剣道実践者のスポーツ観に関する研究 : アメリカンフットボール実践者との比較から
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(2) 次. 目 序章 研究の目的. 4. 第1章 研究の方法. 6 6. 第1節 研究の枠組み. 7. 第2節. 「スポーツの目的尺度」の検討. 第3節. 「身体活動への参加動機尺度」の検討. 10. 第4節. 「日本的スポーツ観尺度」の構成. 13. 第1項. 13. 調査内容の再検討. 第2項 予備調査. 19. 第3項. 19. 項目分析による妥当性の検討. 第4項 因子分析. 21. 第5項 信頼性の検討. 24 25. 第5節 調査の実施. 25. 第1項 調査対象について. 26. ①両グループの年齢比較. ②活動経験の比較. 26. ③活動頻度の比較. 27. 第2項 調査時期. 27. 第3回忌データの収集. 27. 28. 第1章 結果と考察. 28. 第1節 スポーツの目的 第2節. 身体活動への参加動機. 31. 第3節. 日本的スポーツ観. 34. 第1項. 36. 第1因子「精神主義」. 第2項. 第2因子「恥・義理意識」. 37. 第3項. 第3因子「伝統的形式主義」. 39. 2.
(3) 40. 第4項 第4因子「修行的技術観」. 結章 総括. 42. 文献. 46. 図表一覧. 50. 資料. 51. 謝辞. 54. 3.
(4) 序章. 研究の目的. 「剣道」の精神的特性については,これまで主に歴史的,あるいは哲学的研究において 語られてきた.中林31)’32)は,特に学校教育との関係を強く意識して,「学道としての」. 剣道の意義を明らかにしている(中林32)pp.57−76).中林らに代表されるような歴史,あ. るいは哲学的な研究の多くは,戦技から武芸へと目的・形態を変えていった近世において 確立された, 「禅」や「儒教」の影響を受けた「道の理念」が武道の特性であるとしてい. る.もちろんこれらの理論は史実を踏まえた妥当性のあるものであり,広く一般にも受け 入れられ59),実践あるいは指導上大きな役割を果たしてきたことは大いに認められよう.. しかし,それらの研究の資料である古文書類や啓蒙書類は,過去の実践者の個人的経験に 根ざす感覚的記述レベル46)のものである.従って主観主義に陥りやすいという欠点があり,. 客観性を伴った研究は不足している.その点を中林も「現代の体育や教育における武道と いう視点からの客観的,実証的な研究成果が得られてから現代化論議がなされれば,もっ と実りのあるものになるであろう」述べている(中林32)p.112).. 剣道には伝統的かつ独自の価値観として武士道精神的側面があると仮に主張しても,そ れが現実に武道だけの特性であるといえるかどうかを考えると,大いに疑問である.たと えば,Rホワイティング40)’41)が記述的に述べているように,アメリカの「ベースボール」. に比べて日本の「野球」は「サムライの掟」を守って行われてきたようである.このよう な視点からみると「武士道」や「修行」は,日本的なスポーツの「行い方」の問題であっ. て,武道独自の精神的特性といってよいのかどうかは疑問の残るところである.また,一 例として和田ら55)が「近世後期における剣道のスポーツ的展開」として明らかにしている とおり,ある地域で下級武士や農民によって公開型の野稽古,つまり現在の剣道大会のよ うな行事が行われていたことからも,剣術も日本が欧米文化の影響を色濃く受けるように. なる前のある程度早い時期から,スポーツの近代化と同じ道を独自にたどろうとしていた ことも示唆されている.. 杉山47)は「武道の教育的価値」について,武道において相手を尊重するという態度につ いても,我が国におけるスポーツ全般が相手に対するマナーなどを重視している点をあげ, 「武道による教育では,これ以外の或いはこれ以上のものを武道の固有の内容として明ら. かにする必要がある」と述べている.また,スポーツに対する態度や価値意識といった 4.
(5) 「スポーツ観」は,他の文化観と同様に,時代や社会の変化に応じて形成され,そして変. 容する.武道も例外ではなかろう.剣道においても,スポーツ全般に通じる普遍的精神性 と,武道特有の伝統的独自的精神性が混在していると考えられる.にもかかわらず武道家 特に剣道家にありがちな,「剣道は武道であってスポーツに非ず」58)という,あたかも独 自的精神性のみで成り立っているかのような言説は,スポーツの全体的視野からすれば非 常に偏狭な見方であるといわざるを得ない.. そこで本研究では,剣道を肯定的に捉え長年実践して,その特性をある程度内面化して いると考えられる人々の価値観を,客観的な視点からより具体的に明らかにすることを目 的とする.その際,他のスポーツ種目との「比較」という視点が不可欠になるものと思わ れる.剣道の精神的特性も,実践者の「スポーツ観」という価値観を他の種目と比較する ことによってはじめて,同じ土俵の上でその特殊性と普遍性を客観的に明らかにすること. が可能となるであろう.なかでも,今日スポーツの中心となっている欧米型スポーツ(多 木49)pp.79−106)との比較がより重要であると考えられる.. 以上のような観点から,本研究では「スポニッ観尺度」によるアンケート調査を用いて, 欧米型近代スポーツとの比較を行う.なかでも最も合理主義的であるといわれるアメリカ ンフットボール(以下「アメフト」とする)実践者との比較をとおして,剣道の独自性, あるいはスポーツとしての普遍性を描き出すことを試みる.. なお,両種目には「対人スポーツ」と「集団スポーツ」という技術文化的な違いがある. 本研究はそうした面も含めた,各々のスポーツ文化としてのあり方を基礎づける価値観,. すなわち精神文化性に焦点をあてることによって,剣道の精神的特性を明らかにしょうと するものである.. 5.
(6) 第■章 研究の方法 第1節 研究の枠組み. 剣道の精神的特性を描き出すために,剣道を肯定的に捉え専門的に実践している者のス ポーツ観の全体像を,比較文化論的視点から多面的に把握したい.. そこで本研究では,以下のような枠組みで目的に迫ろうと考える.本研究の枠組みを図 1に示した.. 〈スポーツ観尺度の構成〉. (剣. 〈考察〉. 道. 武 「目的」 (Webb). 〈結果〉. 査〉. <調. 道). .. 普遍性. 類似点. 検討. 「動機」 (Kenyon). 「日本的」 (多々納). → スポーツ観比較. 欧米型 スポーツ. と. .. 相違点. −. と. 特殊性. (アメフト). 図1研究の枠組み まず,スポーツ観に関する先行研究に基づいて三つの尺度を再検討し,武道と欧米型ス ポーツとの比較に妥当なスポーツ観尺度を構成する.構成した尺度を用いたアンケート調 査によって,剣道とアメフトの実践者グループを比較する.その結果事実として抽出され る類似点と相違点から考察して剣道の普遍性と特殊性を明らかにする.. 「スポーツ観尺度の構成」は,以下のような観点に基づいている.見田26)の「行為の理 論」によれば,人間の行為は「原因一結果」の系列すなわち動機的側面と,「目的一手段」 の系列すなわち目的的側面に分類される.動機とは過去からつき動かしている要因であり, 目的とは未来から呼びかけている要因である.動機と目的をたずねることはスポーツに対. する態度と価値意識の中核に迫る手続きであると判断される.その意味で,スポーツ観研 6.
(7) 究のなかからH.Webb13)による「スポーツの目的尺度」とG. Kenyon‘)一8)による「身体活動. への参加動機尺度」を重要な先行研究とした.. また,歴史的にみた場合,日本で生まれ,長い年月を経て形づくられてきた剣道には, 「日本的な価値観」が内包されていると捉えられる.このことは,剣道が「伝統的な行動 の仕方」に価値をおくという前提からして不可欠な見方であろう.多々納ら52)は,「日本 的スポ…一・・ツ観」なる尺度を用いて,一般的な大学生を対象とした国際比較研究を試みてい. る.その調査内容は,これまでの一般通説的な日本人論・日本文化論を主な背景としてお り,本研究の目的に援用できるものと判断した.. また,Webb・Kenyon・多々納らの尺度は主として国際比較研究に使用されてきたもので,. 追試研究も多く,比較文化論的にも有効である.さらに,これらの尺度を再検討し,用い ることによって,本研究の結果をこれまでの研究結果を参考にして考察することもできる. さらには,本研究を単発に終わらせず,今後様々な視野での比較研究を継続させることも 可能となる.. 第2節 「スポーツの目的尺度」の検討. H.Webb13)は,共同体型農業社会から都市型産業化社会への移行に伴って,人々の価値志 向が, 「所属(あるいは帰属)」という社会的基準から「達成」という基準にかわったと. 仮定した.このような近代化あるいは都市型特有の観念を明らかにするのに,スポーツの. 表lWebbの「スポーツの目的尺度」質問項目. ゲームをするのに,あなたが最も重要だと考えるのは何ですか.. 最も重要であると思えるものに“1”と, 最も重要でないものに“3”と答えて下さい.. 自分ができる限り上手にプレイする. (Play). 他のプレイヤーやチームを打ち負かす (Beat) フェアにプレイする. (Fair). 7.
(8) 目的を理念としてどのように捉えるかを実証的に明らかにする研究を行った.その研究は, “skill(「わざ」)”,“equity(「公正」)”,“victory(「勝利」)”の三つを組. み合わせ,人々がそれらをどのように重みづけるかを質問するもので,成長に伴ってプレ イ志向からプロ志向へと向かう傾向にあるのかどうかをみることができるという仮説から,. 公立学校とカトリック教区付属学校の児童生徒に質問をして,年齢,性別,宗派,父親の 職業という四つの観点から比較している.具体的質問内容は表1の通りである.. また,分析する視点として,三つの組み合わせを表2のように点数化し,項目の順列によ って枠組みを構成した.. 表2Webbの分析枠組み プロ志向. プレイ志向. 6. 5. 4. 1. 2. 3. Fair. Fair. Play. Play. Beat. Beat. Play. Beat. Fair. Beat. Fair. Play. Beat. Play. Beat. Fair. Play. Fair. その結果,学年が上がるにつれてプロ志向が高まる傾向にあることなどを明らかにし, 結論として, 「スポーツと経済は価値体系を共有しているだけでなく,スポーツの体験は. 政治や経済にとって有用な基本的な態度の形成に役立っている.この研究から,遊びの世 界への参加がいかに都市型の産業人の育成に役立っているかが判明した3)」と述べた. T.R.Kiddら53)は, Webbの“play fairly, play we11, and play to win”という価値の. 三分法による特徴づけを参考にして,技術水準のステージに応じて,価値志向が変化する という仮説のもとに分析を行った.その際,“play fairly”よりも“have fun”の方が. 初心者 「楽しみ」. 第3ステージ. 第2ステージ. 第1ステージ. .. 中級者 「スキル」. 図2Kiddらの分析枠組み 8. 一一一一一一. r. 上級者 「勝 利」.
(9) 特に“stage1(beginner)”向けに適しているとして, “have fun(楽しみ), play well(スキル),and play to win(勝利)”の三つを使って図2のような枠組みを設. 定して分析した.その結果,仮説のとおり技術水準が高いほど「勝利志向」の傾向が強い ことなどを明らかにした. Y. Yamaguchi57)は“play fairly, play well, and play to win”を日本人にあてはめる. 場合「フェア」より「自己鍛錬」の方が妥当であろうとの仮説から, 「勝利」 「フェア」. 「ベスト」 「自己鍛錬」の4つに順位付けさせることによって特徴付けを試みた.仮説の とおり,日本人は「自己鍛錬」志向が強い傾向にあることなどを明らかにした. 多々納ら(多々納ら52)p.49)は,Kiddらの研究を参考にして, 「勝利」 「フェア」 「ベ. スト」に「楽しみ」を加えて4つの重み付けによって日本人大学生のスポーツ観を分析した,. その結果,日本の大学生は「楽しみ志向」のウエイトが高い傾向にあること,特にそれは 男子より女子,スポーツ実施度の低い者などで顕著であることを明らかにした. 小椋ら21)は, 「勝利志向」を主にして,中学生時と成人してからの比較を行った.その. 結果,成人してから高い技術水準でスポーツを行っている者ほど,中学生の頃から「勝利 志向」が強い傾向にあると結論づけた.また日下ら23)は,「勝利」と「楽しみ」とは対極 にあるとして, 「快楽一勝利主義的スポーツ観」という枠組みを設定した.その結果,. 「勝利主義」的スポーツ観は,競技的スポーツへの参与程度が高い若年層に強く存在する ことを明らかにした.. 永木28)は,多々納らとYamaguchiの研究を参考に,「勝利」 「フェア」 「ベスト」 「自. 己鍛錬」 「楽しみ」という5つからなる重み付けによって,日本とオーストラリアの柔道実. 践者を比較した.その結果,日豪双方の柔道グループには「勝利」という競技の結果より も, 「ベスト」 「自己鍛錬」 「楽しみ」といったプロセスを重視する傾向があり,それが. 柔道の特性といえるかどうかという問題提起をした.. 本研究においては,剣道の特性を実証的に明らかにする一つの側面として,Webbらの 「スポーツの目的尺度」を採用するにあたり,上述の先行研究を参考にしてどのような価 値の重み付けが妥当であるかを検討した.. まず,この尺度から「勝利」という目的は欠くことができない.Webbから始まってその 後の研究に一貫しており,達成価値志向に基ずく「勝利志向」はスポーツの目的尺度の根 幹を成していることが明らかである.つまり,スポーツの特徴として,実践者の専門性が 高まれば高まるほど「勝利志向」になっていくという前提が得られているからである. 9.
(10) 次に,play fairly「フェア」は, KiddらやYamaguchi,多々納らの結果から本研究では 「楽しみ」に換えることにした.ホイジンガ15)やカイヨワ42),チクセントミハイ25)によ. っても明らかに述べられているように,人間の遊びや文化には,その入り口あるいは根底 に「楽しみ」という目的があろう.. 「ベスト」については,“playwell”あるいは“play as well as you can”を 「ベスト」志向と訳すのが最適であるかどうか検討した.さらに剣道の特性に迫ることも. 考え合わせ,Yamaguchiの結果を参考にして,「勝利」という他者あるいは外に向かう価値 の対極として「自己鍛錬」という目的を設定することにした.. このようなことは,武道の世界で,あるいはそのイメージとして,これまで感覚的レベ ルでいわれてきたことではある.しかし,それが今まで実証的に明らかにされたことはな い.剣道という文化の特性を明らかにする上で,理念として価値志向性がどの方向に向か っているのかをみることは重要である.. 検討の末設定し直した質問は表3のとおりである.. 表3本研究で採用した「スポーツの目的尺度」質問内容. あなたがスポーツ活動を行う際最も重要と思うのはどれですか.以下の3つのう ち,重要と思われるものから順に,1∼3と番号をつけてください.. [. ]楽しみのために行う.. (「楽しみ」). [. ]自己を鍛え高めるために行う.. (「自己鍛錬」). [. ]相手や他チームに勝るために行う.. (「勝利」). 第3節. 「身体活動の参加動機尺度」の検討. G. Kenyon“)一8)は,身体活動の諸特徴を理論的考察から,実践者の具体的経験をとおした. 活動動機について調査し,因子分析などの統計的手続きを経てモデル化(図3)した尺度と して構成した.そして,比較文化的研究にこの尺度を用いることによって,その妥当性を 検討した.G. Kenyonの研究はイギリスをはじめ,イギリスで生まれた近代スポーツがアン IO.
(11) グロサクソン系によって直接的に伝播したアメリカ,カナダ,オーストラリアの英語圏4 力国における調査データの分析結果から,身体活動への参加態度の普遍性と多様性を追求 する試みであり,その問題意識と研究方法および成果は日本生まれのスポーツと欧米生ま れのスポーツを比較しようとする本研究においても重要な示唆を含んでいると考える.さ らにこのG. Kenyonの尺度を用いた追試研究の数は,1981年の時点ですでに100近くが報告さ. れている8).その点からも,特に英語圏におけるスポーツへの態度尺度としては一般化さ れたものであると捉えることができる.スポ・・一…ッや身体活動への参加動機を,表4の6次元. からの選択でみることによって,態度を測定するこの尺度はrKenyonの身体活動への態度 尺度(Kenyon’sATPA Scale)」と呼ばれている.. 表4Kenyonによる動機6次元 (ll)Socia1 Experience. 社会的経験として. @Health and Fitnes. 健康と体力. @Pursuit of Vertigo. スリルの経験 動きの美しさ. @Aesthetic Experience. @Catharsis. 緊張解消のため. @Ascetic Experience. 禁欲鍛錬として. 社会的経験. 健康と体力. スリルの追求. 身体活動. 動きの美しさ. 緊張の解消. 禁欲鍛錬. 図3Kenyonの身体活動への態度モデル. わが国では,多々納ら(多々納ら52)p.54),Y. Yamaguchi57)らが日本人のスポーツ観を. 実証的に明らかにする目的で用いた.. 本研究では,特にKenyonも深い理論背景から設定している第六の項目「禁欲鍛錬」に着 11.
(12) 目して,この尺度を用いることにした.. 「禁欲鍛錬志向」の質問項目 Ascetic Experience : 1 would get by far the most satisfaction from games. requiring long and careful preparation and involving stiff competition against a strong opposition.. 原文の意味をできる限り変えないようにして以下のようにした.. 禁欲鍛錬経験としての身体活動・・ 長くて徹底した練習や強い相手に対 する厳しい試合に参加するための活動 具体的な質問項目は表5のようにした.. 表5 本研究で採用した「身体活動への参加動機尺度」の質問項目 下には,人々のスポーツ活動への参加動機として6つのタイプがあげてあります. それぞれを読み,以下の質問にお答え下さい.. 1.社会的経験としての身体活動…. 友人と出会ったり,一緒にいるための活動. 2.健康や体力のための身体活動…. 健康や体力の水準の向上のための活動. 3.スリルの経験のための身体活動・・. 速いスピード,動きの変化,危険なこと等 によるスリルと興奮を得るための活動. 4.動きの美しさのための身体活動・・. 優雅な,芸術的な動きを通して考えや感情 を表現するための活動. リラクゼイションやうっ積した感情の表出. 5.緊張解消のための身体活動・…. のための活動 6.禁欲鍛錬経験としての身体活動・・. 長くて徹底した練習や強い相手に対する厳 しい試合に参加するための活動. ①.6つのタイプのうち,あなたが現在もっとも実施している活動のタイプはどれで. すか.1っだけあげてください.. [. ]. ②.同様に,将来においてもっとも実施してみたい活動のタイプはどれですか.. [. ]. 12.
(13) 第4節. 「日本的スポーツ観尺度」の構成. 第1項 調査内容の再検討 山口56)はスポーツ観分析の様々なアプローチを検討した.それによると,スポーツ観研. 究は,記述的アプローチ,言語学的アプローチ,実証的アプローチ,国際比較アプローチ の四つに分類される.特にこれまでの「日本的」或いは「日本人的」スポーツ観に関する. 研究は,主として記述的アプローチによる研究と,実証的アプローチによる研究とに分け られる.前者では,岸野19),上杉54)らの研究がみられ,それらの研究では勝利主義 修養主義,自虐主義などが日本的スポーツの特徴的な価値観として指摘されている.後者 では,特に多々納ら53)が比較文化論的な視点から,日本的スポーツ観の実像に迫るべく,. 質問紙法による調査研究を実施している.実証的アプローチと国際比較アプローチを組み 合わせた多々納らの研究は,それまでの日本人論および日本的スポーツ論の特徴と問題点 を検討したうえで,広く深い理論的背景から54項目の「日本的スポーツ観尺度」を構成し た.. 日本人の生活意識および価値意識としては,従来多くの特性が指摘され,様々に日本人 の特殊性が主張されている.それらの主要な主張の中から,多々納らは「間人主義」9), 「甘えの心理」2), 「恥・義理意識」27)’43)044),「タテ社会意識」34)の四つを取り上. げている.そしてパーソンズが社会の発展段階や東西社会の特徴を説明する際に用いた 「パターン変数」48)’51)を加え,日本的価値意識5要因を構成した.これら各要因の理論. 背景とした主な日本人論の内容は以下のとおりである.なお,詳細については各々代表的 な文献を文献表に挙げておく.. 濱口恵俊が提唱した,日本人に典型的な文化的価値,対人関係観の概念である.濱口に よれば,欧米人の基本的価値観である「個人主義」と対比して,日本人は相互の間柄を重 視する. 「個人主義」が自己中心的,自己依存的,対人関係手段視であるのに対して, 「間人主義」は相互信頼,相互依存主義,対人関係の本質視という属性をもつ.. 甘えの心理 土居健郎が日本人のパーソナリティーの特質を理解するための鍵概念として提唱した.. 乳児の精神がある程度発達して,母親が自分とは別の存在であることを知覚した後に,そ 13.
(14) の母親を求める心理のことである.自他の分離を否定し,感情的一体化がなされていると いう前提のもとに,他者や集団に依存する欲求や感情の表出様式である.. 恥・義理意識 「恥」とは,何らかの比較基準に基づく劣位の観念であり,またその劣位が周囲の他者 の前に表れた時の感情でもある.ベネディクトは「菊と刀」の中で,欧米人が「罪」とい う内面的制裁を恐れて自己の行動を律するのに対し,日本人は「恥」すなわち他者の非難 や嘲笑を恐れて自己の行動を律する特徴をもつと主張した.. 「義理」とは契約関係への忠誠を意味することもあるが,広義には,他者や集団から好 意や施しを受けた場合,それに相当するものを返さなければならないとする,日常生活規 範のことである.. タテ社会意識 中根知枝が日本社会の特徴として提唱した概念で,日本人は社会編成における疑似血縁 的な系譜関係,上下関係を重視し,それが派閥などの基本になっているとするものである.. 場の共通性によって設定された排他的集団を組織化する原理が,必ず序列意識によって組 織化されている,儀礼的序列関係が重んじられる社会をさす.. パターン変数 T.パーソンズが,社会関係を系統的に説明するために行為の準拠枠から導き出した概念 である.動機指向と価値指向の組み合わせから生じる,次に挙げる五つの二者択一から構 成されている.行為者は客体から即時的な充足を受け取るべきか,何らかの評価的関心を 優位させるべきかという「感情八一感情中立性」,行為者の「私的」な関心に優位を与え るか,社会システムやその下位システムの道徳的基準を優位させるかの「自己(個人)志. 向一集合体志向」,鑑賞的価値を優位とするか認知的価値を優位とするかという「個別主 義一普遍主義」,行為者が客体のもつ資質に焦点を合わせるか,客体の為す遂行からみる. かの「所属本位一業績本位」,客体の全てをあらゆる物事に関連づけて問題とするか,一 定の関心に限って問題にするかという「無限定性一転定性」,以上の五つである.. また,スポーツに対する日本人独特の価値意識としてこれまでに論じられてきた19)’54) 中から, 「精神鍛錬主義」, 「全力主義」, 「勝利主義」, 「形式主義」, 「国家意識」,. 「遊びの罪悪視」, 「手段視」の7要因を取り上げ,日本的スポーツ観として構成した.こ. の54項目を,九州・山口地区の国公私立大学生を対象に調査して,項目の妥当性をみるた 14.
(15) めに,項目分析を行い,その結果,ほとんどの項目に関して妥当性が得られた.因子分析 の結果,日本的スポーツ観を構成する主要な因子として「間柄(人間関係)重視」, 「礼 節」, 「精神鍛錬」, 「情緒的一体感」の四つが抽出され,数量化理論皿類によって,第. 1軸「相互信頼性一自己中心性」,第2軸「普遍主義一個別主義],第3軸「自己依存性一相 互依存性」の三つが,パターン分類の軸として重要であることを明らかにした. 鬼塚38)は,多々納らの項目を取捨選択し,40項目からなる質問に作り替えた.その際 多々納らのいう日本的価値意識5要素に「ウチ主義」をつけ加えて6要因とした.また,日 本的スポーツ観に「アマチュア主義」をつけ加え「遊びの罪悪視」と「手段視」を統合し. て「プレイ重視」へと1要因にまとめるなど修正を施した.この40項目を日本と西ドイツの 大学生を対象に適用し,スポーツ観の国際比較研究を行い,その結果,日本と西ドイツの 比較では次のようなことがいえると述べた. 日本的価値意識では, 「精神鍛錬主義], 「国家主義], 「全力主義], 「形式主義」. などで日本が高い値を示し,両国で顕著な差が認められた.したがってこれらの要因が, 日本人のスポーツ観であると指摘した.反対に大きな差が認められないものとしては, 「ウチ主義], 「アマチュア主義], 「勝利主義」などがあげられた.. 日本的スポーツ観では,「甘えの心理],「恥・義理意識],「タテ社会意識」などで 日本人が高い値を示し,両国の差が顕著にみられた.その他の観点では,両国間で大きな. 差が認められなかった.特に,「パーソンズの枠組み」では,両国間の差がみられていな い.. これらの結果を踏まえて,永木ら29)は一般的な日本人大学生のスポーツ観をみるために,. 項目の見直しを行った.項目の見直しは,多々納ら・鬼塚の結果を再検討し,主要な因子 に関わる項目を中心に取り上げ,新たに必要であると考えられる項目を追加して行った.. 見直しした項目を用いて,一般的日本人大学生のスポーツ観の特徴を主成分分析によって 明らかにした.その結果,日本的スポーツ観を主に「日本人的情緒性」・「スポーツの無 限定性一限定性」・「集団主義一個人主義」・「スポーツの感情性一感情中立性」の価値 観から捉えたと指摘した.さらにこの結果を多々納らの結果と照合して,恥・義理意識等 にみられる日本人的情緒性および,集団主義・間人主義訓にみられるいわゆる日本人的人 間関係観が共通の要因であると認めた. 本研究では,より精選された,しかも妥当性・信頼性の高い質問項目に絞り込み, 「日. 本的スポーツ観尺度」を作成する.そのために,永木ら29)の研究を参考にして多々納らの 15.
(16) 質問項目を取捨選択,修正および追加して34項目の調査項目にした(図4,表6・7). 日本的価値意識では,鬼塚の日本・西ドイツ比較であまり差のみられない「ウチ主義」 を削除した.日本的スポーツ観においても,多々納ら・鬼塚の結果より,「勝利主義」 「アマチュア主義」を削除した.特に, 「勝利主義」についてはWebbの「スポーツの目的. 尺度」で測れるということもあり,これも削除した. 多々納ら. ウチ S塚 アマチュア. 間人. 精神鍛錬. 修行的. テえ. 全力. Z術観. p・義理. 勝利. ^テ社会. 形式. pターン変数. プレイ. d視. 国家. 遊びの罪悪視. 手段視. 図4 「日本的スポーツ観」要因の取捨選択. 表6 「日本的スポーツ観」要因取捨選択の流れ. 多々納ら(1984). 鬼塚(1987). 本研究(1996). 日本的価値意識. ①間人主義. ①間人主義. ①間人主義. ②甘えの心理. ②甘えの心理. ②甘えの心理. ③恥・義理意識. ③恥・義理意識. ③恥・義理意識. ④タテ社会意識. ④タテ社会意識. ④タテ社会意識 16. 本研究.
(17) ⑤パターン変数. ⑤パターン変数. ⑤パターン変数. ⑥ウチ主義. @×. ・新たに⑥ウチ主義 を加えて6要因とし. 鬼塚の日独比較で差の. 見られなかった⑥ウチ 主義を省いた.. ・⑤パターン変数は鬼塚の. た.. 結果では差が認められてい ない.しかし,多々納の結 果では重要な要素とされて いるので残した.. 日本的スポーツ観. ①精神鍛錬主義. ①精神鍛錬主義. ①精神鍛錬主義. ②全力主義. ②全力主義. ②全力主義. B勝利主義. B勝利主義. ④形式主義. ④形式主義. ③形式主義. ⑤国家意識. ⑤国家意識. ④国家意識 × 多々納,鬼塚の結果か ら省略した.価値志向性. ⑥遊びの罪悪視. 尺度の中心.. ⑤プレイ重視. 6プレイ重視 ⑦手段視. ・ 統合した. Fアマチュア主義. × 鬼塚の結果より省略し. ・新たに⑦アマチュ. た.. ア主義をつけ加えた. ⑥修行的技術観 ・ 武道の世界でいわれる「. 百錬自得」等の考え方を表 す要因として,新たにつけ 加えた.. 17.
(18) さらに,様々な日本人論・日本文化論から,スポーツ技術の習得にも日本人独特の価値 観が大きく作用しているに違いないという仮説を設定し,新たに「修行的技術観」なる項 目を追加した.その中味は, 「スポーツ技術がどのように体系づけられているか」という 技術観と, 「スポーツ技術の向上のためには何が大切か」という稽古観をみるための2項目 である.. また,項目の意味内容も理論背景や多々納ら・鬼塚の先行研究の結果から検討を行い, 必要な部分については改善を施した.. このように,項目を取捨選択,修正,追加して新たに34項目の質問項目を作成した.. 表7 「日本的スポーツ観」予備調査34項目 No. 要. 因. 質. 問. 内. 容. 1. 間不霊1(対人関係本質視一手段視). スホ.一ツにおける友人とのつき合いは日常の利害関係がないので楽しい.. 2. 間人蟻2(相互信頼哨己信頼). チームの勝利のためであっても,自分は犠牲になりたくない.. 3. 間人蟻3(相互依存泊己依存). 相互の協力と自己の抑制なしには,チームの団結はない.. 4. 間人畜4(極信綻自己信頼). 自分が努力すれば,コーチも熱心に指導してくれるはずだ.. 5. 間人蟻5(相互信頼一自己顯). 勝敗は,運や伸問の援助ではなく,自分の努力や能力によってきまる.. 6. 甘えの心理1. よく知っている人の場合,一方的に勝つと気がひける.. 7. 甘えの心理2. 感動的なスホ.一ツ場面を見ると,すぐ涙がこぼれる.. 8. 甘えの心理3. スホ.一ツの試合では,弱い方を応援したくなる.. 9. 甘えの心理4. 大事な試合で負けたとき,誰かにとりすがって泣く気持ちはよくわかる.. 恥・翻購1. 他のチームやクラブから誘われても,これまで世話になった人のことを考えれば,. 10. ヒにそれを変わるべきではない.. 11. 恥・義理翻2. 全力を尽くして負けても,やはり指導してくれた人に申し訳なく思うだろう.. 12. 恥・灘鰍3. スホ.一ツに負けると,がっくりきたり,ゆううつになるほうだ.. 13. 恥・翻意識4. 技術が下手な時は,あまり人前で練習したくない.. 14. タテ社会意識1. 自分のチームのメンハ“一は,「自分の仲間や家族のような」気持ちがする.. 15. タテ社会意識2. 技術が同じなら,年上の人を選手とすべきである.. 16. タテ社会意識3. コーチは技術的にすぐれた人より,人間的にすぐれた人がいい.. 17. タテ社会意識4. チームのコーチやキャブ.テンの命令には,メンハ“一は全面的に従うべきだ.. 18. ハ.. ^ーン変数(感気憾情中立性). 審判が自分の不利に判定しても,あまりしつこくアヒ.一ルすべきではない.. 18.
(19) 19. ハ.. ^ーン変数(鯛志向一臥志向). チームの目標より,自分自身の目標を優先させてはいけない.. 20. ハ.. ^ーン変数(個別議一普遍蟻). 審判の判定が,審判と同じ国や地域の選手に有利なようになることはしかたのないことだ.. 21. ハ.. ^ーン変数(所属本位一面本位). 大試合のための選手の決定においては,練習熱心な者より上手な者を優先させるべきである.. 22. ハ.. ^ーン変数(鰍定性一限定性). 試合に負けると,自分自身のすべてがダメであるという気になる.. 23. 精神鱗蟻1. スホ.一ツにおける苦しい場面をのりこえる最大の要素は体力や技術ではなく,精神的な力である.. 24. 出訴錬蟻8. スホ.一ツで得た体験は,必ず日常生活にも役立つだろう.. 25. プレイ重視1. 他人が働いているときにスホ.一ッをすると何となくうしろめたい.. 26. プレ種視2. スホ.一ツの目的は健康・体力づくりよりも,活動自体を楽しむことにある.. 27. 形式蟻1. スホ.一ツの上達のためには,そのスホ.一ッの伝統的な礼儀作法を行うことが大切だ. 28. 形式蟻2. テニスの試合は,やはりテニスウエアを着てフ。レイすべきだ.. 29. 国感謝. オリンヒ.ックでの国歌演奏や国旗掲揚は中止すべきだ.. 30. 国家意識2. 自分の国の選手が金メダルをとると国民としての誇りを感じる.. 31. 全力蟻1. 鮒てもペストを尽くせばよい.. 32. 全力蟻2. 勝っても全力を尽くさなくては無意味である.. 33. 修行的技術観1. 技術の向上のためには,繰り返し基礎練習を行うことが重要である.. 34. 修行的技術観2. 基礎技術を十分に身につけてから試合をすべきだ.. 第2項 予備調査 この34項目を用いて予備調査を行った.予備調査は21種目にわたる大学生スポーツ愛好 者(「愛好者」とは,全国大会出場経験者を除き,週3日程度スポーツ活動に参加する,技 術レベルでいえば「中間層」をさす.以後同様である.)集団(有効回答者数368名,男子 172名,女子196名)を対象に,1995年10月・11月に行った.. 第3項 項目分析による妥当性の検討 予備調査の得点結果から,個人の全項目に対する合計点を算出し得点の高い者25%を上位 群,得点の低い者25%を下位群とし,上位下位分析(Good−Poor分析)による項目分析を行 った35).その結果,34項目中27項目において上位下位群にp〈0.Olの有意差が認められた (表8).そこで,有意差が認められた27項目を弁別力のある項目として採択した.. 19.
(20) 表8. G−P分析(上位下位分析)による項目分析の結果(N=368) t値. 項目の背景と内容 1.スホ.一ツにおける友人とのつき合いは日常の利害関係がないので楽しい.. ***. 4. 03. 2.チームの勝利のためであっても,自分は犠牲になりたくない.. ***. 3. 88. 3.相互の協力と自分の抑制なしには,チームの団結はない.. ***. 6. 19. 4.自分が努力すればコーチも熱心に指導してくれるはずだ.. ***. 7. 02. *. O. 60. 6,よく知っている人の場合,一・方的に勝つと気がひける.. ***. 4. 20. 7.感動的なスホ.一ツ場面を見ると,すぐ涙がこぼれる.. ***. 6. 60. **. 2. 94. 5.勝敗は,運や仲間の援助ではなく,自分の努力や能力で決まる.. 8.スホ.一ツの試合では,弱い方を応援したくなる.. 9.大事な試合で負けたとき,誰かにとりすがって泣く気持ちはよくわかる.. *** 10. 45. 10.他のチームやクラブから誘われても,これまで世話になった人のことを考えれば簡単にそれを変わるべきではない.. ***. 7. 34. 11.全力を尽くして負けても,やはり指導してくれた人に申し訳なく思うだろう.. ***. 7. 66. 12.スホ.一ツに負けると,がっくりきたり,ゆううつになるほうだ.. ***. 7. 01. 13.技術が下手なときは,あまり人前で練習したくない.. ***. 7. 01. 14.自分のチームのメンハ“一は,「自分の仲間や家族のような」気持ちがする.. ***. 7. 38. 15.技術が同じなら,年上の人を選手とすべきだ.. ***. 3. 69. 16.コーチは技術的にすぐれた人より,人間的にすぐれた人がいい.. ***. 6. 06. 17.チームのコーチやキャブ。テンの命令には,メンバーは全面的に従うべきだ.. ***. 5. 65. 18.審判が自分の不利に判定しても,あまりしつこくアピールすべきではない.. 19.チームの目標より,自分の目標を優先させてはいけない.. O. 62. ***. 3. 31. 20.審判の判定がr審判と同じ国や地域の選手に有利なようになることはしかたのないことだ.. o. oo. 21.大試合のための選手の決定においては,練習熱心な者より上手な者を優先させるべきだ.. 1. 49. 22.試合に負けると自分自身の全てがダメであるという気になる.. ***. 5. 09. 23.スホ.一ツにおける苦しい場面を乗り越える最大の要素(i,体力や技術ではなく精神的な力である.. ***. 6. 71. 24.スポーツで得た精神力は,必ず日常生活にも役立つだろう,. ***. 8. 30. 25.他人が働いているときにスホ.一ツをすると何となく後ろめたい.. o. oo. 26.スホ.一品目目的は健康・体力づくりよりも,活動自体を楽しむことにある.. ***. 4. 30. 27.スホ.一ツの上達のためには,そのスホ.一ッの伝統的な礼儀作法を行うことが大切だ.. ***. 6. 51. 28.テニスの試合は,やはりテニスウェアを着てフ.レイすべきだ.. ***. 6. 12. 一20一.
(21) 29.オリンピックでの国歌演奏や国旗掲揚は中止すべきだ.. * 2. 08. 30.自分の国の選手が金メダルをとると,国民としての誇りを感じる.. *** 8. 20. 31.負けてもペストを尽くせばよい.. *** 5. 38. 32.勝っても全力を尽くさなくては無意味である.. *** 7. 93. 33.技術の向上のためには,繰り返し基礎練習を行うことが重要である.. *** 6. 12. 34.基礎技術を十分身につけてから試合をすべきだ.. *** 5. 09. ***P〈0.001 **P〈0.01 *P〈0.05 一有意差なし. 第4項 因子分析 弁別力のある項目として認められた27項目について,次に因子分析工7)を行った.この尺 度において理論的に依拠した多々納らの研究に対応させて, 「日本的スポーツ観」の構造. 化をはかるために,あらかじめ因子数を規定する確認的方法を用いた.すなわち,因子軸 を4軸に固定し,主因子解を行い,固有値1.000以上を満足する因子に対しNomal Varimax法 による直交回転を施した.分析の結果,第4因子までの累積寄与率は21.9%と低い.このこ. とはそれだけ「日本的スポーツ観」が多様化していることを示唆するものであると捉えら れる(表9).先行研究である多々納らも因子分析適用の結果,主要4因子(人間関係重視,. 礼節,精神鍛錬,情緒的一体感の各因子)に焦点を当てており,これを参考として解釈を 進める.なお因子の解釈及びその命名は,原則として因子負荷量が0.400以上の項目を取り 上げ,その項目内容を中心に行った. 第1因子においては,以下の6項目が0.400以上の因子負荷量を示した.. Q19.精神鍛錬2「スポーツで得た精神力は,必ず日常生活にも役立っだろう.」 Q12.タテ社会意識1「自分のチームのメンバーは,『自分の仲間や家族のような』 気がする.」. Q6.甘えの心理2「感動的なスポーツ場面を見ると,すぐに涙がこぼれる.」 Q23.国家意識2「自分の国の選手が金メダルをとると,国民としての誇りを感じる.」. Q18.精神鍛錬1「スポーツにおける苦しい場面を乗り越える最大の要素は,体力や 技術ではなく精神的な力である.」. Q25.全力主義2「勝っても全力を尽くさなくては無意味である.」. 21.
(22) 表9 因子分析の結果(N・368) F1. 因子の解釈・命名. F2. F3. F4. 「精神主義」因子. Q24.精神力は役立つ. 一.541. Q14.仲間や家族のような. 一.523. Q6.涙がこぼれる. ㌦488. Q30.国民としての誇り. ㌦468. Q23.最大の要素は精神的な. 一.452. Q32.全力を尽くさなくては無意味. ∴426. 「恥・義理意識」因子 Q12.負けるとがっくり. .530. QIl.指導してくれた人に. .500. Q22.負けると全てがダメ. .476. Q10.他のチームから誘われても. .409. 「伝統的形式主義」因子 Q17.命令には従うべき. 一.448. Q27.伝統的な礼儀作法を. 一.411. Q15.年上を選手とすべき. 「403. 「修行的技術士」因子. Q34.基礎技術を身につけてから試合. .557. Q33.繰り返し基礎練習. .510. 固. 有. 値. 寄 与 率(%) 累積寄与率(%). 2,332. 1,533. 8.6. 5.7. 1,031 3.8 21.. 1,016 3.8. 9. これらの項目は,精神力こそ決定的要因であるという考え方や,勝敗という二者択一に 縛られることなく過程の努力を重視しようとする意識,日本人に特有と言われる組織内に おけるインフォーマルかつ疑似血縁的な系譜関係の意識や感情的一体化,自国チームへの 偏愛といった意識的経験からくるともいえる身体的なものにまで影響を及ぼすような感受 的状態を表している.以上のことから総合的に判断して,この因子を「精神主義」と解釈, 22.
(23) 命名した.. 第2因子においては,以下の4項目が0.400以上の因子負荷量を示した.. Q11.恥・義理意識3「スポーツに負けると,がっくりきたり,ゆううつになるほう だ.」. QlO.恥・義理意識2「全力を尽くして負けても,やはり指導してくれた人に申し訳 なく思うだろう.」. Q17.パターン変数(無限定性一限定性) 「試合に負けると,自分自身の全てがダメ であるという気になる.」. Q9.恥・義理意識1「他のチームやクラブから誘われても,これまで世話になった 人のことを考えれば,簡単にそれを変わるべきではない.」. これらの項目は,敗北という結果における劣位感情や,チームへの所属において生じる 準拠枠としての伝統的観念形象を重んじるか否か問いかけるものである.従ってこの因子 を「恥・義理意識」と解釈,命名した.. 第3因子においては,以下の3項目が0.400以上の因子負荷量を示した.. Q15.タテ社会意識4「チームのコーチやキャプテンの命令には,メンバーは全面的 に従うべきだ.」. Q21.形式主義1「スポーツの上達のためには,そのスポーツの伝統的な礼儀作法を 行うことが大切だ.」. Q13.タテ社会意識2「技術が同じなら,年上の人を選手とすべきである.」. これらの項目は,日本社会の集団内におけるインフォーマルな関係を貫く原理としての 序列意識あるいは儀礼的な関係を重んじるか否かを示している.従ってこの因子を「伝統 的形式主義」と解釈,命名した.. 第4因子においては,以下の2項目が0.400以上の因子負荷量を示した.. Q27.修行的技術観2「基礎技術を十分に身につけてから試合をすべきだ.」. Q26.修行的技術観1「技術の向上のためには,繰り返し基礎練習を行うことが大切 23.
(24) だ.」. これらの項目は, 「型の文化」とか「忘我の境地」といわれるような,日本のスポーツ. に伝統的と言われてきた技術習得への考え方を示している.従ってこの因子を「修行的技 術観」と解釈,命名した.. 以上のように因子分析によって, 「精神主義」・「恥・義理意識」・「伝統的形式主義」 ・「修行的技術観」の4因子,15項目が「日本的スポーツ観」として浮かび上がった.. 第5項 信頼性の検討 因子分析の結果因子負荷量0.400以上として浮かび上がった15項目について,Spearman− Brownの公式を用いた折半法による信頼性係数を算出した14).その結果折半法による信頼 性係数はr=0.737が得られた,ラッチとストッダードの見解16)を指標としてみると,集団. について測定する場合,信頼性係数は0.70以上必要である.従って,この4因子,15項目は 「日本的スポーツ観」を特徴づける尺度として,十分な信頼性が認められたと判断し,採 択した(表10).. 表10本調査に採択した「日本的スポーツ観尺度」15項目. 因子1精神主義 1.スポーツで得た体験は,必ず日常生活でも役立つだろう.. 「精神鍛錬2」. 2.自分のチームのメンバーは「自分の仲間や家族のような」気持ちがする. 「タテ社会意識1」. 3.感動的なスポーツ場面を見ると,すぐ涙がこぼれる.. 「甘えの心理2」. 4.自分の国の選手が金メダルをとると,国民としての誇りを感じる. 「国家意識2」. 5.スポーツにおける苦しい場面を乗り越える最大の要素は,体力や技術でなく 精神的な力である.. 「精神鍛錬1」. 6.勝っても全力を尽くさなくては無意味である.. 「全力主義2」. 因子2恥・義理意識 7.スポーツに負けると,がっくりきたり,ゆううつになるほうだ. 一 24 一.
(25) 「恥・義理意識3」 8.全力を尽くして負けても,やはり指導してくれた人に申し訳なく思うだろう.. 「恥・義理意識2」 9.試合に負けると,自分自身の全てがダメであるという気になる.. 「パターン変数(無限定性一瓢定性)」 10.他のチームやクラブから誘われても,これまで世話になった人のことを考えれ ば,簡単にそれを変わるべきではない.. 「恥・義理意識1」. 因子3伝統的形式主義 11.チームのコーチやキャプテンの命令には,メンバー…は全面的に従うべきだ.. 「タテ社会意識4」. 12.スポーツの上達のためには,そのスポーツの伝統的な礼儀作法を行うことが 大切だ.. 「形式主義1」. 13.技術が同じなら,年上の人を選手とすべきである.. 「タテ社会意識2」. 因子4修行的技術観 14.基礎技術を十分に身につけてから試合をすべきだ.. 「修行的技術観2」. 15.技術の向上のためには,繰り返し基礎練習を行うことが重要である.. 「修行的技術観1」. 以上のように検討した後, 「スポーツの目的」・「身体活動への参加動機」・「日本的 スポーツ観」という三つの尺度からなる調査票(資料)を作成し,調査を実施した.. 第5節 調査の実施. 第1項 調査対象について 剣道実践者グループ(以下「剣道グループ」とする)は,全日本学生選手権出場の関東 地区A大学,B大学,及び関西地区のC大学のそれぞれ剣道部員,男子,年齢層は18∼25才,. 154名である.本研究では,剣道を肯定的に捉えて長年実践し,技術レベルの高い上記3大 学の学生を対象とした.. アメリカンフットボール実践者グループ(以下「アメフトグループ」とする)は,関西 一 25 一.
(26) 学生1部リーグのD大学アメリカンフットボール実践者,男子,97名,年齢層は18∼23才で ある.剣道グループと同様に性別,年齢層,技術レベルを考慮して対象を選んだ.. ①両グループの年齢の比較 両グループの平均年齢及び標準偏差を表11に示した.両グループの年齢構成に,有意な 差は認められない.. 表11両グループの年齢比較 剣道グループ 平均 20.5. アメフトグループ. 標準偏差 1.29. t値. 平均. 0.09. 20.4. 標準偏差 1.13. 有意差なし. ②活動経験の比較 剣道グループは中学93.3%,高校99.3%と,ほとんどの者が長い間同じ種目の活動を経験 している.アメフトグループは中学5.2%,高校55.7%と,大学に入ってからアメフトを選ん だ者が半数を占めている(図5).ただし,アメフトグループの87.6%が中学で,95.9%が高. 校で,何らかのスポーツ部活動・クラブの経験者である.両グループの種目における経験 年数には差がある.しかし,アメフトグループも半数以上は高校からの経験者であり,ア メフトの経験ある集団と解釈した.. 活動経験 100%. 93. 3%. 99. 3%. 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10%. 國剣道 ■アメフト. o%. 高校. 中学. 図5両グループの活動経験 26.
(27) ③活動頻度の比較 剣道グループの92.2%,アメフトグループの96.9%が「週4日以上」活動している.両グ. ループとも高い技術レベルの集団だけに,専門的に活動していることが明らかである(図 6) .. 活動頻度 100% 90% 80% 70%. □月2∼3日. 60%. 口週1日. 50%. 40%. ■週2∼3日. 30%. ■週4日以上. 20% 10% o%. 剣道. アメフト. 図6 両グループの活動頻度. 第2項 調査時期 1996年2月から6月.. 第3項 データの収集 各大学各クラブの部長,監督,. コーチに依頼して調査を実施した.. 27.
(28) 第皿章 結果と考察 各々の尺度で得られた結果を数値で示し,統計的な有意差などから各グループの類似点 と相違点を抽出する.そこから剣道の精神的な特性を考察する.. 第1節 スポーツの目的. ここでは,各グループにおける各項目を第一位にランクづけた者の人数の割合を,%で表 すことによって比較する.図7に示すように,剣道グループは「自己鍛錬志向」74.1%,次. 80%. ■剣道■アメフト. 70% 蒙、. 60% 50%. 懸 40% 28. 3%. 躍27. 2%. 30% 20. 6%. 20%. 懇. 10%. 盟. o%. 楽しみ. 自己鍛錬. 図7 「目的尺度」でみた両グループの結果. 勝利 X2=64. 08 p〈O. OOI. いで「楽しみ志向」20.6%, 「勝利志向」5.3%となった. 「自己鍛錬志向」が高く, 「勝利. 志向」が極端に低い.アメフトグループは「勝利志向」47.4%, 「楽しみ志向」28.3%,. 「自己鍛錬志向」27.2%という結果なった. 「勝利志向」が突出しているのが特徴的である.. 28.
(29) 両グループの結果を比較すると,X2=64.08を示し,0.1%水準の有意差が認められた.. アメフトグループにおいては,スポーツに求める理念として「楽しみ」や「自己鍛錬」 よりも「勝利」を目的とする者が多いことが明らかになった.永木ら28)が行った大学生の 一般的スポーツ愛好者集団を対象とした五分法尺度(「勝利」・「フェア」・「ベスト」 ・「楽しみ」・「自己鍛錬」)の結果では,「楽しみ」を選択した者が50%を超えて最も多 く, 「勝利」・「自己鍛錬」はともに10%に満たないものとなっており,同じ日本人大学生. でありながら大きな違いがある.「勝利志向」を1位とする者が多い傾向は,高いレベルの スポーツ実践者ほど「勝利志向」の傾向が強いとするWebb13),Kiddら53)のアメリカにお ける一連の先行研究の結果と一致するものとみることができる.. Webbの研究は,近代スポーツが社会の近代化に伴う達成価値志向を反映しているとする ものであり,その発想は例えば,マックス・ヴェーバーが「営利の最も自由な地域である アメリカ合衆国では,営利活動は宗教的・倫理的な意味を取り去られていて,今では純粋. な競争の感情に結びつく傾向があり,その結果,スポーツの性格をおびることさえ稀では ない(マックス・ヴェーバー24)p.366)」と述べていることに源泉をみることができる.. また,Kiddらの研究はWebbに依拠しつつ,欧米的なスポーツの特性として,経験の度合 いが高まるほど「勝利志向性」が強くなることを前提的なモデルとしたものである.その. ようなことから,技術レベルの高いアメフトグループの「勝利志向」という結果は,欧米 型近代スポーツとしての特性を指し示すものであると考えられる.小田切はアメフトの精 神的特性を,その成立・発展の歴史から概観し, 「機能主義的合理性志向(小田切37)p.1. 82)」として特徴づけている.つまり,徹底した合理主義に基づく達成価値志向がアメフ トの精神的特性であり,日本人が行う場合にもその価値観が少なからず導入されていると みることができる.. 欧米流の達成価値志向を示したとみられるアメフトの結果に比べて,剣道グループの 「勝利志向」は5.3%と極端に低く,また「自己鍛錬志向」が74.1%と極端に高い結果となっ. ている.先述のとおり永木らの結果では,一般的大学生は「勝利」・「自己鍛錬」ともに 低い.このことと比較すると,剣道グループが極端に「自己鍛錬志向」であることは武道 (剣道)の特性を示す重要な点であると捉えられる.. 大学生として高い技術レベルにある剣道実践者グループが,勝利を目指していないと考 えるのは適切でないと思われる.それにも関わらず剣道グループにおいて「勝利志向」が 極端に低いことの背景を考える場合, 「自己鍛錬志向」が極端に高いことと関連づければ 29.
(30) 理解しやすいように思われる.. 日本で生まれ,今日のように形づくられてきた剣道には,他者との相対的な競争よりも, 自己を高めるという絶対的な価値を志向させるような価値観を,以下のようなところがら 読みとることができる.例えば,剣道の競技としての「不明確」なあり方(大塚39)p.5). である.勝敗決定のシステムすなわち剣道では勝敗を決定する「一本」の判定基準が曖昧 で,客観性に乏しく,見ていてこれほどわかりにくいものはないといわれている.その意 味では剣道はスポーツとして近代化しているとはいい難く, 「閉じられたスポーツ45)」の 性格を色濃く残している.. さらに,剣道の「勝敗」に関連する価値観を探っていくと, 「勝敗の超越」という思想 に行き当たる. 「勝敗の超越」という価値観は,沢庵が「太阿記」の冒頭で「兵法者は勝. 負を争わず50)」と述べているのをはじめとして,多くの伝書類や啓蒙書類において語られ ており,示現流と二天一流を比較考察した研究10)においても, 「勝負を超越した普遍的精. 神」こそ剣道の文化的価値を高めるものであることは明らかにされている.また,勝敗を 前提として相手と技を競う,闘争の術としての剣を「畜生心の剣術(中林32)p.82)」とす る伝統的な考え方も影響を与えているように思われる. 「自性本然の剣とは,相手との問. に勝ちとか負けとかいうことを超越した境地で,剣をもって,自分に生来備わっている天 与の本性を明らかにするための工夫とする.そうすれば,出面はおのずからその中に備わ って」おり(中林31)p.208),このことを勝敗を超越した絶対的な境地への開眼といって. いる.さらに,「戦わずして勝つことが兵法」だとする,至高の勝敗観ともいえる境地が あることもよく知られているところである(中林32)p.223−224).. このように勝敗の超越ということについて触れている伝書等が多く見られるのは,勝敗 ということを誰もが重要視していたからであることは明らかである.真剣で勝負していた. 中世から近世にかけての兵法・剣術においては,負けることはすなわち死ぬことであった からである.そしてその真剣勝負の時代においても,勝敗は実力や技前(あるいは「業前」.. 読みは「わざまえ」.意味は「うでまえ.てなみ.技量.」)だけでなく,偶然などの実 力以外の要因に左右されることも多かったと考えられる.だからこそ負けて死ぬことを恐 れるあまり自分の実力・技前を発揮できない,つまり勝敗にとらわれた状態に陥ることを 戒める意味で,勝敗を超越しようとする精神的境地が生み出されているのであろう.この ような価値観は「生死の超越」,さらには「自他同根(あるいは自他一如)」という独特 の思想にまで及んでいる.これらの思想・境地を端的に,しかも普遍的に述べたのが「無 30.
(31) の境地」であろう.禅,能楽,茶道等,道をめざすものでこの境地について触れていない 方が珍しく,剣の場合も, 「無念無想」,「無我」, 「無心」, 「無刀」, 「無構え」な. どがその奥義を表す言葉として使われている.何事を行うにも,何ものにもとらわれず,. 常に自分に天与の本性をよりょく発揮できる境地に到達した人が,道の名人・達人といわ れるゆえんであろう.. 以上のように,剣道グループにおいて「勝利志向」が低く「自己鍛錬志向」が極端に高 いという結果の背景には,勝敗はもちろん重要であるが,それはあくまでも修練のために あるのであって,他者との比較における価値判断よりも自己を鍛え高めていく過程そのも のに絶対的な価値をおくという,武道独自の理念としての精神文化的特性があると捉えら れる.. 自己鍛錬. 勝利. 剣道. 高い技術レベル. アメフト. 楽しみ. 低い技術レベル. 図8 「目的尺度」の結果からみた武道と近代スポーツの特性. 図8に示すとおり,理念としてスポーツにどのような目的を求めるかを剣道(武道)とア メフト(欧米型スポーツ)において比較した結果から,両者は「自己鍛錬一勝利」という 対極の視座でみることができると考える.. 第2節 身体活動への参加動機. 各項目を選択した者の人数を%で表して比較し,考察する.図9に示すとおり, 「現在の 31.
(32) 参加動機」における剣道グループとアメフトグループを比較した結果,X2ニ43.06,0.1%水. 準の有意差が認められた.また,図10に示すとおり「将来の参加動機」における両グルー プを比較した結果,X2=16.90,5%水準の有意差が認められた.. 70%. ● 60%. 團剣道. ■アメフト. 468%. 50%. 翌R綴…離ll. 40%. 27.3%. 30%. 20.8% 20%. ● 10%. ?f. 7.3%無 @ 3・3 1.バ1.0%. 8.4% 募萎簗. O駕. 社会的 健康体力 スリル 美しさ 緊張解消禁欲鍛錬 図9現在の参加動機. X2=43. 06 p〈O. OOI. 40X. 30X. 20%. 10X. o%. 社会的 健康体力 スリル 美しさ 緊張解消禁欲鍛錬 図10 将来の参加動機. X2 == 16. 90 p〈O. 05. 32.
(33) 図9をみると明らかなとおり, 「現在の動機」としては両グループともに「禁欲鍛錬」経. 験を選択した者が目立って多い,そこで同尺度を利用した大学生スポーツ愛好者の参加動 機を参考にしてみると(永木ら29)p. 79−80),愛好者グループ男子の結果は「社会的経験」. や「健康体力」を選択している者の割合が高い.そのことと比較すると,両グループに共 通して多くの者が「禁欲鍛錬」を動機として選択しているという類似点は,これが種目と しての特性というよりも,技術レベルの高い大学生の特性と考えるのが妥当であろう.. また,両グループとも現在の動機としては「禁欲鍛錬」を半数前後の者が選択している のに対して,将来の動機としては「禁欲鍛錬」が極端に少なく, 「健康・体力」や「社会. 的経験」が多くなっている.将来の活動において「禁欲鍛錬」的動機から離れる傾向は, スポーツ愛好者グループ(永木ら29)p.79−80)や柔道愛好者グループ30)などの結果にみる. ように,日本の大学生に共通するものであると捉えられる.このことから大学生の時は 「禁欲鍛錬」を動機として厳しい練習や試合などの活動を行う集団も含めて,大学生全般. が将来つまり社会人になってからはそのような動機による厳しい活動をさけようとする傾 向があり,日本の大学生に特徴的な「短期燃焼型(永木ら29)p.80)」スポーツ観の明確な. 現れであると捉えられる.日本のスポーツは学校運動部活動によって支えられており,そ れらは学校単位で行っているが故に中学校・高校・大学と各ステージごとに一旦途切れる ような仕組みになっている.「3年生あるいは4画面にとっては最後の大会」とか「この試 合が終わったら引退」といったことが各ステージ毎にいわれており,このようなスポーツ の仕組みが,大学生の「短期燃焼型」スポーツ観に影響を与えていると考えられる.. 「現在の動機」において剣道グループは「禁欲鍛錬」に次いで「健康・体力」をかなり の者(27.3%)が選択している。一方アメフトグループについては「健康体力」が低い(7.. 3%).このことを先の「目的尺度」のところでみた価値観に照らしていうと,剣道は自己. を中心とした鍛錬志向であり,アメフトはチームの勝利のために全てを優先するという差 に関わっているとも捉えられる.また,アメフトの場合,実際ケガが多く,「チームのた め」に勝利を優先していることからも,「健康体力」が低い(7.3%).アメフトグループ において, 「禁欲鍛錬」に次いで選択している者の割合が高いのは「スリル」 (20.8%)で. ある.アメフトグループは,実際の活動においてもより高いレベルのゲームにおけるスリ ルと,それに耐えうる長く厳しい練習やトレv・一・一霞ングを優先しているとみることができる.. 両グループにおいて,高い技術レベルで長く厳しい練習やトレーニングに明け暮れている 33.
(34) という活動の共通点はあっても,その中で経験している中身には,自己を中心とした「手 段的行い方」とゲーム中心の「目的的行い方」という違いがあるとみられる. 将来の活動について両グループの相違点をみると,剣道グループにおいては, 「禁欲鍛 錬」を選んでいる割合が減少した分だけ他の五つの動機に増加がみられ, 「社会的経験」 と「動きの美しさ」の増加は若干目立つものの, 「禁欲鍛錬」以外の五つだけをみた順序. に変化はない.つまり剣道グループには,活動に対する一貫した態度が読みとれる.特に 「動きの美しさ」については現在8.4%から将来18.8%と増加しており, 「一本にはロマンチ. シズム…. 自分の美意識を表現するものである(大塚39)p,149)」ともいわれているよ. うな,美意識に基づいた「芸道的」態度が読みとれる.一方,アメフトグループでは「健 康体力」 (33.3%)・「社会的経験」 (26.0%)が目立って増えており, 「緊張の解?削に. も増加が認められ,現在と将来の動機的変化は大きい.つまり,アメフトグループの現在 の活動動機は剣道グループよりも一時的なものである傾向がみられ,学生時代のスポーツ に対する「限定的」な態度がうかがえる.. 第3節 日本的スポーツ観. 剣道グループおよびアメフトグループにおける各項目の5段階評定を点数化(5点=非常 に賛成,4点=少し賛成,3点=どちらともいえない,2点=少し反対,1点=全く反対)し,. 予備調査の結果抽出された因子ごとにまとめて比較した.各因子ごとの得点平均値と差の 検定結果を,表12と図11に示した.また,表13・14は,各グループ内における因子間の得 点の差を検定した結果である.. 表12 「日本的スポーツ観」因子ごとの比較 剣道グループ 平均. 標準偏差. アメフトグループ t値. 平均. 標準偏差. 因子1. 精神主義. 4.1. q55. 1.77. 4.0. 0.56. 因子2. 恥・義理意識. 3.3. 0.56. ***3.60. 3.6. 0.70. 因子3. 伝統的形式主義. 3.1. 0.56. ***5.34. 2.7. 0.67. 因子4. 修行的技術観. 4.4. 0.60. 0.49. 4.3. 0.66 ***p〈O. OOI. 34.
(35) 図ll 「日本的スポーツ観」両グループ各因子の平均値. 表13剣道グループにおける各因子間の平均値の差の検定結果 各因子. 精神主義. 精神主義 一. 恥・義理意識 ***14.6. 恥・義理意識. ***14.6. 伝統的形式主義. ***20.2. ***3.7. 修行的技術観. ***3.8. ***15。9. 一. 伝統的形式主義. 修行的技術観. ***20.2. ***3.8. ***3。7. ***15.9. 一 ***22.3. ***22.3. 一. 表14 アメフトグループにおける各因子間の平均値の差の検定結果 各因子 精神主義. 精神主義 一. 恥・義理意識 ***6.1. 恥・義理意識. ***6.1. 伝統的形式主義. ***16.2. ***ll.2. 修行的技術観. ***4.5. ***8.3. 一. 伝統的形式主義. 修行的技術観. ***16.2. ***4.5. ***ll.2. ***8.3. 一 ***17.3. ***17.3. 一. ※枠内の数値はt値を示す.***p〈0.001. 35.
(36) 第1項 第1因子「精神主義」 図11に示したように因子の平均は剣道グループ4.1,アメフトグループ4.0であった.こ. の因子において両グループの間に統計的な有意差は認められない(表12).また,他の因 子と比較すると両グループとも肯定率は2番目に高い(表13・14).この因子は,「スポー ツで得た精神力は,必ず日常生活にも役立つだろう」, 「自分のチームのメンバーは自分. の仲間や家族のような気持ちがする」,「感動的なスポーツ場面を見ると,すぐ涙がこぼ れる」,「自分の国の選手が金メダルをとると,国民としての誇りを感じる」,「スポー ツにおける苦しい場面を乗り越える最大の要素は,体力や技術でなく,精神的な力である」, 「勝っても全力を尽くさなくては無意味である」という精神力こそ決定的要因であるとす る精神修養的考え方や,精神的情緒性を表す項目で構成されている.. 剣道において語られる精神修養主義的な考え方は,中世にその源流をみることができる. 「平家物語」や「太平記」等に「兵の道」 「弓矢の道」 「武者の習」という表現がみられ,. すでに鎌倉時代において単なる戦闘の技術にとどまらない,今日でいうところの「武士道 精神」つまり道徳・倫理的な精神性としての意味あいを含ませる考え方があったことは歴 史的にも認められている(中林32)p.107).そして近世においては武道という言葉はすな. わち武士道を意味して用いられるようになり,運動技術やその習練を指す言葉としては 「武芸・武術・武辺」等が用いられている.そして現代では, 「武道の精神性はもっと広. い視野で,時代や社会を見,日常の生活や行動全体の中で考え,取り扱われるべきである (中林32)p.205)」,あるいは「剣道を修練するにあたり,精神性の追求なくして『真の. 剣道』の存続はあり得ない12)」とする考え方が主張されている.このような考え方をまと. めれば,武士道精神における忠,礼儀,勇気,克己等の徳目思想を背景に,スポーツを通 してそれらの修得が可能であるとする人間形成観であり,我が国における伝統的な体育ス. ポーツ的価値観であると捉えられる.従って,剣道グループの結果が「精神主義」因子に おいて2番目に高い肯定率であったことは納得できる.. また,精神的情緒性の面から考えれば,「自分のチームのメンバーは,自分の仲間や家 族のような気持ちがする」の項目に顕著なように,スポーツを通して仲間などとのあいだ に情緒的な一体感を求める傾向があり,そこには「甘え」的意識がうかがわれる.彼らは いわばゲマインシャフト的な関係を求め,集団における日本人的な情緒性を重視している とみられる.. 36.
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