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コンピテンシー・ベース・カリキュラムのための歴史的リテラシーの指導と評価 : 「歴史家のように思考する」フレームワークを手がかりにして

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(1)

兵庫教育大学 研究紀要

コ ン ビ テ ン シ ー

Instruction

Framework.

1

第49巻 ・ 2016年 9 月

ベ ー ス

「歴史家のよ

and

Curriculum : A

、,'

Case

pp,109 118

カ リ キュ ラ ムのための歴史的 リ テラ シーの指導 と 評価

に思考す る」

Assessment

Study

of

フ レ ームワ ー ク を手 がか り に し て 一

Historical

of Using

L iteracy for the Competency Based

the 'Thinking Like a Historian'

*

HARADA Tomohito

In current Japan, the change of National Curriculum is planned from contents base to competency base. But it is necessary to define the literacy of subject which connects the general competency with the subj ect contents. I targeted to historical lit- eracy and aimed at to clear the concept and the method of instruction and assessment of historical li teracy. So I paid m y at- tention to the “Thinking Like a Historian” framework developed by researchers of Wisconsin Historical Society in US and analyzed a concept, instruction and assessment of historical literacy using that framework. As a result of this study, it is re- vealed that 1 ) historical literacy is caught on both sides of contents and methods, 2 ) the categories of the historical inquiry is caught in cause and effect, change and continuity, fum ing points, using the past, and through their eyes, 3 ) historical proc- ess is consisted of the fol lowing three phases, that is “question - evidence - interpretation”, 4 ) the process of curriculum de- velopment of historical li teracy formation is as fol lows: selecti ng a theme which takes an overview of history - setting questions exploring a unit topic -planning a lesson with historical inquiry,

historical l iteracy formation.

5 ) authentic learning is important to promote the

キ ーワ ー ド : コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ カ リ キ ュ ラ ム, 歴 史 的 リ テ ラ シ ー ,

K ey words : competency based curriculum, historical literacy, Thinking Like

問題の所在 と 研究目的

第 7 期中教審教育課程企画特別部会の 『論点 整理』 (2015年 8 月公 表) やそ の後の議論 を 踏ま え る と , 次 の 教育課程改訂では コ ンテ ンツ ・ ベ ースか ら コ ン ビ テ ン シー ・ ベ ースへ と カ リ キ ユラ ム一教育目標, 教育内容, 教材, 教授 = 学習活動, 評価 を含む広義の概念 ' ) 大転換 を余儀 な く さ れる こ と が予想 さ れる。 ーの性 格 は 無論, の時間的制約や学校現場の混乱回避等 を考え れば, ス テ イ ツク な改革 に ま で至 ら ない か も し れない し , 改訂 ド ラ コ ン ピ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ 力 リ キ ユ ラ ムの危 険 性 を 指 摘 す る 声が一部 に あ る こ と も 承知 し て い る が 2), 先進諸国の教 育改革の動向 を見 る 限 り 3 ) , 中長期的 に に進 む こ と は避け ら れない だ ろ う 。 ム原理の転換は, 一見す る と 長 ら く こ う 日本 も その方向 し た 力 リ キ ユ ラ 学校現場に おけ る各 科の指導や評価 を支え て き た教科教育学の役割の減少 を 感 じ さ せ る が, 実際はそ の逆で , の果 たすべ き 役割は重 く な つて く は以下の三つで あ る。 第一に, 知識基盤社会におけ る む し ろ教科教育学研究 る と 考え る。 そ の理由 コ は誰 も が認 め る も のの, そ の系 統的 て につい ては不明 な点 が多 い こ と で ン ピ テ ン シ ーの意義 な育成 と 評価の手立 あ る。 第二 に , コ ン * 兵庫 教育大学大学院教育実践高度化専攻小 学校教員 養成特別 コ ース TL H フ レ ー ムワ ー ク a Historian テ ン ツ ・ ベ ー ス な 日 を ス な 置か ざ る を得 ら 歴史学 ・ な い と し て 地理学等の教科内容学に一 も l コ ン ビ テ ン シ ー ら 教育学が リ ー ド す るのは当 然 だか ら で あ る。 一般教育学では各科の指導や評価 を具体的に論 じ べ ・

-だが, る の は 困難であ り , 教科教育学がそ れを担う し かない。 第三に, 上記の 『論点整理』 に も 示 さ れる通 り , 学習指導要領の 基本的性格 一学校教育法に基づ き 国が定め る教育課程の 基準 一 に変更が ない と す れば, 学習指導要領や解説はあ く り お ま で大綱の規定に留 ま り , 具体的 な指導 と 評価等の力 キ こ い 状で ユラ ムは学校現場に委 ね ら れる と 考え る か ら で あ る。 こ で想起すべきは1998 (1999) 年の教育課程改訂に て, 鳴 り 物入 り で登場 し た総合的 な学習の時間の現 あ る。 中教 審は日 本版 コ ン ビ テ ン シ ー と も い う べ き 「生き る力」 い等の大綱 も 公表 し た 学校に任せ 習が展開 さ 体の月要が引 の育成 を言區い , 学習指導要領は趣旨 と ね ら を示 し 併せて様々 な学習活動の展開事例集 , た。 れた け た 具体的 な指導計画の作成や評価は個々の その結果, 当初は多 く の学校で活発 な学 が, 学力低下論の高ま り

-

時間数の減少等 一 こ と 学校 を 除き 次第 に形骸化 し て い つた 4)

を受け文科省自 も あり , 一部の こ の こ と は, 理 念 を説 く だけ で は教育改革は な し 得 ない こ と を示唆 し て 教授 平成28年 4 月 4 日受理

(2)

い る。 予算措置等の環境整備や教員 の養成 見直 し は と も か く , コ ン ビ テ ン シー ・ ベ ー ラ ム開発 の理論 と 方法 に つい て , い く 必 要 が あ る 5)。 その意味 で , 教科毎に 課題に焦点化 し て考察 を進めた 教科教育学が コ ン ピ テ ン シ 研 修制度の ス の カ リ キ ユ 明 ら かに し て 教科教育学の当面す る 課題は き わめ て大 き い と い え る だ ろ う 。 本稿 で は, c ー ・ ベ ー ス の を考察 す る 際, 留 意 し なけ れば な ら な 一 つは, 石井英真 の指摘す る よ う に, い点 こ の カ リ キ ュ ラ ム は二 つ あ る。 「 思 考 ス キ ル の 接的指導」 を強調 し て 「活動主義や形式主義」 に陥 ら 直 な い こ と で あ る 6 )。 二つは, 学習指導要領 を一旦離 れて, 教科固有のリ テ ラ シー (内容知 と 方法知) 7) を検討す る こ と で あ る。 米 ・ 英等の近年 の動向が示唆す る よ う に, 国語 と 数学 (理科) を別 に し て, 教科固有の リ テ ラ シー を踏ま え た資質 ・ 能力 の育成 を説得的 に説明 で き なけ れ ば, そ の教科の地位は確実 に低下す る か ら で あ る 8)。 つ ま り , コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス の 教 科 カ リ キ ュ ラ ム を 開 発 す る た め に も , ま た コ ン ビ テ ン シ ー重視 の教育動向 の 中で, 社会科の生き残 り を図 る ために も , こ こ で教科固 有の リ テ ラ シ ー を明確化 し , その指導 と 評価のあ り 方 を モ デル化す る こ と が不可欠 なので あ る。 な お , 教 科固有 の リ テ ラ シー 分野 を超え た 「 社会科 リ テ ラ シ と い っ た場合, 各科目や ー」 を想定す る見方 と , 「 歴史的 リ テ ラ シ ー」 , 「 地理的 リ テ ラ シー」 , 「 政治的 リ テ ラ シー」 等 , 社会科の内容 を構成す る諸領域 ・ 諸学問 の リ テ ラ シ ー ( い わ ゆる D L : Disciplinary Literacy) 集合 を想定す る見方の二 つがあ る。 前者の例 と し て, の 米 国の D. オ ー ク ル ら の著 し た 『社会科 にお け る リ テ ラ シ ー の形成』 9) を見 てみよ う 。 内容構成は表 1 の通り であ る。 第 1 部は社会科教師 を対象に, 生徒の社会科学習の基本 的 ス キルや市民 と し て の参加 ス キルの指導方法 を , ま た 第 2 部は生徒 を対象 に社会科 な ら で はのテ ク ス ト 読解方 略 を示 し てい る。 表 1 『社会科 に おけ る リ テ ラ シ ー の形成』 の内容 < 第 1 部 > 1 . 社会科のテ ク ス ト (教科書や資料) を読む 2 . 社会科授業に積極的 に参加 さ せ る 3 . 生従に語彙 ( 教科書等の語句) を教え る 4 . 民主的参加 と し ての教室編成 5 . 市民 と し ての社会参加 を促す < 第 2 部 > 6 . 教科書 を読み解 く 方田各 7 . 一次資料 ・ 二次資料 を読み解 く 方田各 8 . 新聞 ・ 雑誌 を読み解 く 方略 次 に 後者 の例 と し て , 米 国の J.D. ノ ー ク ス の著 し た 『生徒 の歴史的 リ テ ラ シ ーの形 成』 '°) を 見 て み よ う 。 内 容構成は表 2 の通 り で あ る。 第 1 部では教師に向け て歴

表 2

『生従の歴史的 リ テ ラ シ ー の形成』 の内容 < 第 1 部 : 歴史的 リ テ ラ シー > 1 . 様々 な歴 史的 リ テ ラ シーの形成 2 . 歴 史的 リ テ ラ シーの定義 3 . 歴史的 リ テ ラ シーの教授 4 . 複数のテ ク ス ト を用い る上で の適切 な認識上のス タ ン ス < 第 2 部 : 方略 と 証拠への流暢 さ > 5 . 歴史家の発見的手法に よ る一次資料活用 6 . 古代の器物に よ る推論の支援 7 . 視覚資料に よ る メ タ 的概念理解の育成 8 . 歴 史小説 を通 じ た歴 史的エ ンパ シーの育成 9 . 教科書や二次資料への健全な懐疑論の育成 10. 視聴覚資料に よ る還元主義的思考の回避 11. 多数の証拠に よ る議論の形成 < 第 3 部 : それ ら を全 て ま と め る と > 12. 形態の異な る資料 を用い た資料相互の批判的分析 13. 歴史的 リ テ ラ シー形成のパ タ ー ンの発見 史的 リ テ ラ シ ー と その指導法 を概説 し , 第 2 部で異 な る 資料 ご と に具体的 な活用法 を示す。 そ し て, 第 3 部で そ れ ら を総合す る視点 と 方法 を明 ら かにす る。 構成は表 1 と 類似す るが, 内容は歴史家の史料批判 に倣 っ た歴史学 的 な思考技能や探究法か ら な る こ と が読 み取 れよ う 。 そ れぞれに一長一短があ る け れ ど も , 本稿 で は基本的 に 後者 の立 場 を と る 。 そ の最 た る 理由 は , 近年 デ イ シ ブ リ ナ リ ・ リ テ ラ シーが米 国で重視 さ れる背景に つい て中 村洋樹 が言及す る よ う に '') , 知識基盤社会 だか ら こ そ単 な る ル ー テ イ ン化 さ れた技 能 で は な く , 高度 な内 容知 と 方法知 か ら な る リ テ ラ シーが必要 だ と 考え るか ら で あ る。 ま た, 現に高校におい て地歴科 と 公民科の下で諸科日 の 学習 が な さ れてい る以上, そ れ ら 諸科日 に固有の リ テ ラ シー を明 ら かに で き なけ れば, 社会科 (地理歴史科 ・ 公 民科) の存在意義 を他教科に認め さ せ るのは難 し い か ら で あ る 。 む ろ ん, 学間的 に見 て体系化 さ れ て い れば よ い と い う わけ で は ない。 そ の点 で , 表 2 に示 し た ノ ー ク ス の歴 史的 リ テ ラ シ ー論 を そ の ま ま 生 かす にはやや無 理が あ る。 歴史学習 を通 し て歴史的 リ テ ラ シー を獲得 さ せ る と し て も , 最終的に育成すべ き は歴史家的資質 では な く 市民的資質 だか ら で あ る。 そ こ で, こ こ ではウイ ス コ ンシ ン州の歴史学者や初等 ・ 中等学校の熟練社会科 (歴史) 教師がチ ームを組んで開 発 し た 「 歴 史 家 の よ う に 思 考 す る Thinking Like a Historian」 教授 ・ 学習 フ レ ー ムワ ー ク (略称 TLH フ レ ー ム ワ ー ク ) '2) に着日 す る 。 本 フ レ ー ムワ ー ク と そ れに基 づ く 指導 ・ 評価の事例 を分析す る こ と で , 市民形成につ なが る社会科固有の歴史的 リ テ ラ シーの概念 と 形成原理 を明 ら かに す るのが本研 究 の目的 で あ る '3)。

(3)

コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ カ リ キ ュ ラ ムのた め の歴 史的 リ テ ラ シ ーの指導 と 評価

2

TLH フ レ ームワ ーク に おけ る歴史的 リ テ ラ シ ー

の概念

( 1 ) TLH フ レ ームワ ー ク の成立 本 フ レ ー ムワ ー ク 開発 の中心 と な っ た のは , ク シ ン大学 ホ ワイ ト ウ キ ・ マ ン デ ル で あ る。 ウ オー タ ー校歴史学部に所属す イ る 彼女は2003年, 連邦教育省の 史教育補助金 (Teaching American History Grant)

る プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ムの デ ィ レ ク タ ー と し て , ウ イ ン シ ン歴史学会の協力 共著者 の ボ ビー ・ マ ロ ー ン 学会 の学 校教育部 門の デ ィ レ ク タ ー で あ る の下 「 生徒 の歴 史的 リ テ ラ シ ーの改 善 を 図 る た め に , 歴 ス コ ニ ツ 米国 に よ ス コ は同 に1 史家 が過去の出来事 を考察す る時に用い る学問的 な分析 ・ 探 究の方法 を導入す る」 '3) こ と を提案 し た。 そ し て 3 年間 の プロ ジ ェ ク ト 研 究 の成果 と し て結実 し たのが TLH フ レ ー ム ワ ー ク で あ る 。 マ ン デルに よ れば, や文 な姿 た の 細 明) が何者で あ り わ れわ れ どこ か に な っ た のか を 学 ぶに は ます ます複雑化す る社会 は 々 , 深い 思考力 と 読解力 で 歴 に あ (自己 を含む社会 ・ 国家 ら 来 て , なぜ現在の よ 史教育が欠かせない。 あ っ て市民 に求 め ら れ り , そ れ を担保す る の と し た日付や出来事の習得では な く , 歴史的証拠 分析 ・ 評価 し , 理解につ なげ る思考の様式 で あ り , そ が学問的方法に基づ く 歴史教育の意義に他 な ら ない。 う ま る は を れ つ ま り が, す る 、, し_ 践 あ に を こ の 生徒自身 が 「 歴史す る “do” history」 '4) 授業 こ そ れか ら の人生 に 資 す る リ テ ラ シ ーの形成 を 可能 に だ と い う の考 え は, 0 先 に言及 し た中村の研 究に おけ る歴史実 ( doing history) と し て の歴史学習 の論 理 そ の も の で り , ま た コ ン ピ テ 当 て 嵌 め て い 重視 すべ き だ く や ン シ ーの よ う な汎 用 的 ス キ ル を り 方よ り 教科の本質的な内容と と し て , 「教科す る (do a subject) 教科 活動

」 授

業 (知識 ・ 技能が実生活で生か さ れてい る場面や, その 領域の専 門家が知 を探究 す る過程 を追体験 し , 「教科の 本質」 を と も に深め合 う 授業) '5) を提唱 し た石井の考え と も 通底 し てい よ う 。 そ の意味 で , 歴史的 リ テ ラ シー を 基 盤 に し た TLH フ レ ー ムワ ー ク は注日 に値 す る と い っ て よ い o ( 2 ) 歴史的 リ テ ラ シ ーの構造 TLH フ レ ー ムワ ー ク の 中 核 を な す 歴 史的 リ テ ラ シ ー の構造 を示 す図 と し て, マ ンデル ら が提示す るのが図 1 で あ る。 大 き く 内部のパネ ル と そ れ を と り ま く 外部のバ ナ ーか ら な っ てお り , 内部 には歴史家 が過去 を理解す る 際に用い る見方考え方の枠組み, ない し探究のカ テ ゴリ ー (historical categories of inquiry) が, 外 部 には歴史固有 の学 び方 と し て の歴 史的 プロ セ ス (historical process) が 配置 さ れて い る 。 つ ま り TLH フ レ ー ムワ ー ク で は,

(4)

歴史的 リ テ ラ シーの概念 を歴史的探究の カ テ ゴ リ ー ( = 内容知) と 歴史的 プロ セス ( = 方法知) の二つで捉え て い る の で あ る。 マ ン デル ら に よ れば, 生従 に歴史的 思考 や歴史理解 を促 そ う と す るので あ れば, 教師 と 生従の双 方が歴史的 リ テ ラ シーの要素 を知 つて お く 必要があ り , 視覚に訴え る こ の図はその点 で も有効 だ と い う 。 無論, こ れ ら の内容知 と 方法知は相互に関連付 け ら れて初め て 奏功 す る のはい う ま で も ない。 ( 3 ) 内容知 と し ての歴史的探究の カ テ ゴ リ ー 歴史家が過去 を探究 し 理解す る枠組み と し て, 次の 5 つが挙 げ ら れて い る。 簡潔 に 説明 し よ う 。

①原因 と 結果 (Cause and Effect)

全 ての出来事は, 短期の明確な因果か, 長期の無意識 の因果かは と も か く , 原因 と 結果の関係で 説明す る こ と がで き , 以下の間いが活用 さ れる。 ・ 事件の原因は何か : 誰 (何) が変化 を生 じ さ せたか。 誰が変化 を支持 し , 誰が支持 し なか っ たか。 ・ 結果 は ど う な っ た か : ど れが意図 さ れた結果 で ど れが 意図 さ れなか っ た結果か。 事件は人 々の生活や地域社 会, 世界に どんな影響 を与 え たか。

②変化 と 継続性 (Change and Continuity)

歴史の年代記は変化に焦点化 さ れる こ と が多 く , 必ず し も 時間 を均等 に区 分す る も ので は ない。 何か変 わり 何 が変 わ ら ないかに着目す るの も , 歴史の重要な見方で あ り , 次の問いが活用 さ れる。 ・ 変化 し た も のは何 か ・ 何が変 わ ら ずに残 っ たか : こ の変化で利益 を得 たのは 誰か, そ れはなぜか。 ま た こ の変化で利益 を得 ら れな か っ たのは誰か, そ れは なぜか。 ③転換点 ( Turning Points) 変化 の中 には劇的 に個人の生活や社会の発展 を新 た な 方向 一可能性 を開 く 場合 も あ れば, 閉 ざす場合 も あ る 一 に転換 さ せ る も のが あ る。 そ れは当 時 の人々 に認識 さ れ た り , 後に な っ て 初めて認識 さ れた り す る が, 次 の よ う な問い が活用 さ れる。 ・ 過去の決断や行為 がいかに未来の選択 に影響 し たか : あ る 決断や行為 がい かに未来の人 々の選択 を狭めた り 制限 し た り し た か。 ま た , い かに人々の生活に大 き な 変化 を も た ら し たか。

④過去の活用 (Using the Past)

過去 か ら 教訓 を引 き 出す こ と は, 歴史 を現在の理解や 未来の決断に役立 て る重要 な方法 で あ る。 他方 で , 過去 の責任あ る活用 には重大 な難 し さ も 伴 う 。 何が活用 で き 何が活用 で き ないのか峻別す る こ と が不可欠で あ り , 次 の問 い が考え ら れ る。 ・ 過去は どのよ う に現在の理解 に役立 つか : 過去はい か に現在 と 類似 し , ま た異 な る か。 われわれは過去 か 何 を学ぶこ と がで き る か。 ら

⑤過去の人々の見方 (Through Their Eyes) '7)

過去 の人々は現在のわれわれ と は異 な る信念や価値 観, 希望 や恐怖 を抱 い てい た。 過去 の人 々の思考 や行為 を理 解す る には, 彼 ら の見方に依拠す る必要があ る。 つま り , 過去 を異文化 と し て捉え る こ と が重要で あ り , 次の問い が考え ら れる。 ・ 過去 の人 々は どの よ う に 世界 を 見 て い た か : 彼 ら の世 界 観は どの よ う に 選択 や行為 に影響 し た か。 彼 ら に と っ て成功 す る た めに は ど ん な価値 , 技 能, 知 識が必要 だ っ た か。 以 上 か ら 明 ら かに な る のは, 内容知 の捉え 方 に お け る TLH フ レ ー ムワ ー ク の特質 で あ る 。 通常 , 歴史 の内容 知 と いえば個別的知識か歴史上の概念 (用語) を指す場 合が多 い。 そ れゆえ , 常 に精選が大 き な課題 に な るが'8), こ こ では歴史的知識 を相互に関連付け た り , 過去 を理解 し 現代 に活用 し た り す る枠組み と し て位置付け てい る。 マ ン デルに よ れば, こ れ ら の枠 組 み を継続的 に活用 す る こ と には二つの教育的意味 があ る と い う 。 一つは, 歴史 学習 に よ り 習得 し た知識 を一定の文 脈で総合す る こ と が 可能 に な る点 で あ る。 二 つ目は, こ れ ら の枠組みが過去 に ア プ ロ ー チ す る た めの共通言語 に な る点 で あ る 。 つ ま り , 対象は変わ っ て も , 過去に つい て研 究 ・ 学習す る際 の思考 のパ タ ー ン を習得 し て お け ば, 生 涯 に わ た り そ れ を生かす こ と がで き る と い う わけ で あ る。 ( 4 ) 方法知 と し ての歴史的 プロ セ ス 歴史家が過去に ア プロ ーチす る過程, す なわち 「 われ わ れが どの よ う に し て過去 を知 る の か」 に つ い て は , 以 下のよ う に く 問い→証拠→解釈 > と い う 3 段階 を設定 し て い る。 1 . 過去 に問い かけ る (Questions) 歴史 と は過去 その も ので は な く , 過去の研究で あ る。 こ の段階で は次 の 3 点の確認が重要で あ る。 ①歴史学習 は過去 に つい て間 う こ と か ら始 ま る。 ②過去 への間いは探究の カ テ ゴ リ ーのいず れかに類型化 さ れる。 ③過去への問い には質的 な差異があ り , よ り 意味のあ る のは, 過去の人々の経験 も 現代人 と 同 じ く 複雑で, ニ ー ズや考え の異 な る人 ・ 集団 ・ 制度の相互作用に よ り 出 事が生 じ た こ と を認識 し得 る問い で あ る。 2 . 資料 を集め証拠的価値 を評価す る (Evidence) 来 歴史への問い に答え る には情報が必要で あ る。 そ れに は手 紙, 日記, 新聞 , 演説, 条約, 写真, イ ン タ ビ ュ ー な どの一次資料の他に, 書物, 教科書, ド キ ュ メ ン タ リ , 講義, 地図 な どの二次資料があ るが, そ れら の証拠 と し ての価値 を評価す る段階で は, 次の 4 点 に留意す る こ と が必要 に な る。 ①証拠 を構成す るのは事実で あ る。 ②誰が, 何のために, 誰 に向け て資料 を創作 し たのか, 創作者の事件 に対 す る 見方や考え方の特色 を考慮 に入れねばな ら ない。 ③十分

(5)

コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ カ リ キ ュ ラ ムのた め の歴 史的 リ テ ラ シ ーの指導 と 評価 な解答 を得 る ためには立場の異 な る複数の資料が必要で あ る。 ④資料は研 究上の問 い に答 え る と と も に , 時代 の 文 脈 に関す る情報 を提供す る も ので なけ れば な ら ない。 3 . 証拠 に基づ い て解釈 を導 く ( Interpretation) 証拠か ら 結論 を導 く のが解釈 で あ り , 歴史実践の最後 の最 も重要 な段階 を なす。 こ こ では, 以下の 4 点への留 意が求 め ら れ る。 ①問 い が明示 さ れて い る か ど う かは さ ておき , 二次資料は全 て歴史解釈の産物で あ る。 ②過去 は変 え ら れない が歴史 は変 わ り う る。 新 た な問 い , 新 た な資料, 証拠の総合如何によ っ て新たな解釈が生ま れる。 ③歴史解釈は等質 ではな く 善 し悪 し があ る。 偏見や主張 と , 証拠に基づ く 解釈は区別 さ れねばな ら ない。 ④歴史 解釈の質は問いの質, 活用す る資料の広 さ と 深 さ , 資料 の分析 ・ 総合 の程度 に依存す る。 こ れ ら の 3 段 階 は , 一般的 な探究の過程 と 別 にす れば, 歴史学習 き こ と を示唆 し て い よ く 間い→資料→問題解決> と い

じ で あ り , 歴史の解釈的性格 う を ま た探究の過程 と し て組織すべ 0

3

歴史的 リ テ ラ シ ー 形成の原理 と 方法

( 1 ) カ リ キ ュ ラ ム開発の論理 前述のよ う な内容知 ・ 方法知か ら な る歴史的 リ テ ラ シー は日 々の授 業 を通 し て 漸進的 に形成 し てい く し か ない。 だ が, ら いl 要があ 不可能 そ さ る の た め に は日 々の授 業 の ね ら い を常 に単 元 の ね ら に は よ り 大 き な コ ー ス の目標 と 結 びつけ る必 0 そ う で あ る 。 す 三段 階の カ リ で なけ れば系 統的 な リ テ ラ シ ーの形成は TLH フ レ ー ムワ ー ク で は次 の図 2 に示 キ ュ ラ ム開発の方法 を提案 し てい る。 ま ず コ ース計画で 最 も 重要 なのは, 何 を教え るべ き か を教師が認識す る こ と で あ る。 そ れは南北戦争 を教え る と か古代 ロ ーマ 史 を 教え る と い う の と は異 な り , 「 なぜ そ れが重 要 なのか」 に答 え る も ので なけ れば な ら ない。 歴 史 的 に 意義 の あ る 内 容 は , よ り 大 き な 歴 史 像 (Big Picture) に つ な が る も ので あ り 歴史的 テ ーマ と い っ て も よ い。 そ れは限 ら れた時間や空間 を超え て, ま た学級 を 授業計画 : ト ピ ッ ク 探究のための内容 と 方法 0 理解 目標の確定 0 授業内容 (歴 史的探究 カ テ ゴ リ ーの活用) 0 授業過程 (歴史的 プ ロ セ スの活用) 0 授業効果 (評価)

図 2

歴史的 リ テ ラ シ ー 形成の カ リ キ ュ ラ ム開発 超え て生従の歴史の見方 を構成す る も ので あ る。 な お , テ ーマ の 選択 に お い ては , 州 の歴史 ス タ ン ダー ド 等 を参 照す る こ と が推奨 さ れるが, 高校の 「近代米国史」 コ ー スの テ ーマ例 と し て, 参加民主主義の成長, 女性の役割, 米国におけ る宗教, イ ノ リ テ イ の役割 , 土地利用 と 環境への影響, 等 が示 さ れ て い る 次に, 単元計画では単元の と の関連づ け が重視 さ れ る。 「革新主義の時代」 , コ ースの ト ピ ッ ク 民族的マ l9) 0 と コ ー ス の テ ー マ 例 え ば単 元 の ト ピ ッ ク が テ ーマ が 「女性の役割」 の 場合 , こ の単元の探究 テ ーマ は 「 ジ ェ ン ダーに関す る社 会の態度は人々の行為 や選択 に影響 し た」 と な り , 単元 を貫 く 発問には, ①革新主義時代 を通 じ て女性や女性組 織は どの よ う に社会改革 に取 り 組み, どのよ う な結果 を も た ら し たか (因果 に関す る問い ) , ② なぜ白 人女性は 1920年代に参政権 を獲得 し たか 関す 授 る間い) の二つが設定 さ れ (因果や変化 と 継続性に る 。 業 計 画 で は , こ れ ら の問 い に対 応 す る 理解日 標 ( Little Picture) と し て, 次 の二 つが示 さ れる。 ①女性 と 女性組織は, 工業化に伴 う 問題 と し て何 を解決すべき か を提示 し , 改革 を促進す る上で重要な役割 を果た し た。 ②女性は参政権獲得に対 す る激 し い抵抗 に長期間耐え て 運動 し , そ れを勝 ち取 っ た。 次に, 具体的 な授業内容 を 選択す る。 例え ば原因 と 結果の枠組みに関連す る内容は, 以下の通 り で あ る。 ジェ ー ン ・ ア ダムズや多 く の女性運動家は結婚 し なかっ た。 代 わ り に女性 のた めの家庭 ・ 活動の場 と し て セ ツ ル メ ン ト ・ ハ ウ ス を創設 し た。 こ の活動 を通 し て女性 運動家は大学教育 を受け, 女性, 子 ど も , 民主主義や 正義への関心 を高め, よ り 安全で健康な地域社会や職 場作 り のた めに働い た。 ま た , 示す と , 変化 と 継続性の枠組みに関連す る内容の一部 を 次 の よ う に な る。 政治の新 しい役割 を ど う す るか, 政治に誰が参加す る か と い う 問題は, 市民権 を新たに ど う 定義す る かにか か っ てお り , それには白人女性の処遇 も含ま れた。 授業 過程 に つい ては, 歴史的 プロ セ ス を生 かす た めに w Hw ワ ー ク シー ト の活用 を推奨す る。

図 3 What-How-Why ワークシー ト

(6)

神話化 し て き たか。 4 . 主要な理解日 標 工場生産は人々の生活 を農業経済か ら 都市 を中心 と す る賃金労働 に変化 さ せ た こ と 。 ・ 児童労働 を難 し く 労働者がス ト ラ イ 5 . 実践の概要 授業 では, ト ピ ッ 19世紀初頭のニ ュ ー 未成年労働者の記録 さ せた織物工場の条件。 キ を敢行 し た理由。 ク イ ﹃ 践の対象生徒は13~ 14歳であ り , 当時の女工 と あ る だけ 文字面で に共感可能で あ る と 考え たので あ る。 はわか っ た と し て も , 当時 の工場労働の実態 を 理解 で き たか ど う か判然 と し ない ため ミ ュ レ ー シ 実践者は, ョ ン を取 り 入 れ る こ と に し 以前同 じ ト ピ ッ ク に関 し て流れ作業でのキ ャ ン デ イ 製造の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を実施 し た こ と があ り , 一人の生徒が卒業後 も授業で作製 し た キ ャ ンデ イ ボ ッ ク ス を大事 に し てい る と 知 り , その有効性 に自信 を深めて い た。 だが, 19世紀初頭 と い う 時代背景 を考え る と 真正 さ (authentic) の点 で 疑間 を感 じ た た め, 今回 は当時 の 女工 と 同 じ作業 を扱 う こ と に し た。 そ こ で , シ ミ ュ レ ー シ ョ ンの可能性 を吟味す る こ と か ら 始めた。 シ ミ ュ レー シ ョ ン目 :i」

l

・ 生産物 : 衣料品 ・ 高度 に反復的 な ・ 単調 な規則的作 ・ 統制 さ れた 労働 ・ こ の種の労働初 そ し て , シ ミ ュ レ ー シ ョ ン可能 と 判断 し た 授業 を進めた。 紡績工, 織工, 教室の机 を作業場に見立 て , 材料配達員 , 作業監視員, 観察者のいず ( 2 ) 歴史的 リ テ ラ シ ー の指導 と 評価の方法 マ ンデル ら の書 に掲載 さ れた中学校の指導 と 評価の事 例 を分析 し , その方法 を考察 し よ う 2

°

) 1 . 単元 ト ピ ッ ク 「第一次産業革命 : 歴史的 シ ミ ュ 2 . 歴史的 テーマ (部分) レー シ ョ ン」 生産工程 と 労働条件の変化

3 . 主発問

・ 第一次産業革命期の経済変化は児童労働や地域社会に い か な る 影響 を与 え た か。 ・ 人 々は経 済発展 を どの よ う

(

原因 と 結果) に捉え , 記憶 し , (過去の人々の見方) あ る い は と い う 流 れで あ る。 な お , 黒板 に は八 の規則 (1848年) を掲示 し た。 結果的 な シ ま こ 6 ミ ル ト ン製造工場 に25人の生徒か ら る労働者が54分に15枚の厚紙衣料 を製作 し て シ ミ ユ レ ー ョ え と ンは終了 し た。 その後, 生従に自 ら の作業体験 を踏 第一次産業革命期の労働者の状況につい て考え を ワ ー ク シ ー ト に 記録 さ せ て い る 。 . 教師に よ る評価 TL H フ レ ー ム ワ ー ク で は , 5 つ の歴史的探 究 の ゴ リ ー と 3 つ の歴史的 プ ロ セ ス の そ れ ぞれに つ い て 段階か ら な る指導 と 評価の ルー ブ リ ク を作成 し てい 本実践の評価 ない が, 教師 力 る

に どの よ う に 適用 さ れた かは明 記 さ れ て た テ 4 。 い は 「過去の人々の見方」 の観点 か ら 生徒の 「第一次産業革命」 を探究すペ ン グラ ン ド 地方の紡織工場 で働 く く ロ ウエ ルの女工』 を読 んだ。 本実 同年代で し か し , , 衣料品 製作 の シ た。 点 を踏ま え 生徒 た ち を れかの役に割 り 振 っ た。 紡績工は厚紙 を切 っ て糸 を作 り , 配達員 は依頼 に応 じ て そ れ を作 業所 に運 ぶ。 職工 は厚 紙 の糸 を使い規格 に沿 っ て布 を織 る。 作業監視貝 は製造 さ れた布 の品質 を規格 に基づ き チ ェ ッ ク す る と と も に, 工 場規則の違反行為 に つい て工場監督 ( 教師) に報告す る 記録 を評価 し コ メ ン ト し た。 参考 ま で に該当 ルー ブ リ ク を示そ う 。 レ ル ・ 歴史上 (フ:

題や選t

の時代 導き 出 し 多様な人物 ・ に対応 し たや 有の価値観や: て い る。 1- l l、 行重;! の ' ' か ら , 彼 ら を解釈的に l f レ ル ・ 歴史上の人物は階級, 性別, 人種 ・ 民族, 宗教, 年齢, 教育, 経験の違いか ら, 同 じ 事件に対 し て も多様 な見方 を持 つた こ と を 認識 し てい る。 ・ こ れ ら の見方 を重 要な歴史的展開に必ず し も適切 に結びつ け てい ない。 三活は, 性 「 1 標, 人種 現代 と は 。 i 為 と し て t l 又 し 割, 階級区分, 民族的性向, 生 し く 異 な る こ と え てい る。 レ ル ・ 過去の人々の 個人や国家のl 活水準等の点 を認識 し てい ・ 個人 の目標や レ ル )行為や t ll 値や知言i 、、' 断 を 説明 ・ い てい 理解す るのに現

l

l

る 。 )/

図 4

「 過去の人々の見方」 の指導 ・ 評価ル ー ブ リ ク 次 に , 3 人の生徒の記述 と そ れ ら に対 す る 教師の コ メ ン ト を見 て み よ う 。 < ス テ フ アニ ー

>

私は白分がロ ボ ッ ト に な っ た よ う に感 じ た。 あ ら ゆる こ と が プ ロ グラ ム化 さ れ てお り , 朝に な る と スイ ッ チ が入 り , 夜にはスイ ッ チ が切れ る と い う 感 じ だ っ た。 本生徒は工場労働者が一定のペ ース で働 かねばな ら な い こ と , 個人裁量で はな く 他者 と の一体的 リ ズ ムで作業 し なけ れば な ら ない こ と を把握 し た。 そ れは19世紀 の家 族経営 の農業 と も , 21世紀 の生徒の生活 と も 異 な っ て お り , 「過去の人々の見方」 を理解で き てい る。 < テ シ ア > 私は当時の未成年 労働者が他の米国人 と は違 っ て, 閉 ざ さ れた生活 を し てい る と 感 じ た。 自由に話 し た り … ト イ レに行 っ た り す る権利 さ え ない (ハ ミ ル ト ン工場 の規則 よ り 一原田注 一) よ う に思 う。

(7)

コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ カ リ キ ュ ラ ムのた め の歴 史的 リ テ ラ シ ーの指導 と 評価 ロ ウエ ル工場の労働者は1830年代にス ト ラ イ キ を敢行 し た。 そ れは, 先人達が革命 を通 し て闘い取 っ た権利 に つい て工場 の ボス が敬意 を示 さ ない こ と への抗議 で あ っ た。 その点 で本生徒の記述は洞察 に富 んで い るが, 現代 的視点 で19世紀の工場労働 を捉え て し ま っ てい る。 つま り , 「 過去の人々の見方」 の獲得 と い う 点 では課題が残 る。 < レ イ チ ェ ル > こ の経験 を通 じ て, 本当に こ んな仕事 をせ ざ る を得 な い人々は可哀想だ と 感 じ た。 授業中のわれわれは快適 な 気温の下 で … 異常 な監視員 に 見張 ら れ る こ と も な く , 長時間労働 も ない。 誰かが言 っ てい たけ ど, それ は一種の ジ ョ ー ク に も 思え る。 で も も し それが本当だ っ た と し た ら , 高温で, 監視 さ れ, 耐 え難い ほ ど長時間 働か さ れ, そ し て万一火事で も 起 こ し た ら 「悪者 リ ス ト 」 に載せ ら れ て し ま う 。 こ れは工場が決 し て雇お う と し ない , 揉 め事 を起 こ す労働者の リ ス ト なのだ。

12.9~ 13, 15, 17に該当。

4 . 教材 ・ 6 枚 の ポス タ ーサイ ズの模造紙 ・ 異 な る色 の 6 本 の マ ー カ ーペ ン ・ タ イ マ ー な い し ス ト ッ プ ウ オ ッ チ

5 . 準備

・ 中世 ヨ ーロ ッパ史に つい ての一定の背景的知識 を確認 し た状態で実施す る。 ・ 直前の授業 で は, ゴー ト 族の興隆 と ロ ーマ化の要因 , ロ ーマ帝国の社会 ・ 経済 ・ 政治の衰退への動 き を学 で い る。 ん 6 枚 の模造紙の う ち 5 枚 に, 1 つずつ次の問い を記載 し てお く 。 なお 1 枚は空白のま ま にす る。 ① 3 ~ 4 世紀の中欧では, ロ ーマ人や ゴー ト 族のいかな る決断や行為 が人々の生活 を変化 さ せ たか。 ( 転換点 に関す る間い ) 本生徒は授業 で の シ ミ ュ レ ー シ ョ ンが19世紀の労働者 の実態 と は異 な る こ と を 理解 し て お り , 「 過去 の人 々の ② ロ ーマ の没落で誰が利 益 を得 て, 誰が利益 を得 ら れな か っ た か。 そ れは なぜ か。 君は ど う 思 う か。 ( 変化 と 継続性に関す る問い ) 見方」 を正 し く 獲得 し た と いえ る。 彼女はかな り 細部 に も 触 れなが ら , 当時 と 現在の違い につい て説明 し て お り , 第一次産業革命期の労働者の状況に理解 と 関心 を深めた こ と がわか る。 た だ し , 当時の労働者がそ う し た作業か ら 何 ら かの報酬 を得 て い た こ と に 触 れて い な い のは , 理 解 と 思考の限界 を示 し て い る。 具体的 な評価 レ ベ ルは明 ら かに さ れて い ない が 生従 名 を記 し て い る こ と への配慮 で あ ろ う , ルー ブ リ ク を 一定の基準 に し てい るのは コ メ ン ト か ら 見 て も 明 ら かで あろ う 。 ③ こ の単元で こ れま で学 んで き た事件は どのよ う に人々 の生活や地域社会, さ ら には世界に影響 し たか。 (原因 と 結果に関す る問い ) ④ ロ ーマ の没落 ない し ゴー ト 族の興隆はい かに現在の理 解に役立 つか。 現在及 び当時の人々の相互作用 には どの よ う なパ タ ー ンが見 ら れ る か。 (過去の活用 に関す る問い ) ⑤ ロ ーマ 人や蛮族 の世界 観は どの よ う に彼 ら の選択 や行 為 に影響 し たか。 (過去の人々の見方 に関す る問い ) ( 3 ) 外部者に よ る フ レ ームワ ー クの活用事例 上記事 例は, チ ー ムの一貝 と し て TLH フ レ ー ムワ ー ク の作成 に当 た っ た教員 の実践で あ るが, こ こ で は外部 者 と し て本 フ レ ームワ ー ク を活用 し た実践 を考察 し てみ よ う 。 そ れは ウ イ ス コ ン シ ン州 エ ッ ジ ウ ッ ド ・ カ レ ツ ジ のエ リ ッ ク ・ ブ ラ ン コ に よ り , 多 種多 様 な生従 か ら な る 都市部の高校で実践 さ れた 「 世界史」 の授業で あ る2')

1 . 単元 「中世 ヨ ーロ ッパ ( 3 ~ 11世紀)」

2 . 実 践 の概 要 一 グ ラ フ イ テ イ ウ オー ル活 動 一 学級 を 5 つの グル ー プに分け , 壁 に貼 ら れた 5 枚 の模 造紙 に 記載 さ れた問 い へ の回答 を , グル ー プ内 で の議論 を通 し て一つずつ順に作成 し 記述 し てい く 。 最終的に 5 つの問い に対 す る 5 種類の回答がで き 上がり , そ れぞれ の説明の妥当性 を め ぐ っ て学級全体 で議論す る。

3

, ス タ ン ダ ー ド と の 関 連 世界史内容 ス タ ン ダー ド の 「時代 4 : 交流圈の拡大 と 遭遇, 300-1000CE」 , 「 ス タ ン ダー ド 4 1 ・ ヨ ー ロ ッ ハ°に おけ る政治 ・ 社会 ・ 文化的再定義の探究, 500-1000c E」, ウ イ ス コ ン シ ン 州 社 会 科 ス タ ン ダ ー ド B I2.1~ 6 , ・ 活動 が始 ま っ た ら 5 つ の グル ー プ に分 か れ て学習 す る よ う 伝え てお く 。 ・ 6 つの別々の場所が確保で き る よ う , 6 枚の模造紙 を 教室の壁の適切 な箇所に貼付す る。 ・ グ ラ フ イ テ イ ウ オール活動 の説明用 紙 の作 成 。 1 つの問いへの協議 に かけ る時間は 4 分。 6 枚目の模 造紙 には, 最終的 な説明 に役立 つ と 思われる その他の 必要 な問い を挙 げ て お く 。 ・ 教室 の机 を 5 グルー プに分割 ・ 配置す る。 メ モ用紙 と 1 本 の異 な る 色 の マ ー カ 一ペ ン を 配布 。 ・ 黒板に班別の生徒氏名 と 机 を指示 し てお く 。 ・ 黒板 に単元の中心発問 を なす問い を明 記す る。 「新 た な政治秩序の模索は ヨ ーロ ッ パ中世初期の社会 を どの よ う に発展 さ せ た か。」 6 . 授業過程 ・ 決 め ら れた グル ー プの机 に別 れた 生徒 に対 し , 単元 の 中心発問 を探究す る活動 と し て, 「 グラ フ イ テ イ ウ オー ル」 を行 う こ と を告げ る。 ・ 各机に配布 さ れた説明用紙 を読 み, 活動の概要 を把握

(8)

・ す る。 活動 を開始 す る と と も に , 他 グルー プの回答の模倣 を す る ので は な く , で き る だけ ユ ニ ー ク な 説明 を す る よ う に促す。 生徒は教科書や多様 な資料 を読解 し た り 相 互に議論 し た り し なが ら , そ れぞれの場で 課題に取 り 組む。 ・ 時間が来 る と 次の場所に移動す る よ う 生徒に指示す る。 ・ 各 グル ー プが一通 り 全 て の問 い に回答 し た の を 見 て , 元 の机 に戻 っ て グル ー プ と し て の活動 を振 り 返 り , さ ら に学級全体での議論に備え る。 7 . 学級討論の支援 ・ 各模造紙の問い に対 す る回答 と し て, 最 も合理的 な説 明は どれか を決定 し , そ の理由 を述べ ら れ る よ う に指 示す る。 ・ 最初の討論 は, 各 グルー プの説明根拠 を生徒の既有知 識 に基づい て吟味 す る。 そ の後 に, そ れぞれが特 に提 示す る証拠資料で結論の妥当性 を検証 し てい く 。 ・ 生従は各 間 い が TLH フ レ ー ムワ ー ク の探 究的 カ テ ゴ リ ーの どれに関連す る か を確認す る。 ・ 順に そ れぞれの説明の妥当性 を検証 し てい く 。 その際, す ぐ に結論 を述べ るのでは な く , 証拠 と し て どの資料 が有益か, 教師が助け船 を出 し なが ら 生徒の判断 を促 す よ う にす る。 最後に, 討論の中で出 て き た新 た な問 い に つい て は, 次 の時間 ま で に調べ て く る よ う に指示 す る。 8 . フ レ ー ムワ ー ク 活用 の効 果 実践者の ブラ ン コ は, こ の方法が生徒の歴史的 リ テ ラ シー形成に果 たす効果に つい て, 次の 3 点 を指摘す る。 第一に, 中心発問につ ながる問い を持続的に探究す る こ と で, 個々の歴史的事実が原因 と 結果, 変化 と 継続性等 の枠組みで一つ に総合 さ れてい き , テ ス ト のための一時 的記憶 に留 ま ら ない長期的 な理解 を も た ら し た点で あ る。 第二 に , 一 つの時代 に複数の観点 か ら ア プロ ーチ す る こ と で社会の相互作用の多面性 を理解す る と と も に, グルー プ毎 の異 な る説明 の吟, 味 ・ 検討 を通 し て, 歴史解釈の多 様性 に も 気づ い て い っ た点 で あ る。 第三 に , 歴史学習 を 一 つの正解 を導 く 過程 と し てでは な く , 証拠に基づ く 議 論 の 過 程 , 換 言 す れば 「 歴 史 に つ い て 語 り 合 う talk history」 過程 と し て捉え る こ と を可能 に し た点 で あ る。 こ の 「語り」 を枠付けす るのが TLH の探究の カ テ ゴリ ー で あ り , その 「 過程」 を方向づけ るのが TLH の歴史的 プ ロ セ ス で あ る 。 そ の意味 で , TLH フ レ ー ムワ ー ク の 活用 は , グ ラ フ イ テ イ ウ オール活動 を成功 に導 く こ と に 役立 っ た と 結論づけ てい る。 4 結論 : TLH フ レ ームワ ー ク から学 ぶ も の ( 1 ) TLH フ レ ームワ ー クの意義 こ れま で の考察 か ら TLH フ レ ー ムワ ー ク には二 つ の 大 き な教授 ・ 学習上の意義が認め ら れる。 一 つは, 生従 に と っ て, 何の た めに歴史 を学ぶのか, 歴史 と は何 か, 歴史 をい かに学べ ば よ い のか と い っ た問 い に答 え て く れ る ツ ール と し て の意義 で あ る 。 ブ ラ ン コ が言 及す る よ う に22), TLH フ レ ー ムワ ー ク は そ れ自 体 が ゴールでは ないが, 歴史家が実践に際 し て用い る多 様 な 思考の様式 を生徒に視覚的に示 し て く れる。 それゆえ こ れに し たが っ て真正 な問い を設定 し , 粘 り 強 く 探究 し て いけ ば, 歴史の学習 な ら で はの能力 が形成 さ れる。 ま さ に コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス の学習 と 自己 評価 の た めの重 要 な ツ ー ル と な り 得 る だ ろ う 。 も う 一 つは, マ ンデル自身 が語 る よ う に, 教師に と っ て個々の授業づ く り と よ り 大 き な歴史教育の日 標 と を架 橋 す る ツ ールに な る こ と で あ る23)。 こ れま で も研 究者に よ り 最新 の理論が提起 さ れ, 教師に よ り 数多 く の優れた 実践が な さ れて き た。 そ れ ら は学術雑誌等 で容易 に目に し 得 る も のの, 授業づ く り に臨 も う と す る教師の直接の 手助 け には な っ てい ない。 理論は あ ま り に一般的 ・ 抽象 的 で あ り , 実践はあ ま り に個別的 だか ら で あ る。 その点 で , TL H フ レ ー ム ワ ー ク は コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ 力 リ キ ユラ ムの開発や指導に向け た羅針盤的役割 を果 た す と と も に, 既存の実践 を位置付け る座標的役割 も 果 す こ と に な ろ う 。 ( 2 ) 日本の社会科 (歴史) 教育への示唆 た 結論 と し て TLH フ レ ー ムワ ー ク が日 本 の歴史的 リ テ ラ シ ー形成 に示唆 す る点 を ま と め て み よ う 。 第一に, 歴史的 リ テ ラ シー を内容知 と 方法知の両面か ら明確に定義 し , 相互の関連 を構造図に し てわかり やす く 示 し た こ と で あ る。 第二 に, 歴史的 リ テ ラ シーの内容知 を個別知識の レ ベ ルで も 抽象的 な一般概念 レベルで も な く , 探究のカ テ ゴ リ ー と い う 歴史 に対 す る見方の枠組み レベ ルで捉え た こ と で あ る。 特 に, 「原因 と 結果」 , 「変化 と 継続性」 , 「転 換点」 と い う よ く 知 ら れた 枠 組 みの他 に25), 「 過去の活 用」 と 「過去の人々の見方」 を加え たこ と は重要であ る。 「 過去 の活用」 は歴史 を単 な る 教養 では な く , 現在に生 かす知恵 と 捉え る点 で社会科教育の理念 ・ 趣旨 と 合致す る し , 「 過去の人々の見方」 は異文化理解の方法 と 通底 す る点 で, 現代の多文化社会 ・ 多民族社会に不可欠な方 略 た り 得 る か ら で あ る。 第三に, 方法知 と し ての歴史的 プロ セ ス を探究の過程 と 捉え , 社会科の学習論 と し て小学校段階から の導入 を 可能に し た こ と で あ る。 ま た, その中に 「証拠」 と 「解 釈」 を位置づけ た こ と は注日 に値す る。 現代 社会は様々 な立場 に よ り 解釈 さ れ記述 さ れた テ ク ス ト で、益 れてい る。 市民 と し て こ の情報社会 を生 き抜 く ためには, そ れら の テ ク ス ト を根拠 に基づい て批判的 に読 み解 く こ と が求め ら れ る 24)。 そ れはま さ に歴史家が史料批判 を通 し て一定

(9)

コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ カ リ キ ュ ラ ムのた め の歴 史的 リ テ ラ シ ーの指導 と 評価 の解釈 を下すの と 同様の行為 で あ り , 歴史的 リ テ ラ シー の教育が決 し て小 さ な歴史家 の養成 を目指す も のでは な い こ と の例証 と な ろ う 。 ( 3 ) 今後の課題 一 コ ン ビ テ ン シ ー ・ ペ ース ・ カ リ キ ュ ラ ムに向 け て 一 最後に, 本研究 を通 じ て確認 さ れた課題 を提示 し て, ま と めに代 え たい。 そ れは, 歴史的 リ テ ラ シーの形成の た め には , 何 よ り 「真正 の」 学習 が不可欠 な こ と で あ る26)。 と り わけ 過去 を対象 と す る歴史学習 では, 生徒に と っ ての真正 さ を担保す る問い と 探究活動 な く し て, ど んなに壮大 な フ レ ー ムワ ー ク を構築 し よ う と , リ テ ラ シー の形成は覚東ない だろ う 。 学問的に裏付け ら れた内容知 ・ 方法知 を, 生従の真正 な問い に基づ く 学習 に生かす こ と , そ れ こ そ コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ カ リ キ ュ ラ ムの開発 の要請 と い え よ う 。 そ う し た真正 な学習 を促 す ために も , 評価の手立 て を 再考す る こ と が求め ら れる。 当面はワ ー ク シー ト を活用 す る な ど し て生徒の学力 を多 元的 に評価す る こ と が重要 で あ るが, 中等教育段階では入試制度の影響 も あ っ て短 時間のペ ーパ ー テ ス ト に よ る評価 も 無視 で き ない。 そ の 点 で, 歴史的 リ テ ラ シーを評価す る テス ト 問題の開発に つい て も今後検討すべ き であ ろ う 。 ま た, 日本ではすで に 観点 別 学力 評 価 が定 着 し つ つ あ る こ と か ら , も し TLH フ レ ー ム ワ ー ク の よ う に内 容知 と 方 法知 を そ れ ぞ れルー ブ リ ク に基づ き 評価す る と す れば, 両者間の調整 が必要に な る。 いず れにせ よ , 評価の具体的検討が今後 に残 さ れた課題 で あ る。

【注】

1 ) OECD の CERI に よ る カ リ キ ュ ラ ム開発 に関す る国 際セ ミ ナー (1974) での議論 を参照。 文部省 『カ リ キュ ラ ム開発の課題』 大蔵省印刷局, 1975, pp 7-8. 2 ) 佐藤学や石井英真はそ れ ら の意義や可能性 を認めつ つ, 危険性 も 指摘す る。 例え ば, 佐藤は PISA 型学力 を グロ ーバルス タ ン ダー ド と し て認識すべ き で は し , 21世紀型学力 と し て も 普遍化で き ない と い う な い ま た石井は 「 0 0 力」 と い う 言葉 を介 し て教育に無限 責 任 を呼 び込 みか ねない こ と や, 汎用的 ス キルの直接的 指導が活動主義に陥 り やすい こ と に警告 を発す る。 ・ 佐藤学 「 グロ ーバル化 に よ る日 本の学校 カ リ キ ュ ラ ム の葛藤」 (労凱声, 山崎高哉共編 『日中教育学対話 I 』

春風社, 2008) .

・ 石井 英真 『今求 め ら れ る学力 と 学 び と は コ ン ビ テ ン シー ・ ベ ースの カ リ キ ュ ラ ムの光 と 影 一』 日本標準 ブ ッ

クレ ッ ト No.14, 2015.

3 ) 先進諸国の動向 につい ては以下の文献 を参照。 松尾 知 明 『21世紀型 ス キル と は何 か 一 コ ン ビ テ ン シーに基 づ く 教育改革の国際比較一』 明石書店, 2015. 4 ) 例え ば, 現行学習指導要領改訂に先立つ2008年中教 審答申 では , 総合的 な学習の時間の現状 に つい て, 「補充学習のよ う な専 ら特定の教科の知識 ・ 技能の習 得 を図 る教育が行 われた り , 運動会の準備 な ど と 混同 さ れた実践 が行 われ た り し て い る 例 も 見 ら れ る 。」 と 指摘 し た。 5 ) コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス の 社会 科 カ リ キ ュ ラ ム開発 に つい ての研 究成果は ま だ少 ない 中で , 江間史明 は三 つの視点 を提起す る。 その一つに, 既存の歴史授業の 素材 を変え ず, 問い を変換す る こ と で コ ン ビ テ ン シー ・ ベ ースの授業づ く り が可能で あ る こ と を示 し てお り 注 日 さ れる。 奈須正裕 ・ 江間史明編著 『教科の本質か ら 迫 る コ ン ビ テ ン シー ・ べイ スの授業づ く り 』 図書文化,

2015, pp 82-106.

6 ) 石井英真, 前掲書, p ie. 7 ) リ テ ラ シーは伝統的 に 「識字」 ない し 「 教養」 と 解 さ れて き たが, 佐藤学は OEc D の PISA 調査に見 ら れ る リ テ ラ シ ー概念 に着目 し , コ ン ビ テ ン シ ーの教育内 容 を リ テ ラ シー と 捉え る見方 を提起 し た。 佐藤, 前掲 論文参照。 8 ) 米国では各州共通基礎 ス タ ン ダー ド (c c ss ) で英 語 と 数学が重視 さ れ, その到達度が全国統一 テ ス ト で 測 ら れる ため, 英語 と 数学に重点化 し て教育 を行 う 小 学校が多 い。 ま た, 英国で も ナ シ ヨ ナ ル カ リ キ ユラ ム で英語 ・ 数学 ・ 理科が中核教科に指定 さ れてい る ため, 早期 か ら 読 み書 き ( リ テ ラ シ ー) ・ 計算 ( ニ ユー メ ラ シー) が重視 さ れてい る。 全国学力 ・ 学習状況調査の 導入以降, 日本で も同様 な状況が見 ら れる。

9 ) Donna Ogle, Ron K lemp and Bill McBride, Building

literacy in socta1 studies' Strategies for Improving com-

prehension and cn tica1 thinking, Association for

Supervision and Curriculum Development, 2007.

著 者 の D オ ー ク ルは ナ シ ョ ナ ル ・ ルイ ス 大 学 の言

語学教授 で , K-w -L 学習方略の考案者 と し て知 ら れ る。 残 る二人 も 英語や社会科の教師経験 を持 つが, 歴 史学者では ない。

10) Jeffery D. Nokes, Buzldzng stu dent's histor ical

1itercles・ Leam ing to read and reason with histor ical

to:x:ts and evldence, Routledge, 2013. 著 者 の J.D. ノ ー ク スは プリ ガム ・ ヤ ン グ大学歴史学部の准教授 で あ る。

11) 中村洋樹 「 歴史実践 (Doing History) と し ての歴史

学習の論理 と 意義 『歴史家の様に読 む』 ア プロ ーチ

を手がかり と し て 」 『社会科研究』 全 国社会科教育

学会, 79号, 2013. pp50-51.

12) Nikki Mande11 & Bobbie Malone, Thinkzng like a his-torian・ Rethinking history instruction, Wisconsin

Historical Society Press, 2007.

(10)

Framework for teaching and learning,” 0 AH Magazzne of History, April 2008, p 55. 14) 本 フ レ ー ムワ ー ク の概要 と 歴史的 リ テ ラ シ ーに つ い ては既に下記の別稿 で論 じ たが, 本稿は具体的事例に 即 し て更に深 く 考察するこ と で, 日本のコ ンビテ ンシー ・ ベ ース の力 リ キ ユ ラ ム開発 に資 す る 理論 と 方法 を探 る も ので あ る。 拙稿 「米英におけ る歴史的思考の評価の論理 と 方法」 『社会科 に おけ る 「 思考 ・ 判断 ・ 表現」 の評価 に関す る研究』 日本教材文化研究財団, 調査研究 シリ ーズ61,

2014, pp.174-184.

15)

16)

ム 石井英真, 前掲書, p 39. こ の図 は マ ン デ ル の前 掲 書 を は じ め , TLH ワ ー ク を紹介す る文書 に ポス タ ー と し て示 さ

Thinking Like A Historian' Poster (PDF) こ れ

ス コ ン シ ン歴史学会の下記 ウ ェ ブサイ ト よ り ダウ

ド した (2015年12月20日)。

フ レ ー れ る。 は ウ イ ン ロ ー http://www.wisconsinhistory.org/ThinkingLikeaHistorian/ 17) こ れは近年欧米の歴史教育界で共通 し て重視 さ れる 歴史的エ ンパ シ や感覚に依拠す 0.L.Davis Jr et ー ( 同 時代 の人 々のパ ース ペ ク テ ィ ブ る方法) を指す。 al ed., H istor ical five taking 1n the Social Studzes,

Publishers, 2001.

empathy and perspec- Rowman & Littlefield 18) 日本学術会議史学委員会高校歴史教育に関す る分科 会の 『提 言 再 び高校歴史教育 のあ り 方 に つい て』 (2014年 6 月) の中で, 「教科書の記述に当 た っ て使用 す る歴史用語の数 を制限 ( た と えば, 二千数百語以内) す る ガイ ド ラ イ ン を作 成 す る こ と が重 要 で あ る 。」 (p 5) と 指摘 さ れて い る の も , 歴史の内容知 を用 語の レ

19)

ロ ベルで捉え てい る こ と の証左 で あ ろ う 。 日本の中教審教育課程部会が現在検討中の 「歴史総 ( 仮称 ) 」 で は , 学習対象 と な る 転換期の例 と し て 近代化, 大衆化, グロ ーバル化 を挙げてお り , 日本で 歴史的 テ ーマ を 選択 す る 際のイ メ ー ジ と し て こ れ ら の 事例は役立 と う 。 (「歴史総合 (仮称) の内容構成の考 え方 (検討素案)」 文科省ウェ ブサイ ト を参照) 。

20)

21)

to

Nikki Mande11 & Bobbie Malone, op.cit., pp 53-55.

Eric V. Franco, “Using graf fiti to teach students how think like historians, The H istory Teacher, August

2010.

に と 因 み に , 彼 は TLH フ レ ー ムワ ー ク の現 職教員 つ て の Dzsclp linary Hzstor tan' A 活 用 効 果 に 関 す る 事 例 研 究 Build,ng Lzteracy Through Thinking Like A

Cas Study で e 1 エ ツ ジ ウ ツ ド ・ カ レ ッ ジ よ り 2010年に博士号

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2

3

4

2

2

2

(Ed.D )

ibid., p 540.

Nikki Mande11, op. cit.,

Bruce VanSledright,

In

を 取得 し て い る c

p 55.

search of mer ica 's past・

Learn1ng to read history zn elementary school, Teachers

College Press, 2002. 25) 注19) に挙げた資料におい て, 歴史の考察 を促す概 念 と し て, 「原因 と 結果」 「継続 と 変化」 「類似 と 差異」 が例示 さ れてい る こ と か ら し て も こ れ ら が一般的 で あ る こ と が了 解 さ れよ う 。 26) コ ン ビ テ ン シ ー ・ ベ ー ス ・ 力 リ キ ユ ラ ム の た め に 「教科す る」 授業の必要性 を説 く 石井 も , 「真正の学習」 ( 学習課題の真正性 , 文脈の真正性) 大 き さ を指摘 し てい る。 石井英真, 【付記】 盤研究 エ ンパ 前掲書参照。 が果 たす役割 の 本研究は2015~ 2017年度科学研究費補助金基

(C)

シ ー 「 歴史的思考 と 理解 の一体的形成 を促 す ( 共感) の指導 と 評価 に関す る研 究」

究課題番号 : 15K04431)

研 究成果の一部で あ る。 (研 究代表者 : 原田智仁)

(研

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