• 検索結果がありません。

発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 ―大学における地域貢献プロジェクト「おひさまクラブ」での実践を通して―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 ―大学における地域貢献プロジェクト「おひさまクラブ」での実践を通して―"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 ― 大学における地域貢献プロジェクト「おひさまクラブ」での実践を通し て―. Author(s). 阿部, 美穂子; 小渕, 隆司; 木戸口, 正宏; 戸田, 竜也; 小林, 麻如; 安澤, 恵美. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第49号: 93-104. Issue Date. 2017-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9858. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第49号(平成29年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.49(2017):93-104. 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 ―大学における地域貢献プロジェクト「おひさまクラブ」での実践を通して― 阿 部 美穂子1・小 渕 隆 司1・木戸口 正 宏1・戸 田 竜 也1・ 小 林 麻 如2・安 澤 恵 美3 1. 北海道教育大学釧路校特別支援教育研究室・2釧路市児童発達支援センター・3堀口クリニック. The Change of Students' Consciousness on Support for Children with Developmental Disabilities and their Families -Through the practice of the regional contribution project in the university named "Ohisama club"- ABE Mihoko1,OBUCHI Takashi1,KIDOGUCHI Masahiro1,TODA Tatsuya1, KOBAYASHI Maki2 and ANZAWA Megumi3 1. Department of Special Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education, 2. Kushiro-city Child Development Support Center and 3Horiguchi Clinic. 本研究では、地域在住の発達障害及びその疑いがある幼児とその親の希望者を対象として、大学キャンパスを活用して 実施する、療育支援を旨とする地域貢献プロジェクトに学生が継続参加することで、発達障害のある子どもの理解と対応 能力がどのように育成されるかについて調べ、教員を目指す学生の資質向上にかかる、本活動の効果と課題を明らかにす ることを目的とした。39名の1 ~ 3年生、及び大学院生からなる学生が全6回の活動に参加し、数名でチームを組んで1名 の対象児とその家族(親ときょうだい)を責任担当し、実態把握、支援プログラム作成、実践、そして評価に基づき次回 の支援プログラムを立案する、PDCAサイクルによる実践活動に取り組んだ。活動開始前(Pre時点)と終了時(Post時 点)に同じ質問からなるアンケートを実施した結果、Post時点では発達障害に関する知識の深まり、指導計画立案力の向 上、支援へのやりがい、及び支援者としての実践意欲について尋ねた4つの項目について、統計的に有意な差をもって得 点が増加し、学生らの自己評価が高まったことが確認された。また、Post時点における自由記述レポートの分析からは、 発達障害の子どもの理解とかかわりについて42種類、発達障害のある子どもの実態に応じた教材づくりや支援プログラム 作成、活動づくり等について49種類、発達障害のある子どもの親や家族を理解し、支援することについて45種類、その他、 チームでの支援や支援の考え方などについて27種類の、学生が学び取ったとするキーワードが得られた。このことから、 先のアンケート調査における変容が、体験に基づく具体的な理解に基づいたものであることが確認された。以上より、本 活動が学生にとって、発達障害のある子どもの理解と対応能力の向上に寄与するものとなったと考えられた。. Ⅰ.問題の所在と目的. を含む特別な支援を必要とする児童生徒等への対応」及. 今日の学校現場では、通常の学級に発達障害及びその疑. び、 「幼小接続をはじめとした学校間連携等への対応」が. いのある子どもが遍在する可能性が示され(文部科学省,. 挙げられており、教師が地域と協働しながら、 「組織的、. 2012)、そのような子どもへの対応は、学校における重要. 協働的に諸課題の解決のために取り組む専門的な力」を獲. な課題となってきている。このことから、教員にとって障. 得することの重要性が示されている。また、 「公立の小学. 害特性を理解し、子どもの実態に応じ、柔軟にかつ適切に. 校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策. 対応することは、不可欠な資質の1つであるといえる。. 定に関する指針(素案)」(文部科学省,2017a)では、 「教. 文部科学省(2015) 「これからの学校教育を担う教員の. 員等としての資質の向上に関する指標に盛り込むべき内容. 資質能力の向上について(中間まとめ) 」によれば、これ. に係る観点」として、 「特別の支援を必要とする幼児,児. からの時代の教員に求められる資質能力の1つに「インク. 童及び生徒に対する理解に関する事項」 が掲げられている。. ルーシブ教育システムの構築の理念を踏まえた、発達障害. このような教員の資質向上に係る課題は、教員養成を行. - 93 -.

(3) 阿 部 美穂子・小 渕 隆 司・木戸口 正 宏・戸 田 竜 也・小 林 麻 如・安 澤 恵 美 う大学においても、学校現場と同様に取り組むべきもので. 参加した学生にとって、発達障害のある子どもの理解と支. ある。事実、文部科学省の教職課程コアカリキュラムの在. 援に関する資質向上に寄与したかどうかを検証する必要が. り方に関する検討会においては、コアカリキュラムを定め. あると考える。. るにあたり、教育の基礎的理解に関する科目として、 「特. 以上のことから、検証の一環として、本研究では学生の. 別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」. 自己評価について調べるものとする。すなわち、本活動に. の必修化が示されたところである(文部科学省,2017b)。. 取り組む前と取り組んだ後の学生の自己評価がどのように. このような動きの中にあって、教員を目指す学生に求め. 変化するかについて、質問紙調査に基づく量的データを収. られているのは、発達障害の特性や対応方法に関する一般. 集する。併せて、それを補足するものとして、本活動に. 的な知識を獲得することに留まるものではない。実際にそ. 関する学生の記述レポートに基づき、学生が本活動におけ. のような子どもに出会った際に、目の前の子どもをどのよ. る自らの学びをどのように評価しているかについて、質的. うに理解し、どのように支援するかという実践的理解が求. データを収集する。これらのデータを分析することによ. められているといえる。また、その実践に関しては、いわ. り、本活動が有する、教員を目指す学生の資質向上機能に. ゆる、「チーム学校」に示されるような、地域と協働しな. ついて、 その効果と課題を明らかにすることを目的とする。. がら、 「組織的、協働的に諸課題の解決のために取り組む」 (文部科学省,2015)ためのトレーニングが必要になると. Ⅱ.方法. 考える。. 1.本活動の概要. しかし、特別支援学校教員免許を取得する場合を除き、. (1)活動内容. 学生が障害のある子どもの支援実践について研鑽を積む機. 「おひさまクラブ」には、支援対象者として、本学近隣. 会は多くはない。そこで筆者らは、学生が大学1年次から. の幼稚園・保育所に在籍する発達障害及びその疑いがある. 3年 次 ま で 継 続 し て、Plan-Do-Check-Action(PDCA) サ. 年長児とその親6組が参加した。いずれも親が活動の趣旨. イクルにより支援実践を積み上げる、学年縦断型体験活動. を理解し参加を希望したものである。途中で1組が親の意. (「おひさまクラブ」と命名)を開発した。幼稚園・保育. 向により参加を取りやめたため、継続参加は5組となった。. 所から小学校への就学移行期には、子どもが環境や生活及. 支援内容は、学習レディネスの獲得を図る個別活動、小集. び学習スタイルの変化にうまく対応できず、いわゆる「小. 団における人間関係形成を図るムーブメント教育活動、生. 1プロブレム」に陥りやすいことが指摘されているが、中. 活スキル獲得を図る調理活動、親の勉強会で構成された。. でも発達障害及びその疑いがある子どもについては、その. 各支援内容における学生の役割と体制を表1に示す。. リスクが高いと推測される。 「おひさまクラブ」は、その. 参加学生は、学部1年生12名、2年生14名、3年生 12名、. ようなリスクのある地域在住の発達障害及びその疑いがあ. 大学院1年生1名の計39名であり、学部学生は特別支援教育. る幼児とその親(希望者)を対象に、大学キャンパスを活. と教育心理学専攻、大学院生は学校教育専修の研究室に属. 用して、大学教員と学生、地域の教育・福祉・医療機関が. していた。うち、特別支援学校での教育実習経験のある学. 協働し、小学校へのスムーズな接続に向けた支援を行うこ. 生は、大学院生1名のみであった。. とを目的とした地域貢献プロジェクトである。この活動に. 「おひさまクラブ」の開催期間は、201X年10月から翌. 学生が継続参加することで、学生の発達障害のある子ども. 201X+1年3月までで、実践頻度は月1回であり、各回の所. の理解と対応能力を育成することを目指した。そこで、 「お. 要時間は約2時間半であった。. ひさまクラブ」における学生の活動(以下、 「本活動」)が、 表 1 「おひさまクラブ」における学生の役割と体制 時間 13:00 チェックイン. 活動の流れ. 形態 親のみ個別. 親面接・子どもは自由遊び 13:15 ムーブメント活動. 集団. 担当学生 学生の役割 1 ~ 3 年生の 親と面談し、前回以降の対象児の家庭での様 親担当学生. 子や、子育て上の課題、就学に関する不安など. 2 年生. を把握する。 プログラムリーダーが全体進行案を作成し、. 全員で行う、粗大運動遊び。あいさつ、自己紹介、協力・相談・役割分担など、 人間関係形成スキルを導入。 14:00 個別活動. 親の勉強会. アセスメントに基づく個別学習。学習用具の使い方、文字・ 数の基礎事項など、学習レディネス形成課題を導入。. 子ども:個別. 体活動の流れの中で、個に応じた支援を行う。 子ども:対象 子ども担当者は、個別に支援プログラムを作. 親:集団. 児 1 名につき 成し、個室で実践を行う。. ペアレント・. 2 名の 3 年~. トレーニング. 大学院生 1 年生. 14:30 おやつ調理活動. (教員による講 集団 簡単な工程のおやつづくり。手順に沿ってやり遂げる体験を 義 ) と 親 同 士 積む。生活に必要な操作を導入。. 当日の活動をリードする。対象児担当者は、全. 当日の活動をリードする。対象児担当者は、全 体活動の流れの中で、個に応じた支援を行う。. の情報交換。. 15:00 会食 子どもとの振り返り・親との懇談. 集団. 対象児ごとに 子どもとともに本日の活動を振り返る。子ど 分担. 15:30 解散. - 94 -. プログラムリーダーが全体進行案を作成し、. もの様子を親に伝える。.

(4) 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 (2)活動の実施経過. した10 月から、初年度が終了した翌年3月までとした。. 実践に先立ち、学生は同年5月~7月にかけて7回の事. (2) アンケート調査. 前学習に参加した。事前学習は1回90分間で、所属学年を. 「おひさまクラブ」開始直前の10月(以下、Pre時点). 問わず同じ内容で一斉に実施した。内容は、発達アセスメ. と終了時の翌2月あるいは3月(以下、Post時点)に、参加. ント技法の紹介とその方法の解説、対人関係能力を育てる. 学生に対し、発達障害のある子どもへの支援について、同. ムーブメントプログラムのデモンストレーション、親支援. じ質問からなるアンケートを実施した。質問は以下に示す. プログラムの内容紹介、読み書きにつまずきがある子ども. 5項目である。いずれも1に該当する程度と、5に該当する. の理解とその支援技術に関する解説であり、講師は第1筆. 程度を示して、自分の今の気持ちに当てはまる程度を5件. 者が務めた。. 法で選ぶように求めた。. 10月から学生には担当する対象児が割り当てられた。実. 問①:発達障害のある子どもとは、どのような子どもの. 践初回に対象児の親面談とアセスメントを行い、2回目か. ことか知っているか?(1:全く知らない~ 5:よく知っ. らは、表1に示す分担に従い、毎月1回のサイクルで、アセ. ている). スメント結果に基づく対象児のための支援プログラム作. 問②:発達障害のある子どもとうまくかかわれそうか?. 成、実践、実践後の評価・反省と次回実践のための改善を. (1:全くうまくかかわれそうにない~ 5:十分うまくか. 繰り返した。筆者ら全員 (大学教員、 児童発達支援センター. かわれそうである). 指導員、小児科の心理士、以下、支援スタッフと表記)が. 問③:発達障害のある子どもを支援するための指導計画. 分担して、学生に対しスーパーバイズを実施した。. を立てることができそうか?(1:全くできそうにない~. 具体的には、学生らは、実践のおおよそ1週間前までに. 5:十分できそうである) . 行われる学年別ミーティングに支援プログラム素案を作成. 問④:発達障害のある子どもを支援することは、やりが. して持参し、支援スタッフからアドバイスを受けた。その. いがあると感じるか?(1:全くやりがいがないと感じる. 結果を受けてプログラム案を改善し、実践日の2日前に行. ~ 5:十分やりがいがあると感じる). われる全体ミーティングに持参し、今度は同じ対象児を担. 問⑤:発達障害のある子どもの支援者として、自分は何. 当する他の学年との縦割りチームでその内容を共有し、留. かができそうだと思うか?(1:全くできると思わない~. 意事項について話し合った。併せて、全体の場で学生チー. 5:きっとできると思う). ムの代表が話し合った内容を発表し、支援スタッフから再. なお回答は匿名によるものとし、対応関係を判断するに. 度スーパーバイズを受けた。. あたっては、Pre時点とPost時点で任意の同じ記号を記入. 「おひさまクラブ」の実践当日は、13時に対象児家族を. する方法を用いた。回答の所要時間は約5分ほどであった。. 受け入れ、親面接→2年生が担当する親子ムーブメント活. (3)自由記述レポート. 動→3年生以上が担当する対象児の個別活動→1年生が担当. Post時点で、学生に対し「おひさまクラブ」に参加して. するおやつ調理活動の順で実践が進められた。また、個別. 支援者としての資質(能力や技術)に関して学びとったと. 活動とおやつ調理活動に並行して、親のためのペアレン. 思うことを以下の項目ごとに書くように求めた。. ト・トレーニングが行われ、一部学生はそれをサポートし. ①発達障害の子どもを理解することや、子どもとのかか. た。一連の活動の最後に、全員が集まって、対象児が調理. わり方に関して. したおやつを会食し、学生は個別活動、及びおやつ調理活. ②発達障害のある子どもの実態に応じた教材づくりや支. 動の様子を報告し、親子が解散した。. 援プログラム作成、活動づくりなどに関して. その後、 まず、 約20分間の学年別ミーティングを実施し、. ③発達障害のある子どもの親や家族を理解し、支援する. 各支援プログラムの運営について成果と改善点を協議し. ことに関して. た。引き続き、対象児別のチーム、及び親サポートチーム. ④その他の点で(チーム支援、環境づくりなど、上記に. に分かれて、約20分間でそれぞれ対象児及び親の活動の様. 書いた以外のことを自由に記述). 子を確認し、成果と課題を協議した。最後に全体ミーティ. 回答は記名式であったが、記名を望まないものは記入し. ングを行い、支援スタッフから実践後のスーパーバイズを. なくてもよいこととした。所要時間は15分程度であった。. 受け、次月の支援プログラム内容の改善点を確認して解散. (4)分析方法. した。. アンケート調査については、回答に1~ 5点をあては. 上記のサイクルを繰り返し、 3月まで実践を積み重ねた。. め、質問ごとにPre時点とPost時点の度数分布の変化を調 べた。また、対応関係が確認できたデータについては、. 2.活動の評価方法. Wilcoxonの符号付順位和検定により、Pre-Post間の得点. (1) 対象. 差の有無を調べた。. 参加した学生39名全員を評価対象者とした。また、評価. 自由記述レポートについては、質問項目ごとに分析し. 対象実践期間は、 「おひさまクラブ」が実質的にスタート. た。まず、記述内容を意味のまとまりごとに区切って、1. - 95 -.

(5) 阿 部 美穂子・小 渕 隆 司・木戸口 正 宏・戸 田 竜 也・小 林 麻 如・安 澤 恵 美. 個の「意味内容データ」とした。個々の意味内容データに は、その意味を端的に表す短い「キーワード」を付け、類 似している意味内容データは、同じキーワードで表した。 その後、キーワードごとに含まれる意味内容データの数を 確認した。 次に、類似した意味のキーワードを集めて、 「カテゴ リー」にまとめた。その後、各カテゴリーに含まれるキー ワード数と、意味内容データの数を確認した。 分析にあたり、第1筆者が素案を作成し、第2 ~ 5筆者が 吟味・検討し、修正を加えたものを最終とした。 (5)倫理的配慮 アンケ―トを実施するにあたり、対象者には回答は任意 であり、回答の有無や記入した内容により、対象者には不 利益が生じないことを説明した。また、匿名性を保持する ため、アンケートの対応関係を調べる記号は、本人のみが 管理することとした。 自由記述レポートについては、回答が記名式であり、そ の取扱いには慎重を要すると考えられることから、内容に 含まれる個人情報に関連すると思われる情報はすべて記号 に変換して分析した。また、引用にあたっては個人が特定 されないように配慮した。 Ⅲ.結果 1.アンケート調査 (1)回収状況 回 答 者 はPre時 点 が31名( 回 収 率79.5 %)、Post時 点 が 37名(同94.9%)で、そのうち、両方の回答者は31名(同 79.5%)であった。 (2)度数分布比較 各質問項目のPre-Post得点度数割合を図1 ~ 5に示す (図中の数値は人数) 。 各 回 答 の 中 央 値 は、 問 ①Pre: 3→Post:4、問②Pre:3→Post:4、問③Pre:3→Post:3、 問④Pre:4→Post:5、問⑤Pre:3→Post:4であった。 (3)統計的検討結果 問①について、z=-3.41、p <0.01、問③について、z= -3.46、p <0.01、問④についてz=-2.22、p <0.05、問⑤につ いて、z=-2.81、p <0.01となり、統計的に有意な差をもっ て、いずれもPost 時点で高得点となったことが示された。 問②については、Pre-Post間で有意な得点差は確認され なかった。 2.自由記述レポート記述 (1)回収状況 回答者は38名(回収率97.4%)であった。回答内容は学 年、性別、記名の有無を問わず記号を付して匿名化し、デー タ化した。 (2) 「①発達障害の子どもを理解することや、子ども とのかかわり方に関して学び取ったこと」の回答内容. - 96 -.

(6) 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 表2 「発達障害の子どもを理解することや、子どもとの. 理解と習得】(以下、【 】はカテゴリー名を示す。 )で、. かかわり方に関して学び取ったこと」の回答内容分類. 25の意味内容データが含まれ、キーワードは9種類であっ. カテゴリー、及び含まれるキー ワード数(上段)・意味内容デー. 個に応じた支援. ことばのかけ方の理解と習 得. 支援者としてのあり方の理 解. 子ども理解の視点獲得. 行動理解の促進. 子ども観の取得. 子どもをほめる効果の理解. 支援による効果の実感. 支援の難しさの実感. 合計. 《子どもの自発性を重視した支援》、《障害特性に応じた支. 10. 援》、《子どもの心を開く支援》であった。. 子どもの自発性を重視した支援. 4. 障害特性に応じた支援. 3. 子どもの心を開く支援. 3. こどもの興味関心を踏まえた支援. 1. 「その子ども一人一人を理解した上でかかわりを考えるこ. 子どもの反応を引き出す支援. 1. とが大切」などがあった。 《子どもの自発性を重視した支. スモールステップによる支援. 1. 援》については、 「なんでもやってあげるのではなく、子. 教材の工夫による支援. 1. 環境への配慮. 1. どもが自分から困っていることを伝えられるように導く」. 場面に応じた言葉かけ. 1. 話すスピードや振る舞い方. 1. けじめをつける言葉かけ. 1. 参加を可能にする言葉かけ. 1. 具体的な言葉かけ. 1. 必要であり、自分が常に子どもの味方であることが伝わる. (10) 肯定的な言葉かけ. 9 (25). 10. 5 (8). 4. 具体例としては、《個に応じた支援》については、 「子ど もに合ったオーダーメイドの支援の必要性に気づいた」. 「遊びの選択肢を与える」などがあった。 《障害特性に応 じた支援》については、 「特徴や傾向を理解した上で、配 慮すべきことを実際に行う方法を学んだ」、《子どもの心を 開く支援》では、 「時間をかけて子どもとかかわることが. 1. まで、そばにいてあげることが、子どもが心を開いてくれ. 的確な言葉かけ. 1. るきっかけとなる」などがあった。いずれも、子どもと直. 理解しやすい言葉かけ. 1. 感情的な爆発を招かない言葉かけ. 1. 接かかわって学び取った、重要な支援方法の視点を述べた. 子どもの気持ちを切り替える言葉かけ. 1. 子ども目線でかかわる意識. 3. 支援者としてとるべき行動理解. 2. 支援者としての自己能力理解. 1. キーワードも10種類であった。. 経験を積む必要性. 1. 次は、【支援者としてのあり方の理解】であり、8つの意. かかわりの良否の判断力. 1. 味内容データが含まれ、キーワードは5種類であった。 《子. 子どもの得意・不得意の理解. 3. 多角的な子ども理解. 2. ども目線でかかわる意識》の具体例としては、「子どもの. (8) 子どもの気持ちの理解. ものであった。 次に含まれる意味内容数が多かったのは、 【ことばのか け方の理解と習得】であり、10の意味内容データが含まれ、. 目線に合わせて、子どもと対等な立場でかかわることを強. 2. く意識できるようになった」 、 《支援者としてとるべき行. 子ども同士のかかわりの必要性. 1. 行動の理由の理解. 3. 行動の背景の理解. 2. 行動に込められた子どもの思いの理解. 1. どがあり、いずれも継続的な実践を続ける中で、自らの支. 障害の有無にかかわらない見方. 4. 援者としての在り方に変容を感じとっている様子がうかが. (5) 障害を個性としてとらえる. 1. われた。. ほめることの重要性. 3. 【子ども理解の視点獲得】には、8つの意味内容データが. 3 (6) 2. 2. (5) ほめ方、しかり方の影響. 2. ちょっとした工夫の効果. 3. 2. (4) 子どもの困難さは工夫により改善可能. 4. 1. だんだん自分はどうしたらよいかを学ぶことができた」な. 含まれた。キーワードは4種類であった。 具体例としては、《子どもの得意・不得意の理解》では、. 1. 「個々の子どもの得意なことや苦手なことは異なってお. 1. 自らの勉強不足. 1. り、それを理解することが非常に重要」、《多角的な子ども. 1. 理解》では、 「子どものみならず、親、きょうだい、子ど. 1. もと支援者、子ども同士の関係などあらゆる角度から子ど. (4) 子どもに合わせた支援の難しさ 子ども同士の関係をつなぐ言葉かけの. (3). 動》の具体例としては、 「子どもと一緒に活動する中で、. 障害理解が不十分. 難しさ 障害の特性理解. は、 《個に応じた支援》 (以下、 《 》はカテゴリーを示す) 、. タ数. タ数(下段). 支援方法の理解と習得. た。中でも複数の意味内容データが含まれたキーワード. キーワード、及びキーワード別意味内容デー. 子どもの障害特性の体験的理解. 42. もを理解し、かかわることが大切」、《子どもの気持ちの理. 3. 解》では、 「子どもの活動する様子から、その気持ちや調. 78. 子を読み取れるようになった」などがあった。 【行動理解の促進】には、6つの意味内容データが含まれ. 38名全員から回答があり、78の意味内容データが得ら. た。カテゴリーは3種類で、いずれも子どもの行動を否定. れ、42種類のキーワードに分類された。さらにそれらは10. することなく、その行動が現れるに至った「理由」 「背景」. のカテゴリーにまとめられた。内訳を表2に示す。. 「子どもの思い」に着目するようになった自らの意識変容. 最も含まれる意味内容数が多かったのは、 【支援方法の. に関する記述が含まれた。. - 97 -.

(7) 阿 部 美穂子・小 渕 隆 司・木戸口 正 宏・戸 田 竜 也・小 林 麻 如・安 澤 恵 美 【子ども観の取得】には、5つの意味内容データが含まれ. 表3 「発達障害のある子どもの実態に応じた教材づくり. た。キーワードは2種類で、特に《障害の有無にかかわら. や支援プログラム作成、活動づくりなどに関して学び取っ. ない見方》では、 「障害があったとしても一人の子どもで あることを実感した」 「今まで講義で学んできた『障害の ある子ども自体を理解することが大切だ』ということに、 改めて気付いた」のように、これまで知識として知ってい. たこと」の回答内容分類 カテゴリー、及び含まれるキーワード. キーワード、及びキーワード別. 数(上段) ・意味内容データ数(下段). 意味内容データ数 興味関心に基づいて. 3. スモールステップで. 3. 注意集中を支えて. 3. 子どもが楽しめるように. 2. 視覚的支援を使って. 2. 臨機応変に. 2. 集団の中で個に応じて. 2. 細やかな観察に基づいて. 2. 子どもをほめて. 2. 言葉かけをタイミングよく. 1. 子どもの困難さに寄り添って. 1. 子どもの成長の喜びを感じて. 1. 子どもを助ける方法を考えて. 1. 個に応じた教材を工夫して. 1. 子どもの課題をみとって. 1. 失敗させない配慮をして. 1. 障害特性による困難さを低減して. 1. スケジュールを提示して. 1. 場面の切り替えがしやすいように. 1. 使いやすい用具を準備して. 1. 感覚過敏へ対応して. 1. 個に応じて. 4. 子どもの動きを予測して. 3. 子どもが達成感を得られるように . 3. PDCA サイクルで. 1. に関する意味内容データも4つあり、キーワードも4種類. 課題解決の手順を考えて. 1. で、実際に子どもとかかわる過程で、自らの勉強不足や支. 個を踏まえた全体計画へ. 1. 子どもの実態把握に基づいて. 1. 支援ポイントの明確化. 1. 柔軟に. 1. 障害特性に応じて. 1. たことを体験として納得した実感が述べられた。 【子どもをほめる効果の理解】には、同じく5つの意味内 容データが含まれ、 キーワードは2種類であった。特に《ほ めることの重要性》では、 「ほめることは、その子どもを 認めること」という、子どもの視点から見たほめることの 意味や、「子どもが行動を始める態度をほめることで、子 どもも親に心を開き、親に子どもの考えが伝わったり、親 の考えも変えることができるのではないか」と、子どもの. プログラム展開上の留意点. みならず、親に対する効果に関する記述も見られた。. 21 (33). 【支援による効果の実感】 には、 4つの意味内容データが、 また、 【障害の特性理解】には3つの意味内容データが含ま れ、両カテゴリーとも実践に伴う実感が述べられた。具体 例として、 《ちょっとした工夫の効果》では、 「少しだけ環 境を変える、少しだけアプローチを変えるなど、少しで変 化が生まれることを学んだ」 、 《子どもの障害特性の体験的 理解》では、「授業で発達障害のことを学んでいても、実 際に会ってみなければわからないことが多くある」などが あった。 一方、実感を示すものとしては、 【支援の難しさの実感】. 援技能の未熟さを自覚したという内容であった。 (3)「②発達障害のある子どもの実態に応じた教材づ くりや支援プログラム作成、活動づくりなどに関して学び 取ったこと」の回答内容. プログラム作成の視点. 20. (27) 楽しめるゲーム感覚. 38名全員から回答があり、68の意味内容データが得ら れ、49種類のキーワードに分類された。さらにそれらは3 つのカテゴリーにまとめられた。内訳を表3に示す。 最も含まれる意味内容数が多かったのは、 【プログラム 展開上の留意点】で、33の意味内容データが含まれ、キー ワードは21種類であった。 具体例としては、 《興味関心に基づいて》では、「興味の あることへの集中力は高かったので、興味を持つような工 夫を取り入れることが必要である」 、 《子どもが楽しめるよ うに》では、「できないことを無理やりするのではなく、 楽しい、面白いということを実感できるような工夫をす. プログラム内容. 8. 1. 長期的視点で. 1. つまずきを克服できるように. 1. できることとできないことを踏まえて. 1. 得意・不得意をバランスよく. 1. 発達に応じて. 1. 目的を明確にして. 1. 普段の生活における留意点を踏まえて. 1. さらなる勉強の必要性あり. 1. あいさつの機会を含有. 1. コミュニケーションの促進. 1. 自己表現の場. 1. 指示理解力の向上. 1. (8) 対人関係形成. る」 《視覚的支援を使って》 、 では、 「時間の目安やスケジュー ルを目で見て分かるようにすることが役立つ」 、 《臨機応変. 1. 手指の操作力向上. 1. どの子供も共通してできる内容を含有. 1. 問題解決力の向上 49. に》では、「子どものその日その日の状態に応じて臨機応. 1. チームで考えて. 1 68. 変に対応していくことが大切」 、 《集団の中で個に応じて》 では、 「集団活動では、全体のプログラムを理解した上で、. を作り上げられる」などがあった。. 自分の担当する子どもに合う問いかけ、教材を用意するこ. 次は、 【プログラム作成の視点】で、27の意味内容デー. とで、子どもが全体のプログラムに参加しやすくなる状態. タが含まれ、キーワードは20種類であった。. - 98 -.

(8) 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 具体例としては、 《個に応じて》では、 「作成した集団プ ログラムを基礎とした個別の支援プログラムを丁寧に考え るようになった」 、 「子どもの実態に応じて、どんな活動を するのか、支援すべきことは何かなど、慎重に考えること ができた」、《子どもの動きを予測して》では、 「子どもが. 表4「発達障害のある子どもの親や家族を理解し、支援す ることに関して学び取ったこと」の回答内容分類 カテゴリー、及び含まれ るキーワード数(上段) ・ 意味内容データ数(下段). うまくできなかったときの次の手を用意しておく必要があ ると分かり、何事も、様々な可能性を考えた上で、支援プ ログラムを作成することが大事だ」 、 《子どもが達成感を得 られるように》では、 「子どもと一緒に作り上げていく教 材作りをすると、子どもの達成感を得られる」 「できるこ. 親理解. とを伸ばしつつ、できないことを支えながら、できる喜び を伝えることが大切」などがあった。 が含まれた。カテゴリーを構成するキーワードも8種類で あった。. 《問題解決力の向上》では、 「できないことを支援者がす. 5. 親の悩み. 3. 親の変化. 3. 親の課題. 2. 親の苦労. 2. 親の戸惑いと悲しみ. 1 1 1. 子供の成長が親の安心. 1. 子どもをほめられる嬉しさ. 1. 親としての自信喪失. 1. 子どもの障害を人に言えない気持ち. 1. つい子どもを叱ってしまう気持ち. 具体例としては、 《あいさつの機会を含有》では、「子ど ションの促進》では、 「 『聞く』 『協力する』内容を含める」、. 親の不安. 13 親のプレッシャー (23) 子どもを客観視する難しさ. 3つ目は、 【プログラム内容】で、8つの意味内容データ. もがありがとうと言える機会を設ける」 、 《コミュニケー. キーワード、及びキーワード別 意味内容データ数. 親情報が子ども理解と支援に役立つ 親と連携することが子ども支援に役立つ 子どもの支援との 5 親の期待や称賛が子どもの力になる 関係 (19) 子どもにとっての家族の持つ意味が大きい. 1 11 3 3 1. 親(家族)支援がより高質な子供支援につながる. 1. べて支援してしまうのではなく、問題解決が必要な場面を. 親が嬉しい子どもの様子を伝える. 1. 作って、子どもが解決できるように」などがあった。. 子どもとかかわることが親のヒントになる. 1. 子どもの良いところを伝える. 1. 子どもの様子を詳しく伝える. 1. 子どもへの接し方の例を示す. 1. (4)「③発達障害のある子どもの親や家族を理解し、 支援することに関して学び取ったこと」の回答内容 38名全員から回答があり、77の意味内容データが得ら れ、45種類のキーワードに分類された。さらにそれらは7. 親への支援内容と 11 叱らないで,わかる指示 方法 (11) 集団で取り組む. つのカテゴリーにまとめられた。内訳を表4に示す。 最も含まれる意味内容数が多かったのは、 【親理解】で、 23の意味内容データが含まれ、キーワードは13種類であっ た。 具体例としては、《親の不安》では、 「 (親は)発達の遅 れから不安になることや自分を責めてしまうことがある」 「親は不安でいっぱいの状態で活動に参加していることが 分かった」、《親の悩み》では、 「子育てに際し、ほんの些 は、「親が活動の回を重ねるごとに、子どもへのかかわり 方を分かってきたように感じた」などがあった。 次は【子どもの支援との関係】で、19の意味内容データ が含まれ、キーワードは5種類であった。中でも《親情報. 支援の方向性を知る上で大切」 「親と話すことで、その家. 1. 親同士の交流. 1. 傾聴から親支援へと進める. 1. グループと個別の両方の支援. 1. 親の話を聞くことが役立つ. 2. 自分の勉強不足を実感. 2. 親への傾聴力を獲得. 1. 親に意見が言えるようになった. 1 1 1. 家族との連携を学べた. 1. 家族へのアプローチを学んだ. 1. 貴重な体験となった. 1. 親支援の意義と 必要性. 1 親支援の意義と必要性 (7). 7. きょうだいは親代わり. 1. きょうだい理解. 4 きょうだいと同胞が離れることも必要 (4) きょうだいの気持ちを理解する必要性. が子ども理解と支援に役立つ》には11の意味内容が含ま れ、「支援プログラムをつくる際に親の願いを聞くことは. 1. 子どもの障害理解. 学生にとっての意 9 親子の会話が参考になる 義 (11) 学生も力になれる. 細なことでも悩んでいるのだと分かった」 、 《親の変化》で. 1. 同胞にとってきょうだいの存在が大きい 親支援体制整備に 2 親サポートが社会的に弱い 関すること (2) ペアレントトレーニングの必要性 49. 族や子どもが抱える問題点を見つけ、支援策を考えて実践. 1 1 1 1 1 77. することができた」 のように、 自らの支援実践を踏まえて、 親との連携の必要性を実感した内容が見られた。. 関連して、【親支援の意義と必要性】では、7つの意味内. また、【親への支援内容と方法】には11の意味内容デー. 容データが含まれ、 「障害のある子どもだけでなくその周. タが含まれ、それぞれ異なったキーワードに分類された。. 囲への支援を行う大切さを改めて実感することができた」. 内容は、親に伝えるべき子どもの情報や親に知ってもらい. 「子どもが抱える困難さばかり考えていたが、親も困って. たい子育て上の事項、親支援プログラムに含むべき内容や. いるので、 (関係機関の)支援者と協力して、親を支援す. 支援形態など多岐にわたった。. る必要があることが分かった」のように、親(家族)を含. - 99 -.

(9) 阿 部 美穂子・小 渕 隆 司・木戸口 正 宏・戸 田 竜 也・小 林 麻 如・安 澤 恵 美 表5「その他の点で学び取ったこと」の回答内容分類. 【チームによる支援】は、3種類のキーワードに分類され. カテゴリー、及び含ま れるキーワード数(上 段)・意味内容データ 数(下段) チームによる 支援. 支援の考え方. 環境の影響力. キーワード、及びキーワード別 意味内容データ数 チームで取り組む効果. 3 チームで取り組む際の方法 (16) チームで取り組む際の問題点. た。《チームで取り組む効果》では、「専門家や支援スタッ フが、協力しながら子どもへの支援を考えることで、多角 13 2 1. 的なアプローチができ、包括的に子どもを支援できること を体感した」 「ミーティングで、それぞれが準備した支援. 安心感を与える大切さ. 2. プログラムを共有することで、子どもの『何』に視点を置. 多面的な支援プログラムの必要性. 2. 丁寧な子ども観察の重要性. 2. き、 『どのように』支援するのか、その知識の幅や支援の. 子どもに指示をする際の留意点. 2. コミュニケーションが難しい子どもの支援の方向性 11 障害のみにとらわれず、子どもの全体像を捉える (16) 支援者としての役割分担の重要性. 2. 手立てを増やすことができた」などが述べられた。また、 《チームで取り組む際の方法》では、 「支援者が考えを共. 1. 有することで、様々な案から、最善の方法を探し出すこと. 1. が大切」などがあった。一方、 《チームで取り組む際の問. 支援の準備の周到さ. 1. 自立を促すための支援方法. 1. 具体的な課題の解決への学びの必要性. 1. 問題意識や前提がないと、チームで取り組むことは難し. リーダーの体験により学んだ支援スキル. 1. 空間配置の子どもへの影響力. 3. い」という記述が見られた。. 集中を高める環境の工夫 5 子どもの遊び環境の工夫 (7) 人的環境の改善点 安心できる環境作り. 子どもとのかかわりの深まり 自分と子どもと 3 子どもの気持ちを知る大切さ の関係 (4) 子ども理解の深まり 子どもの活動環境の改善. PDCA サイクル 3 成功や失敗を生かす による支援のス (3) テップアップ 支援の継続の効果 きょうだい支援. タが含まれた。. 2 きょうだいを子どもとして扱うことの大切さ (2) きょうだいへの支援体制の改善の必要性 27. 1 1. 題点》として、 「子どもの支援に関してチームで共通した. 【支援の考え方】は、16の意味内容データが11種類のキー ワードに分類され、いずれも学生自らが実践の中から獲得. 1. した、子どもへの支援に対する多様な見方、考え方が述べ. 1. られた。. 2 1. 【環境の影響力】としては、教室の配置や空間の広さ、. 1. 騒音、物品の多少が子どもの情緒的な安定や集中に影響す. 1. ることへの気づきや、集団のサイズや支援者の数などの人. 1. 的環境の影響力への気づきが述べられた。. 1 1. ほかには、支援実践を通して得られた【自分と子どもと. 1. の関係】の深まりや、 【PDCAサイクルによる支援のステッ. 48. プアップ】の実感、これまで気づかなかった【きょうだい 支援】の必要性の理解などを得たことが述べられた。. めた広い視野で支援することの必要性を実感したことが述. . べられた。併せて、 【親支援体制整備に関すること】では、. Ⅳ.考察. 親支援の必要性を実感し、親支援体制整備への訴えも見ら. 1.参加学生の変容. れた。. (1)アンケート調査より. また、親のみならず、 【きょうだい理解】として、4つの. Pre時点では、図4、5を見ると参加学生の多くが支援へ. 意味内容データがそれぞれ異なるキーワードに分類され. のやりがいと実践意欲を持っていることがうかがわれた。. た、親代わりとなっているきょうだいの立場や、きょうだ. しかしその一方で、図1、2に見るように、知識不足と自信. い気持ち、同胞との関係の大きさに対する気づきが得られ. のなさを感じており、特に図3からは、指導計画立案に関. たことが述べられた。. しては、31名中15名(48.4%)が、5段階評価の2点以下に. このように親支援に関して多様な学びができたことを踏. あり、できそうにないとする状況であることが示された。. まえ、 【学生にとっての意義】に関して、11の意味内容デー. Post 時点になると、図1 ~ 5に示すように、どの質問に. タが得られ、9種類のキーワードに分類された。具体的に. おいても、得点度数の割合が高得点側で増えた。また、統. は、親支援に携わったことで、自分の支援者としての力量. 計的検討からも、問①、問③、問④、問⑤において有意な. に変化を感じたり、逆に力不足を感じたりしたことが述べ. 差をもって、いずれもPost 時点で高得点となった。この. られた。. ことから、大多数の参加学生は、実践後に、発達障害に関. (5) 「④その他の点で学び取ったこと」の回答内容. する知識の深まり、指導計画立案力の向上、支援へのやり. 32名(回答者の84.2%)から回答があり、48の意味内容. がいと支援者としての実践意欲のさらなる高まりを実感し. データが得られ、27種類のキーワードに分類された。さら. たと考えられる。. にそれらは、6つのカテゴリーにまとめられた。内訳を表5. 一方、問②については、Pre時点で得点分布の中央値が. に示す。. 3、Post時点で4と、増加が見られたものの、統計的検討で. 意味内容数が多かったのは、 【チームによる支援】と【支. はPre-Post間で有意な得点差は確認されなかった。この. 援の考え方】に関することで、いずれも16の意味内容デー. ことから、 「発達障害の子どもと上手くかかわれそうだ」. - 100 -.

(10) 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 とする自信度の獲得の度合いについては、個人差が大き. さらに、「Ⅲ.結果(2)」で示した「①発達障害の子ど. かったものと推測される。. もを理解することや、子どもとのかかわり方に関して学び. (2)自由記述レポートより. 取ったこと」の分析から、上述した個々の子どもに着眼し. 参加学生らに上記の変容が生まれた理由や経過につい. た理解の促進に伴い、多くの参加学生が、特に《個に応じ. て、自由記述レポートの内容分析から、以下のように考察. た支援》の重要性を実感している。また、自らが担当した. する。. 対象児とのかかわりの中で合計9種類のキーワードからな. まず、アンケート調査の「問①:発達障害のある子ども. る【支援方法の理解と習得】に至っている。加えて、支援. とは、どのような子どものことか知っているか?」の得点. 方法の工夫のみならず、支援を実践する場で求められる子. が統計的に有意な差をもって増加したことに関して、 「Ⅲ.. どもに適した【ことばのかけ方の理解と習得】を意識し、. 結果(2) 」で示した「①発達障害の子どもを理解すること. 自らの【支援者としてのあり方の理解】を得たことも示さ. や、子どもとのかかわり方に関して学び取ったこと」の分. れた。さらに、「Ⅲ.結果(5)」で示した「④その他の点. 析から、本活動を通して、参加学生らの発達障害に関する. で学び取ったこと」の分析で示されたように、【支援の考. 体験的知識が深まったと考えられる。. え方】や【環境の影響力】に関する知見も得ている。これ. 本項目の意味内容データの分析からは、参加学生らが、. らのことから、参加学生らは本活動を通して、指導計画作. 発達障害及びその疑いがある幼児と直接かかわることによ. 成の基礎となる支援方法についても、多角的に学ぶことが. り、 【障害の特性理解】について、 《子どもの障害特性の体. できたと考えられる。. 験的理解》を得るのみならず、これまで講義や文献等から. 次に、アンケート結果の「問④:発達障害のある子ども. 学んできた典型的特質をもつ発達障害児のイメージが打ち. を支援することは、やりがいがあると感じるか?」につい. 破られ、発達障害児という一般化された子ども理解を脱却. ても、Post時点での得点がPre時点の数値よりも有意な差. して、一人一人の子どもを固有の存在としてその全体像を. をもって高くなり、支援に対する参加学生のやりがい意識. とらえようとする《障害の有無にかかわらない見方》をす. が高まっていることが示された。本質問の回答の中央値は. るようになり、新しい【子ども観の取得】に至ったことが. Pre時点で4点であり、実践前から意識の高さがうかがわ. 示された。さらに、 《子どもの得意・不得意の理解》、 《多. れたが、Post時点では中央値が5点となり、さらなる意識. 角的な子ども理解》 、 《子どもの気持ちの理解》という【子. の高まりがみられたものである。. ども理解の視点獲得】とともに、子どもが示す気がかりな. そのような変化が生まれた裏付けとして、 「Ⅲ. 結果 (5) 」. 行動、あるいは不適切とみなされる行動について、理由、. で示した「④その他の点で学び取ったこと」の分析に見る. 背景、子どもの思いという視点による【行動理解の促進】. ように、参加学生が本活動を通して【自分と子どもとの関. を得た。これらのことから、言語による定義のみならず、. 係】において《子どもとのかかわりの深まり》、《子ども理. 行動や発達の状況の具体例のイメージを伴う形で、発達障. 解の深まり》を実感し、支援者としての手ごたえを感じ取っ. 害のある子どもの実態像を掴んだものと思われる。. たことが推測される。また、 「Ⅲ.結果(2)」で示した「①. 次に、アンケート結果では「問③:発達障害のある子. 発達障害の子どもを理解することや、子どもとのかかわり. どもを支援するための指導計画を立てることができそう. 方に関して学び取ったこと」の分析で見られた、《ほめる. か?」についても、統計的に有意な差をもってPost時点で. ことの重要性》や《ほめ方、しかり方の影響》など、【子. 得点が増加したことが示され、指導計画の作成可能感が高. どもをほめる効果の理解】、 《ちょっとした工夫の効果》 《子 、. まったことが示された。. どもの困難さは工夫により改善可能》のように【支援によ. この理由として、まず、 「Ⅲ.結果(3) 」の「②発達障. る効果の実感】の獲得も、支援者としての自己有用感を高. 害のある子どもの実態に応じた教材づくりや支援プログラ. めることにつながったのではないかと考えられる。. ム作成、活動づくりなどに関して学び取ったこと」の分析. 同様に、「問⑤:発達障害のある子どもの支援者として、. で示したように、参加学生らが【プログラム展開上の留意. 自分は何かができそうだと思うか?」についても、統計的. 点】 【プログラム作成の視点】 【プログラム内容】に関して、. に有意な差をもってPost時点で得点が増加したことが示さ. 具体的な知見を得たことが考えられる。本項目には、回答. れた。これまで見てきたように、発達障害のある子どもの. 者全員が記入しており、得られたキーワードは、 《さらな. 実態に応じた教材づくりや支援プログラム作成、活動づく. る勉強が必要》という今後の課題を除いて、48種類であっ. りなどに関して具体的な知見を得たことや、前項で示した. たことから、支援プログラム作成に関して、参加学生1人. ように、実践を通して子どもとのかかわりの変化や支援の. 当たり1 ~ 2のキーワードを見出したこととなる。さらに、. 効果を実感したことなどがその裏付けとなったのではない. これらは「Ⅲ.結果(5) 」で示した「④その他の点で学び. かと考えられる。. 取ったこと」の分析で示されたように、 【PDCAサイクル による支援のステップアップ】に裏付けられた成果でもあ. 2.学生の育成にかかる本活動の効果と課題. るといえる。. (1) 学生の資質向上に役立った本活動の要因. - 101 -.

(11) 阿 部 美穂子・小 渕 隆 司・木戸口 正 宏・戸 田 竜 也・小 林 麻 如・安 澤 恵 美 本活動が、学生の障害のある子ども理解や、支援スキル. 容データと34のキーワードが得られている。さらに、 「Ⅲ.. の獲得、支援者としての意識の高まりをもたらしたことに. 結果(3)」で示した「②発達障害のある子どもの実態に応. ついては、これまで述べてきたとおりであるが、そのよう. じた教材づくりや支援プログラム作成、活動づくりなどに. な効果をもたらした本活動の要因として、以下の3点が考. 関して学び取ったこと」の分析では、 【プログラム展開上. えられる。. の留意点】【プログラム作成の視点】【プログラム内容】で. 1つ目は、異学年の学生がチームとして情報共有しなが. 合計68の意味内容データと49のキーワードが得られてい. ら、同じ対象児について多種の活動を分担することによ. る。. る、対象児の多面的理解促進及び、情報共有スキルの向上. これらのことから、本活動における、自ら考えた支援プ. である。. ログラムに基づく実践を繰り返す体制が、多面的な子ども. 「Ⅲ.結果(5) 」で示した自由記述レポートの「④その. 理解と、指導計画立案に関する豊富な知見の獲得に寄与し. 他の点で学び取ったこと」の分析では、 【チームによる支. たと考える。. 援】として、16の意味内容データが得られ、 《チームで取. ところで、池田・小川・武石(2011)は、特別支援学校. り組む効果》に数多くの記述が含まれた。具体例として取. における教育実習に希望して参加した保育学科に在籍する. り上げたように、外部専門家を含むメンバーでミーティン. 学生41名のアンケート調査結果から、学生自身が成長した. グを持ちながら、子どもに対する多角的な理解とアプロー. と自覚している内容として、 「子どもとのかかわり」や「子. チを体験できたことや、自ら立案した支援プログラムを. どもの理解」、「チームテーチングの在り方、仕事現場での. チームで検討してブラッシュアップし、より良いものに作. 仲間とのかかわり方、先生方との連携の大切さ」を挙げ、. り上げていく体験、また、各自が意見を持ち、もっともよ. 「指導者に求められる資質」が育成されたとしている。し. い方法を見出すために協議した体験などが、チームとして. かし一方で学生が「指導案の書き方が分からず、指導教官. 子どもを支援する効果の実感をもたらしたと考えられる。. の言われるままであった」こと、 「授業を設定する場合ア. 一方、中には、「支援チームが機能するためには、共通し. イデアが浮かばなかった」ことなどの困難さがあったこと. た問題意識を持つことの必要性に気づいた」とする、チー. を示している。また、花田・東平・江田(2007)は、特別. ムアプローチの問題点についての記述もあり、今後学生が. 支援学校で教育実習に参加した、4か年分100名の学生に対. 教育現場で、協働しながら子どもの理解を深め、支援実践. するアンケート調査に基づき、教育実習に関する不安につ. に取り組むための重要な示唆を得たことがうかがわれた。. いて分析している。それによれば、実習前に「授業作り」. このように、本活動が1年次から3年次、さらに大学院生. を不安とした学生の割合が最も多く、 「児童・生徒とのコ. も含めて対象児ごとにチームを作り、各メンバーが異なる. ミュニケーション」や「障害児教育に関する知識の少なさ」. 活動を担当しつつ、1人の対象児についてその活動の目的. を不安とした学生の割合が実習後に減少したのに対し、 「授. と内容、方法について共通理解しつつ支援する体制をとっ. 業作り」を不安とした学生の割合の多さは実習後も変わら. たことで、チーム支援の具体的方法を学ぶことができたと. ず、その内容が具体化したと報告されている。. 考えられる。. このように、短期集中型の教育実習では、子どもを理解. 2つ目は、PDCAサイクルを含む継続実践による、柔軟. し、かかわることについては効果が得られるが、授業づく. な対応力と長期的視点からの対象児理解の獲得、及び指導. りの点では、十分な経験を積むには至らず、多くの学生が. 計画立案スキルの向上である。. 不安や困難を抱えたままになることが推察される。. 前項でも述べたが、 「Ⅲ.結果(5) 」で示した「④その. 本活動においても、参加学生らは、Pre時点では指導計. 他の点で学び取ったこと」の分析では、含まれる意味内容. 画立案について約半数の学生が「できそうにない」と感じ. データ数は少ないものの、 【PDCAサイクルによる支援の. ていた。しかし、Post時点では統計的に有意な差をもって、. ステップアップ】に関する記述が見られた。 「チームでの. Pre時点よりも作成可能感が高まったことが確認された。. 計画検討→実践→再度チームによる結果の確認と次回プロ. 教育実習では、一般的に複数の児童生徒を対象とする一斉. グラムの検討」のサイクルを繰り返すことにより、 《子ど. 授業についての授業つくりが中心であり、小集団活動、あ. もの活動環境の改善》や《成功や失敗を生かす》体験、 《支. るいは個別活動を中心とした本活動のスタイルとは異なる. 援の継続の効果》の実感を得て、さらなる実践を重ねた様. ため、比較検討には慎重を要するが、本活動における、. 子がうかがわれた。. PDCAサイクルにより支援プログラムの作成と実践を繰り. また、「Ⅲ.結果(2) 」で示した「①発達障害の子ども. 返す体験は、学生にとって、短期集中型の教育実習ではな. を理解することや、子どもとのかかわり方に関して学び. かなか得られない、指導計画案作成力向上の手ごたえをも. 取ったこと」の分析では、 【支援方法の理解と習得】 、 【こ. たらすものであったと考えられる。. とばのかけ方の理解と習得】 、 【支援者としてのあり方の理. 3つ目は、親やきょうだいとの面談体験による、障害の. 解】 、 【子ども理解の視点獲得】 、 【行動理解の促進】、【子ど. ある子どもの家族に対する理解の深まりと、親とのコミュ. も観の取得】 、 【障害の特性理解】に関して合計65の意味内. ニケーション技能の向上である。. - 102 -.

(12) 発達障害のある子どもとその家族への支援に関する学生の意識変容 「Ⅲ.結果(4) 」で示した「③発達障害のある子どもの. 要性の意識が高まるにつれ、自らの勉強不足や技能不足を. 親や家族を理解し、支援することに関して学び取ったこ. より強く実感したケースもあったことがうかがわれる。. と」の分析では、【親理解】に関して13のキーワードが獲. このことから、教員を目指す学生の資質向上に向けて、. 得されている。さらに、親とコミュニケーションをとるこ. 本活動の機能をより高めるには、学生が個々に抱いている. とで、《親情報が子ども理解と支援に役立つ》 、 《親と連携. 課題意識に対応できるように、指導計画立案の際や実践場. することが子ども支援に役立つ》などの【子どもの支援と. 面などで、教員が適宜、個別に相談やアドバイスなどを行. の関係】における効果を体験し、 【親への支援内容と方法】. う機会が必要であると考える。また、チームで支援に取り. そのものについて考え、 【親支援の意義と必要性】を理解. 組む際の協議において、どの学生も率直に自分の感じとっ. するに至ったこと、さらには、 【親支援体制整備に関する. た課題や疑問を述べ、それを解決するため相互にサポート. こと】の必要性を意識するまでになったことが示された。. できるチーム成員の関係づくりを促進することも必要であ. また、参加学生らは、《親の話を聞くことが役立つ》、《自. る。さらに、活動を継続することによって、PDCAサイク. 分の勉強不足を実感》 、 《親への傾聴力を獲得》 、 《家族への. ルの更なる積み重ねの中から、学生がそれぞれのペースで. アプローチを学んだ》のように、 《学生も(親の)力にな. 自らの資質を高めていく時間を保障することが大切である. れる》という思いの高まりとともに本活動を通して親とか. と考える。. かわったことがもたらした【学生にとっての意義】を実感 しており、親とのかかわり経験が、学生らの支援者意識の. Ⅴ.まとめ. 変容を生み出したことが示唆される。. 本研究では、大学キャンパスを活用して、大学教員と学. また、親のみならず、一緒に参加したきょうだいとかか. 生、地域の教育・福祉・医療機関が協働する地域貢献プロ. わった体験から、障害のある子どもの家族において、 《きょ. ジェクト「おひさまクラブ」の活動に学生が継続参加する. うだいは親代わり》の役割を果たしていることや、 《同胞. ことで、学生の発達障害のある子どもの理解と対応能力が. にとってきょうだいの存在が大きい》実態、さらに《きょ. どのように育成されるかについて、学生のアンケート調査. うだいの気持ちを理解する必要性》 、 《きょうだいと同胞が. と自由記述レポートに基づいて検討した。その結果、大多. 離れることも必要》のように、きょうだいに対する支援の. 数の参加学生において、実践後に、発達障害に関する知識. 必要性に対する気づきなど、 【きょうだい理解】が深まっ. の深まり、指導計画立案力の向上、支援へのやりがいと支. たことが示された。このことは、 「Ⅲ.結果(5)」で示し. 援者としての実践意欲の向上が確認できた。また、自由記. た「④その他の点で学び取ったこと」の分析でも、 【きょ. 述レポートの分析からは、発達障害の子どもを理解するこ. うだい支援】に関して、 《きょうだいを子どもとして扱う. とや、子どもとのかかわり方について42種類、発達障害の. ことの大切さ》、 《きょうだいへの支援体制の改善の必要. ある子どもの実態に応じた教材づくりや支援プログラム作. 性》として言及されている。このように、学生らは実践を. 成、活動づくりなどについて49種類、発達障害のある子ど. 通して、親とコミュニケーションをとりながら支援を進め. もの親やきょうだいを理解し、支援することについて45種. る必要性を知り、そのための技能の獲得に取り組んだとと. 類、その他のチームでの支援や支援の考え方等について27. もに、直接対象としてかかわった子どもだけでなく、親や. 種類の、それぞれ学生が学び取ったとするキーワードが得. きょうだいなどを含めて支援対象としてとらえ、包括的な. られた。このことから、本活動が、教員を目指す学生にとっ. 視点から支援を行う意識を持つようになったことが示され. て、発達障害のある子どもの理解と対応能力の向上に寄与. た。. するものであったことが確認できた。. (2) 本活動の課題. 中でも、指導計画立案に対する可能感の高まりや、子ど. アンケート結果の「問②:発達障害のある子どもとうま. もに対する直接的支援のみならず、親やきょうだいへの支. くかかわれそうか?」については、Post時点ではPre時点. 援など家族を含めた包括的な視点から支援について考える. よりも中央値の増加が見られたものの、統計的検討では有. ようになった変化は、従来の短期集中型の教育実習では十. 意な増加は確認されなかった。学生らのかかわりへの自信. 分得られない成果と考えられる。このことから、本活動の. 度の変容に関しては、個人によって得られた成果の差が大. ように、チームで協働しながら、継続的に支援に取り組. きかったことがうかがわれる。. む実践実習を教育課程に取り入れることは、将来教員とし. 「Ⅲ.結果(2) 」で示した「①発達障害の子どもを理解. て、学校現場で必ず発達障害及びその疑いのある子どもと. することや、子どもとのかかわり方に関して学び取ったこ. 出会うであろう学生にとって、幅広い視野に立った支援実. と」 の分析では、 意味内容データ数としては少数であるが、. 践力の基礎を培う役割を果たすものと考える。. 《障害理解が不十分》 、 《自らの勉強不足》 、 《子どもに合わ. ただし、これらの成果は、本活動開始から半年間におけ. せた支援の難しさ》 、 《子ども同士の関係をつなぐ言葉かけ. る活動の評価に基づくものであり、アンケート結果から学. の難しさ》 など、 【支援の難しさの実感】 を示す記述があり、. 生の発達障害のある子どもへのかかわりへの自信度に関し. 本活動を通して、発達障害のある子どもの理解や支援の必. ては大きな変容は見られなかったことなどから、本活動を. - 103 -.

(13) 阿 部 美穂子・小 渕 隆 司・木戸口 正 宏・戸 田 竜 也・小 林 麻 如・安 澤 恵 美 今後も継続し、さらなる効果検証を行う必要があると考え. http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/126/. る。. shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/04/12/1384154_2.pdf(2017年 6月11日閲覧). 謝辞. 坂田花子・東平朋子・江田裕介(2007)附属特別支援学. 本研究にあたり、地域貢献プロジェクト「おひさまクラ. 校における教育実習の在り方について探る-教育実習生へ. ブ」にご参加くださった幼児と親の皆さん、並びに、アン. の調査を通して-.和歌山大学教育学部教育実践総合セン. ケート調査等にご協力いただいた学生の皆さんに感謝申し. ター紀要,17,111-119.. 上げます。 付記 本研究を推進するにあたり、北海道教育大学が文部科学 省より受託した平成28年度「発達障害に関する教職員等の 理解啓発・専門性向上事業(教職員育成プログラム開発事 業) 」 の補助を受けた。本研究の一部は、 同実施報告書(2017 年3月発行)に掲載された。 また、本研究で取り上げた本学キャンパスを活用した地 域貢献プロジェクト「おひさまクラブ」については、平成 28年度北海道教育大学学長戦略経費(地域貢献推進経費) の補助を得て実施されたものである。 引用文献 池田浩明・小川透・武石詔吾(2011)特別支援学校の教 育実習における学生の意識について(1)-実習生の期待・ 不安・成長に関するアンケート調査から-.藤女子大学紀 要,第2部,48, 125-131. 文部科学省(2012)通常の学級に在籍する発達障害の可 能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関す る調査結果について.文部科学省初等中等教育局特別支援 教育課 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/ material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf (2017年6月11日閲覧) 文部科学省(2015)これからの学校教育を担う教員の資 質能力の向上について(中間まとめ) .初等中等教育局教 職員課教員養成部会 http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/ toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/08/06/1360150_02_1.pdf (2017年6月11日閲覧) 文部科学省(2017a)公立の小学校等の校長及び教員と しての資質の向上に関する指標の策定に関する指針(素 案) .中央教育審議会 初等中等教育分科会 教員養成部会 第95回配付資料3-1. http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/ chukyo3/002/siryo/attach/1381366.htm(2017 年 6 月 11 日 閲覧) 文部科学省(2017b)教職課程コアカリキュラム参考資 料(案).調査研究協力者会議等(初等中等教育)教職課 程コアカリキュラムの在り方に関する検討会(第4回)配 付資料4.. - 104 -.

(14)

参照

関連したドキュメント

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

いてもらう権利﹂に関するものである︒また︑多数意見は本件の争点を歪曲した︒というのは︑第一に︑多数意見は

また、注意事項は誤った取り扱いをすると生じると想定される内容を「 警告」「 注意」の 2

・取締役は、ルネサス エレクトロニクスグルー プにおけるコンプライアンス違反またはそのお

状態を指しているが、本来の意味を知り、それを重ね合わせる事に依って痛さの質が具体的に実感として理解できるのである。また、他動詞との使い方の区別を一応明確にした上で、その意味「悪事や欠点などを

状態を指しているが、本来の意味を知り、それを重ね合わせる事に依って痛さの質が具体的に実感として理解できるのである。また、他動詞との使い方の区別を一応明確にした上で、その意味「悪事や欠点などを