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電析法で作製したPd-Ni-P 金属ガラスに関する研究 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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氏 名 望月 千裕 博士の専攻分野の名称 博士(工学) 学 位 記 番 号 医工博甲第329号 学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 機能材料システム工学専攻 学 位 論 文 題 目 電析法で作製したPd-Ni-P 金属ガラスに関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授 柴 田 正 実 教 授 川 久 保 進 教 授 鈴 木 章 泰 教 授 和 田 智 志 教 授 奥 崎 秀 典 准教授 山 中 淳 二

学位論文内容の要旨

バルク金属ガラスはアモルファス合金の一種であるため、結晶構造を持たず、高強度、 耐食性が良好、軟磁性体という優れた特性を持つ。また、金属ガラスは過冷却液体領域で 粘性流動特性を示し、凝固時に不連続な凝固収縮を示さない。近年、バルクサイズの金属 ガラスに限らず、材料表面に金属ガラスを成膜した薄膜金属ガラスに関する研究も数多く 報告されている。薄膜の作製方法には真空蒸着法やスパッタ法、電析法などが挙げられる が、設備面、コスト面、量産性を考えると電析法による薄膜金属ガラスの作製は有効な方 法である。本論文では,電析法で作製した金属ガラスの可能性を探るべく,3 元系バルク金 属ガラスの中でも過冷却液体領域が広く熱安定性が高い Pd-Ni-P 金属ガラスを電析法で作 製することを目的として、電析条件の検討を行った。また、作製したPd-Ni-P 金属ガラス の熱安定性を明らかにすることを検討した。 パラジウム、ニッケル、リンそれぞれの電析挙動について基礎的な実験を行い、電析 Pd-Ni-P 作製条件の指針とした。塩化パラジウム、硫酸ニッケル、リン供給源であるホスホ ン酸、さらに、錯化剤であるエチレンジアミン濃度の影響を明らかにするために、それぞ れの溶液中で電流-電位曲線から電析挙動を調べた。塩化パラジウム濃度の増加により、電 流密度は増加し、金属析出量は増加した。またエチレンジアミン濃度を増加させることで

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電流密度は増加したが、電流効率を調べた結果、金属析出量の変化は僅かであり、電流密 度の増加は金属析出以外の副反応による影響が大きいことを明らかにした。硫酸ニッケル 濃度の増加とともに電流密度は増加し、金属析出量は増加した。またエチレンジアミン濃 度を増加させることで電流密度は増加したが、電流効率を調べた結果、電流密度の増加は 金属析出以外の反応による影響が大きいことを明らかにした。ホスホン酸濃度を増加させ ると、ホスホン酸の還元反応に伴い電流密度は増加した。また塩化パラジウム-ホスホン酸 混合溶液においてはホスホン酸濃度を増加させると、電流密度は一旦減少したが、ホスホ ン酸濃度のさらなる増加により電流密度は増加した。電流密度が減少した原因はホスホン 酸添加によるPd-P 析出量の減少によるものであり、電流密度の増加はホスホン酸の還元に よる影響であると推察した。また硫酸ニッケル-ホスホン酸混合溶液においては、ホスホン 酸濃度を増加させると電流密度は増加した。これはホスホン酸の還元による影響であると 推察した。バルク Pd-Ni-P 金属ガラスでガラス形成能が最も高い組成である Pd40Ni40P20 を作製する条件として,Pd-P の電流-電位曲線と Ni-P の電流-電位曲線が近接する条件を検 討することで、電析Pd-Ni-P 金属ガラス作製のための指針を決定した。 電析Pd-Ni-P 金属ガラス作製のための指針に基づき電析 Pd-Ni-P 金属ガラスの作製につ いて検討を行った。また作製した電析 Pd-Ni-P 金属ガラスの基礎物性としてガラス転移温 度、結晶化温度、ガラス形成能について評価した。Pd-P および Ni-P 電析挙動を基に Pd-Ni-P 電析を行った結果、バルクPd-Ni-P 金属ガラスの中で最もガラス形成能が高い Pd40Ni40P20 に近い組成である、電析Pd42Ni37P21および電析Pd43Ni37P20を作製することができた。な お電流密度を変化させることで電析 Pd-Ni-P の組成を変化させることが可能であった。ま た、めっき溶液中の塩化パラジウム濃度、硫酸ニッケル濃度、リン供給源であるホスホン 酸濃度をそれぞれ変化させることで、電析Pd-Ni-P の組成を変化させることが可能である ことを明らかにした。作製した電析Pd-Ni-P は X 線回折による構造解析結果より、アモル ファスであることが確認できた。さらに示差走査熱量測定結果より、Pd 36~57 at%,Ni25

~54 at%,P 17~21 at%の組成範囲でガラス転移温度が確認できたことから、電析 Pd-Ni-P

金属ガラスが形成可能な組成範囲を明らかにした。また電析Pd-Ni-P 金属ガラスの組成範 囲は液体急冷法で作製したバルクPd-Ni-P 金属ガラスの組成範囲と同等な範囲であった。 電析Pd-Ni-P 金属ガラスは組成によりガラス転移温度、結晶化温度、ガラス形成能が異な ることを明らかにした。これも液体急冷法で作製したバルク金属ガラスと同様の傾向であ った。尚Pd40Ni40P20に近い組成においてガラス形成能が最も高くなることを明らかにした。 一方、電析Pd-Ni-P 金属ガラスはバルク Pd-Ni-P 金属ガラスと比較して相対的に結晶化温 度およびガラス形成能が低いことを明らかにした。この原因については今後詳細な検討が

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必要である。 電析Pd-Ni-P 金属ガラスの製品への応用の可能性を検討するために電析 Pd-Ni-P 金属ガ ラスの過冷却液体領域における熱安定性について評価した。パラジウム組成の異なる電析 Pd-Ni-P 金属ガラスとして Pd32Ni48P20,Pd40Ni40P20,Pd55Ni25P20について評価した。電 析 Pd-Ni-P 金属ガラスはパラジウム組成によりアモルファス状態を維持できる時間は異な った。またパラジウム組成により、過冷却液体領域の温度幅は異なるが、過冷却液体領域 が広い電析 Pd-Ni-P 金属ガラスほど、アモルファス状態を維持できる時間は長いことを明 らかにした。尚、過冷却液体の温度幅が広いのは Pd40Ni40P20,Pd32Ni48P20,Pd55Ni25P20 の順であり、アモルファス状態を最も長く維持できたPd40Ni40P20は過冷却液体領域である 603K で 120 分間保持してもアモルファス状を維持できることを明らかにした。

論文審査結果の要旨

本論文は電析法により Pd-Ni-P 金属ガラス薄膜を作製する目的で、電析条件の検討を行 い、作製したPd-Ni-P 金属ガラス薄膜の過冷却液体領域における熱安定性について検討し たものである。 第1章「緒論」では、バルク金属ガラスの特徴に加えて、薄膜金属ガラスの工業製品へ の応用の可能性について説明した上で、本論文の目的を述べている。 第2章「パラジウム、ニッケル、リンの電析挙動」では、パラジウムとニッケルのよう に標準電極電位が1.0V 以上離れている金属を合金化し、かつこれらの組成比が Pd40Ni40P20 となる電析膜作製の可能性を探った。めっき浴成分の濃度変化における電流-電位曲線の評 価結果から、パラジウム、ニッケル、リンの電析に関する基礎特性を明らかにした。パラ ジウム析出量を増加させる要因としては塩化パラジウム濃度の増加および卑な電位の印加 であり、逆にパラジウム析出量を減少させる要因としてはエチレンジアミン濃度の増加お よびホスホン酸濃度の増加である事を明らかにした。一方、ニッケル析出量を増加させる 要因としては、硫酸ニッケル濃度の増加および卑な電位の印加であり、逆にニッケル析出 量を減少させる要因としてはホスホン酸の増加である事を明らかにしたと記している。 第3章「電析 Pd-Ni-P 金属ガラスの作製」では、電流密度及び金属塩の濃度を変化させ ることで、電析膜の組成を制御できることを明らかにした。X 線回折により、作製した Pd-Ni-P 電析膜がアモルファス構造であることを確認した。また、透過型電子顕微鏡による 高分解能像および電子線回折像の詳細確認を行い、微細構造解析においてもアモルファス 構造であることを確認した。アモルファス構造が確認された電析膜について、示差走査熱

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量計による熱分析を行った結果、Pd 36 at%~57at%、Ni 25 at%~54at%、P 17 at%~21at% の範囲において、ガラス転移温度が確認され、電析Pd-Ni-P 金属ガラス薄膜であることが 確認できた。作製した電析Pd-Ni-P 金属ガラス薄膜の結晶化温度は、Pd40at%に近い組成 ほど高く、Pd 組成が高くても低くても結晶化温度は低くなった。この結果はバルク Pd-Ni-P 金属ガラスと同様な傾向であった。一方、電析 Pd-Ni-P 金属ガラス薄膜の結晶化温度は、 バルクPd-Ni-P 金属ガラスの結晶化温度と比較し、相対的に低い値であり、バルク Pd-Ni-P 金属ガラスよりも、熱安定性が低いことを明らかにしたと記している。 第4章「電析Pd-Ni-P 金属ガラスの熱挙動」では、作製した電析 Pd-Ni-P 金属ガラス薄 膜の組成と熱安定性の関係について調べた結果、金属ガラスの特徴であるアモルファス状 態を保持できる時間は電析 Pd40Ni40P20金属ガラス薄膜で最も長く、30 分間等温保持して もアモルファス状態を維持できることが分かった。一方、液体急冷法で作製したPd40Ni40P20 金属ガラスは、120 分間等温保持してもアモルファス状を維持しており、電析法で作製した 金属ガラス薄膜よりも熱安定性が高いことが分かった。作製方法により熱安定性が異なる 原因の1 つとして、電析時に混在した水素ガスなどによる影響を示唆している。 第5章「結論」では、第2章、第3章、第4章で得られた結論を総括している。 以上、本論文は種々の Pd-Ni-P 金属ガラス薄膜を電析法により作製するに成功し、その 電析条件を確立した上で、作製した Pd-Ni-P 金属ガラス薄膜の過冷却液体領域における熱 安定性を明確にしたものであり、工業的に応用していく上で重要な知見を多く含んでいる。 よって、本論文は博士(工学)の学位論文として,十分に価値があると認められる。

参照

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