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北陸先端科学技術大学院大学のイノベーションデザイン教育

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Academic year: 2021

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(1)76. 特集:イノベーションデザイン論. 前川正実 Maekawa Masami 北陸先端科学技術大学院大学. Japan Advanced Institute of Science and Technology. 北陸先端科学技術大学院大学のイノベーション デザイン教育 Innovation Design Education at Japan Advanced Institute of Science and Technology. 1.はじめに 私たちの社会や生活の更なる発展の為には、既定ルールを踏襲して効率よ くこなすといった、これまで求められてきたものとは異なる能力を備えた人 材が求められている。これはつまり、オペレーション能力よりもクリエイ ティブな能力、すなわち、事物の構想と設計に関する能力の強化が必要とい うことである。これまでの近代的教育と科学技術研究は工業化社会を前提 として設計されてきた側面がある。吉川は、産業革命以降の機能分割すな わち「単能化というパラダイムシフト」と「知識の細分化」の功罪、そし て、現代におけるこれとは別の技術的パラダイムシフトの必要性について述 べている1)。工業化社会では、単能化した機械や仕組みのオペレーションを 効率よく行うために、概ね均質で能力平均値の高い人材群が産業界から求め られ、教育機関はその期待に応えてきたといえるだろう。しかし、既に社会 は脱工業化へと進んでおり、昨今のサービスデザイン、プロダクト・サービ ス・システムズ、経験経済などの潮流に見られるように、有形の工業製品は 無形のサービスの手段としての役割を諸制約に応じてたまたま担っているに 過ぎず、むしろ重要なのは、解決すべき課題を発見・定義することや、社会 に潜在する価値やニーズを顕在化し、その実現手段を発想し具現化すること である。これはすなわち、デザイナーや開発者など、事物の創出者が焦点を 置くべき領域が、かつてより上流側へ移行した、あるいは上流側までも含む べき状況になったことを示しており、既存の価値観を満足する手段の効率的 構築、その大量生産とコストダウン、効率的オペレーション等の、相対的に 下流側となった分野を担うのに必要な能力とは異なる能力を持つ人材の育成 が、喫緊の課題になっているといえる。 社会における新たな価値や価値観を発見するためには、社会的・マクロ的 な観点を持つことに加え、これまで把握されにくかった情報を得るために、 個別的・ミクロ的な視点も併せ持つ必要がある。また、多様な観点から価値 を探索し、その具体化のための構想と設計を行うためには、高度に複雑化し 細分化された知識を持つ多様なメンバーと一緒に協調して活動する必要があ る。専門分化した知識・能力体系の存在を前提として、T型やΠ型の人材の 育成が教育機関他で既に標榜されているが、ひとつかふたつの専門知識とそ れ以外の広く浅い知見を備えるだけでは役不足であろう。更に、専門の異な る人材を繋げて共創を実践する能力と、社会を広く見つめて新たな価値を発 見する洞察力が合わせて必要といえる。.

(2) デザイン学研究特集号  Vol.25-1 No.97. また、これからの人材が備えるべき能力として21世紀型スキルが提唱され ている2)。これは大別して以下の4要素から成り、これらの能力は前述した 内容と整合している。また、これらの能力を行使した成果のアウトプットと してイノベーションが掲げられている。 ① 思考の方法……創造性とイノベーションなど ② 働く方法……コラボレーションなど ③ 働くためのツール……ICT リテラシーなど. ④ 世界の中で生きる……異文化理解など. イノベーション創出に関して、近年、デザイン思考の考え方や手法の教育 がなされている。これは日本企業でかつて行われていたフラットな関係性の もとでのワイガヤ的な会議や、チームワークの重視、ひとまず作ってみるプ ロトタイピング型の開発スタイルを米国の企業や研究機関などが学んだ結果 として、それまで日本において暗黙知だった内容の一部が形式知化されたも のとされる3)。こうした方法は、製品企画や構想設計といった製品開発上流 段階から検討するデザイナーが一般的に行ってきている方法であり、ユーザー や顧客の心理と感性への共感を重視する思想と態度がある。こうしたことか ら「デザイン思考」と称されることになったと推測される。対象をスタイリ ングだけに限定しないこうした本来的なデザイン活動は、本来的にイノベー ション創出につながり得る活動であるものの、その実践方法はほとんどが暗 黙知のままであった。その一部が形式知化されたことによってイノベーショ ン創出の方法を教育しやすくなったことには一定の価値があるといえる。 しかしながら、デザイン思考として教育される内容は形式知化された部分が 主で、確かにこれからの人材が備えるべき能力の一部であるが、そのほかにも 必要な能力として、人間力や社会的能力といわれるメタコンピテンシーや洞察 力などがある。これらの能力は教育不可能ではないものの、教育機関における 従来型教育では教育しにくいものである。方策のひとつとして、プロジェクト ベースドラーニングなどの教育方法を採用して学生の主体的な学修を促すこ となどが考えられる。加えて、デザイン思考として形式知化された内容は欧米 の社会や文化的な環境に最適化されている部分があると推測されるため、日 本の学生への適用を意図する場合は、日本の企業文化、気質、背景に即した、 日本型スキームによるイノベーションデザイン教育が望ましいといえる。 こうした背景から、北陸先端科学技術大学院(以降 JAIST)では、「未来. ニーズの顕在化とイノベーション創出人材の輩出」を目的とするイノベー. ションデザイン教育を2014年度から実施してきた。JAIST は大学院のみの教. 育・研究機関であることから、他大学の学部卒業生や高専の専攻科修了生に 門戸を開いており、留学生が4割程度を占める。学生寄宿舎がキャンパス内 にあり、多様な学生が一緒に学び、研究し、生活する場が形成されているた め、前述した21世紀型スキルにおける④を日常的に体験する環境にあるとい える。そして、大学院から研究内容を変えることが可能なので、上述したΠ 型人材の育成に適しているといえる。加えて、学生には副テーマ研究とし て、修論や博論のテーマである主テーマ研究とは異なる分野の研究を、数か 月かけて実施することが求められている。期間的には短いものの、学生が幅. 広い視野や知見を得ることに一定の効果が期待されている。特に、JAIST の 特徴である旧知識科学研究科は、実践知の生成と活用にも重きを置く分野融 合的な面があり、21世紀型スキルに掲げられる①から③に関する約20年間の 研究蓄積がある。JAIST がもともと持つこうした人材育成の特徴と能力を背. 77.

(3) 78. 特集:イノベーションデザイン論. 景にした、イノベーションデザイン教育の概要と教育事例、学生評価の方法 等について述べる。. 2.JAIST のイノベーションデザイン教育の概要. イノベーション創出力を高めるための活動は、デザイン思考の普及に伴い. 大学等の教育機関のほか、企業や学術団体など多くの組織において幅広く行 われている。この教育活動のほとんどは、デザイン活動において形式知化さ れた思考や手法を受講者が習得し、あるプロセスに沿った実践体験をするも ので、教員からの一方的な講義でなく、グループでのディスカッションや ワークを用いたアクティブ・ラーニング(以降、AL)が採られることが多. い。JAIST の旧知識科学研究科において、グループでの議論の方法を学生が. 主体的に学ぶための必修授業が設けられてきたことに象徴されるように、多 様なグループメンバーの共創のあり方やそのための仕組み作りなどが研究と 教育のテーマである。その知見のもと、AL を中心としたカリキュラムを構. 築し、またオープン参加型のワークショップとセミナーを開催している。以 下に具体例を挙げて述べる。. 2.1. カリキュラムの例 2.1.1. 人間力・創出力イノベーション論. 2016年度からの入学生全員に対する必修授業である。JAIST は2016年4月. に、それまでの三つの研究科(知識科学研究科、情報科学研究科、マテリア ルサイエンス研究科)からひとつの研究科(先端科学技術研究科)となった が、研究分野はこれまでとほぼ同じである。したがって、多様な分野を専攻 する新入学生が混在したかたちで、全員が基本的に一度に受講する。授業は 入学直後の期に毎週1回、毎回200分間(2コマ連続)がほぼ2か月間続く。 前半の約1か月間は座学が中心で、社会でイノベーション創出が求められる 理由、イノベーション事例、イノベーション創出方法に関する基礎的知識の 学習とマインド醸成にあてる。後半の約1か月間は、バックキャスティング とフォアキャスティングを組み合わせたロードマッピング演習をグループ ワークで実施する(図1参照)。 このロードマッピングでは、未来社会のニーズを想定してこれを起点と し、そのニーズを満足するために求められる機能を探索し、次いで、その機 能を実現するために求められる技術開発を探索する。未来の事物を具現化す. 図1 ロードマッピング演習風景.

(4) デザイン学研究特集号  Vol.25-1 No.97. るために必要な課題を明らかにしていくプロセスを理解し、グループワーク によって関係者が共通意識を持つことの大切さと効果を理解する4)。 この授業科目の演習は、ロードマッピングの知識やテクニックの習得だけが 目的では無い。むしろ、多様なグループメンバーがアイデアを出して議論し合 意形成する過程を通じて、論理的思考力・コミュニケーション能力・俯瞰力等 からなる人間力やメタコンピテンシーと、発想力・計画力・表現力等からなる 創出力を獲得することへ重点を置いている。したがって、最終的に描かれる ロードマップへ至る学修過程(学生自身のレベルアップ)に要点がある。 人間力と創出力は、多くの専門家の知見を適切に組み合わせて目的に沿っ た事物を構築したり、利害関係の異なるステークホルダーの合意形成をした りする場面で特に必要となる能力である。今日のように、目的や目標、課題 などが所与でない時代においては、様々な分野における価値創出の場面で求 められる能力といえる。こうした能力について入学直後に学生へ意識付け し、在学期間中の研究活動への効果を期待するとともに、全修了生が備える べき能力としている。 こうした能力は、他から知識を導入するように獲得できる部分も一部ある ものの、むしろ整えられた環境の中で、学生自身の内発的動機によって獲得 されるものと考えられる。そのため、学生自身が内省によって自分自身の形 成的評価を繰り返すことを促す仕組みとして、毎回最後に「振り返りシー ト」への記入を指示している。このように、知識やスキルを詰め込むのでな く、所与の正解が存在しない問題について、学生が自分自身やグループでの 議論をメタ認知したり客観的に把握したりすることを促す教育に加え、デザ イン思考、システム思考、イノベーションマネジメントが組み合わされてい る点が JAIST の旧知識科学研究科の特徴であり、まさにその知見を活用した. 「知識科学的イノベーションデザイン教育」を行なっている。. 2.1.2. イノベーションデザイン方法論. 幅広い領域の課題発見と解決に応用できる手法とマインドを身に付けるた. めの授業を2014年度に試行し、2015年度に正式開講した(図2参照)。各回 の授業は、前半をテーマや観点を提示する講義、後半をグループでのディス カッションや演習を行う AL 形式とした点に特徴がある。将来、産業界でイ. 図2 「イノベーションデザイン方法論」授業風景. 79.

(5) 80. 特集:イノベーションデザイン論. ノベーション創出を担う大学院生が身に付けるリベラルアーツとして、W型 問題解決モデル等の思考法と発想法に加え、3D技術の活用についても学生 は学ぶ5)。本授業で学んだ内容を日本創造学会第37回研究大会にて学生が発 表し6)、研究大会発表学生賞を受賞した。本授業内容が客観的な観点から認 められたものと受け止めている。 なお、本授業は2016年度に名称を「イノベーションデザイン論」として内 容を若干改めた。社会的なテーマを提示し、それに対するチーム検討と提案 内容の製作にウェートを置く構成としたことにより、様々な観点、根拠に基 づく提案がなされた。本授業を受講する学生のほとんどはいわゆるデザイ ナーになることを志望していないが、デザインを学ぶことはすなわち、顕在 的・潜在的な問題を理解し解決する方法を学ぶことである。この能力は社会 をより良いものにするための基盤的な能力であるとともに、様々な視座をと ることによって新たな価値創出をする創造的能力であり、JAIST が輩出する. 人材が備えるべきものと捉えている。. 2.1.3. グループ副テーマ研究. 前述したように、入学以前とは異なる分野を専攻可能であることに加え、. 主テーマ研究とは異なる指導教員のもとでの副テーマ研究が、かねてから選 択必修となっている。これを学生2∼7人程のグループで行う形態があり、 学生グループがテーマを決めて指導教員を決める方法と、教員がテーマを決 めて学生を募集する方法がある。このうち、後者の方法について、先に述べ た必修授業の応用と実践の場と位置付けて再設計した。以下に、2016年度に 実施した内容について述べる。 指導教員は各テーマに2人とした。テーマに関して幅広い見地からの助言 を学生が得られるようにするとともに、複眼的なものの見方を学生が学ぶ効 果を意図している。次に、概ね4か月間の活動プロセスを次の3つの段階か ら構成した。 ① テーマに関する探索的調査 ② 調査結果の分析と課題設定 ③ 諸制約の中での課題解決提案の策定およびそれに対する評価を受けて の振り返り イノベーション創出は、社会に存在するものごとを調査しリフレ―ミング して創出すべき価値を定義し、その価値を実現するための事物を設計し生み 出すことによって結果的に生じる。そのため具体的な課題が確定していない 段階における調査活動とデータ解釈およびそこからの意思決定段階に大きな 要点があると考えられるため、この段階における探索的調査の実施を重視し. 図3 「グループ副テーマ研究」報告会風景.

(6) デザイン学研究特集号  Vol.25-1 No.97. た。課題の範囲すなわち学生への提示テーマは7種類を用意し、テーマ名は 全て「……の未来」とした。例えば「日本の高齢者施設における QOL の未. 来」、「日本の食糧の生産/流通/消費の未来」等である。この理由は、未来 像を描くことが、チームメンバーのベクトル合わせに重要だからである。現 状や過去の事象について、エスノグラフィを応用した観察やインタビューな どの質的かつミクロ的な調査の結果と、統計データや省庁が発行する白書な どのレビューといったマクロ的視点の調査結果の双方を解釈し、そこから当 該分野の未来像を描き、さらに未来ニーズとその満足を図るための課題設定 をグループで行う過程を通じて、実践方法を体得・体験することを意図して いる。研究活動の最終段階に全グループの報告会を開催し、テーマに関連す るいくつかの企業からの参加者のほか、今回の活動に参加しなかった学生の 多数の参加がみられた(図3参照)。. 2.2. ワークショップおよびセミナー. JAIST には学部が無く、学生の在学期間が短いことから、学生がイノベー. ション創出能力を高めるための機会として、自由参加形式のワークショップ とセミナーを北陸と東京で開講している7)(表1参照)。ほとんどをオープ ン形式として、地域のイノベーション創出力向上への寄与となることを期待 するとともに、幅広い多様な参加者によるグループワークにより、ダイバー シティの意義、有効性、困難への対処法を参加者が認識し、理解することを 意図している。JAIST の教員が講師やファシリテータを担当するほか、外部. の優れた知見を参加者へ紹介する目的や、優れた教育方法・知見を採り入れ るため外部の協力も得て実施している。2015年3月から2016年11月末までの 21か月間に26回開催し、これまでの参加者の累計はのべ約600人。学生の割 合は約48% であった。. ワークショップは授業と異なり、実践的な技術の習得に重点を置く。セミ. 表1 ワークショップおよびセミナー開催履歴(2015年3月∼2016年11月). 81.

(7) 82. 特集:イノベーションデザイン論. ナーはイノベーション創出のモチベーションとマインドを醸成する機会や、 多分野からの参加者が情報交換する機会となることを意図している。運営方 法と内容を向上することを目的として、参加者に対し毎回アンケート調査を 実施している。これまでのところ概ね良好な評価を頂戴しているが、既に一 定程度のスキルを習得済みの参加者にとっては内容が不十分となっている ケースも見受けられたため、参加者のレベルに応じたコース設定をする方が 望ましい可能性があり、中期的な課題と捉えている。 特に2016年度は、前述のグループ副テーマ研究の冒頭部分で行う探索的調 査の実践方法を学生が学ぶためのワークショップを2回開講した。学生は授 業で質的調査法についての知識を学ぶが、その実践方法はこれまでほとんど 学ぶ機会がないため、いきなり実践すれば低品質な結果しか得られず、結果 としてそれ以降の活動の根拠と品質を低下させてしまうことが推測されたた め、最低限度の知識とスキルを習得する必要があることへ対応した。. 3.イノベーション創出能力とは さてここで、上述の教育活動によって育成しようとしているイノベーショ ン創出力について具体的に示す。 まず、上述した21世紀型スキルに該当する能力がある。Binkley らは10種. 類の重要スキルについて、「知識」 「技能」「態度・価値・倫理」の測定可能 な3側面から捉えた KSAVE フレームワークを示している8)。重複部分を除. いて整理し採り入れた。これらは後述する「人間力」および「創出力」に分 類した能力のほとんどに該当する。 新たな価値の発見とその新たな方法での満足を実現するには、所与の正解 を効率よく求めるのとは全く異なる能力すなわち、既に顕在的な情報となっ た形式知ではなく、新たな暗黙知を獲得し活かす能力である。これはある程 度の長期的な経験や体験における内省や追体験を通じて培われるため、いわ ば、内省を伴うトライ&エラーを継続し学び続ける能力が必要といえる。更 に、イノベーションとは新結合であるから、細分化された専門性を新しい. かたちで結び付け総合する能力が必要である。これには前述した「人間力」 「創出力」も含まれるし、客観的に未来を予見する力も含まれる。また、変 化の激しい環境下において、状況を適時フィードバックして手段や進むべき 表2 JAIST において定めたイノベーション創出能力 評価項目 3本の柱. メイン項目 1.継続的に知識を高め、論理的に思考する力. 人間力. サブ項目 幅広く新たな知識を獲得する力 課題の把握と解決のため、論理的に思考する力. 2.規範意識を持ち、多様な他者とコミュニケーションして切磋琢磨するとともにリーダーシップを発揮する力 3.自分に期待される活動を理解し、主体的に行なう意欲と忍耐力. 自分に期待される活動と自分の影響を、幅広い観点から理解する力 期待される活動を主体的に行なう意欲と忍耐力. 4.専門分野に関する知識・技能の質と量、及びこれらを高める力. 創出力. 常識や既存の枠組みを外し、多彩なアイデアを、発散的に素早く 5.所与の正解が無い中で、仮説を発見・考案・評価するアイデ 多く生み出す力 ア創出力 目的に沿ってアイデアを客観的に評価し、次のアイデア発散につ なげる力 6.幅広い知識・アイデアを総合し、ソリューションを計画する力 7.アイデアを可視化し編集する力 8.未来ニーズ・潜在ニーズを広く探索し、その存在を見出し、 質的・量的データを収集する力 理解する力 未来ニーズ・潜在ニーズを顕在化して説明する力. 未来ニーズの顕在化と 9.不確実性の高い状況下で、他者や社会との共創を推進する力 実践する力 10.わかりやすく伝え、フィードバックを受け止めて判断や行動につなげる力 11.未来ニーズ・潜在ニーズを満足する革新的なコンセプトを作り説明する力.

(8) デザイン学研究特集号  Vol.25-1 No.97. 方向を探索する力も含まれる。これらの多くは後述する「未来ニーズの顕在 化と実践する力」に分類した。 以上から挙げられる能力に対し、ディプロマポリシーとの整合性を勘案し、 表2に示す能力を JAIST におけるイノベーション創出能力として定めた。. 4.イノベーション創出能力の評価 AL は受講者満足度が一般に高い傾向がみられるが、客観的な効果の検証. は不十分との指摘がある9)。確かに、所与の正解が無いテーマに対して新た な解を導出するイノベーション創出能力を、知識の質と量によって評価でき ないことはもちろん、客観的にそのレベルや質の変化を確認し評価すること は容易でない。 しかし、これらの能力の自分のレベルを学生が自覚し、教員が助言できる ようにするためには、学生の能力を何らかの方法で評価し把握する必要があ る。そこで、それぞれの学生が自分自身の目標をイメージしやすくし、その 能力の向上を課題として意識付けることを目的とし、イノベーションデザイ ン教育ルーブリックを設けた。ルーブリックはペーパーテストで測りにくい パフォーマンスの評価に適しているとされ、学生に対して目標を認識しやす くし、目標に対する内省を促すことで主体的な学習を支援することを目的と して採用した。加えて、授業やその他の活動の質保障ツールとすることも目 的に掲げている。 このルーブリックは、前述した本学独自の15の各評価項目について、高い 能力状態から努力を要する程度に応じた4段階の状態を記してある。 次に、イノベーションデザイン教育ルーブリックの運用について述べる。 ルーブリックは一般的に個別の授業における達成目標に即した内容で作られ ることが多いが、JAIST では修士や博士の過程の在学期間全体でのイノベー. ションデザイン創出能力の変化をみることを目的とし、一貫してこのルーブ リックを用いる。学生は、各学生に割り当てられる学内ウェブ上のポータル ページから入り、在学期間中に次の5回の自己評価をオンラインで実施する 予定である。①入学直後、②人間力・創出力イノベーション論終了時、③研 究計画提案書提出時、④中間審査終了後、⑤修了時。. 2016年度4月入学生はこれまでに2回(4月と6月)の自己評価を行った。 まだ十分な考察に足るデータは取得できていない段階のため、ここでは自己評 価結果のレーダーチャートの例を示すに留めるが(図4参照) 、今後の各学生 の自己評価データの推移、評価項目毎の評価値の傾向などが明らかになること により、教育内容の改善点の把握と再設計を行いやすくなることが期待される。. 図4 ルーブリックを用いた2回分の自己評価結果の例. 83.

(9) 84. 特集:イノベーションデザイン論. 5.まとめと今後の課題 ここ数年来、「イノベーション」の言葉はメディアなどにおいて頻繁に大 きく取り上げられており、今後の社会、経済、そして私たちの暮らしを豊か にするために必要とされている。しかし、その実現は当然のことながら容易 でなく、挑戦する実践者を育成するための教育の方法と考え方にも、既存手 法の踏襲や改善の積み重ねとは異なる要素がやはり必要であろう。新たな取 り組みには必ず実験的な側面がある。目的に照らして結果を検証し、洗練す ることを繰り返すのは、イノベーティブな事物の創出過程と同じである。 むろん教育に完成は無く、課題は尽きない。本稿では JAIST において現在. 進行中のイノベーションデザイン教育の概要を述べた。新たな取り組みのた め、その都度の結果を検証し、洗練つまり再設計の過程へつなげ、これを繰 り返す活動が重要な意味を持つ。現時点のカリキュラムと活動の目的、学生 へ提示する目的と目標を関係者が継続的に意識し、方向を誤らずに教育内容 の設計を洗練するためのアイデアを発想し、確実に実施していくことが、本 稿で述べたイノベーションデザイン教育を成功させるための要件といえる。 【参考文献】 1)吉川弘之:テクノロジーの行方,岩波書店,1996. 2)グリファン . P.他,三宅ほなみ監訳:21世紀型スキル,北大路書房,2014.. 3)國藤 進:グループによるイノベーションデザイン法,日本認知科学会第32回大会・論文集,. pp. 874-876,2015.. 4)Robert Phaal, Clare Farrukh, David Probert: Roadmapping for Strategy and Innovation: Aligning. Technology and Markets in a Dynamic World, University of Cambridge, Institute for Manufacturing, 2010.. 5)國藤 進,谷口俊平,永井由佳里,他:イノベーションデザイン教育2015への歩み,日本創 造学会第37回研究大会論文集,pp. 55-58,2015.. 6)原田 祥,國藤 進,永井由佳里,谷口俊平:創造技法と3Dプリンタを使用した「ものづ くり」の手法の研究,日本創造学会第37回研究大会論文集,pp. 51-54,2015.. 7)http://www.jaist.ac.jp/innovation_design/activity/ (最終閲覧:2016年12月31日). 8)グリファン . P.他,三宅ほなみ監訳:21世紀型スキル,北大路書房,pp. 21-76,2014.. 9)杉山 成,  義人:アクティブラーニングの学習効果に関する検証,小樽商科大学人文研究, 127,pp. 61-74,2014..

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参照

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