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要介護ハイリスク高齢者の1年間の変化における握力と歩行機能,転倒要因,健康関連QOLの関連性 ~介護予防教室に通う高齢者を対象とした縦断研究~

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(1)

【目的】本研究の目的は,要介護ハイリスク高齢者の 1 年間の変化における握力と歩行機能,転倒要因,健康関連 QOL の関連を明らかにすることである。 【方法】2013 年 10 月~ 11 月および 2014 年 10 月~ 11 月に介護予防教室に通う自立歩行が可能な要介護ハイリスク 高齢者を対象に握力測定,歩行機能,転倒要因,健康関連 QOL の調査を実施した。全身の筋力の指標とされている 握力を測定し,歩行機能は,運動計測システムを用いて 10 m 歩行を行い,ストライド長やスイング速度,関節角度 (膝関節,踝関節),歩行時の膝の前後への振れ幅の分析を行った。転倒要因は,転倒スコア,転倒予防自己効力感尺 度を,健康関連 QOL は QOL の評価尺度である SF-8TMを実施した。 【結果】本研究の対象者は,平均年齢が 80.7(± 6.4)歳の男性 4 名,女性 16 名の計 20 名とした。握力の平均値は 19.6(± 6.5)kg であり,1 年の変化値は,- 0.4(± 2.1)kg であった。対象者の 1 年間の変化における握力と各評 価指標の相関係数では,転倒スコアは有意な負の相関がみられた(r = -0.460,p < 0.05)。SF-8TMの全体的健康感 (GH)は,有意な正の相関がみられた(r = 0.530,p < 0.05)。運動計測システムを用いて測定したストライド長,膝 位置(後)は,有意な正の相関がみられた(r = 0.610,r = 0.540,p < 0.05)。 【結論】要介護ハイリスク高齢者の 1 年間の変化において,握力とストライド長,膝位置(後),転倒スコア,全体的 健康感(GH)で有意な相関関係がみられた。 高齢者 握力 転倒 予防 歩行機能 要 約 キーワード 連絡先:浜松医科大学医学部看護学科 稲垣圭吾     〒 431-3192 静岡県浜松市東区半田山 1-20-1

    TEL:053-435-2511  FAX:053-435-2511  E-mail:[email protected]     受付日:2019. 7. 30  受理日:2020. 5. 2

原 著

要介護ハイリスク高齢者の 1 年間の変化における握力

と歩行機能,転倒要因,健康関連 QOL の関連性

~介護予防教室に通う高齢者を対象とした縦断研究~

稲垣 圭吾

1)

   鈴木 みずえ

1)

  渥美 友梨

2)

  柘植 美咲

2)

松崎 花奈子

2)

  鳥居 史愛

3)

   伊藤 友孝

4)

  谷 重喜

5) 1)浜松医科大学医学部看護学科 2)浜松医科大学医学部附属病院 3)元浜松医科大学医学部看護学科 4)静岡大学工学部機械工学科 5)浜松医科大学医学部医学科 Ⅰ はじめに  わが国の 2018 年度現在の高齢化率は 27.7 %であり, 2060 年には 38 %を超える見込みである1)。また,要介 護高齢者数は毎年増加しており,特に 75 歳以上の後期 高齢者で割合が高くなっている2)。今後,高齢化が進 むことで,要介護高齢者も増加することが予想される。 2016 年に介護が必要となった原因の第 4 位には骨折・ 転倒3)が挙がっているため,転倒を予防することで介 護予防につながる可能性がある。  地域では介護予防を目的とした様々な二次予防事業が

(2)

 本研究は,縦断研究である。 2. 対象   1 年間の変化を調査するため,2013 年 10 月~ 11 月 (2013 年度)および 2014 年 10 月~ 11 月(2014 年度) に H 市の介護予防教室(元気はつらつ教室:二次予防) に参加し,歩行解析を行うため自立歩行が可能である高 齢者を対象とした。この介護予防教室は基本チェックリ ストで要介護ハイリスク者と評価された高齢者を対象と しており,本研究では,要介護ハイリスク高齢者を介護 予防教室(元気はつらつ教室:二次予防)の対象者と定 義した。本研究では,2013 年度と 2014 年度に継続して 調査を受けた高齢者 20 名(男性 4 名,女性 16 名)を対 象とした。これらの流れを,図 1 にまとめた。 3. 倫理的配慮  本研究の実施にあたり,対象者には研究に関する説明 とプライバシー保護に関する説明を行った後,書面にて 同意を得た。また,本研究は浜松医科大学臨床研究倫理 委員会の承認を得て実施した。(承認番号:14-186) 4. 方法  介護予防教室を行っている部屋と別の部屋を用意し, 対象者に対して,研究代表者らにより,聞き取りによる アンケート調査を実施した。基本的属性,Mini-mental State Examination(MMSE),Instrumental Activities of Daily Living scale (IADL 評価尺度),転倒スコア, 転倒自己効力感尺度,歩行に関する意欲や転倒リスク, 健康関連 QOL を調査した。また,運動計測システムを 用いてストライド長・スイング速度および関節角度,歩 実施されている。地域在住高齢者を対象にした転倒予防 体操では,筋力を維持・向上させ,歩行やバランス機能 を改善することで,転倒予防に有効であると報告がさ れている4)。また,地域在住高齢者を対象に 2 週間毎に 2 回の運動介入を行うことで,バランス能力や健康関連 QOL が改善するという報告がある5)。松林ら6)や井口 ら7)は,比較的低頻度短期間の筋力トレーニングでも, 筋力向上とバランス能力の改善に有用であると報告して いる。二次予防事業の対象である要介護ハイリスク高齢 者の転倒予防に対する介護予防の実践は,年々増加して いる要介護高齢者数の減少につながる可能性がある。  海外の先行研究では,加齢に伴う握力の低下を数年に 渡り調査している研究8)や 60 歳以上の高齢者における 握力の予後予測能を明らかにするための文献のシステマ ティックレビュー9),握力と日常生活活動(ADL)の関 連を調査している研究10),前向き都市農村疫学調査に て握力と転倒による外傷,または骨折の関連11),高齢 者の筋力と転倒エピソードの関係を調査した研究12) 報告されている。  これまでの研究から握力は死亡・疾病・身体機能など に予測能があることが示唆されており11),それらを踏 まえれば握力が転倒の予測因子にもなり得ると考えられ るが,有意な関連はみられていない。また,Yang らの 横断研究においても,両手平均の握力と過去 1 年間の転 倒経験との間に有意な関連がみられていない12)。しか し,原田らは勤労者における勤務中の転倒について,握 力が平均より低いことも転倒に関係していると報告13) しており,握力と転倒の関連について,一定の見解が得 られていない。  これらの研究から握力と転倒の関連12)や握力の把握 で転倒リスクを評価できる可能性を示唆する研究13) 運動介入による筋力やバランス能力の変化,健康関連 QOL への影響5)-7)を調査している研究はみられるが, 縦断研究として握力の変化と転倒,歩行機能,健康関 連 QOL の関連に着目した研究は少ない。また,握力は 筋力の把握に有効と報告されている14)-17)。したがって, 全身の筋力の指標とされている握力の変化に着目するこ とで,握力と転倒の関連を明らかにすることができるの ではないかと考えた。本研究の目的は,要介護ハイリ スク高齢者の 1 年後の握力の変化と 1 年後の歩行機能, 転倒要因,健康関連 QOL の関連を明らかにすることで あった。 Ⅱ 研究方法 1. 研究デザイン •利用者に研究協力を依頼 •利用者に研究協力を依頼 参加辞退(n=7) H市の全高齢者数 2013年度:195,418名  2014年度:202,085名 H市内で介護予防教室(元気はつらつ教室:二次予防) を行っている施設(23施設) 調査に同意した施設(調査依頼した施設は2施設) 老人福祉センター:1か所  総合福祉施設:1か所 2013年度調査 同意の得られた対象者(n=27) 2014年度調査 前年より継続の本研究対象者(n=20) 図 1 対象者の抽出過程

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行時の膝の前後への振れ幅の調査を実施し,デジタル握 力計を用いて握力を測定した。

  1)基本的属性

 基本的属性は,年齢,既往歴,現病歴,転倒の有無を 調査した。

  2)Mini-mental State Examination (MMSE)  MMSE とは,認知機能のスクリーニング検査の手法 の一つであり,11 の項目で構成されている18)。合計点 は 0 ~ 30 点で,23 点以下は認知症の疑いがあり,得点 が低下するほど認知機能の悪化を示している。   3)握力測定  握力測定は,デジタル握力計 GRIP-D を用いて左右 一回ずつ測定した。握力計の表示が外側になるように持 ち,直立姿勢で腕を自然に下げ,最大努力で握るように 説明した。

  4)Instrumental Activities of Daily Living scale (IADL 評価尺度)  IADL 評 価 尺 度 と は,Lawton ら に よ り 発 案 さ れ, IADL を 8 項目にて評価する評価指標である19)20)。ス コアが高いほど自立に近いことを示す。   5)転倒スコア  転倒スコアは,身体機能,疾患もしくは老年症候群, 環境要因と,過去 1 年間の転倒歴を問う計 22 項目から なっている。10 点以上が転倒のハイリスクである21)   6)転倒予防自己効力感尺度  転倒予防自己効力感尺度は征矢野らが考案した地域高 齢者が日常生活活動を通して認識される転倒恐怖を測定 する22)   7)Tinetti 歩行評価  Tinetti 歩行評価は,下位尺度としてバランス評価と 歩行評価の二部に分かれ,それぞれ二段階あるいは三段 階で評価を行う23)。今回は歩行評価のみを行った。こ れは 12 点満点で,点数が高いほど状態が良いとされて いる。   8)SF-8 スタンダード版  SF-8 はサマリースコアである身体的健康(PCS),精 神的健康(MCS)と,下位尺度である身体機能(PF), 日常役割機能 ─ 身体(RP),体の痛み(BP),全体的健 康感(GH),活力(VT),社会生活機能(SF),日常役 割機能 ─ 精神(RE),心の健康(MH)にて構成される。 SF-8 は国民標準値や年代別標準値が求められており, スコアが 50 より低値の場合は,平均的な日本人よりも 健康関連 QOL が低いと解釈される24)   9)運動計測システムを用いた 10 m 歩行の歩行分析  歩行中の運動は,伊藤らが構築した運動計測システム を用いて計測した25)。運動計測システムは,3 次元的な 動きや衝撃値を取得できるように 3 軸ジャイロセンサー と 3 軸加速センサーを内蔵した小型の複合モーションセ ンサーを用いて構成されている。センサーを腰部,大 腿部,脹脛部,足背部に装着し,時系列データとして各 部の動きを解析用 PC に取り込んだ上で,角速度の積算 によって各部の 3 次元姿勢角度を求め,それを基に運動 学的計算により下肢の動きを算出する仕組みである。腰 幅や下肢長などの関節間長さを対象者毎に計測しておく ことで,関節角度(姿勢)だけでなく関節位置の動きや 足の振れ方などをモーションキャプチャのように時系列 データとして解析することができる。  実際の計測では,対象者の片下肢の腰部,大腿部,脹 脛部,足背部に,複合モーションセンサーをマジック テープで固定し,直線 10 m の距離を普段の速度で歩 いた時の時間と歩数のほか,関節角度や各関節位置の 変化,ストライド長などの運動学的データを測定した。 10 m 歩行については,実験室内に 16 m の歩行路を設置 し,加速距離 3 m と減速距離 3 m を設けた。測定区間 は上記を除いた直線 10 m とした。転倒防止のため,対 象者に付き添って歩き,対象者の爪先が測定開始地点の ラインを通過すると同時に歩数の計測を開始し,10 m 歩行の時間計測を行った。測定時の対象者の服装に関す る条件として,できるだけ動きやすい服装,普段使用し ている靴を着用し,普段歩行しているスタイル(杖,装 具の使用等)で実施するように説明した。測定は 2 回行 い,平均値を算出した。  図 2 に本研究で用いたストライド長と関節角度(膝関 節,踝関節)を示す。ストライド長は,運動計測システ ムで片側の足が接地してから,再び同じ足が接地するま でに進む距離を計測し,対象者の下肢長で割ることで個 人の下肢長の影響を除去した。関節角度(膝関節,踝 関節)は,運動計測システムから得た下肢の運動データ (時系列データ)を解析し,足を前方に振り出す際の床 との関係や関節の曲げ具合を調べるために,歩行時の足 先が身体直下に来たときの角度を抽出した。 踝関節角度 膝関節角度 ストライド長 図 2 ストライド長と膝・踝関節角度

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5. 統計解析  高齢者のアンケート内容,歩数・歩行時間,運動計測 システムおよび握力に関して,2013 年度と 2014 年度の 平均値,標準偏差を求めた。また,2013 年度と 2014 年 度の各評価指標の平均値の差を算出し,対応のある t 検 定を行った。有意水準は 5 %未満とした。  本研究の主要解析として,握力の 1 年間の変化値と各 評価指標の 1 年間の変化値についての関連を調べるた め,ピアソンの積率相関係数を算出した。相関係数の定 義として,「r = 0.0 ~± 0.2(ほとんど)相関がない」「r = ± 0.2 ~± 0.4 弱い相関がある」「r = ± 0.4 ~± 0.7 相 関がある」「r = ± 0.7 ~± 0.9 強い相関がある」「r = ± 0.9 ~± 1.0(ほぼ)完全な相関がある」と定義し,有意 水準は 5 %未満とした。

 統計解析には,IBM SPSS Statistics Ver21を使用した。 Ⅲ 結果 1. 対象の基本的属性  本研究の対象者は,2013 年度と 2014 年度に介護予防 教室に通う自力歩行が可能な要介護ハイリスク高齢者 20 名(男性 4 名,女性 16 名)とした。対象者の平均年 齢は 80.7(± 6.4)歳であった。高齢者の既往歴は表 1 に示す。対象者で最も多くみられた既往歴は白内障 10 名(50%)であり,次いで高血圧 6 名(30 %)であった。 2. 評価指標の結果  表 2 に 2013 年度と 2014 年度,1 年間の変化値の各評 価指標の平均値と標準偏差,対応のある t 検定の結果に ついて示した。  転倒スコアの 1 年間の変化値では,平均値が 1.2(± 2.7)上昇しており,2013 年度より 2014 年度の方が転倒 スコアの上昇があるが,有意な差はみられなかった(p = 0.062)。関節角度の 1 年間の変化値では,膝関節の平 均値が -8.2(± 14.8)度(p = 0.023),踝関節の平均値 が 9.5(± 9.2)度(p = 0.0002)となっており,どちらに おいても有意差が認められた。その他の評価指標におい て,1年間の変化値についての有意な差はみられなかった。 3.  握力と各評価指標との相関の結果  表 3 に握力の 1 年間の変化値と各評価指標の 1 年間の 変化値についての相関を示した。握力と転倒スコアは有 意な負の相関がみられた(r = -0.460 ,p = 0.040)。握 力と SF-8TMでは,全体的健康感(GH)において有意 な正の相関がみられた(r = 0.530 ,p = 0.020)。運動計 測システムに関して,握力とストライド長(r = 0.610, p = 0.004),膝位置(後)(r = 0.540 ,p = 0.010)で有意 な正の相関がみられた。その他の項目では握力と有意な 相関はみられなかった

MMSE(Mini-mental State Examination) 握力[kg]  右  左  平均 LADL評価尺度 転倒スコア 転倒予防自己効力感尺度 Tinetti歩行評価 SF-8スタンダード版  身体機能(PF) 平均値 27.8 20.0 20.1 20.0 7.4 10.6 27.2 11.6 47.8 標準偏差 ±1.7 ±6.2 ±7.7 ±6.8 ±0.9 ±3.0 ±4.9 ±0.7 ±5.7 調査項目 2013年度 p値 平均値 27.7 20.1 19.1 19.6  7.5 11.8 28.4 11.7 47.3 標準偏差 ±2.5 ±5.0 ±6.3 ±6.5 ±0.9 ±3.6 ±6.4 ±0.5 ±5.9 0.846 0.866 0.204 0.387 0.541 0.062 0.250 0.541 0.755 2013年度 平均値 -0.1 0.1 -0.9  -0.4  0.1 1.2 1.2 0.1 -0.5 標準偏差 ±2.3 ±2.6 ±3.2 ±2.1 ±0.7 ±2.7 ±4.4 ±0.7 ±16.6 2013年度 表 2 2013年度と2014年度の各評価指標の平均値と標準偏差,対応のある t 検定の結果と1年間の変化値の平均値と標準偏差(n=20) 既往歴  脳卒中  心臓病  高血圧  糖尿病  白内障  骨粗鬆症  その他   1 5 6 5 10 5 10   5 25 30 25 50 25 50 人数 % 表 1 対象者の既往暦(2014年度)  (n=20)

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評価指標 相関係数 -0.190 -0.120 -0.460 0.080 -0.130 0.350 0.310 -0.260 0.530 0.170 0.170 0.100 0.060 0.310 0.090 -0.050 -0.010 0.610 0.420 0.080 -0.160 0.020 0.540 0.340 p値 0.410 0.610 0.040* 0.740 0.600 0.140 0.190 0.280  0.020* 0.470 0.480 0.660 0.790 0.180 0.700 0.840 0.970 0.004* 0.070 0.740 0.500 0.930 0.010* 0.140 MMSE(合計) IADL評価尺度(合計) 転倒スコア(合計) 転倒予防自己効力感尺度(合計) Tinetti歩行評価(歩行評価のみ) SF-8スタンダード版  身体機能(PF)  日常役割機能─身体(RP)  体の痛み(BP)  全体的健康感(GH)  活力(VT)  社会生活機能(SF)  日常役割機能─精神(RE)  心の健康(MH)  身体的健康(PCS)  精神的健康(MCS) 10m歩行  歩数[歩](平均)  時間[秒](平均) ストライド長[m]/下肢長[m] スイング速度[m/s] 関節角度[度]  膝関節  踝関節 膝位置[cm]  前  後  中央 *p<0.05 注)ピアソンの積率相関で算出した。 表 3 握力の1年間の変化値と各評価指標の1年間の変化値の相関係数     (n=20)  日常役割機能─身体(RP)  体の痛み(BP)  全体的健康感(GH)  活力(VT)  社会生活機能(SF)  日常役割機能─精神(RE)  心の健康(MH)  身体的健康(PCS)  精神的健康(MCS) ストライド長[m] スイング速度[m/s] 関節角度[度]  膝関節  踝関節 膝位置[cm]  前  後  中央 10m歩行  歩数[歩](1回目と2回目の平均)  時間[秒](1回目と2回目の平均) *p<0.05 注)対応のある t 検定 48.2 45.6 50.0 48.5 51.0 52.5 50.6 45.1 52.2 1.4 3.0 133.0 73.9 -16.7   8.0 -4.3 19.6 9.5 ±6.6 ±8.9 ±5.4 ±4.5 ±6.8 ±2.6 ±6.9 ±5.8 ±4.5 ±0.2 ±0.4 ±11.4 ±6.9 ±4.2 ±2.9 ±2.3 ±3.8 ±2.1 48.3 48.4 50.8 48.7 52.2 51.3 49.7 46.5 51.2 1.4 3.2 124.8 83.4 -17.9 6.2 -5.8 19.8 9.7 ±4.9 ±9.6 ±6.0 ±5.8 ±5.5 ±4.1 ±7.9 ±5.9 ±5.9 ±0.2 ±0.5   ±8.1 ±7.1 ±4.3 ±5.7 ±4.3 ±4.3 ±2.6 0.924 0.273 0.683 0.803 0.485 0.290 0.690 0.209 0.505 0.917 0.093 0.023* <0.001* 0.353 0.157 0.153 0.639 0.716 0.1 2.8 0.8 0.2 1.2 -1.2 -0.8 1.4 -1.0 <0.1 0.2 -8.2 9.5 -1.2 -1.8 -1.5 0.2 0.1 ±5.7 ±11.0 ±8.6 ±4.3 ±7.3 ±4.9 ±9.3 ±4.8 ±6.7 ±0.2 ±0.5   ±14.8 ±9.2   ±5.6 ±5.5 ±4.5 ±1.9 ±1.4

(6)

Ⅳ 考察  本研究では 2013 年度と 2014 年度の 2 回の調査に参加 した対象者において,握力の 1 年間の変化と歩行機能, 転倒要因,健康関連 QOL の関連を明らかにした。握力 の 1 年後の変化を調査することで,1 年後の歩行機能や 転倒要因,健康関連 QOL との関連を把握できるのでは ないかという仮説のもと,データを分析した結果,握 力とストライド長,膝位置(後),転倒スコア,全体的 健康感(GH)で有意な相関関係がみられた。池田らは, 握力が強い人は,歩行速度や応用歩行能力,歩行持久力 も優れていると述べている14)。また,新井らは,握力 や歩行などの移動能力は,複数の精神心理的評価との間 に有意な相関を示すと報告している26)。本研究におい ても,池田らや新井らの報告で示すように,握力とスト ライド長,膝位置(後),全体的健康感(GH)に有意な 相関関係がみられた。   2014 年度の対象者の平均年齢は 80.7(± 6.4)歳,左 右の握力の平均値は 19.6(± 6.5)kg であった。握力は 全国平均と比べると低い値となっているが27),要介護 ハイリスク高齢者であることが影響していると考えられ る。また,対象者は基本チェックリストで要介護ハイリ スク者と評価され,介護予防教室に参加している高齢者 であるが,MMSE の平均値は 1 年間でほぼ変化はなく, 認知機能も良好であった。IADL 評価尺度の得点も 1 年 間でほぼ変化はないため,ほぼ自立している集団である と考えられる。転倒スコアは,有意な差はみられなかっ たが,2014 年度も 10 点以上であるため,転倒リスクが 高い集団であると考えられる。   1 年間の変化値について,対応のある t 検定を行った ところ,関節角度で有意差がみられた。また,有意差は みられなかったが,前・中央・後の膝位置も前(進行方 向)になっていた。本研究では,膝の位置が前(進行方 向)になるほどマイナスの値となるように示している。 したがって,2013 年度より 2014 年度の方が膝の屈曲の 角度が小さく,膝位置が前となり,足関節の背屈が不足 しているため,膝の引き上げ歩行となっていると考えら れる。そのため,膝を思うように上げることができない 場合,つまずきやすい歩行であると考えられる。転倒に 至る機序として,最も主要なものに「つまずき」がある と報告されている28)- 31)。したがって,本研究よりつま ずきから転倒につながるリスクが示唆された。  握力と各評価指標についてピアソンの積率相関係数を 算出した結果,転倒スコアに有意な負の相関がみられ, SF-8TMの全体的健康感(GH)とストライド長,膝位 置(後)に有意な正の相関がみられた。したがって,握 力が 1 年間で増加した対象者ほど転倒スコアが低下し, SF-8™ の全体的健康感(GH)が高くなり,ストライド 長が長く,膝位置(後)が大きいことが示唆された。ス トライド長は,片側の足が接地してから,再び同じ足が 接地するまでに進む距離を表すため,握力が改善した高 齢者ほど歩幅が広くなると予測される。先行研究より握 力は筋力の把握に有効と報告され14)- 17),特に高齢女性 において,握力と膝伸展筋力に有意な相関があったと報 告しており14),健常成人男性においても,握力と膝関節 伸展筋力に有意な相関があったと報告されている32)33) また,最大 2 歩幅を身長で除した値である 2 ステップ 値と握力に正の相関関係が認められ,全身の筋力が高い ほど歩幅を増大させることが報告されている34)。これ らの研究より,握力と下肢筋力の関連が示唆されている ため,握力が改善した高齢者は,下肢の筋力が向上する と,足を挙上して歩行できることから,歩幅が広くなっ たと考えられるが,握力と歩行機能の関連についてのメ カニズムは十分に明らかにされていないことから,今後 さらなる研究が必要である。  本研究の限界として,介護予防教室に参加していない 対象者のデータを取得していないため,介護予防教室の 参加による効果を分析できないこと,対象地域が H 市 の 2 つの施設に限定されていることと対象者が少なくか つ男女比が違うため,データの偏りがあり,すべての対 象者に適応できる結果ではないこと,個別の要因間の相 関のみの検討のため,交絡が生じている可能性があるこ と,複数回の検定を重ねることによる検定の多重性の問 題が挙げられる。 Ⅴ 結論  本研究では,要介護ハイリスク高齢者の 1 年間の変化 における握力と歩行機能,転倒要因,健康関連 QOL の 関連を検証した。その結果,要介護ハイリスク高齢者 の 1 年間の変化において,握力とストライド長,膝位置 (後),転倒スコア,全体的健康感(GH)で有意な相関 関係がみられた。 Ⅵ 利益相反  すべての著者において申告すべき事項はない。 Ⅶ 研究資金  本研究において,特定の資金源はない。

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引用文献 1) 内閣府平成 30 年高齢社会白書.入手先 <http:// www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/ zenbun/30pdf_index.html>,参照 2018-11-05. 2)内閣府令和元年高齢社会白書.入手先 <https:// www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/html/ zenbun/s1_2_2.html>,参照 2019-10-19. 3)厚生労働省平成 28 年国民生活基礎調査の概況.入 手 先 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf>,参照 2018-11-05. 4)山本美江子ほか.地域高齢女性に対する運動プロ グラムの効果.JUOEH(産業医科大学雑誌).27 (4);339-348, 2005. 5)大田尾浩ほか.転倒予防教室が及ぼす身体機能・ 健康関連 QOL・運動習慣への効果.ヘルスプロモー ション理学療法研究.4(1);25-30, 2014. 6)松林義人ほか.低頻度短期間の運動機能向上プロ グラムが認知機能と運動機能の改善に及ぼす影響に ついて.新潟リハビリテーション大学紀要.1(1); 37-44, 2012. 7)井口睦仁ほか.短期間の介護予防教室と教室後の 運動継続が身体機能と生活の質に及ぼす影響.常葉 大学健康プロデュース学部雑誌.12(1);95-100, 2018.

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(9)

The Relationship between Grip Strength and Walking

Function, Factors of Falls, and Health-related QOL in

One-year Change of Elderly People at High Risk for Needing

Care:Longitudinal Study for Elderly People Attending

Care Prevention Program

Keigo INAGAKI1) Mizue SUZUKI1) Yuri ATSUMI2) Misaki TSUGE2)

Kanako MATSUZAKI2) Shiori TORII3) Tomotaka ITO4) Shigeki TANI5)  1) Faculty of Nursing, Hamamatsu University School of Medicine

2) Hamamatsu University Hospital

3) Former Faculty of Nursing, Hamamatsu University School of Medicine

4) Department of Mechanical Engineering, Shizuoka University Faculty of Engineering 5) Faculty of Medicine, Hamamatsu University School of Medicine

【Purpose】The purpose of this study was to clarify the relationship between grip strength and walking function, factors of falls, and health-related QOL in one-year change of elderly people at high risk for needing care.

【Methods】A survey of grip strength measurement, walking function, factors of falls, and health-related QOL was conducted among high risk elderly people participating in a care prevention program and needing care who could roam freely. In order to investigate the relationship between falls and muscle strength, we measured grip strength, an index of bodily muscle strength. Walking variables such as stride length, swing speed, knee joint angle, heel joint angle, and knee position were analyzed through gait measurements and an evaluation system. The fall risk index and a fall prevention self-efficacy scale were applied to explain the fall factor. SF-8TM was applied to explain health-related QOL.

【Results】The sample included 20 subjects(male, n = 4;female, n = 16). The average age was 80.7(±6.4) years. The average baseline value of grip strength was 19.6(± 6.5)kg, and the change in one year was -0.4(± 2.1) kg. The relationship between grip strength of subjects and each index in one-year change was analyzed by correlation coefficients. The fall risk index was significantly negatively correlated with grip strength(r =-0.460, p<0.05). The general health(GH)measure from the SF8 Health Survey(SF-8TM)was significantly positively correlated with grip strength(r = 0.530, p<0.05). Stride length and knee position(rear)from gait measurements and the evaluation system were significantly positively correlated with grip strength(r = 0.610, r = 0.540, p<0.05). 【Conclusion】The results of this study revealed significant correlations between grip strength and stride length,

knee position(rear), fall risk index, and general health(GH)in one-year change of elderly people at high risk for needing care.

elderly, grip strength, fall, prevention, walking function 和文抄録

Abstract

Keywords

Corresponding author: Keigo INAGAKI, Faculty of Nursing, Hamamatsu University School of Medicine 1-20-1 Handayama, Higashi-ku, Hamamatsu city, Shizuoka, Japan 431-3192

TEL:+81 53435-2511 FAX:+81 53435-2511 e-mail:[email protected] Received:July 30, 2019  Accepted:May 2, 2020

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