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高特性心配者に対する心的イメージトレーニングの効果検証

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-51 222

-高特性心配者に対する心的イメージトレーニングの効果検証

○友利 七海1)、神谷 信輝2)、伊藤 義徳3) 1 )琉球大学大学院人文社会科学研究科、 2 )琉球大学教育学部、 3 )琉球大学人文社会学部 【目的】 心配は,「否定的な情緒を伴った,制御の難しい思 考やイメージの連鎖であり,不確実で否定的な結果が 予測される問題を心的に解決する試み」と定義される (Borkovec, Robinson, Pruzinsky, & Depree, 1983)。

心配は思考の表象形態のうち,言語表象が優位であ り,心的イメージ表象が少なく,抽象的であることが 示されてきた(e.g., Borkovec & Inz, 1990)。この メカニズムについて,Borkovec, Alcaine, & Behar (2004)は,心配をよく用いる者はネガティブな心的 イメージが喚起されると,そこで引き起こされる情 動・身体反応を回避するために,言語表象思考を多用 するという,心配の認知的回避理論を提唱している。 つまり,回避的対処方略として言語的思考を続けると い う こ と が, 心 配 の 本 質 で あ る。 そ こ でSkodzik, Leopold, & Ehring(2017)は,高特性心配者を対象に 心 的 イ メ ー ジ の 活 用 を 促 進 す るTMI(Training in Mental Imagery)を開発し,一定の効果を実証した。 しかし,追試研究は未だ行われていないため,本邦に おいてその実用可能性が確認されることは,心配にお ける思考とイメージの役割に関する通文化性を示唆す る上でも,意義は大きいと言える。 そこで,本研究では,Skodzik et al.(2017)を参 考に,日本の大学生を対象としたTMIを開発し,心配 傾向の高い大学生に実施し,その効果を検討すること を目的とする。仮説は,( 1 )状態心配,状態不安, ネガティブ気分,心配から生じる支障度,言語心配の 得点が減少する,( 2 )イメージの鮮明性,ポジティ ブ気分,心配の抑制,イメージ心配の得点が増加する, とした。 【方法】 実験参加者:国立大学生を対象に,金築・金築(2010) を参考に,Penn State Worry Questionnaire日本語版 (PSWQ:本岡・松見・林,2009)の得点が平均値以上 であり,実験参加の承諾を得られたTMI群15名(男性 7 名,女性 8 名,平均年齢=20.64歳,SD =2.06),統 制群16名(男性 4 名,女性12名,平均年齢=20.75歳, SD =1.39)の計31名であった。 TMI:原著者の許可を得て,Skodzik et al.(2017) に可能な限り忠実な日本語版TMIを作成した。 4 つの モジュールを含む60分の個別セッションと,自宅及び 日常場面で行う 1 週間のHWからなる個別プログラムで あった。プログラム内で使用するシナリオのみ,予備 調査にて日本の大学生向けに新たに作成したものを用 いた。 特性指標:特性心配:PSWQ(本岡他,2009),特性不安: 新版State-Trait Anxiety Inventory-Form JYZ(肥田 野・福田・岩脇・曽我・Spielberger,2000)の特性 不安項目(STAI- T ),イメージの日常的使用頻度: Visual Imagery Style Questionnaire(VISQ:川原・ 松岡,2009)のうち物体イメージ尺度12項目を使用し た。

状態指標: 状 態 心 配:R e p e t i t i v e T h i n k i n g Questionnaire日本語版(RTQ:田中・杉浦,2014)よ り 心 配 に 関 連 す る13項 目, イ メ ー ジ の 鮮 明 性: Vividness of Visual Imagery Questionnaire(VVIQ: 長 谷 川,1993), 気 分:Positive and Negative Affect Schedule日 本 語 版(PANAS: 佐 藤・ 安 田, 2001),状態不安:新版STAI(肥田野他,2000)の状態 不安項目(STAI- S ),Skodzik et al.(2017)を基に 作成した心配の抑制・心配から生じる支障度に関する 尺度( 5 件法),心配スタイル(言語心配(通常の心 配)・イメージ心配(イメージを適用させた心配))を 測定する尺度(11件法)を使用した。 手続き:TMI群には,pretest後,60分の個別セッショ ン と 1 週 間 の H W に 取 り 組 ん で も ら っ た。 ま た, pretestから 1 週間後にposttest,posttestから 3 週 間後にfollow-up測定を行った。統制群には,pretest 後にTMIプログラムは実施せず,TMI群と同様の期間を 空けてposttest,follow-upの測定を行った。 研究倫理:インフォームドコンセント,プライバシー の保護等を事前に参加者に伝えるなど,本大会の倫理 的配慮チェックリストは全て遵守して実施された。 【結果】 群の等質性の検討: 2 群間において,STAI- T 得点の 差が有意傾向であった。また,状態指標において, pretestのRTQ得点とSTAI- S 得点に,群間で有意な差 が見られたため,本研究ではこの影響を考慮に入れた 共分散分析を行った。 各状態指標における介入の効果の検討:各状態指標を 従属変数,群と測定段階を独立変数とし,共変量に STAI- T 得点,pretestRTQ得点とSTAI- S 得点を投入し た共分散分析を行った。その結果,まずVVIQ得点に有 意 な 交 互 作 用 が 認 め ら れ た(F( 2 ,58)=9.40,p

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-51

223 -<.01,η2=.25)。単純主効果検定を行ったところ,

TMI群 に お い てpretestよ り もposttest(t(26) = -2.82,p <.05,d =-.79),pretestよりもfollow-upにおいて有意に得点が高くなっていた(t(26)= -4.72,p <.01,d =-.78)。次に,心配の抑制得点 において有意な交互作用が認められ(F( 2 ,58)= 5.59,p <.01,η2 =.16),単純主効果検定を行った ところ,TMI群が統制群よりもposttestの心配の抑制 得点が有意に高かった。また,TMI群においてpretest よ り も p o s t t e s t(t(2 6) = - 3 . 7 0,p < . 0 1,d = -1.32),pretestよりもfollow-up(t(26)=-2.42, p <.05,d =-.79)において有意に得点が増加してい た。 3 つ目に言語心配得点においても有意な交互作用 が 見 ら れ(F( 2 ,58)=8.00,p <.01,η2 =.27), 単純主効果検定を行ったところ,TMI群がpretestから posttestにかけて言語心配得点の有意な減少を示して いた(t(26)=3.42,p <.01,d =1.51)。また,心配 から生じる支障度得点において,有意な交互作用が見 られた(F( 2 ,58)=6.11,p <.01,η2 =.17)。単 純主効果検定を行ったところ,follow-upにおいてTMI 群が統制群よりも心配から生じる支障度得点が有意に 高 か っ た(F( 1 ,84)=9.79,p <.01,η2 =.27)。 その他の指標においては,有意な差は得られなかった (ポジティブ気分:F( 2 ,58)=1.80,n.s. ,η2 =.06; ネガティブ気分:F( 2 ,58)=0.45,n.s. ,η2=.02; イメージ心配:F( 2 ,58)=0.22,n.s. ,η2 =.01)。 【考察】 本研究において,まずTMI群におけるイメージの鮮 明性の増加およびTMIが気分に影響を及ぼさない点 は,Skodzik et al.(2017)と同様の結果であった。 このことから,TMIは西洋と東洋どちらの文化圏にお いても,イメージの鮮明性を向上させることが出来, 心配の言語表象に偏った思考を修正することに対して 有効であるのと同時に,個人の気分をむやみに変化さ せるような効果をTMIには有していない可能性を示唆 している。一方,本研究では,TMIによって心配の抑 制得点の有意な増加と言語心配得点の有意な減少が見 られたものの,イメージを適用した心配の量が有意に 増加しなかったことは,Skodzik et al.(2017)とは 異なる結果となった。このことから,本邦ではTMIに よって,心配している事柄だけでなく,心配事以外の 事柄も,日常的に心的イメージを用いて考えることに 対して参加者の注意資源が割かれたために,「心配す る」という思考活動自体が減少した可能性がある。そ して,follow-up時の心配からの支障度得点について, TMI群の方が統制群に比べて有意に高かったことは, TMIプログラムが終了してしばらく経過すると,普段 の思考スタイルに戻るために,心配から生じる支障を 感じやすくなるのではないか,と考えられる。本研究 の限界点として,サンプルサイズが小さいことが挙げ られる。次に,群の等質性が確保できなかったため に,本邦における状態心配および状態不安に対する TMIの効果を検討することが出来なかった点が挙げら れる。よって,今後の研究では十分なサンプルサイズ と群の等質性を確保する必要がある。 TMIプログラムは,イメージエクスポージャーとは 異なり,必ずしも心配している事柄に焦点を当てるわ けではないため,侵襲性が低い点が利点と言える。そ のため,臨床群・非臨床群に関わらず適用が可能であ ると考えられる。また,心配は全般性不安障害の中核 症状であるほかに,他の不安障害にも関わる症状であ るため(American Psychiatric Association, 2013), 心配の特徴である抽象的思考を具体的な思考へと修正 していくTMIの適用の幅はさらに広範なものと言え る。

【主な引用文献】

Skodzik, T., Leopold, A., & Ehring, T. (2017) Effects of a training in mental imagery on worry: A proof-of-principle study. Journal of Anxiety Disorders , 45, 24-33.

参照

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