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Title
Effect of extracytoplasmic function sigma factors
on autoaggregation, hemagglutination, and cell
surface properties of Porphyromonas gingivalis
Author(s)
藤瀬, 和隆
Journal
歯科学報, 119(4): 342-343
URL
http://hdl.handle.net/10130/4974
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.目 的 Porphyromonas gingivalisは慢性歯周炎病巣から高頻度で分離され,その発症と進行に重要な役割を果たして いる。本菌が口腔内に定着するためには,温度,酸素,pH 等の周囲の環境ストレスに対して応答することが 必須となる。細菌の環境応答は二成分制御系を始めとする転写因子群,およびシグマ因子により行われてい る。その中で,ECF シグマ因子は,酸化ストレスをはじめとする外界からのシグナルを感知し,ストレス応 答タンパク質遺伝子の転写調節を行う。P. gingivalis は6種の ECF シグマ因子を保有しているが,その機能に ついては未だ不明な点が多い。本研究では,P. gingivalis の変異株を用い,ECF シグマ因子遺伝子が菌体表層 の生理活性および構造に与える影響について解析を試みた。 2.材料および方法
P. gingivalis ATCC 33277株およびその ECF シグマ因子(PGN_0274,PGN_0319,PGN_0450,PGN_0970, PGN_1740)遺伝子にそれぞれエリスロマイシン耐性カセットを挿入した変異株を用いた。ジンジパイン活 性 は,Rgp の 基 質 と し て Benzoyl-L-arginine-p-nitroanilide,Kgp の 基 質 と し て N-(p-tosyl)-Gly-Pro-Lys-4-nitroalinide acetate を用いて測定を行った。自己凝集は振盪下 OD660の測定により評価した。赤血球凝集活性 試験は OD660=1.8の菌体を階段希釈し,1%ウマ赤血球を加え,3時間静置後に判定した。薬剤感受性につい ては,アンピシリン,テトラサイクリン,オフロキサシンの3種の抗菌薬に対する最小発育阻止濃度(MIC)の 測定を行った。また菌体の構造に関しては,透過型電子顕微鏡(TEM)により観察を行った。 3.研究成績および結論 ジンジパインの活性測定の結果,PGN_0274変異株において Rgp,Kgp 共に著明な活性低下が認められた (p<0.001)。それ以外の変異株でも,50%程度の Rgp 活性低下が認められた。PGN_1740変異株では Kgp 活 性の著明な減少を認めた(p<0.001)。自己凝集では,PGN_0274変異株において有意な活性低下を認めた(p< 0.05)。PGN_0274でジンジパイン遺伝子の転写が起こっているという報告がされており,PGN_0274欠損によ り,ジンジパインの菌体外へ輸送に関わる IX 型分泌機構が影響を受けていることが示唆された。赤血球凝集 においても,PGN_0274変異株は活性を失っていた。PGN_1740変異株では,凝集活性が1/2に低下してい 氏 名(本 籍) ふじ せ かず たか
藤
瀬
和
隆
(東京都) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 2146 号(甲第1351号) 学 位 授 与 の 日 付 平成28年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Effect of extracytoplasmic function sigma factors on
autoaggregation, hemagglutination, and cell surface properties of Porphyromonas gingivalis
掲 載 雑 誌 名 PLOS ONE 2017 第12巻 9号 e0185027 2017年
doi:10.1371/journal.pone.0185027 論 文 審 査 委 員 (主査) 田 雅和教授 (副査) 石原 和幸教授 齋藤 淳教授 加藤 哲男教授 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 342 ― 84 ―
た。RgpA,Kgp はプロテアーゼドメインに加え赤血球凝集ドメインを持つことから,赤血球凝集活性の低下 は,ジンジパインの活性低下により引き起こされると考えられた。抗菌薬に対する感受性では,テトラサイク リンおよびオフロキサシンに対する感受性に変化は認められなかったが,アンピシリンに対する感受性は PGN_0274変異株では増加し,PGN_0450,PGN_1740変異株では低下していた。TEM による表層構造の観察 では,PGN_0274の変異株において菌体表層 vesicle の増加と細胞壁部分の厚みの低下が認められた(p< 0.001)。これらの結果から P. gingivalis の ECF シグマ因子は,ジンジパイン活性をはじめとする菌体表層の 病原因子や細胞壁の構造に影響を与えていることを明らかにすることができた。 論 文 審 査 の 要 旨 Porphyromonas gingivalisは,歯周炎の主要な病原体であるが,その定着のプロセスには未だ不明な点が多 い。本研究では P. gingivalis の環境ストレス応答に関わる ECF シグマ因子に注目し,それが細胞表層の生理 活性および細胞壁の構造にどのような影響を与えているかについて解析を行った。その結果,すべての ECF シグマ因子欠損株において,菌体表層の Rgp 活性の低下が認められ,このうち PGN_0274欠損株では Kgp 活 性,自己凝集能,赤血球凝集能,MIC,菌体尿層でのベジクル形成にも影響が認められ,ストレス応答が病原 性にも影響を与えていることを明らかにした。 本審査委員会では,1.欠損株の作成方法について,2.菌体表面のストレスを関知するタンパクの有無, 3.PGN_0274の変異株において Kgp,Rgp 活性の低下に関わるカニズム,そこにおける培養上清酵素活性測 定法の妥当性,4.電子顕微鏡写真の解釈とその差の判定について,5.今後の解析の方向性について質問が 行われた。 欠損株の作成方法については,エリスロマイシンカセットを ECF シグマ因子遺伝子に挿入した欠損株で, 先行論文で作成した株であることが説明された。菌体表面のストレスを関知するセンサータンパクの有無につ いては,現時点で,ECF シグマ因子のセンサーとしては anti-sigma factor がストレスを関知するのが典型的 なものであるが,今回のシグマファクターの中にはそれに相当するものがないものが含まれており,ECF シ グマファクターの反応では,ヒトの細胞のようなレセプタータンパクを持っていないものがある可能性がある と回答された。上清の Kgp,Rgp 活性測定については,培養液の濁度により菌数を測定しているので問題が ないことが説明された。また,PGN_0274の変異株でジンジパイン活性の低下のメカニズムとしては,2種の 酵素共に活性が殆ど認められないこと,過去の論文でこの変異株でのジンジパイン mRNA 発現が認められて いることから,PGN_0274が,ジンジパインの分泌システムに影響を与えている事が考えられると回答がなさ れた。電子顕微鏡写真の解釈とその差の判定については,後日,vesicle の定量および統計解析を行い,論文 に Fig.5として追加すると説明された。今後の解析の方向性については,PGN_0274以外のシグマファクター の機能を解析し,本菌のストレス回避と病原性の関わりについて解析を行うとともに,この阻害を利用した創 薬の可能性の検討を考えていることが回答された。さらに,データ間における差についての表現法,実験方法 の表記,タイトル,論文の構成について指摘があり,後日,修正論文により再度確認が行われた。 以上より,本研究で得られた結果は今後の歯学の進歩,発展に寄与するところ大であり,学位授与に値する ものと判定した。 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 343 ― 85 ―