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機能性分子を用いる新規固相触媒の開発

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Academic year: 2021

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(1)様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成21年. 4月. 7日現在. 研究種目:若手研究(B) 研究期間:2007~2008 課題番号:19790024 研究課題名(和文) 機能性分子を用いる新規固相触媒の開発 研究課題名(英文) Development of New Solid-Phase Catalysts Utilizing Intelligent Materials 研究代表者 濱本 博三(HAMAMOTO HIROMI) 近畿大学・薬学部・講師 研究者番号:40365896. 研究成果の概要:現代の医薬品製造においては、環境にやさしい手法を用いて、有害廃棄物を 排出せずに、効率よく目的化合物を与える方法論の確立が望まれている。本研究では、機能性 分子であるポリアクリルアミド系高分子と金属触媒から構成される新しい固相触媒の合 成を行い、その機能性の活用に着目した有機反応システムの設計を行った。新たに見出 した反応系は、特に酸化反応に有効であり、酸素や過酸化水素水等のクリーンな酸化剤 を用いる反応が効率よく進行することが明らかとなった。. 交付額 (金額単位:円). 2007 年度 2008 年度 年度 年度 年度 総 計. 直接経費 1,700,000 1,500,000. 3,200,000. 間接経費. 合. 0 450,000. 計 1,700,000 1,950,000. 450,000. 3,650,000. 研究分野:医歯薬学 科研費の分科・細目:薬学・化学系薬学 キーワード:有機化学、触媒 1.研究開始当初の背景 近年、化学物質による環境汚染が世界的な 問題となってきており、有機合成化学ではグ リーンケミストリーの推進が強く望まれて いる。また、有機合成化学の研究が、重工業 化学分野だけでなく、ファインケミカルの製 造や医薬品、農薬、食品、化粧品等の分野に 深く関連するようになるにつれ、反応の残留 性物質等の引き起こす健康への影響等も懸 念されるようになっている。特に、最近のエ ネルギー問題(原油価格の高騰)や有害化学 物質の食品等に対する混入問題の発生とい. った社会情勢から考えても、今後、将来的に は現代の様々な問題を解決しうる新しい発 想の有機反応の方法論の開発が必要である。 固相触媒を用いる有機合成は、これらの諸問 題を解決しうる有効な手法の一つであり、古 くから様々な固相触媒の開発と有機合成へ の応用研究が行われてきた。とりわけ、固相 触媒を用いる有機合成において課題となる のは、いかにして均一系の有機合成と同等か それに近い触媒活性を発現させることがで きるかであり、優れた活性を示す固相触媒の 開発が望まれてきた。これまでに、申請者は、.

(2) 温度応答性高分子を用いる新規リサイクル 型触媒の開発(平成 17-18 年度、科学研究補 助金、若手研究 B、課題番号 17790018)を行 い、高分子の持つ温度応答性等の機能性を活 かすことにより、従来の有機合成では得るこ とのできない反応性や選択性を与えること が可能になることを見出している。 一方、最近の材料科学研究の発展は目覚し く、温度応答性、両親媒性、イオン性といっ た機能を有する種々の機能性分子が合成さ れ、多岐の分野で応用研究が行われている。 本研究課題においては、このような機能性分 子からなる固相触媒を調製し、高分子特性を 活かした有機反応システムの設計を計画し た。なお、高分子特性を活かした有機反応の 開発研究の例としては、米国の Bergbrieter らにより、溶解性高分子担持触媒による触媒 リサイクルシステムの開発が盛んに行われ ているが、固相型の触媒開発については研究 例が少なく、その有用性については不明な点 も多い。 2.研究の目的 優れた活性を示す固相触媒の開発は、有 用 な医薬品製造プロセスを構築する上で 重 要 な 研 究 課 題 で あ る 。一 方 、温 度 応 答 性や両親媒性を示すアクリルアミド系 高分子は、比較的合成が容易であり、 種々の化学修飾による物性の制御も容 易 で あ り 、ま た 、多 岐 に わ た る 原 料 モ ノ マーが安価に入手することが可能であ る 。有 機 反 応 に お い て 、親・疎 水 性 質 や イオン環境が反応場の与える影響は大 き く 、時 に 反 応 に 対 す る 優 れ た 加 速 効 果 や 飛 躍 的 な 選 択 性 の 向 上 を も た ら す 。本 研究課題では、温度応答性、両親媒性、 あるいはイオン応答性といった機能を 有するアクリルアミド系高分子を活用 し 、そ の 特 性 の 有 効 活 用 に 着 目 し た 有 機 反 応 シ ス テ ム の 構 築 を 目 的 と し た 。特 に 、 固相として用いる機能性分子によりも た ら さ れ る 特 殊 反 応 場 が 、有 機 反 応 の 反 応 性 に 与 え る 影 響 は 大 変 興 味 深 く 、ま た 、 高 い 活 性 を 示 す 回 収・再 利 用 可 能 な 固 相 型 の 触 媒 の 開 発 は 、グ リ ー ン ケ ミ ス ト リ ーの観点からも重要性が高い。さらに、 優れた触媒機能を有する固相触媒の開 発 は 、材 料 や 新 素 材 の 開 発 分 野 の 研 究 に も有用な知見を与えることが期待でき る。. を活かした反応開発と反応システムの構築、 (5)実用化を指向した応用研究の5点を中 心に研究展開することを計画した。種々の機 能性を有するアクリルアミド系高分子の合 成においては、安価で入手容易な N-イソプロ ピルアクリルアミドや N,N-ジメチルアミノ プロピルアクリルアミドなどを原料モノマ ーとし、重合反応による高分子合成を行い、 高分子特性の把握と物性制御法の検討につ いては、IR や SEM 等の分析機器を活用した。 また、高分子機能に基づいた固相触媒の創製 については、親 ・ 疎 水 性 質 や イ オ ン 環 境 の 影 響 に つ い て 議 論 し や す い 、タ ン グ ス テン触媒やルテニウム触媒を活用する こ と と し 、 反応開発と反応システムの構築 については、過酸化水素水や酸素等を共酸化 剤として用いる触媒的酸化反応系を活用し た。また、実用化を指向した応用研究に関し ては、反応器の設計に対する工夫と流通式反 応系への適用を目指して検討を加えた。 4.研究成果 (1)温度応答性高分子であるイソプロピル アクリルアミドと4級アンモニウム塩を有 するアクリルアミドから構成される機能性 高分子とタングストリン酸からなる固相触 媒1を用い、ベンジルアミン類の過酸化水素 水による酸化反応を行った。反応は有機相、 水相、固相の三相系で進行し、効率良くケト ン体生成物あるいはアルデヒド体生成物を 与えた。特に、この反応は、相応する均一系 触媒と比べても優れた活性を示し、高分子機 能が触媒活性に影響することを明らかにし た。. CH2 CH 12 CH2 CH 1 C O C O NH NH. (C12H25) NMe2. 3. PW12O40. inorganic species. 3n. PNIPAAm chain (main chain). 1. 3. PW12O40. networked complex = quaternized ammonium ion. NH2 R'. R. O 1 (0.01 mol eq) toluene-aq H2O2. (5 examples). (substrate). 2. R'. R. yield: 93~78 %. before reaction. 3.研究の方法 本研究課題では、研究目的を達成するため に、(1)種々の機能性を有するアクリルア ミド系高分子の合成、(2)高分子特性の把 握と物性制御法の検討、(3)高分子機能に 基づいた固相触媒の創製、(4)触媒の特性. n. in reaction. (substrate) (product) 2. water. H2 O2 organic solvent (toluene). water. after reaction. (product). 2 water recycle.

(3) (2)上記の固相触媒について、水中におけ る高分子特性を活かした有機反応システム を構築することを目的とし、その機能性に基 づいた酸化反応の構築を試みた。その結果、 水中において過酸化水素水による酸化的環 化反応が良好に進行することを見出し、有用 な触媒リサイクルシステムの構築に成功し た。. HO. O. ( )n OH. ( )n. O ( )n OH. HO. 1 (0.4 mol %). HO. ( 8 examples). (substrate). 1 water. H2O2. (rt). O. ( )n. HO. before reaction. O. 30% aq H2O2 60 oC O. yield: 92~46 %. in reaction. after reaction. (product). (substrate). 1. 1 (product). water. water (60 oC). high reactivity. (rt). recycle. (3)ルテニウム置換型金属酸化物クラスタ ーとアクリルアミド型高分子から構成され る固相触媒 2 を調製した。この固相触媒を用 いるとベンジル位の酸化反応や脱水素化反 応が良好に進行し、また回収・再利用可能が 可能であることを見出した。. (4)同一分子内にスルホン酸アニオンと4 級アンモニウムの塩を有する両性アクリル アミドモノマーを用いて、両性アクリルアミ ド高分子を合成し、これが固相酸触媒として エステル化反応やアセタール類の加水分解 反応等に使用できることを見出した。なお、 この高分子は、有機化合物との親和性が低く、 内部のイオン環境を活用するには、高分子の 側鎖を疎水性官能基で修飾する、あるいは、 疎水性高分子との複合化を行なう必要があ ることが示唆された。 (5)イ オ ン 性 ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド - ポ リ エ チ レ ン グ リ コ ー ル ( PEG) 複 合 高 分 子 を ア ク リ ル ア ミ ド モ ノ マ ー ト と PEG 型高分子アゾ重合開始剤を用いて合成 し た 。さ ら に こ の 複 合 高 分 子 と 過 ル テ ニ ウム酸塩からなる機能性高分子錯体 3 を 調 製 し た 。こ の 高 分 子 錯 体 を 、分 子 状 酸素による一級アルコール類の酸化反 応 に お け る 触 媒 と し て 用 い る と 、反 応 中 に 副 生 す る 水 が PEG 部 位 に 除 か れ ( PEG 部位に集積される水は反応終了後に容 易 に 除 去 可 能 )、触 媒 活 性 を 低 下 さ せ る ことなく使用することが可能な優れた 固相触媒として機能することを見出し た 。な お 、反 応 に 用 い た 高 分 子 錯 体 は 容 易 に 回 収 す る こ と が 可 能 で あ り 、再 利 用 してもほとんど触媒活性の低下は見ら れなかった。. CH2 CH2 O. CH2 CH 12 C O NH. CH2 CH 1 C O NH. RuO4. m. (C12H25) NMe2. n. n. 3 CH2 CH 12 C O NH. CH2 CH 1 C O NH. (C12H25) NMe2. n. 2 (0.5 mol %) aq TBHP 60 oC, 6 h. OH. Toluene, 80 oC, 2-12 h. R = alkyl, aryl 10 examples. R. H. 60 oC, 6 h. yield: 91~65 %. O. O yield 93 % 90 % (2 nd use) 93 % (3 rd use). 5.主な発表論文等 (研究代表者、研究分担者及び連携研究者に は下線) 〔雑誌論文〕 (計 6 件). 2 (0.5 mol %) aq TBHP N H. R. m. 2. O. O. 3 (5 mol %), O2 (1 atm). 5. SiRu(H2O)W11O39. N yield 86 % 86 % (2 nd use) 77 % (3 rd use). ① 濱本博三、鈴木八千代、高橋秀依、池上 四 郎 、 Direct transformation of benzylic amines to carbonyls using polyacrylamide-bound tungstate under.

(4) ②. ③. ④. ⑤. ⑥. phase-transfer catalysis conditions, Tetrahedron Letters, 48, 4239-4242 (2007), 査読有 濱本博三、工藤聖大、高橋秀依、夏苅英 昭 、 池 上 四 郎 、 Polyacrylamide-based functional polymer-immobilized perruthenate for aerobic alcohol oxidation, Chemistry Letters, 36, 632-633 (2007), 査読有 濱本博三、鈴木八千代、高橋秀依、池上 四郎、A new solid-phase reaction system utilizing a temperature-responsive catalyst: oxidative cyclization with hydrogen peroxide, Advanced Synthesis & Catalysis, 349, 2685-2689 (2007), 査 読有 濱本博三、池上四郎、温度応答性高分子 触媒を用いる環境調和酸化反応システム の 開 発 、 有 機 合 成 化 学 協 会 誌 、 66 、 205-214(2008)、査読有 濱本博三、池上四郎、十字路:温度応答 性高分子、有機合成化学協会誌、66、253 (2008)、査読無 池上四郎、濱本博三、Novel Recycling System for Organic Synthesis via Designer Polymer-Gel Catalysts, Chemical Reviews, 109, 583-593 (2009) 、 査読有. 〔学会発表〕 (計 7 件) ① 濱本博三、工藤聖大、高橋秀依、夏苅英 昭、池上四郎、三木康義、パラジウム導 入型ポリアクリルアミドゲルの設計と触 媒リサイクルシステムへの応用、第 33 回 反応と合成の進歩シンポジウム、2007 年 11 月 6 日、長崎 ② 濱本博三、機能性高分子触媒の特性を活 かした新しい有機反応システムの開発、 日本農芸化学会 2008 年度大会、2008 年 3 月 29 日、名古屋 ③ 濱本博三、工藤聖大、高橋秀依、夏苅英 昭、池上四郎、三木康義、Development of Recyclable Ruthenium Catalysts for Aerobic Oxidation Utilizing Poly(N-isoplopylacrylamide)-Based Polymer, The First International Symposium on Process Chemistry, 2008 年7月 29 日、京都 ④ 濱本博三、岡田英樹、矢澤雪絵、三木康 義、過酸化水素水を用いる酸化反応に使 用可能な新規固相触媒の開発、第 58 回 日本薬学会近畿支部・大会、2008 年 10 月 25 日、神戸 ⑤ 濱本博三、黒坂昌代、三木康義、イオン 性高分子を用いる新規酸化触媒の開発と オレフィン類のジヒドロキシ化反応への 応用、第 58 回 日本薬学会近畿支部・大. 会、2008 年 10 月 25 日、神戸 ⑥ 濱本博三、黒坂昌代、山下雄司、三木康 義、イオン性高分子ゲルを用いる新しい 触媒的酸化反応システムの開発とオレフ ィン類のジヒドロキシル化反応への応用、 日本薬学会 第 129 年会、2009 年 3 月 26 日、京都 ⑦ 濱本博三、岡田英樹、三木康義、イポリ マー・シリカ系ハイブリッド固相触媒の 設計と過酸化水素水による酸化反応シス テムへの応用、日本薬学会 第 129 年会、 2009 年 3 月 28 日、京都 〔その他〕 ホームページ等 http://ccpc01.cc.kindai.ac.jp/pharm/ken kyu/labo.htm. 6.研究組織 (1)研究代表者 濱本 博三(HAMAMOTO HIROMI) 近畿大学・薬学部・講師 研究者番号:40365896 (2)研究分担者 (. ). 研究者番号: (3)連携研究者 ( 研究者番号:. ).

(5)

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