知的資本の測定と報告--OECDの取り組み
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(2) 第51巻. 1は. 本 稿 は,OECD(経. 第3号. じ. 済 協 力 開発 機 構)に. め. に. よ る知 的 資 本 の測 定 ・報 告 に対 す る取 り組 み を. 明 らか にす る と と も に,当 該 問題 を め ぐる議 論 の 状 況 を 整 理 す る こ とを 目的 とす る もの で あ る。 知 的 財 産 に 関 す る情 報 の 開 示 が 求 あ られ る の は,端 的 に 言 って,知 的 財 産 が 利 益 を 生 み 出 す 競 争 優 位 の源 泉 で あ り,企 業 の 将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロー や そ の 時 期,資 本 コ ス ト, 競 争 優 位 持 続 期 間 な どを 推 定 し,適 切 な投 資 判 断 を 下 す た め に必 要 で あ る と い う こ と に あ る(1)。 経 済 ・社 会 の シ ス テ ム を,加 工 組 立 型 ・大 量 生 産 型 の 従 来 の もの づ く り に最 適 化 し た シ ス テ ム か ら,付 加 価 値 の 高 い無 形 資 産 の 創 造 に も適 応 した シ ス テ ム へ と変 容 させ て い くこ とが 求 め られ て い る な か で(2),知 的 財 産 の創 造,維 持 管 理 や そ の 活 用 が 重 要 な経 営 課 題 とな って い る。 ま た,国 際 的 に も各 国 の 政 府 機 関,会 計 士 協 会,基 準 設 定 機 関,研 究 所 等 が 報 告 書 や 開 示 指 針 を 公 表 して い る⑧。 す で に,別 稿 ④ に お い て 知 的財 産 の認 識 と開 示 に つ い て 検 討 して い るが,以 下 に お いて は,ま ず 初 め に 別稿 に お い て 十 分 な概 念 整 理 が で き な か った 知 的 財 産 を め ぐる用 語 の 分 類 を行 い た い 。 次 に,そ れ を 踏 ま え てOECDの. 知 的 資 本 に関 す る シ ンポ ジ ウ ム に お い て 報. 告 され た リー ドビー タ ー(Leadbeater,C.)の. 研 究 を 取 りあ げ,知 的 資 本 を め ぐる問 題 領. 域 を 明確 化 しよ う とす る もの で あ る。. H知. 的財産 の意義 と関連用語の概念整理. 1990年 代 に は 情 報 通 信 技 術 が 飛 躍 的 に発 達 す る こ と に よ って,一 方 で 金 融 の 自 由化 ・国 際 化 が促 進 され デ リバ テ ィ ブ取 引 が 増 大 す る と と もに,他 方 で 企 業 戦 略 に お け る 知 的 財 産 を 活 用 す る こ と の重 要 性 が 高 ま って い った 。 実 際 に,1980年. 代 と1990年 代 を 比 較 す る と,. 他 の先 進 国 で は 研 究 開 発 投 資 の増 加 と技 術 進 歩 率 が 比 例 関 係 に あ り,研 究 開 発 の効 率 性 が 企 業 の収 益 性 と相 関 関 係 を持 つ よ う に な り,研 究 開 発 の 収 益 へ の 影 響 力 が大 き くな っ て い る こ とが 指 摘 され て い る(5)。こ の よ う に 国 際 的 な 市 場 競 争 が激 化 す る 中 で,知 的 財 産 の保. (1)経. 済 産 業 省. (2)知. 的財 産 戦 略 会 議. 『特 許. ・技 術 情 報 の 開 示. パ イ ロ ッ ト デ ル 』2003年3月14日,2頁. (3)詳. 細 は 次 の 文 献 を 参 照 さ れ た い 。Upton,Jr,W.S."ChallengesFromtheNewEconomy. 『知 的 財 産 戦 略 大 綱 』,2002年7月3日,1頁. forBusinessandFinancialReporting",in:J.HandandB.Leved.,1η. ∫αη8めZε 、4∬ε∫3,0x-. fordUniversityPress,2003,pp.469-486. (4)拙. 稿. 「知 的 財 産 の 認 識 と 開 示 」 『会 計 人 コ ー ス 』 第39巻 -112(474)一. 。. 。. 第3号(2004年3月)。.
(3) 知的 資本の測定 と報告(浦 崎) 護 の 強 化 を 通 じた 質 の 高 い効 率 的 な 研 究 開発 の 実 施 が 不 可 欠 な 時代 と な った に もか か わ ら ず,企 業 の 研 究 開 発 体 制 や そ の 結 果 と して の 知 的 財 産 に つ い て の情 報 が十 分 に提 供 さ れ て い る とは いえ な い。 繰 り返 す ま で もな く,企 業 価 値 を推 し量 る に は,有 形 資産 や 金 融 資 産 そ の もの に着 目す るの で は な く,そ れ らを 有 効 活 用 で き る経 営 戦 略 で あ った り,そ れ らを 動 か す 経 営 者 の経 営 手 法 と い った 「み え な い価 値 」す な わ ち 無 形 財 に 企 業 の 評 価 を 委 ね る よ うに な って き た。 さ らに,イ. ン タ ー ネ ッ トな ど情 報 通 信 技 術 の 発 展 と普 及 に よ り電 子 商 取 引 が 一 般 化 し,従. 来 か らあ る商 慣 習 や 法 律 制 度 で は 規 制 で き な い ビジ ネ スの 形 態 が 出現 し,「価 値 の 源 泉 」と して ノ ウハ ウ 等 の無 形 財 に 重 点 を 置 くよ う に な って き た の で あ る⑥。 と こ ろ で,企 業 の 知 的 財 産 を論 じる場 合,そ れ が意 味 す る と こ ろや 当該 概 念 に含 ま れ る 項 目等 の 整 理 が 論 者 に よ っ て異 な っ て い る。 指 摘 す る ま で も な く論 者 に よ って独 自 の視 点 で 整 理 が 行 わ れ て い る こ と は理 解 で き る の で あ る が,知 的 財 産 報 告 書 の 開 示 指 針 が 公 表 さ れ て い る こ と もあ り,そ の 内容 につ い て の共 通 認 識 が 必 要 で あ る よ うに 思 わ れ る。 知 的 財 産 に関 連 す る論 文 等 で使 用 さ れ る用 語 と して,一 般 に,無 形 財,知 的財 産,知 的 財 産 権,無 形 資 産 な どが あ る。 そ こ で,ま ず,OECDに. 的 資 本,知 的 資 産,知 よ る用 語 の定 義(7)を. 掲 げて お き た い。 「表1」. か ら知 ら れ る よ う に,無 形 資 産 と は,財. ま た はサ ー ビス の 生 産 も し くは供 給 に. 利 用 す るた め に,あ る い は,他 社 へ の レ ン タ ル の た あ に,あ る い は,管 理 目的 で,保 有 し て い る物 的 性 質 の な い 非 貨 幣 性 資 産 を意 味 す る。 した が って,無 形 資 産 と は,す で に貸 借 対 照 表 に認 識 され た も の で あ る と解 釈 で き る。 知 的 資 本 とは,無 形 資 産 の 経 済 的 価 値 を意 味 し,組 織 資 本 と人 的 資 本 の 二 つ か らな る もの と して 定 義 され て い る。 組 織 資 本 とは,企 業 が 所 有 す るか ま た は支 配 す る無 形 資 産 の価 値 を意 味 し,識 別 可 能 で 通 常 は知 的 財 産 権 に 基 づ い た 無 形 商 品 と技 術 革 新 力,組 織 能 力 お よ び市 場 競 争 力 な どの 無 形 能 力 の 二 つ か らな る。 人 的 資 本 は,個 人 の 資 格,科 学 知 識,技 術 知 識,ス. キ ル,移 動 性,経 験 な ど の価 値 を. 意 味 す る。 知 的 財 産 は,無 形 資産 の 開 発 と商 品 化 に 関 す る財 産 権 を 意 味 す る。 ま た,知 的 資 産 と い う用 語 は使 用 され て い な い 。 以 上 の 説 明 に 基 づ い てOECDに. よ る知 的 資 本 の 関. 連 用 語 の 関 係 を 図 形 化 した もの が,「 図1」 で あ る。. (5)産. 業 構 造 審 議 会 知 的 財 産 政 策 部 会(経. 営 ・情 報 開 示 小 委 員 会)「 知 的 財 産 情 報 開 示 指 針(案). 特 許 ・技 術 情 報 の 任 意 開 示 に よ る 企 業 と 市 場 の 相 互 理 解 に 向 け て 」2003年12月19日,1-2頁 (6)武. 田隆 二. 『最 新 財 務 諸 表 論. 第9版. 』 中 央 経 済 社,2003年12月,157-159頁. (7)Mortensen,J.,MeasuringandReportingIntellectualCapita1:Experience,Issues,and Prospects,programmenotesandbackground,AnInternationalSymposium,Amsterdam9-11June1999. -113(475)一. 。. 。.
(4) 第51巻 「図2」. 第3号. は,古 賀 智 敏 教 授 に よ る整 理 で あ る。 古 賀 教 授 は,無 形 財 を,知 的 所 有 権,知. 的 資 産,知 的 資 本(人. 的 ・組 織 的 資 本)の 三 つ に分 類 し,こ れ らの無 形 財 は 分 離 可 能 性,. 法 的形 式 性,評 価 可 能 性 の レベ ル は異 な る もの の,非 競 合 性,収 益 逓 増,ネ. ッ トワー ク効. 果 とい う価 値 創 出 の 特 性 を 有 す る と い う点 で共 通 して お り,こ れ らが 企 業 の 競 争 優 位 を も. 表10ECDに. 用 無. 語 形. 資. 定 産. (intangibleassets). 形. 商. 品. 情 報,科 ク,ラ. 知. 的. 資. ,紙. テ ー プ ま た は デ ィ ス ク と い った メ デ ィア に記 録 さ れ た. 学,文. 学,芸. 術 ま た は 娯 楽 の 創 造 物 と し て の 無 形 製 品(im-. materialproducts)。. (intangiblegoods). 本. (intellectualcapita1). 義. 財 ま た は サ ー ビ ス の 生 産 も し く は供 給 に 利 用 す る た め に,あ る い は,他 社 へ の レ ン タル の た め に,あ る い は,管 理 目的 で 保 有 して い る物 的 性 質 の な い 非 貨 幣 性 資 産 。 一般 に. 無. よ る 知 的 財 産 に 関 連 す る 用語 の 定 義. そ れ ら は,有. イ セ ン ス 供 与,そ. 形 商 品 と 同 様 に 販 売,ス. 会 社 の無 形 資 産 の(見 積 も り,帰 属)経 済 的 価 値 。 知 的 資 本 は,組 織 資 本 と人 的 資 本 の 二 つ の 範 疇 に分 類 さ れ る。 企 業 が 所 有 す る か ま た は 支 配 す る 無 形 資 産 の(見. 組. 織. 資. 本. (organizationalcapital). 値 。 組 織 資 本 は,識. と 技 術 革 新 力(innovationcompetence),組. 的. 資. 知. 的. 財. 織 能 力(organiza二 つ か ら な る。. 本. 個 人 の 資 格,科 学 知 識,技 (見 積 も り,帰 属)価 値 。. 産. 無 形 資 産 の 開 発 と商 品化 に 関 す る財 産権 。. 術 知 識,ス. キ ル,移. (intellectualproperty). 図10ECDに. 属)価. よ び 市 場 競 争 力(marketcompetence)な. ど の 無 形 能 力(intangiblecompetence)の 人. 積 も り,帰. 別 可 能 で通 常 は知 的 財 産 権 に基 づ い た 無 形 商 品. tionalcompetence)お. (humancapital). トッ. の他 取 引 の対 象 とな る。. よ る 知 的資 本 にか か る 用 語 の 関 係 一114(476)一. 動 性,経. 験 な どの.
(5) 知 的資本 の測定 と報 告(浦 崎) た らす も の で あ る と指 摘 され て い る⑧。 「図3」 は,中 央 青 山監 査 法 人 ・村 上 勝 氏 に よ る知 的 財 産 に 関 連 す る用 語 の 整 理 で あ る。 村 上 氏 は,無 形 資 産 を 有 形 資 産 と金 融 資 産 以 外 の もの で 将 来 の 経 済 的 便 益 を もた らす もの の 総 体 を 示 す 概 念 と して用 い,無 形 資 産 の うち 人 間 の 知 的活 動 の成 果 に よ る もの を 知 的 資 産 と 呼 び,知 的 資 産 の う ちで 法 律 に よ って 保 護 され る もの を 知 的財 産 と定 義 して い る(9)。 「図4」 は,朝 日監 査 法 人 が 知 的 財 産 管 理 の観 点 か ら知 的財 産 を整 理 した もの で あ る。 そ こで は,当 該 項 目が オ ンバ ラ ンス され るか 否 か,法 的 に保 護 さ れ て い るか 否 か,企 業 価 値. 分離可能 高い成文化 レベル 評価可能. 情 報 ・デ ータ. 経済的特性 知識. ①非競合性 ②収益逓増 ③ネッ トワーク効果. 知 識 ・戦略. 分離困難 低 い成文化 レベル 評価困難 図2企. 業 知 識 の体 系. (出 所 古 賀 智 敏 「無 形 財 会 計 の 基 本 的 枠 組 み 」『会 計 学 研 究』 第14号(2002年3月),4頁,図2。 イ ア ウ ト,用 語 の 表 現 を一・ 部 修 正 して 引用 して い る。). (8)古 賀 智 敏 「無 形 財 会 計 の 基 本 的枠 組 み 」 『会 計 学 研 究 」 第14号(2002年3月),1頁 。 (9)村 上 勝 「企 業 の 価 値 向上 の た め の 知 的 財 産 の 活 用 一 『ビ ジネ ス ・イ ン サ イ ト』 第43号(2003 年 秋 号),19頁 。 -115(477)一. レ.
(6) 第51巻 を 向上 させ る創 造 の 源 泉(知. 第3号. 的資 本)と な る か 否 か とい った 観 点 か ら分 類 され た も の で あ. る⑩。 そ の 図 が示 す よ う に,知 的 資 本 で あ る が知 的 財 産 や 無 形 資 産 に 該 当 しな い もの(そ の 他 の項 目),無 形 資 産 で あ る が知 的 財 産 や 知 的 資 奉 に該 当 しな い もの(そ の他 無 形 資 産 の項 目)が あ る こ とが わ か る。 ま た,周 知 の よ うに,我 が 国 の知 的 財 産 基 本 法 で は,知 的財 産 を 「発 明,考 案,植 物 の 新 品 種,意. 匠,著 作 権 そ の 他 の 人 間 の 創 造 的 活 動 に よ り生 み 出 さ れ る もの(発 見 又 は解 明. され た 自然 の法 則 又 は 現 象 で あ って,産 業 上 の利 用 可 能 性 が あ る もの を 含 む 。),商 標,商 号 その 他 事 業 活 動 に用 い られ る商 品又 は役 務 を表 示 す る も の及 び 営 業 秘 密 そ の 他 の 事 業 活 動 に有 用 な 技 術 上 又 は 営 業 上 の 情 報 を い う」(第2条)と. 定 義 して い る。 知 的 財 産 権 と は,. これ らの知 的 財 産 の 利 用 に 関 す る権 利 の総 称 で あ る。 こ こ で,便 宜 的 に,法 的 に保 護 され て い る知 的 財 産 権(産 業 財 産 権,著 作 権,営 標 識 等)を. 中心 にお い て,こ れ に ブ ラ ン ド,ノ ウ ハ ウ,提 携 関 係,顧. 客 資 産,デ. 業上 の. ー タベ ー. ス等 の 人 間 の 知 的 活 動 の 成 果 に よ る もの を 含 め,知 的 財 産 権 を 活 用 し収 益 活 動 に貢 献 で き る よ う に具 体 化 した もの を 知 的 財 産 と定 義 す る。 無 形 資 産 と して の 知 的 財 産 の 経 済 的 価 値 を評 価 した もの を 知 的 資 本 とす る。 ま た,無 形 財 を 有 形 資 産 と金 融 資 産 以 外 の もの で 将 来 の経 済 的便 益 を 内包 す る も の の 総 体(資 産 の 定 義 を 満 た す が 認 識 規 準 を 満 た さな い もの を 含 む)を 表 す 用 語 と して 用 い,無 形 財 を 貸 借 対 照 表 に資 産 と して 表 示 す る場 合 の 総 称 と し て無形 資 産 とい う用語 を あ て る こ とにす る。 以 上 の 関係 を ま とめ た もの が,「 図5」 で あ る。. ノ\ 有形資産 と金融資産以外 のもので将来 の経済的便益を内包. 無形資産. する ものの総体 ! ノ\. 人間の知的活動の成果 によ るもの. 知的資産. プ ラ ン ド,ノ ウハ ウ,組 織 文化 等 / !\. 法的保護の あるもの. 知的財産. \. 産業財 産権(特 許権,実 用新案権,意 匠権,商 標権) 著作権(著 作者人格権,著 作権,著 作隣接権,出 版権等 営業上の標識(商 号,地 理 的表示等) 、. 図3知. ⑩. 営 業 秘 密,半 導 体 集 積 回 路,植 物 新 品種 等!. 的財 産 に関連 する用語 の関係. 朝 日監 査 法 人 『図 解 知 的 財 産 マ ネ ジ メ ン ト』 東 洋 経 済 新 報 社,2003年10月,18頁 -116(478)一. 。.
(7) 知的資 本の測定 と報告(浦 崎). 知的資本. 知的財産. 無形資産. 図4知. 的財産管理 の観点 か らの分類. (出 所 朝 日監 査 法 人 「図 解 知 的 財 産 マ ネ ジ メ ン ト』 東 洋 経 済 新 報 社(2003年10月)の19頁 イ ア ウ ト,表 示 項 目 を一 部 修 正 して 引用 した もの で あ る。). i. 凸. 知的資本. の図の レ. 無形資産の経済的価値. (組織 資本 と人的 資本) r し. 無形財. 知 的財産. (経済 的 便益 の総 体). 無形資産 (無 形財 の うち で認 識 規 準 1を. 満 た し た もの)1. 知的財産権 ▼. 企業価値 の源泉 図5知. 的財産 をめ ぐる用語の体系 一117(479)一. ▼.
(8) 第51巻. 皿. 第3号. 取得原価主義会計 における認識 の基礎. 伝 統 的 な 期 間 損 益 計 算 に お い て は,貸 借 対 照 表 の 借 方 項 目は,収 支 的 評 価 の 原 則 に基 づ い て,支 出 ・未 費 用(商 品,建 物 等),収. 益 ・未 収 入(売 掛 金,未 収 収 益 等),支. 出 ・未 収. 入(貸 付 金 等),貨 幣 と い う四 つ の もの か らな る もの と して 理 論 的 に説 明 さ れ る。 これ らの 項 目に 共 通 す る資 産 の 本 質 は,将 来 の期 間 に 利 用 し う る価 値 に あ るq1)。 資産 の利用 価値 は 経 営 者 の主 観 価 値 で あ り,取 得 原 価 を そ れ と等 価 の もの と して 記 帳 す る の は,次 の よ うな 仮 定 に基 づ く もの で あ る⑫。 ①. 全 体 価 値 か ら個 別 価 値 へ の 移 行 性 の仮 定. ②. 一致 の仮定. ③. パ ラ レル 経 過 の仮 定. 以 下,そ れ らの仮 定 に つ い て 説 明 して お き た い。 企 業 の 資 産 は,企 業 全 体 の 組 織 の 中 に 組 み込 ま れ 資 本 と して 機 能 す る も の で あ る か ら,本 来,資 産 の 本 質 は資 産 集 合 と して の 企 業 全 体 の組 織 価 値(す な わ ち 企 業 価 値)に よ って 決 ま る もの で あ る と考 え る こ とが で き る。 こ の 企 業 価 値 は 企 業 全 体 が 将 来 の 期 間 に お い て キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー を 稼 得 し う る潜 在 力 に よ って 評 価 され,こ の企 業 価 値 を個 々の 資 産 に割 り当 て た 大 き さ(こ れ を 部 分 価 値 とい う) が 個 別 資 産 の 本 質 を 規 定 す る もの と み られ る。 企 業 価 値 は全 体 価 値 で あ り,個 別 資 産 の 時 価 は部 分 価 値 で あ る。 この よ うに,企 業 全 体 の 組 織 価 値 か ら個 別 資 産 の本 質 を規 定 す る方 法 は 企 業 価 値 の評 価 が 実 務 的 に 困 難 で あ る こ とか ら,個 々 の 費 用 性 資 産 か らの将 来 純 収 入 の現 在 価 値 と い う観 点 へ 移 行 す る。 これ を 「 全 体 価 値 か ら個 別 価 値 へ の移 行 性 の仮 定 」 と 呼 ぶ 。 これ が ① の 仮 定 で あ る。 ② の 「一 致 の 仮 定 」 は,先 に 述 べ た よ う に,個 別 価 値(個 市 場 価 格(客 観 価 値)に. 々 の資 産 の主 観 価 値)は 常 に. 等 しい と い う考 え 方 で あ る。 資 産 の主 観 価 値 は心 理 的 な もの で あ. り,客 観 価 値 は外 部 証 拠 に 基 礎 づ け られ た 客 観 的 な もの で あ るか ら,貨 幣 的 計 量 可 能 性 や 信 頼 性 を 重 視 す る会 計 で は 主 観 的 尺 度 に代 え て 客 観 的 尺 度 を採 用 し,「主 観 価 値=客 観 価 値 」 と い う仮 定 を お い て い る の で あ る。 これ に よ り,「 取 得 原 価(客. 観 価 値)=用. 力(主 観 価 値)」 の 関 係 が成 り立 つ こ とが 正 当化 さ れ る。. GD武 ⑫. 田隆二 武 田隆工. 『前 掲 所 』,310,313頁 『会 計 学 一 般 教 程. 第5版. 。 』 中 央 経 済 社,2002年4月,142-144頁 -118(480)一. 。. 役潜 在.
(9) 知 的資本の測定 と報 告(浦 崎) さ ら に,③ の 「パ ラ レル 経 過 の 仮 定 二 は,取 引 日 に お い て 成 立 した 「取 得 原 価=用 役 潜 在 力 」 と い う関 係 は,時 が 経 過 して も崩 れ る こ とな く持 続 的 に 維 持 され る とい う もの で あ る。 この 仮 定 に よ り,市 場 価 格 が 変 化 して も これ を 無 視 し取 得 原 価 を 維 持 す べ き で あ る と い う取 得 原 価 主 義 の 考 え 方 が合 理 化 さ れ る。 以 上 を要 約 す るな らば,資 産 の 本 質 規 定 の前 提 と して,用 役 潜 在 力 は購 入 時 価 と等 しい と い う一 致 の 仮 定 を お くこ と に よ り,用 役 潜 在 力 の貨 幣 的 表現 と して 取 得 原 価 を 用 い る こ とが 可 能 とな る。 しか も,こ の 一 致 の 仮 定 が,取 引 日後 に お い て も絶 え ず 継 続 す る もの と み な す パ ラ レル経 過 の仮 定 が加 わ る と き,取 得 原 価 主 義 が 成 立 す る もの と み な さ れ る。 取 得 原 価 主 義 は,「 取 得 原 価=用 役 潜 在 力 」 と い う仮 定 が 持 続 的 に維 持 さ れ る とす る 「パ ラ レル 経 過 の 仮 定 」 の上 に成 り立 って い る が,有 価 証 券 な ど一 部 の 金 融 商 品 に つ い て こ の 関 係 が 成 立 しな くな り,ま た,国 際 的 調 和 と い う観 点 か ら も金 融 商 品 につ い て 新 た な 認 識 枠 組 み を も っ た基 準 の設 定 が 行 わ れ た の で あ る。 無 形 財 の 会 計 的 認 識 は,先 に指 摘 した 取 得 原 価 主 義 会 計 に お け る認 識 の仮 定 ① 「全 体 価 値 か ら個 別 価 値 へ の 移 行 性 の 仮 定 」 を 究 極 的 に は 取 り払 お う とす る も の で あ る。 デ リバ テ ィブ や 有 価 証 券 を 中 心 と した金 融 商 品 に しろ,あ. る い は無 形 財 に しろ,伝 統 的 な 期 間 損. 益 計 算 の 計 算 原 則 で は対 応 で き な い事 象 に つ い て は,新 た な 認 識 枠 組 み が 必 要 に な って く る。 と りわ け,OECDに. よ る知 的 資 本 の 定 義 を み る と,知 的 資 本 と は企 業 が保 有 す る無 形. 資 産 の 経 済 的 価 値 を 意 味 す る こ ろか ら,決 算 時 点 に お け る無 形 資 産 の評 価 問題 が 知 的 財 産 会 計 の 中心 課 題 で あ る こ と が理 解 で き る。 そ こ で,取 得 原 価 主 義 会 計 の 理 論 的 限 界 を考 慮 す る と,無 形 財 に対 す る認 識 の ア プ ロ ー チ は,資産 負 債 を 基 礎 とす る 利 益 計 算 の ア プ ロ ー チ で あ る と考 え られ る。 す な わ ち,資 産 や 負 債 を 概 念 的 に予 め 定 義 し,こ の 定 義 を 満 た す 事 象 を 認 識 の 対 象 と して 認 識 規 準 を適 用 し,認 識 規 準 を 満 た す もの が 資 産 と して 貸 借 対 照 表 に 計 上 さ れ る こ と に な る。 こ の よ う な考 え 方 を 一 般 に資 産 負 債 ア プ ロ ー チ と呼 ん で い るが,米. 国財 務 会 計 基 準 審 議. 会 や 国 際 会 計 基 準 審 議 会 に よ る資 産 の定 義 に共 通 す る こ とは,将 来 の 経 済 的 便 益 に資 産 の 本 質 を 求 め て い る こ と で あ る。 将 来 の経 済 的便 益 と は,用 役 潜 在 力 と 同義 で あ り,資 産 を 利 用 す る企 業 に便 益 ま た は 用 役 を 提 供 す る希 少 な 能 力 を 意 味 す る。 将 来 の 経 済 的 便 益 ま た は用 役 潜 在 力 は,営 利 企 業 の場 合,最 終 的 に は,資 産 そ れ 自体 か も し くは 他 の資 産 と組 み 合 わ せ る こ と に よ って,当 該 企 業 へ の将 来 の純 キ ャ ッ シ ュ ・イ ン フ ロ ー に 直 接 か ま た は 間 接 に貢 献 す る能 力 と して理 解 され る もの で あ るB。 C3)FASB,∫E4Clvo.6E'襯8η. ∫5(ザ.F'ηαπdα'∫fo'ぞ η18π'∫.1985,par.26,28. -119(481)一.
(10) 第51巻. 第3号. か か る資 産 の 認 識 に 当 た っ て は,コ ス トー ベ ネ フ ィ ッ トの 制 約 条 件 お よ び重 要 性 の 閾 域 を 条 件 と して,次 の 四 つ の 規 準 を 満 た す必 要 が あ る 跡。 ①. 定. 義 一 認 識 対 象 と な る項 目は,財 務 諸 表 の要 素 の 定 義 を満 た す こ と。. ②. 測 定 可 能 性 一 認 識 対 象 と な る項 目 は,充 分 な 信 頼 性 を も って 測 定 で き る 目的 適 合 的 な属 性 が あ る こ と。. ③. 目 的 適 合 性 一 認 識 対 象 とな る項 目 に 関 す る情 報 は,情 報 利 用 者 の意 思 決 定 に差 異 を 引 き起 こす 能 力 が あ る こ と。. ④. 信. 頼. 性 一 認 識 対 象 とな る項 目 に関 す る情 報 は,表 現 の忠 実 性,検 証 可 能 性,中 立 性 が あ る こ と。. レブ教 授 とザ ロ ウ ィ ン教 授 に よ れ ば,研 究 開発 活 動 な ど無 形 財 へ の 投 資 に つ い て 資 産 計 上 す る か ど うか の 認 識 判 断 に お い て 最 も重 要 な論 点 の1つ は,将 来 の 経 済 的便 益 の不 確 実 性 で あ り⑮,言 い換 え れ ば そ の 発 生 の 可 能 性 で あ る。 す な わ ち,無 形 財 は 資 産 の 定 義 を 満 た して も,情 報 の信 頼 性 に つ い て 判 断 が 分 か れ る と い う こ とで あ る。 結 論 と して,例 え ば, あ る プ ロ ジ ェ ク トが 技 術 面 で の 重 要 な 実 行 可 能 性 テ ス ト(医 薬 品 の 臨 床 試 験,ソ. フ トウエ. ア の ワ ー キ ング モ デ ル な ど)に 合 格 した 時 点 が 認 識 の 時 点 とな り う る もの で あ る と指 摘 し て い る⑱。 経 営 戦 略 と して の 無 形 財 へ の 投 資 につ い て 資 産 計 上 す る こ と は,か か る活 動 の 成 否 を 知 る うえ で重 要 で あ り,企 業 内部 で の事 実 関 係 を 明 らか にす る もの で あ る。 ま た, コ ス トとベ ネ フ ィ ッ トの期 間 的対 応 が改 善 さ れ,全 部 費 用 化 され る場 合 の 利 益 と比 較 して 企 業 の パ フ ォー マ ン ス に 関 す る よ り意 味 の あ る情 報 が 提 供 され る もの で あ る と述 べ られ て い る⑰。. IVOECDに. OECDは,オ 6月9日. よる知 的資 本 に関 す る シンポ ジウム の概 要. ラ ン ダ経 済 省,オ ラ ン ダ教 育 文 化 科 学 省,北 欧 産 業 基 金 と共 同 で,1999年. か ら11日 ま で オ ラ ン ダの ア ム ス テ ル ダ ム に お い て 「知 的 資 本 の 測 定 と報 告 」 と題. す る国 際 シ ンポ ジ ウ ム を 開 催 した 。 この シ ン ポ ジ ウ ム が 開 催 さ れ た 背 景 と して,知 的 資 本 は,技 術 革 新,生 産 性 の 増 加,企 業 間 競 争,経 済 的 パ フ ォー マ ンス に と って 本 質 を な す も. Q4)FASB,3、E4cIVo.5.Rθco8η"∫oπoη4〃. θ05〃rε 〃3θη∫'ηF耽. 1984,par.63. q5)Lev,B.,andP.Zarowin"BoundariesofFinancialReporting",in:J.HandandB.Lev ed.,Z厩oπ8嗣. εA∬. θ∫5,0xfordUniversityPress,2003,p.504.. q6)Ibid.,p.505. q7)Ibid.,p.505.. -120(482)一. αη6'α1∫'α'ε 班6班(ザ. 」Bμ∫加6∬. 、E漉6η 短. ∫ε∫,.
(11) 知 的資本の測定 と報告(浦 崎) の で あ り,そ の 重 要 性 は い っそ う高 ま っ て い る に もか か わ らず,例 え ば,研 究 開 発,技 術, 知 的 財 産 権,人 的 資 源,組 織 構 造,職 場 構 成,マ ー ケ テ ィ ング,顧 客 お よ び サ プ ラ イ ヤ ー の ネ ッ トワ ー ク,ソ フ トウ エ ア な どの 知 的 資 本 の構 成 要 素 は ほ とん ど識 別 さ れ ず ま た 測 定 も さ れ て こな か った こ とに あ る。 また,非 財 務 情 報 が 利 用 可 能 で あ る 場 合 で も,企 業 間 お よ び 国 家 間 で,検 証 が 困 難 で あ り,そ して 比 較 可 能 性 が な か った 。 知 的 資 本 に関 す る透 明 性 の あ る,信 頼 で き る,正 確 な情 報 が な い た め,知 的資 本 の有 効 な管 理,異 な る種 類 の知 的 資 本 の 間 へ の資 源 の 配 分,知. 的 資 本 とそ の他 の 種 類 の 資 産 の 間 で の 資 源 配 分 が効 果 的 に. 行 わ れ て い な い とい う事 実 認 識 が あ る の で あ る⑱。 この よ うな 状 況 を 踏 ま え,こ の 国 際 シ ンポ ジ ウ ム の 目的 は,意 思 決 定 の た め に よ り よ い 情 報 を 提 供 す る こ とが で き る よ う に知 的 資 本 に関 す る非 財 務 情 報 を 改 善 す る こ と の実 行 可 能 性 と そ の 価 値 を評 価 す る こ とで あ った 。 この シ ン ポ ジ ウ ム で は 企 業 は いか に 知 的 資 本 に 投 資 す べ き か に つ い て 議 論 し,特 に次 の よ うな 点 に つ い て 明 らか に し よ う とす る もの で あ った ⑲。 ①. 企 業 は知 的 資 産 に い か に投 資 す る べ きか 。 そ の結 果 と して の知 的 資 本 は 現 在 ど の よ うに 識 別 され,測 定 さ れ,報 告 され,開 示 され て い るか. ②. 知 的 資 本 の 識 別,測 定,報 告 に か か るベ ネ フ ィ ッ トと コ ス ト. ③. 企 業 の 内 部 管 理,投. 資 お よ び 与 信 の 意 思 決 定,統 計 デ ー タ収 集. 政府 の政策 へ のよ. り よ い情 報 の影 響 ④. 企 業 経 営 者 お よ び政 府 の政 策 立 案 者 に と って 知 的 資 本 に 関 す る 目的 適 合 的 な 情 報 を い か に して 改 善 す べ きか. ⑤. 企 業 レベ ル で 開 発 され た指 標 を マ ク ロ経 済 レベ ル に どの 程 度 統 合 す べ き か. この よ うな 課 題 の も とで,こ の シ ンポ ジ ウム は,テ ク ニ カ ル ・ミー テ ィ ン グお よ び 政 策 戦 略 フ ォー ラ ム の 二 つ で 構 成 され,テ で のOECD加. クニ カ ル ・ ミー テ ィ ン グ で は シ ンポ ジ ウ ム 開 催 時 点. 盟 各 国 の 状 況 が 報 告 さ れ て い る。 そ れ を ま と め た もの が 「表2」. で あ る。. 以 下 に お い て は,上 記 イ ギ リスの 報 告 を担 当 した リー ドビー タ ー の論 文 に依 拠 しな が ら 知 的 資 本 の 測 定 を め ぐ る問 題 を検 討 して い きた い。. q8)Mortensen,J.,op.cit.,p.3. α9)Ibid,p.3.. 一121(483)一.
(12) 第51巻. V知. 第3号. 的資 本 の測 定 をめ ぐる代 替 的 ア プ ロー チ. 経 済 活 動 の う ちで か な りの 成 長 を 見 せ て い る の が 無 形 に よ る部 分 で あ る。 英 国 や合 衆 国 等 の 先 進 国 の生 産 や 雇 用 に お け る急 成 長 部 分 は サ ー ビス セ ク タ ー に よ って 説 明 さ れ る。 英 国 に お い て は,現 在 の傾 向 が 続 くな ら ば,2005年 る割 合 が15%に. に は工 業 お よ び農 業 は 生 産 と雇 用 に 占 め. しか な ら い な い と予 測 さ れ て い る。 情 報 技 術 は,工 業 部 門 だ け で は な く. サ ー ビス セ ク タ ー に お い て もか な り普 及 し,ブ ラ ン ド,知 的 財 産,ノ. ウハ ウ,著 作 権 な ど. の無 形 資 産 は企 業 経 営 に お い て 重 要 性 を増 して い る。 こ の よ う な 中 で知 識 の創 造,応 編 成 お よ び 開 発 は,企 業,地 域,経. 用,. 済 が 競 争 優 位 を 生 み 出 しそ れ を 維 持 す る た め の 鍵 と. な って い る。 と りわ け,科 学 技 術 の 発 展 の他 に,グ ロ ー バ ル で 自由 化 した 市 場 と い う要 素 が 特 徴 で あ るニ ュー エ コ ノ ミー の下 で は,企 業 の 競 争 優 位 は上 記 の よ うな 無 形 資 産 を 企 業 戦 略 に 中 に 組 み込 み そ れ を どれ だ け有 効 に活 動 で き るか に か か って い る⑳。 この よ うな 状 況 を 踏 ま え,リ ー ドビー タ ー は,無 形 資 産 が 適 正 に 評 価 され て い な い た め, 一122(484)一.
(13) 知 的資本の測定 と報 告(浦 崎) 市 場 で の 企 業 の評 価 と乖 離 が 生 じ,イ ンサ イ ダ ー 取 引,資 本 の 不 適 正 な 配 分,資 本 コ ス ト や 株 価 の ボ ラ テ ィ リテ ィの 増 大 が 生 じて い る と指 摘 して い る⑳。 した が って,知 的 資 本 の 適 正 な 評 価 は,企 業 が そ の 内 在 的価 値 を 市 場 で 顕 在 化 させ,中. ・長 期 の 投 資 判 断 に あ って. 本 来 の 評 価 が 得 られ,企 業 価 値 が適 正 化 され 持 続 的 な企 業 成 長 が 可 能 と な る よ うな る た め に も必 要 で あ る こ とが 理 解 で き る。 (1)無. 形財 のた めの新 たな尺度. す で に述 べ た よ う に,知 的 資 本,人. 的 資 本,ブ. ラ ン ド価 値 と い った 無 形 資 産 の戦 略 的 利. 用 は,企 業 経 営 に お いて き わ め て 重 要 な 課 題 とな っ て い る。 伝 統 的 な 財 務 会 計 の制 約 条 件 の 下 で は こ れ らの 重 要 な 無 形 資 産 を 正 確 に測 定 す る こ と は非 常 に 困難 で あ る。 ま た,研 究 開 発 や ブ ラ ン ドを 高 い 信 頼 度 を も って 資 本 化 す る こ とは 困 難 で あ り,あ るい は そ れ らに 関 す る非 財 務 的尺 度 に つ い て も十 分 な 一 般 的 認 知 が な か っ た り,そ の 検 証 が 行 わ れ て い な い 場 合 が あ る。 リー ド ビー タ ー に よ れ ば,す べ て の 無 形 財 を測 定 す る こ とは こ こ で の 課 題 で は な く,将 来 の キ ャ ッシ ュ フ ロ ー にか な りの影 響 を及 ぼ す 無 形 財 の 価 値 を 評 価 す る こ とが 目的 で あ る と され て い る伽。 リー ドビー タ ー は,取 替 原 価 に よ る評 価,利 益 予 測,市 場 評 価 な ど の 資 産 評 価 の 伝 統 的 ア プ ロー チ は無 形 財 に と って 十 分 と は い え な い と して,無 形 財(intangibles)の. 評価 のた. め の 新 た な ア プ ロ ー チ と して 内部 目的 と外 部 目的 の二 つ の観 点 か ら幾 つ か の 方 法 を 提 示 し て い る。 前 者 の 内 部 目 的 ア プ ロ ー チ は,企 業 の パ フ ォ ー マ ン ス の 測 定 を 目的 と した もの で,そ の 結 果 を 主 と して 企 業 内部 の 管 理 目 的 で 利 用 しよ う とす る もの で あ る。 これ に対 し ・ 沸 '. て,外 部 目的 ア プ ロー チ は 投 資 者 に対 して 無 形 資 産 に関 す る よ り正 確 な情 報 を提 供 す る こ と を 目的 とす る もの で,ブ. ラ ン ドな どの 無 形 資産 を よ り直 接 に測 定 しよ う と試 み る もの で. あ る。 そ れ ら双 方 の ア プ ロー チ に お け る評 価 方 法 と評 価 対 象 を ま とめ た もの が 「表3」 で あ る。 「表3」. に 示 して い る よ う に,内 部 目 的 ア プ ロ ー チ は,企 業 内 部 の 経 営 管 理 目 的 で 実 施. され る もの で,七 つ の 評 価 方 法 が あ る。 そ の な か で,ヨ. ー ロ ッパ 品 質 管 理 財 団 モ デ ル は,. 企 業 パ フ ォー マ ンス につ い て 重 み付 け さ れ た様 々 な非 財 務 的 尺 度 を 適 用 す る もの で,例 え ば,リ ー ダ ー シ ップ,人 員 管 理,顧 客 満 足,従 業 員 の 労 働 意 欲 な どを 数 値 化 し,企 業 の戦. ⑳Leadbeater,C.,NewMeasuresforTheNewEconomy,countrycovered:UnitedKingdom,InternationalSymposium,MeasuringandReportingIntellectualCapital:Experience,Issues,andProspects,TechnicalMeetingPaper,p.3.本 らの もの で あ る。 (2DIbid。,pp。17-20. (22》Ibid.,p.21.. -123(485)一. 文 に お け る 引用 は 当 該 論 文 か.
(14) 第51巻 表3無. 第3号. 形 財 評 価 の た め の 方 法 と対 象. 評. 内 部 目的 ア プ ロー チ. 価 方. ①. キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー尺 度. ② ③. 経済 的付加価値 欧州 品質 管理財団 モデル. ④. バ ラ ンス トス コ ア カ ー ド. ⑤ ⑥. ス コ ッ トラ ン ド勅 許 会 計 士協 会 モ デ ル 倫 理 ・社 会 監 査. ⑦. 環境監査 評. ① ② 外 部 目的 ア プ ロー チ. 法. 価. 対. 象. 人的資本 顧客. ③. ブラ ン ド. ④ ⑤. 研究 開発 知的財産 ・特 許権. 略 や そ の プ ロセ ス お よ び そ の 結 果 につ い て の よ り完 全 な 情 報 を 提 供 す る こ と を 目的 とす る もの で あ る㈱。 ス コ ッ トラ ン ド勅 許 会 計 士 協 会 モ デ ル は,供 給,需 要,社 会 責 任 と い う三 つ の 要 素 か ら構 成 され,供 給 の 領 域 で は,財 務 健 全 性,人. 的資 源(教 育 訓 練,リ. クル ー トな. ど),工 場 ・機 械 設 備,天 然 資 源,環 境 へ の 影 響 度 な ど の尺 度 が あ り,需 要 の 領 域 で は, 顧 客 満 足,顧 客 プ ロ フ ィー ル,市 場 占有 率 な どの 尺 度 が,そ して社 会 責 任 の領 域 で は,コ ー ポ レー ト ・ガ バ ナ ン ス の構 造,法 律 規 制 へ の遵 守 度 な ど の尺 度 が あ る⑳。 ま た,倫 理 ・社 会 監 査 は,企 業 と投 資 者 との 関 係 の み な らず,従 業 員,顧 客,仕 入 先, 地 域 住 民,圧 力 団体 な どの ス テ ー ク ホ ル ダ ー との 関 係 を 監 査 しよ う とす る も の で あ り,成 功 企 業 ほ ど これ らの ス テ ー ク ホ ル ダ ー との 関係 が 良 好 で あ る と い う こ とか ら行 わ れ て い る もの で あ る。 環 境 監 査 は石 油 ・化 学 な どの 環 境 へ 影 響 を 及 ぼ す 産 業 う ち で と くに 大 企 業 が 熱 心 に 自然 環 境 へ の 影 響 を 分 析 し環 境 の 改 善 や そ の維 持 な どへ の取 組 を示 す もの で あ り, 企 業 の 社 会 的 な立 場 や 名 声 を 高 め る こ とが 環 境 監 査 実 施 の動 機 の一 つ に な っ て い る㈱。 (2)外 部 目的 ア プ ロー チ の 評 価 対 象 無 形 資 産 に関 す る外 部 目的 ア プ ロ ー チ で は,① 人 的 資 本,② 顧 客,③. ブ ラ ン ド,④ 研 究. 開発,⑤ 知 的 財 産 ・特 許 権 とい う五 つ の 評 価 対 象 が示 さ れ て い る。 指 摘 す る ま で もな く企 業 価 値 の重 要 な源 泉 とな って い るの が 人 的 資 本 で あ る。 人 的 資 本 を 表 現 す る指 標 と して 教 育 お よ び能 力 の水 準,訓 練 に要 した支 出,従 業 員 売 上 高,在 職 期 間,言 語 お よ び 民 族 の 多. (2⑳Ibid.,p.23. ⑳Ibid.,p.24. (2E)Ibid.,p.24.. 一124(486)一.
(15) 知 的資本 の測定 と報 告(浦 崎) 様 性 な どが あ る。 従 業 員 に 関 す る これ らの 尺 度 の 数 は 非 常 に 多 くな る 傾 向 に あ り,ス ウ ェー デ ンの金 融 サ ー ビス の 会 社 で あ るSkandiaNavigatorが. 開 発 した もの は,す. くな. く と も26の 尺 度 を も って い る。 た だ し,外 部 目的 で これ らの情 報 を提 供 して も,そ れ を会 社 の 市 場 評 価 と結 びつ け る の は 困 難 で あ る⑳。 ま た,顧 客 に つ いて 言 及 す るな らば,よ. り多 くの顧 客 を 維 持 す る こ と が で き れ ば,マ ー. ケ テ ィ ング にか か る コス トは そ れ だ け 少 な くな り,結 果 と して 利 益 が 高 くな る とい う関係 が 理 解 で き る。 顧 客 との 関 係 を 資 産 と して 扱 お う とす る の は,顧 客 は 生 き て い る間 に製 品 を購 入 し続 け企 業 は そ の 間 に継 続 的 な収 入 が見 込 め るか らで あ る。 こ の よ う な 関 係 を築 く た め に企 業 が 投 入 して い る資 源 は,当 期 の 費 用 と い う よ り もむ しろ 資 産 へ の 投 資 と して 扱 う こ とが で き る で あ ろ う。 企 業 パ フ ォー マ ンス の 新 しい測 定 シ ス テ ム で は,顧 客 の 獲 得 と 維 持,ラ. イ フサ イ クル,市 場 占有 率,売 上 高,年 齢 プ ロ フ ィー ル の 尺 度 が 必 ず と言 って い. い ほ ど含 ま れ て い る。 問 題 は,こ れ らの 非 財 務 的 尺 度 が い か に して 財 務 的 尺 度 に 変 換 さ れ,企 業 会 計 や 企 業 の市 場 価 値 に と っ て 目 的 適 合 的 な も の と な り得 る か を 示 す こ と で あ る。 こ の よ う な 分 析 が 可 能 と な る の は,電 力 会 社,ガ る伽。 次 に,ブ. ラ ン ド,研 究 開 発,知. ス 会 社,電. 話 会社 な どの企 業 で あ. 的 財 産 ・特 許 権 の 意 義 と認 識 の 可 能 性 に つ い て 見 て. い き た い。 ブラン ド 強 い ブ ラ ン ドは 経 営 者 や 投 資 者 か ら資 産 と見 な され る が,ほ. とん どの 場 合 財 務 諸 表 に お. い て 資 産 と して 評 価 され る こ と は な い 。 自己 創 設 の ブ ラ ン ドは,商 標 を 除 き,資 産 と して 認 識 さ れ な い が,企 業 買 収 を 通 じて 取 得 した ブ ラ ン ドは 資 産 と して 認 識 さ れ る。 い う ま で もな く,ブ ラ ン ドが企 業 価 値 の 源 泉 で あ る と い うの は,顧 客 は 強 い ブ ラ ン ドに対 して 高 い 信 頼 度 を 抱 き,高 い価 格 設 定 で あ って も当 該 ブ ラ ン ドを 購 入 す る とい う ブ ラ ン ドに 対 す る 忠 誠 心 を 持 っ て お り,購 入 頻 度 も高 くな る傾 向 に あ る か らで あ る。 ブ ラ ン ドの 評 価 は非 常 に難 し くそ れ を 貸 借 対 照 表 に 計 上 す る こ と につ い て は か な りの論 争 が続 い て い る。 マ ー ケ テ ィ ング 会 社 のInterbrand社. は,ブ ラ ン ドの 強 さ を,当 該 商 品 の 市 場,顧 客 の 安 定 性,. 顧 客 の忠 誠 度,市 場 に お け る ブ ラ ン ドリー ダ ー シ ップ,ブ ラ ン ドに対 す る長 期 的 投 資,商 品 販 売 の地 理 的 範 囲,ブ. ラ ン ドの 保 護 の 程 度 と い う七 つ の 規 準 に照 ら して 数 値 化 して い. る。 実 証 研 究 に よれ ば,ブ ラ ン ド価 値 と市 場 評 価 と の 間 に は有 意 の 相 関 関 係 が み られ,投 資 者 は非 財 務 情 報 を利 用 して 資 産 と して の ブ ラ ン ドの 評 価 を 行 って い る こ と が知 られ て い. (2⑤Ibid.,p.25. (27)Ibid.,p.26.. 一125(487)一.
(16) 第51巻. 第3号. る。 さ ら に,ブ ラ ン ドに関 して 適 切 な 規 制 の 下 で 比 較 可 能 な デ ー タ が 作 成 され そ れ が 貸 借 対 照 表 に記 載 さ れ る な らば,そ の 有 用 性 は さ ら に改 善 され る こ とが 期 待 され る㈱。 研 究開発 企 業 の研 究 開 発 活 動 は,将 来 の 特 許,当 該 特 許 に基 づ く新 製 品 の 開 発 ・商 品 化 に つ な が る もの で あ り,企 業 価 値 を 評 価 す る うえ で き わ め て 重 要 な もの で あ る。 研 究 開 発 支 出 は知 識 資 本 と して の 資 産 を 創 造 す る投 資 と考 え られ るが,米 国 で は 少 な くと も研 究 開 発 に要 し た支 出 は一・ 般 に資 産 で は な く費 用 と して 処 理 され る。 研 究 開発 の コス トとそ の ベ ネ フ ィ ッ トの 関係 が 不 明 瞭 で あ り,研 究 開発 に リス ク が伴 い必 ず し も商 品 化 に 直 結 す る とは い え な い と い うの が 費 用 化 処 理 の根 拠 で あ る。 大 規 模 な 実 証 研 究 に よ る と,研 究 開 発 支 出 と そ の 後 の 生 産 性,利 益,投 資 収 益 率 の増 加 に密 接 な 関 係 に あ る こ とが わ か っ た が,企 業 レベ ル で 研 究 開 発 を正 確 に評 価 す る こ と は 依 然 と して 困 難 な状 況 に あ る。 ま た,個 別 企 業 の 研 究 開 発 投 資 を す べ て 資 本 化 した と して も,研 究 開発 に は様 々 な種 類 の もの が あ り,そ の す べ て が 将 来 の キ ャ ッシ ュ フ ロ ー に貢 献 す る もの で は な い の で,将 来 の パ フ ォー マ ンス の 指 標 と して は き わ め て 粗 悪 な 情 報 で しか な い。 基 礎 研 究 に対 す る投 資 は リス ク が 高 い か も しれ な いが 成 功 す れ ば企 業 の 長 期 的 成 長 の 核 に な る。 逆 に ソ フ トウ エ ア の研 究 開発 は リス ク は 低 いか も しれ な いが,そ. の製 品 が もた らす ベ ネ フ ィ ッ トは短 期 的 な もの で しか な い か も し. れ な い㈱。 そ れ ゆ え 企 業 内 部 の研 究 開 発 を評 価 しよ う とす る こ とは き わ め て 困難 で あ るが,取 得 し た 研 究 開発 に つ いて は公 正 価 値 に よ る評 価 が 可 能 とな る。 す な わ ち,米 国 で は ソ フ トウ エ ア 会 社 な ど の研 究 開 発 集 約 型 企 業 の買 収 が頻 繁 に行 わ れ 市 場 が 形 成 さ れ て い る状 況 に あ る の で,研 究 開 発 の 公 正 価 値 を 目的 適 合 的 で 信 頼 で き る もの と投 資 家 は判 断 して い る。 した が って,一 定 の 条 件 の下 で 行 わ れ て い る研 究 開 発 の 内部 的 評 価 の た め に は,買 収 さ れ た他 企 業 の事 案 で 同一 条 件 の 研 究 開 発 を探 し出 しそ れ に ど の よ うな 評 価 が与 え らた か が 参 考 に な る。 ま た,リ. アル オ プ シ ョ ンを利 用 して研 究 開発 を評 価 しよ う とす る方 法 も研 究 され て. い る㊤ ① 。 知的財産 お よび特許権 知 的 財 産 が企 業 価 値 の 源 泉 と な る の は,例 え ば特 許 権 につ い て い え ば発 明 の 商 業 利 用 に つ い て一 時 的 な 独 占 が 法 律 で 保 護 され て い るか らで あ る。 した が って特 許 権 と企 業 評 価 を. (2{》Ibid.,p.28. (291bid.,p.29。 ㊤①Ibid.,pp.30-32.. 一126(488)一.
(17) 知的 資本の測定 と報告(浦 崎) リ ンク させ た分 析 が数 多 く行 わ れ て きて い る。 ま た,特 許 権 が 知 的 財 産 管 理 の 中 心 を な し て い る。 例 え ば,DowChemical社. は,特 許権 の 評 価 の た め に次 の よ うな ア プ ロ ー チ を 採. 用 して い るGD。 (1>全. 社 レベ ル の特 許 権 デ ー タ ベ ー ス を 構 築 す る。. (2>利. 用 の有 無 に従 って 特 許 権 を分 類 す る。. (3)特. 許 権 を 企 業 戦 略 に 関 連 づ け,当 該 特 許 権 が 生 み 出 す と期 待 さ れ る収 益 額 に 基 づ い. て特 許 権 を 評 価 す る。 (4>技. 術 と市 場 を評 価 す るた め に 専 門 家 を 招 集 す る。. (5)企. 業 競 争 力,特 許 へ の 投 資 コ ス トと リス クを 評 価 す る。. こ の よ う な評 価 手 法 を 用 い る こ と に よ って 企 業 戦 略 と結 び つ か な い 特 許 権 を 洗 い 出 して これ らの特 許 権 の 維 持 管 理 コ ス トを 削 減 し,さ ら に特 許 権 の ラ イ セ ン ス収 入 を 増 加 させ 知 的財 産 管 理 を成 功 さ せ て い る。 この よ う に特 許 権 の 体 系 的 な 内 部 的尺 度 の他 に,特 許 権 と 証 券 市 場 価 値 との 関連 性 を解 明 し よ う とす る研 究 も進 ん で い る。 つ ま り,研 究 開 発 は イ ン プ ッ トの 尺 度 にす ぎ な い が,特 許 権 は ア ウ トプ ッ トの 尺 度 で あ り,企 業 価 値 と直 接 的 な 関 係 を 有 す る。 そ こ で,企 業 が 保 有 す る特 許 ポ ー トフ ォ リオ の強 度 は 次 の よ うな 幾 つ か の異 な る観 点 か ら評 価 さ れ る㈱。 (1>特. 許権 の数. (2)産. 業 内 の そ の他 の特 許 に 引 用 さ れ て い る頻 度. (3)科 学 研 究 に 引用 さ れ て い る頻 度 (4)ポ. ー トフ ォ リオ の年 齢. さ ら に,米 国 に お け る11社 の セ ミ コ ン ダ ク ター 企 業 の 市 場 価 値 と帳 簿 価 値 との 乖 離 が, 研 究 開 発 投 資,特 許 権 保 有 数,特 許 権 の 引 用 頻 度 に よ って どの 程 度 説 明 され る か の 実 証 研 究 に よ れ ば,特 許 権 の 引用 が 単 純 な 特 許 権 の保 有 数 よ り も企 業 の市 場 価 値 を よ りよ く説 明 す る と い う こ とが 明 らか とな り,さ らに 研 究 開 発 投 資 と結 び つ け る と そ の 説 明力 が 高 ま る こ とが わ か って い る。 た だ し この 種 の分 析 は特 許 権 の 供 与 が 一 般 に行 わ れ て い る製 薬 業 界 や 化 学 業 界 に お い て は あ る程 度 の 妥 当性 を もつ もの の,そ れ が 一 般 的 に行 わ れ て い な い ソ フ トウエ ア業 界 に お いて は 限 界 が あ る。 ま た,特 許 権 供 与 の 枠 組 み が 国毎 に異 な っ て い る こ と も限 界 の1つ で あ る㈱。. ⑱1)Ibid.,p.33. ⑱2》Ibid.,p.33. ㊤③Ibid.,pp.33-35.. 一127(489)一.
(18) 第51巻. VI無. 第3号. 形 資産 に関 す る情 報 提供 の アプ ロー チ. これ まで 述 べ て き た よ う に企 業 の 内部 目的 お よ び外 部 目的 か ら企 業 の パ フ ォー マ ン ス を 測 定 す る幾 つ か の新 しい モ デ ル が提 案 され て き て い る。 そ れ ぞ れ 特 徴 や 一 定 の 限 界 を 有 し て お り,そ れ を 踏 ま え て リー ドビー タ ー は 次 の よ うな 三 つ の統 合 的 ア プ ロ ー チ を提 示 して い る。 そ れ ら に共 通 す る こ と は,究 極 的 に は,無 形 財 を認 識 しそ れ を無 形 資 産 と して 貸 借 対 照 表 に 計 上 し情 報 を 提 供 す る とい う姿 勢 で あ る。 (1)漸 進 的 ア プ ロー チ(incrementalistapproach) 漸 進 的 ア プ ロー チ は,伝 統 的 貸 借 対 照 表 が 見 過 ご して きた 無 形 財 の価 値 を徐 々 に組 み 入 れ て い こ う とす る ア プ ロー チ で あ る。 こ の ア プ ロー チ は,無 形 財 を 評 価 す る た め に企 業 買 収 に お い て 通 常 利 用 さ れ て い る会 計 手 続 き や リア ル オ プ シ ョ ンな ど の手 法 に よ っ て得 られ る擬 似 市 場 の評 価 を利 用 す る。 こ れ に は少 な く と も次 の三 つ の ス テ ップ が あ る㈱。 (1>第 一 に,こ の ア プ ロ ー チ は,目 的 適 合 的 で,相 対 的 に収 集 す る こ とが 容 易 で,市 場 価 値 との 強 い 関 係 が 証 明 され た非 財 務 的 尺 度 に 基 づ く もの で あ る。 これ らの 尺 度 は 産 業 に よ って 異 な る もの で あ り,独 立 の監 査 が で き る よ う に無 形 財 に 関 す る確 固 と した 非 財 務 情 報 を報 告 す る た め の 産 業 に 固有 の 基 準 を 設 定 す る こ と を 目的 と して い る。 研 究 開 発 に莫 大 な 投 資 を 行 うハ イ テ ク産 業 に お い て は,特 許 権 の 引 用 度,関 連 す る研 究 開 発 の 公 正 価値 な ど は高 い 目的 適 合 性 を 有 す る。 動 き の 激 しい 顧 客 商 品 を 扱 う産 業 で は ブ ラ ン ド価値 の見 積 も りが よ り 目的 適 合 性 を もつ で あ ろ う。 (2)第 二 に,企 業 は無 形 財 を 資 産 と して評 価 す る こ と が で き る よ う な安 全 な場 所 を 財 務 諸 表 の 中 に 確 保 す る必 要 が あ る。 こ の 安 全 な 場 所 で は,貸 借 対 照 表 そ れ 自体 よ り も ず っ と柔 軟 な ア プ ロー チ を採 用 す る こ とが で き る。 貸 借 対 照 表 に無 形 財 の 価 値 を 記 載 す る こ とが 認 あ られ る ま で は,無 形 財 の 評 価 の一 時 的 な 避 難 場 所 と して そ れ が 利 用 さ れ る。 (3>第 三 に,企 業 は変 更 可 能 な 一 組 の 財 務 諸 表 を 提 供 しな け れ ば な らな い。 例 え ば,研 究 開 発 の初 期 の段 階 で 非 常 に リス ク の 高 い新 しい 技 術 の 研 究 開 発 投 資 を資 本 化 す る こ と は 賢 明 で は な い。 そ の技 術 とそ れ に 対 す る市 場 の評 価 が現 実 的 とな った あ る段 階 で 過 去 の 財 務 諸 表 を訂 正 し,研 究 開 発 投 資 に関 す る資 本 化 を行 お う とす る もの で あ る。. ③91bid.,pp.36-37,. 一128(490)一.
(19) 知的資本 の測定 と報 告(浦 崎) 漸 進 的 ア プ ロー チ は,会 社 が 徐 々 に 無 形 財 を 評 価 す る た め に伝 統 的 ア プ ロ ー チ と新 しい ア プ ロ ー チ を結 び つ け よ う とす る方 法 で あ る。 こ の ア プ ロー チ の欠 点 は,企 業 の 収 益 性 を つ り上 げ る た め に経 営 者 が 無 形 財 の 価 値 を操 作 す る お そ れ が あ る こ と で あ る。 研 究 開発 投 資 が 当期 の コ ス トで は な く,資 産 と して 処 理 され た場 合,収 益 性 が 短 期 的 に は 改 善 した よ う に見 え る。 そ の 意 味 で 会 計 の フ レー ム ワー ク の継 続 性 と信 頼 性 を 損 ね,利 用 者 が期 待 す る ほ どの 情 報 内 容 の改 善 が す ぐに は 望 め な い と い う リス クが あ る。 (2)急. 進 的 アプ ロー チ(radicalapproach)㈲. 急 進 的 ア プ ロ ー チ は,知 的 資 本 貸 借 対 照 表 と呼 ば れ る ま った く新 し い貸 借 対 照 表 を作 成 す る ア プ ロ ー チで あ り,無 形 資 産 を そ の 中心 に 据 え る もの で あ る。 財 務 情 報 は含 まれ て い るが 成 功 の1つ の尺 度 と して,あ. る い は,投 資 の た め の 資 源 と して 示 さ れ て い るだ け で あ. る。 人 的 資 本,顧 客 関 係,組 織 能 力 とい った無 形 資 産 の 創 造 と配 置 が この モ デ ル の 中核 を なす 。 こ の よ う な モ デ ル を 具 体 化 さ せ た 企 業 と して 有 名 な もの が,ス Skandia社. で あ る。 同 社 は,1996年. ウ ェー デ ンの 保 険 会 社. に伝 統 的 な 財 務 諸 表 と と もに 知 的 資 本 報 告 書 を 公 表 し. た。 こ の報 告 書 で は会 社 の 資 本 が 木 構 造(「 図6」 参 照)で 示 され て い る。 「図6」 の なか で,財 務 資 本 は 簿 価 に 近 似 した 実 現 可 能 資 産 を意 味 し,知 的 資 本 は人 的 資 本 と構 造 資 本 に 分 か れ る。 構 造 資 本 は,顧 客 資 本(企 業 と顧 客 の 関 係)と 組 織 資 本 に 分 か れ る。 組 織 資 本 は,企 業 が 保 有 す る知 識 とル ー テ ィ ンで あ り,企 業 の技 術 革 新 とそ の プ ロセ ス を 可 能 に す る もの で あ る。 技 術 革 新 資 本 は,特 許 権 お よ び 著 作 権 と い った 知 的 財 産 権 と そ の 他 の無 形 資 産 に 分 か れ る。Skandia社 発 して い る。 ま た,す. は,こ れ らの 資 本 の 測 定 を可 能 にす る広 範 な 種 類 の 尺 度 を 開. で に 指 摘 した よ う に,バ ラ ン ス ス コ ア カ ー ドに類 似 した ナ ビ ゲ ー. タ ー シ ス テ ム を採 用 して い る。 別 の ア プ ロ ー チ と して ス ウ ェー デ ンの経 営 コ ン サ ル タ ン トKarlErikSveibyが た無 形 資 産 モ ニ タ ー シ ス テ ム が あ る。Sveibyは して い る。Sveibyは. 考案 し. 無 形 資 産 を 次 の 三 つ の カ テ ゴ リー に 分 類. これ らの無 形 資 産 を操 業 度,成 長 と更 新,安 定 性 と い う三 つ の規 準 で. 分 析 を 行 って お り,ス ウ ェー デ ンの 出 版 社Celemi社. に 適 用 して い る㈱。. (1)外 部 構 造 一 企 業 と仕 入 先 お よ び 顧 客 との 関係 (2)内 部 構 造 一 プ ロ セ ス の 効 率 性,技 術 革 新 能 力. ㈲. 急 進 的 ア プ ロ ー チ に 関 す る 説 明 は,リ. ー ドビー ター の論 文 の 次 の 部 分 を ま と め た もの で あ る。. Ibid.,pp.37-39. e③Ibid.,p.38. 一129(491)一.
(20) 第51巻. 第3号. 企業 の市場価値. 財務資本. 人 的資本. 顧客 資本. 組織資本. プ ロセ ス資本. 技術 革新資本. 知的財産 図6Skandia社. そ の他 無 形 資 産. の知 的 資 本 の 構 造. (3)人 間 の能 カ ー 労 働 者 の 品 質 と動 機 付 け ま た,同 種 の モ デ ル と して ゴ ラ ン とル ー ス(GoranandJohanRoos)に れ たICIndex社. よ って 開 発 さ. の 知 的資 本 指 標 が あ り,こ れ は知 的 資 本 を人 的 資 本,組 織 資 本,顧 客 関 係. に 分 割 して い る。 さ ら に,英 国 の コ ンサ ル タ ン ト会 社IntellectualCapitalService社. は,. ビ ジネ ス ツ ー ル の 指 標 と して次 の 四 つ を使 用 して い る㈱。 (1)関 係 資 本 一 関 係 の 数,信 頼 度,顧 客 の 数,流 通 チ ャ ネ ル の 品 質 に よ って 測 定 (2)人. 的 資 本 指 標 一 従 業 員 一 人 あ た りの価 値 創 造,訓 練 教 育 の 品 質,従 業 員 の動 機 付 け. と労 働 意 欲 に よ って 測 定 (3)技 術 革 新 指 標 一 新 しい ア イ デ ア を生 み 出 しそ れ を製 品 に結 びつ け る能 力 に よ って 測 定 (4)イ. ン フ ラ 資 本 指 標 一 課 業 の 遂 行 を可 能 にす る有 形 資 産 お よ び無 形 資 産 を 測 定. 知 的 資 本 の 測 定 は,知 識 管 理 市 場 に お い て 急 成 長 を とげ て い る分 野 で あ る。 そ れ は,理. e7)Ibid.,p.38. 一130(492)一.
(21) 知 的資本 の測定 と報 告(浦 崎) 論 的 に も非 常 に魅 力 的 な 分 野 で あ り,そ の よ うな 手 法 を 用 い て 知 的 資 本 貸 借 対 照 表 を作 成 す る プ ロ セ ス は無 形 資 産 に着 目す る プ ロ セ ス で あ る た め,経 営 者 や 投 資 者 は 企 業 価 値 創 造 に お け る無 形 資 産 の 役 割 を 視 覚 的 に確 認 す る こ とが で き る。 これ らの 新 しい 測 定 シ ス テ ム は,人 的 資 本,顧 客 関 係,構 造 資 本 と い った 同種 の 尺 度 を用 い る とい う点 で 共 通 して い る。 ま た,大 企 業 の 間 で 一般 化 しつ つ あ る 倫 理 社 会 監 査 と結 び つ け る こ とに よ って,そ れ らの 無 形 資 産 の 種 々 の 尺 度 は そ の有 用 性 が 高 ま る こ とが考 え られ る。 問 題 は 企 業 外 部 の投 資 者 に と っ て これ らの デ ー タが どれ だ け の 信 頼 性 を 有 して い るか とい う こ と に あ る。 (3)ハ. イ ブ リ ッ ドア プ ロ ー チ. この ハ イ ブ リ ッ ドア プ ロ ー チ は,無 形 財 の 評 価 に は多 様 な 困難 な 問 題 が あ る が,か な ら ず 何 らか の 会 計 上 の 解 決 策 が あ る は ず だ と い う仮 定 の下 で 展 開 さ れ る ア プ ロー チ で あ る。 す な わ ち,無 形 財 につ い て の オ ー プ ンで 活 発 な厚 み の あ る市 場 を 前 提 に,あ る い は,す. く. な くと も無 形 財 と リ ン ク した 金 融 市 場 を前 提 に,無 形 財 の よ り信 頼 で き る価 値 を 測 定 し よ う とす る会 計 的 解 決 策 を 探 求 す る もの で あ る㈱。 無 形 財 の た め の 新 しい市 場 を創 設 す る こ とは,二 つ の 点 で意 義 を 有 して い る。 第 一 に, 無 形 財 の 価 値 は 変 動 が 激 し く不 確 実 で あ る の で ア カ ウ ンタ ン トが簡 単 に無 形 財 を 評 価 す る こ と は で き な い 。 そ の た め 市 場 と需 要 に シ フ トして価 値 を評 価 しよ う とす る もの で あ る。 第 二 に,会 計 や 課 税 シ ス テ ム は観 察 で き る具 体 的 な取 引 を記 録 す る とき に 最 も適 合 して い る。 無 形 財 は 分 割 が で きず 取 引 に 適 さな い た め ア カ ウ ンタ ン トに と って 取 引記 録 が 利 用 で き な い。 そ の た め,ア カ ウ ンタ ン トが無 形 財 を 評 価 す る た め に は,取 引 さ れ て い な い 資 産 を 評 価 す る た め の専 門 知 識 を 習 得 す るか,あ. る い は,市 場 を 創 設 しそ の こ で の 取 引価 格 を. 参 考 に す る しか な い 軌 ま た,こ の ア プ ロー チ の も とで は,無 形 財 の オ プ シ ョ ン取 引 を 可 能 にす る新 しい金 融 市 場 の創 設 が議 論 さ れ て い る。 つ ま り投 資 者 は,特 定 の 企 業 の み な らず そ の ブ ラ ン ドへ の投 資 を考 え て お り,例 え ばNestle社. とそ の ブ ラ ン ドで あ るKitKatへ. し,ま た,ManchesterUnited社. と そ の 所 属 選 手 で あ る(っ た)RyanGiggsやDavid. Beckhamの. の 投 資 が 考 え られ る. オ プ シ ョンへ 投 資 した い と い う意 欲 が あ る か も しれ な い 。 さ ら に,Merck社. と との 特 定 の 研 究 部 門 へ の 投 資 と い う こ とが 考 え られ る。 無 形 財 の オ プ シ ョ ン市 場 は投 資 者 に こ の よ うな柔 軟 な投 資 行 動 を 可 能 に す る もの で あ る㈹。. ¢811bid.,p.39. 《39)Ibid.,p.39. 色①Ibid.,p.39。. 一131(493)一.
(22) 第51巻. 第3号. この よ うな 市 場 が 完 成 す れ ば ア カ ウ ン タ ン トは 自 ら無 形 財 を 評 価 す る必 要 は な く,金 融 市 場 で の 取 引 価 格 を 参 考 に 評 価 額 を 決 定 す る こ とが で き る。 た だ し,問 題 は,こ の よ うな 市 場 が で き た と して も ど の よ う な 無 形 財 の 取 引 が 可 能 で あ るの か と い う こ と で あ る。 ま た,こ の よ うな 市 場 が あれ ば 投 資 者 は 自 ら無 形 財 の 不 確 実 性 を扱 う こ とが で き る が,逆 に 不 確 実 性 と ボ ラ テ ィ リテ ィが 広 が る こ と も考 え られ るω。. VII結. び に 代 え て. 本 稿 は,知 的 財 産 会 計 を め ぐる諸 問 題 をOECDの. 資 料 を 題 材 と しな が ら検 討 した もの. で あ る。 この 検 討 を 通 じて 明 らか とな っ た点 を以 下 に要 約 す る こ と で結 び に代 え た い 。 (1)知. 的 財 産 を め ぐ る議 論 に お い て は,知 的 財 産,知. 的 資 本,知 的 資 産,無 形 資 産,無. 形 財 等 の 用 語 が,定 義 さ れ ず に使 用 さ れ て お り,研 究 対 象 を 明 確 に す る た め に も,そ れ らの用 語 の意 味 を 明 確 に す る必 要 が あ る。 本 稿 で は,法 的 に保 護 され て い る知 的 財 産 権(産 業 財 産 権,著 作 権,営 業 上 の 標 識 等)を ウ ハ ウ,提 携 関 係,顧 客 資 産,デ. 中心 にお い て,こ れ に ブ ラ ン ド,ノ. ー タベ ー ス 等 の 人 間 の知 的 活 動 の成 果 に よ る もの を. 含 め,知 的 財 産 権 を活 用 し収 益 活 動 に貢 献 で き る よ うに具 体 化 した もの を知 的 財 産 と 定 義 した。 ま た,無 形 資 産 と して の知 的 財 産 の 経 済 的 価 値 を評 価 した も の を 知 的資 本 と定 義 し,無 形 財 を有 形 資 産 と金 融 資 産 以 外 の もの で 将 来 の 経 済 的 便 益 を 内 包 す る も の の 総 体(資 産 の 定 義 を 満 た す が 認 識 規 準 を 満 た さ な い もの を含 む)を 表 す 用 語 と し て用 い,無 形 財 を 貸 借 対 照 表 に資 産 と して表 示 す る場 合 の 総 称 と して 無 形 資 産 とい う 用 語 を 用 い た。 (2)OECDの. 用 語 法 に よ れ ば貸 借 対 照 表 に お い て認 識 さ れ た 無 形 財 が 無 形 資 産 で あ り,. 知 的 資 本 と は無 形 資 産 の 経 済 的 価 値 を 意 味 す る。 した が って,会 計 的 に は無 形 資 産 の 期 末 評 価 が 問 題 領 域 の一 つ で あ る。 も う一 つ の 領 域 は,無 形 財 を 如 何 に 認 識 して オ ン バ ラ ンス させ る か と い う問 題 で あ る。 (3)知 的 資 本 を 測 定 す る モ デ ル は,内 部 管 理 目的 と外 部 報 告 目 的 の 二 つ の 観 点 か ら種 々 の モ デ ル が 提 案 され て お り,そ れ ぞ れ 特 徴 を 有 す る と と も に,一 定 の 限 界 を も っ て い る。 と くに,外 部 報 告 目的 と して 議 論 の対 象 とな っ て い る の は,人 的 資 本,顧 客 資 産, ブ ラ ン ド,研 究 開 発,特 許 権 の 五 つ で あ る。 リー ドビー タ ー の所 説 に よ れ ば,そ れ ら. 色1)Ibid.,p.40.. 一132(494)一.
(23) 知的 資本の測定 と報告(浦 崎) の無 形 資 産 に 関 す る情 報 提 供 の 方 法 と して,漸 進 的 ア プ ロ ー チ,急 進 的 ア プ ロ ー チ, ハ イ ブ リ ッ ドア プ ロ ー チ の三 つ が 提 案 され て い る。 漸 進 的 ア プ ロ ー チ は伝 統 的 貸 借 対 照 表 に お い て 情 報 を提 供 しよ う とす る もの で あ り,急 進 的 ア プ ロー チ は知 的 資 本 貸 借 対 照 表 とい う全 く新 しい 貸 借 対 照 表 を 作 成 しよ う とす る もの で あ る。 ハ イ ブ リ ッ ドア プ ロ ー チ は,以 下 に示 す よ うに 無 形 資 産 の取 引 市 場 で の 公 正 価 値 を 参 考 に無 形 資 産 の 評 価 を行 お う とす る もの で あ る。 (4)無 形 資 産 の 会 計 的 評 価 は,無 形 資 産 の 価 値 を 評 価 す る た め の よ り効 率 的 で信 頼 で き る市 場 を 作 る こ と に よ っ て しか そ の 信 頼 性 を 高 め る こ とは で き な い。 無 形 資 産 に信 頼 で き る評 価 を与 え る こ と は単 に 「 会 計 上 」 の 問 題 で は な くア カ ウ ンタ ン トが 解 決 す べ き 問 題 で あ る。 こ の 問 題 は,よ. り根 本 的 に い え ば,適 切 に機 能 す る 市 場 が な い状 況 に. お い て無 形 資 産 に どの よ うに 価 格 付 を行 うか とい う経 済 的 問 題 で あ る。 (5)そ. の結 果 と して,無 形 資 産 の よ り信 頼 で き る評 価 を得 る た め に は,エ. コ ノ ミス ト,. ア カ ウ ンタ ン ト,知 的 財 産 の 専 門 家,雇 用 契 約 の 専 門 家 が か か わ る総 合 的 な ア プ ロ ー チ が 必 要 な る。 無 形 資 産 を正 確 に 評 価 す る とい う 問題 は単 に 学 問 的 あ る い は専 門 的 に ア プ ロー チ して も解 決 で きな い もの で あ る。 法 律 や 制 度 の 改 革 に あ わ せ て,会 計 基 準 の み な らず,資 本 市 場,労 働 市 場,知. 的 財 産 市 場 の 改 革 も必 要 に な っ て くる。. 一133(495)一.
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著者 磯崎 博司.
著者 久保 雄志, 山形 辰史.
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