障 は 国 の 責 務 で あ る と と も に 、 厳 し い 財 政 運 営 を 迫 ら れ る 保 険 者 が 存 在 す る こ と か ら 、わ が 国 の 医 療 保 険 で は 公 費 負 担 が 行 わ れ て い る 。 公 費 負 担 に は 、 国 庫 負 担 と 地 方 負 担 が 存 在 し 、 ど ち ら も 増 加 し て い る 。 Ⅱ ― 1― 3. 患 者 自 己 負 担 の 増 加 患 者 自 己 負 担 に つ い て も 、 数 回 の 改 正 に よ り 増 加 し て い る 。 3 歳 以 上 69 歳 以 下 の 保 険 加 入 者 の 自 己 負 担 を 、1997 年 に 1 割 か ら 2 割 、 2003 年 に は 2 割 か ら 3 割 へ と 引 き 上 げ た 。 老 人 医 療 費 の 抑 制 に 関 し て は 、1973 年 の 老 人 医 療 費 無 料 化 の 時 代 か ら 、1983 年 に 定 額 負 担 導 入 さ れ 、 以 後 は 段 階 的 な 負 担 額 の 引 き 上 げ を 行 っ た 。 定 額 負 担 に つ い て は 、2001 年 に 廃 止 さ れ 、変 わ っ て 高 齢 者 の 定 率 負 担 が 開 始 さ れ た 。ま た 、 こ う し た 患 者 側 の 負 担 の 引 き 上 げ に 伴 い 、 新 た に 導 入 さ れ た 制 度 が 、 入 院 時 食 事 療 養 費 制 度 で あ る 。 Ⅱ ― 1― 4. 入 院 時 食 事 療 養 制 度 こ の 制 度 は 1994 年 に 導 入 さ れ た 。 入 院 し た 際 の 食 事 の 費 用 を 、 療 養 の 給 付 か ら 切 り 離 し 入 院 時 食 事 療 養 制 度 と し て 支 給 す る 制 度 で あ る 。 そ の 額 は 平 均 的 家 計 の 食 事 を 考 慮 し 、 厚 生 労 働 大 臣 が 定 め る 。 こ の 制 度 の も と 、 被 保 険 者 は 保 険 給 付 の 割 合 に 関 係 な く 年 齢 や 所 得 、 入 院 日 数 に 応 じ て 決 定 さ れ る 区 分 ご と に 定 め ら れ た 標 準 負 担 額 を 支 払 う 。ま た 、 療 養 病 床 に 入 院 す る 7 0 歳 以 上 の 高 齢 者 の 食 費 に 関 し て は 、 入 院 時 生 活 療 養 費 と し て の 支 給 と な る 。 入 院 時 生 活 療 養 費 の 額 は 、 生 活 療 養 に 要 す る 平 均 的 な 費 用 と 家 計 に お け る 食 費 等 の 状 況 な ど を 考 慮 し 、 生 活 療 養 標 準 負 担 額 を 控 除 し た 額 に な る 。 患 者 と な る 高 齢 者 は 、 月 ご と に 定 め ら れ た 自 己 負 担 限 度 額 を 負 担 す る こ と に な る 。 Ⅱ ― 1 ― 5 . 診 療 報 酬 ・ 薬 価 等 の 改 定 薬 価 に つ い て 、 わ が 国 で は 諸 外 国 に 比 較 し て 薬 剤 比 率 が 高 か っ た 。 そ こ で 、 1967 年 以 降 、 実 勢 価 格 に 合 わ せ て い く 形 で 薬 価 引 き 下 げ が 行 わ れ た 。 診 療 報 酬 に つ い て は 、 医 療 技 術 の 進 歩 な ど に よ り 引 き 上 げ ら れ て き た が 、 2002 年 に 医 師 の 技 術 料 等 に 関 す る 診 療 報 酬 本 体 に つ い て の 1.3% 、薬 価 等 に つ い て の 1.4% を 合 わ せ て 2.7% の 引 き 下 げ が 行 わ れ る こ と と な っ た 。 Ⅱ ― 1 ― 6 . 介 護 保 険 制 度 の 成 立 と 医 療 保 険 制 度 と の 棲 み 分 け 2000 年 か ら 始 ま っ た 介 護 保 険 制 度 で は 、こ れ ま で 高 齢 者 福 祉 と 老 人 医 療 の 双 方 に 分 か れ て い た 介 護 サ ー ビ ス を 、 一 つ の 制 度 と し て 統 合 し た 。 こ れ に よ り 、 医 療 保 険 制 度 が 事 実 上 担 っ て い た 老 人 医 療 の う ち 、 介 護 的 色 彩 の 強 い 部 分 が 介 護 保 険 に 移 行 す る こ と に な っ た 。 Ⅱ ― 2 . 現 行 政 策 の 問 題 点 以 上 が 近 年 と ら れ た 主 な 医 療 費 増 大 に 対 す る 見 直 し 政 策 で あ る 。 こ れ ら の 政 策 に 共 通 し て い る 点 は 、 患 者 及 び 医 療 機 関 側 へ の 負 担 増 加 に よ る 医 療 費 抑 制 策 で あ る と い う 点 で あ る 。 事 実 、 こ れ ら の 政 策 ・ 制 度 が 導 入 さ れ た 年 は 抑 制 さ れ て い る 。し か し 、こ れ ら は 一 時 的 な 抑 制 で あ り 、今 後 少 子 高 齢 化 が 進 む に つ れ 、 今 後 医 療 費 は 増 大 し 続 け て い く と 考 え ら れ る 。 故 に 、 医 療 需 要 そ の も の を 減 ら す こ と が 重 要 だ と 考 え る こ と が で き る 。
一 般 的 に 、 医 療 費 の 自 己 負 担 額 が 増 加 す れ ば 、 医 療 需 要 も 抑 制 さ れ る と 考 え ら れ る 2。 し か し 、 大 日 (2001) の 調 査 に よ れ ば 、 医 療 需 要 の 価 格 弾 力 性 は 極 め て 低 い と 指 摘 し て い る 3 。 医 療 需 要 の 価 格 弾 力 性 が 低 い の で あ れ ば 、 自 己 負 担 額 の 増 加 に よ る 医 療 需 要 へ の 影 響 は 小 さ い も の と な り 、 医 療 費 の 抑 制 効 果 も あ ま り 期 待 で き な く な る 。 つ ま り 、 医 療 費 抑 制 に は 医 療 需 要 の 抑 制 が 重 要 で あ り 、 価 格 メ カ ニ ズ ム 以 外 の 医 療 需 要 の 抑 制 を 中 心 と し た 医 療 費 抑 制 政 策 が 望 ま し い と 考 え る 。そ の た め 、 医 療 需 要 は 価 格 面 以 外 で ど の よ う な 要 因 に な っ て 決 定 さ れ る か を 調 べ る 必 要 性 が あ る 。 そ こ で 次 章 で は 、 そ の よ う な 医 療 費 増 加 要 因 を 分 析 し た 先 行 研 究 を 紹 介 す る 。 2 大 日 ( 2001) 橋 本 ( 2003) な ど 3 大 日( 2001)は 、高 齢 者 医 療 に お け る 需 要 の 価 格 弾 力 性 に つ い て 、個 票 デ ー タ を 用 い て 分 析 を 行 っ て い る 。 使 用 し て い る デ ー タ は 2 つ あ る 。 1 つ は 当 該 患 者 の 疾 病 、診 療 行 為 、使 用 さ れ た 薬 剤 、特 定 機 材 の 種 類 と 数 量 が 含 ま れ た 、 1 時 点 で は あ る が か な り 詳 細 な 情 報 を 有 し た も の 。こ れ に は 都 道 府 県 が 独 自 に 行 う 老 人 医 療 に 対 す る 補 助 が 公 費 負 担 と し て 記 載 さ れ て お り 、地 域 間 の 自 己 負 担 額 の 相 違 に つ い て の 情 報 と し て 利 用 が 可 能 で あ る 。 も う 1 つ は 、1979~ 1997 年 ま で の 社 会 医 療 診 療 行 為 別 調 査 で あ り 、 こ れ は 老 人 医 療 費 無 料 化 の 時 代 か ら 数 度 の 定 額 自 己 負 担 の 改 定 を 捉 え る こ と が で き る 。 こ れ ら 2 つ の デ ー タ を 用 い た 調 査 の 結 果 か ら 、 患 者 が 直 面 し て い る 価 格 ( 自 己 負 担 額 ) が 10% 減 少 す れ ば 、 外 来 で 0.14~ 0.16% ほ ど 平 均 的 な 医 療 費 が 安 く な り 、 こ れ に よ っ て よ り 病 状 の 軽 い 患 者 も 受 診 を 選 択 す る よ う に な る と 言 え る 。そ こ か ら 逆 算 す る と 、高 齢 者 医 療 の 価 格 弾 力 性 は 1.44~ 1.61 と な り 、 こ れ は か な り 非 弾 力 的 で あ る と い え る 。
Ⅲ . 先 行 研 究
川 野 辺 ・ 眼 龍 (2000)は 、国 民 医 療 費 と 老 人 医 療 費 に つ い て 、都 道 府 県 デ ー タ を 使 用 し た 回 帰 分 析 を 行 っ て い る 。 具 体 的 に は 、 被 説 明 変 数 を 国 民 医 療 費 と 老 人 医 療 費 に 分 け 、 説 明 変 数 と し て 医 療 サ ー ビ ス の 需 要 変 数 、 供 給 要 因 に 加 え て ア ク セ ス の 容 易 性 を 表 す 変 数 や 需 給 ギ ャ ッ プ の 存 在 を 表 す 変 数 な ど を 取 り 上 げ て い る 。 分 析 の 結 果 、 特 に 老 人 医 療 費 に つ い て 、 家 族 の 看 護 ・ 介 護 の 可 能 性 を 示 す 平 均 世 帯 員 数 や 、医 療 サ ー ビ ス へ の ア ク セ ス 可 能 性 を 示 す DID 人 口 比 率 が 医 療 費 増 加 に 影 響 を 与 え て い る と 指 摘 し て い る 。 知 野(1998)は 、老 人 医 療 費 の 地 域 的 変 動 の 要 因 分 析 を 行 っ て い る 。知 野 は 、 医 療 部 門 は 制 度 的 に も 介 護 サ ー ビ ス の 一 部 を 有 す る も の と し て 機 能 し て い る と い う 仮 説 に も と づ き 、 分 析 を 行 っ て い る 。 具 体 的 に は 、 被 説 明 変 数 に 各 都 道 府 県 の 老 人 医 療 費 支 出 を 、 説 明 変 数 に は 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 用 可 能 性 、 所 得 や 医 療 サ ー ビ ス 価 格 、 医 療 技 術 を 表 す 変 数 を 用 い て い る 。 分 析 の 結 果 、 医 療 と 介 護 の 境 界 的 領 域 サ ー ビ ス で は 、 医 療 部 門 が そ の サ ー ビ ス 提 供 を カ バ ー し て お り 、 そ の た め 当 該 地 域 の 高 齢 者 の 入 院 医 療 費 が 高 く な る と 指 摘 し て い る 。 ま た 、 高 齢 者 の 入 院 と 外 来 医 療 は 互 い に 代 替 的 な 側 面 を 有 し て い る こ と 、 そ し て 医 療 技 術 の 進 歩 が 医 療 費 を 引 き 上 げ て い る こ と を 指 摘 し て い る 。 船 橋(2006)は 、医 療 費 支 出 の 地 域 間 の 格 差 の 要 因 を 探 る た め 、1 3 の 道 府 県 を 対 象 に 国 民 健 康 保 険 の 医 療 費 の 支 出 状 況 に つ い て 回 帰 分 析 を 行 っ て い る 。 具 体 的 に は 、 被 説 明 変 数 に 国 民 医 療 費 支 出 、 説 明 変 数 に 所 得 、 非 労 働 力 人 口 、 老 年 人 口 、 医 療 施 設 、 完 全 失 業 率 、 高 齢 者 世 帯 、 平 均 寿 命 を 取 り 上 げ て い る 。 分 析 の 結 果 、 老 年 人 口 が 医 療 費 増 加 に 大 き く 関 わ っ て い る こ と 、 ま た 医 療 施 設 へ の ア ク セ ス が 比 較 的 容 易 な 地 域 は 、 医 療 施 設 の 存 在 が 医 療 サ ー ビ ス に 影 響 を 与 え て い る こ と 、 高 齢 者 の み の 世 帯 で は 、 世 帯 人 数 の 多 い 家 族 に 比 べ て 医 療 費 増 加 傾 向 が あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 ま た 、 船 橋 (2004) 4 で も 同 様 の 結 論 を 得 て い る 。 4 船 橋 ( 2004) は 近 畿 圏 内 の 地 域 を 分 析 し て い る 。伏 見(1996)は 、都 道 府 県 及 び 2 次 医 療 圏 と い う 2 つ の 代 表 的 な 地 域 観 察 単 位 を と り あ げ 、老 人 医 療 費 に 関 す る 両 者 に お け る 格 差 の 程 度 及 び 関 係 に つ い て 、 レ セ プ ト デ ー タ を 用 い た 分 散 分 析 を 用 い て 明 ら か に す る と と も に 、 老 人 医 療 受 給 者 の 医 療 費 分 布 の 特 性 に 関 し て も 検 討 し て い る 。 そ の 結 果 、 老 人 医 療 受 給 者 の 年 間 医 療 費 は 入 院 、 入 院 外 と も 道 府 県 格 差 の ほ う が 2 次 医 療 圏 格 差 よ り 大 き い と 指 摘 し て い る 。 ま た 、 道 府 県 格 差 は 高 額 医 療 よ り む し ろ 日 常 的 な 医 療 に み ら れ る と 示 唆 し て い る 。 以 上 の 先 行 研 究 は 、 い ず れ も 医 療 費 の 地 域 間 格 差 、 及 び 増 加 要 因 を 価 格 メ カ ニ ズ ム 以 外 の 要 因 か ら 分 析 し て い る 。 そ の 結 果 、 老 年 人 口 や 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 用 可 能 性 、 ま た 高 齢 者 世 帯 の み の 世 帯 の 増 加 が 医 療 費 増 加 に 影 響 を 与 え て い る こ と が 分 か っ た 。 し か し 、 こ れ ら の 分 析 は 、 個 人 が 何 ら か の 原 因 に よ り 医 療 サ ー ビ ス を 享 受 す る 際 に 大 き く 関 わ っ て く る 要 因 を 分 析 し た も の ば か り で あ る 。 言 い 換 え れ ば 、 病 気 に な る と い う 事 後 的 な 行 動 か ら の 視 点 で 分 析 を し て い る 。 反 対 に 、 病 気 を 予 防 す る と い う 事 前 的 な 行 動 か ら 分 析 し て い る 研 究 は ほ と ん ど な い 。 そ こ で 本 稿 は 、 病 気 の 予 防 行 動 が 医 療 費 を 抑 制 す る か ど う か を 分 析 す る 。 次 章 で は 、 仮 説 の 提 示 と 実 証 分 析 を 行 う 。
Ⅳ . 老 人 医 療 費 の 都 道 府 県 別 分 析
Ⅳ ― 1. 仮 説 本 稿 の 仮 説 は 、「 老 人 の 予 防 行 動 が 、 老 人 医 療 費 を 抑 制 す る 」 で あ る 。 2005 年 に 発 行 さ れ た 厚 生 労 働 省 大 臣 官 房 統 計 情 報 部『 患 者 調 査 』に よ れ ば 、死 亡 率 の 高 い 循 環 器 系 の 疾 患 に つ い て は 、 入 院 、 外 来 と も に 年 齢 が 高 く な る に つ れ て 上 昇 し て お り 、 と り わ け 入 院 受 療 率 は 75~ 80 歳 を 境 に 急 激 に 上 昇 し て い る 。 年 齢 を 重 ね る ご と に 発 症 リ ス ク が 高 く な る と 考 え ら れ る こ と か ら 、 こ れ ら を 予 防 す る こ と で 疾 病 の 発 症 リ ス ク 要 因 を 減 少 さ せ れ ば 、 医 療 費 は 抑 制 す る と 考 え る こ と が で き る 。 そ こ で 次 節 で は 、 こ の 仮 説 に 基 づ い て 推 計 式 を 求 め る 。 Ⅳ ― 2. 推 計 式 と 諸 変 数 医 療 サ ー ビ ス は 他 の 財 や サ ー ビ ス に 比 べ 特 殊 な サ ー ビ ス で あ る た め 、 医 療 費 支 出 を 推 定 す る 場 合 、 ど の よ う な 要 因 を 推 定 式 に 組 み こ む か が 重 要 で あ る 。 そ こ で 本 稿 で は 、 先 行 研 究 を 参 考 に し て 要 因 を 組 み こ み 、 老 人 医 療 費 支 出 の 推 定 式 を 提 示 す る 。 本 稿 で は 、 老 人 医 療 費 支 出 の 要 因 を 「 所 得 」「 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 便 性 」「 介 護 」「 予 防 」の 4 つ に 分 け て 分 析 を 行 う 。こ れ ら の 仮 定 を も と に 推 計 式 は 以 下 の よ う に な る 。Iryohii =
α
0+α
1Moneyi+α
2Bedi+α
3Doci+α
4Kaigoi+α
5Kenkoi+α
6Edui+α
7Dummyi+ε
iな お 、 下 付 き の 文 字 の i は 各 道 府 県 を 表 し て い る 。
本 稿 で は こ の 式 に 基 づ き 、2004 年 、2003 年 、2002 年 の 都 道 府 県 別 デ ー タ を 用 い た プ ー ル 分 析 を 行 う 。
被 説 明 変 数 に は 1 人 当 た り 老 人 医 療 費 (Iryohi) を 用 い る 。 こ の 変 数 を 用 い る こ と に よ っ て 、老 人 医 療 費 の 地 域 ご と の 増 加 要 因 が 明 ら か に な る と 考 え る 。
次 に 、 説 明 変 数 の 説 明 を 行 う 。 ① 一 人 当 た り 県 民 所 得 (Money) は 、「 所 得 」 を 表 す 変 数 で あ る 。 所 得 が 消 費 支 出 に 影 響 を 与 え る と い う 仮 説 は 、ケ イ ン ズ の 消 費 関 数 の 理 論 に お い て 、既 に 当 然 の こ と と な っ て い る 。総 消 費 の 一 部 分 を 医 療 費 支 出 も 、 所 得 の 大 き さ に よ り 影 響 を 受 け る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 医 療 サ ー ビ ス を 正 常 財 と 仮 定 す れ ば 、 所 得 が 増 え れ ば 需 要 は 増 え る と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 予 想 さ れ る 符 号 は プ ラ ス で あ る 。 ② 人 口 十 万 対 病 床 数(Bed)は 、「 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 便 性 」を 表 す 変 数 で あ る 。 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 便 性 が 充 実 す れ ば 、 利 用 機 会 は 上 昇 す る と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 予 想 さ れ る 符 号 は プ ラ ス で あ る 。 ③ 病 床 100 床 あ た り 従 事 者( Doc)も 、「 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 便 性 」を 表 す 説 明 変 数 で あ る 。 よ っ て 、 予 想 さ れ る 符 号 は プ ラ ス で あ る 。 ④ 介 護 定 員 数(Kaigo)は 、「 介 護 」を 表 す 変 数 で あ る 。高 齢 者 医 療 に お い て は 、介 護 と 医 療 は 代 替 関 係 に あ る と い え る 。ま た 、2000 年 度 か ら 介 護 保 険 制 度 が 導 入 さ れ 、そ の 関 係 は 一 層 強 化 さ れ た と 考 え る こ と が 出 来 る 。 よ っ て 、 予 想 さ れ る 符 号 は マ イ ナ ス で あ る 。 ⑤ 健 康 診 断 受 診 率(Kenko)は 、「 予 防 」を 表 す 変 数 で あ る 。Ⅳ ― 1 で も 述 べ た 通 り 、 疾 病 の 発 症 リ ス ク を 減 少 さ せ れ ば 、 そ の 分 医 療 需 要 は 減 る の で 医 療 費 を 抑 制 す る こ と が で き る 。 健 康 診 断 を 受 診 す る こ と に よ っ て 、 病 気 を 早 期 発 見 ・ 予 防 す る こ と が 出 来 る と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 予 想 さ れ る 符 号 は マ イ ナ ス で あ る 。 ⑥ 集 団 健 康 教 育 の 開 催 回 数(Edu)も 、「 予 防 」を 表 す 変 数 で あ る 。健 康 に 関 す る 知 識 を 得 る こ と で 、 適 切 な リ ス ク 回 避 を 行 う こ と が 可 能 に な り 、 医 療 需 要 は 減 る と 考 え る こ と が で き る 。 よ っ て 、 予 想 さ れ る 符 号 は マ イ ナ ス で あ る 。 ⑦ 患 者 自 己 負 担 ダ ミ ー (Dummy) は 、 2003 年 度 よ り 自 己 負 担 額 が 引 き 上 げ ら れ た た め 、 分 析 へ の 影 響 を 緩 和 さ せ る た め に 取 り 入 れ た 。 次 節 で は 、 変 数 に 用 い た デ ー タ を 紹 介 す る 。
Ⅳ ― 3. デ ー タ 使 用 し た デ ー タ は 、 以 下 の よ う な デ ー タ を 用 い た 。 な お 、 サ ン プ ル 期 間 は 全 て 2005 年 、 2004 年 、 2003 年 で あ る 。 ま た 、 全 て の 変 数 に お い て 都 道 府 県 別 の デ ー タ を 用 い て い る 。 ま ず 、 被 説 明 変 数 で あ る 【 1 人 当 た り 老 人 医 療 費 】 は 、 厚 生 労 働 省 『 老 人 医 療 事 業 報 告 』 の 1 人 当 た り 老 人 医 療 費 を 使 用 す る 。 次 に 、 説 明 変 数 の デ ー タ に つ い て 説 明 す る 。 ① 【 1 人 当 た り 県 民 所 得 ( 単 位 : 千 円 )】 内 閣 府 『 県 民 経 済 計 算 』 よ り 、 県 民 1 人 当 た り 所 得 を 使 用 し た 。 ② 【 人 口 十 万 対 病 床 数 ( 単 位 : 床 )】 厚 生 労 働 省『 医 療 施 設 調 査・病 院 報 告 』よ り 、人 口 十 万 対 病 床 数 を 使 用 し た 。 な お 、 こ れ は 精 神 病 床 ・ 結 核 病 床 ・ 一 般 病 床 ・ 一 般 診 療 所 病 床 を 足 し た も の を 、 人 口 10 万 人 単 位 で 割 っ た も の で あ る 。 ③ 【 病 床 100 床 あ た り 従 事 者 数 ( 単 位 : 人 )】 厚 生 労 働 省 『 医 療 施 設 調 査 ・ 病 院 報 告 』 よ り 、 1 0 0 床 当 た り 従 事 者 数 を 使 用 し た 。 な お 、 従 事 者 と は 、 医 師 ・ 看 護 師 ・ 准 看 護 師 の こ と を 指 す 。 ④ 【 介 護 定 員 数 ( 単 位 : 人 )】 厚 生 労 働 省 『 介 護 サ ー ビ ス 施 設 ・ 事 業 所 調 査 の 概 況 』 よ り 、 介 護 老 人 福 祉 施 設 ・ 介 護 老 人 保 健 施 設 ・ 介 護 療 養 型 老 人 施 設 の 定 員 数 を 足 し た も の を 使 用 し て い る 。 ⑤ 【 健 康 診 断 受 診 率 ( 単 位 : % )】 厚 生 労 働 省 『 地 域 保 健 ・ 老 人 保 健 事 業 報 告 』 よ り 、 基 本 健 康 診 査 受 診 率 を 使 用 し て い る 。 ⑥ 【 集 団 健 康 教 育 の 開 催 ( 単 位 : 回 )】 厚 生 労 働 省 『 地 域 保 健 ・ 老 人 保 健 事 業 報 告 』 よ り 、 集 団 健 康 教 育 の 開 催 回 数 を 使 用 し て い る 。 次 節 で は 、 分 析 結 果 を 提 示 す る 。
Ⅳ ― 4. 分 析 結 果 【 表 Ⅳ ― 4 ― 1 】 説 明 変 数 0.258643 1 人 当 た り 県 民 所 得 ( - 1.134) 8.24E *** 人 口 十 万 対 病 床 数 ( 8.340) 0.880439 病 床 100 床 あ た り 従 事 者 数 (0.150) 3.83E *** 介 護 定 員 数 ( 7.639) 0.000219*** 健 康 診 断 受 診 率 ( - 3.803) 0.000642*** 集 団 健 康 教 育 の 開 催 回 数 ( - 3.496) 標 本 数 141 補 正 R 2 0.610 ( ) 内 t 値 ***有 意 水 準 1% で 有 意 **有 意 水 準 5% で 有 意 *有 意 水 準 10% で 有 意 Ⅳ ― 5. 分 析 結 果 の 考 察 ① 1 人 当 た り 県 民 所 得 は 、 予 想 さ れ た 符 号 と 異 な り マ イ ナ ス で 、 有 意 で は な か っ た 。 こ れ は 、 所 得 の 低 い も の は 必 要 な 十 分 な 栄 養 や 休 息 が と れ ず 、 体 調 を 崩 す な ど し て 医 療 需 要 が 高 ま る と 考 え ら れ る 。 ② 人 口 十 万 対 病 床 数 は 、 予 想 通 り プ ラ ス で 有 意 と な っ た 。 こ の 結 果 よ り 、 病 床 数 が 多 い 地 域 ほ ど 、 医 療 サ ー ビ ス へ の 利 便 性 が 高 ま り 、 医 療 需 要 が 増 え る と 推 測 す る こ と が で き る 。
③ 病 床 100 床 あ た り 従 事 者 は 、プ ラ ス と な っ た も の の 、有 意 と は な ら な か っ た 。 医 療 従 事 者 が 増 え れ ば 医 療 費 も 増 加 す る と い う 議 論 は 、 医 師 誘 発 需 仮 説 5 に 基 づ い た も の で あ る 。 有 意 と な ら な か っ た の は 、 都 道 府 県 デ ー タ を 使 用 し た の で 多 少 の 誤 差 が 生 じ て し ま っ た の か も し れ な い 。 ④ 介 護 定 員 数 は 有 意 と な っ た も の の 、 予 想 と 異 な り 符 合 は マ イ ナ ス だ っ た 。 介 護 定 員 数 が 減 少 す れ ば 、 医 療 費 は 増 加 す る 。 こ れ は 、 介 護 サ ー ビ ス を 受 給 で き な か っ た 人 達 が 医 療 機 関 へ 入 院 ・ 通 院 す る こ と に よ る 医 療 需 要 の 増 加 が 原 因 だ と 考 え ら れ る 。 ⑤ 健 康 診 断 受 診 率 は 、予 想 通 り マ イ ナ ス の 符 号 で 有 意 と な っ た 。こ の 結 果 よ り 、 定 期 的 な 診 断 を 受 け る こ と に よ る 病 気 の 早 期 発 見 が 、 医 療 需 要 を 減 少 さ せ 医 療 費 を 抑 制 す る と 考 え る こ と が で き る 。 ⑥ 集 団 健 康 教 育 の 開 催 回 数 も 、 予 想 通 り マ イ ナ ス の 符 号 で 有 意 と な っ た 。 こ の 結 果 よ り 、 健 康 に 関 す る 知 識 を 得 る こ と で 、 疾 病 に 対 す る リ ス ク を 回 避 で き る こ と が 検 証 さ れ た 。 以 上 の 結 果 を 踏 ま え て 、 次 章 で は 政 策 提 言 を 行 う 。 5 中 西 ( 2001) な ど
Ⅴ . 政 策 提 言
Ⅳ 章 の 分 析 結 果 か ら 、 予 防 行 動 が 医 療 費 を 抑 制 す る こ と が 分 か っ た 。 ま た 、 各 地 域 の 介 護 定 員 数 の 増 減 が 格 差 を 生 む こ と が 分 か っ た 。こ の 分 析 結 果 を 基 に 、 政 策 提 言 を 行 う 。 Ⅴ ― 1. 健 康 診 断 の 義 務 化 予 防 行 動 で あ る が 、 疾 病 予 防 は 増 加 を 続 け る 医 療 費 の 削 減 に 大 き な 効 果 を も た ら す と 考 え ら れ る が 、 現 在 の 社 会 保 険 を 柱 に し た 公 的 医 療 保 険 制 度 で は 、 予 防 す る イ ン セ ン テ ィ ブ は ほ と ん ど な い 。 そ こ で 、 健 康 診 断 の 義 務 化 を 提 言 す る 。 具 体 的 に は 、 4 0 歳 以 上 の 成 人 は 必 ず 受 診 し な け れ ば な ら な い 。 健 康 診 断 の 目 的 は 、 早 期 発 見 ・ 早 期 治 療 な の で 、 こ れ を 徹 底 す る こ と に よ っ て 医 療 需 要 は 減 少 し 、 医 療 費 は 抑 制 さ れ る も の と 考 え ら れ る 。 Ⅴ ― 2 . 法 改 正 に よ る 責 任 の 明 確 化 ま た 、現 在 健 康 診 断 や 保 健 指 導 等 に つ い て は 、医 療 保 険 各 法 に 基 づ き 保 険 者 、 老 人 保 健 法 等 に 基 づ き 市 町 村 、 労 働 安 全 衛 生 法 に 基 づ き 事 業 者 等 が そ れ ぞ れ 実 地 し て お り 、 対 象 者 が 重 な る 中 で 、 健 康 診 断 ・ 保 健 指 導 の 実 施 に 係 る 保 険 者 と 市 町 村 等 の 責 任 ・ 役 割 分 担 が 不 明 確 と な っ て い る 。 そ こ で 、 各 関 係 者 の 役 割 を 明 確 に さ せ る た め に 、法 改 正 を 行 う こ と を 提 案 す る 。法 改 正 を 行 う こ と に よ り 、 保 険 者 、 市 町 村 等 の 関 係 者 の 役 割 分 担 の 明 確 に な り 、 よ り 適 切 な サ ー ビ ス が 国 民 に 供 給 さ れ る と 考 え る 。 Ⅴ ― 3 . 出 張 介 護 サ ー ビ ス の 導 入 次 に 、 地 域 の 介 護 定 員 数 に は 限 界 が あ る た め 、 そ の 代 替 手 段 と し て ボ ラ ン テ ィ ア に よ る 出 張 介 護 サ ー ビ ス の 導 入 を 提 案 す る 。 出 張 介 護 サ ー ビ ス と は 、 介 護 施 設 に 入 れ な い 老 人 を 、 在 宅 で ケ ア し よ う と い う も の で あ る 。 ま た 、 通 常 は ヘ ル パ ー な ど を 雇 う が 、 所 得 の 低 い 高 齢 者 は 雇 う こ と が で き な い 。 そ こ で 、 各 市 区 町 村 が 認 定 し た 高 齢 者 に 対 し 、 無 償 で 介 護 サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と を 提 案 する 。 人 員 は 、 ボ ラ ン テ ィ ア や 、 ま た 授 業 の 一 環 と し て 地 元 の 医 療 専 門 学 校 の 学 生 な ど を 利 用 す る 。 以 上 で 、 本 稿 の 政 策 提 言 を 終 え る 。 Ⅵ . お わ り に 本 稿 で は 、 老 人 医 療 費 の 地 域 間 格 差 の 要 因 を お よ び 増 加 要 因 を 分 析 し た 。 そ の 結 果 、 介 護 施 設 の 定 員 数 や 疾 病 予 防 行 動 な ど が 大 き な 影 響 を 与 え て い る こ と が 分 か っ た 。 し か し 、 い く つ か の 課 題 が 残 っ た の で そ れ を 述 べ る 。 ま ず 、 分 析 の デ ー タ で あ る 。 本 来 な ら ば 、 都 道 府 県 ご と の デ ー タ で は な く 、 個 票 を 用 い た か っ た 。 個 票 を 用 い て の 分 析 な ら ば 、 よ り 精 密 な 結 果 が 出 る と 期 待 し た い 。 ま た 、 本 稿 で は 疾 病 の 予 防 行 動 が 医 療 費 を 抑 制 す る と 結 論 付 け て い る が 、 個 人 の 予 防 行 動 に つ い て は 全 く 分 か ら な い 。 そ の よ う な デ ー タ が 存 在 し な い た め で も あ る が 、 そ れ 以 前 に 、 そ も そ も 予 防 行 動 は ど の よ う な 動 機 で 行 わ れ る の か を 研 究 し て い な い た め 、 非 常 に 曖 昧 な 結 果 と な っ た 。 今 後 の 課 題 お よ び 教 訓 に し た い 。
【 参 考 文 献 】 柿 原 浩 明 (2004) 『 入 門 医 療 経 済 学 』 地 域 差 研 究 会 (2001) 『 医 療 費 の 地 域 差 』 厚 生 労 働 省 (2006) 『 平 成 1 9 年 度 厚 生 労 働 白 書 』 泉 田 信 行 (2001)「 地 域 差 に よ る 損 失 」『 医 療 費 の 地 域 差 』 東 洋 経 済 新 報 社 大 日 康 史(2001)「 高 齢 者 医 療 に お け る 需 要 の 価 格 弾 力 性 」『 医 療 サ ー ビ ス 需 要 の 経 済 分 析 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社 船 橋 恒 裕( 2006)「 医 療 費 の 地 域 格 差 に つ い て 国 民 健 康 保 険 に お け る 医 療 費 支 出 の 分 析 」『 同 志 社 大 学 經 濟 學 論 叢 』 (2004)「 医 療 費 支 出 の 地 域 的 特 性 の 分 析 - 近 畿 圏 に お け る 医 療 費 支 出 の 特 性 に つ い て- 」『 同 志 社 大 学 經 濟 學 論 叢 』 川 野 辺 裕 幸・眼 龍 優 雅(2000)「 医 療 費 の 都 道 府 県 格 差 分 析 」『 公 共 選 択 の 研 究 』 第 3 3 号 pp29-44 前 田 由 美 子 (2004)「 国 民 医 療 費 の 現 状 分 析 と 将 来 推 計 」『 日 医 総 研 ワ ー キ ン グ ペ ー パ ー 』 伏 見 恵 文 (1996)「 老 人 医 療 費 の 分 布 特 性 と 地 域 格 差 問 題 」『 季 刊・社 会 保 障 研 究 』 31(4) pp380-387 知 野 哲 郎 ( 1998)「 老 人 医 療 費 の 地 域 的 変 動 と そ の 決 定 要 因 」『 立 命 館 経 済 学 』 第 47 巻 pp266-280 橋 本 恭 之 (2003)「 高 齢 化 と 医 療 需 要 」『 医 療 保 障 論 現 状 ・ 課 題 ・ 展 望 』 光 生 館 中 西 悟 志 (2001)「 医 療 施 設 の 競 争 と 医 療 費 の 地 域 間 格 差 」『 医 療 費 の 地 域 差 』 東 洋 経 済 新 報 社 【 デ ー タ 出 典 】 『 国 民 医 療 費 』( 厚 生 労 働 省 大 臣 官 房 統 計 情 報 部 ) 『 患 者 調 査 』 ( 厚 生 労 働 省 大 臣 官 房 統 計 情 報 部 ) 『 老 人 医 療 事 業 報 告 』( 厚 生 労 働 省 ) 『 医 療 施 設 調 査 ・ 病 院 報 告 』( 厚 生 労 働 省 ) 『 介 護 サ ー ビ ス 施 設 ・ 事 業 所 調 査 の 概 況 』( 厚 生 労 働 省 ) 『 地 域 保 健 ・ 老 人 保 健 事 業 報 告 』( 厚 生 労 働 省 ) 『 県 民 経 済 計 算 』( 内 閣 府 )