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無伴奏女声合唱曲:日本旋法による三つの聖母賛歌(N.B.1)
高 橋
正
道
Composition Note:"TRES LAUDES IN HONOREM
B.MARIAE VIRGINEM,MODE ORIENTALI"
Masamichi Takahashi (1)Reginacaeli <天の元后、アレルヤ> (2)Salve Regina <元后 あわれみの母 > (3)SaiveMater <めでた し、慈 しみ深 い母 > 作曲 :高橋正道 (1998年2月20日 初演) 【作 曲 ノー ト】 カ トリック教会 は、聖母マ リアに対す る崇 敬か ら多 くの聖母賛歌 を持 っている。 この三 つの聖歌 は、 ヨーロッパのゴチ ック時代 に隆 盛 を極 めた典礼聖歌のグレゴ リオ聖歌 に起源 がある。ルネ ッサ ンス期 には、 このグレゴ リ オ聖歌 は、変容 して新 しい音楽様式 となった。 これが、ポ リフォニーによる合唱音楽である。 作曲家 は、競 うようにこの新 しい技法を駆使 して曲を作 った。以降 もヨーロッパの音楽史 全体 に数々の名曲が生 まれ、修道院やカテ ド ラルで典礼聖歌 として聖歌隊 によって演奏 さ れた。 そ して、今 日で もそれは、有効で継続 している。 (N.B.2) 従 って、 この作品は、現代聖歌の創作 とい う積極的姿勢 を持 っている。 まず、「日本旋法 による」 と付 した事 につ い て、以下二つの観点か ら述べ る。
1.
歴史的旋法理論の観点か ら
先 に述べた ように、 この聖歌 のルーツは、 ヨーロッパ中世期のグレゴ リオ聖歌 にある。 単旋律で伴奏 も持たないグレゴ リオ聖歌 の特 徴のひ とつは、 リズム的特性 である。 それは、 今 日我々が親 しんでいるような、拍子 の枠組 みの中で作曲されてはいない。 自由な リズム である。祈 りの ことばを拍子の枠組 みに押 し 込 む事 をしなかった。聖書 の ことばに意味 を 込 めて発すれば、 自由な リズム となった。 も うひ とつの特徴 は、旋律的特性 である。祈 り の ことばをどのような音で発す るか、つ まり、 旋律のめ ぐらせ方である。祈 りを音 に してめ ぐらせ る方法 には、四つの方法があった。 レ の旋法、 ミの旋法、 フアの旋法、そして ソの 旋法である。 これが、教会旋法の基本的類別148 清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号) である。 (N.B.3) それ ぞれの旋法 には性格 があ り、祈 りの こ とばに合 わせて、ふ さわ しい旋法が選択 され て歌われた。従 って、 グレゴ リオ聖歌 は、 ヨ ー ロ ッパ世界 の民族 の琴線 に触れ るプ リミテ ィーヴな旋律的性格 を有 している。 さて、「日本旋 法 に よる三 つの聖母 賛歌」 は、 日本 固有の旋律 的め ぐり方 によって作 曲 した ものである。 日本 の旋律 を性格 づ けるも の は、 日本の伝統音楽の源泉 となっている日 本旋法 で ある。陽旋法 と陰旋法 とは、その代 表 である。陽旋法 は二つ、陰旋法 は三 つの種 類 に分類 され る。 (N.B.4) 当然 の ことなが ら、 これ らは、 ヨー ロ ッパ の旋法 とは異 なる。従 って、当該作品 は、 ヨ ー ロッパ の旋法 によって作 曲 した ものでなは ないので、あえて 「日本旋法 による」 と断 り 書 きを付記す る必要性があった。断 らなけれ ば、「多 くの場合、ヨー ロッパの長調 か短調 で 作 曲 されている事 を了解」 しているの ことに なって しまう。 (N.B.5)
2. 聖歌の.
現代的課題の試作 という
観点か ら
典礼音楽の現代的課題 は、典礼 における会 衆 の行動 的参加 を促進す る事、 また民族 の伝 統的文化 との融合 をはか る事 である。今 日、 カ トリック教会で も、聖歌 の新 しい創作的試 み を行 なってい る。典礼聖歌 の普及 は、 その 一 つの成果である。 また、各組織、団体 で も 独 自の聖歌 を作 り、集いに利用 しているのは 衆知 の事 である。 日本語 を歌詞 に した平易 な 音楽 は、誰 にで も簡単 に歌 う事がで きる。 ま た、誰 にで もその ような曲は、作 曲で きるよ うで もある。 しか し、国語使用 と伝統文化 の 融合 を聖歌 に関係す る ところで考 える と、現 代聖歌 の動向 には、根本的 に欠如 してい る事 が あ る。 それ は、 日本 の旋法 を使 った作品が あ ま りに も少 ない、とい う事 である。(N.B.6) 新作聖歌 は、確か に 日本語 を使用 している が、旋律 については、 そのほ とん どが、完全 に ヨー ロッパの音階 を借用 している。 つ ま り、 聖歌 の旋律 は、や は りヨー ロッパ の音階であ る事 を自明の事 として了解 してい る。 もちろん様々な試 みがあっていいだ ろう。 事実、各種 の聖歌が作 られつつある。 そ して、 この 「日本旋法 による、三 つの聖母賛歌」 も また、典礼音楽 に関す る指針で奨励 されてい る現代的課題への一 つの試 み として発表 す る ものである。 (N.B.7) 尚、この作品 を、その音響 か ら「日本 <的 > だ」 と評 され るのは自由だが、 それだ けで は、 当 た って はい ない。 日本旋 法 その もの か ら 「的」 とい う暖味 な断定 は、 あ り得 ないので あ る。「六段 の調べ」を日本 <的 > とは言わな いoまた、グレゴ リオ聖歌 をヨー ロッパ <的 > とも言わない。 それ は、 日本 <の>調 べであ り、片や ヨーロ ッパ <の>聖歌である。芸術 上、問題 となるの は、 それが何 を伝 えようと していて、実際 に何 を伝 え られたか、が問題 なのである。 【演 奏 に際 して】 第1曲 :Reginacaeliノー トル ダム楽派 の オルガヌムの手法 を使 ってある。和音 を保持 す るパー トは、力強 く歌 う。ホクエ トウス (し ゃっ くり)の技法 も挿入 した。 第 2曲 :SalveRegina 教 会 旋 法 の レの旋 法 は、陰旋法 と共通 の雅び さが ある。聖母 マ リアの気品 と優 しさをのびやか に歌 う事 で表高橋 :無伴奏女声合唱曲 :日本旋法による三つの聖母賛歌 149 現 して欲 しい。 自由 リズムで歌 う斉唱部 分 は、
こ とば を生 か して歌 う。
第3曲 :SalveMatermisericordiae 韻 を
踏 んだ歌 詞 に よってい る。 こ とば と区切 りを 明瞭 にす る為 に フ ァ ミリア ・ス タイルで作 ら れ てい る。生 き生 き と前 へ進 めて歌 う。 【注】
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この作 品 は、長野冬季 オ リンピ ック 文化 ・芸術祭参加 プログラム「
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日本 の響 き」に際 して 出品、初演 された。主催 :作曲集団た に しの会 指 揮 :飯 田忠 文 合 唱 : 女声合唱団コール ・ユニオ ン (円福幼 稚園附属、代表 :小山雅江) 演奏会 場 :長野県県民文化会館中ホール(
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B.
2
)
第二バ チカン公会議の 「典礼憲章」 は、 国語 による聖歌 を奨励 したので、各国 で真筆 な取 り組がある。 しか し、 また 「典礼音楽 に関する指針では、」伝統的 な聖歌 も同 じように大切 に し、それか ら学ぶ よう喚起 している。 (憲章101,116) (指針51,59)参照 (NB.3)水嶋良雄、『グレゴ リオ聖歌』p.87、音 楽乃友社、昭和41年。(
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4
)
小 山清茂 / 中西覚 、「日本 和 声」PP.
9-24、音楽乃友社、1997年。(
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プログラム解 説 く作品 について>当該作 品の項、参 照 (N.B.6)カ トリック聖歌集 には、高田三郎作 曲 「や まとの ささげ うた」が入 ってい る。 また、同氏 による 「雅楽の旋 法 による、 マ リアの歌」は、バチカンで演奏 され た。尚、1995年、カ トリック正義 と平和 委員会主催、「戦後50周年、被爆50周年 広島大会」において、拙作 による「日本 旋法 による、平和 の ミサ」が捧 げ られ た 。(
N.
B.
7
)
「音楽家たちは、典礼のために真 の宝 庫 を教会 に提供 して きた伝統 を追求す る とい う熱意 に動 か されて、新 しい課 題 に取 り組 むべ きである。彼 らは、過去 の作品のスタイルや特徴 を学ぶべ きで あるが、同時 に典礼 の新 しい規定 と必 要 とを注意深 く考慮 し、 それ によって 『すでに存在 している形態か ら、新 し い形態が、いわ ば有機 的発展成長 して くるように』(憲章23)、そ して新 しい作 品が、教会 の音楽的宝庫 の新 しい部分 として、過去の作 品に比 らべて恥ずか しくない部分 とな るように配慮 すべ き である。
」(典礼音楽 に関する指針59)よ り。150
【日本語訳】
清泉女学院短期大学研究紀要 (第17号)1
.【
Re
gi
nac
a
e
l
i
】
Reginacaelilaetare,alleluia: 天 の元后、アレルヤ。Quiaquem meruistiportare,alleluia
あなた に宿 られた方 は、ア レルヤ。
Resurrexitsicutdixit,alleluia:
おおせの ように復活 された。 アレルヤ。
OrapronobisDeum,alleluia.
われ らのために祈 り給 え。 ア レルヤ。
2
.
【
Sal
v
eRe
gi
na
】
SalveRegina,matermisericordiae, 元后 あわれみの母。
Vitadulcedo,etspesnostara,salve.
我 らの命、喜び、希望。
Adteclamamus,exsules,filiiHaeve.
旅路 か らあなた に叫ぶエバの子。
Adtesusupiramus,gementesetflentesinhaclacrimarum valle.
嘆 きなが ら、泣 きなが らも涙の谷 に あなた を慕 う。
EiaergoAdvocatanostara,illostuosmisericordesoculosadnosconverte.
我 らの為 に、 とりなす方、哀れみの 目を我 らに 注 ぎ、
EtJesum benedictum fructum ventristui,nobisuposthocexsilium ostende, 尊 い貴方の子、 イエスを旅路 の果 てに我 らに示 して下 さい。
0
clelmns,0pia,0dulcisVirgoMaria.高橋 :無伴奏女声合唱 曲 :日本旋法 による三 つの聖母賛歌
3
.
【
Sa
l
v
eMa
t
e
r
】
SalveMatermisericordiae,MaterDei,etmaterveniae,
めでた し いつ くしみ深 い母、神の母、 ゆるしの母、
Materspel,etmatergaratiae, 希望の母、恵みの聖母、
Materplenasanctaelaetitiae,0 Mria!
尊い喜びにあふれ る母 、おお、マ リアよ。
Salvedecushumanigeneris, めでた し人間のはまれ。
SalveVirgodigniorceteris, 乙女の中の乙女、
Quevirginesomnestransgrederis, すべての乙女 にまさ り、
Etaltiussedesinsuperis,0 Maria!
天の高みに座 る方、おお マ リア。
DudrationI11'20''
TRESLAUDESLNHONOREM
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l.Regina caeli
MASAMAICHITAKAHASHl
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