氏 名 Md. Bodiul Islam
博士の専攻分野の名称 博士(工学)
学 位 記 番 号 医工博甲第421号
学 位 授 与 年 月 日 平成29年9月27日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1 項該当
専 攻 名 グリーンエネルギー変換工学特別教育プログラム
学 位 論 文 題 目 Metal Oxide Hole Transport and Transparent
Conducting Layers for Efficient Planar Lead Halide Perovskite Solar Cells
(効率的な平面鉛ハライドペロブスカイト太陽電池のための金属酸化物正孔
輸送および透明導電層)
論 文 審 査 委 員 主査 教 授 鍋谷 暢一
准教授 村中 司
教 授 和田 智志
教 授 柳 博
客員准教授 柳田 真利
大邸慶北科学技術大学(韓国)教授 Hasuck Kim
学位論文内容の要旨
この研究において、NiOxインターフェース付きの非常に安定した、低温処理さ
れた平面鉛のペロブスカイト(MAPbI3–xClx)太陽電池を開発した。スパッタした
NiOx膜を利用して太陽電池構造を作成した。またアニールやその他の処理の影
響を調べた。スパッタした NiOx ホール輸送層(HTL)の安定性は有機物の HTL
よりも格段に向上した。デバイスの長寿命化の主な要因は、スパッタ堆積され
た多結晶NiOxHTL であることがわかった。NiOx膜の特性はその組成に依存し、
組成はスパッタの条件で容易に制御できることを実験で示した。Ni3+
/Ni2+
比を
高くするとで、NiOxの導電率は高くなるが、光透過率の低下を引き起こす。NiOx
の条件を最適化し NiOxHTL および銀電極を用いることで 15.2%の変換効率を
達成した。さらにNiOxHTL および酸化インジウムスズ(ITO)を使用することで
平均光透過率16%以上、平均赤外透過率 64%以上、電力変換効率 12.5%の半透
明太陽電池を開発した。
論文審査結果の要旨
本学位論文の着目点は、ペロブスカイト構造の太陽電池のホール輸送層(HTL)
に注目したことである。ペロブスカイト太陽電池は作製が容易で安価で電力変
換効率が低くないことから、現在最も普及している半導体結晶の太陽電池と同
じように重要視されている。pn 接合を形成できる半導体太陽電池では光吸収に
よって生成した電子-正孔対を容易に分離することができるが、ペロブスカイト
太陽電池では、電子-正孔対を正負それぞれの電極に移動させることが電力変換
効率に大きく影響する。学位論文の審査ではなぜNiOxをHTL として選んだの
か、その作製条件をどのようにして選んだのかなどが主に質問された。これら
の質問に対してMD. BODIUL ISLAM 氏は丁寧に回答した。ただ、キャリアの
輸送層としては正孔だけではなく電子輸送層(ETL)も必要であるが、回答がすべ
てHTL に関することだけであったので審査委員からは、なぜ ETL については
説明しないのかとの質問があった。これは本質的にETL は ITO やアルミニウム
添加ZnO なので光吸収や導電性がほぼ確立しているのに対し、HTL はまだ改善
の余地が大いにあることを発表中や質問中に説明しなかったことに原因がある。
このため、学位論文の題目に「正孔」(”hole”)というキーワードを入れること
にした。
本論文の大部分は、論文提出者を第一著者とする2 報の学術論文にまとめられ、
学術誌に投稿されている。本研究の成果は、高効率・汎用性太陽電池の実現に
有用である。よって、本論文は博士(工学)の学位論文として適格と認め、合格と
判定した。