【原著】栄養障害型表皮水疱症学童の発育過程と皮
膚症状ならびに親によるケアに関する記述研究
著者名
和田 実里, 中込 さと子
雑誌名
日本遺伝看護学会誌
巻
12
号
2
ページ
2-17
発行年
2014
URL
http://doi.org/10.34429/00004283
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J.Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014
【原 著】
栄養障害型表皮水庖症学童 の発育過程 と皮膚症状
な らびに親 によるケアに関する記述研究
A descriptive study of the development and symptoms of a child with Dystrophic Epidermolysis Bullosa and parental care
和 田 実 里1), 中込 さ と子2)
1)前 山梨 大 学 大 学 院 医 学 工 学 総 合 教 育 部修 士 課 程 2)山 梨 大 学 大 学 院医 学 工 学 総 合研 究 部 成 育看 護 学 講 座
Misato Wada1), Satoko Nakagomi2)
1)Former University of Yamanashi Department of Education Interdisciplinary Graduate School of Medicine and Engineering Master's Course Nursing Science 2)University of Yamanashi Department of Research Interdisciplinary
Graduate School of Medicine and Engineering Division of Medicine Nursing Science
要 旨
表皮 水 庖 症(Epidermolysis Bullosa 以 下EBと 記 す)は 、先 天 的 に皮膚 が脆 弱 で 、わ ず か な刺 激 で 皮 膚 に水 庖 、 び らん 、潰 瘍 を形 成 す る皮 膚疾 患 で あ る。 皮 膚 に起 こ る病 変 の た め 、 そ の症 状 は全 身 に わ た り、 毎 日の 皮 膚 ケ ア を必要 とす る。 しか し、稀 少 疾 患 で あ るた め、 ケ ア方 法 の 集積 が ない。 そ の ため 、 自宅 で の ケ ア を担 う母 親 は試 行 錯 誤 の連 続 で あ り、 患 者家 族 の抱 え る負 担 は多 大 な もの とな っ て い る。 そ こで10歳 の 栄 養 障 害 型EB患 児 と母 親 を対 象 に、 患 児 の 成 長発 達 プ ロ セス な らび に皮 膚 症 状 の 変 化 と家 庭 に お け るケ アの 実際 の 記 述 研 究 を 行 なっ た。 そ の 結 果 、消 化 器 症 状 の影響 か ら体 格 の成 長 に遅 れ が あ っ た。 また 、粗 大 運動 の発 達 に遅 れ を認 め たが 、 そ の 他 の発 達 は概 ね 月齢 相 当で あ った 。 そ して 、成 長 発 達 に よ る生 活 行 動 の変 化 に伴 って皮 膚病 変 も変 化 して い た。 母 親 は こ うい っ た変 化 の 中 で 、患 児 の成 長 を妨 げ な い よ う に ケ ァ内 容 を変容 させ て対 処 を して い た。
今 後 のEBケ ア の課 題 と して 、EB支 援 の ネ ッ トワー ク を構 築 して い くこ と、EB専 門 看 護 師 を養 成 して い く 必 要 が あ る。
キ ー ワ ー ド:表 皮 水 庖 症, 皮 膚 ケ ア, 在 宅 ケ ア, 記 述 研 究, 症 状 管 理
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014
I.諸 言
表 皮 水 庖 症(Epidermolysis Bullosa 以 下EBと 記 す)と は、 表皮 基 底 膜 を構 成 す る分 子 を コー ドす る 遺 伝 子 の 変 異 に よ っ て生 じる難 治性 皮 膚 疾 患 で あ り、 先 天 的 に皮膚 が脆 弱 で 、 わず か な刺 激 で水 庖 、 び ら ん、 潰瘍 を形 成 す る疾 患 で あ り、現 在 の と こ ろ完 全 治 癒 にい た る 治療 法 は ない 。 国 内 の 患 者 数 は推 定 で お よそ 数 千 人 、 重 症 型 は1000人 ほ ど で あ り(2010, 表 皮 水 庖 症 友 の 会DebRA Japan)、 稀 少 難 病 で あ る。 EBの 対 症 療 法 は流 水 洗 浄 、 水 庖 の 穿 刺 ・排 液 と創 傷 被 覆 材(ワ セ リ ンガー ゼ)の 貼付 とい った 局 所 療 法 と、 全 身 管理 と して栄 養 補 給 、 そ の 他 に合 併 症 に 対 す る治 療 が あ る(2011,稀 少 難 治 性 皮 膚 疾 患 に関 す る調 査研 究 班)。 重 篤 な合 併 症 に よ り生 命 の 危 機 が生 じてい る症 例 を 除 き、 これ らの 対 症 療 法 は在 宅 で実 践 可 能 な た め、 ケ アの 場 は 自宅 と な る。 海 外 の 情 況 を見 る と、DebRA Intemationalと い う国際EB 支援 組 織 が世 界 的 にEB研 究 を推 進 して い る他 、EB 患 者 支 援 方 法 の1つ と して ケ ア ハ ウ ス やEB Nurse 教 育 に取 り組 んで い る。 またEB Clinetネ ッ トワ ー
ク に よ り、 本 人 や家 族(介 護 者)、 ケ ア提 供 者 の 経 験 を 集 約 し た Clinical Practice Guide linesの作 成 も 進 ん で い る。 EB患 者 の 繰 り返 され る水 庖 や び らん に対 す る処 置 は1日 も欠 か せ な い 。 わ が 国 で は 自宅 で のEBケ ア は主 た る介 護 者(主 に母 親)と 家 族 が担 っ て い る。 洗 浄 の 仕 方 や、創 傷 被 覆材 の適 用 方 法 や 固定 の方 法 、 日常 生 活 で の 注 意 事 項 な ど、 個 々 のEB患 者 に対 応 した 方 法 は主 た る介 護 者 しか知 り得 ず 、成 し得 な い 状 況 も少 な くない 。 訪 問 看 護 師 や外 来看 護 師 が ケ ア を代 行 し、EB患 者 の アセ ス メ ン トツー ル や 標 準 ケ ア を検 討 した事 例研 究 は皆 無 で あ る。EB患 者 の 皮 膚 ケ ア に は、温 湿 度 等 の環 境 因 子 、 入 浴 な どの 清 潔 習慣 や社 会 支援 体 制 、人 的 資 源 も考 慮 しな けれ ば な らな い。 また 入手 可 能 な創 傷 被 覆 材 に も諸 外 国 との 違 い が あ るた め 、他 国 の ガ イ ドラ イ ンを 日本 の生 活 にそ の まま取 り入 れ る こ とは難 しい。 EB患 者 の ケ ア を 困 難 に させ て い る一 因 に、 新 生 児 期 か ら乳 児期 、幼 児 期 へ の発 達 時 期 に皮 膚 症 状 が 大 き く変 化 し、 合 併 症 が 生 じや す い 点 が あ る。EB 患 児 は、這 い這 い、 歩 行 な どの 粗 大 運 動 の発 達 に応 じて体 幹 を支 え る部 位 が変 化 し、 物 をつ か む な どの 微 細 運 動 の 発 達 と合 わせ て、 外 的 な刺 激 を受 け る部 位 が 変 化 して い く。 この よ う に変 化 が 著 しい小 児 期 に適 切 なケ アが提 供 され な い と、 指 趾 の癒 着 な どの 合 併 症 が 生 じ、 以 降 の 日常 活 動 動 作 に支 障 を きた し うる こ とが 考 え られ る が、 退 院 後 の 日常 生 活 につ い て知 る こ との で き る先 行 研 究 は 日本 に は な い。 難 病 を抱 える患 児 の成 長 発 達 に伴 う問題 を解 決 し て い くに は、 問題 をあ らか じめ 予 測 し、 家 族 と共 に 対 応 策 を 考 え て い か な け れ ば な ら な い(田 代, 2002)。 こ の 実 現 に 向 け て は、 まず 対 象 者 の お か れ て い る状 況 を知 り、 日々 の生 活 に何 が 起 こ って い る か を知 っ た上 で 関 わ っ て い く必 要 が あ る。 そ こ で、 小 児 期 のEB患 児 の 母 親 か ら、 患 児 の 発 育過 程 と皮 膚 症状 な らび に親 に よる ケ ア の実 際 につ い て 聞 き取 り調 査 を行 い 、 発 達 途 上 に あ るEB患 児 の適 切 な看 護 ケ ア を検 討 す る こ と と した。 Ⅱ.研 究 対 象 お よ び 方 法 1 .研 究 協 力 者 DebRA Japan表 皮 水 庖 症 友 の 会代 表 者 を 通 じて 関 東在 住 の10歳 の 栄 養 障 害 型 表 皮水 庖 症 患児 とその 母 親 か ら研 究協 力 が 得 られ た(表1)。 患 児 と両 親 に は、研 究 の主 旨、 手 順 、拒 否 と中 断 の 権 利 、 プ ラ 連絡先:中 込 さ と子 山 梨 火 学 大学 院 医学 工 学 総 合 研 究 部 〒409-3898山 梨 県 中央 市 下 河 東1110 表1 患 児 の プ ロ フ ィ ー ル 年齢 10歳 小 学 校4年 生 。 最 寄 りの 小 学 校 の 病 弱 特 別 支 援 学 級 に 通 学 中 。 性別 女児 病型 分類 栄養 障害 型表皮水萢 症 身 長 ・体 重 117.Ocm、19.8kg(身 長 体 重 は6∼7歳 相 当) 家 族構 成 父 親 、 母 親 、 患 児 、 祖 母 の4人 家 族 。 祖 母 は深 部 静 脈 血 栓 症 に て 通 院 ・内服 中。 主 な介護 者 の状況 主 な介 護 者 は 母 親 。健 康 状 態 は 問題 な し。 利用 して い る社会 資源 訪 問看護制度 乳幼 児医療 費助 成制度 在 宅難治性皮膚 疾患指 導管理料 患 者 ・家族交 流会 3
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn, 12(2) 2014 イバ シー の保 護 等 につ い て 文 書 を用 い て 説 明 し、 同 意 を確 認 した 。 2.デ ー タ 収 集 期 間 平 成24年8月 ∼ 平 成24年11月 3.デ ー タ 収 集 の 場 所 と所 要 時 間 デ ー タ 収 集 は協 力 者 の 自 宅 で3回 行 い 、 初 回 面 接 1.5時 間 、 ケ ア の 参 加 観 察3.5時 間(う ち ビ デ オ 撮 影 時 間 お よ そ80分)、 そ れ ま で の 調 査 内 容 の 補 足 面 接 2.5時 間 を 行 っ た 。 4.デ ー タ収集 内容 と方 法 協 力 者 基 本情 報 は事 前 ア ンケ ー トで収 集 し、 患 児 の成 長 発 達 の経 過 、 これ まで行 っ て きた ケ ア は構 成 お よ び半構 成 面接 と過 去 の記 録 収 集 、 調 査 時 に行 っ て いた ケ ア は半構 成 面接 と参 加 観 察 法 を用 い た(表 2)。 表2デ ータ収 集内容 と方法 収 集 内容 収集方 法 〈 患 児 基 本 情 報 〉 年齢 ・性別 ・病型、現病歴 、既往 歴、生活 リズム 現在 受けてい る治療内容、社 会資 源の利用状況 〈 母 親 基 本 情 報 〉 年齢 、健康状態、就業の有無、生 活 リズム 妊娠中の異常 の有無 〈 家 族 基 本 情 報 〉 家族構成、家族歴、父親 の就業 の 有無 【事 前 ア ン ケ ー ト】 〈患 児 の 成 長 発 達 の 経 過 〉 身長 ・体重、発達の経過 〈 過 去 に行 っ て き た ケ ア 〉 ケアの実施者、使用物 品、手順 ケア方法の根拠 ケアを行 う中での母親の思い 【構 成 及 び 半 構 成 面 接 】 【記 録 の 確 認 】 母子手帳 4歳 までの育児 日記 調査 時までの受診 メモ 病変を撮影 した写真 成長 の様子 をお さめ た ビデオ画像 〈 患 児 の 日常 生 活 動 作 〉 食 事 、 更 衣 、 移 動 、 排 泄 、 整 容 、 入 浴 く 調 査 時 に 行 っ て い た ケ ア 〉 ケ ア の 実 施 者 、 使 用 物 品 、 手 順 、 場 所 、所 要 時 間 ケ ア の 根 拠 、患 児 の 様 子 ・反 応 、 母 親 の様 子 【構成 及び半構成 面接】 【参加 観察法】 【画像 撮影】 5.デ ー タ収 集 の手 順 調 査 前 にあ らか じめ事 前 ア ンケー トを記 入 してお い て も らい 、 初 回調 査 時 に母 親 ・患 児 同席 の も と再 度 研 究 の 内 容 につ い て説 明 し、 同意 の確 認後 、 ア ン ケ ー トの 記入 内容 を確 認 しなが ら母 親 の 半構 成 面 接 を行 っ た。 面接 の 際 に は 協 力 者 の 許 可 を 得 てICレ コー ダー に録 音 した。 ま た、 母 子 手 帳 、4歳 ま での 育 児 日記 、成 長 記 録(写 真 ・ビデ オ含 む)も 協 力 者 の 許 可 を得 た上 で デー タと して提 供 して も らっ た。 2回 目に は 、 ケ アの 参 加 観 察 を行 っ た。 そ の 際 、 協力 者 の 許可 を得 た上 で 、 ビデ オ撮 影 を行 った 。 ま た 、 ケ ア に使 用 してい る物 品 の 写真 撮 影 も行 った 。 そ の他 の母 親 の表 情 や 対応 、患 児 の 反応 や 言 動 、 ケ ア の 内容 は フィー ル ドノー トに記載 した。 3回 目に は、 そ れ まで の 調査 内容 の追 加 ・訂正 事 項 の確 認 の ため の 補足 面接 を行 っ た。 面 接 の際 には 協 力 者 の許 可 を得 てICレ コ ー ダ ー に録音 した。 そ の後 、 全 調 査 内容 を整理 した もの を提示 し、 記 載 内容 の不 足 や 誤 り、 追加 ・削 除事 項 、 掲 載 す る画 像 の確 認 を協 力 者 に 了 承 が得 られ る まで計2回 、 郵 送 で や り取 りを行 った 。 6.デー タの 分 析 方 法 面 接 内 容 は、ICレ コー ダ ー に録 音 した デ ー一タ を を逐 語 録 と して 記 述 した。 逐 語 録 と母 子 手 帳 や 育児 記 録 か ら収 集 した デ ー タに つ い て、日常 生 活 の状 況、 成 長 発 達 、 皮膚 症 状 、 ケ ア につ い て年 齢 ご とに縦 断 的 に整 理 して 内 容 分析 を行 っ た。 参 加 観 察 を行 った 調 査 時 の ケ ア に つ い て は、 実 施 中 の 発 言 内 容 と フ ィ ール ドノ ー トへ の記 載 内容 、 撮 影 した 画像 を合 わせ て物 品 ・手 順 を整 理 した。 7.デ ー タの 信頼 性 の確 保 デ ー タ分 析 にお け る信 頼 性 ・妥 当 性 を高 め る た め、 患 者 会 代 表 者 、皮 膚 ・排 泄 ケ ア に携 わ る小 児 看 護 の 専 門家 、 遺伝 看 護 の専 門家 に よ る指 導 ・助 言 を 受 け た。 8. 倫 理 的 配慮 協 力 者 に研 究 の 主 旨、 手 順 、 拒 否 と中 断 の 権 利 、
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 プ ラ イ バ シー の 保 護 等 につ い て 文 書 を用 い て 説 明 し、 同 意 を得 て行 っ た。 患 児 には子 ど もに理 解 可 能 な内 容 で作 成 したふ り仮 名 をふ っ た協 力依 頼 文 を渡 して研 究 の 目的 を説 明 し、 同 時 に母 親 か ら も説 明 し て も らっ た。 研 究 協 力 の 同意 は、患 児 か らの返 答 と、 患 児 が 同意 して い る と母 親 が 判 断 す る こ との 両方 で 確 認 し、 同意 書 に は連 名 で サ イ ン を も らっ た 。 また 、調 査 実 施 にあ た って は協 力 者 の負 担 軽 減 に 注 意 を払 い、 生 活 リズ ム に変 調 を きた さな い よ うに 訪 問 日時 を調 整 した。 さ らに、 写真 ・動 画 な どの画 像 の撮 影 時 に は、 話 した くない 内容 や見 られ た くな い 場 面 な どは拒 否 して もよい こ と を伝 え 、顔 面 が映 らな い よ う に配 慮 し、EBの 日常 生 活 ケ ア に 関 す る もの 以外 は一 切 撮 影 せ ず 、 デ ー タ入 力 の 際 に は、 個 人 名 で は な く記 号 化 に よ る管 理 を行 い 、 匿名 性 を保 持 した 。 本研 究 は 山梨 大 学 医 学 部 倫 理 委 員 会 の承 認 を得 て 実 施 した。 Ⅲ.結 果 1.出 生 後 か らの 児 の 生 活 行 動 とEB症 状 の 変 化 と 母 親 に よ る ケ ア 調 査 時 まで の患 児 の経 過 を以 下 に、1)出 生後 か らの入 院 中 の 経 過、2)家 庭 で の 経 過 、 に分 け て 記 述 した。 この 経 過 を 図1に 記 載 した。 1 )出 生 後 の 入 院 申 の経 過 (1)出 生後∼ 診 断 まで の経 過 身 長50.5cm、 体 重2794gで 出生 。 出 生 時、 左 手 ∼ 前 腕 部(p.15、 写 真1)、 右 肘 、右 足(p.15、 写 真2)、 左 足 の 四肢 皮 膚 欠 損(剥 離)が あ り、 同県 内の 大 学 病 院 に搬 送 され た。 この 搬 送 先 でEBを 疑 わ れ 、 生 体 検 査 に よ り出生 後15日 目に 栄 養 障 害 型EBと 診 断 を受 け た。 (2)家 庭 で ケア を行 う以 前 の 入 院 中 の経 過 患 児 は 生 後5か 月 ま でNICU、 生 後9か 月 まで 小 児 病 棟 に入 院 して い た。 ①EBの 経 過 入 院 中 、出生 直 後 の 四肢 の病 変 は軽 快 した が 、日々 の些 細 な皮 膚 刺 激 に よ り徐 々 に病 変 が 全 身 に拡 大 し た(p.15、 写 真3)。 足 趾 は癒 着 し、爪 は脱 落 した 。 ② 入 院 中 の ケ ア NICUで の皮 膚 ケ ア は 皮 膚 科 医 と看 護 師 が 行 い、 患 部 に消毒 液 を か け、 軟 膏 を塗 布 した ガ ー ゼ で くる み 、 包 帯 を巻 い て い た。 衣 類 は着 用 せず 、 オ ム ツ は ギ ャザ ー を切 り取 っ てか ぶ せ る様 に使 用 し、 開放 型 保 育 器 で 過 ご した。 抱 く際 はマ ッ トレス ご と抱 き上 げて い た 。 手 指 の ケ ア と して は、 出生 当初 は 手 に ガ ーゼ を筒 状 に して 握 らせ た上 か らガー ゼ で 覆 っ て い た(p.15, 写 真4)。 そ の後 生 後5か 月 の小 児 科 転 棟 時 、 小 児 科 主 治 医 が 、 こ の方 法 は手 指 の 癒 着 を招 くだ けで な く、 患児 の 自由 を奪 い、 成 長発 達 を阻害 す る との 見 解 を示 した 。 こ れ以 降、 手 指 を露 出 して包 帯 を巻 く よ う に変 更 した。 な お、 癒 着 した足 趾 は、 生 後17日 時 に は趾 間 に ガ ーゼ が 挟 め な くなっ た。 ③ 栄 養 管理 に つ い て 出 生後 は経 管 栄 養 が 行 われ 、 口腔 内 の病 変 に留 意 しなが ら生後1か 月半 よ り経 口摂 取 が始 まっ た。 生 後5か 月 前 に は離 乳 食 を 開始 した が 、粥 は むせ て 嚥 下 で きず 、 裏 ご し食 と した 。 この 頃 の 体 重 は5390g で あ り、 乳 児(女 児)成 長 発 育 曲 線(横 山 他, 2012)の3パ ー セ ン タイ ル 値 を下 回 っ た。 そ の 後 、 成 分 栄 養剤 の エ レ ンタ ー ルRを 追 加 摂 取 す る よ う に な り、 退 院時 の9か 月 に は身 長68cm、 体 重7415gと 共 に25パ ー セ ン タ イル値 付 近 ま で 回復 が見 られ た。 ④ 退 院 後 の ケ ア に む けて の取 り組 み 両 親 は患 児 が 生 後1か 月半 の時 点 で稀 少 難病 者 全 国連 合 会(あ せ び 会)に 入 会 し、 ケ アの 方 法 につ い て の情 報 収 集 を行 った 。 そ の 後、 生 後6か 月 半 よ り 試験 外 泊 を8回 行 い なが ら在 宅 ケ ア を習 得 した。 外 泊 の都 度、 必 要 物 品の 不足 や療 養 環 境 の 工 夫 点 につ い て検 討 と見 直 しを繰 り返 した 。 同時 に、 訪 問看 護 利 用 の 手続 きを行 い、 訪 問 看 護 師 と病 棟 で ケ アの情 報 交換 も行 わ れ た。 2)家 庭 で の経 過 (1)退 院 ∼1歳 ま で ① 患 児 ・家族 の状 況 患 児 は10か 月 に座 位 可 能 、這 う よ う にな っ た。 10か 月 以 降 に は 眼粘 膜 に も病 変 が 生 じ、 喘 泣 後 、 目を こす った 後 、 乾燥 時 な どに 開眼 で きな い様 子 が
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 見 られ る よう に なっ た。 ② ケ ア 病 変 部 に は、抗 生剤 入 り軟 膏 を な じませ た非 固着 性 シ リコ ンガ ー ゼ の キ ュ テ ィセ リ ンR(2006年 に販 売 中止)を あて た 上 か ら綿 ガー ゼ をあ て 、 包 帯 を巻 い て い た。 手 指 の癒 着 対 策 と して 図2の よ う に指 の 間 に細 く切 った 包 帯 を挟 み 込 ん で い た 。 図2包 帯 を使 用 した手指 の癒着 防止策 また 、掻 き雀 り対 策 と して 就 寝 時 に手 袋 を使 用 し て い た が、 指 間の 癒着 が 進 行 して使 用 で きな くな っ た た め 、掻 痒 感 が あ る部 位 は創 傷 被 覆 材 で 覆 い 、 露 出 を避 け る よ うに した。 ③ 消化 器 粘 膜 症 状 へ の対 応 生後10か 月 に乳 歯 が 萌 出 したが 、 粒 状 の 固形 物 は 呑 み 込 め ず、 裏 ご し食 を継 続 した。 発 熱 す る こ と も 多 く、体 調 不 良 に よ り食事 摂 取 量 に ム ラが あ っ た。 ま た、 患児 は退 院 時 に既 に便 秘 傾 向 に あ り、 肛 門 亀 裂 の予 防 の た め 、 ヤ クル トRや ヨ ー グ ル ト、 食 物 繊 維 を含 む食 品 の摂 取 に努 め 、 ビ オ フ ェ ル ミ ンRな ど も使 用 して い た。 しか し、便 性 の コ ン トロ ー ル は 難 し く、 坐 薬使 用 や洗 腸 を実施 ず る こ と もあ っ た。 (2)1歳 の状 況 ① 患 児 ・家族 の 状況 患 児 は盛 ん に這 うよ う に な り、 同 時 につ か ま り立 ち もで きる よ う にな っ た。 患 児 が這 う際 の特 徴 的 な 様 子 と して、両 手 、左 膝 、右 足底 の4点 で体 を支 え 、 右 膝 を 立 て た よ う な 姿 勢 で前 進 す る様 子 が あ っ た (p.15、写 真5)。 そ の 後 も歩 行 す る ま で 、 写 真6 (p.15)の よ う な左 膝 と右 足 底 で の前 進 運 動 が 続 い た 。 微 細 運動 は順 調 に発 達 し、1歳10か 月 に は箸 を もつ こ とが で きた。 病 変 は全 身 に繰 り返 し、夜 間 の掻 き省 りが ひ ど く な っ た。 患 児 は 自己主 張 が 出 来 る よ うに な り、 沐 浴 時 に 「イ タイ」 と激 し く抵 抗 し、母 親 の精 神 的負 担 は大 き くな っ た。 ② ケ ア ほ ぼ全 身 に包 帯使 用 を必 要 とす る患 児 の様 子 に対 し、両 親 は少 しで も 自由 に して あ げ た い とい う思 い を募 らせ 、病 変 が 落 ち着 い て い る 際 に は包 帯 を巻 か ない とい う方 法 を試 した。 しか し、 露 出部 位 に はす ぐに水 庖 が 出来 て し まっ た。 結 果 、 患 児 が安 心 して 動 くた め に は、 病 変 形成 を予 防す る た め に包 帯 で の 保 護 が 必 要 と判 断 した 。 ま た、 衣 類 の 工 夫 と して 、 首 回 りの衣 類 との摩 擦 に よ る刺 激 を軽 減 す るた め 、 タオ ル を二 つ 折 りに して 中心 部 を切 り取 っ てパ イ ピ ン グ を縫 い付 け 、襟 ぐ りを広 く した手 作 りの衣 類 を 着 用 して い た。 ③ 消化 器 粘 膜 症 状 へ の対 応 食事 形 態 は裏 ご し食 が続 き、食 事 摂 取 量 に ム ラが あ る状 態 は続 い て い たが 、 エ レ ンタ ー ルRを 追 加 す る こ とで1歳 で は身 長72.5cm、 体 重8470gと 年 齢 相 当 で あ っ た。 (3)2歳 の 状 況 ① 患 児 ・家族 の 状況 2歳 を過 ぎる と少 しず つ歩 き、2歳10か 月 に上 手 に歩行 で きる よ う に なっ た。 病 変 は全 身 に 繰 り返 し生 じた(p.15、 写 真7・ 8)。 さ らに、 ア トピー様 の 湿 疹 が み られ 掻 痒 感 が 増 し、 手 の届 きや す い 頚 部 ∼胸 部 ・肩 甲部 、大 腿 部 後 面 は改 善 しない 状 況 が 続 い た 。 入 浴 時 の抵 抗 は さ らに激 し くな り、母 親 に とっ て 入 浴 が 大 きな ス トレス と な るが 、患 児 も歯 を食 い し ば っ て痛 み に耐 え てお り、母 親 は"逃 げ 出 した い …" との思 い を抱 くこ と もあ っ た。 訪 問看 護 時 間 に制 約 が あ る 中で ス ム ー ズ に ケ アが 進 まず 、 訪 問看 護 師 に 対 して"申 し訳 な い"と 感 じる よ う に な り、 訪 問 看 護 の 利用 を迷 う よ うに な っ て い った 。 ② ケ ア 入 浴 は 医師 の 助 言 を受 け 、感 染 防 止 の ため に、 湯 船 につ か らない シ ャ ワー浴 に変 更 した。 家 族 は悪 化 す る 皮 膚 状 況 に 対 し、 少 しで も よ く な って 欲 しい とい う思 い を募 らせ 、 微 弱 電 流 の流 れ る椅 子 を使 用 した り、高 濃 度 の酸 素 水 を摂 取 した り、 友 人 よ り紹 介 され た ク リー ム を試 す な ど、様 々 な情 7
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 報 を入 手 しな が ら試 行 錯 誤 を行 っ て い た。 ③ 消化 器 粘 膜 症 状 へ の 対応 食 事 形 態 は裏 ご し食 よ り進 行せ ず 、 摂 取 量 にム ラ が あ る状 態 が続 い た。 豆 腐 や プ リ ンな ど患 児 の好 き な もの の摂 取 に偏 って い た た め、 栄 養 補 給 の た め に 高 濃 度 の ビ タ ミ ン飲 料 な ど も取 り入 れ て い た。 エ レ ン ター ルRの 追 加 は続 け 、体 重 は11.4kgで あ っ た 。 (4)3歳 の状 況 ① 患 児 ・家族 の 状 況 手指 の疲 痕 拘 縮 に よ る癒 合 は進 み、 第 二 関節 よ り 下 はほ ぼ癒 合 してい る状 態 とな っ た。 胸 部 のはん痕 拘 縮 に よ り肩 関節 が 変 形 し、 腋窩 を完 全 に 閉 じる こ と が 出 来 な くな っ た。 入 浴 時 の抵 抗 は続 き、体 質改 善 の た め に様 々 な こ と取 り入 れ て も変 化 しな い状 況 に、 患 児 ・家 族 の ス ト レス が 続 い て い た 。 シ ャ ワ ー 浴 の 際 に は 患 児 が 「"頑張 っ て よ"じ ゃ な くて、"頑張 って る ね"っ て 言 っ て」 と大 泣 き しなが ら抵 抗 す る こ と もあ っ た。 掻 痒 感 に対 して は、 毎夜 、 一 晩 中、 両 親 ・祖 母 の 3人 で交 代 して 掻 き雀 り防止 の見 張 りを行 った 。 し か し、 つ い家 族 が 眠 った 隙 に患 児 が 掻 い て び らんが 生 じて し まい、この 時 の 母親 の 日記 に は"ご め んね" の記 述 が多 く見 られ た。 一 方患 児 は、 ア トピー症状 の悪化予 防の ため 自 ら 「チ ョ コ レー トや エ ビせ ん よ り、 あ ん こ にす る 」 と 発 言 す る よ う に な った。 また、 病 変 の 経 過 に も関心 を持 ち 、鏡 を見 なが ら 「胸 の ところ 良 くなん な い な あ」 と発 言 す る様 子 もあ っ た。 また、 家 族 は患 児 の粗 大 運 動 の 遅 れ に関 して 焦 る こ とは な か った が 、少 しで も健 全 に発 達 で き る よ う、 リハ ビ リセ ンター に通 い作 業 療 法 を開 始 した 。 ② ケ ア 病 変 部 に使 用 す る軟 膏 を、 抗 生 剤入 りの 軟 膏 か ら 亜 鉛 華 軟 膏 に変 更 した。 ③ 消化 器 粘 膜症 状 へ の対 応 食 事 は卵 焼 き を食べ た こ とを きっ か け に、徐 々 に 軟 らか い 普 通 食 を摂 取 で きる よ う にな っ た。 身 長 は 90cm、 体 重 は12kgと 幼 児(女 児)成 長 発 育 曲線(横 山他,2012)の25パ ー セ ンタ イル値 相 当 で あ っ た 。 (5)4∼6歳 の状 況 ① 患児 ・家 族 の状 況 胸 部 と肩 の綾 痕拘 縮 は さ ら に進 行 し、猫 背 の よ う な姿 勢 が 顕 著 にな っ た。 オ ム ツ を使 用 しな くな っ た た め腹 部 ・腰 部 や殿 部 の症 状 は他 の 部位 に比 べ て軽 快 した(p.15、 写 真9)。 また 、 長 距 離 移 動 の 際 の た め に車 いす を購 入 し、 保 健 所 で 紹 介 され た地 域 の 障 害児 の 通所 施 設 を利 用 し始 め、 行 動 範 囲 は徐 々 に拡 大 した 。 ② ケ ア 使 用 す る創 傷 被 覆 材 は非 固着 性 シ リコ ンガ ー ゼで あ る トレ ックス-CRに 変 更 し、 そ の 後 、 パ ー ミロ ー ルRに 変 更 した。 重 傷 部 には 「銀 イ オ ン」 含 有 の 抗 菌性 創 傷被 覆 ・保 護 材 で あ る ア クア セ ルRAgを 使 用 した。 掻痒 感 に対 して行 って い た夜 間 の見 張 りは家 族 の 負 担 が 大 き く中 断 した 。 4歳 時 には全 ての ケ ア を家 族 で行 う選 択 を して 訪 問 看 護 制 度 の利 用 を中 止 した。 きっか け とな った の は、 母 親 が パ ー トで働 くこ とを試 み た際 、 母 親 不 在 時 の ケ ア に患児 が 激 し く抵 抗 した こ とで あ っ た。 結 果 、 母 親 は働 くこ と も断念 した。 ③ 消化 器 粘 膜 症 状 へ の対 応 偏 食 に注 意 しなが ら軟 らか く患 児 が 呑 み 込 み や す い もの を摂 取 した。 エ レ ン ター ルRは5歳 時 の幼 稚 園 入 園 以 降 摂 取 で き な く な り、6歳 で は 身 長 102cm、 体 重15.0kgと 、幼 児(女 児)成 長 発 育 曲線(横 山他,2012)の 、3パ ー セ ンタ イル 値 を下 回 っ た。 (6)7∼9歳 の 状況 ① 患 児 ・家 族 の 状 況 7歳 に な る と、 患児 は近 隣 の小 学校 に新 設 され た 病 弱 児学 級 に入 学 した。 病 変 は全 身 に繰 り返 し、 肩 甲部 の 病 変 は悪 化 し た。 胸 部 は病 変 が 継続 し、 写真10(p.15)の よ うな 状 態 に な っ た。8歳 時 に は グ ラ ウ ン ドを走 っ た後 、 発 汗 した状 態 で 座 っ て授 業 を受 け た こ とで殿 部 に大 きな び らん を形 成 した。 これ を きっ か け に 、下 腹 部 、 腰 部 ∼大 腿 部 を掻 き劣 り、 周 辺 に病 変 が拡 大 した。 両 手指 の搬 痕 拘 縮 に よる癒 合 は徐 々 に進行 し、 棍 棒 状 とな っ て指 間 に包 帯 を挟 め な くな っ た 。9歳 時 に
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 は 、筆 記 具 を 把 持 す る こ とが 困 難 と な り、状 況 に よ っ て 補 助 具 を 使 用 す る よ う に な っ た 。写 真11(p.15)は 、 食 事 の 際 に 補 助 具 を用 い る 実 際 の 様 子 で あ る 。 ② ケ ア 8歳 に な る と 軽 傷 部 に 使 用 す る 創 傷 被 覆 材 を メ ロ リ ンRに 変 更 した 。 そ の 後 、9歳 時 にMepilexR Lite と い う創 傷 被 覆 材 が 認 可 さ れ 、 軟 膏 を 使 用 せ ず に 病 変 部 に 直 接MepilexRLiteを 貼 付 す る よ う に な っ た 。 ③ 消 化 器 粘 膜 症 状 へ の 対 応 そ れ ま で の ケ ア を 継 続 し た 。7歳 で の 体 重 は 15.8kg,身 長 は106.4cm、8歳 で は 身 長109.3cm、 体 重16.8kg、9歳 で は 身 長112.1cm、 体 重17.8kgと 学 童 期 以 降 は 年 齢 相 当 の 体 格 で は な い が 、 患 児 な り の 成 長 が 見 ら れ て い た 。 2.調 査 時 の児 の 状況 患 児 の病 変 は ほぼ全 身 に 出現 す るが 、 背 部(中 央 を 除 く)は 比 較 的 病 変 が 少 な い(p.16、 写 真12、 13)。 治 癒 に要 す る 時 間 は 重 症 度 や発 生 部 位 に よ り 異 なる が、 潰 瘍 化 す る と周 囲 に も病 変 が 拡 大 し難 治 性 とな る。 特 に胸 部 や殿 部 周 辺 、 足 は難 治 性 の部 位 で あ る。 胸 部 の皮 膚 の癩 痕 拘 縮 に よ り、 肩 関節 の可 動 域 に制 限 が生 じて い た 。 また、 指 趾 は癒 合 して棍 棒 状 とな っ て い た。 さ らに、口腔 粘 膜 、消 化 管 粘 膜 、 眼 粘膜 に も病 変 が 生 じて い た。 こ の た め、"指 趾 機 能 の 全 廃 、 足 関 節 の著 しい 機 能 障 害 を主 と し、 運動 や 長距 離 の移 動 が 水 庖 を誘 発 す る こ と"の 認 定 理 由 に よ り身体 障 害 者 手 帳2級 の 認 定 を受 け て い た。 そ の他 、 全 身所 見 と して、 血 液 検 査 で は常 にCRP 6∼10㎎/dlで あ り、微 熱 が 生 じ る こ と も多 か っ た。 また、 ア レルギ ー抗 体 検 査 で は、 卵 や 大 豆 な ど あ らゆ る物 質 にお い て 高値 を示 してお り、 摂 取 が 偏 る と ア トピー様 の 発疹 が 出現 し、 掻 痒 感 が 上 昇 す る こ とが あ っ た。 3.調 査時(10歳 時)に 行 って い た ケ ア 1)皮 膚 ケ ア 入 浴介 助 は主 に母 親 が行 い、 皮 膚 ケ ア は母 親 と父 親 と祖 母 の3人 で 分担 して い た。 毎 日の ケ ア は、 約 3時 間 か けて 病 変 部 の ケ ア(シ ャ ワー浴 含 む)を 行 い 、登 校 前 に も約1時 間 か け て夜 間 に包 帯 が 乱 れ た 箇 所 や 、浸 出液 に よ る汚 染 部位 の ケ アを行 って い た。 而 親 は、 稀 少 難 病者 全 国連 合 会(あ せ び会)や 表 皮 水 庖 症 友 の 会DebRA Japanに 入 会 し、 他 の 家 族 と交流 を図 って い た。 同 時 に セ ミナ ー で皮 膚 科 医 や 米 国 認定 創 傷 ケ ア看護 師 の講 演 を 聞 き、新 しい創 傷 被 覆材 の情 報 の 入 手 に努 め 、患 児 の生 活 に即 した方 法 を考 え てケ ア を行 っ て い た。 (1)ケ ア の 実 際 病 変 部 に はMepilexR Liteを 貼 り、 そ の 上 を 不 織 布 ガー ゼで 覆 い、 さ らに そ の上 にず れ 防止 の た めの 包 帯 を巻 くケ ア を基本 と して い た。 不 織 布 ガ ー ゼ はMepilexR Liteで は吸 収 し きれ な い 浸 出液 を吸 収 す るた め 、 また、 この上 に巻 く包 帯 の 刺 激 に よ る水 庖 ・び らん の形 成 予 防 の ため に使 用 して い た。 さ らに包帯 が解 けや す い 関節 に は、 包 帯 の 上 に チ ュー ブ型 包帯 を使 用 して い た。 以下 に① シ ャ ワー浴 、 ② 病 変 部 の ケ ア、 につ いて 記 述 した。 ① シ ャワ ー浴 表3に 具 体 的 手順 を示 した。 ② 病変 部 の ケ ア 表4(表 内 に写 真14∼19あ り)に 具 体 的手 順 を 示 した。 2)衣 類 の 選 択 衣類 は伸 縮性 の よ さ を重 視 して選 択 してい た。 上 着 は襟 口 の広 く、脇 に余 裕 が あ る ラ グ ラ ン袖 の形 状 の もの を選 択 す る こ とが 多 く、 前 開 きの衣 類 は着 脱 させ やす い大 きい サ イ ズ を選 択 して い た。 襟 口が 狭 い 衣服 を着 用 す る際 に は 、 ス カ ー フ を頭 にか ぶ せ て 襟 ロ を通 して いた 。 ズ ボ ンは股 上 の 深 い もの を購 入 して い た。 シ ョー ツは締 め付 けが 無 く着 用 で きるボ クサ ー タイ プ の もの で、 裏地 に縫 い 目が ない もの を 使 用 して いた 。 3)栄 養 管 理 調査 時 、 食 道 粘膜 の萎 縮 に よ り大 きな塊 は の ど に つ か え る こ とが あ る た め 、ひ き肉以 外 の 固い 肉類 や 、 鳥 の ささみ や胸 肉 な どは 喉 につ か えや す い の で 避 け て い た。 9
日本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn l2(2) 2014 ま た、 口角 に水庖 ・び らん を繰 り返 す こ とで の皮 膚 の肥 厚 ・瘍 痕 化 が起 こ り、 開 口幅 の 制 限 が生 じて い た。 そ の た め 、患 児 自身が 自分 で一 回量 を調 節 し て い た 。 学校 給 食 は患 児 に とって摂 取 可 能 な硬 さで あ るた め 、特 別食 は依 頼 して い な か っ た。 そ の他 、 便 秘 対 策 と して イ ー ジー フ ァ イバ ーRと 水 素 カプ セ ル を摂 取 して い た 。 4)ロ 腔 ケ ア 小 学 校1年 生 の歯 科検 診 で初 め て翻 歯 を指 摘 され たが 、 臼歯 で あ るた め 開 口 制 限 に よ り治 療 が で きて い な か っ た。 口腔 内 は 、歯 肉 に唇 や 頬 の 粘 膜 が癒 着 して い る ため 口腔 内 の フ リー スペ ー スが 無 く、水 を 貯 留 で きず 含 漱 が 出 来 な か っ た。 そ の ため 口 腔 ケ ア は届 く範 囲 の み 歯 ブ ラ シ を使 用 し、 汚 れ の あ る 部 位 に医 療 用 プ ラス チ ッ ク製 洗 浄 瓶(p.16、 写 真20)の ス トロー で 水 を流 し込 み、 水 圧 をか けて 汚 れ を 除去 して い た。 Ⅳ.考 察 1.EB患 児 の発 育 過 程 1)患 児 の 発 育 過程 よ り (1)身 長 ・体重 の発 達 患 児 の 発 育 経 過 は、 エ レ ン ター ルRを 導 入 して い た幼 児 期 前 期 を除 い て、 年 齢相 当 の発 育 を遂 げて い なか った 。 そ の理 由 と して 患 児 は新 生 児 期 か ら消 化 器 病 変 を認 め、 器 質 的要 因 に よ り栄養 摂 取 量 が 不 足 して い た こ とが 考 え られ る。 栄養 障 害 型 のEB患 児 が 健 全 な成 長 を遂 げ る には 、症 状 に合 わせ て 食 事 形 態 の工 夫 を行 い、 栄 養 補 助剤 を取 り入 れ る な どに よ り、年 齢 に応 じて栄 養 所 要量 を確 保 して い か な け れ ば な らな い。出生 早 期 か ら栄養 ア セス メ ン トを行 い、 皮 膚 科 だ け で な く、小 児科 、 消 化 器 外 科 、 口腔 外 科 な ど関連 機 関 と連携 し、栄養 サ ポ ー トチ ー ム(NST) な どのチ ー ム体 制 で患 児 の栄 養 サ ポー トを行 っ て い くこ とが 必 要 で あ る。 表3シ ャ ワ ー 浴 の 方 法 手順 具体 的方法 1.浴 室 の準 備 をす る。 浴 室 の 温 度 調 整 を行 い 、 洗 い 場 に ス ポ ンジ マ ッ トを敷 く。 泡 が 出 る タ イ プ の 容 器 に低 刺 激 性 の ボ デ ィ ソー プ とア ロマ オ イ ル(テ ィ ー トリー 、 ラベ ン ダ ー 〉 を数 滴 入 れ る。 2.必 要 物 品 を準 備 す る。 入 浴 前 に ケ ア に 使 用 す るMepilexR Lite、 不 織 布 の デ ィ ス ポ ー ザ ブ ル ガ ー ゼ 、 包 帯 等 を 準 備 し て お く。 3,皮 膚 ケ ア を行 う ス ペ ー ス を 準 備 す る。 居 間 に ケ ア ス ペ ー ス を 作 り、 床 に ス ポ ン ジ マ ッ ト を 敷 く。 背 も た れ の な い 椅 子 に 、 バ ス タ オ ル を の せ た ア ク シ ョ ンパ ッ トRを 敷 く 。 4.患 児 の 足 以 外 の 包 帯 ・不 織 布 ガ ー ゼ を 取 り、MepilexR Liteを 剥 が す 。 '患 児 が ア ク シ ョ ンパ ッ トRを 敷 い た 椅 子 に座 り、 母 親 が ハ サ ミで テ ー プ を 切 りな が ら浸 出液 の 状 況 を確 認 しな が ら一 枚 ず つ ゆ っ く り と剥 が して い く。 4-1. 固 着 し た 不 織 布 ガ ー ゼ を 取 り 除 く。 浸 出 液 が 乾 燥 して不 織 布 ガ ー ゼ が 創 部 に 固着 して い る場 合 に は、 固 着 部 分 の み を残 して ガ ー ゼ を切 り取 り、 霧 吹 きで 濡 ら して ふ や か して か ら取 り去 る 。
4-2.MepilexR Liteを 剥 が す 。 MepilexR Liteは 裏 返 す 様 に 反 転 させ 、 創 部 を押 さ え な が ら少 しず つ 剥 が す 。
5.浴 室 に 移 動 す る 。 足 先 の ガ ー ゼ を残 した ま ま、 患 児 が 歩 い て浴 室 に 移 動 す る。 6.浴 室 の ス ポ ン ジマ ッ トの 上 で 足 の 創 傷 被 覆 材 を剥 が す 。 患 児 が 浴 室 の 手 す りに つ か まっ て ス ポ ン ジ マ ッ トの 上 に 立 ち、 そ の 上 で 母 親 が 足 先 の 不 織 布 ガ ー ゼ とMepilexR Liteを 取 り除 く。 7.母 親 が患 児 の 全 身 を手 洗 いす る。 ボ デ ィ ソ ー プ の 泡 を た っ ぷ り と母 親 の 手 に取 り、 全 身 に 塗 る よ うに し て撫 で る よ うに し なが ら洗 う。 入 浴 しな が ら、 母 親 は 全 身 の 状 況 を チ ェ ッ クす る 。 8.シ ャ ワ ー で 全 身 を 洗 い 流 す 。 感 染 予 防 の た め に シ ャ ワ ー で 十 分 に 洗 い 流 す 。 病 変 部 に付 着 した 余 分 な浸 出 液 を 洗 い 流 す に は 水 圧 が 必 要 な た め 、 手 桶 は 使 用 せ ず に シ ャ ワ ー を 直 接 シ ャ ワ ー の お 湯 を か け て 使 用 す る。 9.皮 膚 消 毒 を す る 。 消 毒 の 為 、 次 亜 塩 素 酸 を足 以 外 の 全 身 に霧 吹 きで 拭 きか け る 。 10.足 先 を ラ ッ プ で く る む 。 足 先 が 床 につ か な い 様 に ラ ップ で く る む。 11.全 身 の 水 分 を 拭 く。 布 オ ム ッ を バ ス タ オ ル と して 使 用 し、全 身 を覆 う よ うに軽 く押 さ えぶ きす る。 12.ケ ア ス ペ ー ス に 移 動 す る 。 脱 衣 所 か ら居 間 の ス ポ ン ジマ ッ トの 上 に移 動 す る。
日本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 表4病 変 部 の ケ ア の 方 法 手 順 具体 的方法 1.患 部 以 外 の 皮 膚 に コ コ ナ ッ ツ オ 無 添 加 の コ コ ナ ッ ツ オ イ ル を全 身 の 病 変 の な い 部 分 に 薄 く塗 布 す る。 こ の 際 、 イ ル を 塗 布 す る。 オ イ ル の 量 が 少 な す ぎ る と皮 膚 が 乾 燥 して し ま い 、 多 す ぎ る と こ の 後 に 使 用 す る ドレ ッ シ ング 剤 が 皮 膚 に貼 りつ か な い た め 、 適 量 を塗 布 す る。 2.足 首 よ り先 以 外 の 下 半 身 の ケ ア 下腿 ∼ 大 腿 ∼ 殿 部 の 水 庖 穿 刺 後 、MepilexR Liteを 貼 付 して 不 織 布 ガ ー ゼ で 覆 を 行 う 。 い 、 包 帯 固 定 を行 う。 2-1.水 庖 を穿 刺 して廃 液 す る 。 全 身の 水庖 形成 の有無 を確 認 して、水庖 を穿刺 ・廃液 す る。 穿刺 の際 は写真 14(p.16)の よ う に 内 容 液 を受 け止 め られ る よ う に傍 に ガー ゼ を構 え て18Gの 針 で 行 う。 穿 刺 後 、 ガー ゼ で 水 庖 の 上 か ら圧 迫 し、 内 容 液 を 廃 液 す る 。 穿 刺 して も 内 容 液 が 固 く、 流 出 して こ な い 際 は そ の ま ま に して お く。 2-2.余 分 な 皮 膚 を 取 り 除 く 。 乾 燥 して め くれ て い る余 分 な皮 膚 をハ サ ミで切 り取 る。
2-3. 病 変 部 位 にMepilexR Lite IVIepilexR Liteを 貼 る 。 殿 部 は 起 立 ・着 席 時 の 動 作 で ず れ な い よ う に 縦 長 に を 貼 る 。 切 っ て 使 用 す る(p.16、 写 真15)。 【MepilexR Lite使 用 時 の ポ イ ン ト】 ・創 部 の 上 だ け に 限 局 し て 使 用 す る と 貼 付 し たMepilexLiceRご と皮 膚 が 剥 が れ る た め 、 周 囲 の健 常 な皮 膚 を覆 う よ う に大 き く切 っ て貼 付 す る。 ・水 庖 の 廃 液 後 す ぐは皮 膚 組 織 が ず れ動 きや す い の で 、 少 し時 間 を 置 い て 水 庖 部 位 が 少 し乾 燥 し、 上 層 の 表 皮 の 可 動 性 が な く な っ て か らMepilexR Liteを 貼 付 す る 。 ・皮膚 が脆 弱 な箇所 に も水 庖形成予 防の為 に貼付 す る。 ・治 癒 過 程 でMepilexR Liteの 使 用 を や め る と 再 度 水 庖 ・び ら ん に な り や す く、 掻痒 感 に よ り症状 が悪化す るため、病変が 完全 に治癒 す る まで貼付 する。 2-4. 不 織 布 ガ ー ゼ で 覆 う 。 MepilexR Liteの 上 か ら皮 膚 全 体 を デ ィス ポ ー ザ ブ ル の 不 織 布 ガ ー ゼ で 覆 う (p。16、写 真16)。 固 定 の 際 は不 織 布 ガ ー ゼ 同 志 を テ ー プ で 固 定 し、 皮 膚 に 直 接 テ ー プ が 付 か な い よ う に留 意 す る。 2-5.包 帯 を 巻 く。 不 織 布 ガ ー ゼ の 上 に包 帯 を巻 く。 2-6.チ ュ ー ブ 型 包 帯 を か ぶ せ 関 節 部 は 、 包 帯 の 上 にチ ュ ー ブ 型 包 帯 を か ぶ せ る。 る 。 【チ ュ ー ブ 型 包 帯 の使 用 につ い て】 チ ュ ー ブ型 包 帯 を か ぶ せ る と包 帯 の ほ ど け を 防 止 で き る。 しか し、 チ ュ ー ブ 型 包 帯 は体 に動 き に よ っ て よ れ て しわ に な りや す い。 そ の た め 、 全 体 に は用 い ず 関節 部 位 の み 包 帯 の上 に チ ュー ブ型 包 帯 を使 用 す る。 3,腹 部 の ケ ア を 行 う 。 腹 部 の水 庖 穿 刺 と廃 液 を行 い 、MepiiexR Liteを 貼 付 して不 織 布 ガ ー ゼ で 覆 い 、 包 帯 固 定 を行 う。 ケ ア の 具体 的 手 順 につ い て は2-1∼6参 照 。 腹 部 ・腰 は 曲 面 で あ り 、MepilexR Liteが 剥 が れ や す い た め 、 写 真17(p.16> の よ う に 適 当 な 大 き さ に 切 っ たiVlepilexR Liteを 、 前 方 と 後 方 よ り互 い 違 い に 少 しず つ 重 な り合 う よ う に して貼 付 す る。 ま た 、 轡 曲 し た 部 分 に は フ ィ ッ ト す る よ う に切 り込 み を 入 れ な が ら使 用 す る 。 r"画 包 帯 固 定 は 大 腿 部 の 上 方 か ら ク ロ ス す る よ う に し て 包 帯 を 巻 き、 そ の 上 に チ ュ ー ブ型 包 帯 を使 用 す る 。 4,シ ョー ツ を 着 用 す る 。 シ ョ ー ツ(ボ ク サ ー タ イ ブ)を 着 用 す る 。 5.足 先 を 消 毒 す る 。 椅 子 に腰 か け 、 足 を 浮 か せ る。 足 に まい た ラ ッ プ を と り、 次 亜 塩 素 酸 を しみ こ ませ た不 織 布 ガ ー ゼ で 包 む よ う に消 毒 す る。 6.腕 の ケ ア を 行 う。 具 体 的 手 順 は 前 述2.下 半 身 の ケ ア を 参 照(p.16、 写 真18)。 7.胸 部 、肩 甲 部 ・頚 部 の ケ ア を 行 う 。 7-1. 創 部 の ケ ア を 行 っ た 後 、 前 述 した2。 下 半 身 の ケ ア と 同様 の 手 順 で 、2-1水 庖 穿 刺 ∼2-4不 織 布 不 織 布 ガ ー ゼ の 上 か ら胸 ガ ー ゼ を使 用 して 創 部 の ケ ア を行 う。 そ の 後 、 不 織 布 ガ ー ゼ の 上 か ら切 り込 部 と 肩 に 綿 ガ ー ゼ を あ み を入 れ た 綿 ガ ー ゼ を前 方 ・後 方 か ら一 枚 ず つ あ て て 、 テ ー プ で 固 定 す る 。 て、 包 帯 固 定 を行 う。 【綿 ガ ー ゼ を 使 用 す る 目的 】 登 校 前 の ケ ア の 際 、 汚 染 の 程 度 に よ っ て 胸 部 ・頚 部 は綿 ガ ー ゼ の み の 交 換 で す む こ とが あ る の で 、 ケ ア の負 担 軽 減 に な る。 7-2. 胸 部 と肩 の包 帯 固定 を行 う。 綿 ガ ー ゼ の 上 か ら包 帯 を タス キ 状 に ま く。 8.足 首 よ り先 の ケ ア を 行 う 。 足 に 巻 い た 消 毒 用 の 不 織 布 ガ ー ゼ を と り、 足 の ケ ア を 行 う。 具 体 的 手 順 は前 述 し た2-1水 庖 穿 刺 ・廃 液 ∼2-5包 帯 の 使 用 ま で を 参 照 。 足 底 に Mepilex⑪Liteを 貼 付 す る 際 に は 、 重 な りが で き な い よ う に 隙 間 な く 覆 い 、 歩 行 時 に 生 じ る 痛 み を 防 ぐ(p.16、 写 真19)。 9.靴 下 を履 く。 介 護 者 が 予 め 靴 下 を た く して 履 口 を 広 げ 、 そ の 中 に患 児 の足 を 入 れ る よ う に して 履 か せ る 。
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs Jpn 12(2) 2014 (2)運 動 の 発 達 患 児 は粗 大 運 動 の 発 達 に遅 れ が あ っ た が、 特 有 の 移 動 手 段 が 見 られ 、EB症 状 に応 じて患 児 な りの 運 動 発 達 を た どって い た こ とが わ か っ た。 一 方 、 微 細 運 動 は、 幼 児 期 に箸 や筆 記 具 を持 て た と して も、 接 触 部 に生 じる 病 変 を繰 り返 す こ と に よ りEBの 癌 痕 拘 縮 が 進 み 、 そ の 機 能 が 失 わ れ て い た。 子 ど もの 成 長 ・発 達 や 病状 の 変化 と共 に必 要 とされ るサ ー ビス は適 宜 選 択 され 、調 整 され な くて は な らない(岡 光 ・ 清水 ・田 中,2001)。 看 護 師 は 、EBに よる 身体 機 能 へ の 影 響 を最 小 限 に し、 患 児 のQOLの 維 持 に 努 め て い く必 要 が あ る。 2)生 活行 動 の 変 化 と病 変 の 経 過 栄 養 障 害 型EBの 重 症 型 につ い て は 、 外 力 の 有 無 に 関 わ らず 病 変 が 出現 す る(清 水,2011)と い わ れ、 患 児 も出生 後 間 もな く して ほ ぼ全 身 に病 変 が 生 じて い る た め、 病 変 と明 らか な刺 激 のエ ピソ ー ドを直 結 す る こ とはで きない 。 しか し、 生 活 背 景 を照 ら し合 わせ てみ る と、 オ ム ツ に よる刺 激 が 消 失 した 時期 に は一 時 的 に症状 が軽 快 し、 座 学 す る よ う にな っ た小 学校 入 学 以 降 、殿 部 の症 状 が 悪 化 す る な ど、病 変 の 経 過 に は生 活上 の環 境 因子 が 影 響 して い た 。 そ の た め 、病 変 の ケ ア と同時 に生 活 状 況 の ア セ ス メ ン トを 行 い 、起 こ りうる 問題 を予 測 して 、生 活 上 の皮 膚 刺 激 を軽 減 す る た め の方 策 を講 じて い く必 要 が あ る。 2.EBの 子 ども を育 て る母 親 が経 験 して い る こ と 1)成 長 に伴 い 皮膚 刺 激 が増 え る現 実 との 葛 藤 前 述 した よ う に、 患 児 の病 変 の経 過 に は生 活 行 動 の変 化 が影 響 して い る た め、 小 児 期 のEBケ ア で は 、 患 児 の 成 長 発 達 を支 え な が らEBを ど う管 理 して い くか が ポ イ ン トとな る。 刺 激 を受 けた 部位 に病 変 を きた す とい う疾 患 の性 質上 、 母 親 は成 長 を喜 び なが らも、患 児 が動 くとこ とに対 す る ジ レ ンマ が生 じ う る こ とが 考 え られ る。 この よ う な状 況 の 中 に あ っ て も母 親 は患 児 の行 動 拡 大 を制 限 す る の で は な く、 安 心 して動 く こ とを優 先 し、脆 弱 な皮 膚 を不 織 布 ガー ゼ や包 帯 で覆 う選 択 を して い た 。母 親 は患 児 な りに 健 全 な成 長 発 達 を遂 げ、 患児 ら し く生 きて い くこ と を尊 重 して 関 わ って い た と思 わ れ る。 2)変 化 す る皮膚 症 状 に対 す るケ ア の模 索 母 親 は病 変 の経 過 、 患 児 が 訴 え る痛 み、 浸 出液 の 様 子 な どか ら、 創 傷 被 覆 材 の 利 点 ・欠 点 を分析 し、 患 者 会 で 得 た情 報 を ヒ ン トに、 患 児 に合 っ た ケ ア を 見 出 して い た。 動 き も活 発 で不 感 蒸泄 の多 い小 児 の EBケ ア は、 日常 の 過 ご し方 が 大 き く影 響 す る。 母 親 は患 児 の皮 膚 に起 こ る症状 を 日々観 察 し、 前 日の 患 児 の行 動 や ケ ア を振 り返 りな が ら、 そ の 変 化 の要 因 を探 る とい う行 為 を繰 り返 して いた 。 この行 為 を 皮 膚 ケ ア に 関す る専 門 知識 を持 ち合 わ せ て い な い母 親 が 行 う こ とは決 して 容 易 な こ とで は な く、 今 後 、 こ の状 況 に対 す る早 急 な改 善 が 必 要 で あ る。 3)症 状 コ ン トロ ール の ため の生 活 管理 EB患 者 に病 変 が 生 じる皮 膚 は全 身 を取 り巻 く臓 器 で あ る。 栄 養 障 害 型EBの 母 親 が 生 活 全 般 に わ た り管 理 を行 っ て い た よ うに、EBケ ア は皮 膚 ケ ア だ けで な く、 更衣 、 移 動 、排 せ つ な ど、 日常全 般 の ケ ア を必要 とす る。 そ の た め 、病 変 の生 じる皮 膚 の み に着 目す る の で は な く、全 身疾 患 と して捉 え た トー タル ケ アが 必 要 で あ る。 4)稀 少 難 病 の 現 状 と向 き合 う EBは 稀 少 難 病 で あ り、 疾 患 に 関 す る情 報 が少 な い。 これ に対 して母 親 は我 が 子 の為 に 自 ら積 極 的 に 動 い て情 報収 集 を行 っ て い た。 未知 の事 柄 が 多 い 中 で"患 者 自 ら動 くこ とが 必 要"と 患 者 の立 場 か らで きる こ とを考 え て の動 きで あ る と思 わ れ る。 この よ う な母 親 の姿 勢 は、 自律 した患 者 と して、 医療 者 と 共 にケ ア を考 え る事 に繋 が っ て い く と思 わ れ る。 し か し、 医療 者 側 の知 識 が少 な い現 状 で は、患 者 側 の 負 担 が大 き くな って い る。 在 宅 ケ ア にお け る直 接 的 看 護 ケ ア の提 供 の た め に は 、看 護 師 の 病気 ・障が い に 関 す る専 門 的 知 識 が 必 要 で あ る(及 川,1997)。 今 後 、 家 族 と共 にケ ア を考 え てい くた め に は、 医 療 者 がEBに つ い て の知 識 を持 ち、 ケ ア につ い て の 情 報 収 集 に取 り組 ん で いか な けれ ば な らな い。 3.看 護 へ の示 唆 1)看 護者 に よ るEBケ ア の充 実 にむ けて EBケ ア はEBを 全 身疾 患 と して捉 え た広 い視 点 で の ケ アが必 要 で あ る。 そ して 、 そ の 中で 中 心 とな る
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 皮 膚 ケ ア は、疾 患 の特 徴 をふ ま えた 専 門 的 ケ ア が 必 要 で あ る。EBの 患 者 、 介 護 者 、 医 療 専 門 家 は、 栄 養 障害 型EBの 問 題 点 で優 先 す べ き第 一 の事 項 に創 傷 ケ ア を挙 げ て い る(Paula et al. 2013)。皮 膚 ・排 泄 ケ ア認 定 看 護 師 な どの皮 膚 ケ アの 専 門 家 は 、母 親 や ケ ア を担 う訪 問看 護 師 や 外 来 担 当 看 護 師 に対 し、 創 傷 被 覆材 や 、 入 浴 な どの保 清 、 季 節 に応 じた環 境 調 整 の 方 法 な どケ ア に関す る情 報 提 供 を行 っ て い か な け れ ば な ら な い。 しか し、 希 少 疾 患 で あ るEBは 皮 膚 ・排 泄 ケ ア認 定看 護 師 で あ って もケ アの 経験 を 持 つ もの が 少 ない こ とが予 想 され る。 そ の た め 、 皮 膚 ・排 泄 ケ ア認 定 看 護 師 自身 が 積 極 的 にEBケ ア に 携 わ って い くこ と も必 要 もあ る。 さ らに、 皮 膚 ・創 傷 ケ ア に 関す る知 識 に基 づ い て ケ ア に 関す る助 言 ・ 指 導 を行 うEBケ ア の専 門家 の養 成 が 必要 で あ る。 そ して 、 患 者 ・家族 に最 も近 い存 在 で あ る訪 問 看 護 師や 外 来 担 当看 護 師 は、 ケ ア の 中心 と な って コー デ ィネ ー ター と して の役 割 を果 た しなが ら、 患 者 ・ 家 族 と信 頼 関係 を築 き、 日常 生 活 を熟 知 した 母 親 と 共 に、 患 児 に合 った ケ ア を提 供 して い くこ とが 必 要 で あ る。 2)ケ ア を行 う母 親 ・家族 へ の精 神 的サ ポ ー ト EBは 介 護 者 に重 い負 担 が 課 さ れ、 この 精 神 的 負 担 は疾 患 の 重 症 度 に関 連 し、 劣 性 栄 養 障 害 型EBの 介 護 者 の 負 担 は大 きな もの で あ る こ とが 明 らか と な って い る(S.Taboil et a1., 2009)。 苦 痛 に あ え ぐ 我 が 子 と対 峙 せ ざ る を え な い 状況 は 母 親 ・家 族 に と っ て 過 酷 な もの で あ り、 さ らに は、EBは 遺 伝 性 疾 患 で あ る た め、 親 と して 自責 の念 を抱 くこ と も考 え られ る。看 護 師 は、 患 児 ・家 族 を見 守 り、 そ の思 い に寄 り添 い、 母 親 が 自信 を持 っ て育 児 を行 うこ と を支 え なけ れ ば な らない 。 患者 ・家 族 が 負 担 を抱 え 込 む こ とが な い よ う、 社 会 資 源 の活 用 や 、 遺 伝 カ ウ ンセ リ ン グへ の引 き継 ぎ な ど、 長期 的 な視 点 を持 っ た 支援 が 必 要 で あ る。 3)各 専 門分 野 との 連 携 の 必 要性 EBケ ア は あ らゆ る専 門 分 野 の 連 携 が 欠 か せ な い 。 栄養 ケ ア や、 小 児 の運 動発 達過 程 の知 識 に基 づ い た水 庖 予 防 策 の検 討 、疹 痛へ の 配慮 、 療 痕 拘 縮 に よ る癒 着 予 防 な ど、 合 併 症 に対 す る方策 を講 じて い く た め に は 、 各 分 野 の 専 門 家 の 意 見 が 必 要 で あ る 。 患 児 のQOL向 上 の た め に は 、 全 身 を 管 理 す る た め に 各 分 野 の 様 々 な 職 種 が 協 働 して 各 専 門 家 が 相 互 に 意 見 を 出 し合 い な が ら ケ ア に あ た っ て い く必 要 が あ る 。 4)日 本 独 自 のEBケ ア の 標 準 化 に む け て EBは 病 型 や 重 症 度 に よ り各 々 に 現 れ る 症 状 が 異 な り、 疾 患 特 有 の 経 過 を た ど る た め 、EB患 者 当 事 者 や 、EBケ ア 経 験 者 か ら の 具 体 的 な 声 を 集 め て い く必 要 で あ る 。 個 々 の 症 状 に 応 じ た ケ ア を見 出 す た め に は 、 迅 速 な 診 断 やEBに 関 す る 情 報 を 入 手 で き るEBケ ア の ネ ッ ト ワ ー ク を 構 築 し て い く必 要 が あ る 。 そ し て 、 今 後 こ の ネ ッ トワ ー ク に 集 め ら れ た 情 報 と、 海 外 のEB Nurseに よ る ケ ア や 、EB Clinetに よ り作 成 が 進 ん で い るClinical Practice Guidelines と照 ら し合 わ せ 、 日本 の 患 者 に あ っ た ケ ア を標 準 化 し て い か な け れ ば な らな い 。 V結 論 1.栄 養 障害 型EB患 児 の 成 長 は 消 化 器 症 状 に影 響 された。また発達 は粗 大 運動 の遅 れが 生 じて いた。 2.成 長 に伴 う生 活 行 動 の変 化 に伴 い、 患児 を取 り 巻 く様 々 な環 境 因 子(お むつ の使 用 の 有 無 な ど) が病 変 の経 過 に影 響 して い た。 3.母 親 は患 児 の 日々の 成 長 に合 わせ て 皮膚 ケ ア を 行 い、 合 併 症 予 防 の為 の全 身管 理 も行 って い た。 また、 母 親 は皮 膚 症 状 の拡 大 が あ って も、 患 児 の 成 長 を妨 げ な い よう にケ ア 内容 を工 夫 す る努力 を 行 っ て い た。 4.今 後 の 課 題 と してEBケ ア 方 法 の 開発 な らび に EBケ アの 啓 発 とネ ッ トワー ク化 が 挙 げ られ る。 Ⅵ 本 研 究 の限 界 と今 後 の課 題 本 記 述 で は栄 養 障 害 型EBの 重 症 例一 事 例 を報 告 し たが 、EBは 病 型 や 重 症 度 に よ り、 症 状 と ケ ア が 異 な る こ とが 考 え られ る。 そ の ため 、 単 純 型EBや 重 症 度 が異 な る事 例 の調 査 や、 調 査 内容 、 観 察 ポ イ ン トを絞 っ た上 で更 な るデ ー タの蓄 積 と検 討 が 必要 で あ る。 成 長 発 達 を促 しなが らケ ア の方 略 を ど う組 み 立 て て い くか、 結 果 に応 じた考 察 とケ アの 再検 討 13
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 を順 次行 う とい う前 方 視 的 な調 査 を行 い、 デー タ を 集 積 してい か な け れ ば な らない 。 謝 辞 本研 究 に ご協 力 いた だ い た 患 児 とお母 様 、 ご家 族 の 皆 様 、 表 皮 水 庖 症 友 の 会DebRA Japan、EBに 携 わ る全 て の方 々 に御 礼 申 し上 げ ます 。 本 研 究 は文 科 省 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究(B)課 題 番 号 22390431、「遺伝 医療 の 質 向上 を 目指 した 遺 伝 サ ポ ー トグ ル ー プ と看 護 者 との協 働 方 略 の構 築 」(代 表研 究者 中込 さ と子)の 一 部 と して 実 施 し、 山梨 大 学 医学 工 学 総 合 教育 部 修 士 論 文 と して ま とめ た もの の 一 部 を抜 粋 し ま した。 文 献
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日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 写真1出 生: 左 写 真2出 生 時:右 足 写 真3生 後8か 月:全 身 写 真4 NICU入 院 中 写真5 這い這 いの様 子 写真6 右 膝 を立 てた前進運動 写 真8 2歳:両 足 写 真7 2歳:背 部 写 真9 4歳:腹 部 写 真10 7歳: 胸 部 写 真11 自助 具 使 用 の様 子 15
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014 写 真13 調 査 時:上 半 身 写真12 調査時: 背面 写真14 水萢 穿刺の様 子 写 真15 下 半 身 のMepilexR Lite貼 付 写 真16 下 半 身 に 不 織 布 ガ ー ゼ 使 用 後 写 真17 腹 部 のMepilexR Lite貼 付 写 真18 腕 のMepilexR Lite貼 付 写 真19 足 底 のMepilexR Lite貼 付 写真20 ロ腔 ケア に使用 す る洗浄瓶
日 本 遺 伝 看 護 学 会 誌 J. Genet. Nurs. Jpn 12(2) 2014
A descriptive
study of the development
and symptoms of a child with Dystrophic
Epidermolysis
Bullosa and parental care
Abstract
Epidemolysis Bullosa (EB) is a congenital skin disease that causes skin blisters, erosions, or ulcers stemming from slight friction. Since EB causes pathological changes, the symptoms spread all over the skin and requires daily care. Because of the rarity of EB, research into care of the disease has been lacking. Parents of EB patients have been struggling with taking care of the patients, and their burden tends to be high. Therefore, we conducted a descriptive study on changes in the skin symptoms of a ten year old patient with Dystrophic EB with the help of patient's mother, along with the physical development.
As a result, we found age appropriate development of the patient, although gross motor development was delayed; a digestive condition affected to physical growth. As the patient matured, physical activity increased and the skin condition changed. The patient's mother has tried to adjust the method of skin care in order to maintain normal growth.
Establishing a network for EB support and training EB experts are tasks for the future.
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