経済調整期における大学教育の調整政策について
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(2) 1 『高校六十条』の分析 (1)経済鯛整期における大学の教育方戯 『高校六十条』の基本原則には, 高等学校的基本任務,是貫徹執行教育為無産階級的政治服務、教育与生産労 野相結合!的方針,培養社会主義建設所重要的各種専門人材5。 (邦訳)高等学校6の基本任務とは,教育をプロレタリア政治のための奉仕 とし,教育と生産労働を結合するという方針を貫徹執行して,社会主義建設 が必要とする各種の専門的人材を養成する。 という一文が掲げられている。つまり,経済調整期の教育方針は,「教育をプロレ タリア政治のための奉仕とする」「教育と生産労働を結合する」に関しては大躍進 期と変わらない7のである。しかし,「社会主義建設に必要な専門的人材を養成す る」という方針が新たに加えられている。 また,第一条においては,. 根笹毛沢東同志提出的“我椚的教育方針,応該使受教育者在徳育、智育、体 育幾方面都得到発展,成下有社会主義覚悟“的有文化的労働者”,高等学校学 生的培養目的是: 具有愛国主義和国際主義精神,具有共産主義道徳品質,擁護共産党的指導, 擁護社会主義,懸為社会主義:事業服務、為人民;通過馬克思丁寧主義、毛沢 東著作的学習,和一定的生産労働,実際工作的鍛錬,逐歩樹立無産階級的弓 級観点、労働観点、群衆観点、弁証唯物主義観点;掌握本専業所需要的基礎 理論、専業知識和実際技能,尽可能了解本専業範囲内科学的新発展;具有健 全的体醜8。. (邦訳)毛沢東同志の掲げた「われわれの教育方針は,教育を受ける者に徳 育・智育・体育の各側面においてすべてを発展させ,社会主義の自覚を持つ 文化的な労働者にさせることである」に基づいた高等学校の学生養成の目的 とは,愛国主義と国際主義の精神を持ち,共産主義の道徳的資質を持ち,共 産党の指導を擁護し,社会主義を擁護し,社会主義事業奉仕、そして人民奉 仕を願うことである。つまりマルクス・レーニン主義・毛沢東著作の学習と, 一定の生産労働・実際の工作の鍛錬を通じ,徐々にプロレタリアの階級観点・ 労働観点・大衆観点・弁証唯物主義観点を樹立し,そして,本専攻が必要と する基礎理論・専攻知識や実際の技能を身につけ,できるだけその本専攻の 囲内の科学的新発展を理解し,健全な体力と精神力を具有するということで ある。. と,上述の専門的人材の養成について,「愛国主義と国際主義の精神を持ち,共産 主義の道徳的資質を持ち,共産党の指導を擁護し,社会主義を擁護し,社会主義 事業奉仕,そして人民奉仕を願うことである。つまりマルクス・レーニン主義・毛 沢東著作の学習と,一定の生産労働・実際の工作の鍛錬を通じ,徐々にプロレタ リアの階級観点・労働観点・大衆観点・弁証唯物主義観点を樹立し,そして,本 専攻が必要とする基礎理論・専攻知識や実際の技能を身につけ,できるだけその 本専攻の範囲内の科学的新発展を理解し,健全な体力と精神力を具有するという 一32一.
(3) ことであるjと,具体化している。しかし,1958年の大躍進期の教育方針f“全 面発展の入間”を養成することが教育:事業の任務である9」というものはなくな っている。その代わりに,. 在教学中,必須発揮教師的主導作用。高等学校必須継続努力培養又昏昏専的 教師隊伍10。. (邦訳)教学のなかでは,かならず教師の主導的作用を発揮させなければな らない。高等学校はかならず又紅又専の教師の隊伍を養成するよう絶えず努 細しなければならない。 と,教師のなかに「又紅又専」つまり“如何なる職もこなすことができ,尚且つ プロレタリアとしての自覚を持つ人材≒全面発展の人間”を養成しようとしてい る。ここではそれが経済調整期ひいてはそれ以降の高等教育に望まれたことはも ちろん,大躍進期における教師の質の停滞や大躍進期の政策自体の失敗に対する 立て直しをうかがうことができる。 また,注目すべき点として,第8条では,教学と生産労働との結合の方針を掲 げながらも,. 為了保証以教学為事,高等学校平均毎年応該有八介月以上的時間用干教学。 学生参加生産労働時間的時間一般為一ノト月至心イ・半月。在教学計劃以外,不 対学生規定科学研究任務。生産労働過多、科学研究過多、社会活動過多等妨 白和削弱教学工作的現象,応該糾正・・。 (邦訳)教学を主とすることを保証するために,高等学校では毎学年平均八ヶ. 月以上の時間を教学に当てるべきである。学生が生産労働に参加する時間は 一般に一ヶ月から一ヶ月半とする。教学計画以外に,学生に対して科学研究 任務を規定しない。生産労働の過多・科学研究の過多・社会活動の過多など 教学工作を阻んだり弱めたりする現象は,修正すべきである。「 と,大躍進期に定められていた,「一二九」「一三八」「一四七」の時間配分・・の. の見直しを述べているが,筆者は,この条文ではとくに生産労働時間を毎年4ヶ 月とする「一四七」の配分に対して,好ましくないという見解を提示していると 解している。また,. 高等学校必須以教学為主,努力提高教学質量。生産労働、科学研究、料亭活 動的時間書聖安排得当,以利教学・3。. (邦訳)高等学校はかならず教学を主とし,教学質量の向上に努力しなけれ ばならない。生産労働・科学研究・社会活動の時間は適切に配分し,教学に 利としなければならない。 や,第16条の 国別特殊専業的平生,根据実際情況,可以只参加軽微畢生産労働、或者不参 加生産労働・4。. (邦訳)個別の特殊な専攻の薄情は,実際の状況に基づいて,軽微な生産労 働に参加するだけでもよいし,あるいは生産労働に参加しなくてもよい。 などのように,教学を中心に考え,生産労働等実践をその次に据えるという形態 をとるように決定していることが指摘できる。すなわち,これは大躍進期の生産 一33一.
(4) 労働中心型教育から経済調整期の教学中心型教育への転換なのである。. (2)学術への対応 大躍進期1958年の陸定一の論文『教育部須与生産労働相結合』にほ,「我国は 整風・反右の運動が厳粛に行われている国家であり,大鳴、大放、大争、大弁、 大字報の国家である。われわれは自国の特質に基づいて,マルクス主義の普遍真 理と我国の具体的現実とを結合させて,我国の教育方針・教育政策・教育制度・ 教育方法などを規定していかなければならない・・」とある。つまり,教育界にも 大鳴大勢の方針を導入せよということであった。それに対して『高校六十条』第 4単位は,次のようにある。 高等学校必須貫徹執行百花斉放、百家争鳴的方針,在毛沢東同志《関干正確 処理人民内部矛盾的問題》中提出的六項政治標準的前提下,積極発展各種学 術問題的自由討論,以利予全高教学質量,提高学術水平,促進科学文化的進 歩和繁栄。在自然科学中,必須周壁不同的学派粕不同的学術見解,自由探討, 自由発展。在哲学、社会科学中,為着発展馬克思列寧主義理論,必須批判地 継承歴史文化遺産,吸収其中一切有価値的東西,必須研究和批判現代資産階 級的各種学説・・。. (邦訳)高等学校はかならず百花斉放・百家争鳴の方針・7を貫徹執行し,毛 沢東同志の『人民内部の矛盾を正確に処理する問題に関して』中に掲げられ ている六項の政治基準の前提条件のもと,各種の学術問題の自由な討論を積 極的に発展させ,教学質量を向上させ,学術レベルを向上させ,科学文化の 進歩と繁栄を促進するための利益としなければならない。自然科学において は,かならず異なる学派や異なる学術見解に対して,自由に検討し,自由に 発展させることを提唱しなければならない。哲学・社会科学においては,マ’ ルクス・レーニン主義を発展させるために,かならず歴史文化遺産を批判的に 継承し,そのなかのすべての価値あるものを吸収しなければならず,かなら ず現代のブルジョアの各種学説を研究、批判しなければならない。人民内部 において,マルクス・レーニン主義者内部においては,各種学術問題を詳細に 討議し,かならずすべての異なった見解を許容し,自由に討論しなければな らない。. つまり,『高校六十条』においては「高等学校は百花斉放・百家争鳴の方針(双百 方針)を貫徹執行し,毛沢東同志の『人民内部の矛盾を正確に処理する問題に関 して』中に掲げられている六項の政治基準の前提のもとで,各種の学術問題の自 由な討論を積極的に発展させ,教学質量を向上させ,学術レベルを向上させ,科 学文化の進歩と繁栄を促進するための利益としなければならない。」として,いわ ゆる双百の方針を継続的に導入している。ここに掲げられた,「毛沢東同志の『人 民内部の矛盾を正確に処理する問題に関して』中に掲げられている六項の政治基 準」についてであるが,これは次のようなものである。すなわち‘, (一)全国各民族人民を分裂させるのではなくて,その団結に有利であること。 (二)社会主義的改造と社会主義建設に不利ではなくて,社会主義的改造と 一34一.
(5) 社会主義建設に有利であること。(三)人民民主主義独裁を破壊したり,弱め たりするのではなくてこの独裁を固めるのに有利であること。(四)民主集中 制を破壊したり,弱めたりするのではなくてこの制度を固めるのに有利であ ること。(五)共産党の指導から離れたり,これを弱めたりするのではなくて, この指導を固めるのに有利であること。(六)社会主義の国際的団結と全世界 の平和を愛する人民の国際的団結を損なうのではなくて,これらの団結に有 利であること・8。. という六基準である。これは,人民民主主義独裁や民主集中制などに代表される, 毛沢東思想の中核ともいえる政治政策理念を集約したものである。経済的側面に おいてはすでに大躍進政策の失敗は表出していたが,この『高校六十条』発布時, つまり1961年9.月15日時点の教育の側面においては,いまだ毛沢東思想の影響 と毛沢東の威信が色濃く残っていたと考えられる。しかし,この経済調整期には, 反右派闘争19という政治闘争を教訓として,それを生じさせた双百方針を,本来 の,敵を見つけるための利用ではなく,「各種の学術問題の自由な討論を積極的に 発展させ,教学質量を向上させ,学力レベルを向上させ,科学文化の進歩と繁栄 を促進する』ために利用した点は,特筆すべき点である。加えて,第3条におけ る,. 在高等学校中,必須加結党的領導,加聞耳和罪党的団結合作。(中略)必須正 確執行党的知識分子政策,団結一切可以団結的教授、副教授、講師、助教和 其他具有専門知識技能人,調動一切積極母型,為社会主義的高等教育事業・・。 (邦訳)高等学校においては,かならず党の指導を強化しなければならず, 党と党外の団結協力を強化しなければならない。(中略)かならず党の知識分 子工作政策を正確に執行し,すべての団結が可能な教授・助教授・講師・助 手やその他専門知識や技能を持つ人と団結し,すべての積極的要素を引き出 して,社:会主義の高等教育事業のための奉仕としなければならない。 や,先に掲げた 必須研究所批判現代資産階級的各種学説。 (邦訳)かならず現代ブルジョアの各種学説を研究・批判しなければならな い。のように,非共産党員との団結やブルジョア階級の学説研究を提唱する など,新しい:方針を打ち出し,. 在人民内部,在馬克思列寧主義者内部,探討各種学術問題,都必須允許不同 的見解,自由討論2・。 (邦訳)人民内部において,またマルクス・レーニン主義者内部においては,. 各種の学術問題について討論し,すべて異なった見解を許容し自由討論を行 なわなければならない。 のように,人民内部やマルクス・レーニン主義者内部という,毛沢東の規定したい. わゆるf味方」のあいだにおいては,教学発展を前提にして左派右派を問わない 自由論争を呼びかけるなど,政治と教学の結合を緩和し,右派の見解を見直すと も考えられる方針を掲げている。. この方針に対しては当然,左派による批判が考えられる。しかし,経済調整派 一35一.
(6) はそれらの批判を避けるために,ブルジョア学説の研究や右派思想の自由討論な どを提唱する後ろ盾として双百方針という毛沢東の自由討論の理論を利用したの ではないかと考えられる。. (3)大躍進竹簾失敗の露星 先に経済的側面において大躍進の失敗が表出したと述べたが,『高校六十条』第 6条においてもそれを窺い知ることができる。 在高等学校中,必須貫徹執行勤倹一学的方針,発揚取苦奮斗的伝統,反対鋪 張浪費。必須加強総務工作機構,雪下工作効率,改進物資供応工作,保証教 学工作的順利進行。必須関心群衆生活,実行労逸結合,認真一好{火食,保護 師党員工的健康。努力改善校舎、図書資料、実験設備等物質条件,為教学和 科学研究服務。(中略)高等学校的規模不宜過大・・。. (邦訳)高等学校においては,かならず勤倹弁学(節糊した学校運営)の方 針を貫徹執行しなければならず,刻苦奮斗の伝統を発揚し,派手を好み,ム ダ遣いをすることに反対しなければならない。かならず総務工作機構を強化 し,工作の効率を向上させ,物質供給工作を改善し,教学工作の順調な進行 を保証しなければならない。かならず大衆の生活を重視し,労働と休息を上 手く結合し,真剣に公の食事を上手くおこない,師生員工(教員・学生・職 員)の健康を保護しなければならない。(中略)学校の規模は大きすぎてはな らない。. つまり,「高等学校においては,かならず勤倹弁学(節制した学校運営)の方針を 貫徹しなければならない」「派手を好み、ムダ遣いをすることに反対しなければな らない」からは,行き詰まりを見せる教育財政が露呈していることが解り,また, 「かならず大衆の生活を重視し,労働と休息を上手く結合して,公共の食事を上 手くやりくりして,教師や学生・職員などの健康を保護しなければならない」と いう人民の健康管理の指針などは,大躍進期の教育関連の文献には決して見られ ないものであり,人民の生活水準の低下を意味しているのであろう。. 『高校六十条』分析結果 『高校六十条』は, 10章に分けられているが,それを羅列すると第1章「総 則」,第2章「教学工作」,第3章「生産労働」,第4章「研究生培養(養成)工作」 第5章「科学研究工作」,第6章「教師和学生(教師と学生)」,第7章「物質設備 和生活管理(物質設備と生活管理)」第8章「政治思想工作」,第9章「領導制度 和行政組織(指導制度と行政組織)」,第10章「党的組織和党的工作(党の組織 と党の工作)」となる。ここでの分析は主として第1章「総則」に基づいたもので あったが,この全10章が大躍進政策失敗から立ち直るために経済調整期の大学 が必要としていた方針であったと思われる。 そのなかでも,教学に重きを置き,生産労働を二の次に据える’という方針は画 期的なものであった。特に,第3章から第5冊子は学問研究成果向上を保護する ために設備の充実を図ったり,教学時間の確保に注意している箇所が多く存在し 一36一.
(7) ている。これらも,経済調整期独自の教育方針であったといえる。第7章では, 健康管理制度の充実や教師と学生の生活レベルの向上を図った方針などが多くみ られるが,筆者はこれらの方針が,大躍進政策が経済調整期に残した失敗の残骸 を駆逐しようという意図を中核として打ち建てられた方針であったと考えている。 しかし,この『高校六十条』において,大躍進政策を真っ向から否定するような. 方針または記述がないことや,大学に自治的権限を与えず,第8章から第10章 によって思想工作と共産党による管理工作を徹底存続させているのは,やはり政 治的な要因によるものである,すなわち1959年の盧山会議において彰徳懐23が 大躍進政策を非難し,反党分子として逆に批判・罷免されるという事件があり, それが教訓となっていたからであると思われる2・。. 2大学の整備 教育面における調整政策は,大学の整備という改革にもあらわれている。ここ でいう大学の整備とは,重点学校の再設定・それにともなう大学再編成工作など である。. 重点学校(全国重点高等学校)は,共産党中央が大躍進期後期の1959年3月 22日の『関門高等学校中指定一批重点学校的決定(高等学校のなかの重点学校指 定に関する決定)』で指定した大学・専門学院などのことである。この『決定』の なかで,中国共産党は 附子資不足、設備不全、学生来源不多的情況下,高等教育的大発展,可能招 致高等教育質量的降低・5。 (邦訳)教師の不足・設備不全・学生の出所が多くない情況下で,高等教育 の大発展は,高等教育の質量低下を招くことになった。 と,教師の不足・設備の不全などの環境悪化のなかでの高等教育の量的拡大が高 等教育の質量低下を招いたことを認めた。そして, 為了既能発展高等教育,又能防止平均使用力量,招致高等教育質量的普遍降 低,和為了便干将来逐歩提高高等教育的質量起見,杁現有的比較有基礎的高 等学校中,指定少数学校,駄現在野冊采取措置,着重提物教育質量,是必要 的・6。. (邦訳)高等教育が発展するため,また力量を平均的に使用して,高等教育 質量の普遍的低下を防止するため,そして将来高等教育の質量を徐々に向上 させるために,現在ある比較的基礎(的質量)のある高等学校のうち,少数 の学校を指定し,今からすぐに措置をとって,教育の質量を重点的に向上さ せることが,必要なことである。 と,膨れ上がった高等学校・高等教育の普遍的向上ではなく,基礎的質量のある 学校を重点的に向上させることを目して,16の高等学校,つまり北京大学・中国 人民大学・夏旦大学・中国科学技術大学・清華大学・天津大学・上海交通大学・ 西安交通大学・北京工業学院・北京航空学院・北京農業学院・北京医学院を重点 学校に指定して,重点的な教育を施すことを決定したのである。以上が,経済調 整期における重点学校の由来である。 一37一.
(8) この,全国の大学・高等専門学院を普遍的に立て直し向上させるという方針を 採らずに,一部の大学・高等専門学院を特別に発展させるという方針をとる点に, 経済調整期の教育政策における大きな特徴があらわれているのである。 経済調整政策がまさに展開され始めた1960年10月22日共産党中央は『関干 増加全国重点高等学校的決定(全国の重点高等学校を増加することに関する指 示)』を発布した。この『決定』では,この時点で20あった重点高等学校・7に南 京大学・中山大学などさらに44校28を加え,重点高等学校は64校となった。新 たに重点学校に指定された高等学校を検証すると,理工科系,とくに工科系が重 視された大躍進期とは異なり,多種多様な大学・専門単科学校の重点指定が目立 つ。例えば,先だって重点高等学校に指定されていた北京大学や清華大学などと 同様に大学としてふるい歴史を持った南京大学・中山大学・南開大学や,地域の 特質に適応した大連海運学院・武漢水利学院,そして各種専門分野の単科大学で ある唐山鉄道学院・北京導電学院・北京外国語学院などである。 以上のように,これらの高等学校の質量・専門性を重点的に向上させることが 決定されたわけであるが,これらが大躍進政策失敗からの立ち直りと,当時の中 国がすべての面において国際的水準に追いつくために必要最低限発達させなけれ ばならなかった分野であり,対処しなければならなかった現実課題であったこと を露呈しているように思われる。. 以上のように,教育方針・教育改革という二視点から経済調整期の大学教育に ついて検証を行なった。 1961年に発布された『教育部直属高等学校暫行工作条例(略称『高校六十条』)』 には,大学教育の分野において,大躍進期が残した数々の問題を「調整」すると. いう方向で条文が掲げられた。『高校六十条』は10条からなるが,その分析によ って,教師生徒の生活水準の低下や大学機.関の設備不全など,大躍進期が残した 問題点を推測する二とができた。. そして,この条例では画期的な教育方針の方向転換,つまり,教学の質量向上 を最優先課題とする経済調整期特有の方針がみられた。 また,この時期には,重点学校の指定工作が行なわれた。この方策は,大躍進 期に激増した単科大学の整備を意味していたが,全国の大学機関すべてを普遍的 に発展させるのではなく,少数の大学機関を重点的に充実させていくという点に, 経済調整期特有の大学教育を見出すことができた。 本論考では,資料不足のために,経済調整期における大学の教育内容を分析で きず,当初の,経済調整期の大学教育の意義を明確にするという目標に完全には 到達していないが,筆者は,教育内容を明らかにすることを今後の課題として研 究を継続していく所存である。 一参考資料一. 越藻塾主編『中国教育改革』人民教育出版社、1991年 金鉄馬主編『中華人民共和国教育大事記』山東教育幽遠社、1995年 『中国プロレタリア文化大革命資料集成雌第一巻、東方書店、1971年 一38一.
(9) 中国高等学校簡介編集委員会編『中国高等学校簡介』教育科学出版社、1982年 『中国共産党大辞典』中国広播電視出版社、1991年 一訳注一 11995年,12億の人口中,高等教育機関の在籍者は約600万人(『中国教育事業年鑑1995』)。 教師の地位についての記述は,「教師の日」の設定意図推察、筆者の聞き取りに基づく。 21949年の中央人民政府「中国人民政治協商会議共同綱領」(暫定憲法)参照。 3松本「中華人民共和国における教育改革について」第1章参照。 4全国的な施行は,1963年になってからである。 5盟藻蛮主編『中国教育改革』人民教育出版社、1991年、381頁。 6中国における「高等学校」とは,日本語では「大学」及び「高等専門学校」に相当する。 本文では,表現に統一性がないが,中国における「高等専門学校」は,高等教育機関とし て,大学とほぼ同等の機能を備えるものが多く,「高等学校」=「大学機関」という意味で 解釈願いたい。同様に「高級中学」富「高校」,「初級中学」=「中学校」と解釈願いたい。 7前掲「中華人民共和国における教育改革について」第1章参照。 8注51こ同じ。. 91958年9月19日,中共中央・国務院公布の「関子教育工作的指示(教育工作に関する指 示)」参照。. 10前掲書『中国教育改革』382頁。 u前掲書『中国教育改革』384頁。. 12 蝟. 進期1958年12月18日の「関干教育工作的幾介建議」中で,“1ヶ月休暇・2ヶ月. 生産労働・9ヶ月学習“とされたのが「一二九」制である。「一三八」「一四七」も「一・二 九」と同様の配分を行なう。 13 O掲書『中国教育改革』382頁。 14 O掲書『中国教育改革』387頁。 15 O掲書『中国教育改革』286頁の一部を邦訳したもの。. O掲書『中国教育改革』382頁。 171950年代後半,共産党が人民に対して言論の自由(芸術・学術・科学分野に限り,何を言 ってもよい)を呼びかけた方針。二つの百をとって「双百方針」と呼ばれる。 18 w中国プロレタリア文化大革命資料集成』第一巻、東方書店、1971年84頁。 191957年に双百方針(注16参照)が掲げられ,言論規制が緩和されると,共産党への不 満が続出し,毛沢東は不一を述べた知識人を右派として,かれらに対して闘争を行なうよ う指示し,反右派闘争が開始された。 20 O掲書『中国教育改革』382頁。 21前掲書『中国教育改革』383頁。 22前掲書『中国教育改革』383頁。 231956年に中央政治局委員となる。大躍進期においては国防部長。三山会議で解任され, 後任には林彪。文革期に残酷な追害を受けた(『中国共産党大辞典』中国広播電視出版社、 王6. 1993年、769頁:)。. 24毛里和子・国分良成編『原典中国現代史』第一巻、岩波書店、1994年192頁参照。 25盟藻奄主編『中国教育改革』人民教育出版社、1991年、291頁。 26前口書『中国教育改革』291頁。 ■ 27上掲の16の重点学校以外の4校は,現時点では不明。 28その他42の高等学校は,吉林大学・南開大学・武漢大学・四川大学・山東大学・由東 海洋学院・野州大学・大連工学院・東北工学院・南京工学院・華南工学院・華中工学院・ 重慶大学・西北工業大学・合肥工業大学・北京石油学院・北京地質学院・北京郵電学院・ 北京鋼鉄学院・北京口業学院・北京鉄道学院・北京化工学院・唐山鉄道学院・吉林工業大 学・大連海運学院・華東水利学院・華東化工学院・華東紡績工学院・同済大学・武漢水利 電力学院・中南獄冶学院・成都電訊工程学院・北京農業機械化学院・北京林学院・北京中 医学院・中山医学院・北京外国語学院・国際関係学院・北京政法学院・北京対外貿易学院・ 中央音楽学院・北京体育学院である(金鉄寛主編『中華人民共和国教育大事記』山東教育 出版社:、1995年). 一39一.
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