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弄便・食便を示す重度知的障害児への機能的アセスメントに基づいた介入

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-22 164

-弄便・食便を示す重度知的障害児への機能的アセスメントに基づいた介入

○小林 正人 愛知県心身障害者コロニー療育支援課 【目的】 弄便は、大便を手で触れたり自分の体や壁などに擦 りつけたりする行動を、食便は、大便を口に入れて食 べる行動を指す。こうした問題行動を直接的な介入で 低減しようとするアプローチに対し、適切な行動を形 成する“Positive Behavioral Support”(Koegel et al.,1996)(以下PBS)と呼ばれるアプローチが近年中 心となりつつある。PBSは( 1 )アセスメントに基づ いた環境的要因と問題行動の機能に関する仮説に直接 的に関連している、( 2 )問題行動に代わるスキルの 教授や環境調整を含み前向きである、( 3 )介入の成 果として、( a )代替スキルの増加、( b )問題行動の 減少、( c )生活の質の改善、などの視点が含まれる (Bambara & Knoster,1998)。

本事例では、弄便・食便行動のある児童に対し、機 能的アセスメントを実施し、問題行動の機能を推定し た。そして、代替行動としてトイレでの排泄行動を形 成することで弄便・食便行動の消失に成功したので報 告する。また、弄便・食便の低減について、機能的ア セスメントに基づき代替行動を形成することの有効性 を検討した。なお、今回の発表にあたり対象児の保護 者から書面で同意を得ている。 【方法】 1 .対象児 対象児(以下 A )は重度知的障害と自閉スペクトラ ム症の診断のある支援当時 7 歳の男児。有意味語はな いが「座って」など簡単な指示に応じることができた。 X 年 4 月に知的障害児施設(以下施設)に入所。 X 年 5 月より弄便と食便が見られるようになった。 X 年 6 月、ほぼ毎回、弄便と食便が見られるようになったた め施設から発表者に要請があり、支援を開始した。 2 .アセスメントと介入方針 1 )アセスメント 施設職員へのインタビューの結果、次のことが明ら かになった。 A は主に、オムツに排泄していた。職員 が食事前などにトイレに誘導すると自分でズボンとパ ンツを下ろして排尿することが可能で、排便は 3 から 4 日に 1 回の頻度で見られていた。施設内の人目のつ かない場所で隠れて弄便し、職員に見つかると急いで 便を口に入れる姿が見られた。職員は基本的には弄 便・食便行動やその痕跡を発見すると、 A を風呂場へ 連れて行き体を洗った。 A は水と石けんを好み、風呂 場では喜ぶ姿が見られていた。また、自由時間では雑 誌をちぎったもの、壁の塗装を剥がしたものなどを口 にし咀嚼していた。 A が生活する棟内で自由に手に取 れるものはぬいぐるみ、ボール、雑誌など。誤飲や器 物破損につながる物は、鍵付きの棚の中にしまわれて いた。水道、テレビ、DVDプレーヤーも職員が携帯す る鍵がなければ使用できない環境であった。 2 )介入方針 アセスメントの結果、自由に手に取れる玩具や活動 のレパートリーが限られている環境が確立操作とな り、弄便・食便行動が手や口内への感覚刺激によって 強化されていると考えられた。雑誌の切れ端などを口 へ入れ咀嚼する行動があったことからも、特に咀嚼す る際に口内で生じる感覚刺激が強化子として機能して いたと推察した。また、 A が弄便・便食を人目の付か ない場所で行っていることから、弄便・食便に注目獲 得や入浴要求の機能はないと考えられた。そこで、口 内への感覚刺激を強化子として、代替行動(トイレで の排泄)を形成することとした。強化子は、便に似て 柔らかく触感を楽しめるものとして寒天を使用した。 3 .インフォームドコンセント 保護者に介入方針の説明および食物アレルギーの有 無を確認し、寒天使用の許可を得た。 4 .介入手続き 1 )記録方法 トイレでの排便、弄便、食便、トイレでの排尿、失 禁の回数を記録した。記録用紙はトイレに設置し、棟 に配置されている職員が記録を行った。 2 )ベースライン トイレへ定時誘導し、排泄成功時には言語的賞賛を 行った。 3 )介入期 1 (オムツ廃棄練習・誘発刺激) 保護者からアレルギー情報と寒天の使用許可を得る までの期間に次の介入を実施。( 1 )排便:便に模し た小麦粉粘土入りのオムツをバケツに捨てることがで きたら言語的賞賛を行った。( 2 )排尿:便器に座っ た際に性器を水で濡らす。排尿に成功したら言語的賞 賛を行った。 4 )介入期 2 (寒天強化) トイレでの排便・排尿にティースプーン 1 杯分の寒 天と言語的賞賛を随伴させた。強化スケジュールは職 員と相談しながら連続強化、VR2、VR3、VR5と漸進的 に変更した。 5 )介入期 3 (反応コスト)

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-22 165 -介入期 2 の手続きに加え、弄便・食便が見られたら 提供する予定だった寒天をトイレに流して廃棄した。 6 )プローブ期 トイレでの排泄に対し寒天の随伴を中止し、言語的 賞賛のみ随伴させた。 【結果】 排便行動の推移をFig1.に示した。ベースラインで は見られず、介入期 1 (オムツ廃棄練習)でもほとん ど生起しなかったトイレでの排便が、介入期 2 (寒天 強化)では増加し、85日以降はほぼ毎日みられるよう になった。同時期より弄便・便食は見られなくなり、 介入期 3 (反応コスト)で 1 度生起して以降は、プ ローブ期およびフォローアップ期においても 1 度も生 起しなかった。 排尿行動の推移をFig2.に示した。ベースラインお よび介入期 1 (誘発刺激)では、トイレ排尿よりも失 禁の回数が多い日がほとんどであった。介入期 2 (寒 天強化)以降失禁が低減し、66日以降は失禁が多くて も日に 3 回以下に減り、ほとんどの日でトイレ排尿の 回数が失禁の回数を上回った。プローブ期を通して失 禁は 3 回のみで、フォローアップ期では失禁は 1 度も みられなかった。 【考察と課題】 本事例では機能的アセスメントを行い、弄便・食便 が主に口内の感覚刺激により強化されていると推定し た。そして、類似の強化子として寒天をトイレでの排 泄に随伴させた結果、( 1 )トイレでの排泄が増加し、 ( 2 )弄便・食便および失禁が低減し、( 3 )正の強化 に晒される機会が増え生活の質が改善した。このこと から、弄便・食便の低減について、機能的アセスメン トに基づき代替行動を形成することの有効性が確認さ れた。課題として、環境豊穣化法(Carr, J. E., & Wilder, D. A. ,1998)による予防的介入の必要性が あげられる。また、介入により代替行動が20回近く生 起した日があり過剰とも言える。トイレで排泄する以 外に正の強化を受ける行動レパートリーの拡大が必要 だと思われる。

参照

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