調 査 報 告
新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言による歯科介入中断が
介護施設および障害者施設入所者に及ぼす影響
The Effect of COVID-19 Pandemic Related Interruption on Nursing Homes and Facilities for the Disabled Visit Dental Treatment
近石 壮登
1),中澤 悠里
2,3),山家 良輔
1),大塚あつ子
1,3)鎌田 春江
1),玄
景華
1),杉浦 石根
4),良盛 典夫
4)野村 岳嗣
4),阿部 義和
4),谷口 裕重
2)Masato Chikaishi1), Yuri Nakazawa2,3), Ryosuke Yamaga1), Atsuko Otsuka1,3)
Harue Kamata1), Keika Gen1), Ishine Sugiura4), Norio Yayamori4)
Taketsugu Nomura4), Yoshikazu Abe4)and Hiroshige Taniguchi2)
抄録:緒言:新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下において,訪問歯科診療を控え る動きが広まっているが,施設への影響について不明な点が多い。今回,緊急事態宣言 による歯科介入中断が介護施設および障害者施設入所者に及ぼす影響について施設職員 へ調査したので報告する。 対象・方法:岐阜県の 253 施設を対象に研究の説明文とともに無記名の自記式質問紙 を郵送にて配布した。調査内容は回答者の職種,施設形態,歯科医師および歯科衛生士 の介入,緊急事態宣言後において入所者の食事環境および口腔健康管理に対し施設職員 が行った対応,緊急事態宣言前後の歯科介入中断の有無・中断期間,入所者の食事時お よび口腔健康管理時の変化,2018 年から 2020 年の各月における肺炎発症者数,入院者 数,死亡者数とした。 結果:質問紙の回収数は 91 部(回収率 360%)であった。緊急事態宣言後に歯科介 入を中断しなかった「中断なし施設」と比較して,中断した「中断あり施設」のほう が,緊急事態宣言後に摂食状況および口腔内環境が変化したと回答した数が有意に多 かった(χ2検定:p=0027,p<0001)。「中断あり施設」のほうが,食事時のむせの 回数,食事介助や食事指導の必要な方,口腔内の汚れや口臭,歯科治療や専門的口腔衛 生管理の必要な方が増加していた。 考察:本調査より,歯科介入を中断した介護施設および障害者施設では,施設入所者 の摂食状況や口腔内環境が悪化していたことが明らかとなった。 キーワード:老年歯科,訪問歯科診療,歯科介入中断,新型コロナウイルス感染症,口 腔健康管理 緒 言 新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease 2019:以下,COVID-19)の感染状況に鑑み,日本 政府は 2020 年 4 月 7 日に東京都をはじめとする 7 1)朝日大学歯学部障害者歯科学分野 2)朝日大学歯学部摂食嚥下リハビリテーション学分野 3)医療法人社団登豊会近石病院歯科・口腔外科 4)岐阜県歯科医師会
1)Department of Disability and Oral Health, Asahi
University Schoo1 of Dentistry
2)Department of Dysphagia Rehabilitation, Asahi
Uni-versity Schoo1 of Dentistry
3)Department of Dentistry and Oral-Maxillofacial
Surgery, Chikaishi Hospital
都府県に緊急事態宣言を発令し1),その後 4 月 16 日には,全都道府県が対象となった2)。COVID-19 の重症例と死亡例は,高齢者に多くみられることが 全世界で報告されている3)。そのため,世界各地の 高齢者施設において新型コロナウイルス(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:以下, SARS-CoV-2)による集団感染が発生し,多くの 死者が出ている4)。本邦においても,感染に対する 感受性は年齢によらないが,死亡率や重症化リスク は高齢者や基礎疾患を有する者でより高いことが報 告されており5),高齢者施設や障害者施設における 感染予防は徹底すべきとされている。2020 年 5 月 4 日付で,厚生労働省事務連絡「介護老人保健施設等 における感染拡大防止のための留意点について」6) が発出された。介護老人保健施設などの入所者が SARS-CoV-2 に感染した場合は原則入院すること, 感染予防のため日頃から入所者の体調の変化に留意 すること,職員が感染源とならないよう手指消毒な ど感染症対策を取り体温測定など健康管理を徹底す ること,面会や委託業者の施設への立ち入りを制限 することなどの処置が明記されている。同文書に, 歯科医療者の介入に関しては記載されていないが, 外部から入館を一切禁止したため,そのなかに歯科 が含まれていた施設も少なくないと推察される。 歯科医療においては,対面での接触や唾液飛散, 血液および体液への曝露,切削器具によるエアロゾ ルの生成により非常に高い感染リスクに晒されてお り7),多くの国々では緊急性の低い治療については 延期されている8)。本邦においても,2020 年 4 月 6 日付で,厚生労働省事務連絡「歯科医療機関におけ る新型コロナウイルスの感染拡大防止のための院内 感染対策について」9)が発出された。歯科診療実施 上の留意点として,感染リスクを減らすための対策 を適切に行うことや,歯科医師の判断により,緊急 性がないと考えられる治療については応急処置での 対応や,治療の延期なども考慮することと明記され ている。訪問歯科診療においては,日本歯科医師会 より発出された「新たな感染症を踏まえた歯科診療 の指針」のなかで,訪問診療先へ感染を広めないた めに,まずは院内の感染防御策を励行し,携行する 器材の滅菌や訪問に使う車内の消毒などを徹底した うえで訪問歯科診療の継続を検討することを推奨し ている。ただし,施設などによっては,クラスター 感染を防止する観点から,外部からの入館を著しく 制限することがあるが,その場合には,それぞれの 患者ごとに必要な治療や口腔健康管理などについて 記したサマリー作成の必要があるとしている10)。 以上より,緊急事態宣言後において,歯科医療者 側は COVID-19 の感染予防を徹底したうえで訪問 歯科診療の継続を推奨している一方で,施設側は訪 問歯科診療を控える動きが広まっている。そのた め,歯科介入の中断が入所者の誤嚥性肺炎の発症や 窒息などの二次的な健康被害に繋がることが懸念さ れるが11,12),その実態については不明な点が多い。 そこで今回,われわれは,緊急事態宣言後の歯科介 入中断が介護施設および障害者施設に及ぼす影響に ついて明らかにするために,施設職員へアンケート を実施した。 対象および調査内容 岐阜県の 253 施設(特別養護老人施設 168 件,老 人保健施設 74 件,障害者施設 11 件)を対象に研究 の説明文とともに無記名の自記式質問紙を郵送にて 配布した。説明文には,質問紙の提出をもって研究 へ参加する同意があること,同意した場合であって も随時これを撤回ができる旨を記載し,回収は郵送 もしくはファクシミリとした。調査内容は回答者の 職種,施設形態,歯科医師および歯科衛生士の介入 状況,緊急事態宣言後に入所者の食事時および口腔 健康管理時に施設職員が行った対応,緊急事態宣言 前後の歯科介入中断の有無・中断期間,入所者の食 事時および口腔健康管理時の変化,2018 年から 2020 年の各月における施設入所者数,肺炎発症者 数,入院者数,死亡者数とした(表 1)。本研究は, 朝日大学歯学部倫理審査委員会(承認番号 32012) にて承認され実施した。 分 析 結果の分析には,統計分析ソフト IBM SPSS Sta-tistics 24(日本 IBM,東京)を使用した。緊急事 態宣言前後の歯科介入中断があったもしくは緊急時 のみ対応とした施設を「中断あり施設」,なかった 施設を「中断なし施設」とし,入所者の食事環境お よび口腔健康管理に対して施設職員が行った対応,
入所者の食事時および口腔健康管理時の変化に対 し,2 群間でχ2検定を用い比較した。「中断あり施 設」に関しては,中断期間と,各中断期間における 食事時および口腔健康管理時の変化があった施設数 を全施設数で除した割合との相関を,Spearman の 順位相関係数を用いて検討した。 結 果 ⚑.調査施設の内訳 質問紙の回収数は 91 部(回収率 360%)であっ た。緊急事態宣言前から歯科介入がなかったのは 8 件,緊急事態宣言前後の歯科介入中断に関する記載 がなかったのは 4 件であった。緊急事態宣言前から 歯科介入がなかった 8 件は,緊急事態宣言前後で施 設での食事時および口腔健康管理時の変化はみられ なかった。 緊急事態宣言後に歯科介入を中断した「中断あり 施設」は 39 件,中断しなかった「中断なし施設」 は 40 件であった。回答者の職種は 2 群ともに看護 師が最も多く,「中断あり施設」は施設長,「中断な し施設」は歯科衛生士が次いで多かった。施設形態 は,2 群ともに特別養護老人ホームが最も多く,老 人保健施設,障害者福祉施設の順であった。歯科医 師,歯科衛生士の介入は訪問歯科診療の利用が最も 多く,「中断なし施設」では 2 件が歯科医師,11 件 で歯科衛生士が常勤していた(表 2)。介入内容は 食事指導を全員もしくは希望者に行っていたのは 「中断あり施設」「中断なし施設」それぞれ 13 件, 16 件,訪問歯科診療は 39 件,40 件,専門的口腔ケ アはともに 34 件であった。「中断あり施設」の中断 期間は 3 カ月が 16 件で最も多く,5 カ月が 8 件,6 カ月以上が 7 件の順であった(表 3)。 表⚑ 調査内容
⚒.緊急事態宣言後に施設が行った対応,緊急事態 宣言前後の食事時および口腔健康管理時の変化 緊急事態宣言後に施設で行った対応は「中断あり 施 設」と「中 断 な し 施 設」で 差 を 認 め な か っ た (p=0314)(表 4)。食事環境への対応は両群とも に「食堂のレイアウトを変えた」がそれぞれ 16 件 と 15 件で最も多く,「中断あり施設」では「食事提 供時間を変えた」が 4 件,「介助する人数を減らし た」および「介助する時間を長くした」が 2 件, 表⚒ 調査施設の内訳 表⚓ 緊急事態宣言前後の中断詳細
「中断なし施設」では「介助する人数を減らした」 が 2 件,「食事提供時間を変えた」が 1 件であった。 口腔健康管理への対応は両群ともに 1 件のみ介助す る人数を増やしていた(表 4)。 一方で,「中断あり施設」と「中断なし施設」の 2 群間で,食事時および口腔健康管理時の変化に有 意な差を認めた(p=0027,p<0001)(表 5)。食 事時の変化に関しては,「中断あり施設」から 29 件 の意見が返答され(同一施設からの重複回答あり), 介助の必要な方が増加したが最も多く(8 件),食 事量減少(7 件),食欲低下(6 件),むせの回数増 加(4 件),食事指導の必要な方が増加(3 件),食 事時間の変化(1 件)の順であった。「中断なし施 設」では,食事量減少が最も多く(6 件),次いで 食欲低下(5 件)や介助の必要な方,食事指導の必 要な方が増加,食事時間の変化であった(各 1 件) (表 5)。口腔健康管理時の変化に関しては,「中断 あり施設」から 71 件の意見が返答され(同一施設 からの重複回答あり),口腔内の汚れが増加したが 19 件,歯科治療や専門的口腔衛生管理の必要な方 が増加したが 19 件で最も多く,口腔衛生管理のマ ンパワーが減少 14 件,歯の痛みや義歯に関する訴 えが増加 10 件,口臭が増加 7 件,口腔衛生管理用 品が不足 2 件の順であった。「中断なし施設」は歯 の痛みや義歯に関する訴えが増加 2 件,口腔内の汚 れが増加,歯科治療や専門的口腔衛生管理の必要な 方が増加,口腔衛生管理のマンパワーが減少,口腔 衛生管理用品が不足したがそれぞれ 1 件であった (表 5)。 ⚓.緊急事態宣言前後の肺炎発症者数,入院者数, 死亡者数 2018 年,2019 年と比較して,2020 年 3 月から 8 月の肺炎発症者数が明らかに増加したのは「中断あ り施設」の 1 件(中断期間 3 月から 6 月)で,死亡 者数が増加したのは「中断あり施設」の 1 件(中断 期間 4 月から 7 月)のみであり,その他の施設は 3 年間で明らかな差を認めなかった(表 6,7)。入院 者数に関しては,すべての施設において 3 年間で差 を認めなかった。 考 察 歯科が高齢者施設や障害者施設に介入することに より,入所者の口腔内常在菌由来の感染予防や誤嚥 表⚔ 緊急事態宣言後に入所者の食事環境もしくは口腔健康管理に対して施設職員が行った対応
性肺炎予防,さらには食事指導によって QOL の改 善に寄与することは明らかであり13~16),超高齢社 会においては,ますますその需要は増加することが 予想される17,18)。しかし,COVID-19 の感染拡大 を防止する観点からその介入を控えることを余儀な くされ,施設への歯科介入が長期間中断するという 特殊な状況が生じた。そのため,入所者の摂食状況 や口腔内環境が変化し,さらには誤嚥性肺炎の発症 や死亡率の増加に繋がることが懸念されるが11,12), その実態は明らかになっていない。そこで,われわ れは,緊急事態宣言による歯科介入中断が介護施設 および障害者施設入所者の食事時,口腔健康管理時 に及ぼす影響を調査した。 ⚑.緊急事態宣言後の歯科介入中断について 調査回答があった 91 件から,緊急事態宣言前か ら歯科介入がなかった 8 件,歯科介入に関する記載 がなかった 4 件を除いた 79 件のうち,緊急事態宣 言後に歯科介入を中断した「中断あり施設」は 39 件,中断しなかった「中断なし施設」は 40 件であ り,約半数の施設は緊急事態宣言下であっても歯科 介入を継続していた。本調査の回収率は 360%であ 表⚕ 緊急事態宣言前後の食事時および口腔健康管理時の変化 表⚖ 緊急事態宣言後に肺炎発症率が増加した 1 施設 の肺炎発症者数 表⚗ 緊急事態宣言後に死亡率が増加した 1 施設の死亡者数
ったため,本県における全施設の傾向とはいいがた いが,他県と比してほぼ同じ割合であった19)。これ は,本県においても約半数の施設が歯科介入による 誤嚥性肺炎予防の重要性を認識していたことや, COVID-19 の感染予防と併行して施設職員の負担 を軽減するためではないかと推察される。 ⚒.歯科介入中断が摂食状況および口腔内環境に及 ぼす影響について 緊急事態宣言後に施設が食事時,口腔健康管理時 に行った対応は「中断あり施設」と「中断なし施 設」で差はみられなかったが,緊急事態宣言前後の 食事時および口腔健康管理時の変化は 2 群間で明ら かな差を認めた。つまり,施設では 2 群間ともに同 様の対応を行っていたが,歯科介入が中断した群で は,摂食状況および口腔内環境が変化していた。 食事時の変化は「中断あり施設」ではむせの回数 が増加し,食事介助や食事指導の必要な方が増加し ていた。本調査では,歯科介入の詳細が明らかでは ないが,この結果より,歯科医師,歯科衛生士によ る歯科治療,口腔健康管理,摂食指導が中断するこ とで,入所者の摂食状況が変化する可能性が示唆さ れた。一方で,「中断あり施設」「中断なし施設」両 群で食事量減少,食欲低下がみられた。歯科介入の 有無にかかわらず,身体活動量低下,認知機能低 下,行動心理症状の出現・悪化などから,緊急事態 宣言によって食事量や食欲が低下する可能性が考え られた20)。 「中断あり施設」では,口腔内の汚れや口臭が増 加した一方で,口腔衛生管理のマンパワーが減少 し,さらには歯の痛みや義歯に関する訴えが増えた ことにより,歯科治療や専門的口腔衛生管理の必要 な方が増加していた。今まで歯科医師,歯科衛生士 が行っていた歯科治療や専門的口腔衛生管理が中断 したことで,口腔清掃状態が悪化し,口腔衛生管理 に時間が必要となったためマンパワーも減少すると いった悪循環に陥っていたと推察される。過去に, 施設における歯科的介入によって口腔内が改善する ことは多く報告されているが15,16),本調査により, 施設への歯科介入を中断することによって口腔内環 境が悪化することが明らかとなった。 今回の調査では,中断期間と食事時および口腔健 康管理時の変化に相関が認められなかったが,緊急 事態宣言前後で口腔内が悪化している状況を踏まえ ると,中断期間が長くなると相関が生じる可能性は あると推察される。 ⚓.歯科介入中断が肺炎発症者数,入院者数,死亡 者数に及ぼす影響について 「中断あり施設」の各 1 件でのみ 2018 年,2019 年と比較して 2020 年の肺炎発症者数,死亡者数が 増加した一方で,「中断なし施設」は 3 年間の肺炎 発症者数,入院者数,死亡者数に差を認めなかっ た。結果より,本調査では,歯科介入中断と肺炎発 症者数,入院者数,死亡者数の関係は明らかではな かった。しかしながら,肺炎発症者数,死亡者数が 増加した施設が 2 件ともに「中断あり施設」であっ たことを考慮すると,中断期間が長くなった際もし くは長期的な影響として今後,肺炎発症者数,入院 者数,死亡者数に影響を及ぼす可能性が考えられ る。 ⚔.本研究の限界と今後の課題 本研究は歯科介入中断が介護施設および障害者施 設入所者に及ぼす影響を施設の主観を基に調査して いるため,いくつかの限界がある。まず,今回明ら かになった変化は,施設職員の口腔衛生管理へのマ ンパワーの減少など,歯科介入中断以外の施設側要 因を排除できないことである。COVID-19 感染拡 大は施設に大きな影響を与えており,施設はその対 応に追われているため,食事時および口腔健康管理 時の対応は施設によって差が生じている。さらに, 今回調査した施設は本県全域の施設を対象としたた め,中断前の歯科介入頻度,食事指導・訪問歯科診 療・専門的口腔ケアなどの歯科介入の内容,介入基 準,歯科への依頼方法が統一されていなかった。今 回の結果は施設形態,歯科介入を依頼する職種,他 の歯科医院が介入しているかなど,「施設側の問題」 によって異なる可能性がある。そのため,歯科介入 中断のみが今回の差に影響したとはいいがたい。今 後,より多くの情報をまとめて統計処理するには, 対象とする施設に一定の基準を設けて調査を行う必 要があると考える。 次に,今回の回答者の職種が多様であったため,
回答者によっては対象者の食事状況や口腔内環境, 歯科介入の詳細について把握できていなかった可能 性が考えられる。本調査は県歯科医師会,老人福祉 施設協議会,老人保健施設協会と協議し,コロナ禍 で対応に追われているなか施設職員が簡易的に回答 できることを優先に質問項目を作成し調査を実施し た。そのため,たとえば,肺炎が誤嚥性肺炎なの か,市中肺炎もしくは COVID-19 に起因するもの なのかなどの歯科側が必要とする情報が,質問項目 からは把握できなかった。さらに,施設側が歯科介 入中断で具体的に困っていたことやその対応策,歯 科介入中断がなかった施設では感染対策をどのよう に行っていたかなど,今後の感染症拡大に備えるた めの重要な情報が明らかとならなかった。今後,調 査を継続する際は回答者,質問項目など再度検討す る必要があると考える。 結 論 本調査より,歯科介入を中断した介護施設および 障害者施設では,施設入所者の摂食状況や口腔内環 境が悪化していたことが明らかとなった。本調査は 1 カ月の短期間で実施し,質問項目が多かったこと もあり回収率は 360%とやや低かった。そのため, 本県における全施設の傾向とはいいがたいが,歯科 介入が摂食環境や口腔環境の維持に重要な役割を果 たしていることが改めて確認された。COVID-19 に対する治療薬および予防法が確立されていないた めに,今後も感染が再流行する可能性が指摘されて いる。そのため,本調査の結果が,今後訪れるかも しれない再感染拡大,再流行あるいは未知の感染症 拡大に備えるための重要な資料となると考えられ る。 本調査によって,われわれ歯科医療従事者が,感 染防止策を徹底したうえで,ウィズ・ポストコロナ 時代を見据えた訪問歯科医療の充実を図る必要性が 示唆された。 謝 辞 本調査にご協力いただきました,岐阜県老人福祉施 設協議会 若山 宏会長,岐阜県老人保健施設協会 長 縄伸幸会長,社会福祉法人豊寿会 豊田雅孝理事長に深 謝いたします。 本研究に関して開示する利益相反はない。 文 献 ⚑)新型コロナウイルス感染症対策本部(第 27 回): 首相官邸ホームページ,https://www.kantei.go.jp/ jp/98_abe/actions/202004/07corona. html(2020 年 11 月 30 日アクセス) ⚒)新型コロナウイルス感染症対策本部(第 29 回): 首相官邸ホームページ,https://www.kantei.go.jp/ jp/98_abe/actions/202004/16corona. html(2020 年 11 月 30 日アクセス)
⚓)Liu, K., Chen, Y., Lin, R. and Han, K.:Clinical features of COVID-19 in elderly patients:A com-parison with young and middle-aged patients, J. Infect., 80:e14~e18, 2020.
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⚗)Peng, X., Xu, X., Li, Y., Cheng, L., Zhou, X. and Ren, B.:Transmission routes of 2019-nCoV and controls in dental practice, Int. J. Oral Sci., 12:1~6, 2020. ⚘)Dave, M., Seoudi, N. and Coulthard, P.:Urgent
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16)Mody, L.:Preventing aspiration pneumonia in high-risk nursing home residents:role of chlorhex-idine-based oral care questioned again, Clin. Infect. Dis., 60:858~859, 2015. 17)小嶋千栄子,服部景太,横矢隆二,小川雅之,堤 由希子,若村全仁,中川晃輔,藤原 周:朝日大学 PDI 岐阜歯科診療所における訪問歯科診療の現状と 課題―高齢者の口腔内実態調査,岐歯学誌,45: 29~33,2018. 18)薄井由枝,三浦宏子,玉置 洋:超高齢社会にお ける歯科口腔保健の今後のニーズと課題に関する歯 科有識者への意識調査,老年歯学,28:304~309, 2014. 19)新型コロナウィルスに関連した高齢者施設での 「口腔ケア」問題.千葉県歯科医師会ホームページ, https://www.cda.or.jp/img/2020/06/新型コロナウィ ルスに関連した高齢者施設での口腔ケア問題.pdf (2020 年 11 月 30 日アクセス) 20)石井伸弥:新型コロナウイルス感染症の拡大によ り,認知症の人の症状悪化と家族の介護負担増の実 態が明らかに~全国 945 施設・介護支援専門員 751 人のオンライン調査結果~,https://www.hiroshim a-u.ac.jp/news/59484(2020 年 11 月 30 日アクセス)