氏 名 成澤 宏宗 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 医 学 ) 学 位 記 番 号 医工農博 4 甲 第 22 号 学 位 授 与 年 月 日 令和 2 年 9 月 28 日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 専 攻 名 先進医療科学専攻
学 位 論 文 題 名 Total energy intake accounts for the postnatal anthropometric growth of neonates with congenital heart disease
(Total energy intake;TEI は先天性心疾患を持つ新生児の体格 変化を説明する) 論 文 審 査 委 員 委員長 教 授 山縣 然太朗 委 員 講 師 尾畑 純栄 委 員 講 師 三枝 岳志
学位論文内容の要旨
( 研 究 の目 的 ) 新 生 児 診 療 で は 、 栄 養 管 理 は 成 長 と 発 達 に 影 響 を 与 え る 重 要 な 要 素 で あ る 。 理 想 的 な 成 長 発 達 の ため に 子宮 内 胎児 と 同 等の 栄 養量 が 必要 と さ れて い るが 、先天 性 疾 患を 有 する 児 や集 中 治 療 が必 要 な児 で は、理 想 的な 栄 養量 を 摂取 で き てい な い可 能 性が あ る 。先 天 的な 疾 患を 有 す る 児 で は 日 々 の 栄 養 摂 取 状 況 に 変 化 が あ り 、1日ずつの栄養摂取量の評価だけでは栄養 管 理 が 不十 分 であ る 。我 々 は 以前 に 、新 生 児の 栄 養 を評 価 する た めの 新 し いパ ラ メー タ ーと し て 総 エ ネ ル ギ ー 摂 取 量 (TEI)を定義し報告した。 TEIは一定期間で新生児に投与された エ ネ ル ギー 摂 取量 の 総和 で あ り、早産 児 の 体格変化を説明する栄 養 評価 で あ ると 報 告し た。し か し 、これ ま でに 先 天的 な 疾 患を 有 する 児 にお い て 、栄 養 摂取 量 の総 和 を 評価 し た研 究 はな い 。 本 研 究 では 、TEIは先天的な疾患を有する児の栄養管理にも利用できると仮定し、心疾 患 を 有 す る 児 の 栄 養 摂 取 量 を 評 価 す る た め 、 心 疾 患 の 児 が 入 院 し た 最 初 の4週間のTEIを計 算 し 体 格変 化 を説 明 し得 る か を検 討 した 。 ( 方 法 ) 2013年10月1日から2017年1月30日までの間に、山梨大学医学部附属病院のNICUに入院した新生児 に対して、単一施設における後方視的な横断研究を実施した。研究に登録した新生児は、心疾患を有 する群と疾患を有さない対照群に割り当てられた。さらに、心疾患を有する新生児は、1か月以内に手 術を受けた群と受けなかった群に分けて研究した。入院中の新生児の栄養管理は、報告されているレ ビューやガイドラインを参照して作成された当院のNICUのプロトコルに従って行われた。各新生児の栄養管理は、小児科医、小児循環器科医、心臓血管外科医、看護師、栄養士、薬剤師からなる新生 児栄養サポートチームの毎日の検討に基づいて行われた。新生児の毎日の栄養を評価するために、新 生児栄養評価シート(NNA)を作成し、生後4週間の栄養摂取量の総和を計算した。本研究は山梨大 学医学部倫理委員会の承認(1212)のもと行われた。 ( 結 果 ) 研究期間中に合計439例の新生児がNICUに入院し、そのうち104例が研究に参加した。心疾患を有 する群は38例であり、疾患を有さない群は66例であった。38例の心疾患を有する児の中で、6例は心 室中隔欠損、6例は大動脈縮窄症または大動脈離断症、4例は大血管転位症、4例は動脈管開存症、2例 は両大血管右室起始症、その他は総肺静脈還流異常症、ファロー四徴症、肺動脈閉鎖症等であった。 38例の心疾患を有する児の中で20例は最初の1か月以内に手術を必要とし、18例は手術を行わなかっ た。 疾患を有さない児の生後28日TEIは2,916.1 ± 346.4 kcal/kg/28日で、心疾患を有する児のTEIは2,2 08.6 ± 691.0 kcal/kg/28日であり有意差を認めた(P<0.001)。心疾患を有する児において、手術を 要した症例のTEIは1,826.3 ± 570.8 kcal/kg/28日で、手術を要しなかった児のTEIは2,633.4 ± 558. 7 kcal/kg/28日であり有意差を認めた(P<0.001)。また、心疾患を有する児の生後28日までのTEI と体重増加は有意に相関していた(r=0.887、P <0.001)。 ( 考 察 ) 心疾患の新生児の栄養障害は、心不全による体液制限、外科的ストレスによるエネルギー消費の増大、 周術期の新生児壊死性腸炎のリスクによる経腸栄養の制限によるとされている。今回の研究では、心 疾患を有する児のTEIは、疾患を有さない群の75.7%であることが新たに明らかとなった。 また、生後28日以内に手術を要さない児と手術を要した児のTEIを比較したところ、後者の方が低値 であった。生後28日以内に心疾患に対し手術を要した児のTEIは、疾患を有さない児の62.6%、心疾 患を有して手術を要しない児の69.4%であった。心疾患に対し手術を要する児では、心不全および新 生児壊死性腸炎のリスクを避けるため、より強い経腸栄養と水分制限が必要であり、今回の結果を説 明し得る。 また、生後28日間のTEIは、心疾患を有する児の体重増加と強く相関していた。これまでの報告では、 心疾患の新生児はさまざまなストレスのためにエネルギー需要が増加とするとされており、重度の心 疾患の新生児では、栄養摂取量だけでは体重増加に強い影響を与えない可能性があると予想していた。 しかし重症症例も含め、心疾患を有する児においてTEIは体重増加と相関していた。これは適切な時 期での医学的介入と手術により、エネルギー需要の増加を抑制したためであると考えられた。 ( 結 論 ) 生後28日間の心疾患を有する児のTEIは、疾患を有さない児と比較し低値であり、生後1ヶ月の体格 変化に影響を及ぼすことが明らかとなった。TEIの測定により、心疾患の児における栄養状態と体格
変化の関係を実証することができた。今後、電子カルテやAIなどの医療技術の進化により、より詳細 な新生児の栄養管理を行うことが可能となる。本研究の展望として、未熟児、染色体および遺伝子疾 患、先天性の消化器疾患をもつ新生児に関してTEIによる栄養評価を検討し、詳細な医療データを活 用した栄養管理を推進して、新生児医療の発展に寄与することが望ましい。