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世界最高面密度の量子ドットの自己形成に成功

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Academic year: 2021

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世界最高面密度の量子ドットの自己形成に成功

-高性能量子ドットデバイス実現に向けた研究がさらに加速- 平成24年6月4日 独立行政法人物質・材料研究機構 概要: 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)先端フォトニクス材料ユニット(ユ ニット長:迫田 和彰)の間野 高明主任研究員、定 昌史ポスドク研究員および佐久間 芳樹 グループリーダーは、当機構のオリジナル技術である液滴エピタキシー1)と呼ぶ半導体量子 ドット2)の自己形成技術の高度化を進め、従来報告された値を大幅に上回る世界最高の面密 度を持つ量子ドットの新形成技術の開発に成功した。また、形成した量子ドット集団から強 い光励起(フォトルミネッセンス(PL))発光3)を観測して、開発した技術が優れた結晶品 質の実現にも有効であることを明らかにした。 量子ドットは、半導体レーザーの大幅な特性向上や、新たな動作原理に基づく超高効率の 太陽電池の開発を目的として、近年注目が高まっている。新たに開発した技術では、従来の 液滴エピタキシー法によるガリウム砒素(GaAs)量子ドット形成技術に対し、(1)高い指 数面4)を持つ基板の利用、(2)室温付近でのガリウム液滴形成と結晶化、(3)照射ガリウ ム量の最適化による液滴の合体現象の抑制を導入した。その結果、格子歪みの無いガリウム 砒素量子ドットを 7.3×1011/cm2という極めて高い面密度で自己形成することに成功した。 さらに、作製した量子ドットの熱処理過程を工夫することで、室温付近での結晶化に起因す る欠陥が回復し、量子ドットから強いPL 発光が観察できることを見出した。 液滴エピタキシーは、基板結晶との間に格子歪みのない量子ドットを自己形成可能な唯一 の手法として注目されており、原理的には歪みによる結晶性务化の制約を受けず、成長方向 に多数の高品質な量子ドット層を近接して配置できる利点がある。そのため、今回開発した 超高密度の面内量子ドット技術と組み合わせれば、従来技術では実現不可能であった極めて 高い体積密度の量子ドット材料を作製できる。本研究成果により、量子ドットを用いた光・ 電子デバイスのさらなる高性能化の達成が期待される。

本技術の詳細は、米国応用物理系学術雑誌Applied Physics Letters オンライン版に掲載さ

れ、冊子版では100 巻 21 号に掲載される予定である。

同時発表:

筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布)

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研究の背景: 近年、半導体レーザーの大幅な特性向上や、新たな動作原理に基づく超高効率の太陽電池 の開発を目的として、半導体量子ドットに注目が集まっている。量子ドットを使った半導体 レーザーでは、低消費電力、高速動作、温度変化による光出力の安定性など、既存の半導体 レーザーを凌駕するデバイス特性が期待されている。また、量子ドット型太陽電池において は、従来のバルク型半導体材料では達成不可能な60%を超える極めて高い変換効率の実現可 能性が提案されている。しかし、一個の半導体量子ドットの体積は非常に小さいため、必然 的にそれぞれの量子ドットが発光あるいは吸収できる光の量も限られてしまうという重大な 問題がある。そのため、量子ドットの利点を生かしつつデバイスの特性向上を図るには、量 子ドットの高密度化(面密度および体積密度)を図ることが不可欠であり、それに向けた多 くの研究が行われている。このうち量子ドット面密度については、これまでの最高値として 他機関から1×1011/cm2が報告されているが、依然として充分とはいえない状況にあった。 今回、我々は当機構で独自に開発を進めてきた液滴エピタキシー法と呼ばれる量子ドット 自己形成手法の高度化を進め、室温付近という極端に低い温度での量子ドット形成とその後 の熱処理工程の工夫によって、従来の値を大幅に上回る超高密度量子ドットを高品質に実現 する手法を新たに開発した。 今回の研究成果: 液滴エピタキシー法によるGaAs 量子ドットの自己形成では、一定温度に加熱された基板 上にまずガリウム(Ga)原子のみを供給してナノ寸法の半球状の Ga 液滴を形成する。次に、 同じ温度の基板に砒素(As)原子のみを供給すると、Ga 液滴との化学反応が起こって GaAs の量子ドットが作製できる。すなわち、Ga 液滴が結晶化後の GaAs 量子ドットのサイズや密 度を決めることになる。従って、量子ドットの面内密度を増加させるには、供給された Ga 原子の結晶表面上での拡散長を抑えて高密度の Ga 液滴を形成することが必要である。その ためには、Ga の拡散が起きにくい性質を持つ基板結晶を選び、さらに基板温度を下げること が有効と考えられる。しかし、一般に温度を低下させると As を供給した際の化学反応が充 分に進行せず、GaAs 量子ドットの品質が大きく低下するので、良好な発光特性の実現が難 しいことが知られている。今回我々はこれらの相反する課題を考慮したうえで、新たに以下 の要素技術を開発し、従来の液滴エピタキシーに適用することで問題解決を試みた。 1.従来広く用いられている(100)という指数面の GaAs 基板の代わりに、表面上の Ga の拡 散が抑制される(311)A 指数面の基板を用いた。これにより、(100)基板と比較して約一桁高 い面内密度のGaAs 量子ドットが形成可能となった(図1)。 2.Ga 液滴を形成する基板温度を、従来の 200℃から一般的な結晶成長では非常識とも言え る室温付近(30℃)まで低下させた。その結果、Ga 原子の表面拡散が大幅に抑制されて、5 ×1011/cm2まで量子ドット密度が増加した(図2)

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図1:GaAs(100)と(311)A 基板上に同条件(基板温度 200℃)で GaAs 量子ドットを作製 した際の量子ドット密度の違い。(100)から(311)A に基板を変えるとガリウム原子の表面 拡散が抑制され、量子ドット面密度が、2.0×1010/cm2から、1.2×1011/cm2へと約一桁上 昇している。 図2:GaAs(311)A 面を用いて、成長温度を 200℃から 30℃まで変化させて作製した量子 ドットの原子間力顕微鏡像。温度低下によりガリウム原子の表面拡散が抑制されて、面密 度が5×1011/cm2まで増加している。その一方で、30℃では点線で示す量子ドット密度の 理論解析曲線からの乖離が起こっている。液滴同士の合体により密度が低下してしまった ことが原因である。 3.Ga 液滴密度の基板温度依存性に Volmer-Weber 型の核形成理論を適用して解析したと ころ、上記の 5×1011/cm2理論的に予想される最高面密度に達していないことがわかった。 調査の結果、Ga 原料の過剰供給によって液滴同士の合体が起こり、面密度の増加を阻んで いることが判明した。そこでGa 照射量を 5 原子層から 3 原子層に減尐させることで、液滴 の合体現象が抑制されて7.3×1011/cm2という超高面密度が達成できた(図3)。この値は、面

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値である。 4.基板温度30℃で形成した超高密度 Ga 液滴に、同一温度で長時間の As 照射を行って GaAs 量子ドットへと結晶化を行ったのち、基板温度を上げて余分に吸着した As 原子を蒸発させ ることで量子ドットの結晶性の改善を図った。さらに400℃でのキャップ層の成長後、800℃ で急速熱処理工程を行って、残留する結晶欠陥の修復を試みた。この結果、量子ドット集団 から強いPL 発光が観察され(図 4)、量子ドットの高品質化が達成された。また、量子ドッ トの発光波長はキャップ層成長前の形状とサイズから予測される値と非常に良く一致してお り、個々の量子ドットがキャップ層成長や急速熱処理の工程によって変化しないことが結論 できる。 以上のように、従来からの液滴エピタキシー技術に新たに開発した複数の要素技術を盛り こむことで、7.3×1011/cm2という世界最高値の面密度を持ち、結晶品質にも優れた量子ドッ トの作製技術を開発することができた。 図3:30℃の成長温度でガリウム照射量を 3 原子層まで減尐させて形成した超高面密度 量子ドットの原子間力顕微鏡像。7.3×1011/cm2の超高面密度が達成されている。 図4:超高密度量子ドットの発光スペクトル。発光波長650nm は形状とサイズから予測 される発光波長と極めてよく一致している。

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今後の展開: 今回の技術開発によって、高い結晶性を維持したまま7.3×1011/cm2という超高密度量子ドッ トが作製可能となったことの意義は極めて大きい。また、今回作製したGaAs 量子ドットは (311)A 面の GaAs 基板上に作製しているが、液滴エピタキシーの特徴はそのまま生かされ て完全に格子整合している。そのため、量子ドット形成層をAlGaAs のような薄い分離層を 隔てて成長方向に多数積層することは容易である。従って、極めて高い体積密度を持った量 子ドット材料も実現可能である。今後、半導体レーザーや太陽電池に適用することで、デバ イス特性への効用を明らかにしていく。さらに、今回得られた7.3×1011/cm2超高密度量子ド ットは面内の量子ドット同士が近接しているため、充分大きな量子力学的結合効果も期待で きる。このような特徴を利用した新規機能性素子実現に向けた研究にも取り組んでいく予定 である。 用語解説 1)液滴エピタキシー法: 物質・材料研究機構が 1990 年に開発した半導体量子ドットの自己形成技術。多くの研究 機関で研究されているStranski-Krastanov (S-K)モードと呼ばれる自己形成手法とは異なり、 ヘテロ界面で結晶格子の大きさが一致した構成整合系の量子ドットを作製できることが特徴。 最近の我々の成果により有用性が広く認識され、追試を含めて世界各国で活発な研究が始ま っている。 2)量子ドット: 数 10 ナノメートル程度の寸法を持った三次元の人工的な半導体結晶。バンドギャップの 異なる異種の半導体に埋め込むことにより、電子や正孔といった電荷を半導体中のナノ寸法 の領域に閉じ込めることができる。エネルギー準位が完全に離散化するため人工原子と呼ば れることもあり、これを使った光デバイスや電子デバイスの研究が世界で活発に行われてい る。 3)光励起(フォトルミネッセンス(PL))発光 ルミネッセンスとは材料の発光現象の一種であり、材料が過剰なエネルギーを光として放 出して安定な状態に戻る現象のことを言う。フォトルミネッセンスは光エネルギー励起によ り生成した電子・正孔対が再結合して発光する現象である。材料の結晶品質と強い相関があ るため、その強度により結晶性の評価ができる。 4)高い指数面を持つ基板 広く用いられているGaAs(100)基板から、尐し傾いた面方位を有する(n11)のような基板を

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(問い合わせ先) 独立行政法人 物質・材料研究機構 企画部門 広報室 TEL 029-859-2026、FAX 029-859-2017 (研究内容に関すること) 独立行政法人 物質・材料研究機構 先端フォトニクス材料ユニット 間野 高明 (まの たかあき) TEL 029-859-2790 E-mail [email protected] 独立行政法人 物質・材料研究機構 先端フォトニクス材料ユニット 定 昌史(じょう まさふみ) TEL 029-851-3354(内線 6281) E-mail [email protected]

参照

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