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1-6 コロナ禍での研究室配属科目における取り組み

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Academic year: 2021

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1-6 コロナ禍での研究室配属科目における取り組み 医学教育 2020,51(5): 537∼540 特集 コロナ禍における医療人育成 【1 歯学領域】

1-6 コロナ禍での研究室配属科目における取り組み

鬼 塚   千 絵* 木 尾   哲 朗* はじめに  我々が令和 2 年(2020 年)前期に携わったのは, 歯学科 2 年生を対象とした研究室配属である.  本学の研究室配属は,学生が研究に対する理解を深 め,卒業コンピテンシーにあるリサーチマインドを 持った歯科医師になることを目的とし,平成 9 年度よ り 16 年度まで基礎配属科目として 4 年次前期に開講 された.その後,カリキュラム編成にともない,平成 18 年度から 29 年度までは名称を研究室配属科目に変 え,5 年次前期に 4 単位必修科目として実施してい た.さらに,カリキュラム改編のため平成 27 年度か ら 2 年次の前期となり,30 コマ(90 分×30 回)の枠 組みで実施されている.  我々の研究室は,平成 24 年度より毎年 1 名から 4 名の学生を受け入れている.  昨年 11 月上旬に,講義の一環として1年次の学生 に対して,研究室配属説明会が開催され,研究室の受 け入れ予定の教員が講義室にてそれぞれの研究テーマ について説明を行った.研究テーマについて興味を 持った学生は 11 月中旬に教員へ個別に連絡し,アポ イントを取り,研究室への訪問を行った.学生はテー マへの理解を深めた後に希望する研究室の選択をし, 最終的に研究室配属運営部会が 12 月に学生の配属先 を決定した. パンデミック/緊急事態宣言下でどのような状況で あったか  令和 2 年度は,4 月 6 日(月)から研究室配属が開 始される予定であったが,それに先がけて,前期の講 義開始が遅れると大学から通知があった.その後,対 面では避ける旨の通知があった.表 1 にその経過を示 す. 昨年度までとコロナ禍での研究室配属の相違  昨年までは,4 月中に学生の考える素朴な疑問を言 語化し,ディスカッションを通じてリサーチクエス チョンを導き出し,その後研究計画を立案していた. 5 月から 6 月に実現可能な範囲で調査や分析を実施 し,7 月上旬に研究結果および考察をまとめていた. 7 月下旬には抄録及び発表用ポスター作成し,その後 学生は夏季休暇に入っていた.8 月下旬までに,筆者 が学生とメールで連絡を取り,抄録の加筆修正を行 い,事務局へ提出していた.9 月下旬のポスター発表 会に向けて,夏季休暇の最後の週に学生は研究室を訪 れ,ポスター印刷と発表用原稿およびプレゼンテー ションの練習を行っていた.  COVID-19 の影響により, 令和 2 年度は開始時に配 属された学生 4 人が対面で集合する機会を設けること ができず,学生同士でディスカッションことができな かったため,筆者が研究テーマ 3 つを学生にメールで 提示し,その中で興味を持ち,自宅で分析できそうな 課題について,学生から希望や意見を返信してもらう ことから開始した.

 5 月以降,徐々に Microsoft Teams(以下, Teams) の使い方について筆者自身の習熟が進んだので,投稿 欄にコメントを記入し,ファイルをアップし,工夫し ながら学生の意見を聞くことにした.この時点で学生 4 人に自宅での Wi-Fi 環境についても,投稿欄で聞き ながら,どのテーマを選択するのか尋ねた.先行文献 については各自が調べ,その結果を Teams にアップ することで情報の共有をはかった.しかし,メールや Teams の投稿欄を通じて全員の意見を聴取すること にタイムラグが生じたため,会議形式で全員と話し て,研究テーマを選択することにした.また,研究の 役割分担や今後の予定についての話し合い,検討につ いても Teams の会議の場で行った. * 九州歯科大学口腔機能学講座 総合診療学分野

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医学教育 第 51 巻・第 5 号 2020 年 10 月  昨年までの状況と令和 2 年度の実践内容についての 相違を表 2 に示す.  令和 2 年度の大幅な変更点は,研究室配属の研究成 果発表が審査のあるポスター発表から「研究成果発表 報告書」となったことである.この報告書は A4 サイ ズ 2 枚であり,4 人で 1 部作成するものである.6 月 の後半,学生はこの報告書の執筆を進めており,最後 の回で仕上げる予定であったが,急遽対面での指導が 不可となったため,Teams の投稿欄を利用して,情 報共有をはかった.学生の役割分担と「緒言」「方法」 「結果」「考察」について担当者を決め,円滑な報告 書の作成を目指した. 研究室配属を実施しての振り返り  担当した学生 4 人と所属が違う他の研究室の教員に アンケート調査を実施した.方法は,メールにてアン ケート結果を論文に使用する旨を説明し,Microsoft Forms(以下,Forms)のリンク先の URL を記した. 依頼した全員から回答を得た.  COVID-19 の影響がない状況であれば, アンケート 用紙を配布して,それを回収し分析するのにタイムラ グがあったが,今回は Forms を使用することによ り,Excel 形式のデータを回収することができ,非常 に効率的であった. 表 1 研究室配属に関わる経過 時 期 内 容 4 月 2 日 前期の講義開始日が 4 月 20 日に変更となる. 4 月 7 日 緊急事態宣言が発令され,福岡県も対象となる. 4 月 13 日 登校開始が 5 月 7 日(木)となり,5 月 8 日(金)が初回の研究室配属になる. 4 月 20 日 対面式ではなく,オンラインでの指導を行うように通知がある. 4 月 28 日 「オンラインでの指導を基本とし,研究発表会の代わりに研究成果報告書の作成を行う方針に決定」との通知がある. 5 月 8 日 研究室配属を開始する. 6 月 16 日 感染対策をしたうえで,対面での実施が可能と通知がある. 7 月 8 日 感染者の増加を受けて 7 月 10 日より再度対面を避けるようにとの通知があり,オンラインに変更する. 「研究成果報告書」締め切りが 1 週間延期され,7 月 13 日から 7 月 20 日となる. 表 2 研究室配属の実施内容 昨年度まで 令和 2 年度 開始時期 4 月第 1 週 5 月 8 日 実施日 月もしくは金曜午後 月もしくは金曜午後 コマ数 60 コマのうち 30 コマ(60 時間) 40 コマのうち 30 コマ(60 時間) 実施形態 対面式(調査,実験) 基本的にオンライン 途中で対面式も可となる 出席および実施内容確認 研究ノート Moodle 研究成果発表 一次審査と二次審査 「研究成果発表報告書」 (A4 サイズ 2 枚) 締め切り 予稿集 8 月末 一次審査 9 月末 二次審査 10 月上旬 7 月 13 日であったが, 市中の感染者の増加 を受けて 7 月 20 日に変更 一次審査 予稿集の抄録(A4 サイズ 1 枚) ポスター発表(横 90cm×180cm) (質疑応答あり) なし 二次審査 ポスター発表で上位チームが口頭発表 発表 7 分,質疑応答 5 分 なし

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1-6 コロナ禍での研究室配属科目における取り組み  以下,アンケートの各項目について代表的な意見と 筆者の感想を記す.  1.担当した学生の意見  1)研究室配属のスタートが遅れたことについて  「他の講義も遅れていたのでそれほど不安に思わな かった」,「前期から後期へ移動するのではないかと 思っていた」,「もともと月曜日もしくは金曜日の午後 2 コマずつ確保されていたので,余裕を持ったスケ ジュールであった」  2)研究室配属の実施形式  対面式,Teams,メール形式を採用したが,「Teams や対面式が良かった」と答えていた.  3)実施形式で良かった点  「対面や Teams は時間を決めてその場で会話して いるのでコミュニケーションが取りやすかったように 思います」,「メールだと携帯を確認した後の返信に なってしまうのでタイムラグがあった.しかし,自分 の時間で作業を行えた点では結構気楽にできた気がす る」  4)実施形式で悪かった点  「メールだと伝わりきらない部分は再び返信しなけ ればならないので,その分時間がかかってしまう」, 「Teams だと時々音が聞こえづらい時があった」,「対 面でおこなわなかったので配属メンバーとはあまり仲 良くなれなかった」,「対面で研究室の雰囲気を感じて みたかった.セミナー室などは使ったが,見学の時に しか研究室に行けていないのが残念だった」  学生のアンケート結果から考察すると,他の講義で は Moodle のみ実施されていた時期だったので,学生 にとっては Teams で相互の反応を確認しながら進行 することが新鮮であったのではないかと考える.現在 では,教員側もその使用に慣れてきたことから,徐々 に Teams を使用した講義も増えてきている.昨年度 までであれば,対面式でディスカッションすることに よりメンバーと充分なコミュニケーションをとること ができていたが,その時間がとれなかったので,その 点が残念であったと考える.「研究室配属」という名 の実習であるにもかかわらず,研究室の雰囲気を知 り,研究室にいる他の教員とコミュニケーションを取 る機会が失われてしまったままであったことが,今後 の課題と考える.  2.他の研究室の教員の意見  1)研究室配属のスタートが遅れたことについて  「 や む を 得 な い と 思っ た 」,「 現 状 で は Teams や Zoom の利用が当たり前になっているが,4 月の時点 では一般的ではなかった」,「当時の状況から致し方な く,夏休みなどの活用を考えていた」  2)研究室配属の実施形式  昨年までは,すべて対面式であった.令和 2 年度 は,「対面式と Teams」,「メール,Moodle,Teams」, 「Teams と Moodle」と回答があった.  3)実施形式で良かった点  「対面式は学生の様子がよりよく分かりサポートが しやすい」,「Teams はネットを通しての情報共有が しやすい.グループでリアルタイムのディスカッショ ンができるところ.資料を簡単に共有でき,対面では ないものの少人数だったのでそれに近い形ででき た」,「Moodle は資料の提示やレポートの提出時に便 利だった」,「メールは日常的に用いている連絡手段 だったので Teams や Moodle を利用する際にも事前 にメールで通達するなど,結局一番確実に連絡がとれ るところ」  4)実施形式で悪かった点  「当初は実験系のテーマを予定していたので遠隔実 施となり,内容が全く異なるものとなってしまった」  5)予定されていたテーマから変更したか  「実験を主に計画していたが,遠隔実施となって実 験ができなくなったため,調査研究のテーマに変更し た」  6)困った点・悪かった点  「活動期間が短かった」,「基礎生命科学系の教室に 配属されたからこそ体験できる実験系のテーマを実施 できなかった」,「例年であれば経験できるポスター発 表や,口頭発表の機会が失われた」  7)工夫した点  「Teams で活動する際,進行役を順番で学生に担わ せ,教員はできるかぎり介入しないよう努めた.その 結果,学生が主体的に活動を進めることにつながっ た」,「遠隔実施であったため,週に 1 度 Teams を用 いたディスカッション以外の時間に,各自で調査する ことの連絡や結果報告をメールでやりとりし,それぞ れが事前に内容を把握しておいてもらい,学生の通信 費負担や疲労に配慮してリアルタイムの通信時間を短 めにするようにした」,「なるべく論文を多く読むこと で,実験や臨床におけるものの考え方を習得できるよ

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医学教育 第 51 巻・第 5 号 2020 年 10 月 うにした」  筆者の研究室では,昨年度までの研究室配属のテー マは,医療面接に関する動画を視聴しての分析や,ア ンケート調査の分析が主であった.そのため,対面式 での指導が不可となっても,研究の遂行にはそれほど 不都合を生じることがなかった.しかし,実験を主と したテーマであった研究室では,「調査研究」「過去の 論文を読む」といったテーマに変更をせざるを得な かった.オンラインを中心とした研究室配属が続くよ うであれば,特に対面での実施,指導と必要性が高い 研究テーマについては,従来通りに計画を進めること は一層困難となり,何らかの制限が生じる事が予想で きる. この数カ月を振り返っての個人的な思い・考え  Moodle の使い方は一昨年の FD にて説明があった にもかかわらず,半年前には多くの教員が Moodle や Teams を使ったことがない状態であった.しかし, COVID-19 のため,対面での講義,会議ができなくな り,試行錯誤しながらこれらのツールを使っていっ た.筆者にとって幸運であったのは,後期に歯学科お よび口腔保健学科の二学科合同講義を持っているが, 前期には少人数の研究室配属の学生を受け持っている だけであったことである.対面式より学生に伝わらな いことが多くなるので,下記の点を工夫した.1)ゴー ルまでのステップやマイルストーンを細かく提示する こと.2)期限を明示すること.3)学生のみで話す機 会を提供すること.4)リアルタイムで検討する機会 を作ること.5)余裕を持ったスケジュールにするこ と.  ICT リテラシーがほとんどなかった筆者が,対面 での指導が著しく制限された令和 2 年度の研究室配属 をどうにか乗り切れたのは,昨年と同等の成果を求め ないことを比較的早期に決め,変化する状況にその都 度対処しながら進めていったからではないかと考え る.臨床の場でも,事前にシミュレーションし,練習 を繰り返し,実践に移すことが大切だと考えるが,予 測できないことも起きるので,目の前の課題に対して 即応していく能力も大事ではないかと思う.状況の変 化に対しての即時の対応については,たとえそれが近 視眼的な解決策であっても,実践で身につけていくこ とも教育ではないかと振り返る.新しいことに挑戦 し,振り返り,楽しみながら実践し,学生とともに自 分自身も経験を通して学んでいく事で,今後の成長に つながるとの気づきがあった.

参照

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