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降雨の短時間自動予測手法について 利用統計を見る

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(1)

降雨の短時間自動予測手法について

竹内邦良

(昭和53年8月31日受理)

On An Automatic Method

for Short-Term Precipitation Forecasting

KuniyoshiTAKEUCHI

       Abstract  Short・term precipitation forecasting is one of the promising subjects in the application of the use of radar echo imageries of precipitation. There are basically the following three methods for forecasting. One is to assume that the current motion of precipitation area conti皿es to the same direction at the same speed without distortion or development. An・ other is to consider the distortion and development as well as simple translation. The other is to use the metorological synoptic data in addition to the information about the graphical changes of radar echo patterns.  The method presented in this paper belongs to the second category;namely, the forecast− ing is conducted based only on the graphical characteristics of echo patterns but considering translation, enlargement and development. Topographical effects are also taken into account.  The full automatic forecasting method was found to be effective up to 20 minutes to the future. The man・machine system or a semi・automatic forecasting method, which takes into account the distortion factor as well, suggested about 40 to 50 minutes validity. These effective prediction ranges, however,1argely depend upon the characteristics of precipitation clouds and the criterion of evaluation, namely, the purposes of the use of predicted infor・ mation.

1.はじめに*

 レーダーによる降雨情報を用いて,降雨の短時間予 測を行う試みはすでにいくつか発表されている。いず れもブラウン管に映し出されたPPI画像を降雨強度 別にディジタル表示して,現在の画像と過去の画像を 比較することにより将来の画像を予測するという方式 をとっている。予測の方法は三種ある。一つは画像の 重心(ふつう降雨強度により加重して算出したもの) の単位時間ステップ内の移動量を計算し,同じ移動速 度が継続すると仮定して予測するものである。この場 合降雨域の変形,降雨強度の変化は予測期間中無視で きるものとされる。第二の方法は降雨域を500あるい は700mb面の風で流すことにより変形を予測するも *レーダーによる降雨観測の現況については(石崎・竹  内,1978)に詳しい説明を行っているので省略する。 ので,この場合には雨域の伸縮・回転等も表現される。 第三の方法は画像を降雨強度を高さ(2軸)とする三 次元的な降雨強度面として把え,三次元曲面の変形を 速度ベクトルと変形テンソルにより表現し,そのパラ メータの変化しない範囲で予測を行うものである。以 上三つの方法の詳細ならびに利害得失については(Ta keuchi,1978)を参照されたい。  本報文は第三の変形テンソル法をMan’Machine Systemとして用いる場合と,完全に自動的予測を行 う場合との比較を試みた結果を報告するものである。 このためまず変形テンソル法の概要を述べる。 2.変形テンソル法** (x,y)地点における降雨強度をzとすると,レー **詳しくは(竹内,1978)を参照。

(2)

ダー・エコーの映像は曲面f(x,y,z)=0によって表 される。この曲面を降雨強度面と称する。いま時刻tl において降雨強度面がf1(x, y,2)=0であったもの が,時刻t2においてf2(x, y, z)=0に変形したと すれぽ,これは一般に非線型変形である。この変形を 曲面ゾ1=0上の点P(x,y, z)がt2−tl=δt時間 後にゾ2=0上の点P’(x’,y’, z’)に移動したものと 考えれぽ,δtが十分小さく,点P。(X。,y。, Z。)の近 傍では

[鶯巨i圧]

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と表される。ここにu,v,wは点Pの速度ベクトルV のx,y, z方向成分であり,右辺第3項のマトリック スは変形テソソルTである。すなわち各成分は     ∂u    ∂v    ∂w   ε∬=冤’ε・・ = oj’ε22r万   鞠一†(∂v ∂u−十一∂x ∂y)・輪一†(;〉+怨)・   輪一†(∂u ∂w−十∂z ∂x)   t・・−s(∂w  ∂v∂y ∂2)・t・・一去({㍑一晋)・   (・a一鵠一器) であって,各行それぞれ伸縮速度,歪角速度,回転角 速度を表している。  変形テソソル法はこの展開が,点PO(X。, y。, ZO) の近傍のみならずすべての領域において成立するとい う仮定の下に降雨強度面の変形を取り扱う方法であ る。予測に際しては速度ベクトルγならびに変形テソ ソルTは時間に関して不変であるとする。したがって 変形テソソル法は定常な線型場を仮定しているという ことになる。  式(1)においてx’ −X。,x−x。等をあらためて〆, x 等と書き,またこれが点Pを点P’に写像する線型変 換であることを強調して書き換えると,

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i竃翻自 ②

となる。したがって点P(x,y,2)のδt時間後の点 P’(x’,y’, z’)を知るためには12個のパラメータを決 定しなくてはならない。Man−Machine Systemにょ るパラメータの決定方法は,4つ以上の相対応する点 の対P1, P、’;P2,1)2t,…;P々, P々’(k≧4)をδ彦時 間隔った既知の2枚のレーダー・エコーの映像上に人 為的に指定して最小自乗法により未知パラメータを解 く方法である。この際相対応する点の対は人間のパタ ーソ認識の能力をフルに生かして指定されるため,専 門家の判断の生かされる余地がある。この方法による 予測結果は単純補外,すなわち過去の傾向がそのまま 続くという原則の成り立つ範囲内では満足のできるも のである。ただし予測可能時間はせいぜい1時間以内 であり,降雨の性格によっては30分以下ということも ある。したがってこの方法はローカルな予報要請に応 えるための短時間予測にのみ適している。 3.パターン認識の自動化  人間のパターソ認識の能力は超合理的なものを含ん でおり,コンピューター等による機械的処理で代用で きない面を多分に備えているが,エコーの変形を線型 場の動きとしてVとTにより表現する限りにおいて は,機械的操作でパターソ認識を代用することも必ず しも不可能ではない。ただし本節で提案する方法はV ならびにTのすべてのコソポーネソトを自動決定する ものではなく,その一部を決定できるものである。  まずγおよびτにより表される線型場での点P(X, y,z)の運動方程式(1)を改めて書く。ここにδtを単 位時間とし,δt時間後の点Pの位置をP’ぽ,y’, 2tjとする。

隠』IHi籔二罵i闘

       ・巳]  ③

ここに本来はuδt,1+εxxδt等と書くべきところであ るが,u,ε,ωにはすべて単位時間がかかっているも のとして以下省略する。 ここで次のような特殊な場合を考える。   {    w=0    εxy, εya, εxx ==O      (4)    COXtωy,ω、=O w=・Oの仮定は本節で提案する自動化方法では必ずし も不可欠ではないが,たかだか10段階のzの値を考え ていること,zの変化はX,yの変化に比べ小さいこ と等の理由によりεzaでw成分の一部を代表させ得る

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との見通しを持って導入したものである。一方第二, 第三式は本方法では不可欠の仮定で,   ∂u ∂u ∂v  ∂v  ∂w        ∂w

  万・万・万・万・百・可=o

の状況を意味している。このようにずり変形・回転変 形を無視することは極めて重要な変形要素を落とすこ とになり,Man・Machine Systemに比べ予測性能が 低下することが予想される。  基準点PO(XO, yo,20)を通るX軸, y軸に関する 降雨強度面z==z(x,y)の各種モーメントを次のよう に定義する。 Ix−i.(x−・・)・(・一・・)dA Iy− i.(y−・・)・(・−z・)dA Gx−轤`(x−x・)(・一・・)dA G・−v.(・一・・)(・一・・)dA w・ i.(・一・・)dA (5) 積分領域Aは,レーダー・エコー図内で降雨の存在す る領域,すなわちz>0なる領域全体である。これら のモーメントが,(3)で表される線型場での降雨強度の 変形によって時刻tl, t2(t2−tl=δτ=単位時間)の 間にいかに変化するかを考える。時刻tlにおける上 記モーメントをIX 1, IY 1, GX 1, GY 1, W lと表 し,t2におけるものをIX 2, IY 2, GX 2, GY2, W2 と表せば,例えばIX 2は, IX2 −1・’・ J.’(・t−x・)・(・’一・・)dA’ であるが,(4)の仮定の下では    xL佑。=u+(1+εxx)(x−x。)   {    zt−20=(1十ε99)(z−20)      (6)    dA’=dx’・dy’・.(1+εxx)(1+εyy)dA が成り立っているので, ・xt− i.{・+(1+Sxx)(x−・・)}・(1+ega)(・一・・)     ×(1+εxx)(1+ε、、)dA    −(1+exx)(1+eyy)(1+・zz)[u・JA(・一・・)dA     +・u(1+・xx)∫。(x−x・)(・−z・)dA     +(・+exx)2JA(x−x・)・(・一・・)dA (・) すなわち   IX2=(1十εxx)(1十εyy)(1十εzz)   ・レW1+・・(1品GX・+(・+s・・)21XI](・) 同様にして IY2 =(1+Sxx)(1+e・・)(1+eza)[v・Wl    +2v(1+e・y)GY1+(1+e・・)・IYI] GX2=(1十εxx)(1十εw)(1十εaz)    ・[・W1+(1+Szg)GX1] GY2=(1十εxx)(1十εyy)(1十εzz)    ・[・Wl+(1+s,・)GY1] W2=(1十εxx)(1十㌦)(1十εzz)W1 (9> ⑯ (11) (12) 以上(8)∼a2)の5式より,εxx,εyv,ε、z, u, vが決定で きる。a2)より   (1+Sxx)(1+・yy)(1+・・∂一器 であるから,㈹式より

  ・一霊一舗(1+exx)

これと(8)式に代入すると(1+εxx)に関する2次方程 式   ;1(     GX121×1−     W1)(1+exx)2        一di,(IX2一霊)一・ が得られる。したがって 1+exx− V/{(IX・一霊2)/W・} ⑬ /{(   GX121×1−    W1)/W1}(・4 よりεxx,同様にして他のパラメータも決定できる。 なお1+εxx<0や1+εyy〈0の負根は,エコーが裏 がえしになる場合を表しているので棄却する。また虚 根を持つ場合もあるが,これは時刻tl, t2間のエコー の変形をec, v,ε。。, eyy,εzzの5つのパラメータに より表現することが不可能な場合に相当する。しかし ながら虚根の生じるケースは極めてまれであり,その 場合でも基準点P。をずらすことによって容易に実根 を得ることができる。 4.地形の影響を考慮した予測モデル  降雨域が山岳地帯に近づき,また山岳地帯を通過す るに伴い,降雨強度ならびに雨域の移動速度に変化を 生じることは当然のことであるが,その度合いについ て定量的観測資料は少ない。仙台気象レーダが観測し た1964年6∼9月の雷雨の移動消長記録からの解析に よれぽ(浅田他,1966),山岳斜面を上る場合,下る 場合,山稜部を移動する場合,山間部を移動する場合

(4)

で,雷雨の移動速度は平地の移動速度のそれぞれ0.58, 1.13,0.83,0.91倍となると報告されている。移動速 度変化は降雨の性質により大幅に異るが,ここではそ の気象学的検討は行わず,上記報告を雷雨に限らずす べての降雨に当てはめることとする。なお地形による 降雨強度の影響は山岳に達したとき移動速度の減少に より後続の雷雨と合体し急激に発達する場合がある が,定量的に報告された例はないのでここでは考慮し ない。  2点Ml(Xl, Yl), M2(x2, Y2)を結ぶ山脈M,M2 をベクトルM(Xl−X2,  2/1−!ノ2)であらわすと,降雨 強度面上の点P(x,y)の移動速度V(u, v)は〃に平 行な成分V,と,垂直な成分Vnによって   v==V,十Vn    一芸ピ+( M・「vv−  M M・M『)  a・) と表される。ここにM・V,M・Mはベクトルの内積を 意味する。またV。が山脈に向かっているか遠去かっ       づているかは,PQ=Vnδt(δtは単位時間)なる点Qを 考えて,   s=PM一QM,       a6) が正のとき向かっており,負のとき遠去かっているこ とがわかる。以上のことから点1)が山脈の影響域内に あるときには,   s>0のとき 「Vn’=O.58Vn,γε’=0.83V,       ⑰   s<0のとき Vn’=1.13Vn,れ’=O. 83V, として,   γ’==iVt’+v.’       ㈹ を山脈の影響を考慮した修正速度ベクトルとして用い れぽ良い。なお修正係数の有効数字については検討を 要するところであるが,本論文の目的範囲を越えるの でここではこのまま用いる。  孤立峰の場合には山脈.MiM2のかわりに,点Pと       − 孤立峰M,(x3, Y3)を結ぶ1)M3をベクトルm(x1−x, Yl−y)として, Mのかわりにmを用いれぽ山脈の場 合と全く同様に扱うことができる。 5. 予測と結果の検討  まず自動化手法と山岳部の影響を考慮する方法のテ スト結果を見る。Fig.1および2がそれである。いず れもA,Bの図より3節で述べた自動予測の手法を用 いて全く人為的操作なしに予測したものである。予測 結果C,D, EがいずれもA, Bより正しく単純補外 されていることがわかる。Fig.2には山岳部の影響範 囲も合わせて示してあるが,岡式による移動速度への 影響の様子がわかる。ただしこの図では実際には山岳

A8 C

  B

Fig.1

 Automatic

 Prediction  (Test Run) Fig.2 Antomatic Prediction with Topo− graphical Effects (Test Run) Fig.3  Automatic  Prediction  (Test Run) 部にかかっているA,Bは平地にあるものとしてV, Tの要素を計算している。以上の結果A,Bのような 変形に対して自動予測の手法は正しく作動することが わかった。  それではより意地の悪い変形,すなわち一部はたし かに移動・変形しているが,一部は全く静止している ような場合はどうであろうか。Fig.3はこの場合の結 果である。時刻tlの図形はAとA’で構成されてお り,t2の図形はBとB’で構成されている。 A’, B’は 実は全く移動変形していないのであるが,この図では 各時間ステップ毎に8行分下方にずらしてある。C, D,Eにおける&およびPは強度が10以上ということ であって,それ以上の意味はない。ここでは明らかに 右上方の図形が左へ寄って予測されており,予測とし ては不可解な様相を呈していると言っても過言ではな い。予測者として満足できる様相は何かと言えぽ,A が動き,A’が静止しているのであれば, V, Tとして はその平均的な移動・変形を把えてくれれぽ良いので

(5)

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(6)
(7)

あるが,結果は否であった。この理由は明白である。 A,A’からB, B’に変形する内容を平行移動速度V と,Tの一部である伸縮を表す要素のみにより表現す ることはできないからである。しかしながらこの場合 でもQ2)式の根は虚数ではなかった。これは(5)式で与え られるモーメソトが同じになる図形は理論的には無数 に存在し,より高次のすべてのモーメントが規定され ない限り一意的に図形を指定することはできない事実 に由来している。すなわち,二次までのモーメソトが 同じである複数の図形の中に,平行移動と伸縮のみで 表せるものが含まれており,求あられた解はその変形 を表すものになっているということである。Fig.3に おいても左側の図形は階段状,右側のは矩形となって おり,その点で全く無意味ともいえない様相を呈して いるが,これは二次までのモーメソトにより自由度が かなり限定されているからである。  以上のテスト・ラソにより次のことが結論される。 3節で提案した平行移動・伸縮のみを考慮した予測モ デルは,場所的に速度変化のない場合には正しく機能 するが,場所的に速度変化のある場合にはそれを含ん

だ予測をすることはできない・訓ま雛のひずみ

要素を無視しているための当然の結果である。ここに 注意すべき点は,Man−Machine Systemにおいては 歪要素も考慮されるため,Fig.3のような不合理は大 幅に改善されるということである。  実際のレーダー・エコーに適用した例に移ろう。 Fig.4∼8はいずれも建設省関東地方建設局所管の 赤城山レー一ダーにより把えられた1976年8月3日の前 線性降雨に関するものである。Fig,4は20時25分から 21時35分までの10分間隔の観測図,Fig.5は自動予測

結果,Fig.6はMan−Machine予測結果である。

Fig.5,6ともFig.4の上の2枚のエコーパターソか ら予測したもので,横に3図は同時刻の実測と予測を 示している。Fig.7は18時40分から19時50分までの 実測で,Fig.8はFig.7の上の2枚を用いての自動 予測結果である。やはり10分間隔で両図は実測と予測 を同時刻に対応させてある。図はすべて東西164km, 南北116kmの領域で,破線が県境,実線が海抜1500 m以上の山岳部をあらわしている。中央に群馬県が見 られる。  まずFig.4∼6,20時35分における予測結果と実 測をみる。すぐ目につくのは自動予測の方は著しい衰 弱過多の傾向を示しているということである。Man・ Machine Systemによる方はやや衰弱過少となってい る。いずれも実測との間にはかなりの開きがあるが, Man−Machine Systemの方に利のあることは疑いも ない。予測可能時間は全く目視による判断であるが, 自動予測でせいぜい20分,Man−Machineで同じく40 ∼50分位と言えよう。なお予測可能時間は降雨の性質 により大幅に変わるものであると共に,その予測情報 の利用目的によっても異ってくる。したがってここに わずか一例を用いて主観的な予測可能時間の目安を論 ずることは無意味である。  つぎにFig.7,8,18時50分における予測と実測を 見よう。Fig.8は自動予測ではあるが, Fig.5とは 二点において異っている。第一には山岳部の影響を4 節の方法に従って考慮したこと,第二にはFig.5が降 雨強度の消長の予測を著しく誤っている事実に鑑み, 降雨強度の変化要素εg、を先見的にゼロとしたことで ある。予測結果は両域の全容から言えば30分ないし40 分予測まで寛容できるようであるが,山越えのあとの 降雨が大幅に狂つている。これは実測において山岳部 がつねに白ぬきになっていることに原因している。す なわち,実際には山岳部にも降雨は存在しているにも かかわらずレーダーはそれを把えていないことによる 誤差である。これは山地からの反射電波と雨滴からの それとを区別するGround Clutter除去の技術が少な くとも1976年の時点では完成していなかったことに由 来していると言えよう。この原因のために,4節に述 べた山岳部の影響を考慮する方法の適否についてはこ れをその判定の資料とすることはできない。なおFig. 8は本稿で取り上げたすべての手法を用いた場合の自 動予測結果例として,その成功・不成功とはかかわり なく掲げたものである。 6. Man・Machine Systemの利点  自動化を阻む要因を挙げよう。第1にレーダーによ る観測が不可能な領域,例えぽside lobeや遮蔽壁に よって観測できない領域では実際には雨が降っていて も雨量データとしてはゼロとして扱う他ないことによ るものがある。このような空白は,機械的には無降雨 と見倣されるからモーメソトによりその拡大・縮小を 算定すると空白の位置により,実際には縮小している のに拡大していると判定されることがある。第2には 遮蔽された場合でなくとも雨域が目こぼれしている場 合には,全体として拡大しているにもかかわらず,モ ーメソトの減少により縮小していると判定されてしま う。第3には雨域が移動して観測範囲外に出る場合で あるが,機械的にはこれは移動ではなく縮小と判定さ れる結果となる。第4には山岳部の影響により移動が 足速になったり遅くなったりしている場合でも機械的

(8)

にその影響のみを除外することはできない。  以上の難点は必ずしも絶対に不可避のものぽかりで はない,例えぽ第1点については複数のレーダーを導 入することにより互いに観測不可能域を補えば良い。 第3点についてもレーダー雨量計の観測網が整備され 十分広範囲のエコー図が使えるようになれぽ解決され る問題である。しかしながらMan−Machine System においてはそのような環境の整備を待つまでもなく, 人間のパターソ認識の能力によりすべての難点は容易 に回避できる,第1∼第3点については目視で十分で あるし,第4点については対応点の指定を山岳部以外 のところで行えば良い。  降雨強度については一時的に急速に強度が増してい ても,将来ともそのまま同じ割合で強度増が続くとは 考えられない場合がある。このような状況も熟練者の 判断で対応点の指定からはずすことができる。Man− Machine Systemの利点は以上のように熟練者の知識 を必要に応じて加えることができることにある。 7. あとがき  本稿に提案した降雨の短時間自動予測手法は,雨域 の平行移動と伸縮ならびに降雨強度の単純盛衰を追跡 できるものである。この方法は対象となる降雨の移動 方向,伸縮・盛衰が一様なものについては良好な結果 を示すが,変形場が歪んでいるものについては満足の いく結果を期待できない。一方Man・Machine System によるものは歪んだ場を表現できることの他に,種々 の熟練者の見識を必要に応じて取り入れることができ る利点を持っている。完全自動予測にするかMan・ Machine Systemによる半自動予測にするかは,予報 施設の設備・人員の内容に応じて判断されるべきもの である。いずれの場合でも単純補外法であるから予測 可能時間は40∼50分である。今のところ自動予測の性 能はMan・Machine予測に劣り,予測可能時間はせ いぜい20分である。このような極く短時間の予測を利 用できる分野としては飛行場や高速道路の管理,小流 域での流出予測が挙げられる。なお予測可能時間は降 雨の性質,予測情報の利用目的により大幅に異るもの であり,一概に目安を定めるべきものではない。  本研究は文部省昭和53年度科学研究費補助金(一般 研究D,課題番号365182)を受けて進められた。また, 建設省関東地方建設局利根川統合管理事務所より多数 のレーダー観測資料の提供をいただくと共に,建設省 ・気象協会の関係各位から種々の示唆を賜わった。こ こに厚くお礼申し上げる。

引用文献

1)石崎・竹内:レーダーによる降雨観測の現況,土木学   会誌,vo163, no・4,1978 2) Takeuchi, K.:Short’term Rainfall Forecasting   by Simple Extrapolation of Radar Echoes, in   “Final Report to WMO Hydrology Committee  on the Most Effective Combination of Radars,   Rain Gauges and Station Flow Gauges to Pro−   duce Hydrological Forecasts”by K. Ishizaki,   1978 3) 竹内:雨域・雨量強度分布変化の短時間予測,第22回   水理講演会論文集,1978 4)浅田・山川・春日:仙台気象レーダーによる基礎調査   (1,2),気象庁研究時報,vol.18, no.11,1966

参照

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