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熊本大学くまもと水循環·減災研究教育センター合津マリンステーション

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Academic year: 2021

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熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター

合津マリンステーション

松田博貴

1*

・秋元和實

2

Aitsu Marine Station,

Center for Water Cycle, Marine Environment and Disaster Management,

Kumamoto University

Hiroki Matsuda

1*

and Kazumi Akimoto

2

は じ め に 合津マリンステーションは,雲仙天草国立公園の景勝地 「天草松島」にあり,「天草五橋」の五号橋(松島橋)の袂に 位置しています.1954(昭和 29)年に熊本大学理学部附属 臨海実験所として発足し,現在は熊本大学くまもと水循 環・減災研究教育センターの海洋実習施設として運営され ています. くまもと水循環・減災研究教育センター(以下,セン ター)は,2017(平成 29)年 4 月 1 日に,熊本大学沿岸域 環境科学教育研究センターと大学院自然科学研究科附属減 災型社会システム実践研究教育センターを統合するととも に,地下水拠点研究グループと政策創造研究教育センター の関連分野を結集し発足しました(https://cwmd.kumamoto-u.ac.jp).地下水循環部門・沿岸環境部門・減災型社会シス テム部門・地域デザイン部門の 4 部門で構成され,熊本の 特徴を活かした地下水循環・沿岸環境・減災・地域づくり の研究を総合的かつ実践的に推進し,学術的知見を活用し て学生ならびに社会人の人材育成と研究成果の国内外への 発信・展開を目的として設立されました. このうち沿岸環境部門は,2001(平成 13)年 4 月 1 日に, 前身である理学部付属合津臨海実験所をベースに,全学共 同利用センターとして発足した沿岸域環境科学教育研究セ ンターを再編した部門であり,日本最大級の干潟を有する 有明海・八代海を中心とする沿岸域の自然環境や社会環境 について,これまでに引き続き基礎科学から応用科学まで の幅広い研究教育を行い,地域社会に貢献することを目指 しています.そのために干潟沿岸域の生物多様性や生態系 の解明,持続的な水産資源の保全・開発,海底環境の変遷 の解析,自然調和型の保全・開発・防災などの研究教育を 行うとともに,得られた成果を地元に還元し,よりよい地 域環境の保全・創造を推進しています.また行政機関・研 究機関・企業などとも密接に連携し,有明・八代海沿岸域 環境科学の中心として機能するとともに,アジア地域の干 潟沿岸域環境研究ネットワークの拠点としての国際化を目 指したさまざまな取り組みを行っています. このような経緯の中で,合津マリンステーションは,セ ンターの沿岸環境部門の海洋研究教育拠点として重要な役 割を果たしています.ここでは,本施設の概要を紹介する とともに,その研究教育活動とその利用について紹介しま す. 受付 : 2019 年 1 月 21 日 1 熊本大学大学院先端科学研究部基礎科学部門 〒860-8555 熊本市中央区黒髪 2-39-1

Division of Natural Science, Faculty of Advanced Science and Technology, Kumamoto University, 2-39-1 Kurokami, Kuma-moto 860-8555, Japan

2 熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター沿岸環境 部門

〒860-8555 熊本市中央区黒髪 2-39-1

Marine Science Laboratory, Center for Water Cycle, Marine Environment and Disaster Management, Kumamoto University, 2-39-1 Kurokami, Kumamoto 860-8555, Japan

Corresponding author: [email protected]

堆積学研究 第 77 巻 第 2 号 121-126(2019)

Journal of the Sedimentological Society of Japan Vol. 77, No. 2, p. 121-126 (2019)

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施 設 概 要 合津マリンステーション(熊本県上天草市松島町合津 6061)は,宇土半島と天草上島をつなぐ天草五橋の四号橋 (前島橋)と五号橋の間の前島にあります(図).熊本市内 からは,自家用車で 1 時間強,天草本渡行き特急バスでも 1 時間半ほど(前島バス停下車,徒歩 5 分)の交通至便の場 所になります. 本施設のある前島は,日本では最大の干満差を有する有 明海と八代海の 2 つの内海を結ぶ柳ノ瀬戸に位置します. 有明海・八代海は,人為的影響を受けやすい閉鎖的内湾で あり,国内最大の干潟が広がるとともに,底質も泥(沿岸 部),砂(湾央部),礫・露岩(湾口部)と多様です.絶滅危 惧種を含む国内で無二の生物相は国際的にも価値が高く, 異なる学術分野を統合した多面的かつ先端的研究による詳 細な生息環境の解析に重要な地域です.また天草諸島に は,上部白亜系御所浦層群・姫浦層群や古第三系弥勒み ろ く層群・ 本渡ほ ん ど層群・坂瀬川さか せ がわ層群が分布し,陸域から沿岸,浅海,斜面 ならびに深海域の地層が観察され,天草炭田の夾炭層もみ ることができます.また恐竜をはじめとして,アンモナイ トやイノセラムス,哺乳類化石,有孔虫や貝形虫などの微 化石など,多種多様な化石が産します.さらに新第三紀以 降の火成活動に伴う火砕岩や溶岩も観察することができま す. 本施設は,研究宿泊棟,研究実習棟,飼育棟,ならびに研 究実習船 2 隻を有しており,センター沿岸環境部門の職員 3 名と特別研究員 1 名が常駐し,関連分野の学内外の学生・ 教員・研究者に利用されています. 1. 研究宿泊棟・研究実習棟・飼育棟 研究宿泊棟(写真 1)は 3 階建てで,1 階には外来者用研 究室と食堂・シャワー室が,2 階には教員研究室や測定室 などが,また 3 階には教員用・学生用宿泊室があります. 宿泊室には最大 46 名の教員・学生が宿泊することが可能 です.また 1 階の食堂は自由に利用することができ,自炊 することも外部に食事を依頼することも可能です. 研究宿泊棟に隣接する研究実習棟(写真 2)は,1 階には 実習室,事務室,恒温室などがあり,実習室では,生物関係 の実習ができるように実験台や大小の水槽などが設置され ています.2 階には,実習室,図書室,顕微鏡室,電子顕微 鏡室などがあり,実習室は,顕微鏡などを用いて 40 名程度 の実習や講義などができるようになっており,辞典・図鑑 類も充実しています.実習用生物顕微鏡 45 台,実体顕微 鏡 20 台に加え,微化石などの観察もできるよう卓上型走 査電子顕微鏡も設置されています. 一段高い高台にある飼育棟には,飼育室,水槽室,ナメ ウクジウオ飼育室などがあり,海洋生物の一時的な飼育に 使われています.特にナメウクジウオ飼育室では,有明海 で採集,あるいは本施設で生まれた数万個体のナメウクジ ウオが飼育され,全国の研究機関に提供されています. 2. 研究実習船 本施設には,沿岸環境先端教育研究用研究実習船「ドル フィン・スーパーチャレンジャー号(ドルフィン SC 号)」 (平成 26 年 9 月竣工)があります(写真 1 左下・写真 3). 本船は,総トン数 9.7 トン,巡航速度 22.5 ノット,定員 30 松田博貴・秋元和實 2019 122 図 合津マリンステーション(★印)位置図.

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名(含乗組員)であり,研究調査と実習に大活躍していま す. 本実習調査船は,有明海・八代海のごく浅海域でも安全 に航行し,また潮流や風の影響下でも高精度に環境測定や 試料採集ができるよう,海底を詳細に観察するカラーセク ター・スキャンニングソナー, GPS 航法装置と複数の推進 機(主推進機+スラスター 2 台)による定位保持機能(定 位保持能力半径 3 m 以内)などが備わっています.また安 全な調査のために,船長と乗船者が緊密に連絡できるよう に研究室と操舵室は連続しており,結露による視認性低下 のない空調,ならびに騒音防止の防音壁の機関室への採用 などの配慮がなされています.環境測定や試料採集の際に 必要なロボットや試料採集用コアラーなどのための特殊な 昇降装置,最新の精密測定機器用のインバーター制御発電 機,バクテリアや環境攪乱化学物質の試料を保存する冷蔵 冷凍庫なども具備されています. ドルフィン SC 号に加え,小回りが利き,ごく浅海域で の試料採集や岩礁域での瀬移りに有用な調査船「しらぬひ」 (写真 1 右下 ; 総トン数 1.5 トン,巡航速度 20 ノット.定 員 6 名)も活躍しています. 主な研究教育活動 合津マリンステーションでは,主に沿岸環境部門の生物 資源循環解析学分野ならびに水・地圏環境科学分野の教員 が中心となって,研究教育活動と各種実習・実験が行われ ています. 生物資源循環解析学分野では,甲殻類・貝類などを対象 とした生態・分類・行動学的研究が行われています.今ま でに,シオマネキ類・ウミホタル・トビハゼなどを対象と した独創的な研究が行われ,多くの成果が公表されていま す.一方,水・地圏環境科学分野では,有明海・八代海の底 質や堆積作用に関する研究,あるいは周辺に分布する白亜 系・古第三系の堆積学的・古生物学的研究が行われていま す.これらに加え,理学部生物学コースや地球環境科学 コースの学部生・大学院生が,卒業研究,修士研究,ならび 写真 1 合津マリンステーション(合津 MS).A : 全景(写真提供 : 合津 MS).B : 学生宿泊室(3 階). C : 食堂(1 階).

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に博士研究の研究拠点として利用しており,研究宿泊棟に 長期滞在して研究を実施している学生もいます. 実験・実習関係では,理学部生物学コースと地球環境科 学コースの実習・実験が実施され,生物学コースの「臨海 実習Ⅰ・Ⅱ」では,海岸動物の分類・生態実習や行動学実験 などが行われています(写真 4).地球環境科学コースで は,毎年,学部 3 年次開講科目である「地質調査法実習Ⅱ」 を実施しています.2 泊 3 日の日程で,日中は海岸部を中 心にルートマップの作成を,夜にはマップの墨入れとそれ を基に柱状図・地質断面図・地質図の作成を行います.2 日目には,前島の北に位置する無人島の瀬島(図)で調査 を行います.この島の海岸付近は,周辺の島々の中でも地 層の露出がよく,また安全に島を一周できるので,研究実 習船に瀬渡しをお願いして,丸一日かけて調査実習を行い ます. また「大学公開実習 A∼D」は,全国の大学生・大学院生 を対象に開講する公開実習になります.そのうち「大学公 開実習 C・D」は地球環境科学系の実習で,1)白亜紀・古 第三紀の干潟,浅海および深海で堆積した地層の観察と化 石採集,2)現生の干潟生物や堆積物の観察,3)化石と化石 化に関する講義,4)微化石の処理法・観察法,5)夜の海岸 でのウミホタルの採集と観察,6)実習船によるミナミバン ドウイルカの生態観察など,盛り沢山の内容を含んだ 1 週 間にわたる実習です(写真 4C・D).熊本大学小松俊文准 松田博貴・秋元和實 2019 124 写真 2 研究実習棟.A : 1 階実習室.B : 2 階実習室.C : 実習用顕微鏡.D : 卓上型走査電子顕微鏡. 写真 3 研究実習船「ドルフィン・スーパーチャレン ジャー号」(写真提供 : 合津 MS).

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教授,前川 匠特別研究員を中心に,学外からセンター客 員教員の金沢大学田中源吾准教授,非常勤講師として九州 大学総合研究博物館前田晴良教授を講師にお招きして実施 し,毎年,日本全国から多くの学生が参加しています.こ の他にも,九州管内の複数の大学が臨海実習や地質調査実 習などに本施設を利用しています. 合津マリンステーションは,平成 25 年度に文部科学大 臣より「教育関係共同利用拠点」の認定を受けました.こ の制度は,各大学が得意とする分野への取り組みを自ら集 中・強化するとともに,他大学との連携を進め,より多様 で高度な教育を展開していく取り組みです.条件を満たせ ば,学外の研究者・学生であっても,施設利用や施設にお ける教育研究に対し,使用料の免除やスタッフの補助など の便宜が図られます.これ以外にも,外部研究者・学生に よる施設利用も可能であり,これまでにも有明海・八代海 の地下地質構造の検討,あるいは天草諸島の上部白亜系・ 古第三系の堆積学的・古生物学的研究など,学外の研究者 や学生が本施設を利用して研究を行っています.また研究 集会などでの利用も可能で,2018 年 3 月には「炭酸塩コロ キウム in 天草 2018」が 2 泊 3 日で開催されました.この 時には,研究実習棟 2 階実習室を使って 20 件に及ぶ研究 発表を行うとともに,研究実習船を利用して御所浦島への 巡検も催行されました(写真 5).合津マリンステーション の利用に関しては,利用案内(http://engan.kumamoto-u.ac.jp/ center/marine_station.html)を御覧下さい. さらに合津マリンステーションでは,その地域性と施設 を生かして,地域の小・中・高校生や一般社会人への環境 教育なども実施しています.地元の児童・生徒を対象とし た観察会,高校生への出前講義・実習,あるいは一般の方々 を対象とした講演会・観察会など,多くの普及啓蒙事業が 行われています. お わ り に 合津マリンステーションは,その恵まれた立地と充実し たスタッフ・設備を最大限に活用して研究教育活動を推進 しています.学内の学生・教員のみならず,多くの学外研 究者との連携による有明海・八代海の海域特性や生物・生 写真 4 実習風景.A :「ドルフィン SC 号」によるプランクトン採集(写真提供 : 合津 MS),B :「ドルフィ ン SC 号」船上から天草ジオパークの御所浦島「白亜紀の壁」を観察(講師は御所浦白亜紀資料館廣瀬浩司 氏,写真提供 : 合津 MS)C : 千巌山せんがんさん貝化石密集層の露頭観察(「公開臨海実習 D」,写真提供 : 田中源吾氏), D : 採集化石のクリーニング実習(同実習,写真提供 : 田中源吾氏).

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態学的検討,天草諸島での地質学的・古生物学的検討は, 環境科学分野の基礎から先端までの幅広い研究に貢献する だけでなく,台風常襲地域で多発する高潮などの海象災害 の防災に向けての科学的アドバイスにも重要です.また沿 岸域の種多様性維持・環境保全に関する研究は,地域の環 境問題に関する助言・指導への手助けとなります.さらに 天草ジオパークとも密接に連携しており,地域活性化への 役割も担っています. 是非,日本堆積学会の皆様にも,合津マリンステーショ ンを活用していただき,沿岸域関連分野の研究を促進して いただくとともに,風光明媚な有明海・八代海と天草諸島 の景観を満喫していただければ,と思います.皆様のご来 所をお待ちいたします. 松田博貴・秋元和實 2019 126 写真 5 合津マリンステーションで開催された「炭酸 塩コロキウム in 天草 2018」(2018 年 3 月).A : 合津 マリンステーション玄関での集合写真.B : 巡検で訪 れた御所浦島トリゴニア砂岩化石採集場.

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