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<実践報告>新人助産師の分娩管理能力を育成する教育体制の課題 利用統計を見る

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新人助産師の分娩管理能力を育成する教育体制の課題

Challenges of Educational Systems to Cultivate the Ability with Labor Management for

Novice Midwives

渡邉 竹美

1)

,小林 康江

2)

,中込さと子

2)

,丸山 和美

2)

WATANABE Takemi, KOBAYASHI Yasue, NAKAGOMI Satoko, MARUYAMA Kazumi

要 旨

目的: 新人助産師が 1 年間で行った分娩介助事例の経過と転帰を分析し,新人助産師の分娩管理能力を育成 する教育体制の課題を検討することである。 実践内容: プロジェクトで作成した新人助産師教育プログラムに沿って,1 年間の教育を行った。分娩介助事 例の実践評価は,新人助産師の自己評価と指導助産師による評価を行った。分娩介助を行った事例 の情報を整理し,分娩介助事例の転帰から,分娩時の異常の原因や要因を分析した。 結果: 分娩介助を行った 62 事例のうち,ローリスク事例は 52 事例であった。ローリスク事例では,分娩第 1 期の自然陣痛は 34 事例,分娩第 2 期の自然分娩は 36 事例,分娩第 3 期・4 期の正常範囲の出血は 39 事例であった。最終的に正常分娩と診断されたのは 18 事例であった。62 事例のうち,吸引分娩は 20 事例であり,吸引分娩の適応は胎児機能不全が 13 事例であった。分娩後 2 時間までの出血量が 500g 以 上であった異常出血は 18 事例であった。 考察: 新人助産師の分娩管理上の課題として,分娩第 2 期の胎児管理と分娩後 2 時間までの出血管理の 2 つが 挙げられた。分娩介助事例の自己評価では,分娩進行のプロセスで,新人助産師が行っている臨床判断で ある思考過程の客観的な査定やそのプロセスで新人助産師が抱える課題を把握することに限界があること が明らかになった。その対策として,次年度の新人教育プログラムでは,毎月 1 回,分娩介助を行った事 例に関する事例検討を行うことを加えた。事例検討を通して,新人助産師が行った分娩管理上の課題を明 らかにするとともに,その課題の達成状況や臨床判断の思考過程を教育担当者全員で共有することとした。 キーワード 新人助産師,分娩管理能力,教育体制

Key Words Novice Midwife, Labor Management, Educational System

受理日:2015 年 1 月 30 日

1) 山梨大学大学院総合研究部医学域看護学系(プライマリー助 産ケア):Division of Nursing Science, Faculty of Medicine, Graduate Faculty of Interdisciplinary Research, University of Yamanashi (Primary Midwifery Care)

2) 山梨大学大学院総合研究部医学域看護学系(母性看護・助産 学):Division of Nursing Science, Faculty of Medicine, Graduate Faculty of Interdisciplinary Research, University of Yamanashi (Maternity Nursing & Midwifery)

Ⅰ.はじめに

分娩を取り扱う診療所は,妊産婦と母子のプライマ リーケアを行う一次医療施設であり,全出生数のおよそ 半数を取り扱っている1) 。診療所を訪れる妊産婦は,正 常な妊娠・分娩・産褥・新生児の経過が期待できる対象 者(以下,ローリスク妊産婦・母子)が多い。助産師は, 保健師助産師看護師法で定められた業務範囲に則り, ローリスク妊産婦・母子の助産診断と助産ケアを自らの 責任のもとに実施できる。しかし,診療所で働く助産師 は少なく,新卒助産師の就業先として診療所が選択され ることはほとんどない。 新卒助産師が,就業先として診療所を選択しない理由 の 1 つに,新人教育プログラムがないことが挙げられる2) そのため,2011 年 10 月に学士課程で助産基礎教育を受 けた新人助産師が,診療所に就職した時に受けられる教 育プログラムを作成・実施するプロジェクトを立ち上げ た。このプロジェクトでは,プライマリーケアの場であ る診療所を訪れるローリスク妊産婦の妊婦健康診査,分 娩管理,産後の母子のトータルケアができる助産師を 3 年間で養成することを目指している。そして,プロジェ クトの活動は,診療所と大学の連携・協働で行われ,プ ライマリー助産ケアプロジェクト(以下,PMC プロジェ クト)として,その活動をスタートした3) これまでの PMC プロジェクトの活動は,新人助産師

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を迎えるためのフィールドの整備と教育体制の強化3)4) 継続助産ケア卒後研修プログラム(以下,PMC プログラ ム)の新人助産師教育プログラムを作成し4),プログラ ムに則り 1 年目の新人助産師教育を行った。1 年目の教 育プログラムでは,分娩期・産褥期・新生児期の助産診 断と助産ケアの自立を到達目標とした。特に分娩期は, 分娩所要時間が初産婦で平均 12 ~ 15 時間,経産婦では 5 ~ 8 時間と,産褥期や新生児期に比べ経過が早いとい う特徴がある。本報告は,新人助産師が 1 年間に行った 分娩介助事例の経過と転帰を分析し,新人助産師の分娩 管理能力を育成するための教育体制の課題を検討するこ とである。

Ⅱ.実践内容

1. 実践の場所 分娩を取り扱う診療所(1 施設)。 2. 実践の内容 1) 新人助産師教育プログラムの概要と到達目標 新人助産師教育プログラムは,分娩管理を中心に,産 婦,出生直後の新生児,母子へとケア対象を拡大し,そ れぞれ第 1 ~ 4 段階まで各段階別に自立度を定めた。本 プログラムの到達目標は,分娩期・産褥期・新生児期の 助産診断と助産ケアの自立である。ここでの自立とは, 新人助産師のレベルで,自分のできること,できないこ とを適切に判断し,必要に応じて指導や指示を受けると いうことを示す。 2) 1 年間の実施内容 2013 年 4 月に診療所に就職した新人助産師を対象に, PMC プロジェクトで作成した新人助産師教育プログラ ムに沿って 1 年間教育を行った。表 1 は,分娩管理を 中心とした 1 年間のプログラムの実施内容である。 分娩介助事例の実践評価は,新人助産師の自己評価と 指導助産師による評価を行った。分娩介助事例の自己評 価は,助産総括,自己評価と課題,指導助産師の助言を 所定の用紙に記載した。これは新人助産師がリフレク ションできる能力の獲得を目指したものである。指導助 産師による評価は,分娩介助 1 ~ 10 事例までは,新人 助産師と一緒に産婦ケアを行った指導助産師との 2 者で 事例ごとの振り返りを行った。11 事例目以降では,新 人助産師の申告により,適宜,指導助産師の評価を受け ながら事例の振り返りを行った。また,新卒助産師研修 ガイドのチェックリスト5)の一部をアレンジし,10 例, 20 例,30 例,40 例,1 年後の段階別到達度を評価した。 1 年目終了時には,2 事例の事例報告を行った。 3. 分娩介助事例の情報の整理 1 年間で新人助産師が分娩介助を行った事例につい て,以下の視点で整理した。 1) 新人助産師に関する情報:プログラムの進行段階, 産婦を受け持った時の勤務シフトと受け持ち時の産 婦の分娩進行状態である。 2) 分娩管理に関する情報:産婦の情報,入院時の状態(誘 発分娩の場合にはその適応),分娩経過,娩出方法(急 速遂娩術ではその適応),分娩経過中に行われた医療 介入,出生直後の新生児情報,分娩所要時間,分娩 時出血量である。 4. 分析 正常分娩の定義6)は,以下の 9 つの条件を満たしたも のである。 ①妊娠 37 週 0 日~妊娠 41 週 6 日,②自然に陣痛が発 来,③成熟胎児,④経腟,⑤前方後頭位で娩出,⑥母児 ともに障害や合併症がなく予後が良好,⑦分娩経過にお いて通常の範囲内の会陰切開以外の手術的操作を行って 表 1 分娩管理を中心とした 1 年間のプログラムの実施内容 期間 5 日間 4/7 ~ 5/15(約 1.5 か月) 5/16 ~ 6/27(約 1.5 か月) 6/28 ~ 9/2(約 2 か月) 9/3 ~ 3/31(約 7 か月) 勤務 日勤 日勤 /on call 日勤 早番/リーダー業務/ 夜勤/拘束 通常の勤務 実 施 内 容 分娩管理 オリエン テーション 第 1 段階 第 2 段階 第 3 段階 第 4 段階 強化 独り立ちを目指す チームの一員として独立 自立を目指す 分娩介助数 見学 1 ~ 10 例 11 ~ 20 例 21 ~ 30 例 31 例~ 62 例 ケア対象/ 業務の拡大 産婦ケアに専念/産婦不在 時は採血,検査等の実施 出生直後の新生児ケア 母子のケア 入院中の妊婦ケア 帝王切開術 外来の一部業務 救急搬送 地域と連携した継続看護 評 価 段階別到達度 10 例終了後の評価 20 例終了後の評価 30 例終了後の評価 40 例終了後の評価 1 年後の評価 評価は新人と指導助産師の 2 者で行い,指導助産師が段階ごとの到達度を評価する 分娩介助事例 自己評価 事例毎に指導助産師と 振り返りを行う 11 例目以降は,必要時に自ら指導を仰ぎ.20 例,30 例,40 例終了時には 指導助産師と振り返りを行う

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いない,⑧分娩所要時間が初産婦では 30 時間未満,経 産婦では 15 時間未満,⑨分娩後 2 時間までの出血量が 500g 未満,この定義に基づいて分娩介助事例を整理し た。そして分娩介助事例の転帰から,分娩時に起こった 異常の原因や要因を検討した。また,新人助産師が行っ た分娩管理の状況を理解するために,分娩介助事例の自 己評価表の記述内容や分娩介助事例の記録であるパルト グラム等を参考にした。 5.倫理的配慮 診療所責任者および新人助産師には,研究協力者とし て研究参加を依頼し承諾を得た。得られたデータの公表 に際し,施設や個人が特定されないよう配慮した。本研 究は,山梨大学医学部倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号 1066)。

Ⅲ.結果

1. 1 年間に行った分娩介助事例の経過 1 年間に行った分娩介助事例は 62 事例であった。62 事例のうち,人工的に陣痛を誘発した 10 事例を除いた 52 事例は,自然に陣痛が発来した事例(以下,ローリス ク事例)の分娩管理であった。第 1 ~ 4 段階別分娩介助 事例の概要を表 2 に示した。また 62 事例の経過を図 1 に示した。 表 2 段階別分娩介助事例の概要 数字は件数を示す 段階 期間 対象者 経過 娩出方法 500g 以上の異常出血 (分娩介助数) 初産 経産 自然 促進 誘発 誘発の適応 自然 吸引 吸引の適応 第 1 段階 (10 件) 1.5 か月 5 5 5 5 0 ─ 5 5 胎児機能不全 3 4 分娩停止 2 第 2 段階 (10 件) 1.5 か月 5 5 4 2 4 予定日超過 3 7 3* 胎児機能不全 2 3 墜落産予防 1 分娩停止 1 第 3 段階 (10 件) 予定日超過  2 7 3 胎児機能不全 1 2 2 か月 6 4 3 3 4 希望 1 分娩停止 2 羊水過少傾向  1 第 4 段階 (32 件) 7 か月 12 20 22 8 2 予定日超過 1 23 9 胎児機能不全 7 9 墜落産予防 1 分娩停止 2 予定日超過 6 胎児機能不全 13 (62 件) 28 34 34 18 10 羊水過少傾向 1 42 20 分娩停止 7 18 希望・墜落産予防 3 *1 件は鉗子分娩 は異常を示す 陣発/破水後陣発 52例 予定日超過6例 羊水過少傾向1例 墜落産予防2例 産婦の希望1例 入院の判断 出血正常 7例 分娩第3・4期 出血管理 62事例 陣痛促進 18例 吸引分娩 11例 異常出血 1例 分娩第2期 分娩方法 分娩第1期 陣痛管理 自然陣痛 34例 自然分娩 29例 自然分娩7例 異常出血 1例 出血正常2例 出血正常 18例 異常出血11例 出血正常4例 自然分娩 6例 吸引分娩4例 誘発 10例 異常出血 1例 [ローリスク事例] [誘発事例] 出血正常 10例 吸引分娩 5例 異常出血 4例 出血正常3例 図 1 新人助産師が 1 年間で行った分娩介助事例の経過

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2. ローリスク事例の経過と転帰 52 事例のローリスク事例の経過は,自然陣痛 34 事例 (65.4%),自然分娩 36 事例(69.2%)であった。分娩第 3 期・ 4 期の出血量が 500g 未満の正常範囲の出血(以下,正常 出血)は 39 事例(75.0%)であった。最終的に正常分娩と 診断された事例は,52 事例のうち 18 事例(34.6%)であっ た。 3. 1 年間で経験した分娩管理の内容 1) 入院の判断 分娩管理では,産婦から電話で連絡を受けて,産婦の 主訴と診療録の情報をもとに,陣痛発来,あるいは破水 などを推定し,入院の要否を判断する。産婦が来院した ら診察を行い,その結果を合わせて,分娩開始や破水の 有無を判断して入院を決定する。入院の判断から分娩ま での助産診断と助産ケアは,第 4 段階(6 か月以降)に入っ てから 7 事例経験していた。これら 7 事例は,すべて夜 勤帯での経験であり,新人助産師は自分で判断し,実施 していた。 2) 分娩第 1 期の陣痛管理 分娩第 1 期の陣痛管理は,非薬理的方法による自然陣 痛の管理と子宮収縮薬を使用した薬剤による陣痛管理を 経験した。非薬理的方法による自然陣痛の管理では,産 婦の緊張や産痛の緩和,活動や休息のバランスの調整, 体位の工夫,コンフォートケア等を行っていた。また, 子宮収縮薬を使用した陣痛の管理では,微弱陣痛に対す る陣痛促進と人工的に陣痛を誘発する陣痛誘発の両者を 経験していた。子宮収縮薬の管理では,陣痛促進は第 1 段階から,陣痛誘発は第 2 段階から経験した。 ローリスク 52 事例中,微弱陣痛の診断で子宮収縮薬 を用いた陣痛促進は 18 事例(34.6%)であった。陣痛促 進を行った 18 事例のうち 13 事例(72.2%)は,受け持ち 時すでに子宮収縮薬を使用していた。陣痛促進を始めた 時の子宮口の開大は,5cm 未満 5 事例,5cm ~全開大 前 11 事例,全開大以降 2 事例であった。 陣痛誘発は 10 事例であり,誘発の適応は,胎児側要 因が 7 事例(予定日超過 6 事例,羊水過少傾向 1 事例), 母体側要因は墜落産予防 2 事例,非医学的要因として産 婦の希望による希望誘発 1 事例であった。母体側要因 2 事例と希望誘発 1 事例は,いずれも経産婦であった。 3) 分娩第 2 期の管理 分娩第 2 期の管理では,母子ともに健康な状態では自 然分娩となる。ローリスク 52 事例中,自然分娩は 36 事 例(69.2%)であった。急速遂娩術である吸引分娩は 16 事例であった。吸引分娩の適応は,胎児機能不全(non-reassuring fetal status,以下 NRFS)10 事例,分娩停止 6 事例であった。 ローリスク事例では,自然陣痛で経過した 34 事例の うち吸引分娩となった事例は 5 事例であった。吸引分娩 の適応は,全例 NRFS であった。5 事例のうち 4 事例は, 産婦の入院時に受け持ちを開始していた。NRFS が起 こった状況は,4 事例が破水後であり,破水から 7 ~ 21 分後に吸引分娩となった。1 事例は,不正軸侵入が疑わ れた事例であった。 ローリスク事例で,陣痛促進で経過した 18 事例のう ち吸引分娩となった事例は 11 事例であった。11 事例は, 全員初産婦であり,8 事例は促進開始以降に受け持ちを 開始していた。吸引分娩の適応は,NRFS5 事例,分娩 停止 6 事例であった。NRFS が起こった状況は,破水後 24 時間以上の経過 2 事例,分娩所要時間が 30 時間以上 の遷延分娩 2 事例,出生時の新生児体重が heavy for infant(HFD)1 事例であった。 陣痛誘発を行った 10 事例のうち, 4 事例が吸引分娩で あった。吸引分娩の適応は,NRFS3 事例,分娩停止 1 事例であった。吸引分娩となった 4 事例は,すべて胎児 要因である予定日超過で陣痛誘発を行っていた。 分娩介助事例 62 例のうち,自然分娩は 42 例(67.7%), 急速遂娩術は 20 例(32.3%)であった。急速遂娩の適応 は NRFS13 事例(21.0%)であった。 4)分娩第 3 期と 4 期の管理 胎盤娩出から 2 時間までの分娩第 3 期,4 期では,出 血量が 500g 以上で異常出血になる。ローリスク事例で, 自然陣痛で経過し自然分娩となった 29 事例のうち,分 娩後 2 時間までの出血量が 500g 以上であった異常出血 事例は 11 事例(37.9%)であった。誘発事例をあわせた 62 事例において,分娩後 2 時間までの出血量が 500g 以 上であった異常出血は 18 事例(29.0%)であった。

Ⅳ.考察

本プロジェクトでは,ローリスク妊産婦に対する妊婦 健康診査,分娩管理,産後の母子のトータルケアができ る助産師を 3 年間で養成することを目指している。1 年 目の教育プログラムでは,分娩期と分娩後の母子の助産 診断とケアの自立を到達目標とした。本報告では,分娩 期の助産診断とケアに焦点をあて,新人助産師が 1 年間 で行った分娩介助事例の経過と転帰を分析した。 分娩期の助産診断とケアでは,分娩経過を的確に判断 し,計画に基づいたケアを行う能力が求められる。分娩 経過を的確に判断するためには,入院時にリスク判別を 行い,初期計画を立案する必要がある。そして,産婦の ケアを行いながら,分娩進行を予測し評価する。さらに 分娩経過中のリスク判別を行い,予測されるリスクを回 避するために計画を修正していく。つまり,助産師が行 う分娩管理では,分娩経過の臨床判断と産婦ケアを同時 に行うことができる能力が必要である。また,助産師は,

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分娩経過について,医師と情報を共有し,分娩経過中に 異常が予測される場合には,時期を逸することなく医師 との連携・調整を図る能力も必要である。そして,分娩 終了後には,分娩の転帰から事例を振り返り,分娩経過 の臨床判断とケアの再検証を通して,分娩管理能力を獲 得していく。 1. 分娩介助事例の分析から明らかになった新人助産 師の分娩管理の課題 新人助産師が分娩介助した 62 事例の分析から,分娩 管理における新人助産師の課題として,分娩第 2 期の胎 児管理と分娩後 2 時間までの出血管理の 2 つが明らかに なった。 1) 分娩第 2 期の管理 分娩第 2 期は,母児ともに最もリスクが高まる時期で あり,分娩方法は母体や胎児の状態で決定する。新人助 産師が行ったローリスク 52 事例の分娩管理では,吸引 分娩が 3 割以上であった。また,吸引分娩の適応は,胎 児が子宮内で呼吸および循環機能が障害された状態であ る NRFS7)が 3/4 を占めていた。 吸引分娩の適応が NRFS であった事例では,胎児心 拍数の異常を示す一過性徐脈を認めた時点で,医師に報 告するとともに,母体への酸素投与を開始していた。ま た,事例によっては,吸引分娩を考慮して早めに分娩室 に移動し吸引分娩の準備を行っていた。つまり,NRFS が疑われる状況で,医師が到着するまでの間に,助産師 として対処しなければならないルーティン処置は行って いた。 一方,分娩の転帰から NRFS の起こった状況や原因 を考えると,自然陣痛で経過し吸引分娩となった事例で は,破水が共通する事象として挙げられた。破水(人工 破膜を含む)後には,羊水の性状と胎児心拍数の異常の 有無を確認することが必須である。破水直後には胎児心 拍数の異常を認めなくても,破水による羊水漏出で臍帯 圧迫のリスクが高くなる。また,陣痛促進を行い吸引分 娩となった事例では,破水後 24 時間以上を経過し子宮 内感染のリスクが高い状態であったこと,分娩所要時間 が 30 時間を超える遷延分娩であったこと,これらが胎 児の well-being に影響していたと考えられた。分娩の 転帰から NRFS が起こった状況やその原因を検討する 場合,新人助産師が独力で分析することには限界があり, 指導助産師による助言が必要である。 2) 分娩時の異常出血 分娩第 3 期・4 期は,母体出血のリスクが高まる時期 である。分娩時の出血量は,分娩第 3 期の胎盤娩出時の 出血と分娩後 2 時間までの出血を合わせて算出し,500 m L 以上では異常出血となる8)。分娩時の出血量は,胎 児娩出時の後羊水の混入や分娩マットへの血液の吸収に より,正確な測定が難しく過小評価されやすい。分娩時 の出血量が 500mL を超えた場合には,産後の過多出血 (postpartum hemorrhage,以下 PPT)としての母体管 理が必要となる9)。また,産婦人科診療ガイドライン産 科編 201410)では,PPT の予測は困難であり,ローリス ク産婦を含めた全分娩に対して,分娩第 3 期の注意深い 観察が必要であることが明記された。 ローリスク事例において,自然陣痛で経過し自然分娩 となった 29 事例のうち,分娩後 2 時間までに 500g 以 上の出血を認めた異常出血事例は 11 事例(37.9%)であっ た。 誘 発 事 例 を あ わ せ る と,62 事 例 の う ち 18 事 例 (29.0%)が異常出血であった。分娩時の異常出血の主な 原因は,弛緩出血や軟産道損傷部位からの出血であり, その特徴は,短時間で多量の出血をきたし母体の生命に 直結することである。 分娩時の異常出血は,入院時や受け持ち時のリスク判 別で予測可能な場合,分娩経過からリスクを予測する場 合,リスクがない状態での出血がある。分娩時出血への 対応では,分娩前に血管確保を行い,分娩室には子宮収 縮薬を準備していた。また,出血が多い場合には,医師 の指示を受けて薬剤を適切に使用していた。 一方,前述の 18 事例の出血の原因は,弛緩出血であっ たと推測された。18 事例のうち 16 事例は,胎盤娩出時 の出血量が 300g を超えていた。また,分娩第 3 期所要 時間をみると,5 分以内に胎盤娩出を終了した事例は 4 事例であり,残りの 14 事例は胎盤娩出に時間を要して いた。分娩時の出血管理では,胎盤剥離徴候を確認した ら速やかに胎盤を娩出する技術的な課題と,胎盤娩出後 の分娩第 4 期の出血に対する予測と異常出血を回避する ための対処方法の習得が課題として挙げられた。胎盤娩 出に関する技術と分娩第 4 期の異常出血を予防する対処 方法の習得は,on the job training における指導上の課 題である。また,分娩第 4 期出血の異常出血発生時の状 況分析や原因検索では,指導助産師からの助言を必要と する。 2. 新人助産師の分娩管理能力を育成する教育体制の 課題 新人助産師は,実践の場所である診療所において,産 婦の入院時,あるは産婦の受け持ち時から分娩終了まで の継続した分娩管理を経験してきた。新人期から,産婦 の分娩進行にあわせた実践を重ねることは,助産師が責 任をもって産婦ケアを行うという助産実践には効果的で あると考える。 分娩介助事例の評価では,自己評価と指導助産師によ る評価を行ってきた。分娩介助事例の事例ごとに行う自 己評価では,自己評価を通してリフレクションできる能 力の獲得を目指した。しかし,事例ごとの自己評価記録

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第 14 回山梨大学看護学会学術集会(中央市),第 28 回日 本助産学会学術集会(長崎市),第 30 回国際助産連盟プ ラハ大会(プラハ)において内容の一部を発表した。 引用文献 1) 母子衛生研究会(2013)母子保健の主なる統計 (財団法人母子衛 生研究会).母子保健事業団,東京,47-48. 2) 日本看護協会(2012)新卒助産師研修ガイド(公益社団法人 日本 看護協会).東京,13. 3) 小林康江,渡邉竹美,他(2013)プライマリー助産ケア講座(寄 附講座)の設置と新しい助産師教育;設置 1 年の活動報告 . 山 梨大学看護学会誌,12(1):29-34. 4) 渡邉竹美,小林康江,他(2014)診療所と協働で行う新人助産師 教育の取り組み-プライマリー助産ケアプロジェクトの実践報 告-.山梨大学看護学会誌,12(2):31-36. 5) 前掲 2),35-46. 6) 日本産科婦人科学会(2013)産科婦人科用語集・用語解説集 改 訂第 3 版(公益社団法人 日本産科婦人科学会).東京,243. 7) 前掲 6),255-256. 8) 前掲 6),357.

9) Cunningham FG Leveno KJ et al(2010) Williams Obstetrics 23rd ed (McGraw-Hill).USA,757-803. 10) 日本産科婦人科学会 / 日本産婦人科医会(2014)産婦人科診療ガ イドライン 産科編 2014(公益社団法人 日本産科婦人科学会事 務局).東京,184-194. の内容からは,分娩進行のプロセスで,新人助産師が行っ ている臨床判断である思考過程の客観的な査定や,新人 助産師が臨床判断のプロセスで抱える課題を把握するこ とへの限界があった。また,段階別到達度評価の評価基 準は,「知識としてわかる」「演習でできる」「指導の下 でできる」「できる」の 4 段階での評価であり,臨床判断 という思考過程の評価はできない。 本プログラムでは,分娩介助 31 例以降の第 4 段階では, 分娩管理の自立を目指すことを目標とした。この時期の 「自立を目指す」という意味は,新人助産師として,自分 でできること,あるいはできないことを的確に判断して, 必要に応じて指導助産師から指導や助言,指示を受ける ということである。一方,新人助産師を指導する助産師 は,本プログラムの第 4 段階では,新人助産師としての 自立を目指す時期であり,「自立を目指す」というゴール は,助産師の経験年数により変わっていくことを再確認 した。以上のことから,新人助産師の 1 年間の分娩管理 能力の到達度は,プロジェクトで目指した分娩管理能力 の獲得には至らなかった。このことは,新人助産師の分 娩管理能力の獲得を目指す新たな教育体制の再構築を意 味する。 1 年間の教育プログラムの実施結果から,2014 年度の 新人教育プログラムでは,毎月 1 回,分娩介助を行った 事例について,事例検討を行うことを加えた。事例検討 を行う目的は,分娩介助事例を通して,新人助産師が行っ た分娩管理上の課題を明らかにすること,そして明らか になった課題の達成状況を教育担当者全員で共有するこ とである。また,事例検討を通して,新人助産師が分娩 管理を行う臨床判断の思考過程がどのように変化してい るのか,分娩管理能力の査定も可能であると考える。さ らに,本稿の結果から,助産師が自ら関わった分娩介助 事例の転帰から分娩経過を再検討することを通して,異 常が起こった原因の推定や異常を防ぐための方策を検討 し,リスク回避を強化する分娩管理能力の獲得につなが ると考えられる。これは,助産師が責任をもって分娩を 管理するという意識の強化にもつながるだろう。

Ⅴ.おわりに

4 月から新人助産師 2 名を迎え,新たな取り組として, 毎月 1 回事例検討会を開催している。事例検討会では, 新人助産師の分娩管理能力の獲得に向けた支援を行うと ともに,新人助産師の指導を行う助産師に対する off the job training としての意義を有している。

本 報 告 は, 科 研 費 補 助 金 基 盤 研 究(C)課 題 番 号 245933691「地域連携型『継続助産ケア実践研修プログラ ム』の創成」(研究代表 小林康江)の一部である。なお,

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