1.問題と目的
現在、子育て支援を行っている活動主体は、行政、NPO、企業、福祉と数多くあ る。本研究の分析対象である保育者(幼稚園教諭、保育士、認定こども園保育教諭な ど)も、その1つである。このように多様な活動主体が子育て支援を行っている中で、 子どもに対する保育の専門家である保育者が、なぜ子育て支援を行う必要があるのだ ろうか。また、保育者による子育て支援の独自性、保育者ならではの子育て支援はあ るのだろうか。あるとすれば、どのようなものなのであろうか。 これらの点について、著者はいくつかの方向性から検討を行ってきている1。 永盛(2019、2020)は、実態を把握するアプローチとして、保育者に限定せず、広 く、学生が考える「保護者が求める子育て支援」を示すことを試みた。その結果、2 つの年度間で、「預ける」といった、ある程度一貫した結果が得られた。一方で、違 いも見られた。2018年度は「延長」保育、「早朝」保育といった、日常の保育の延長 線上にある「あると助かるサービス」が多く出現したのに対して、2019年度は「病児」 「相談」といった「ないと困るサービス」が多く出現した。また、2018年度は「経済」 という単語も多く出現した。これは、経済的支援を指すものであると思われる。そし て、これらの違いの原因として、その年度の世相やニュースを反映している可能性を 挙げた。これらの結果は、少なくとも学生が考える子育て支援においては、保育者だ からこそ提供できるサービスがあるということを示唆するものであった。 また、永盛(2021)は、理論的アプローチとして、行政、NPO、大学、カウンセ ラー、保健師など多様な子育て支援の活動主体と、保育者(主に保育士)の子育て支 援を比較することを通して、保育者の子育て支援の独自性を導出することを試みた。 その結果、子どもを登園させるということを理由に、保護者も園に行き、保育者と顔保育者が子育て支援を行うことに対する
保育者養成課程学生の納得感
永盛善博
1 これらの点に関連する先行研究の詳細については、以下で引用する著者の文献と記述内容が重 複するため、そちらを参照のこと。を合わせることになっている「日常性」や、それが毎日のことであるという「連続性」、 保育者と保護者が、共通する一人の子どもを見るパートナーであるという「対等性」、 子育ての専門家であるという「専門性」といった点が、保育者ならでは子育て支援の 特徴である可能性が示された。 以上の分析を踏まえると、保育者が子育て支援を行うことには、必要性、独自性が 存在しそうである。では、将来的に子育て支援の担い手・当事者となっていく保育者 養成課程の学生は、保育者が子育て支援を行うことに対して、どの程度の納得感を 持っているのであろうか。また、その納得感は、どのような理由に基づくものなので あろうか。本研究では、学生にこれらの点を尋ねることを通して、この問題に迫って いくこととする。ここで一般に「納得感」とは、「条件がもっともなものとして理解 できる感情。納得できる感じ」(Weblio 辞書 実用日本語表現辞典)とされる。本研 究の文脈としては、「条件」に相当するのは「保育者が子育て支援を行うこと」「保育 者養成課程の学生が、子育て支援について学ぶこと」であり、このことに対して、 「もっともなものとして理解できる感情、納得できる感じ」を、学生がどの程度、ど のような内容で有しているかを調べることを指すと言える。 より焦点を絞ったものとして、大学授業における学生の納得感について、山地・橋 本(2012)では、教員や仲間等の他者とやりとりの中で、学習の場や自身の状況を適 切に意味づけ、納得していく過程であり、授業を通じて徐々に高まっていくものとし ている。また、納得感は単一の概念というよりは複数の概念が合わさったものであり、 有用感、充実感、向上感、達成感、効力感などを包含するものであるとされている。 加えて、橋本(2017)は、納得感が学生の主体的な学習意欲の度合いを決定する概念 であるとしており、納得感を有することが、主体的学びの原動力となると考えられて いる。一方で、橋本・川越・橋本(2018)は、類似した概念と思われる満足感との違 いについて学生に「学んだことに満足するのはどのような時か」「学んだことに納得 するのはどのような時か」などを自由記述で尋ね、その回答から、「満足感はテスト などによる自身の学んだことのアウトプットが有効だった時に生じ、納得感は学んだ ことを自身の中にインプットし、考える際に生じる感覚」といった区別を行っている。 このような観点からの満足感は、山地・橋本(2012)のような、対人関係の相互作用 の中で生まれるような納得感とは、異なる捉え方であると言える。 このように、納得感は概念自体の定義に多様性をまだ残すものであり、満足感や有 用感、さらにより広く動機づけといった関連概念との具体的なつながりが未整理な部 分があるものの、いずれにせよ、納得感が高まることが、学生の学びの質に影響を与 える可能性を示唆しているという点では一致している2。本研究においては、単一の 質問で直接的に納得感の程度を尋ねることに加え、その納得感の理由を併せて尋ねて 分析対象とすることにより、その納得感がどのようなものであり、学びの質を高める ことにつながるものであるかどうか確認することを、主たる検討の対象とする。 2 なお、納得感を直接測定する尺度については、橋本・林・川越(2007)が受講した授業に対す る学生の理解度や満足度、充実感などいくつかの質問を尋ねており、それらを総合したものとし ての「納得感」については述べているものの、妥当性と信頼性が確認されたものはまだ作成され ていない。
表1.「保育者が子育て支援を行うこと」に対する学生の回答 回答 人数 納得している 26 やや納得している 8 どちらとも言えない 4
2.方法
対 象者:本学子ども教育学科4年生で、科目「子育て支援実践」受講生のうち、回答 が得られた38名。 学 びの状態:保育実習、教育実習を終えている。「子育て支援」と銘打った科目の受 講は初めてであるが、保育実習ⅡAもしくは保育実習ⅡB(保育所かその他の児童 福祉施設)で保護者との関わりに関する講話を実習先で受けている。子どもの送迎 時に、実際に保護者と関わる機会のあった学生もいたと思われる。また、家庭支援 論、児童家庭福祉、相談援助などの関連科目も受講済みである。 手 続き:「子育て支援実践」第1回授業冒頭で、ワークシートを配布して、永盛(2019、 2020)と同じく「保護者が求める子育て支援」に関するマンダラートへの回答と、 その回答に対する考察を終えて、本研究の分析対象である問いを行った。実際の問 いは、「将来保育者になると想定して、保育者が子育て支援を行うことに対して、 どのくらい納得感がありますか。もっとも近いものに、○をつけてみましょう」と いうものであった。また、選択肢は「納得している、やや納得している、どちらと も言えない、あまり納得していない、納得していない」の5択であった。この回答 に続いて、回答理由を自由に記述するよう求めた。 倫 理的配慮:授業内容として記入した回答について、個人が特定されない状態で分 析・公表することの許可を受講生に求めた。またその際、分析・公表に同意しなく ても、成績には影響がないことも併せて伝えた。最終的に、全対象者が掲載を許可 した。なお、これらの確認は、回答後に行った。公表の可能性があることを事前に 伝えることで、学生の発想が制限される危険性を回避するためであった。3.結果と分析
(1)回答結果の集計 まず、納得感に対する学生の回答を集計したものが、表1である。回答者38名中、 26名が「納得」、8名が「やや納得」と答えており、「どちらとも言えない」という回 答は4名だったため、ほとんどの学生は、納得感を持っていると言える。 (2)回答理由の集計 つづいて、学生の回答理由を、KHcoder3 を用いて抽出・集計したものが表2であ る。抽出の際には、「保護者」「保育者」「子育て支援」「専門的」「専門家」「専門機関」 「専門職」「一番相談」の語を、一単語として抽出できるように設定した。この作業は、 たとえば、「保護」と「者」をそれぞれ別々の単語として抽出して集計するのではなく、表2.学生の回答理由における単語の出現頻度 44 / 1111 表 2 に お い て は 、学 生 の 回 答 の た め「 思 う 」「 考 え る 」が 頻 出 し た も の の 、こ れ ら の 単 語 は 分 析 す る 必 要 は な い と し て 除 い た 。 そ の 他 、「 関 わ る 」「 見 る 」「 伝 え る 」「 感 じ る 」「 持 つ 」「 知 る 」 と い っ た 動 詞 は 、 こ れ ら の 単 語 単 独 で は 動 作 主 体 や 目 的 語 が 不 明 で あ り 分 析 が 困 難 で あ る た め 、 い っ た ん 分 析 を 保 留 す る 。 ま た 、 そ の 他 に 上 位 に 出 た 単 語 と し て 、「 保 護 者 」「 子 ど も 」「 保 育 者 」と い っ た 活 動 に 関 与 す る 人 物 に 関 す る 単 語 や 、「 支 援 」「 子 育 て 」「 子 育 て 支 援 」「 保 育 」「 育 児 」と い っ た 活 動 そ の も の を 指 す 単 語 も 、あ ら た め て 分 析 す る 必 要 は な い と し て 除 い た 。つ づ い て 出 て い る 単 語 と し て 、「 相 談 」「 知 識 」「 理 解 」「 専 門 的 」「 連 携 」「 ア ド バ イ ス 」「 援 助 」「 話 」「 聞 く 」「 情 報 」と い っ た 単 語 は 、 保 育 者 と し て の 子 育 て 支 援 の 専 門 性 を 示 す も の と し て 使 わ れ て い る と 推 測 さ れ る 。 さ ら に 、「 身 近 」「 気 軽 」「 寄 り 添 う 」「 一 緒 」 と い っ た 単 語 は 、 子 育 て 支 援 に お け る 保 育 者 の あ り 方 が 示 さ れ て い る と 予 想 さ れ る 。ま た 反 対 に「 不 安 」「 安 心 」と い っ た 単 語 は 、 保 護 者 の あ り 方 と い う か 、 子 育 て 支 援 に 対 す る 保 護 者 の 心 理 状 態 を 示 し て い る と 予 想 さ れ る 。 表 2 . 学 生 の 回 答 理 由 に お け る 単 語 の 出 現 頻 度 「保護者」として一単語で抽出するというものである。また、表2では、3回以上出 現した単語までを掲載した。 表2においては、学生の回答のため「思う」「考える」が頻出したものの、これら の単語は分析する必要はないとして除いた。その他、「関わる」「見る」「伝える」「感 じる」「持つ」「知る」といった動詞は、これらの単語単独では動作主体や目的語が不 明であり分析が困難であるため、いったん分析を保留する。また、その他に上位に出 た単語として、「保護者」「子ども」「保育者」といった活動に関与する人物に関する 単語や、「支援」「子育て」「子育て支援」「保育」「育児」といった活動そのものを指 す単語も、あらためて分析する必要はないとして除いた。つづいて出ている単語とし て、「相談」「知識」「理解」「専門的」「連携」「アドバイス」「援助」「話」「聞く」「情 報」といった単語は、保育者としての子育て支援の専門性を示すものとして使われて いると推測される。さらに、「身近」「気軽」「寄り添う」「一緒」といった単語は、子 育て支援における保育者のあり方が示されていると予想される。また反対に「不安」 「安心」といった単語は、保護者のあり方というか、子育て支援に対する保護者の心 理状態を示していると予想される。
図1.学生の回答理由の共起ネットワーク 55 / 1111 ( 3 ) 共 起 ネ ッ ト ワ ー ク の 分 析 共 起 ネ ッ ト ワ ー ク を 作 成 し た の が 、 図 1 で あ る 。 図 1 . 学 生 の 回 答 理 由 の 共 起 ネ ッ ト ワ ー ク ( 2 ) で の 予 想 を 踏 ま え 、 ま ず 、 保 育 者 と し て の 子 育 て 支 援 の 専 門 性 に つ い て 見 て み る 。 左 上 の ① の 島 を 見 る と 、「 専 門 的 」「 知 識 」「 持 つ 」「 話 」「 聞 く 」「 理 解 」 と い う 単 語 が つ な が っ て い る 。 こ れ ら を ま と め る と 「 専 門 的 知 識 を 持 っ た 上 で 、 保 護 者 の 話 を 聞 く 」 と い う 文 と で き る だ ろ う 。 こ こ で の 重 点 は 、 単 に 「 話 を 聞 く 」 の で は な く 、 「 専 門 的 知 識 を 持 っ て 、 聞 く 」 と い う こ と で あ る 。 す な わ ち 、 専 門 家 と し て 、 専 門 的 知 識 を 持 っ て い る か ら こ そ 、 保 護 者 の 話 を 聞 く の で あ る と い う 観 点 か ら の 納 得 感 と 言 え よ う 。 同 様 の つ な が り は 、 右 側 の ② の 島 に も あ る 。 こ ち ら で は 「 専 門 」「 保 育 」「 伝 え る 」 「 ア ド バ イ ス 」 と い っ た 単 語 で つ な が っ て い る 。 さ き ほ ど は 、 何 に 対 す る 「 専 門 」 で あ る か は 判 明 し な か っ た が 、こ の ② を 踏 ま え る と 、「 保 育 」の 専 門 家 と 学 生 が 考 え て い る こ と が 推 測 さ れ る 。 ま た 、 さ き ほ ど の ① で は 「 話 を 聞 く 」 で あ っ た が 、 こ ち ら で は 「 伝 え る 」「 ア ド バ イ ス 」も 出 て お り 、必 要 に 応 じ て 、知 識 や 情 報 を 保 護 者 に 伝 え 、ア ド バ イ ス す る こ と も 、 保 育 者 の 役 割 で あ り 、 そ れ ゆ え の 納 得 を し て い る こ と が う か が え る 。 こ れ ら の キ ー ワ ー ド は 、 ど ち ら か と い え ば 、 カ ウ ン セ ラ ー の 役 割 に 近 い と 言 え る 。 こ れ ら に 加 え 、「 連 携 」 と い う 単 語 も 線 で 結 ば れ て い る 。 こ の 連 携 は 、「 家 庭 」 と い う キ ー ワ ー ド と も 繋 が っ て い る も の の 、 こ の 「 連 携 」 の キ ー ワ ー ド が 出 現 し た 文 を 家庭 悩み 子ど も 相談 子育て 専門 保育 知識 理解 成長 連携 自分 納得 ア ド バイ ス 生活 必要 支援 大切 身近 存在 気軽 一番 保護者 保育者 子育て 支援 専門的 思う 関わる 考える 育児 一緒 行う 情報 見る 伝える 感じ る 持つ 知る 聞く 話 援助 多い 難し い 人 Subgraph: 01 02 03 04 05 06 Frequency: 10 20 30 40 ② ① ③ ④ ⑤ ⑥ (3)共起ネットワークの分析 共起ネットワークを作成したのが、図1である。 (2)での予想を踏まえ、まず、保育者としての子育て支援の専門性について見て みる。左上の①の島を見ると、「専門的」「知識」「持つ」「話」「聞く」「理解」という 単語がつながっている。これらをまとめると「専門的知識を持った上で、保護者の話 を聞く」という文とできるだろう。ここでの重点は、単に「話を聞く」のではなく、 「専門的知識を持って、聞く」ということである。すなわち、専門家として、専門的 知識を持っているからこそ、保護者の話を聞くのであるという観点からの納得感と言 えよう。 同様のつながりは、右側の②の島にもある。こちらでは「専門」「保育」「伝える」「ア ドバイス」といった単語でつながっている。さきほどは、何に対する「専門」である かは判明しなかったが、この②を踏まえると、「保育」の専門家と学生が考えている ことが推測される。また、さきほどの①では「話を聞く」であったが、こちらでは「伝 える」「アドバイス」も出ており、必要に応じて、知識や情報を保護者に伝え、アド バイスすることも、保育者の役割であり、それゆえの納得をしていることがうかがえ る。これらのキーワードは、どちらかと言えば、カウンセラーの役割に近いと言える。 これらに加え、「連携」という単語も線で結ばれている。この連携は、「家庭」という キーワードともつながっているものの、この「連携」のキーワードが出現した文を確
認したところ、他の専門機関と「連携」として使われていることもあった。こちらは、 先ほどのカウンセラーの役割と対比するならば、ソーシャルワーカーの役割に近い。 保育者だからできる子育て支援がある一方で、他の専門機関の方が得意とする子育て 支援サービスもある。そちらに接続したり、連携したりすることも、保育者の子育て 支援として必要なこととして、学生が受けとめていることがうかがえる回答である。 次に、子育て支援における保育者のあり方について、左下の③の島に注目する。こ こには、「育児」「成長」「相談」「気軽」「一緒」「考える」といった単語が含まれる。 これらの単語をつなげると、「子どもの成長や育児について、気軽に相談できて、一 緒に考える」といった文を組み立てることができる。特に後半部分の「気軽に相談で きる」「一緒に考える」といった点が、保育者が子育て支援に向かうあり方として、 学生が想定しているものと推察される。似たようなことが、中央左上の④の島で「子 育て」「身近」「存在」といった単語群で示されている。これらの単語では、保育者が 保護者にとって「子育てに関する身近な存在」であると学生が想定しており、それゆ えの納得感を示していると言える。 最後に、(2)の集計では予想していなかったものの、共起ネットワークで出現し たものとして、子育て支援の当事者となることに対する、学生の思いの揺れを見てい く。まず、中央下部の⑤の島に注目する。この島では、「生活」「悩み」「家庭」「連携」 「必要」「大切」「自分」「納得」「難しい」といった単語群がつながっている。これらは、 保育者として子育て支援を行うことに対する学生の苦悩を表すものと思われる。すな わち、「保護者が抱える生活上の悩みを家庭と連携していくことが、(保育者としての) 自分が行う必要があり、大切なこととして納得はしているものの、その一方で、難し さも感じる」といったものと推測される。実際、学生の回答では、「やや納得」「どち らとも言えない」といった、全面的納得とは言えないものも見られている。また、中 央上部の⑥の島では、「情報」「見る」「知る」という単語群がつながっている。これ らは、⑤の島で見られた苦悩から、少しでも子育て支援力をつけるために、今のうち から「情報を見て、知っておく」という学生の動きと見ることができる。 なお、(2)の集計で予想した「不安」「安心」といった保護者の思いの部分は、共 起ネットワークでは、見られなかった。
4.考察
本研究の目的は、保育者が子育て支援を行うことに対する保育者養成課程学生の納 得感を明らかにすることにあった。 学生の回答を集計したところ、多くの学生は、子育て支援に対する納得感を持って いた。またその回答理由も、保護者の悩みの相談に乗り、話を聞き、アドバイスをし たり、より適切な専門機関につなげたりといった活動に関するものや、これらの活動 を行う際の、気軽さ、身近さ、一緒に考える姿勢といった、保育者としてのあり方に 関するものなど、子育ての専門家として、永盛(2021)で導出した「連続性」や「対 等性」「専門性」と類似するものであった。 一方で、保育者が子育て支援を行うことは、必要なこと大切なこととは思いつつ、 自分が行うことはまだ難しいという養成課程に在籍する学生としての苦悩、言い換えれば実践前の不安というものも見られ、それゆえ情報収集をする必要性もあると考え ているという結果も得ることができた。保育者養成課程の授業への示唆として、特に、 学生が感じている不安部分に焦点を当て、即現場で使える実践的な技術に関する授業 だけでなく、子育て支援に関する適切な情報提供もまた、学生にとっては効果を持つ ものと思われる。 今後の課題として、他の学年での同様の調査を行うことが挙げられる。今回調査を したのは、養成課程の各科目を学修し、種々の実習を終え、保育者として就職するこ とが決まっている4年生後期の学生である。あと半年もすれば保育者として現場で働 くことになる。回答からは、保育者が専門職であるということへの自負、自分が専門 職として働くことへの意識の高さ、そしてその一方で、保育や子育て支援を行ってい くことへの不安も高さも感じられた。これらは、この時期の学生だからこその結果で あると言える。入学間もない1年生や、実習を経験した2・3年生では、全く違った 結果が見られるかもしれない。また、現場で働き始めてからでも、納得感は異なって くるだろう。今後、これらの対象者に調査を行い、追跡調査、もしくはせめて横断的 調査で、納得感の経年変化を明らかにしていきたい。
引用文献
橋本健夫・林朋美・川越明日香(2007)教員養成段階における授業改善:文系の学生 に理科を教えることが楽しいと感じさせる授業の開発.日本科学教育学会研究会 研究報告 23(2),53-56. 橋本優花里(2017)納得感とは何か:主体的学びを後押しする心理学的概念を探る. 長崎県立大学 平成28年度学長裁量研究成果報告,128-130. 橋本優花里・川越明日香・橋本健夫(2018)納得感とは何か:主体的学びを後押しす る心理学的概念を探る.長崎県立大学 平成29年度学長裁量研究成果報告,83- 86. 永盛善博(2019)科目「子育て支援実践」受講による学生の「保護者が求める子育て 支援」の変容.東北文教大学・東北文教大学短期大学部教育研究,9,41-50. 永盛善博(2020)保育者養成校学生が考える「保護者が求める子育て支援」の安定 性:本学学生の2018年度と2019年度の比較から.東北文教大学・東北文教大学短 期大学部教育研究,10,1-9. 永盛善博(2021)保育者による子育て支援の特徴・独自性・強み:他活動主体との比 較を通して.東北文教大学・東北文教大学短期大学部紀要,11,13-24. 山地弘起・橋本健夫(2012)学生の納得感を高める大学授業.ナカニシヤ出版.資料:受講生による納得感の回答とその理由(回答者が特定できないよう、順序はラ ンダマイズ済み) 回答 理由 納得 している 保育者の立場として、子育てが楽しいと思ってもらえるように援助して いく必要があると思う。子どもと関わる時間が多いため、どのように過 ごしていたのか伝えることが大切。 納得 している 保育者は専門職です。やはり学ばなければわからないこと、不安になる ことも多いと思います。その部分をカバーし、援助できるのが保育者だ と思います。 やや納得 している 子どもを預ける場所で働いている人が保育者である。子どもと保護者両 方と直接関わる人である為、保護者の話を聞いて、サポートしていくと いう面では納得できるが、子育て支援に関わる人が多くいる中で、保育 者に求められる子育て支援の度合いが強いような気もする。 納得 している 保育者として子どもと関わる上で、園生活はもちろんのこと、家庭との 連携をとるためにも保護者の悩みを聞くなど、寄り添った支援が必要だ と思う。しかし、虐待など専門的な知識を必要とするケースもあるため、 専門機関と連携しつつ関わりたいと思う。 納得 している 1人で育てられる親は誰もいないと考える。周りの手助けがあってこそ 子どもを育てていけると思う。そこで、子育て支援があることで、安心 して育児できると思う。相談することで、知らなかった情報を知ること ができて、より子どもを育てていくことに自信がつくと考えるから。 納得 している 子どもを預かるということは家庭との連携が必要不可欠だと思う。その ため、保護者の方が子育てをしやすいように手助けする必要が保育者に はあるのではないかと感じた。また、気軽に悩みを相談できるような雰 囲気づくりをしていくことも大切なのではないかと思った。 納得 している 子どもだけではなく、保護者のサポートやケアも保育者の仕事の1つで あると考えるため。 どちらと も 言えない 自分が子育て支援を行う上で、支援についてまだまだ理解不足だし、決 められた方法があるわけではないので、色々なパターンでどうしたらよ いか考えていく必要があると思う。自分が正しいわけではないし、支援 は大切だけど、1つの案として受けとめてくれたらいいのかなと思う。 どちらと も 言えない 保育者が保護者や子どもに行える支援は限られている。指針などに表記 されているように、家庭での生活・育児について、保育者が介入してい くのは実際のところ難しい部分がある。子どもが園でどう生活したか、 遊んだかを詳しく伝え、保護者の悩みに寄り添うことが精一杯に見える。 納得 している 保護者が忙しいならば(忙しくなくても)、私たちも仕事なので積極的 に行いたい。
納得 している 家庭と園が連携して子どもを育てていくため、保護者と連携することは 欠かせないため。子どもと関わることを専門とする職業のため。保護者 にとって保育者は保育に関わっている身近な存在のため。 納得 している 保護者が子どものことについて、一番相談がしやすい専門家だと考えら れるから。子どもと普段の生活の中で関わっている保育者は子どものこ とを理解した上で、保護者の悩みを一緒に改善・解決していけると考え る。また、保護者と保育者は、送迎の際や日々の電話を通して関わりが あるので、初対面の人よりも相談しやすい気持ちになると感じられる。 やや納得 している 保護者にとっては、身近に話せる専門的な人だと思うので、保育者が行 うことには納得している。だが、保育者によって言うことが違ったり、 子育てをしたことがなかったりだと思うので、正直難しいと思う。 やや納得 している 保育所保育指針に子育てに関する内容が書かれていることと、実習で保 育者が保護者対応をしている様子を見たという経験から、自分も保育者 になればやるべきことなのだと納得している。「やや納得している」と したのは、まだ自分の身近なこと・関心のある情報しか知らないため、 今のままでは満足のいく支援はできないだろうという不安があるためで ある。 納得 している 保育者は幼稚園、保育園、こども園で子どもの成長を間近に見ることが できる大切な施設であるため、入園前で不安な気持ちでいる親子をあた たかく迎えることは、保育者の大切な役割となってくると感じました。 また、保育者は子どもの成長について専門的な知識を持っていて、行政 で行っている職員よりも気軽に行きやすく、悩みも相談しやすいのでは ないかと思います。 納得 している 保護者の次、もしくは同じくらい子どもと関わっている大人だから、そ の子に合ったアドバイスや一緒に考えていくことが大切だと思う。専門 の知識を持っているから、保育だけではなく、保護者にも伝えていきた い。 納得 している 子育ては一人で行うものではなく、皆で行うものだと思う。周りに頼る ことができない人やひとり親家庭などなかなか悩みを相手に相談するこ とができない環境にある人にとっては子育て支援は大切だと思う。気軽 に相談できる相手がいるだけで保護者も安心できると思う。自分が保護 者の立場でも子育て支援があると安心できるので必要だと思った。 納得 している 保育者は子どもや子育てに関する専門的な知識を持っているため、子育 て支援を行うことは自然なことだと思う。また、保護者の中には、近所 に頼れるような人がいなかったり、引っ越してきたばかりで知り合いが いなかったりする人もいると思うので、保護者にとって身近な存在であ る保育者が支援を行っていくべきだと思う。 納得 している 保育者は、子どもだけを援助するのではなく、子どもにつながる家庭の 保護者にも、援助することが、相互の幸せにつながると思うから。
納得 している 保護者になったところで、子どもの全てを理解できていると思わないか ら。保護者も全てが正しく、子育てに理解があるのではなく、子どもと 関わる上で不安なことはたくさんあると思うので、気軽に子育て支援を 利用していいと思います。 やや納得 している 保育をしているということは、保護者の次にその子どもに詳しいという ことだから。その子どもに合った情報や方法を伝えていくのが保育者の 責任だと感じる。しかし、あくまで正しい情報や方法を伝えるのが保育 者としてするべきことだが、連携して行っていくものではない限り、深 く関わるべきではないと思う。 納得 している 保護者が身近に会える保育や子育てのプロだから。そして、保護者が見 れていない時間見ているのが保育者なので、保護者が気づけない子ども の一面にも気づけるから。 納得 している 地域での人間関係の希薄化→保育者がつながりを持たせる・孤立を防 ぐ。始めての子育てや不安→保育の専門家としての知識・理解。各家庭 の子育て全てに介入することは難しい→行政の子育て支援の提案。 やや納得 している 保護者が育児で困った時など、保育者からの子育て支援があれば気軽に 相談できたりし、育児をするときの手助けになるのではないかと考え た。話し相手がいる、というだけでもストレス軽減や支えになると思う。 納得 している 今現在、保育の勉強をしているから、分かることはたくさんあるが、勉 強をしていなかったら、ほとんど知識がない状態だと思う。だからこそ、 今ある知識を活かした支援にあたることは必要だと思う。 納得 している 子どもの発達や気持ちの理解について専門的な知識を持っているから、 保護者の支えになることができる。また、保護者の身近な存在として話 を聞くことができる。 やや納得 している 保育者の子育て支援の内容として、育児相談や支援施設の紹介などがあ ると思う。こういった支援を行うことで、保護者が育児しやすい環境を 整え、子どもの健康成長につながり、虐待を未然に防ぐことができると 考えたため。 どちらと も 言えない 自分自身、子育てをしていないのでまだまだ理解に時間がかかったり、 そのような問題に直面したりした時に直接的に支援をするのは難しいの かなと思ってしまう(実際そんなことは言っていられないが…)。もっ と専門的な知識等を身に付け、保護者が納得できるような支援をしたい (まずは、話を受けとめ聞くことが大切かな…と)。 納得 している 子どもや保護者に1番近い存在が保育者だと思う。頼りやすく、話しや すいため、悩みに寄り添う機会は多いと思う。また、子どもと一緒に 育っていく中で、支援を行うことは必要なことであると感じる。 納得 している 保育の勉強をしていて、保護者の方にとって、一番関わる保育の専門で あるから。その子どものことをよく理解しているからできるアドバイス もあると思う。保育者は、親の知らない子どもの一面もあると思うし、 それを伝えることも1つの支援だと思うから。
納得 している 保育者は、子どもについての専門的なことを学び、実践も行っているの で、体験したことを踏まえたアドバイスをすることができると思った。 保育者は、保護者とも一番多く関わり、子どもの日頃の姿も見ているの で、保護者にとって、一番相談しやすい相手であるから。園などで地域 交流や他の専門機関などとの連携を行っているので、相談された時に ネットではわからない情報も提供できる。 やや納得 している 保育所は、長い時間預かる場所でもあるため子どもを見ている時間も長 い。そのため、子どもについて理解している部分も多いし保育者は専門 的な知識も持っているため、話を聞いて受け止めたりアドバイスなども できると思うから。 納得 している 子育ての中で一番身近な存在でもあり、ほとんど毎日その子どもを見て いるということもあるので、保護者・子どもにあった支援ができると思 うから。保育者の仕事が増えてしまう可能性もあるが、直接でなくても、 違うサービスとつなげるなどの支援もできると思う。 納得 している 子育て支援は、子どもが健やかに成長するためや、保護者が安心して子 育てをするために必要なことだと思う。保育者も、子どもの成長を願っ て援助したり、保護者の話や悩みを聞いて不安を解消できるよう援助し たりすることが保育者の役割の1つだと思う。 やや納得 している 保護者にとって、身内の次に相談しやすい、頼りやすい大人は保育者だ と思う。また、その上で、保育者は、保護者が困った時に、気軽に相談、 悩んだ時に頼れる存在でなくてはならないと思う。だから、子どものこ とをよくわかっている専門家として、保育者が子育て支援を行うことに 関してやや納得している。 納得 している 保護者が子育てについて相談しやすいのは保育者であると感じる。子ど もの成長や健康面などにについて、保護者以外に直接子どもと関わるの は保育者であるため、相談しやすい存在であるべきだと思う。 どちらと も 言えない 子育てや、子どもの成長に対し、専門職である以上、相談に乗ったり一 緒に考えたりしたいが、実際、お金の面など、「こんな支援があるよ」 と伝えるだけで、お金をもらうための基準や手続きがあるだろうし、緊 急保育も、「今日お願いします!」「いいですよ」で済む話でもないので、 私に何ができるのか?と疑問がある。 納得 している 子育て支援を行えるのは、普段の子どもの姿や保護者の姿を見ているか らこそ、できるものがあるのだと考える。保護者に子育ての情報提供す るにも、家庭の背景を知る必要があり、知る為にも保護者と保育者との 信頼関係が必要である。他の機関に相談しにくくても、保育者が仲介と なり、様々な支援をしつつ、子どもの様子、保護者の様子を見ることが できるのは保育者だと考える。