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教師に必要な資質能力に関する研究(2) : 重要視される資質能力と教師の属性による差異の検討

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Academic year: 2021

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(1)183. 教師に必要な資質能力に関する研究(2) -重要視される資質能力と教師の属性による差異の検討桟川和章Ⅰ・古川雅文‥・浅川潔司'・長瀬久明日 成田滋‥・鈴木正敏‥・塩見邦雄"' (平成10年9月21日受理). 問題. 育観や児童・生徒観の育成」は,小学校においてやや多. 実際に教育に携わっている教師には,様々な資質能力. く求められる傾向にあった。 どのような立場で学校教育に関わっているかによって. が必要とされる。前研究(古川他,1999)においては,こ れら多岐にわたる個々の資質能力を構造的に把握するこ. も,資質能力の重要度の認知は異なる可能性がある。井 上(1993)は,教授能力として,小学校教師はかなり抽象. とを試みた。これらの資質能力は,いずれも教師に必要 とされるものであるには違いないが,では,実際に教師 は,どのような資質能力を重要だと認知しているのであ. 的な能力概念を求めているのに対し,小学校校長は,教 室の中で子どもを目の前にしての具体的・実践的な指導 のあり方や子ども理解の仕方などの能力を要求している. ろうか。本研究では,前研究の調査結果をさらに分析し, 教師が重要視している資質能力がどのようなものかを明. と述べている。そして,この差異は,一般教師と管理職 教師の職位差に起因するものであると考えている。有馬. らかにすることを第1の目的とする。 ところで,どのような資質能力を重要と考えるかは,. 他(1995)は, 「教育愛に基づき児童・生徒を受け入れら. 教師個々人の様々な属性や経験によって異なるところも 大きいであろう。断片的には,すでにいくつかの指摘が なされている。そのひとつは,教師の属する校種である。. れる人間性の育成」 「教育の基本である教育観や児童・ 生徒観の育成」といった上位の位置を占めた内容は,校 長が教務主任よりも重視する傾向にあり,他の内容は教. どのような学校の教師であるかによって,どのような対. 務主任の方が重視する傾向が強くなっていることを報告 している。そして,教務主任は,教育実践活動の中核的. 象の子どもの教育に携わっているかが異なることから, そこで重要と感じる資質能力も異なってくる可能性が考 えられる。岡屋・若山・湯浅・小松(1989)は, 12の項目. な立場にあり,実際的な経験をする機会が多いため,多 くの条件や資質を偏りなく持っべきであると考えている のではないかと,彼らはとらえている。. を提示し,教師の資質として重要なものを選択させてい る。この結果は附属学校教師に限定されたものではある. 校種や役職といった立場の相違だけでなく,教師自身 の経験の違いもまた,どのような資質能力を重要視する. が, 「教師としての人間性」については,校種を問わず. かに関連すると思われる。井上(1986)は, 「自分自身の. 共通して大事な資質であると考えられていることと,校 種によって相対的に異なるところもあることが報告され ている。小学校教師では, 「子どもへの熱意」 「子どもの. 確固たる教育観および子ども観を確立しておくこと」 「誠実な態度をもち,いっもユーモアの精神で子どもに 接すること」 「授業中子どもの目を注視するように心掛. 内面の理解」 「子どもに好かれる」 「子どもとの対話能力」 等が多く挙がっており,中学校教師では, 「授業力」 「学. けること」といった項目では,若年の教師よりも年配の 教師の方が望ましさの評定が高かったことから,誰が考. 級経営力」 「研修・研究」等が,養護学校教師では, 「子. えても望ましいと思われる項目については,若年教師群. どもの内面の理解」 「教育問題を考える」 「学級経営力」 等が多く挙がってきているのである。また,有馬・藤本・. よりも年配教師群の方が,より望ましいものとしてとら えていると報告している。しかし同時に,教育のあるべ. 加野・柳・田中・湯浅・鈴木(1995)は,小・中学校の校 長と教務主任に対して,教員養成系大学でどのような育. き姿については,教師の年齢差によって意味あるほどの. 成が求められるかを, 5つの内容から選択させることで 回答を求めている。その結果, 「生活指導や生徒指導,. 相違は兄いだされていないと考えている(井上,1993)c また,小泉・内藤・浅川・古川(1989)は,教職能力を形 成する要素に対する重要性の評定値が,教職経験の長い. 学級経営などの指導技術の育成」については,中学校に おいてより多く求められており, 「教育の基本である教. 教師の方が短い教師や学部学生よりも高かったことから, 長年の教職経験の中で,教職能力の重要性をより強く感. *兵庫教育大学第1部(幼児教育講座) * *兵庫教育大学学校教育研究センター * * *兵庫教育大学第1部(教育基礎講座).

(2) 184. じるようになるのだと考えている。このように,教職経 験の長さも,どのような資質能力を重要と認知するかに 影響を及ぼす要因であると考えられる。 以上のことから,校種,役職,教職経験を取り上げ, それらの要因が個々の資質能力を重要視するあり方に, どのように関係しているのかを検討することを,本研究 の第2の目的とした。. 項目を除いて先甲平均値の分析による結果と一致してお り,選択の少なかった項目についても,先の分析結果と 同様である。 この2つの分析で得られた結果を総合すると, 「教育 への情熱」や「教師自身の心身の健康」 「幅広い社会性・ 人間性」といった教育全体の基盤となるような資質能力 と, 「子どもの行動を理解する能力」 「子どもの心情を理 解し共感する能力」 「生徒指導の能力」といった「子ど. 方法. も理解」に関連した資質能力が重要視されているとまと めることができる。. 調査対象者及び調査手続き平成8年度までの本学大. このように,重要視される資質能力は,従来から指摘. 学院修了生からランダムに抽出した882名に対して,郵 送法で行った。詳細は,古川他(1999)に述べてある。本. されてきた内容と基本的には重なる部分が大きいと思わ れる。井上(1993)は,教授能力の重要な構成要素として,. 研究では,小学校,中学校,高等学校,盲・聾・養護学. 教師観・子ども理解とそれを基盤とする柔軟な対応及び. 校(以下,養護学校等),教育委員会及び研修所・教育セ ンター(以下,教育委員会等)のいずれかに勤務する者を. 評価観が大切であると述べている。また,岡屋(1989)に よると, 「教師としての人間性」は校種を問わず重要な. 対象として分析した。回答に不備のある者を除き,最終 的な分析対象者は, 333名であった。内訳は,小学校119. 資質であると認識されている。さらに,有馬他(1995)に よると, 「教育愛に基づき児童・生徒を受けとめられる. 名,中学校92名,高等学校71名,養護学校等21名,教育 委員会等30名である。. 人間性の育成」や「教育の基本である教育観や児童・生 徒観の育成」が教員養成系大学に求められている。こう. 調査内容まず,勤務先の学校の種類,役職,性別, 教職経験年数を尋ねた。次に,これからの教師に必要な. した内容は,本研究においても,重要性の高いものとし て認知されている。. 資質能力として28項目をあげ,それぞれに対する重要度 評定( 「重要でない」から「たい-ん重要」までの5段. 「外国の人々とのコミュニケーション能力」や「情報 リテラシー」といった,寛代社会において重視され,こ. 階評定)を求めた。さらに, 28項目の中から特に重要だ と思う項Ejを3項目選択させたO. れからの教育現場で積極的に取り入れていかなければな らないだろう内容を含む項目は,相対的には重要度の低 い項目であったことは注目に値する。しかし,こうした. 結果と考察 重要視される資質能力各項目別に重要度評定の平均. 新しい教育内容にまったく目が向いていないわけではな く, 「新しい時代に対応する積極的姿勢」の重要性は高 いのである。したがって,国際化や情報化に対応した教. 値を示したものが,図1である。平均値の高い順に, 「9.子どもの行動を理解する能力」 「10.子どもの心情. 育への積極的な姿勢は非常に重視しているが,教師自身 にこれらの能力が求められているとは,強く認識してい. を理解し共感する能力」 「8.生徒指導の能力」 「21.教. ないと受け取ることができるであろう。. 育への情熱」 「17.教師自身の心身の健康」と続く。し たがって,これらが,教師が特に重要視している資質能. 校種による差異項目別に,校種(小学校・中学校・ 高等学校・養護学校等・教育委員会等)を要因とした1. 力だといえる。これに対して, 「28.外国の人々とのコ ミュニケーション能力」「27.カリキュラム開発能力」. 要因分散分析を行った。校種別の平均値及び多重比較の. 「7.進路指導の能力」「2.情報リテラシー」といった 資質能力は,相対的に重要度が低い。 個々の項目に対する重要度の評定とは別に,特に重要 だと思う資質能力を3つまで挙げさせた質問に対する回 答は,表1のような選択となっていた。これを見ると, 多くの教師から重要だとして選ばれた項目は, 「21.教 育への情熱」 「8.生徒指導の能力」 「10.子どもの心情 を理解し共感する能力」 「14.幅広い社会性・人間性」 「1.新しい時代に対応する積極的姿勢」の順となって いる。第1位,第2位に挙がった項目は,先の平均値の 分析とは異なっていたが,上位10項目までを見ると, 1. 結果を示したものが表2である。 項目6, 10, 12, 13, 22は共通の傾向が見られる。そ れは,高校教師が,他の校種(小学校,中学校,教育委 員条等)の教師に比べて平均値が低いことである。項目 6を除いて,他の4つの項目は,子どもと密接な関係を 持っ項目であり, 「子ども理解」や「子どもとのコミュ ニケ-ション」にかかわる資質能力と言える。高校教師 はこうした資質能力を他の校種の教師に比べて重要視し ていないという特徴を持っているのである。項目6は, 「保護者や地域と協調する能力」であり,高等学校では, このような側面が弓削\ためではないかと思われる。 小学校教師と中学校・高等学校教師との間に差異が見.

(3) 教師に必要な資質能力(2) 平均値 3.5. 9,子どもの行動を理解する能力 10.子どもの心情を理解し共感する能力 8.生徒指導の能力 21.教育への情熱 17.教師自身の心身の健康 14.幅広い社会性・人間性 1.新しい時代に対応する積極的姿勢 6.保護者や地域と協調する能力 3.専門性を追求する能力 15,他者の意見を受け寄れる能力 5.教師自身の体験とそれに基づく指導力 25.授業改善の能力 12.子どもの立場に立っことができる能力 24.学習に対する子どもの意欲を高める能力 22,教師の表現力 13,子どもとの親密感を生じさせる能力 18.学級経営の能力 20,研究的態度 26授業実践の技術 ll.カウンセリングの技能 4.教科外活動を行うための知識や技能 16.同僚との人間関係をうまく調整する能力 23.教育評価の知識・技能 2.情報リテラシー 19.学校,学年経営の能力 7.進路指導の能力 27.カリキュラム開発能力 28.外国の人々とのコミュニケ-ション能力. 図1各項目の重要度評定の平均値. 衰1各項目の選択人数. 項目人数項目人数 21.教育への情熱96 8.生徒指導の能力82. 26.授業実践の技術23 15.他者の意見を受け容れる能力22. 10.子どもの心情を理解し共感する能力80. 18.学級経営の能力18. 14.幅広い社会性・人間性77. 4.教科外活動を行うための知識や技能17. 1.新しい時代に対応する積極的姿勢75. 22.教師の表現力16. 3.専門性を追求する能力63. ll.カウンセリングの技能15. 17.教師自身の心身の健康63. 16.同僚との人間関係をうまく調整する能力15. 5.教師自身の体験とそれに基づく指導力48. 2.情報リテラシー12. 9.子どもの行動を理解する能力45. 27.カリキュラム開発能力11. 6.保護者や地域と協調する能力41 24.学習に対する子どもの意欲を高める能力32. 23.教育評価の知識・技能8 19.学校,学年経営の能力7 7.進路指導の能力5. 20.研究的態度30. 28.外国の人々とのコミュニケーション能力4. 12.子どもの立場に立っことができる能力26. 無答2. 13.子どもとの親密感を生じさせる能力36. 25.授業改善の能力26. IBB.

(4) 186. 表2校種別の平均値と分散分析結果. 小学校中学校掌芸葦票等芸芸葦欄多重比較(LSD法) M. C O. C. ^ T. C O. ). ^. T 0. ". f 3. ". ^. C. *. D. ^. O. O. C. -. O ). C. ^. O. ( M. F. ^ t. ^. c. C O. r. O C O. -. C T. ^. C O C. -. i. *. O. O C O. C. ^. O. L. ^ C. C. O. O. O. L. C O. C. O. n. O. C. と. >. O U. C. C 9. O. O. s. 3. 9. C. C. O. C. c. ^. O. Ω. O. C. -. C. C. t - C O o o o. a. T. C N J C O O O } L O O c o c N I C O O S i - i t - < O O. c. O o. C. -. U. O. o. C. C. O. O. O. C O C X ] C O O L O C O c O C ^ J t - H O C S ] n O O O o q. C. ". o. I. ^. 5. q. O. S. Ω. C. L O C O C O c O n X ) C O t - I C S ] ご C D C M C D e S I O O t O O N LOLOOOt-Ii-ILOLO-^i-1-^LOCDr-JcocNia^cocqcqcrscxiCDCTiCOLQ. *. と. S. ^. C O C O C O c O O O O c o o t - - t > - o c o c - - c o r O j l > ( N ( M C O C O C O C D e L Q O C S J t - ⊥ o o c o c r > t - c r > o d z r > - ^ r. C. W. C. Q O ^ C c r >. O. ". 教>中・養・高,小>高 '教・小・中>高 '教・養・中・高>小 '教・養・中>高,教>小 '教・小・中>高 教・養・小・中>高 教・小・中>高. 教>高・養,小>中・高・養. 小>高・養,中>高. ]. 8. o. U. O. 28.外国の人々とのコミュニケーション能力. ^. L. O. 27.カリキュラム開発能力. D. >. C. 26.授業実践の技術. C. T. ^. 25.授業改善の能力. -. C. *. 24.学習に対する子どもの意欲を高める能力. t. W. -. 23.教育評価の知識・技能. ) < T i L C O C O. M. o. 22.教師の表現力. COCO-^COCOCOCO"^J4^J"COcOCO. <. c. 21.教育への情熱. e. 3. ^. 20.研究的態度. O. O. *. 19.学校,学年経営の能力. c O < X Q L O. J. ^. 18.学級経営の能力. C. O. o. 17.教師自身の心身の健康. >. M. c. 16.同僚との人間関係をうまく調整する能力. T. C. ^. 15.他者の意見を受け容れる能力. C. f. 蝣. 14.幅広い社会性・人間性. O. t. ^. ユ3.子どもとの親密感を生じさせる能力. L. C O c - O c q e n. N. 蝣. 12.子どもの立場に立つことができる能力. O. (. O. ll.カウンセリングの技能. 蝣. O. C. 9.子どもの行動を理解する能力 10.子どもの心情を理解し共感する能力. C. C. ^. 8.生徒指導の能力. *. I O n ∠ e n o. -. *. 7.進路指導の能力. 3. t. C O c O C O I T D L O C O O C O C N I N O C O n 3 < ﹂ > i - 1. ". 6.保護者や地域と協調する能力. =. O. O. 5.教師自身の体験とそれに基づく指導力. ". C. C. 4.教科外活動を行うための知識や技能. 蝣. W. 3.専門性を追求する能力. LOr-tCOcocococo-^cqOLOco-^coLOO5CDOOCOCOOO. i. 2.情報リテラシー. C O ^ r c O C O C O C O c O C O C 0 - & C O C O C O C O C O C O C O C O c O C O. O ( M C O l e c o. O. 1.新しい時代に対応する積極的姿勢. **:p<. 01, *:p<.05 られる項目もある。項目18 「学級経営の能力」は,小学. と言えよう。. 校教師が相対的に重要視している内容であることがわか. 役職による差異教諭及び主任を一般教師群(212名), 教頭及び校長を管理職教師群(67名)として,項目別に,. る。それに対して,小学校教師のみが平均値の低い項目 もある。これは項目7 「進路指導の能力」であり,小学. 校種(小学校・中学校・高等学校) ×役職(一般教師・. 校の段階では進路指導自体があまり必要とされないため, 平均値が低くなったと考えられる。. 管理職教師)の分散分析を行った9校種については,先 とはぼ同様の結果が得られているので,以下では,役職. 教育委員会や研修所の勤務者は,厳密には教師とは言 えないが,その指導的立場にあると言える。全体的に,. に関する効果が見られた結果のみを述べるO 項目6 「保護者や地域と協調する能力」において,役. 個々の項目に対して高い平均値を示しているこ.とが多く,. 職の主効果が有意であり(F(l,273)-4.33,p<.05),管 理職教師(夏-4.42)は,一般教師OT-4.09)よりも平均. 一般の教師が考える以上に,指導的立場からの期待が大 きいとも言える。 以上の結果をまとめると,授業そのものに関わる部分. 値が高かった。項目19 「学校・学年経営の能力」におい. では,校種による差異はあまり見られないが,子どもと. ても,役職の主効果が有意であり(Kl,273)-6.92,p<. 01),管理職教師(X-3.99)は,一般教師(夏-3.53)より. の関係や授業以外の部分で校種pこよる差異が現れてくる. も平均値が高かった.さらに項目21 ,「教育への情熱」に.

(5) 教師に必要な資質能力(2). 187. おいても,役職の主効果が有意であり(ni,273)-9.61, p<.01),管理職教師(貢-4.70)の方が一般教師(貢-4.2. 職経験を持っており,いわゆる新任教師は含まれていな い。吉崎(1998)は,教師の生涯発達を,教職経験年数を. 5)よりも平均値が高かった。その他の項目においては役 職の効果は見られなかった。. 目安にして, 「初心期」 (教職3年目ぐらいまで), 「中堅 期」 (教職5年目から15年目ぐらいまで), 「熟練期」 (20. 以上のように,役職による差異は3つの項目で見られ ており,いずれも校長・教頭といった管理職教師が一般. 年目以降)といった3段階でとらえている。このような 視点から見ると,本研究における,教職経験の短い群は,. 教師よりも,これらの内容を重視していた。項目6 「保 護者や地域と協調する能力」及び項目21 「教育への情熱」. ほぼ中堅期に相当するものとしてとらえられる。また, 教職経験年数は,教師の成長・発達と関連するのだが,. は,いずれも全体的に重要度の高い項目であり,管理職 教師は,よりこれらを求めていると言える。項目19「学. それだけで規定されるものではない。むしろ経験の質が 問題であろう。秋田(1997)紘,特に初任期から中堅期に. 校・学年経営」は,全体としては,重要度の高くない項 目であるが,学校全体を統括する立場からは,より重要 と考えられるのだろう。. おける変化においては,経験の内容とその経験をとらえ る認識の質が教師の成長と関係をもつと指摘している。 その意味では,調査対象者が本学大学院の修了生であっ. 教職経験による差異一般教師群のみを対象に,教職 経験年数15年以下を短群(58名), 16-20年を中群(83名),. たこともあわせて考慮しなければならないであろう。. 21年以上を長群(71名)とし,項目別に,校種(小学校・ 中学校・高等学校) ×教職経験年数(短・中・長)の分. 9E;K」迅. 散分析を行った。ここでも,教職経験年数の効果が見ら れたもののみを取り上げ,以下に述べる。. 秋田喜代美1997中堅教師への成長と停滞を越えて児童心. まず,項目6 「保護者や地域と協調する能力」におい て,教職経験年数の主効果が有意であった(F (2,203) -4.30,p<.05)c多重比較の結果,教職経験年数 の短い群QT-4.37)は,中群(貢-4.03)及び長群(X-3.9 4)に比べて平均値が高く,この項目をより重要視してい ることが明らかになった。また,項目8 「生徒指導の能 力」において,教職経験年数の主効果CF(2,203)-6.17, p<.01)及び校種と教職経験年数の交互作用(F (4,203) -2.49,p<.05)が有意であった。経験年数中群に おいて,小学校(X-4.59)及び中学校(X-4.58)教師は,. 哩, 51(7), 117-125. 有馬道久・藤本光孝・加野芳正・柳智博・田中吉資・湯浅恭 正・鈴木政勝1995小・中学校の校長と教務主任の求める 教員養成のあり方香川大学教育実践研究, 24, 85-101. V井上正明1986教師の教授能力に関する実証的研究〔I〕一 教授能力の構成を中心に-福岡教育大学紀要,第4分冊, 36, 161-176.. 井上正明1993教師の認知的力量と情意的力量の評価に関す る教育心理学的研究風間書房 1古川雅文・長揮憲保・横川和章・福本謹-・畑野裕子・河相善 雄・中列正尭1999教師に必要な資質能力に関する研究. 高校教師(X-4.00)よりも平均値が高く,また,高校教. (1)一現職教員が認知する資質能力の要因とその構造の検. 師群においては,教職経験年数短群(貢-4.80)が,中群 (夏-4.00)や長群CX"-3.97)よりも,平均値が高かった。. 討-兵庫教育大学研究紀要,第1分冊, 18, 173-181.. その他の項目においては,教職経験年数の効果は見られ なかった。 井上(1986)や小泉他(1989)では,一般に教職経験を積 むことで,様々な資質能力を重要視する程度が高くなる. 1りJ、泉令三・内藤勇次・浅川潔司・古川雅文1989教員養成系 学部学生と教師の教職能力の認知構造の比較一自己の教職 能力評定を通して-福岡教育大学紀要,第4分冊, 38, 159-170.. 岡屋昭雄・若LLJ院一郎・湯浅恭正・小松伸一1989教員の資. 傾向があった。しかし,本研究結果からは,教職経験の 影響はそれほど大きくないように思われる。項目6の. 質向上と教育実習の研究香川大学教育実践研究, 12, 73-. 「保護者や地域と協調する能力」に関しては,むしろ経 験豊富な教師ほど重要視しない傾向が見られている。項. 吉崎静夫1998 -人立ちへの道筋浅田匡・生田孝至・藤. 目8の「生徒指導の能力」においても,高校教師では同 様の傾向が見られる。これらの内容が経験とともに重要 と感じられなくなっていく背景には,その実践上の困難 さがあるのではないかとも思われる。 以上のような,教職経験による差異に関する本研究結 果の解釈には,いくつかの点に注意が必要であろう。ひ とっは,本研究の調査対象者が,教職経験年数の比較的 長い教師であったことである。 90%以上が11年以上の教. 94.. 岡完治(宿)成長する教師金子書房, Pp. 162-173. 付記:本研究は,平成9年度教育改善推進費(学長裁量経費) の補助を受けて行われた。.

(6) 188. A study of competence and skills that teachers need (2) : Teachers'attribution of the importance of each factor and difference.. Kazuaki YOKOGAWA, Masafumi KOGAWA, Kiyoshi ASAKAWA, HisaalCi NAGASE, Shigeru NARITA, Masatoshi SUZUKI, Kunio SHIOMI The purpose of this study was to investigate teachers'views about what competences and skills are important for teachers, and to examine the differences in their views by their attributions. 333 teachers and staff of educational boards responded to this survey. They were asked to evaluate the importance of each question items for producing highly successful teachers on a 5-point scale. The questionnaire consisted of 28 items about teacher s competence and skills. The results were as follows: Teachers responded that the ability to understand children s feelings and behaviors, ability to provide academic and career counseling, a healthy body and mind, and enthusiasm for education were important. The elementary and junior high school teachers attached more importance to some items than the high school teachers. These items were: ability to understand children's feelings, ability to see from the children s perspective, and ability to cooperate with parents and community. The elementary school teachers attached more importance to ability of classroom management than the junior high and high school teachers. School administrators (principals and vice-principals) evaluated three items as more important than teachers: cooperating with parents and community, grade-level or scool management, and enthusiasm for education..

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