Ⅰ はじめに 1 課題設定 本論は、人口密度が高く問題が表面化しやすい 東アジア地域の食品廃棄物問題(Food Waste Problem)のうち、その削減が難しいとされる食 べ残しに関して、韓国の食品廃棄物政策の現状分 析を通じ、わが国への示唆を得ることを目的とし ている。韓国を取り上げる背景には、わが国以上 に食品廃棄物の最終処分が困難ななかで公衆衛生 を確保するため、その対策が急ピッチで進んでい ることがある。 農林水産省によると、わが国の2012年度におけ る食品廃棄物は、事業系1,916万t(大豆ミール等 有価物含む)、家庭系885万t、合計2,801万t発生し ている。そのうち50.8%が、有価物の販売や食品 製造業から排出される飼料化、堆肥化、メタン化 などにより再生利用されている。しかし、2011年 度における外食産業の食品廃棄物の再生利用率は 23%と食品産業内で最も低く、家庭系で発生する 食べ残しは、ほぼ手付かずの状況である。折し も、わが国の食品リサイクル制度の見直しのなか で、2014年4月より外食産業6業種を含む業種区 分別に26のリデュース(発生抑制)目標値が定め られ、その対策は急務となっている1)。
Analysis of South Korean Institutions regarding Food Waste and Leftovers:
Implication for Food Recycling Institution in Japan
KOBAYASHI, Tomio
Aichi Institute of Technology Abstract:
This study focused on the problem of food leftover waste. A case study of a South Korean institution was undertaken from the point of view of the food waste reduction capability together with public hygiene and culinary culture. It was shown that South Korean meter-rate based charging system and recycling system are politically unified by the framework of Comprehensive Countermeasures of Food Waste Reduction Institution. Further, it is clear that a positive effect was brought about in the management not only in public recycle facilities but also in private facilities. Moreover, it was shown that the checks and publicity by the NPO organizing the “MATTABI CAMPAIGN” (to eat food thankfully) were also a success factor in this management. South Korea's experience has shown that institutions can promote the integration at a national level by implication. 〔Key words〕 Food Waste Institutions, meter-rate based charging system, South Korea
*愛知工業大学(E-mail:[email protected]) キーワード:食品廃棄物制度、従量制課金制、 韓国 《論文》
韓国における食べ残しに関する食品廃棄物制度の分析
─わが国の食品リサイクル制度への示唆─ 小林 富雄*2 先行研究 三浦(2005)では、日韓比較を通じて、韓国で は食べ残しが多く、日本では調理時の過剰除去が 多いことが示唆された。日本の飲食店における食 べ残しについては、小林(2011)において、その 持ち帰りに関する分析がなされ、食中毒リスクを 過度に回避することが課題であると指摘された。 また、小林ら(2013)では、外食における食べ残 しは業態間で大きな差があることが示された。廃 棄物全般の政策動向については、高橋ら(2010) において、日韓の比較分析をしている。そこで は、日本に対して韓国のほうが廃棄物最小化を促 す政策(有料化等)を積極的に導入していること が明らかになった。 しかしながら、韓国の食品廃棄物制度が食べ残 しに与える影響についての直接的な研究成果は乏 しい。 Ⅱ 分析の方法 本節では韓国の廃棄物政策の経緯を俯瞰し、そ の現状とわが国との差異について説明する。その うえで、次節では、韓国の現地調査から得られた データをもとに、食べ残しの現状とその対策を分 析する。結語では、わが国の食品リサイクル制度 に関する政策的含意を示す。 1 韓国の廃棄物政策における経緯 日韓の概況を整理したものが表1である。日本 のほうが、人口、面積ともに韓国を上回っている が、人口密度は韓国が上回っている。但し、韓国 の人口密度は世界第3位、日本は第7位と両国と も高水準である(面積3万k㎡以上の国の順位)。 一方、国民1人あたりの食品廃棄物の発生量は、 韓国のほうが少ない。また、2012年の食品リサイ クル率も、96%とわが国を凌ぐ高水準である。 このような韓国の取り組みは、廃棄物政策の差 異によって説明され得る。高橋ら(2010)によれ ば、日韓の廃棄物政策を、第1期(公衆衛生期)、 第2期(規制型環境法による廃棄物処理期)、第 3期(リサイクル期)、第4期(循環型社会・経 済政策期)に区分した場合、わが国は第2期にお いて焼却を中心とする中間処理技術が発展した が、第4期への移行が遅れた。制度上、1970年の 公害国会によって制定された廃棄物処理法のもと 焼却処理が推進され、一定の成果をみたからであ る。しかし、第4期の始まりとなる循環型社会形 成推進基本法が成立する2000年までには、30年の 年月を要した。 一方の韓国は、第2期、第3期の廃棄物管理を ほとんど経験しないまま一気に循環型社会に向け た政策・制度を導入した。高橋ら(2010)が示す ように、第4期の始まりとなる資源の節約とリサ 表1 日韓の概況 日本 韓国 人口(2014年) 12,706万人 5,042万人 面積 37.8万㎢ 10.0万㎢ 人口密度 336.1人/㎢ 504.2人/㎢ 食料自給率 39%(2010年度) 50%(2009年) 食品廃棄物 の発生量 ・事業系1,916万t、家庭系885万t・事業系食品ロス331万t、家庭系312万t ・約490万t(2001年から2012年の平均、製造業除く) ・期限切れ、流通過剰、家庭廃棄など国内で15兆ウォンの 食品ロスが発生 ・流通量の3%の食品がロスになっている 1人あたり食品 廃棄物排出量 134kg/人 約100kg/人 食品廃棄物 政策 ・廃清法・食品リサイクル法(目標値設定) ・廃棄物管理法、飼料管理法、肥料管理法 ・食品寄付活性化法(フードバンク優遇) ・法人税法第19条、所得税法第55条(寄付食品の損金処理) ・寄付食品制定事業運営案内 ・排出従量課金、目標値設定、食べ残し天秤(計量) 食品リサイクル率 84%(2011年、食品産業のみ) 96%(2012年全体)
資料:人口:IMF (2015年10月版)「World Economic Outlook Databases」、面積:CIA「The World Factbook」、食料 自給率:農林水産省「食料需給表」とFAO“Food Balance Sheets”より農林水産省試算、1人あたり食品廃棄 物排出量:農林水産省「食品廃棄物等の利用状況(平成24年度推計)」、環境部(2010)『우리밥상에담긴진실』よ り筆者試算、食品廃棄物政策・食品リサイクル率:農林水産省ホームページ、韓国環境省ホームページ
イクル促進に関する法律が制定されたのは1992年 であり、わが国よりも10年弱早い。その結果、日 本が第2期に入った1971年時点で、焼却49%、埋 立36%であったのが、(第3期中ばの)1995年に は焼却84%、埋立13%と、全国的に焼却が広がっ たが、一方の韓国は、第4期の1996年時点で、埋 立68%、焼却5%、資源化26%と、焼却の経験を ほとんど経ずに循環型社会に突入した。 李(2004)でも韓国の本格的な廃棄物管理とな るリサイクルは、1992年以降に進んだと指摘さ れ、焼却処理に対する地域住民の反対も大きな要 因としている。 2 韓国の食文化と食品廃棄物問題 姜(2000)によれば、東アジアの食生活を表し た俗説に「中国人は味で食べ、日本人は眼で食 べ、韓国人は腹で食べる」というものがある。こ うした風潮は、現代の韓国の飲食店でも受け継が れており、「いくら多く盛り付けても多すぎると いうことはなく、お膳の脚が折れるほどのごちそ う」がよいとされる。例えば、飲食店で焼肉やビ ビンパを注文したとすると、それ以外のおかず (キムチ類やナムルなど)が小皿で数種類提供さ れる。これを「パンチャン(반찬)」というが、 食べ切るとすぐに補充されるため、お客が席を立 ったあとには大量の食べ残しが発生する。しか し、その量により「飲食店側から客へのサービス 度をはかる」という。転機となったのは、1988年 ソウル・オリンピック開催による飲食店の出店加 速である。その間、世帯あたりの家計に占める外 食支出比率は、1990年の20%から、2000年には39 %、2005年には46%に倍増した。 その結果、表2のとおり食品廃棄物の発生量が 年々増加し、地下水汚染などを含む環境悪化や廃 棄費用の問題が顕在化した。そのため、国の環境 部生活廃棄物課は啓蒙活動をおこない、保健福祉 部はよいメニュー制を導入して飲食店が料理の適 量提供やパンチャンの種類の制限を促した。そし て1994年9月1日には、飲食店・集団給食事業者 に対して食品廃棄物減量を義務化した。1995年7 月には環境部や保健福祉部など8部署で食品廃棄 物管理協議体を設置し、1996年11月には首都圏食 品廃棄物の圏外移出制限に繋がった。同年12月に は食品廃棄物減量総合対策を環境保健委員会で決 定し、この対策は現在に至っている。 政府は1997年を健全な食べ物文化定着の年と位 置付け、生ごみを半分に減らすキャンペーンを展 開し、2000年には食事文化改善及び、先述の良い メニュー実践のためマスコミ広報を強化した。ま た、官公庁を中心に、食べ残し抑制のため残飯秤 による計量、罰金のほか、食べきりポイント制な ども推進した。2013年5月にはパンチャリと称す るおかずを半分オーダーにできる啓蒙活動を実施 している。但し、ヒアリングでは、このような取 り組みは大きな効果を生んでおらず、認知してい ない国民も多い。 しかし、2012年に就任した朴槿恵大統領の公約 である創造経済のもとZERO WASTEが基本方針 となり、2013年よりロンドン条約(採択は1993年) に従って海洋投棄が全面禁止となったことが重な って、生ごみの削減は依然として大きな課題とな っている。 韓国政府(環境部)が2006年以降実施している 世帯・外食・給食業者の食品廃棄物調査では、 年々発生量が増加し、食品廃棄物の総供給量の 1/7に達するという。その理由を「人口及び所帯 数の増加」「食生活パターンの変化」「ふんだんなお 膳立てが好きな国民意識」としている。 Ⅲ 調査結果と分析 1 生ごみ従量課金制の現状 現在、韓国政府が注力している食品廃棄物削減 施策は、生ごみ従量課金制の構築である。全廃棄 物の排出者負担の原則は1995年より取り組みがス タートし、1997年に生ごみの分別と併せて法的に 義務化された。2000年には改正廃棄物管理法が施 行され、店舗面積100㎡以上のレストランに加 え、1日100食以上を供給しているホテル・農 場・漁業市場・大規模小売店に対して生ごみの減 表 2 韓国における食品廃棄物の発生量 (t/日) 2001年 2003年 2005年 2007年 2012年 11,237 11,398 12,977 14,452 17,100 資料:資料:環境部(2010)『우리밥상에담긴진실』より。 なお、2012年の発生量は推定値である。
量が義務づけられた。その後、区が事業所への検 分と監視を実施し、ごみ減量未実施の場合は罰金 を課す体制を構築した。 しかし、従量課金制には小規模な飲食店を含む 共同体レベルの社会的コンセンサスが不十分であ ったため、政府は2001年にごみ従量制改善総合計 画、2002年にはごみ従量制施行指針改正に基づく 啓蒙活動にも取り組んだ。そして2010年に、政府 は横断的取り組みとして生ごみ削減総合対策、そ して同年の生ごみ従量制施行(2012年本格実施) を経て現在に至っている。 2 政府の取り組み 生ごみ従量課金制の実施主体は自治体だが、 2014年9月現在で、国内145行政区中92自治体 (63.4%)で生ごみ従量制が実施済みである。そ れを推 進 する政 府 による総 合 対 策 のひとつに ZERO FOOD WASTEという減量コンテスト がある。2011年より全国17市道と227市郡区の自 治体を対象にスタートし、現在では集団給食所、 飲食店、家庭にまで拡大している。生ごみ減量実 践事例と、小中高校生及び一般市民へのアイデア 公募の2本立てで、総額2,750万ウォンの賞金を 争う。参加申し込み件数は、2012年の407件と比べ、 2013年は430件と増加傾向にある。自治体に対す る採点基準は、表3のとおり従量課金制が35点で 最重要視されている。また、教育・広報、容器の 衛生管理を促す配点は20点で、減量だけでなく分 別にも言及することで相対的に高得点が得られる 条件となっている。 2013年は、応募件数430件から実践事例27件、 アイデア部門30件の合計57件を受賞作として選定 した。実践事例は実績資料の提示による減量効果 の客観的評価、アイデア部門は新規性や実現可能 性・波及効果などが考慮された。 食べ残しに注目した入賞事例では、飲食店のパ ンチャンをバイキング形式(オーダーメード型メ ニュー)にして発生率を削減したり、食べ残した パンチャンをまとめて大きな碗に入れ替え、ごま 油とコチュジャン、生野菜を提供して、ごはんを 混ぜてビビンパ風にして提供する追加的なサービ スが高い評価を得ていた。いずれも食べ残しを削 減するだけでなく、サービス向上による売上増を 伴っている点が特徴的である。 3 自治体の取り組み 海外からも注目を集める取り組みを進めている のが、ソウル特別市人口の南東部に位置する松坡 区である2)。人口67万人の同区では、2007年より 生活ごみ全般のリサイクルを担うZERO WASTE PARKの建設に着手し、2011年11月完成した。ガ ラスや瓶・缶・牛乳パック、発泡スチロールなど のリサイクルの施設も併設しているが、生ごみリ サイクルを行う飼料化施設は、総工費391億ウォン のすべて民間企業よりBTO方式(Built Transfer Operation)で調達している。投資したリ・クリ ーン社(Re-Clean Co.,Ltd)は、20年間の管理運 営・使用権を得て、現在は2名で運営している。 この飼料化施設は、ソウル特別市にある5箇所 の生ごみリサイクル施設のうちの1つであるが、 区内で発生する食品廃棄物170t/日がすべてこの 飼料化施設に集められ、さらに、その他5区から 176tを受け入れることで、処理能力450t/日に対 する稼働率は80%弱となっている。なお、チゲ文 化が根強く塩分が高い食品廃棄物由来の飼料は、 反芻動物には使用できないため、ペットフードと して利用されるという。 飼料の販売価格は40〜45ウォン/kgであり、バ ージン原料を利用する商品より少し安い程度であ るという。行政は処理費用の128ウォン/kgを負 担して、83〜88ウォン/kgの赤字である。しかし、 従前の海洋投棄にかかる輸送等のコスト60〜70ウ ォン/kgとほぼ同等であることから、現状では問 題ないとしている。 販売価格を維持する品質向上のため、日本を含 め海外の事例を研究し、最終的にはペット用の乾 燥飼料に行き着いたが、特に異物混入が課題であ ったという。対策として、プラントの加工前段階 表3 生ごみ減量コンテストの採点基準 従量制施行 35点 オーダーメード型メニュー 15点 条例制定・改正 15点 教育・広報・キャンペーン及び容器の衛生管理 20点 発生量減量 15点 総点 100点 資料:環境部(2013)『음식물쓰레기 줄이기 우수사례집』
での破砕選別(きょう雑物回収)と、加工後の震 動選別(微細プラスチック、種子、骨類の除去) を実施している。また、飲食店では生分解性プラ スチック製の爪楊枝などの普及も進んでおり、地 域全体でリサイクルを推進する体制が構築されて いる。 生ごみ従量課金制もリサイクル飼料製造のため の重要な施策であるという。同区では、これまで も生ごみの分別回収を実施していたが、1,500ウ ォンの定額制であった。しかし、2013年6月より、 共同住宅100ウォン/kg(毎日回収)、個人住宅・ 小規模飲食店80ウォン/kg(2日毎)の従量課金 制を導入した。個人住宅・小規模飲食店は、専用 容器にバーコードを貼り付ける納付証方式、共同 住宅は世帯別RFID方式または団地別車両計量方 式が半々で実施されている。なお、ビニール袋に よる回収は分別が進まないとして2015年6月より 全面廃止となっている。住民や小規模飲食店は、 課金を減らすために脱水と分別を徹底するため、 異物混入は少なくなったという。 不法投棄も、地域社会の監視により現状では問 題になっていないという。悪臭対策も、EM液を 無料配布し、生ごみ内に噴射してアンモニアの発 生を93%抑制する体制を構築している。回収が2 日に1回という高頻度で実施されていることもト ラブルを防ぐ重要な仕組みなのであろう。 集金方法について、納付証方式の場合は、排出 者がバーコードつきの納付証(シール)をスーパ ーなどで購入することで自治体への支払いが完了 する。その後、生ごみを専用容器の持ち手に納付 証を貼り付けて玄関先等へ出しておき、回収時に ハンディでバーコードをスキャンし使用済みとな る。RFID方式の場合は、マンション等に設置さ れる専用の生ごみ計量機にカードをかざして生ご みを投入すれば、月極でカード決済される。24時 間、いつでも排出可能である。 このような生ごみ排出の見える化により、わず か2013年6〜12月の半年間で17.2%排出削減され た。同時にリサイクル処理費用も12.6億ウォン削 減された。 4 民間企業の取り組み 韓国内の大手飲食チェーンでは、先のコンテス トに加え、国が推進する模範飲食店制度に則り、 パンチャンからビュッフェ形式への変更が進んで いる。認定されれば、借り入れの金利優遇を受け ることができるという。また、ビュッフェであっ ても顧客がおかずを多く取り過ぎてしまうと食べ 残しになってしまう。そこで環境分担金という名 目により罰金(2,000ウォン)を課しているケー スもある。ただし、2014年9月に実施した本社担 当者(Food Safety Team主任)へのヒアリング によれば、これまで料金を徴収したことはなく、 あくまでも自己啓発のためであるという。 韓国最大手の飲食店グループがソウル特別市を 中心に89店舗を展開するステーキチェーン店で は、食品廃棄物のうち、野菜を中心とした食べ残 しが6割以上3)を占めていた。その対策を推進 することで、大手外食チェーンで唯一、NPO法 人のグリーンコンシューマネットワーク(GCN) が主催するマッタビ(맛다비:食べ物を美味しく 食べきる)飲食店認証を取得している。マッタビ 認証を受ける前は、食品廃棄物が15,000ℓ /日発 生していたが、現在は全店合計で10,000ℓ /日 と、削減効果は約30%に達した。食品廃棄物は、 区の指定に基づいて、委託業者を通じ全量堆肥化 され、排出費用(リサイクルコスト)は110ウォ ン/ℓ(1店舗あたり約36,000円/月)である。 同社は、先の罰金とは反対に、食べ残しをしな かった顧客に対し、完食クーポン(3,000ウォン) を発行し、現在ではクーポンをほとんどの人に配 るまでに食べ残し削減運動が普及したという。陳 列台のビュッフェメニューの残さを減らす取り組 みも行っている。小さい皿で大盛りに見せたり、 補充の頻度を上げるために専属のフロア担当者を 1名置くなど、見栄えが悪くなって残らない仕組 みづくりを行っている。なお、ビュッフェは2時 間で新しいものに取り替える。その方が、顧客に 食べてもらえるため結果的に食品廃棄物は削減さ れるという。 Ⅳ 結語:わが国への示唆 以上、韓国の食品廃棄物削減に係る制度構築 と、現在までの効果を分析した。人口密度が高 く、食品廃棄物の焼却施設が極点に少ない韓国に
おいて、2005年の直接埋め立て禁止、2013年の海 洋投棄禁止は、必然的にその発生抑制とリサイク ルの推進を進めざるを得ない状況を生み出した。 しかし、その食文化を踏まえ、最も削減効果が見 込める「食べ残し(特にパンチャン)」にターゲ ットを絞った食品廃棄物制度の構築は、今のとこ ろ順調にその効力を発揮している。 特に、1995年以降進められた大規模飲食店にお ける排出先の登録制に加え、2013年に始まった小 規模飲食店と一般家庭における従量課金制は、概 ね減量効果と経費節減が確認され、2015年からは 補助金なしで未導入の自治体への普及が推進され ている。 韓国の従量課金制とリサイクルは、政策的にも 「生ごみ削減総合対策」において一体化しており、 全国に100箇所ある公的なリサイクル施設だけで なく、140の民間施設の経営にもプラスの効果を もたらしつつある。加えて、マッタビ(食べ物を 美味しく食べきる)運動など民間団体によるチェ ックと広報も成功要因として重視すべきであろ う。韓国の制度は、まさに国民一体となった取り 組みを促すものとして評価できる。 これに対し、焼却システムをもつわが国は、当 然のことながら、韓国の制度をそのまま導入する ことは避けるべきである。特に、生ごみの戸別分 別収集については、小林(2013)にあるように国 内では非常に高いハードルとなっているからであ る。但し、日本の焼却費用やリサイクル費用は、 ともに高コスト4)であるため、その財政負担を 考えたとき、現状維持は難しい。特に、韓国が 「食べ残し」という特定の発生源にフォーカスし て制度を構築した点については見習うべき点が多 い。 わが国では、2014年より業種業態ごとに一律の 削減基準が求められているが、経済的なインセン ティブが弱い上に、努力義務ということもあり、 業界団体が反対するほど一体感がみられない。 2015年には食品リサイクル法改正が予定されてい るが、発生源を意識した制度改革が期待される。 付記 本稿は、公益財団法人江頭ホスピタリティ事業 振興財団平成26年度研究開発助成事業の研究成果 の一部である。 注 1)農林水産省、http://www.maff.go.jp/j/ shokusan/recycle/syokuhin/hassei_yokusei. html(2015年7月13日参照) 2)2014年9月に実施した松坡区清掃課へのヒア リングによる。英大手メディアの取材なども あったという。 3)残りの3割強はセントラル・キッチンの調理 くずである。 4)小林ら(2013)によると、ある日本のリサイ クルコストは、目安として自治体搬入時の処 理費(約15円/kg)を設定し、それに管理会 社のフィーとなる0.75円/kgを含む運搬費15 円/kgが上乗せされた合計約30円/kgの出費 となっている。 引用文献 [1] 姜仁姫著、玄順恵訳『韓国食生活史』藤原 書店、2000年 [2] 小林富雄「非営利法人を介した外食産業の 環境マネジメント」『農業・食料経済研究』第 57巻第2号、2011年、pp.1〜9 [3] 小林富雄「食品リサイクルへの市民参加と 費用負担─名古屋市における生ごみ堆肥化事 業における可視化の意義─」『農業・食料経済 研究』第59巻第2号、2013年、pp.33〜40 [4] 小林富雄・石井成美・宮崎恵一「外食産業 における食品ロスマネジメントの分析」『フー ドサービス学会年報』第18巻、2013年、pp. 24〜35 [5] 高橋若菜・柳下正治・鈴木克徳・横田勇 「廃棄物・資源管理政策の発展軌跡に関する 日韓比較分析」『宇都宮大学国際学部研究論 集』第29号、2010年、pp.49〜60 [6] 三浦洋子『朝鮮半島の食料システム』明石 書店、2005年 [7] 李東勲「韓国における最近の廃棄物事情」 埼玉県環境科学国際センター講演会発表論 文、2004年 [2015年8月7日受付、2015年11月20日受理]