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高静水圧処理と酵素処理を併用することによる薬用キノコからの多糖類抽出法の開発

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高静水圧処理と酵素処理を併用することによる

薬用キノコからの多糖類抽出法の開発

金 伶勁

*1

・高橋淳子

*1,2

・岩橋 均

*1†

要 旨

薬用キノコ(ツクリタケ; Agaricus bisporus,シイタケ; Lentinula edodes,レイシ; Ganoderma lucidum,ソウオウ;

Phellinus linteus)を高静水圧(150 MPa と 250 MPa,45 ℃で 20 min)条件下に酵素(セルロース A,ペクチナーゼ G)

処理を行い,その後,熱水処理(95 ℃,30 min)を行う高圧・酵素・熱水処理法を用いて多糖類を抽出した。この多糖類 と従来から用いられている熱水処理抽出法や酵素処理抽出法で抽出した多糖類とを抽出収量,組成値,構造変化について 比較することで,高圧・酵素・熱水処理法の有効性を確認した。特に,多糖類の収率が高くなり,β-グルカン,全糖およ びタンパク質の抽出効率にも有効であった。

[キーワード] 薬用キノコ,多糖類,酵素,高静水圧

Optimization of Polysaccharide Extraction from Medicinal Mushrooms

by Combined Enzyme–High Hydrostatic Pressure

Kim Young Kyung

*1

, Junko Takahashi

*1,2

, Hitoshi Iwahashi

*1†

Abstract

The polysaccharides of medicinal mushrooms (Agaricus bisporus, Lentinula edodes, Ganoderma lucidum, and Phellinus linteus) extracted by a combination of enzyme, high hydrostatic pressure were investigated with regard to extraction yield, medicinal value, and structural changes. Performing the hot water treatment (95 ℃, 30 min) after enzymatic extraction (cellulose A, pectinase G) under a high hydrostatic pressure (150 MPa or 250 MPa, 45 ℃ for 20 min) resulted in a higher polysaccharide yield and also facilitated extraction of both total sugars and proteins compared to extraction at ambient pressure.

[keywords] medicinal mushroom, polysaccharides, enzyme, high hydrostatic pressure

1.緒言 何百年もの間,韓国,中国,日本,ロシア東部の代替 医療において,薬用キノコは煎じ薬やエッセンスとして 使われてきた1)。近年では,薬用キノコは,医薬品として だけでなく,栄養補助食品,機能性食品,マイコファー マシューティカル,プロバイオティクスやプレバイオテ ィクスを含むデザイナー食品などと呼ばれ,健康に有益 である製品として利用されている2)。例えば,マッシュ ルームの主要な構成成分であるキノコ多糖類の,抗腫瘍 効果および免疫応答活性化の研究は広くすすめられてい る3)。化学構造に関しては,担子菌から単離された抗癌 活性を有する多数の多糖類が,(1→3),(1→6)-β-グル カンおよび(1→3)-α-グルカンから構成されていること が示されている4)。ツクリタケ; Agaricus bisporus 5,6)

シイタケ; Lentinula edodes 7,8),レイシ;Ganoderma

lucidum 9,10)およびソウオウ; Phellinus linteus 11,12)

由来の多糖類が抗癌活性を示すという報告もある。多く のキノコ多糖類および多糖構造を含む化合物,例えば, レンチナン,クレスチン,シゾフィラン,および活性ヘ キソース等の化合物が,抗癌剤としての市販実績がある13,14) 薬用キノコもしくは食用キノコから多糖類を抽出する 手法は,主として熱水および酸/塩基抽出による。これら 抽出法は,抽出温度,抽出時間,溶媒と固体成分の比率, および沈殿の間に使用される溶媒の体積 15,16)のような 様々な要因の影響を受ける。超音波やマイクロ波を用い る抽出方法は,植物からの活性成分の抽出に広範囲で期 *1 岐阜大学連合農学研究科:〒501-1193 岐阜県岐阜市柳戸 1-1

The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University, 1-1, Yanagido, Gifu 501-1193, Japan *2 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門:〒305-8566 茨城県つくば市東 1-1-1

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待されている新しい技術である。しかし,高コストであ ることから実用的では無いという意見もある17)。最近で は,酵素反応を利用した新しい抽出法も開発されてきて いる18)。食品産業として酵素を使用することは,温度および pH のような制御された物理化学的条件下で,高い基質特 異性を有する反応を行えるという利点が期待される。 上記のように,薬用キノコの有効成分抽出法の収率, 有効性さらには,安全性を改善する方法が積極的に研究 されている。その中で,高静水圧処理は,食品産業にお ける新しい食品加工技術としての可能性を有すると期待 されている19)。高熱処理と比較すると,100~400 MPa の 処理は,香りの分子,ビタミン,および色素などの低分 子化合物を損なうことは少ないと期待されるからである20) 一方で,髙静水圧処理は,高温処理と同様に,デンプン およびタンパク質などの生体高分子の天然構造の変化を 誘導することが危惧される。また,加圧により細胞膜が 変化し,細胞内の酵素を細胞外や細胞質へ放出させる可 能性がある21,22)。このようなマイナス面には注意が必要 であるが,高圧条件の酵素反応に対する影響についての 研究がなされており23,24),ライムやキノコのような植物か らの多糖類の酵素抽出において,高圧条件が酵素活性を 高めるために有効であるという利点は魅力的である25,26) 本研究の目的は,薬用および食用キノコから高静水圧 処理と酵素処理の併用による,生理活性物質の抽出の可 能性を検討することにある。高静水圧処理が可能になる と,試料が高温状態に曝される時間を短くし,生物活性 化合物を損なわないことが期待でき,効率的な抽出を可 能とし,経済的にも有用であると考えられる。 2.材料及び方法 1)試料と酵素

A.bisporus,L. edodes,G. lucidum,およびP. linteus

の乾燥子実体は,韓国において機能性食品として期待さ れている。そこで, 韓国の Kyung-Dong Market から入手 した。これらの試料 25 g を乾式粉砕機(DSMP-370SUS, DUKSAN CO.LTD)にて粉砕し,蒸留水(500 mL)に分散 させた。30 g 以上になると濃縮効率下がるため本条件を 用いた。予備実験で圧力と温度により酵素活性の低下し ない酵素; セルラーゼ A「AMANO」およびペクチナーゼ G 「AMANO」は,天野エンザイム株式会社から購入した。 2)抽出法 図 1 に抽出法の手順を示す。薬用キノコからの多糖類 は,①熱水処理(1 通り),②酵素・熱水処理(2 通り),ま たは③高圧・酵素・熱水処理27,28)(3 通り)により抽出し た。合計 3 通りの手順となる。 熱水処理は,分散試料(5 %(W / V))をホモジナイ ザー(Kinematica,Swiss)により均質化後,95 ℃,100 rpm で 4 h 振盪して抽出した。濾紙(No.42,Whatman) で濾過した後,ロータリーエバポレータ N-1300 (SAMPLE FLASK 1 L, 最大蒸発能力 1.38 L/h, 回転速度 10-310 rpm,水蒸発量 max 23 ml/min)及び Aspirator A-1000S (排気速度 16 L / 19 min) を用い,55 ℃,約 2 h で, 容量の約 1/10 に濃縮した。3 倍量の 96 %エタノールを 加え,4 ℃で一晩静置した後,11,300 ×g で 20 min 遠 心分離して得た沈殿物に,100 ml の蒸留水を加え,同様 の濃縮,エタノール沈殿,遠心分離により再度沈殿物を 回収し液体窒素中で凍結させた。 酵素・熱水処理は,分散試料をホモジナイザーにより 均質化後,酵素(セルロース A:ペクチナーゼ G = 1 : 1) 1.0 g を添加し,45 ℃,100 rpm で 30 min と 60 min 振 盪処理した(2 通り)。次に 95 ℃,100 rpm で 30 min 振 盪処理し,濾紙にて,濾液を得た。得られた濾液は,熱 水処理と同様に,ロータリーエバポレータにより約 1/10 に濃縮, 3 倍量の 96 %エタノール,4 ℃で一晩静置後, 11,300 ×g で 20 min 遠心分離して得た沈殿物を液体窒 素中で凍結させた。 高圧・酵素・熱水処理は,均質化した分散試料をプラ スチックチューブに充填し,実験用高圧プロセッサー (KOBELCO,Japan)にセットした。高圧処理は,2〜3 分 で 150 MPa と 250 MPa まで加圧し,20 min 圧力を保持し た後,1〜2 分で減圧した(3 通り)。圧力容器の温度は, 図 1 薬用キノコからの多糖類画分の調整法 子実体乾燥質量, 25 gを蒸留水、500 mlで分散 ろ過(ろ紙) 減圧乾燥 沈殿 (96% エタノールl, 4 °C, 一晩) 遠心分離 11,300 ×g, 20 min 上澄 残渣 凍結保存(液体窒素下) (多糖類画分)  上澄 沈殿 (96% エタノールl, 4 °C, 一晩) 減圧乾燥 蒸留水添加 遠心分離 11,300 ×g, 20 min 熱水処理 95 °C , 30 min ① 熱水処理 酵素添加, 0.2 % ( セルラーゼ: ペクチナーゼ = 1:1 )  ② 酵素∙熱水処理 酵素反応処理 45 °C, 30 min 熱水処理 95 °C , 4 h 酵素反応処理 45 °C, 60 min 酵素添加, 0.2 % ( セルラーゼ : ペクチナーゼ = 1:1 )  ③ 高圧∙酵素∙熱水処理 高圧酵素反応処理 150 MPa, 45 °C,  for 20 min 高圧酵素反応処理 250 MPa, 45 °C,  for 20 min 熱水処理 95 °C , 30 min

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容器を囲む外部循環液により 45 ℃に保持した。加圧お よび減圧時は断熱を行ったことから 40 ℃から 50 ℃の 範囲で変動したが,一定の圧力に維持した 20 min は温 度も保持されたことから,一定条件での酵素反応は進行 したと推定される。高圧・酵素併用後,95 ℃,100 rpm の熱水で 30 min 抽出した後,濾過した。濾液は,他処理 と同様に,濃縮,沈殿,遠心分離を行い,液体窒素中で 凍結させた。 3)全糖量定量と単糖類分析 改変フェノール - 硫酸法29,30)を用いて全糖量を求め た。すなわち,96 穴プレートを用いて,水溶性多糖類画 分 50 μL と 5 %フェノール溶液 30 μL を混合し,150 μL の濃硫酸を加え,90 ℃,5 min 処理した。室温に冷 却した後,混合物の吸光度を 490 nm で測定した。標準曲 線は,無水 D-グルコースを用いて測定した。 単糖成分の分析は,試料を 2 M トリフルオロ酢酸によ り 120 ℃で加水分解した後に,高速液体クロマトグラフ ィー(HPLC)システム(2690; Waters,USA)に Sugar-Pak カラム(300×6.5 mm)を用いて分画分析した。蒸発 光散乱検出器(Evaporative Light Scattering Detector, ELSD)により得られたデータを Empower 2 ソフトウェア を用いて分析した。試料の注入量は 10 μL,カラムオー ブン温度は 40 ℃,アセトニトリル : 水(75 : 25)を 移動相とし,移動相流速は 1.0 mL / min とした。また, 単糖キット(Sigma-Aldrich,USA)を標準に用いた。 4)タンパク定量およびアミノ酸分析 試料のタンパク質は,Bradford 法によりウシ血清アル ブミンを標準として測定した31)。多糖類試料 100 μL と クマシー試薬(Thermo scientific,USA)100 μL を混 合し,室温で 5 min インキュベートした後に,595 nm の 吸光測定を行った。試料のアミノ酸組成は,AccQ・Fluor 試薬により,HPLC(2965; Waters,USA)に AccQ・TagTM Nova-Pak カラム(150×3.9 mm)を使用し,蛍光検出に よりデータを得た32)。試薬の注入量 10 μL,カラムオー ブン温度 37 ℃,および移動相の流速は 1.0 mL /min と した。移動相は,溶離剤 A(200 mL の AccQ・Tag 溶離剤 A 原液を 2 L の Milli-Q 水と混合),溶離剤 B(アセトニ トリル)および溶離剤 C(Milli-Q 水)を用い,溶出手順 は以下の通りである。0 min,100 % A; 18 min,5 % B; 19 min,9 % B; 29.5 min,17 % B; 33 min,60 % B,40 % C; 36 min,100 % A; 53 min,100% A。標準 アミノ酸は Sigma-Aldrich(USA)のものを使用した。 5)β-グルカンの定量

β-グルカンの定量は,キノコおよび酵母β-グルカン アッセイキット(Megazyme Int. Wicklow,Ireland)を

用いて測定した。総グルカン(α-グルカンとβ-グルカ ン)の測定は,試料 10 mg を濃塩酸 150 μL で加水分解 し,蒸留水 1 mL で希釈した後,2 N KOH 1 mL で中和し た。exo-β-(1-3)–β-glucanase and β-glucosidase 含 有酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)200 mM により D-グル コースに加水分解した。加水分解された試料をグルコー スオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ(GODOP)試薬と混合 し,510 nm の吸光測定を行った。α-グルカン濃度は, 試料 10 mg に 2 N KOH 1 mL および 1.2 M 酢酸ナトリウ ム緩衝液(pH 3.8)4 mL amyloglucosidase 添加した。 この懸濁液に invertase を加えた amyloglucosidase 0.1 mL で分解した後,GOPOD 試薬 1.5 mL と共にインキュベ ートし,続いて 510 nm の吸収を測定した。 β-グルカン 量は,総グルカン量とα-グルカン量の差とした。グルカ ン量は,多糖の乾燥質量中の含量(g / 100 g)として表 した。 6)FI-IR による構造解析 薬用キノコ多糖類の FT-IR スペクトルをフーリエ変換 赤外分光計(Bruker Optics Inc.,USA)で計測した。試 料を KBr と共に粉砕し圧縮してペレットとしたものを FT-IR で測定した。測定条件は,分解能 2 cm -1,測定範 囲 500〜4000 cm -1 とし,試料は吸収帯の相対強度の変 化として示した。主なクラスの化合物に対応する吸収バ ンドのピーク強度を測定した。 7)実験回数とデータ処理 すべての実験は3回以上行い,平均±標準誤差として図 に示した。図2,図3に示した,熱水,酵素処理(30 min), 酵素処理(60 min),併用(150 MPa),併用(250 MPa)間の データの分析は,一元配置分散分析,Tukeyの多重比較法 で行った。図4と図5に示した,熱水処理と高圧酵素熱水 処理間のデータの分析はstudent's t-testを行った。 3.結果と考察 1)薬用キノコの多糖抽出法の比較 先ず,各種薬用キノコの多糖類抽出法を各条件で比較 した。熱水抽出法を用いると,図 2 に示すように,A. bisporusでは約 2.39 g / 25 g,L. edodesでは 2.34 g / 25 g,G. lucidumでは 1.78 g / 25 g,P. linteusで は 1.79 g / g の収率で抽出された。検定はほぼすべて の条件間において危険率 1 %以下で有意差を示した。有 意差が無い,もしくは1~5 %の危険率で有意差を示した ものを図 2 に,それぞれ NS と*で示した。一方で,酵素 を添加し短時間反応させた場合には,その後の 30 min の 熱水抽出を加えても,4 h の熱水抽出法には及ばない収 率であった。しかしながら,20 min の高圧・酵素併用処 理を行った後の熱水処理では,多糖類の収率が向上し,

(4)

4 h の熱水処理単独と同程度の収率を示した。高圧・酵 素併用処理その後の熱水処理では,4 h の熱水処理に比 べると,熱水処理時間が短いことから,エネルギー消費 や成分の熱分解を抑えることが期待される。 2)高圧・酵素・熱水処理によって抽出される多糖類の 特徴 高圧・酵素・熱水処理の併用により,多糖類が効率よ く抽出されることが確認された。それでは,抽出された 成分の組成から薬効が期待されるのであろうか。薬効成 分として最も期待される,β-グルカンに注目した。図 3 に示す結果から,熱水処理と高圧・酵素・熱水処理を比 較した。A. bisporus では 19.76 (熱水) から 24.13 (併用 150 MPa),L. edodes では 17.89 (熱水) から 21.32 (併用 150 MPa),G. lucidumでは 15.08 (熱水) から 18.82 (併用 250 MPa),P. linteus.では 17.58 (熱 水) から 18.20 (併用 250 MPa)に増加した。これらの値 にはすべての群間で統計的な有意差(図 3, p < 0.01) が認められ,可溶性β-グルカン含量という点でも高圧・ 酵素・熱水処理の有効性が確認された。β-グルカン量 を比較すると,A. bisporusとL. edodesでは,150 MPa での酵素処理の抽出効率は,温度,時間が同じ条件の 250 MPa での酵素処理より高い値を示した。一方,G. lucidum とP. linteusでは,250 MPa の高圧処理が高い値を示 したため,本条件を用いて次の実験(図 4)を行った。 添加した酵素(セルロース A:ペクチナーゼ G = 1 : 1) 活性に対する圧力および温度の影響を評価するために, 多糖類中の単糖を分析した結果を図 4 に示した。各単糖 の比較においてすべての条件で,p < 0.01 の有意差が 認められた。マンノース,ガラクトースおよびキシロー ス に つ い て は , 高 圧 ・ 酵 素 ・ 熱 水 処 理 を 行 っ た A. bisporusおよびP. linteusの収量は,熱水処理単独の 収量より高い値を示した。 逆に,マンノースおよびキ シロースについては,高圧・ 酵素・熱水処理を行ったL. edodesおよびG. lucidumにおいて,熱水処理単独で有 効であった。一方で, 多糖類抽出物中の単糖類の組成比 率は,熱水処理と,高圧・酵素・熱水処理で,大きな違 いは認められなかった。 ① 熱水処理 ③ 高圧·酵素·熱水処理 0 10 20 30 40 50 60 70 80

A. bisporus L. edodes G. lucidum P. linteus

0 10 20 30 40 50 60 70 80

A. bisporus L. edodes G. lucidum P. linteus

キシ ロ ー ス キシ ロ ー ス グル コース ガラ クトース グル コース マンノ ー ス ガラ クトース マンノ ー ス 収率 (%) 収率 (%) 図 4 各抽出法によって抽出された多糖類を構成する単糖組成 同一薬用キノコ中の各単糖組成について処理①と③間で p<0.01 図 2 薬用キノコからの多糖類抽出における 高圧酵素併用処理法の有効性 0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

A. bisporus L. edodes G. lucidum P. linteus 熱水 酵素 処理 (30 m in) 酵 素処理 (6 0m in) 併用 (1 50 MP a) 併用 (2 50 MP a)

A. bisporus L. edodes G. lucidum P. linteus

* NS NSNS * NS NS NS NS NS NS * と NSはp < 0.05 それ以外の比較はp < 0.01 収率 (g /25 g) 図 3 抽出法の異なる多糖類中のグルカン量 0 5 10 15 20 25 30

A. bisporus L. edodes G. lucidum P. linteus 熱水 酵素処理( 3 0m in) 酵素 処理 (6 0m in) 併用 (1 50M P a) 併用 (2 50M P a)

A. bisporus L. edodes G. lucidum P. linteus

含量 (g /100 g多糖類乾 燥 質量 ) すべての群間でp<0.01

(5)

多糖類と同じ条件で,熱水処理による多糖類抽出試料 と高圧・酵素・熱水処理による多糖抽出試料のアミノ酸 組成を図 5 に示した。熱水処理に比べて,収率に有意な 差があるアミノ酸には*(p < 0.05)と**(p < 0.01) を付した。アルギニン,グルタミン酸およびプロリンの 含有量は,高圧・ 酵素・熱水処理を施したA. bisporus,

L. edodes, G. lucidum, and P. linteusにおいて,熱

水処理よりも高い値を示した。一方で,セリンおよびチ ロシンの含有量は低い値であった。A.bisporusの抽出物 は,主としてプロリンとアルギニン,G. lucidumの抽出 物は主としてアラニンとグルタミン酸,L. edodesとP. linteus の抽出物はグルタミン酸を多く含んでいた。多 糖類抽出試料中には,抽出条件にかかわらず,他のアミ ノ酸も検出された。これらの結果は,高圧・酵素・熱水 処理と熱水処理では溶出されるアミノ酸組成が同じでな いことを示している。恐らく高圧条件下において,プロ テアーゼが反応しているためであると考えることができる。 3)抽出多糖類の構造的な特徴付け 薬用キノコ多糖類の生理学的性質は,結合型に強く依 存可能性がある。したがって,結合構成は,多糖の構造 - 活性の関係において重要な因子と考えられる。多糖抽 出物の FT-IR スペクトルを観察することで,結合型につ いても評価を行った。β-グルカンに特徴的なバンドが, 図 6 に示すように検出された。すなわち,3600〜3200cm-1 の範囲の吸収ピークは,糖の OH 基とアミノ基の NH 結合 の伸縮振動(the stretching vibration)を示し,3000 〜2800 cm -1の範囲の吸収ピークは,糖の CH 結合の伸縮 振動を示すものであった。1700〜1500 cm -1の範囲のピ ークは,多糖類 - タンパク質複合体の存在を示すタン パク質 NH ストレッチ,および C = O または COO-と結合 する芳香族 C = C 結合の伸縮振動に起因する可能性があ り,これはポリフェノールの存在を示した。1400〜1300 cm -1領域のバンドは,フェノール性 OH 基に起因する。 中赤外領域 1200-800 cm-1の吸収帯は,異なる構造およ び組成を有する多糖類に起因する。1200〜1100 cm-1の範 囲のピークは,炭水化物の-H,CO の伸縮振動を示す,1100 〜1000 cm-1の範囲のピークは,タンパク質結合β-グル カン上の O 置換グルコース残基によるものである。960 〜910 cm-1の範囲のピークはα-グリコシド結合を示す。 890〜860cm-1の範囲は,β-配位中の CH 結合を示した33,34) これらの結果は,高圧・酵素・熱水処理により抽出さ れた多糖類抽出試料は,α-およびβ-グリコシド結合に よって連結されたタンパク質結合多糖類から成り,A.

bisporus,L. edodes,G. lucidum,およびP. linteus

いずれの種に対しても高圧・酵素・熱水処理では,それ ぞれの熱水処理試料よりも収量も多いことを示している。

(6)

4.結論 本研究の目的は,薬用キノコのβ-グルカンを含む生物 活性多糖の効率的な抽出方法に関する高圧・酵素・熱水 処理の有効性の評価である。評価の結果,高静水圧処理 が酵素の触媒活性を増強し,薬用キノコの多糖抽出効率 に有効であることを確認できた。この抽出法は,高温状 態を少なくできるため,薬用および食用キノコから生物 活性化合物を損なわないことが期待でき,今後の動物試 験などを待たなければならないが,高い薬効も期待でき る。また,効率的な抽出を可能とし,初期投資を回復で きれば,経済的にも有用であると考えられる。さらに, アミノ酸組成が,これまでの抽出法と異なることから, 嗜好性の多様化にもつながる可能性がある。 高静水圧処理条件下の,セルラーゼおよびペクチナー ゼなどの酵素と多糖類との反応に関する作用機序はまだ 十分に検討されているわけではない。高静水圧処理,酵 素加水分解,および熱水処理の組み合わせに基づくこの 抽出プロセスに関する研究は,高圧技術の工業的有用性 を確認していく上で,今後も評価の蓄積が必要であると 考えている。 引用文献

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図 5  各抽出法によって抽出された多糖類のアミノ酸組成
図 6  薬用キノコから抽出した多糖類の FT-IR 観察

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