C A N C E R 7 (1998), p.17-18 17
静岡県南伊豆で漁獲された白いイセエビと
その脱皮成長牢
岡本一利 ・御宿昭彦
イセエピ P a n叫lirus jatonicus は,太平洋,イン ド 洋 な ど 広 範 囲 に 分 布 す る が 日 本 沿 岸 に 最 も 多 い. 特に千葉県以西の瀬戸内海の一部を除く本州 . 四国および九州全域から沖縄に 至る外洋の影響 を直接うける岩礁地帯に主として生息する. その 漁業は分布域沿岸の中心的漁業の一つであり ,主 に刺網によって漁獲されている. 静岡県のイセエ ピ漁獲量は年間約100トンで,全国でも屈指の生 産量を誇っている. その中でも下回 ・南伊豆地域 は県内の漁獲量の約4 割を占め,イセエピ漁業の 中心的な存在となっている. 1995年11月13日に下 田市漁業協同組合須崎支所から白いイセエピが漁 獲されたとの情報が入り,その個体を生きたまま 入手し,飼育を試みたので報告する . 白いイセエビの採捕時( 図1) のデータは静岡 県下回市須崎沖水深6 - 7 mの場所で刺網により 漁獲された雄個体で,頭胸甲長47mm,体重95 gで あった( 小川貢氏採集) . 甲殻,歩脚 ,触角等,体全体が白化していたが, 複眼の色素は黒色であった. 何らかの原因で色素 を欠いてしまったものと推察される. 標本を提供 して頂いた漁業者をはじめ他の数名の漁業者も白 い イ セ エ ビ を 見 る の は 初 め て と い う こ と で あ っ た. 甲殻類の白化は,ベニズワイガニ C h削wecetesjatonicusやガザミ P Oγt叫nus tnt叫berc叫ωt叫sで既に
知られている. イセエビの白化についての報告例 はこれまでほとんどなく,実際にどの程度出現す るものなのかは不明である.
今回 ,この白化個体を水槽内で,ム ラサキイガ
* 静 岡 県 水 産 試 験 場 伊 豆 分 場 業 績N O .110 Kazutoshi OKAMOTO and Akihiko MISYUKU: M olt-ing and growth of the albino spiny lobster. Panu-lirus jatonic叫scollected from Southern coast of lzu
Pen insul a, Sh izuoka prefecture
イ等を適宜給餌して飼育したところ 2回の脱皮 を確認した. 採捕してからの最初の脱皮日の確認 は で き な か ったが,'96年7月 8 日に測定したと ころ頭胸甲長51mm,体重105 gであった.
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回目 の脱皮を確認したのは '97年6月30日で,頭胸甲 長56mm,体重130gに成長した. 脱皮後のエピ( 図 2 ) も脱皮殻( 図3) も同様に白かった. このように脱皮をしても本来のイセエピの色彩 にはもどらず白いままであったことは,このエビ の白化の原因が餌料環境等の影響ではなく,何ら かの遺伝的要因により色素が欠けているものと思 われた. 謝 辞 襟本を提供していただいた下回市漁業協同組合 の小川貢氏,飼育に協力して頂いた静岡県水産試 験場伊豆分場の職員の方々に厚くお礼申し上げま す. 参考文献 村岡健作・本間 慈, 1993. 北海道沖て、得た白化のベ ニズワイガニ Cancer, 3: 23-25. 有山啓之, 1997. 大阪湾でとれた白いガザミ. Cancer. 6: 9-10. ( 岡本一利: 静岡県水産試験場伊豆分場 ( 現浜名湖分場) 御宿昭彦: 静岡県水産試験場伊豆分場 ( 現 静 岡 県 農林水産部) )18 静岡県南伊豆で漁獲された白いイセエピとその脱皮成長
図1 採摘された時の白いイセエビ (左 背 面 , 右 腹 面 )
図2 2回脱皮後の白いイセエビ