• 検索結果がありません。

多様な環境に立地するアマモ場内外の堆積物を調査対象として大規模な比較研究を実施する必要がある 技術的な観点では 今年度のアマモ場堆積物の採取作業を通して 柱状堆積物の取得技術に若干の改良の余地があることが判明した アマモ場堆積物は粒径分布が細粒側に寄った軟泥質であることが多く かつアマモ自体の根茎が

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "多様な環境に立地するアマモ場内外の堆積物を調査対象として大規模な比較研究を実施する必要がある 技術的な観点では 今年度のアマモ場堆積物の採取作業を通して 柱状堆積物の取得技術に若干の改良の余地があることが判明した アマモ場堆積物は粒径分布が細粒側に寄った軟泥質であることが多く かつアマモ自体の根茎が"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

40 本研究では、堆積物中に貯留されている有機炭素の起源を推定するための有力 な手法として、DNAバイオマーカーを検出・定量する方法を検討している。別項に おいて詳細に報告されているように、今年度においては試験的にアマモの核DNA とクロロプラストDNAに対する遺伝子バイオマーカーをアマモ場内外の堆積物試 料に適用することを試みた。本項においてはそのごく定性的な結果のみを次の図 8において紹介した。 アマモ場内堆積物である#2-2においては2 mの柱状試料全体から、また#1-3にお いても100 cmまでの全区間から、アマモ由来DNAが検出されている。アマモ場の縁 辺部に当たる#1-2においても不連続ながら100 cmまでの区間で検出されている。 アマモ場外堆積物の内#1-1においてはアマモ由来遺伝子マーカーは検出されてい ないが、#2-1においては表層部と100 cm以深において検出されている。#2-1の地 点においては100 cmの堆積物が堆積した時点(約2500年前)まではアマモ場であ ったか、アマモ場に近接していた可能性がある。 図8.ハチ干潟と生野島沖のアマモ場内外の堆積物柱状試料における有機 炭素含量とδ13Cの分布図に、アマモ由来DNAバイオマーカーが検出された 部位(緑色の矢印)を重ねて示したもの. アマモ由来DNAバイオマーカーの残存量と有機炭素貯留量の間には明瞭な関係 が見られないが、DNAバイオマーカーが有機炭素の起源の解明のために極めて高い ポテンシャルを持っていることは明らかである。 4.今後の問題点 今年度までの調査結果により、アマモ場を伴う、或いは伴わない、浅海域海洋 堆積物における炭素隔離機構に関して、隔離容量を規定する主要な要因と、その 容量を満たす有機炭素の供給源について概要を明らかにすることができた。しか し実際の個別の海洋環境において、有機炭素の隔離容量と供給源・供給量とがど のように規定されているのかを予測可能とするためには、今後調査例数を増やし、

(2)

41 多様な環境に立地するアマモ場内外の堆積物を調査対象として大規模な比較研究 を実施する必要がある。 技術的な観点では、今年度のアマモ場堆積物の採取作業を通して、柱状堆積物 の取得技術に若干の改良の余地があることが判明した。アマモ場堆積物は粒径分 布が細粒側に寄った軟泥質であることが多く、かつアマモ自体の根茎が障害物と なるため、単純な堆積物コア採取法を用いると容易に攪乱が生じる。特にアマモ 由来DNAのような種特異的バイオマーカーを使って有機炭素の起源解析を実施す る場合、コア採取時の表層からの引き込みによるコンタミネーションが深刻な問 題となる。こうした問題点を解消するために今後なお技術的な検討と改良を必要 としている。 第三に、DNAバイオマーカー等から得られる有機炭素の起源生物に関する情報を 定量化する方法の開発と、定量化情報をさらにその起源生物に由来する貯留有機 炭素量に換算する換算式の確立が必要となる。DNAバイオマーカーの残存量に関す る定量的情報を取得する方法に関しては、その感度と信頼性を向上させる方法と ともに、遺伝子検出技術開発の担当者によって開発が進められている。バイオマ ーカー情報を貯留有機炭素量に換算する方法に関しては、堆積物の密度分画法、 同位体比分析、繊維質多糖類分析等を組み合わせて信頼性の高い換算式を確立す る手順を検討中である。 最後に、今年度の調査結果から、DNAバイオマーカーが4000年以上前のものと推 定される堆積物からも検出されていることに関して、どのようなメカニズムでDNA がそのような長期間堆積物中に残留し得たのかという問題が生じる。DNAを含む各 種有機化合物の堆積物中での存在形態に関して詳細な解析が必要であるとともに、 同一堆積層の中でも有機物の種類により異なる堆積年代の炭素が含まれている可 能性もあり、有機物の種類ごとの年代決定をより詳細に実施する必要もある。 5.当該年度の成果の発表(主要な論文、取得した(申請中の)特許等を記述) Adachi H, Yamano H, Miyajima T, Nakaoka M (2010) A simple and robust method for coring unconsolidated sediment in shallow water. Journal of Oceanography 66: 865-872.

(3)

42 課題番号(1)-④ 課題名:藻場・干潟の炭素吸収量調査および試料分析 課題担当者: (独)水産総合研究センタ- 北海道区水産研究所 海区水産業研究部 資源培養研究室 長谷川夏樹(主担当者) 海区産業研究室 鬼塚年弘, 同 瀬戸内海区水産研究所 生産環境部 環境動態研究室 中川倫寿 藻場・干潟環境研究室 吉田吾郎・堀正和・浜口昌巳 同 東北海区水産研究所 海区水産業研究部 海区産業研究室 村岡大祐 同 西海区水産研究所 海区水産業研究部 沿岸資源研究室 八谷光介・清本節夫・吉村 拓 1.目的 藻場・干潟の炭素吸収量評価のための藻場・干潟炭素循環モデルの構築にあたっ て,そのモデル検証や新たなモデルパラメーターを設定するなどモデルの改良を行 うため,採水調査と各形態の炭素の定量によって枯死流出期のアマモ場の炭素動態 を明らかにする。 2.方法 アマモの枯死流出期にあたる 2010 年 10 月から 11 月の小潮日に,北海道厚岸海 域(1),宮城県鮫浦湾域(2),千葉県富津海域(3),広島県安芸湾域(4), 長崎県橘湾域(5)のアマモ場およびその周辺域で,朝と昼(または早朝と夕方) の 1 日 2 回の採水調査を行った。採水調査では,バケツを使用しての表層から採取 とニスキンまたはバンドン採水器を使用しての底層 (または中層)から採取した (調査の詳細は,課題番号(2)-①~⑤に記載)。 試水の一部は,バケツや採水器からフィルターを組み込んだチューブで 100 ml バイアル瓶 2 本に収容し,塩化水銀溶液 200 µl を注入固定し,分析まで保存した。 また,残りの試水はボトルに回収し,その後 25 mm 径のグラスファイバーフィルタ ー(GF/F フィルター Whatman Plc.)で 200~300 ml を吸引濾過し,濾液を 50 ml ポ リ瓶に分注した。濾過後のフィルターと濾液は直ちに冷凍保存した。 朝と昼または朝と夕方に各地点の各層で採集された上記のバイアル瓶収容の試 水は2本一組となっており,一方を全炭酸量測定に,他方を全アルカリ度測定に供

した。全炭酸量 (以下DIC , µmol kg SW-1) は,CO2 Coulometer (Model 5012, UIC

Inc.) を用いて,電量滴定法によって測定した。また,全アルカリ度(以下TA, µmol

kg SW-1)は,全アルカリ度測定装置 (ATT-05, 紀本電子工業(株)) を用いて測定

した。さらに,これらTA及びDIC,採水調査の際に測定された水温および塩分を

用い(一部はweb公開されている近隣の調査点の観測値を適用),化学平衡の関係か

ら各試料の二酸化炭素分圧(以下pCO2, µatm) を算出した。算出にあたっては,

Lewis & Wallace (1998) のプログラム http://cdiac.ornl.gov/oceans/co2rprt.html

を用い,Merbach et al. (1973) を改変した Dickson & Millero (1987) の平衡定数

を使用した。

(4)

43

時間以上さらし脱炭酸した。その後,フィルターは再び乾燥器内で乾燥させ,ス ズ箔で包埋し,元素分析計(Flash EA 1112, Series Thermo Electron Corp.) を用

いて粒状態有機炭素量 (以下 POC, mg-C L-1) を測定した。濾液は,全有機体炭素 計 (TOC-V CSH, 島津製作所(株)) を用いて湿式酸化法により溶存態有機炭素濃 度を(以下 DOC, mg-C L-1) を測定した。 3.結果 (1)北海道厚岸海域 本海域の調査点は河口域から湾域に展開しており,塩分は 2.3~33.3 で大きな変

異がみられた(付表 1)。TA と DIC も,それぞれ 983~2285 µmol kg SW-1 882~2078

µmol kg SW-1で大きな空間変異が見られた (付表 1, 図 1)。pCO2は, 251~523 µatm の変異があり(付表 1, 図 2),表層では塩分と負の相関 (朝 / 昼: r = -0.90 / -0.75, P < 0.001 / 0.01) がみられたが,底層 (中層)では明瞭な傾向は確認されなか った (朝 / 昼: r = -0.46 / -0.17, P = 0.13 / 0.60, 図 3)。 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 DI C  µa tm 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 13 Station Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 DI C  µat m (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass 図1. 北海道厚岸海域の各St.におけるDICおよび アマモ生産量. (a) 表層, (b)底層または中層. 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 p CO 2 µa tm 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 13 Station Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 p CO 2 µa tm (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass 図2. 北海道厚岸海域の各St.におけるpCO2およ びアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層または中層. 200 300 400 500 600 1500 1700 1900 2100 p CO 2 µat m DI C  µm ol  kg SW ‐1 200 300 400 500 600 1500 1700 1900 2100 15  20  25  30  35  p CO 2 µat m DI C  µm ol  kg SW ‐1 Salinity (a) Surface Morning Afternoon ●TCO2×pCO2 (b) Bottom Morning Afternoon ●TCO2×pCO2 図3. 北海道厚岸海域における塩分とDICおよび pCO2の関係. (a) 表層, (b)底層または中層. S1 S2 S5 S7 S9 S10 1 km S6 S4 S3 S8 図4.北海道厚岸海域St.3, 6,  8における朝‐昼に かけての水塊の移動.  赤矢印で各St.の流向流 速データを積算した移動,  黒矢印は変化量の算 出に際して想定した朝‐昼 (7hr) の水塊の移動. *付表は巻末に添付した。

(5)

44 POC は,昼と朝の調査での各項目を同地点間で比較すると,朝に比べ昼の調査時 にpCO2が低下する地点が多かったが,塩分や水温も同時に変化している地点もあ った (表 1)。採水調査にあわせて実施したアマモ場内 (St.3, 6, 8) の流速の断続的 観測によって,朝と昼の調査間でSt.3 では東に 200 m 程度,St.6 では南に 600 m 以上水塊が移動していることが明らかとなり,St.8 では往復流によって朝と昼の調 査でほぼ同じ水塊を観測していることが明らかとなった (図 4)。 POC と DOC は,それぞれ,0.10~0.55,1.05~3.02 mg-C L-1で,湾域のSt.10-13 間やそれらの朝-昼間での変動が小さかったのに対して,アマモ場の広がる湖域で は最大値 (0.55 mg-C L-) が観測されるなど大きな変動がみられた(付表 1, 図 5)。 このうち,DOC は塩分と負の相関 (r = -0.93~-0.83, P < 0.001, 図 6) がみられた のに対して,POC では同様な傾向は検出されなかった (r = -0.51~-0.25, P = 0.09~0.43, 図 6)。 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  2.5  3.0  Ee lg ra s s  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 PO C ,  DO C  mg ‐C  L ‐1 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  2.5  3.0  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 12 13 Station Ee lg ra s s  p roduc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 PO C ,  DO C  µat m (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass 図5. 北海道厚岸海域の各St.におけるPOC,DOCおよ びアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層または中層. ●POC  ×DOC ●POC  ×DOC 0.0  1.0  2.0  3.0  0.0  0.2  0.4  0.6  0.8  1.0  DO C  mg ‐C  L ‐1 PO C  mg ‐C  L ‐1 0.0  1.0  2.0  3.0  0.0  0.2  0.4  0.6  0.8  1.0  15  20  25  30  35  DO C  mg ‐C  L ‐1 PO C  mg ‐C  L ‐1 Salinity (a) Surface Morning Afternoon ●POC    ×DOC (b) Bottom Morning Afternoon ●POC   ×DOC 図6. 北海道厚岸海域における塩分とPOCおよび DOCの関係. (a) 表層, (b)底層または中層. (2)宮城県鮫浦湾域 調査海域の各採水層の塩分と水温は,それぞれ 32.9~33.3 と 15.4~15.9°C で変

異が小さかった (付表 2)。TA は,朝の表層で 2208 ± 10 µmol kg SW-1(mean ±

1SD) 昼の表層で 2210 ± 3 µmol kg SW-1, 昼の底層で 2212 ± 3 µmol kg SW-1 同水準だったが,朝の底層では 2218 ± 6 µmol kg SW-1と高かった。一方,DIC は朝の底層,昼の表層と底層でそれぞれ,1986 ± 1, 1986 ± 4, 1989 ± 3 µmol kg SW-1で同水準だったが,朝の表層では1957 ± 15 µmol kg SW-1St.4 (1957 µmol kg SW-1)と St.6 (1961 µmol kg SW-1) で低かった (付表 2, 図 7)。このためpCO2 は朝の表層で335 ± 15 µatm, 朝の底層で 341 ± 6 µatm となったのに対して,昼 の表層で 352 ± 3 µatm, 昼の底層で 357 ± 7 µatm となり,多くの St.で朝に比べ 昼に上昇した (付表 2, 図 8)。なお,本海域では,波浪で船上での試料の収容が困 難であったため,採水後,岸に移送し,そこで収容・固定作業が行われた。

(6)

45 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 Eel g ra ss  pr od uc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 DI C    µm o l  kg SW ‐1 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 1 2 3 4 5 6 Station Eel g ra ss  pr o d u c ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 DI C  µm o l  kg SW ‐1 (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass 図7. 宮城県鮫浦湾域の各St.におけDICおよびア マモ生産量. (a) 表層, (b)底層. *St.2の生産量 (shoot‐1d‐1) を適用.

*

*

*

*

図8. 宮城県鮫浦湾域の各St.におけるpCO2およ びアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層. *St.2の生産 量 (shoot‐1d‐1) を適用. 0  100  200  300  400  500  600  700  200 300 400 500 600 E e lgras s  pr od uc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 p CO 2 µa tm 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 1 2 3 4 5 6 Station E e lgras s  p rod uc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 p CO 2 µa tm (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass

*

*

*

*

POC は,0.13~0.41 mg-C L-1で昼調査のアマモ場内のSt.で比較的高い値が観測 されたのに対して,DOC は,0.55~0.78mg-C L-1St.間あるいは朝-昼間で変異が 小さかった (付表 2, 図 9)。 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 PO C ,  DO C  mg ‐C  L ‐1 Station (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass 0  100  200  300  400  500  600  700  0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 Ee lg ra ss  pr odu c ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 Station (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass

図9. 宮城県鮫浦湾域の各St.におけるPOC,  DOCおよびアマモ生産量.  (a) 表層, (b)底層. *St.2の生産量 (shoot‐1d‐1) を適用.

*

*

*

*

●POC  ×DOC ●POC  ×DOC (3)千葉県富津海域 本海域では,悪天候のため朝の調査が行われなかったため,昼の調査のみの結果 となっている。昼調査の塩分は, 25.6~32.4 であった (付表 3)。一方,千葉県水 産総合研究センター 東京湾海況情報 22-08 富津ベタの水温は 19.0°C であった。 TA は表層で 2177 ± 4 µmol kg SW-1,底層で 2172 ± 3 µmol kg SW-1と変異が小 さかったが,DIC は,両層で岸よりの St.1 や 2,さらには沖域の St.5 や 6 で St.3 や4 に比べて低い傾向にあった (付表 3, 図 10)。これに伴って,pCO2はSt. 1 や

(7)

46 5, 6 で St.3 や 4 に比べ低く その傾向は表層で特に顕著であった (付表 3, 図11)。 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 Ee lg ra ss  pr o d u c ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 DI C  µmo l  kg SW ‐1 0  100  200  300  400  500  600  700  1500 1700 1900 2100 1 2 3 4 5 6 Station Ee lg ra ss  pr od uc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 DI C  µm o l  kg SW ‐1 (a) Surface Afternoon Eelgrass (b) Bottom Afternoon Eelgrass

*

*

図10. 千葉県富津海域の各St.におけるDICおよび アマモ生産量. (a) 表層, (b)底層. St.4‐6にはノリ網 が敷設. *St.1と2における平均生産量 (shoot‐1d‐1 より推定. 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 Ee lg ra ss  p ro duc ti o n mg ‐C  m ‐2 d ‐1 p CO 2 µa tm 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 1 2 3 4 5 6 Station Eel g ra ss  p rod uc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 p CO 2 µa tm (a) Surface Afternoon Eelgrass (b) Bottom Afternoon Eelgrass

*

*

図11. 千葉県富津海域の各St.におけるpCO2およ びアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層. St.4‐6にはノリ 網が敷設. *St.1と2における平均生産量 (shoot‐1 d‐1) より推定.  POC は,沖域の St. 5 と 6 の表層で 0.6 mg-C L-1程度であったのに対して,同St. の底層を含むその他の地点では0.3 mg-C L-1以下であった。DOC は,多くの地点 で1 mg-C L-1程度であったが,St.4 の底層では 0.58 mg-C L-1と局所的に低かった (付表 3, 図 12)。 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 PO C ,  DO C  mg ‐C  L ‐1 Station 0  100  200  300  400  500  600  700  0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 Ee lg ra ss  pr od u c ti o n mg ‐C  m ‐2 d ‐1 Station

図12. 千葉県富津海域の各St.におけるPOC,  DOCおよびアマモ生産量.  (a) 表層, (b)底層. St.4‐6に はノリ網が敷設. *St.1と2における平均生産量 (shoot‐1d‐1) より推定.

* *

* *

(a) Surface Afternoon Eelgrass ●POC  ×DOC (b) Bottom Afternoon Eelgrass ●POC  ×DOC (4)広島県安芸湾域 調査海域の各採水層の塩分は, 29.9~33.5 であった (付表 4)。一方,広島大学 竹原ステーションによる竹原沖の観測水温は 18.9°C であった。TA は,朝の表層 で 2159 ± 2 µmol kg SW-1,昼の表層で 2159 ± 3 µmol kg SW-1, 朝の底層で 2159 ± 3 µmol kg SW-1,昼の底層で2160 ± 3 µmol kg SW-1と変異が小さかった(付表 4)。DIC は,St.1 で朝の表層と底層でそれぞれ,1936~1948, 1936~1945 µmol kg

(8)

47 SW-1であったが,昼の表層と底層で1930~1945,1926~1944 µmol kg SW-1で多 くのSt.で低下し,特に St.1 表層と底層で大きく低下した (付表 4, 図 13)。これに 伴い,pCO2は朝から昼にかけてSt.1 で顕著に低下した (付表 4, 図 14)。 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 DI C  µmo l kg SW ‐1 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 1 2 3 4 5 6 Station Ee lg ra ss  pr od uc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 DI C  µmo l kg SW ‐1 (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass * * * * 図13. 広島県安芸湾域の各St.におけるDICおよ びアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層. *St.3の生産 量 (shoot‐1d‐1) を適用. 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 p CO 2 µa tm 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 1 2 3 4 5 6 Station Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2d ‐1 p CO 2 µat m (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass * * * * 図14. 広島県安芸湾域の各St.におけるpCO2およ びアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層. *St.3の生産 量 (shoot‐1d‐1) を適用. POC は,0.14~0.71 mg-C L-1で大きく変動したが,高い値はアマモ場内の St. で観測された。同様に,DOC も 0.80~1.74 mg-C L-1と大きく変動したが,高い値 はアマモ場内外のSt.で観測された (付表 4, 図 15)。 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 PO C , DO C  mg ‐C  L ‐1 Station 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 Ee lg ra ss  pr o duc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 Station

図15. 広島県安芸湾域の各St.におけるPOC,  DOCおよびアマモ生産量.  (a) 表層, (b)底層. *St.3の生 産量 (shoot‐1d‐1) を適用. (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass (5)長崎県橘湾域 調査海域における CTD 観測の結果,早朝 (St.2-3 間) と夕方 (St. 6) の塩分と 水温の変化はそれぞれ0 と 0.2°C で小さかった (付表 5)。TA は,早朝 (表層: 2204 ± 5, 底層: 2203 ± 5 µmol kg SW-1)から夕方 (表層: 2208 ± 5, 底層: 2208 ± 2 µmol kg SW-1) で微増したが,DIC は早朝 (表層: 1950 ± 3, 底層: 1950 ± 5 µmol kg SW-1) と夕方 (表層: 1939 ± 2, 底層: 1937 ± 5µmol kg SW-1) で微減し,St.1 の底 層で1926 µmol kg SW-1となりもっとも低かった (付表 5, 図 16)。このため,pCO2 も早朝 (表層: 365 ± 13, 底層: 366 ± 4 µatm) と夕方 (表層: 338 ± 5, 底層: 340 ± 5 µatm) で微減し,St.1 (表層: 390,底層: 414 µatm) でもっとも低かった (付表 5, 図 17)。

(9)

48 0 100 200 300 400 500 600 700 1500 1700 1900 2100 Ee lg ra ss  pr od uc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 DI C  µm o l kg SW ‐1 0  100  200  300  400  500  600  700  1500 1700 1900 2100 1 2 3 4 5 6 Station Ee lg ra ss  pr oduc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 DI C  µmo l kg SW ‐1 (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass * * ** ** 図16. 長崎県飯香浦海域の各St.におけるDICお よびアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層.  *岸, **沖 における生産量を適用. 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 Ee lg ra ss  pr o d u cti o n mg ‐C  m ‐2 d ‐1 p CO 2 µa tm 0 100 200 300 400 500 600 700 200 300 400 500 600 1 2 3 4 5 6 Station Ee lg ra ss  pr o duc ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 p CO 2 µa tm (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass * * ** ** 図17. 長崎県飯香浦海域の各St.におけるpCO2お よびアマモ生産量. (a) 表層, (b)底層.  *岸, **沖 における生産量を適用. POC は,多くの地点で 0.3 mg-C L-1程度であったが,朝の調査ではSt.1 の表層 で0.94 mg-C L-1となり局所的に高い値が観測された。DOC は 0.34~0.86 mg-C L-1 とSt.間,朝-昼間で大きな変異がみられた。 (付表 5, 図 18)。 0 100 200 300 400 500 600 700 0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 PO C , DO C  mg ‐C  L ‐1 Station 0  100  200  300  400  500  600  700  0.0  0.5  1.0  1.5  2.0  1 2 3 4 5 6 Ee lg ra ss  pr odu c ti on mg ‐C  m ‐2 d ‐1 Station

図18. 長崎県飯香浦海域の各St.におけるPOC,  DOCおよびアマモ生産量.  (a) 表層, (b)底層. *岸, **沖における生産量を適用. (a) Surface Morning Afternoon Eelgrass ●POC ×DOC (b) Bottom Morning Afternoon Eelgrass ●POC ×DOC

*

*

**

**

本調査は,全国のアマモ場におけるアマモなどの一次生産にともなう炭素吸収に よる水柱の各形態の炭素項目の変動把握を目的に実施した。しかし,海域によって アマモ場の面積や生育地が大きく異なり,それによって調査スケール設定や各項目, 特に炭酸系項目に影響を与える塩分や水温の変異幅も大きく異なるため,まず,炭 酸系項目については海域別に考察を行う。 - 炭酸系項目 - (1)北海道厚岸海域 調査対象としたアマモ場が広がる厚岸湖はその北西からの数十 ton s-1の河川水 流入によってTA に大きな影響をあたえる塩分の空間変異と潮汐に伴うその時間変 異が存在する。St.3, 6, 8 での流向流速の観測によって,採水調査時には St.3 や 8 では水塊の移動は限定的であったが,もっともアマモ現存量が大きい St.6 の水塊 は,朝-昼の調査間に 600 m 以上南下したことが明らかとなった。また,St.6 では,

(10)

49

塩分も3 以上変化しており,この地点の炭素吸収量評価に際して朝と昼の各項目の

直接比較は意味をなさないことが明らかとなった (表 1)。

表1. 北海道厚岸海域における水質項目の変化(昼‐朝,同地点比較)

Afternoon ‐Morning

Station ΔTemp ΔSalinity ΔPOC ΔDOC ΔTA ΔDIC Δp CO2

°C mg‐C L‐1 mg‐C L‐1 µmol kgSW‐1 µmol kgSW‐1 µatm

Surface 1 ‐0.7 ‐18.0 0.19 0.87 ‐699 ‐764 ‐483 2 ‐2.0 ‐11.3 0.18 0.67 ‐504 ‐392 93 3 2.1 1.1 0.11 ‐0.59 49 35 ‐10 4 0.5 0.2 0.19 ‐0.08 ‐41 ‐21 56 5 1.0 0.0 ‐0.10 0.07 ‐24 ‐8 68 6 ‐2.5 ‐3.3 ‐0.09 0.35 ‐217 ‐188 ‐60 7 0.4 ‐0.1 ‐0.12 0.32 ‐29 ‐20 29 8 0.8 1.4 ‐0.04 ‐0.17 41 10 ‐40 9 0.3 ‐0.1 ‐0.06 ‐0.19 ‐30 ‐40 ‐30 10 0.1 0.0 0.17 0.06 ‐17 ‐29 ‐33 12 0.0 0.3 0.01 0.14 16 3 ‐20 13 ‐0.2 ‐0.5 0.02 0.04 ‐4 ‐11 ‐21 Bottom (Middle) 1 ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ ‐ 2 0.1 ‐3.1 0.15 ‐0.20 ‐120 ‐148 ‐133 3 1.2 ‐2.4 0.14 0.23 ‐205 ‐218 ‐123 4 0.6 0.0 0.27 ‐0.07 ‐48 ‐74 ‐65 5 0.3 0.6 ‐0.07 ‐0.14 ‐23 ‐17 28 6 ‐0.2 ‐3.8 ‐0.31 0.38 ‐214 ‐174 ‐19 7 0.5 ‐0.2 ‐0.07 0.06 ‐61 ‐25 102 8 0.3 1.1 ‐0.10 ‐0.37 30 ‐13 ‐84 9 0 ‐0.3 ‐0.06 ‐0.12 ‐32 ‐36 ‐23 10 0.6 0.1 0.13 ‐0.03 ‐20 ‐6 32 12 0.4 0.5 ‐0.04 0.05 26 2 ‐32 13 ‐0.5 0.6 0.04 ‐0.13 9 8 19 そこで,St.6 の北に位置する St.4 (朝)と St.6 (昼)を比較し変化量(Δ)を算出した (表 2)。また,アマモ場での変化量との比較を目的に,塩分を指標に St.2 表層 (昼) とSt.1 表層 (朝)の変化量を算出し,流入河川水の変化量とした。さらに,塩分等 の変化が少ない湾域のSt.12, 13 (表層と中層) のそれぞれの変化量をアマモ場の影 響のない水柱の変化量とみなした。その結果,河口域での pCO2や DIC の変化は 確認されなかったが,アマモの生育が確認された5 調査点中,表層 3 地点,底層 4 地点で低下が確認され (表層: -10~-91 µatm, 底層: -65~-123),その低下幅は,湾 域の水柱での変化幅 (+19~-32 µatm)に比べて大きかった。したがって,厚岸海域 では,枯死流出期でもアマモ場が炭素吸収によって日中の DIC および pCO2を低 下させていると考えられる。枯死流出期にあるため群落高は低く表層にはアマモは 達していないが,多くのアマモ場調査点で表層に比べアマモ植生中の底層で DIC とpCO2の低下が大きい。また,表層で確認された塩分とpCO2の負の相関が,底 層では検出されず,特に日中の底層で不明瞭であった。このような表層と底層の差 からもアマモの影響が推察されるが,各点におけるΔpCO2やΔDIC とアマモ生産 量との関係性は明瞭ではなかった。一方,湖内のSt.では塩分変化をともなわない 大幅なTA の低下が確認されており,湖内で盛んなカキ養殖も炭酸系項目に影響を 与えていることが示唆された。

(11)

50

表2. 北海道厚岸海域における水質項目の変化(昼‐朝, 比較するSt.の変更を含む)

Afternoon ‐Morning

Station ΔTemp ΔSalinity ΔPOC ΔDOC ΔTA ΔDIC Δp CO2

°C mg‐C L‐1 mg‐C L‐1 µmol kgSW‐1 µmol kgSW‐1 µatm

2‐1S 1.9 0.4 0.00 ‐0.18 20 11 0 3‐3S 2.1 1.1 0.11 ‐0.59 49 35 ‐10 3‐3B 0.6 0.0 0.27 ‐0.07 ‐48 ‐74 ‐65 4‐4S 0.5 0.2 0.19 ‐0.08 ‐41 ‐21 56 4‐4B 0.6 0.0 0.27 ‐0.07 ‐48 ‐74 ‐65 5‐5S 1.0 0.0 ‐0.10 0.07 ‐24 ‐8 68 5‐5B 0.3 0.6 ‐0.07 ‐0.14 ‐23 ‐17 28 6‐4S 0.9 1.5 0.03 ‐0.22 17 ‐40 ‐91 6‐4B 3.0 1.1 0.03 ‐0.23 28 ‐37 ‐81 7‐7S 0.4 ‐0.1 ‐0.12 0.32 ‐29 ‐20 29 7‐7B 0.5 ‐0.2 ‐0.07 0.06 ‐61 ‐25 102 8‐8S 0.8 1.4 ‐0.04 ‐0.17 41 10 ‐40 8‐8B 0.3 1.1 ‐0.10 ‐0.37 30 ‐13 ‐84 12‐12S 0.0 0.3 0.01 0.14 16 3 ‐20 12‐12M 0.4 0.5 ‐0.04 0.05 26 2 ‐32 13‐13S ‐0.2 ‐0.5 0.02 0.04 ‐4 ‐11 ‐21 13‐13M ‐0.5 0.6 0.04 ‐0.13 9 8 19 (2)宮城県鮫浦湾域 当該海域では,多くのSt.で,ΔpCO2プラスとなり,朝に比べ昼にpCO2が上昇し た (表 3)。このうち表層での pCO2の上昇は DIC の増加によるものであったが, 底層での pCO2の上昇は,TA の低下によるものであった。ΔDIC は,アマモ場外 のSt. 4-6 にくらべアマモ場内の St. 1-3 で上昇幅が小さく一部では低下もみられ, アマモ場が DIC の挙動に何らかの影響を与えたことが推察された。ただし,調査 地のアマモの群落高は 50 cm 程度で表層に達していないが,表層と底層の変動パ ターンの違いは確認されなかった。 表3. 宮城県鮫浦湾域における水質項目の変化(昼‐朝) Afternoon ‐Morning

Station ΔTemp ΔSalinity ΔPOC ΔDOC ΔTA ΔDIC Δp CO2

°C mg‐C L‐1 mg‐C L‐1 µmol kgSW‐1 µmol kgSW‐1 µatm

Surface 1 ‐0.1 ‐0.1 0.13 0.04 ‐7 ‐11 ‐12 2 ‐0.2 ‐0.2 0.13 ‐0.02 3 8 6 3 0.0 0.1 ‐0.01 ‐0.10 ‐6 1 12 4 0.0 0.1 ‐0.04 ‐0.16 5 29 45 5 0.0 0.1 ‐0.03 ‐0.10 3 15 25 6 0.0 0.1 0.05 ‐0.07 14 24 25 Bottom 1 0.0 ‐0.1 0.05 ‐0.07 ‐13 ‐8 5 2 ‐0.2 ‐0.1 0.03 ‐0.04 ‐11 0 14 3 ‐0.2 ‐0.1 0.10 ‐0.15 ‐14 0 19 4 0.0 0.0 ‐0.01 ‐0.08 3 3 2 5 ‐0.1 ‐0.1 0.01 ‐0.16 ‐5 3 11 6 0.0 0.0 ‐0.04 ‐0.12 ‐5 12 31

(12)

51 (3)千葉県富津海域 当該海域での調査は昼のみであったが,St.間で pCO2に大きな変異がみられ, アマモ場が形成される岸よりのSt.1 や 2 で 30 µatm 程度低かった。さらに,沖域 のSt.5 や 6 では,30 µmol kg SW-1程度低いpCO2が観測され,それに伴ってpCO2 も低く,その傾向は表層でより顕著 (-100 µatm 程度)であった。これら St.周辺に はノリ養殖施設が敷設されており,ノリ生産に伴ったpCO2の低下であると推察さ れる。 (4)広島県安芸湾域 比較的大きなアマモ場内に位置する St.1 で朝に比べ昼に DIC が-20 µmol kg SW-1程度低下し,それに伴ってpCO240 µatm 程度低下した (表 4)。 表4. 広島県安芸湾域における水質項目の変化(昼-朝) Afternoon ‐Morning

Station ΔTemp ΔSalinity ΔPOC ΔDOC ΔTA ΔDIC Δp CO2

°C mg‐C L‐1 mg‐C L‐1 µmol kgSW‐1 µmol kgSW‐1 µatm Surface 1 0.0 0.0 0.15 ‐0.88 0 ‐18 ‐38 2 0.0 0.0 0.03 ‐0.30 ‐2 ‐1 1 3 0.0 0.0 0.08 0.04 ‐2 1 7 4 0.0 0.2 0.01 ‐0.07 1 3 5 5 0.0 ‐0.1 0.01 0.25 3 ‐4 ‐17 6 0.0 2.8 0.01 ‐0.01 ‐3 ‐2 0 Bottom 1 0.0 0.0 0.04 ‐0.59 ‐2 ‐20 ‐39 2 0.0 0.0 0.49 ‐0.17 ‐4 2 11 3 0.0 0.0 ‐0.31 ‐0.11 9 1 ‐16 4 0.0 ‐0.1 0.00 ‐0.08 4 ‐2 ‐13 5 0.0 ‐2.5 ‐0.02 ‐ 0 1 4 6 0.0 0.2 ‐0.02 0.47 1 ‐6 ‐12 これらの変化は,アマモ場外のSt.4~6 の ΔDIC (-6~+3 µmol kg SW-1) や ΔpCO2 (-17~+11 µatm) に比べ十分に大きい。しかし,同じアマモ場内に位置する St.2 や, アマモの小パッチに位置するSt.3 ではこのような低下は確認されなかった。また, 調査期のアマモは倒伏などにより群落は表層に達していなないが,表層と底層の変 化に明瞭な差が確認されなかった。このため,アマモ場での炭酸系項目の変化がア マモによるものであるのかの判断は難しい。 (5)長崎県橘湾域 当該海域では,多くの St.で朝に比べ昼に DIC が低下し,それに伴ってpCO2も低 下した (表 5)。これらの低下は,水柱での一次生産などによるものと推察される が,平均葉長約 30 cm のアマモの生育する St.1 の底層での低下が大きかった。し かし,アマモZostera marina の南限に近い九州海域では,一般にアマモ場の面積 が小さく,本調査対象のアマモ場の面積も約 0.2 ha と小さかった。このため,ア マモ場内外の水は速やかに入れ替わると考えられ,アマモ場内の水塊もアマモの 影響をどの程度累積的に受けたものであるかの判断が難しい。

(13)

52 表5. 長崎県飯香浦海域における水質項目の変化(昼‐ 朝)

Afternoon ‐Morning

Station ΔTemp ΔSalinity ΔPOC ΔDOC ΔTA ΔDIC Δp CO2

°C mg‐C L‐1 mg‐C L‐1 µmol kgSW‐1 µmol kgSW‐1 µatm Surface 1 0.2 0.0 ‐0.67 ‐0.21 3 ‐19 ‐37 2 0.2 0.0 ‐0.09 0.01 ‐ ‐ ‐ 3 0.2 0.0 0.16 ‐0.01 6 ‐10 ‐25 4 0.2 0.0 0.15 ‐0.32 12 ‐10 ‐34 5 0.2 0.0 0.10 0.20 7 ‐8 ‐21 6 0.2 0.0 ‐0.04 0.03 ‐2 ‐10 ‐12 Bottom 1 0.0 0.0 ‐0.13 ‐0.44 ‐ ‐ ‐ 2 0.0 0.0 ‐0.04 ‐0.23 3 ‐22 ‐43 3 0.0 0.0 0.02 ‐0.23 7 ‐10 ‐25 4 0.0 0.0 0.05 0.14 6 ‐12 ‐29 5 0.0 0.0 0.02 ‐0.22 2 ‐12 ‐22 6 0.0 0.0 0.01 0.06 7 ‐8 ‐22 – POC, DOC - 本年度の調査は,生産期を経てアマモ場にアマモなどの同化産物が蓄積され,放 出されると考えられる秋の枯死流出期に実施した。一般にいわれるようにアマモ場 の生産性が沿岸域の中でも特別に高く,それらの同化産物が分解,または細粒化に よって放出されている場合,周辺の海域に比べアマモ場の水柱のPOC が高くなっ ていることが予想された。実際,今回の調査でもいくつかの海域 (北海道,宮城, 広島)では,アマモ場内 St.において他の St.よりも高い POC 値が観測された。ただ し,これら海域においても,同じアマモ場内でも変動が大きく,同地点でも朝-昼 間で大きく異なっていた。アマモ場では,粒状有機物の活発な形成の一方で,群落 の発達によって流速や波浪の低下とそれに伴う縣濁粒子を沈降させる。ただし,閾 値以上の流動条件ではそれらの再縣濁が起こる。本年度実施した調査頻度や環境項 目の観測だけでは,POC の挙動の把握や評価は難しいのが現状であろう。 一方,DOC に関しては,アマモ場における一次生産に伴った放出によってアマ モ場内のSt.で高まることが予想された。しかし,いずれの海域においてもアマモ 場内で特徴的に高い値は検出されなかった。これは,アマモ場の生産量が限定的な 秋の枯死流出期の調査であったためである可能性があるが,一方で,炭酸系項目に 関しても問題となった水塊の移動が影響を与えている可能性もある。特に,北海道 海域では,特異的に高い水準の DOC が観測されたが,DOC は塩分と明瞭な負の 相関があり,河川水由来のDOC がこの海域の DOC の挙動を大きく支配している ことが明らかとなった。したがって,当該海域では,炭酸系項目と同様に,アマモ 場のDOC 挙動への影響評価には,塩分などを指標に河川水由来の DOC の影響除 去が必要不可欠であることが明らかとなった。 このように,本年度の枯死流出期の採水調査では,多くの海域のアマモ場内の St.において朝に比べ昼の DIC やpCO2 が低下する傾向が確認された。しかし,ア

マモ生産量 (mg-C m-2 d-1)と ΔDIC per 1hr (一時間当たりの DIC 変化量, 図 13)

およびΔpCO2 per 1hr (一時間当たりのpCO2変化量,図14) には,いずれの海域

参照

関連したドキュメント

詳細情報: 発がん物質, 「第 1 群」はヒトに対して発がん性があ ると判断できる物質である.この群に分類される物質は,疫学研 究からの十分な証拠がある.. TWA

北陸 3 県の実験動物研究者,技術者,実験動物取り扱い企業の情報交換の場として年 2〜3 回開

題護の象徴でありながら︑その人物に関する詳細はことごとく省か

必要量を1日分とし、浸水想定区域の居住者全員を対象とした場合は、54 トンの運搬量 であるが、対象を避難者の 1/4 とした場合(3/4

としても極少数である︒そしてこのような区分は困難で相対的かつ不明確な区分となりがちである︒したがってその

である水産動植物の種類の特定によってなされる︒但し︑第五種共同漁業を内容とする共同漁業権については水産動

を基に設定するが,敷地で最大層厚 35cm が確認されていることも踏まえ,堆積量評価結果

★分割によりその調査手法や評価が全体を対象とした 場合と変わることがないように調査計画を立案する必要 がある。..