1 2017年11月25日
シンガポール行政視察報告書
甲府市議会議員神山玄太
視 察:シンガポールリゾート・ワールド・セントーサ(Resorts World Sentosa) マリーナ・ベイ・サンズ(Marina Bay Sands)
日 時:2017年11月20日、21日 テーマ:MICE統合型リゾートの運営について MICEとは、企業等の会議(Meeting)、報奨、研修旅行(Incentive travel)、国際機関・ 団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event) の頭文字をとった言葉で、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称です。 マリーナ・ベイ・サンズの国際会議場にて 国際会議や学会、国際的なイベントなどが開催されることで国内外から大勢の人が集まり、 また観光旅行に比べ参加者の消費額が大きいことから、MICE誘致が盛んになってきてい ます。日本では2009年に観光庁がMICE推進アクションプランを策定し、2010年 を日本のMICE元年(Japan MICE Year)として、様々な施策を展開させてきています。
2 政府は、(1)ビジネス・イノベーションの機会の創造、(2)地域への経済効果、(3)国・ 都市の競争力向上、の3つをMICEの主な効果と捉え、MICEの戦略的誘致を行ってい ます。 2027年にリニア中央新幹線駅が開業する甲府市、山梨県では、現在、リニア駅周辺のま ちづくりについて構想を発表し、取り組みを進めているところですが、まだ具体的な駅前整 備の姿が見えていない状況です。 そこで、さまざまな駅前整備の案が語られる中で、国際会議場、MICE、統合型リゾート (IR)など話題に出るため、MICE統合型リゾートの最先端と言われるシンガポールで、 リゾート・ワールド・セントーサ(Resorts World Sentosa)、マリーナ・ベイ・サンズ (Marina Bay Sands)の取り組みを調査し、意見交換を行ってきました。
今回のシンガポールでのMICE統合型リゾートの調査は、積極的に誘致を進めたいからと いうことではなく、リニア中央新幹線駅周辺整備を考えるうえで、MICE統合型リゾート 誘致が1つの案となりえるか、その可能性と不可能性、期待と懸念の両方を探り、今後、考 えていくきっかけを得ようと思い、ゼロベースからの調査を行いました。
(リゾート・ワールド・セントーサ Resorts World Sentosa)
リゾート・ワールド・セントーサ(Resorts World Sentosa)は、2010年に開業。シ ンガポール政府が2005年にカジノ解禁を決定したことを受け、マレーシアのゲンティ ン・グループ(Genting Group)が約60億米ドルを投資して開発されました。
3 セントーサ島の北部に、約49万㎡(東京ディズニーランドとほぼ同じ広さ)という広大な 敷地内にユニバーサル・スタジオ、海洋水族館、水のテーマパーク、約 1,600 室を有する ホテル、カジノ、最大約 6,500 名が収容できる宴会場を備えたコンベンションセンター、 そして様々なジャンルのレストランなどすべてが 1 か所に集約された統合型リゾート施設 です。
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国際会議場については、リゾート・ワールド・セントーサのMICE部が窓口となり、マネ ジメントを担当、国際会議からダンスなどの競技の会場となり、ほぼ毎日、稼働している状 況です。
5 (マリーナ・ベイ・サンズ Marina Bay Sands)
マリーナ・ベイ・サンズ(Marina Bay Sands)は、2010年にラスベガス・サンズ・ コーポレーションが56億米ドルかけて建設したMICE統合型リゾート施設です。1つの 施設内に、宿泊施設、ショップやレストラン、会議室や展示会場などの大型 MISE 施設、 またミュージカルシアターや美術館、カジノなどが設置されています。 マリーナ・ベイ・サンズの開業効果として、2010年4月から2015年12月までの間 に38億米ドルをシンガポール政府に納税(いわゆる法人税とカジノ入場税)、また22億 米ドル相当の製品やサービスを調達した実績があります。シンガポール全土で約 46,000 人の雇用を創出し、シンガポールの観光客数はサンズが開業する前後で比較して、2009 年の 970 万人から 2015 年には 1,520 人に達しています。サンズだけでも、年間約 4,500 万人が利用し、ホテルの稼働率は 96%となっています。 マリーナ・ベイ・サンズ最上階のインフィニティ・プール。利用は宿泊者限定だが調査のため説明していただいた
6 マリーナ・ベイ・サンズは、幅約340m、高さ約200m(地上55階建て)に及ぶ大規 模施設で、敷地面積は約20.6万㎡(延床面積は約57万㎡)となり、3つの宿泊棟と最 上階のプールと展望台、またMICE施設、ショッピング・カジノ、シアターの3つの建物 などで構成されています。 国際会議場については、マリーナ・ベイ・サンズの約200名のMICEチームが運営して います。MICE棟は地下1階から5階までの間に2階を除いて5つのフロアーがあり、全 部で12万㎡の広さがあります。地下1階と1階は展示場、3階、4階は大小さまざまな会 議室、5階は大宴会場となっています。展示場は、1フロアーで 15,000 ㎡の広さがあり、 1階、1階合計すると最大で 30,000 ㎡のとなります。3階、4階は区分けを変えて、大 小さまざまな会議ができるようになっています。5階は最大 8,000 ㎡の広さにところに 6,600~8,000 人までの宴会ができるようになっており、コンサートやボクシングの試合 も行われています。MICE棟だけで、年間70から75ほどの展示会が開かれ、3,500 もの会議、イベントが行われています。 もちろん、マリーナ・ベイ・サンズのMICEの運営は、運営会社の創意工夫、営業努力に より、国際会議場・国際展示場等の集客施設等を一体的に整備・運営しています。
7 カジノについては、プレーイングエリアは 15,000 ㎡でマリーナ・ベイ・サンズ全体の3% の面積にすぎませんが、マリーナ・ベイ・サンズ全体の売り上げの70%をカジノで占めて います。シンガポール政府は国民のカジノ利用にいくつかの制限を設けており、21歳以上 であること、自己申告、家族による申告があった場合はカジノに入場できず、生活保護受給 者等もカジノに入ることはできません。 マリーナ・ベイ・サンズ全体で 9,500 人ほどのフルタイム労働者の雇用を生み、3,000 名ほどのショップ店員が働いています。 (MICE統合型リゾートを調査してみて感じたこと) シンガポールにおいては、MICEの取り組みがうまく定着していることがよくわかりまし た。その理由として、官民の連携、役割分担がうまく取れているということがあります。 政府はMICEを誘致するという方向性を決定し、国民に理解を求め、MICE施設が建設 できるように法整備等を進めていく、そして民間事業者はその方向性に応じて事業に投資し MICE施設を建設、創意工夫、営業努力により運営していくことでうまくいっています。 まさにMICE施設の運営は経営のプロである民間が行うことで、MICE施設利用の回転 率を上げていることがわかりました。 また、シンガポールの国土自体が東京23区と同じくらいの面積しかない上に、徹底してコ ンパクトなまちづくりが行われてきたこともMICEの取り組みを成功させた要因である と感じました。オフィス街と国際会議を行える場所が近接しており、シンガポールに進出し
8 てきている海外企業がオフィスを構える場所から、“わざわざ移動して”国際会議を行うと いう感じではなく、“仕事空間のとなり”で国際会議を行えるという感じになっていました。 まちがコンパクトだからこそ、空港からのアクセスも容易で、本当に便利です。 マリーナ・ベイ・サンズの目の前にはオフィス街、ダウンタウンが広がる。タクシーで5分とかからない。 それ以外としては、シンガポールの4つの公用語の1つに英語が入っていることも国際会議 の誘致に貢献している点だと思います。 また統合型リゾートとして、リゾート・ワールド・セントーサ、マリーナ・ベイ・サンズと もに、ショッピング、アミューズメント、食事、アトラクションなど施設内で完結できる観 光施設があるばかりか、前述のようにシンガポールのまち自体がコンパクトなため、さまざ まな観光施設、食事、買い物に移動しやすく、都市全体が統合型リゾートであるような印象 を持ちました。 リゾート・ワールド・セントーサ、マリーナ・ベイ・サンズそれぞれの民間によるMICE 統合型リゾートの運営が戦略的ですごいのですが、合わせてシンガポールの国自体がコンパ クトなまちづくりがなされていることもMICE運営の成功に拍車をかけているようでし た。 シンガポールのまちを訪問してみて、コンパクトなまちづくりの強みを改めて大きく感じま した。 多くの統合型リゾートに付きのもののカジノですが、調査の際に説明を受け、そのすごさと 怖さをともに感じました。
9 すごさ、という面は税収です。先にも書きましたが、マリーナ・ベイ・サンズは、2010 年4月から2015年12月までで、38億米ドルをシンガポール政府に納税しています。 納税はいわゆる法人税とカジノ入場税(シンガポール国民と永住者がカジノを利用する際に かかります)ということになりますが、法人税の原資となるマリーナ・ベイ・サンズの売り 上げの約70%がカジノの収入ということになりますので、カジノで多くの税収を得られる ことがわかります。 その一方で、売り上げが高いということは、それだけカジノで“負ける”人がいるというこ とです。カジノでは気楽にコイン1枚から賭けているように見えますが、コイン1枚の価格 として 2,500 円から 10,000 円までありますので、それだけの高額を“一瞬で”賭けて いることになります。怖さ、という部分はここにあります。高額を“一瞬で”賭けられると いうことはとてつもなく怖いと感じます。賭けで勝つ、負けるは個人の責任と言ってしまえ ばそれまでですが、賭け事への依存症も問題となる中、カジノ誘致を推し進めることへの怖 さを強く感じました。シンガポール政府は国民と永住者に対してカジノ入場税(100 シン ガポールドル)を課すばかりか、21歳以上であること、自己申告、家族による申告があっ た場合はカジノに入場できず、生活保護受給者もカジノに入ることはできないと決められて います。 (リニア駅周辺にMICE統合型リゾートを誘致できるか) シンガポールの事例を調査して、MICE統合型リゾートが成功する要因としては、官民の 連携、役割分担がうまく取れているということが重要であるということがわかりました。政 府が国民の理解を得、法整備を進める、一方で民間事業者は事業に投資し、創意工夫、営業 努力により運営していく、というサイクルが合わさることが重要です。 民間の営業努力で採算を取っていくためには、それだけの経済規模、需要などが必要となっ てきます。シンガポールは東京23区と同じくらいの広さの土地(約719k ㎡)に約56 0万人が住んでいます。甲府と比較すると、212.14k ㎡の土地に約19万人しか住んでい ないわけですから、まったく違うことがわかります。 このような環境で、MICE施設に対して民間事業者が投資し、経営していくことが可能か、 ということがまず大きな課題になると考えます。また行政としても市民に対してMICE施 設を誘致するということに対して説明し、理解を求める必要が生じます。 MICE施設が成功するためには運営会社が独立採算制で運営できることにかかっていま す。今回、シンガポールの事例を調査した上でリニア中央新幹線駅周辺に誘致すべきかどう かについては、MICE施設を運営する会社がその場所で採算が取れる経営できるかどうか
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ということが重要になってきますので、まずは民間事業者の動きを注視していくことが大切 であると感じました。