ブランド・コミュニティにはどんなメンバーが参加しているのか
羽 藤 雅 彦
(流通科学大学) 本研究は、ブランド・コミュニティに参加する数多くのメンバーをいかに分類すべ きかについて検討したものである。コミュニティに参加するメンバーは、当該ブラン ドを好んでいるという点を除けば多様性に富んでいる。本研究では、彼/彼女らがコ ミュニティで維持している2つの関係性、メンバー同士の関係性とブランドとの関係 性に着目しながら分類を試みた。具体的には、コミュニティとの同一化とブランドと の同一化という変数を用いて分析を行い、メンバーを4つに分類可能であることを発 見した。さらに、いくつかの指標から各グループの特徴を検討し、メンバーがコミュ ニティに参加するなかでどのように変化していくかも考察している。 キーワード: ブランド・コミュニティ、メンバーの分類、コミュニティとの同一化、ブランドと の同一化、クラスター分析 同一化を軸にした分類Ⅰ はじめに
消費者はブランドとの間に強固な関係性を構築・維持することで当該ブランドを継続購買 したり、肯定的なクチコミを行う傾向があることが知られている(Fournier 1998)。今日、 多くの企業はその強固な関係性の構築・維持という目的を果たすためにブランド・コミュニ ティを管理している(Fournier and Lee 2009; Muniz and O’Guinn 2001)。このコミュニティ に参加する消費者、換言するとメンバーの数はこの 10 年で飛躍的に増加している(Habibi, Laroche and Richard 2014)。スマートフォンやタブレットを代表とするモバイルデバイス が普及し、それを用いて多くの人々が気軽にソーシャルメディアを利用するようになり、そ こでブランド・コミュニティに参加するようになったためである。コミュニティに参加するメンバー数の増加は企業のマーケティング施策を行ううえでのブ ランド・コミュニティの位置づけを高めた。より多くの消費者と関係性を構築・維持できる 可能性が生まれたためである。しかし一方で、多くのメンバーが気軽に参加するようになっ たため、従来のようにブランドとの関係性がある程度強固なメンバーのみが参加するわけで はなくなった。それゆえ、コミットメントの高いメンバーをターゲットにした施策を行った としても、満足の行く結果が得られない可能性がある。 企業のマーケティング活動において、消費者をいくつかのグループに分類し、そのなかで 有望なターゲット層を狙うといったいわゆる STP マーケティングは基本であり、それに よってマーケティング施策の効果を高められることは知られている。ブランド・コミュニ ティの管理を考えても同様のことがいえよう。すべてのメンバーを同質的に扱うのではな く、異なるものとしていくつかのグループに分類し、そのなかで各グループに適したマーケ ティング施策を行っていくのである。そのための分類基準の確立と各グループの特徴を探り 出すことが本稿の目的である。 本稿の構成は次のとおりである。第 2 節では、先行研究をレビューし、ブランド・コミュ ニティに着目することの必要性、そしてそのなかでメンバーの分類を行うことが求められる 理由を議論する。第 3 節では、これまで提示されてきたメンバーの分類基準を詳述し、その 問題点を指摘する。そのうえで本稿における分類基準を提起する。第 4 節では、調査概要や 測定尺度についての説明を行う。第 5 節では、本稿で提起する分類基準を基にメンバーの分 類を試み、分類されたグループごとにどういった特徴があるかを検討する。最後に、本稿で 得られた知見を整理するとともに、今後の課題について論じる。
Ⅱ 問題意識
2-1 ブランドとの関係性 今日多くの市場でコモディティ化が進んでおり、企業間競争も激しさを増している。その ようななか、持続的競争優位を得るために有効だと考えられているのがブランドと消費者の 間に強固な関係性を構築し、維持することである(Aaker 2014; Fournier 1998)。企業はブラ ンドを介したさまざまな価値提案を行い、消費者にブランドの魅力を訴求することによって それを実現しようとしている(Aaker 1996)。消費者が特定のブランドとの間に強固な関係 性を構築するようになれば、ライバルブランドの商品がより優れた性能や低価格を実現した としても、そういったブランドを購買することは少ない。さらに、当該ブランドが店舗にな ければ他の店舗まで探しに行くこともある(Keller 2008; Kim, Morris and Swait 2008)。消 費者は特定のブランドとの間にこういった強固な関係性を構築することがあり、ブランド論 ではその関係性をブランド・リレーションシップ(以下、ブランドとの関係性)という概念 で説明する(Fournier 1998)。ブランドとの関係性に注目するうえで留意すべきは、その目 標を関係性の構築ではなく維持とすべき点である。一度築いた関係性を強固にしていくため の管理こそが重要なのであり、1990 年代後半以降にはいかにブランドとの関係性を管理し ていくかについての研究が数多く発表されている(1)。企業がブランドとの関係性を管理するうえでは、両者がいかに強く結びついているかを把 握しておくことが求められる。たとえば、Duncan and Moriarty (1997) は Cross and Smith (1995)が企業とステークホルダーの結びつきを 5 段階に分けた枠組みを利用して、ブランド との関係性も同じように 5 段階に分けられるとした。5 段階はそれぞれ認知、アイデンティ ティ、関係性、コミュニティ、推奨に分けられる。まずはブランドを認知してもらうことか らはじまり、ブランド知識を蓄えてもらうことが重要となる。次は、ブランド知識を蓄えた 消費者に対して、当該ブランドを用いて自己を表現してもらったりしながらブランドを自ら のアイデンティティの一部に組み込んでもらうことが目標となる。すると、消費者は当該ブ ランドとの間に強い結びつきを感じ、関係性を築くようになる。ブランドとの関係性を構築 した消費者は、同じように当該ブランドを好む消費者とかかわることが増えていき、最終的 には当該ブランドについての肯定的なクチコミを行うのである。Duncan and Moriarty (1997)は以上のような段階を経てブランドとの関係性は強化されていくことを主張した。 ソーシャルメディアが普及し、消費者間でのやりとりが急増している今日の市場環境下に おいては、消費者間の相互作用のような社会性を考慮した研究が求められている(Luo et al. 2016)。実務においても、今日では多くの企業がブランド・コミュニティを管理し、消費者 間の相互作用を促しながらブランドとの関係性を強化することを試みている(Munjal, Mishra and Shanker 2019)。以上の点を考慮し、本稿では 5 つの段階のなかでもコミュニ ティ、換言するとブランド・コミュニティに着目する。 2-2 ブランド・コミュニティにおける社会性 ブランド・コミュニティとは、特定のブランドを好む人々によって構成される集団のこと である(Muniz and O’Guinn 2001)。消費者(メンバー)はブランド・コミュニティへ参加 し、そこで他のメンバーと相互作用を行うなかで当該ブランドへの理解を深めたり、当該ブ ランドを好む他のメンバーから影響を受けながらブランドへのコミットメントを高めてい く。そのため、ブランド・コミュニティを活性化させ、メンバー間での相互作用をいかに増 やすかという点がブランド・コミュニティを管理する企業にとっての課題になっている。た だし、ここで注意しなければならないのが、メンバーは単に相互作用を行うだけではブラン ドへのコミットメントを高めるわけではないという点である。メンバーは、他のメンバーと の相互作用を通じて、コミュニティとの間に一体感を得られなければブランド・コミットメ ントを高めないのである(羽藤 2017)。コミュニティに対してそういった一体感を得られな ければ、コミュニティそのものをさほど重要だと認識せず、そこからあまり影響を受けるこ とはない。 以上のように、ブランド・コミュニティを検討するうえでは社会性というものを考慮しな ければならない。この点が、ブランド・コミュニティ研究がこれまでのブランド研究やブラ ンドとの関係性に関する研究とは異なる点である (McAlexander, Schouten and Koenig 2002; Muniz and O’Guinn 2001)。ブランドとの関係性に加え、メンバー同士の関係性にも注 目することでメンバーの当該ブランドへの態度や行動がどのように変化していくのかをより 精緻かつ多面的に解明することを目指すのである。
2-3 ブランド・コミュニティの管理 企業がブランド・コミュニティを管理し、ブランドとの関係性を強化するためにはメン バー同士の関係性をまず強化する必要がある。そのためには、メンバー間の相互作用を促 し、メンバーがコミュニティとの間に一体感を得られるようにすることが重要である。先行 研 究 で は、 こ う い っ た 一 体 感 を コ ミ ュ ニ テ ィ と の 同 一 化 と し て 概 念 化 し て き た (Algesheimer, Dholakia and Herrmann 2005; Luo et al. 2016)。コミュニティとの同一化を より厳密に定義すると、メンバー自らがコミュニティの一員であることを認識するととも に、他のメンバーとのつながりに対して好意的な感情を有することとなる(Algesheimer et al. 2005)。この高まりによってメンバーはコミュニティを自らの延長のように感じるように なる。つまり、コミュニティとの同一化には認知的側面と情緒的側面が含まれている。これ までの研究では、こういった一体感が高まることによって、集団が有する特徴を自らの特徴 へと変化させ、結果的にメンバー間の類似性も高まることが明らかにされている(Tajfel 1978)。 人は自らと類似した他者からの影響を強く受ける傾向がある(Ferguson and Kelly 1964)。それゆえ、メンバーとコミュニティとの同一化の程度が高まると、メンバーは当該 ブランドを好む他のメンバーからの影響を強く受け、ますます当該ブランドへのコミットメ ントを高めるようになる。また、一体感を有しているコミュニティを自らの延長のように感 じることで、その中心に存在するブランドをこれまで以上に好むようになったりもする(2)。 それが、一体感を有している自己をより良く表現することにもつながるためである。これが ブランドとの関係性の強化に寄与するのである。 以上のように、メンバーはコミュニティとの同一化の程度を高めていくことでブランドと の関係性を強化していく。そのため、企業はこれを高めることを目標にブランド・コミュニ ティを管理していく必要があり、その実現のためにはコミュニティが有する魅力をメンバー に訴求していくことが求められる(羽藤 2019)。コミュニティがメンバーにとって魅力ある 場でなければ、それを自己の延長のように感じたり愛着を抱いたりはしないためである。し かしながら、それを実行することは簡単なわけではない。その大きな理由として、今日のブ ランド・コミュニティの多くはソーシャルメディア上で運営され、多数かつ多様なメンバー から構成されている点が挙げられる。 多数という点では、多くのソーシャルメディア上では、コミュニティへの参加も容易に (ワンクリック/ワンタップ)できるため、無印良品(Facebook 上)のように 100 万人以上 のメンバーが参加するコミュニティも登場した。これほどまで多くのメンバーが参加するブ ランド・コミュニティは、これまでは考えることができなかった(Habibi et al. 2014)。多様 性という点においては、ブランド・コミュニティのメンバーは、当該ブランドが好きである という点を除けば、その他の属性や趣味嗜好は異なることが指摘されている(Muniz and O’Guinn 2001)。実際、メンバーがブランドに飽きたり使用を控えるようになると、他のメ ンバーとのかかわりが減少するといった報告もされている(Cova, Pace and Park 2007)。ブ ランドとの関係性を介して他のメンバーと結びついているため、それがなくなれば他のメン バーとの結びつき自体も弱化ないしは消えてしまうのである。また、参加人数が増えること によって、メンバーの類似性が低くなることは明白であろう。 メンバー数の増加は、企業がこれまで以上に多くのメンバーとブランドとの関係性を構
築・維持することができるようになったことを意味する。しかし、それを実行することは困 難であり、コミュニティに参加するメンバーのほとんどがコミュニティ内で積極的な活動を 行っていないことが報告されている(Keller and Fay 2012)。それゆえ、多くのメンバーは コミュニティの特徴や魅力を十分に理解できず、コミュニティとの同一化の程度も必ずしも 高いわけではない。ブランド・コミュニティには多様なメンバーがおり、各メンバーがコ ミュニティに望むことやコミュニティから受ける影響にも差があることを考慮すると(羽藤 2016)、それは不思議なことではない。 以上の点を考慮すると、企業は多様なメンバーに対して同質的な方法でアプローチするの ではなく、各メンバーに対してより適した方法を使い分けながらアプローチしていくことが 求められていることがわかる。そこで重要になってくるのが、メンバーをいかに分類ないし は細分化していくかという点である。先行研究を概観すると、この点に着目した研究は必ず しも多くない。そこで本稿では、ブランド・コミュニティに参加するメンバーをいくつかの グループに分類する基準を確立し、各グループの特徴を探り出すことを目的として議論を進 めていきたい。
Ⅲ 本研究における分析枠組み
3-1 単独要因による分類 メンバーの分類基準について触れた研究はこれまでにもいくつか存在する。最も一般的な 分類としては、単独要因による分類が挙げられる。まずは、コミュニティへの参加ないしは 関与による分類である。たとえば、Schouten and McAlexander(1995)では、コミュニティ への参加頻度ないしは関与を分類基準として採用し、コミュニティ内で積極的に活動するメ ンバーをハードコア・メンバー、それ以外のメンバーをソフトコア・メンバーと分けている(3)。 彼らが提案した分類基準は非常に明快である一方で、その大半がソフトコア・メンバーであ るという欠点がある。コミュニティを構成するメンバーの大半はソフトコア・メンバーであ るため、そこから更に細分化しなければ、企業が各メンバーに適したより効果的なマーケ ティング施策を行うことができないのである。 上記の分類は、特定の地域に依拠したいわゆるリアルの場でのブランド・コミュニティを 対象にしているが、これと同じような分類がインターネット上のコミュニティでも行われて いる。ただし、そこでは参加しているかどうかよりも、書き込みをしているかどうかに着目 している。たとえば日本では、書き込みを行わず読むだけのメンバーを ROM(Read Only Member)、積極的に書き込みを行うメンバーを RAM(Radical Access Member)と分類しているし(池田・柴内 1997;澁谷 2004)、英語圏では ROM や RAM ではなく、lurker(ROM)
や poster/elder (RAM)として説明され、インターネット上のブランド・コミュニティにも こ の 分 類 が 適 用 さ れ て い る (Mousavi, Roper and Keeling 2017; Pongpaew, Speece and Tiangsoongnern 2017)。ただし、この分類も先の分類と同じく、その大半が ROM であると いう欠点を有している。実際に ROM と RAM の差を比較すると、その比率は 1,000 対 1 もの 開きがあるといわれていたり(澁谷 2004)、ソーシャルメディア(twitter)上では書き込み
数全体の 8 割程度は積極的に書き込みを行う 1 割のユーザーによるものだといった報告もさ れている(The Pew Research Center 2019)。参加/書き込みをしないメンバーの方が圧倒 的に多いのである。 ここまで検討してきた分類は、ブランド・コミュニティにおいてはメンバー同士の関係性 に着目した研究といえる。Dessart, Aldás-Manzano and Veloutsou(2019)はブランドとの 関係性、より具体的にはブランドへのエンゲージメントを用いてメンバーを分類している。 この研究ではブランド・エンゲージメントを情緒(affective)、行動(behavioral)、認知 (cognitive)の 3 次元でとらえ、情緒面側面の影響を強く受ける「感情的エンゲージャー (emotional engagers)」、認知面側面の影響を強く受ける「認知的エンゲージャー(cognitive engagers)」、情緒的側面と行動的側面の影響を強く受ける「活動的エンゲージャー(active engagers)」の 3 つにメンバーを分類した。本分類は前述の 2 分類よりも精緻にメンバーを 分類している点で評価できるが、ブランド・コミュニティにおける社会性を無視してブラン ドとの関係性のみでメンバーの特徴を考えているため、ブランド・コミュニティのメンバー を分類する基準としては問題を抱えているといえよう。 以上、ここでは単独要因によるメンバーの分類案を検討してきたが、そこにはいくつか問 題があった。まず、メンバー同士の関係性のみによる分類では、大半がソフトコア・メン バーあるいは ROM となってしまう。次に、ブランドとの関係性のみによる分類では、ブラ ンド・コミュニティにおける社会性といった側面が無視されてしまう。また、最も重要な問 題が、単独の要因を分類基準に用いている点である。そもそもブランド・コミュニティを考 察する際にはブランドとの関係性とメンバー同士の関係性といった 2 つの関係性に同時に着 目すべきとされている。これを受けると、両者の関係性を内包する概念が現時点でない以上 単独の要因でメンバーを分類することは困難である。また、参加頻度や書き込み頻度という 点においては、メンバーはただコミュニティへ参加するだけではブランドとの関係性を強化 しないことは前述のとおりである。コミュニティへ参加し、他のメンバーとの関係性が強く ならなければ、コミュニティからあまり影響を受けないのである。これは、ブランドとの関 係性を強化する場としてブランド・コミュニティを考察する際、相互作用のみに着目するこ とが不十分であることを意味しよう。以上のことから、単独要因によるメンバーの分類を本 稿では支持しない。 3-2 複数要因による分類 次に、複数要因による分類を提案した研究を検討する。Ouwersloot and Odekerken-Schroder(2008)がそれであり、この研究ではメンバーを彼/彼女らがコミュニティ内で構 築・維持している関係性によって分類した。まず、彼らは McAlexander et al.(2002)が提 示した枠組みを参考にしている。その枠組みとは、メンバーがコミュニティ内で維持する関 係性は 4 つ、(1)ブランドとの関係性、(2)他のメンバーとの関係性、(3)商品との関係性、 (4)企業との関係性、存在するというものである。 そして、それぞれの関係性の強さによってメンバーを分類できるとして、2 つのコミュニ ティのメンバーを対象に定量的な調査を行った。その結果、1 つのコミュニティではメン バーを 4 グループに、もう 1 つのコミュニティでは 6 グループに分類している。両コミュニ ティにおいてみられたグループは、すべての関係性とのつながりが強かった「熱狂者
(enthusiasts)」、商品や他のメンバーとのつながりは弱いがその他(ブランド、企業)とのつ ながりは強かった「舞台裏のメンバー(behind the scene)」、商品とのつながりのみが強かっ た「ユーザー(users)」、すべての関係性が弱かった「コミュニティへの関心がないメンバー (not me)」の 4 つである。 ここでの分析結果は示唆に富む一方で、2 つのコミュニティから導出されたグループ数が 異なる点や、そもそも McAlexander et al.(2001)の枠組み自体に問題があると考えられる。 とりわけ、その枠組みについては、メンバー自身が商品ブランド(企業ブランド)と商品(企 業)を分けて考えることができるのかどうかという点において疑問が残る。実際、 Casablanca (2011) や Stockbureger-Sauer (2010) が、McAlexander et al. (2001) が提示し た 4 つの関係性を示す尺度を用いて調査を行い、そこで得たデータを基に探索的因子分析を 行った結果、関係性は 4 つに分けられなかったという報告がされている。こういった点を鑑 みると、Ouwersloot and Odekerken-Schroder (2008) の分類基準を参考にすることも避け ておくべきであろう。 複数要因に着目した研究はほかにも、Özbölük and Dursun(2017)が挙げられる。ここで は、ブランドとの関係性とメンバー同士の関係性を考慮してメンバーを分類することを提案 している。そして、定性的な調査を通じてメンバーを 5 つ、ROM のような「学習者 (learner)」、コミュニティでの情報を参考に意思決定を行う「実用主義者(pragmatist)」、 コミュニティ内でクチコミを広げる影響力のある「オピニオン・リーダー(opinion leader)」、 ブランドとの関係性のみが強い「活動家(activist)」、ブランドとの間に極めて強い情緒的な 関係性を構築する「エヴァンジェリスト(evangelist)」に分類した。本分類も参考になる一 方で、具体的にどういった変数に基づきメンバーを分類しているのかが明記されておらず (Dessart et al. 2019)、分類基準が客観性に欠けるという問題がある。たとえば、学習者と 実用主義者、オピニオン・リーダーとエヴァンジェリストの差はどこにあるのかが不明瞭な ため、彼ら以外が実際にこの分類を行うことが困難なのである。このため、本稿における分 類基準として採用することは難しい。 3-3 本稿における分類基準 先行研究においてもメンバーの分類基準はいくつか提示されているものの、それらはいく つかの理由から採用することはできない。これまで提案されてきた基準を検討するなかで明 らかになったのは、その基準はブランドとの関係性とメンバー同士の関係性の双方を考慮す べきであるということ、一方で分類基準を多くし過ぎるとコミュニティによってグループ数 が異なる可能性があるということ、そして分類基準を明確に示して客観性を確保することで ある。 本稿ではこれらの議論を鑑みたうえで新しい分類基準として、コミュニティとの同一化と ブランドとの同一化に着目したい。まず、企業がメンバーを管理するうえではコミュニティ との同一化が肝要であることは前述のとおりである。それゆえ、メンバーがどの程度コミュ ニティとの同一化を果たしているかを知ることは企業にとって欠かすことができない。これ は、コミュニティとの同一化を分類基準に用いる根拠となる。 メンバーはコミュニティ内でコミュニティ、換言すると他のメンバーとのみ関係性を構 築・維持しているわけではなく、ブランドとも関係性を構築・維持している。その点を考慮
すると、ブランドとの関係性も含めてメンバーを分類しておくべきだろう。そこで、コミュ ニティとの同一化に加え、ブランドとの同一化を用いた分類を行うべきと考える。ここでブ ランドとの同一化とは、「消費者が自らのイメージとブランドの持つそれとが一致している と考えること」と定義される(Bagozzi and Dholakia 2006, p. 49)。ブランドとの同一化につ いては、たとえば、久保田・松本(2010)は消費者がブランドを自己概念に組み込むことで 当該ブランドへのより好意的な態度や行動が促されることを経験的に示しており、ブランド 研究でも重要な要素と論じられている。ほかにも、Carlson, Suter and Brown(2008)や Escalas and Bettman(2005)、久保田(2018)(4)でも消費者がブランドと一体感を有してい ることの重要性が強調されているなど、ブランド研究でも同一化という概念が着目されてき たことがわかる。ブランドとの一体感を有することで、ブランドがまるで自己の延長である かのように感じられ、ブランドがより好ましく見えると同時に、その好ましいブランドを購 買・消費することで自己のイメージをより強化しようとするメカニズムが働いているわけで ある。 以上のように、コミュニティとの同一化とブランドとの同一化は先行研究においても重要 な要因であることが明らかにされている。このため本稿でも分類基準として用いるわけであ る。 さて、上記の分類基準は Kozinets(1999)と類似している点を述べておきたい。彼は特定 の商品カテゴリーの消費を好む消費者によって構成される消費コミュニティに着目し、メン バー同士の関係性の強さ(強・弱)と消費への関与(高・低)による分類を提案し、その組み 合わせでメンバーを分類した。そして、消費関与が高くつながりも強いメンバーを「インサ イダー(Insider)」、消費関与は高いがメンバー間のつながりが弱いメンバーを「信者 (Devotee)」、消費関与は低いがつながりが強いメンバーを「社交家(Mingler)」、どちらも 低水準のメンバーを「観光客(Tourist)」と名付けた。 彼の提案は理解もしやすく明快であるが、その分類基準や分類案を本研究で採用すること は 2 つの理由からできない。その理由は第 1 に、彼の研究が消費コミュニティを対象にして おり、その分類基準としてブランドへの関与ではなく消費への関与に注目しているためであ る。消費者は消費ないしは商品への関与と同時にブランドに対しても関与を有するが、両者 は必ずしも一致しないことが知られている(Fournier 1998)。たとえば、スマートフォンへ の関与はさほど高くないが、iPhone には高い関与を有するといったことがある。それゆ え、ブランド・コミュニティのメンバーを分類するうえではこの分類基準は妥当とはいえな い。 第 2 に、Kozinets はグループの分類をデータに基づき行っているわけではなく、その水準 の高低を組み合わせて 4 つ(高高・高低・低高・低低)に提案しているためである。ブラン ド・コミュニティ研究では、どちらかの関係性が強化されるともう一方も強化されることが 示されている(Algesheimer et al. 2005; Carlson et al. 2008; 羽藤 2019)。それは、どちらか が高くもう一方が低いといった組み合わせが実際には起こりにくいであろうことを示唆して いるといえよう。こういった問題を解消するため、メンバーの分類は経験的に検証される必 要がある。以上が本稿で Kozinets の基準や分類案ではなく独自の分類基準を用いて経験的 に分類を試みる理由である。 以下では、本節で提示した分類基準を用いて分析を行い、メンバーを何グループ程度に分 類可能か、そして各グループの特徴はどういったものかについてより深い知見を得る。その
意味で、本稿は仮説検証的な研究ではなく、探索的な研究に位置づけられる。
Ⅳ 調査方法
4-1 調査概要 本稿で分析したデータは、マーケティング調査会社の株式会社マクロミルに協力してもら い、2018 年 9 月に日本全国に住む男女計 827 人のブランド・コミュニティ参加者からイン ターネット調査により回答を得たものである。回答者の性別や年代は表 1 にまとめる。な お、本稿では、より幅広い観点からブランド・コミュニティを検討するため、特定のブラン ド・コミュニティを対象とした調査は行わない。また、今日のブランド・コミュニティの多 くはリアルの場ではなくインターネット上で運営されていることを鑑みて(Munjal et al. 2019)、インターネット上のブランド・コミュニティに参加している消費者に調査を行って いる。 簡単に調査対象者の傾向を確認してみると、性別では男性が、年代では 30 代がやや多め であることが見られた。ただし、性別・年代ともに大きな偏りはみられないといえよう。な お、複数のコミュニティに属していることも考えられるため、今回の調査では回答者が「最 もよく閲覧するコミュニティ」を念頭に回答してもらうようにしている。 4-2 測定尺度 本稿では、コミュニティとの同一化とブランドとの同一化を軸にメンバーを分類する。両 概念を測定する尺度については、コミュニティとの同一化(Identification with Brand Community: IBC)は Algesheimer et al.(2005)と久保田・松本(2010)を参考に 6 項目、ブ ランドとの同一化(Identification with Brand)は Zhou et al.(2012)を参考に 5 項目作成し た(表 2)。コミュニティとの同一化とブランドとの同一化は対称的な測定尺度(たとえば、 「このコミュニティ(ブランド)との間に強い結びつきを感じる」)を用いて測定することも 可能である。しかし、調査を行う際には、調査項目はランダムに配置されていることもあ り、対称的な尺度で調査を行うと回答者の誤読・誤回答につながる恐れがある。そのため、 表 1 コミュニティ参加者の要約 年代 コミュニティ参加人数(%) 男性 女性 合計 20 代 95 (11.5%) 74 ( 8.9%) 169 (20.4%) 30 代 99 (12.0%) 95 ( 11.5%) 194 (23.5%) 40 代 114 (13.8%) 68 ( 8.2%) 182 (22.0%) 50 代 91 (11.0%) 64 ( 7.7%) 155 (18.7%) 60 代以上 88 (10.6%) 39 ( 4.7%) 127 (15.4%) 合計 487 (58.9%) 340 ( 41.1%) 827 (100%)対称的な測定尺度を用いることは控えた。 各グループの特徴について検討するため、ほかの変数も組み込み分析を行っている。ま ず、同一化のような態度的側面だけではなく、行動的側面からも検討するためにメンバー間 の相互作用(Social Interaction: SI)、当該ブランドの継続購買を示すブランド・ロイヤルティ (Brand Loyalty: BL)である。相互作用については Tsai et al.(2012)から 3 項目、ブラン ド・ロイヤルティについては Kim et al.(2008)から 4 項目採用した。次に、表出的行為 (Expressive Action: EA) と 道 具 的 行 為(Instrumental Action: IA) で あ る。 そ れ ぞ れ Dholakia, Bagozzi and Pearo(2004)から 3 項目と 4 項目採用している。両行為に関する説 明は後述する。全項目 7 段階のリッカート尺度によって測定している。分析についてはそれ ぞれの下位尺度得点を用いて行った。 本分析の前に確認的因子分析を行い、信頼性や収束妥当性、弁別妥当性を検討した(表 2, 3)。モデルの適合度は chi-square=1215.525、d.f.=260、CFI=.924、GFI=.885、AGFI=.856、 RMSEA=.067 であり、それぞれの基準とされている値よりも良い値を示した(Bagozzi and Yi 1988)。 次に、信頼性に関しては Composite Reliability(CR)から検討した。すべての構成概念で CR が基準となる値の .60 は大幅に上回っていることを確認することができたため、測定項目 の信頼性を確保することができたといえよう(Bagozzi and Yi 1988)。 収束妥当性に関しては、各潜在変数から観測変数への因子負荷量ならびに Average Variance Extracted(AVE)から判断した(Bagozzi and Yi 1988; Hair et al. 2013)。因子負 荷量はすべての項目で .60 を上回っており、AVE に関してもすべての構成概念において基準 となる値の .50 を超えていることを確認している(Bagozzi and Yi 1988; Fornell and Larcker 1981; Hair et al. 2013)。これらの結果から、収束妥当性が確認されたと判断できる。 弁別妥当性については、構成概念の AVE が相関係数の平方より大きいことで確かめた (Hair et al. 2013)。それぞれの値を比較すると、コミュニティとの同一化と相互作用、ブラ ンドとの同一化とブランド・ロイヤルティといった概念間の相関係数の平方が AVE を上回 る結果となった。しかし、これらの概念間には態度と行動という因果関係があることを考慮 すると、ある程度高い相関係数が出ることは大きな問題ではないと判断した。以上のよう に、弁別妥当性については必ずしも満足する結果が得られなかったが、それ以外の面では一 定の信頼性を得られる結果となった。
表 2 測定尺度 平均値 SD CR AVE 因子負荷量 コミュニティとの同一化(IBC) 3.76 1.38 .93 .70 私にとってこのコミュニティは、自分の一部のようなものだ .87 このコミュニティとの間に強い結びつきを感じる .84 コミュニティの他のメンバーとのつながりは私にとって大きな意味がある .84 コミュニティにとても愛着を持っている .83 コミュニティの一員であることを自覚している .81 もし、このコミュニティがなくなったら、大切なものを失ったような気持ちになるだろう .81 ブランドとの同一化(IB) 3.62 1.24 .88 .60 誰かがこのブランドについて褒めたとしたら、自分のことを褒めてもらったように感じる .81 誰かがこのブランドを非難したとしたら、自分のことを蔑まれたように感じる .79 このブランドの成功は私の成功と同じである .79 このブランドは、私に自分らしさを実感させてくれる .74 他の人がこのブランドをどう思っているかが気になる .73 相互作用(SI) 3.89 1.37 .86 .66 他のメンバーと頻繁にやりとりを行う .85 他のメンバーと双方向的なやりとりを行う .83 他のメンバーと協力する .76 ブランド・ロイヤルティ(BL) 3.90 1.07 .83 .55 いつもこのブランドを購入する .80 このカテゴリーの商品を購入する際、ブランド名を一番に確認する .76 このブランドだけに忠実である .73 このカテゴリーの商品はよく似ている(反転項目) .67 表出的行為(EA) 4.92 1.11 .89 .73 コミュニティに参加する目的は…… 遊ぶため .87 暇つぶしをするため .85 楽しむため .84 道具的行為(IA) 4.02 1.26 .92 .73 コミュニティに参加する目的は…… 意思決定をするため .89 情報を入手するため .88 問題を解決するため .84 商品の利用方法を学ぶため .83
Ⅴ 分析
5-1 分析結果の概略 本稿では、メンバーを分類するためにクラスター分析を行った。その手順は次のとおりで ある(Mathwick 2012; Ouwersloot and Odekerken-Schroder 2008; Punj and Stewart 1983)。 まず、階層的クラスター分析(Ward 法)を行い、メンバーを何グループ程度に分類可能か を検討した。次に、検討したグループ数に基づき非階層的クラスター分析(k-means 法)を 行った。その後、非階層クラスター分析の結果を参考にして、各グループにどういった特徴 がみられるかをいくつかの指標から検討した。以下では、全体の概略を確認し、次に各グ ループの特徴について考察したい。 まず、コミュニティとの同一化とブランドとの同一化を基準に階層・非階層クラスター分 析を行った結果である。これらの分析の結果、本稿ではメンバーを 4 つに分類可能であるこ とを確認した。次に、各グループの特徴について検討するため、本稿では各グループのコ ミュニティとの同一化とブランドとの同一化それぞれの平均値と全体平均値とを比較した。 さらに、各グループ間で有意差が生じたかを調べるため、一元配置分散分析と Tukey の HSD 法による多重比較を行った。この際、メンバー同士の関係性とブランドとの関係性を 同一化のような態度的側面のみならず、行動的側面からも検討するために他のメンバーとの 相互作用とブランド・ロイヤルティという変数を加えて分析を行っている。分散分析の結果 は全変数において有意差が確認できた(コミュニティとの同一化(F(3,823)=1047.436, p<.01); ブランドとの同一化(F (3,823)=657.699, p<.01); 相互作用(F(3,823)=262.291<.01); ブランド・ロイヤルティ(F(3,823)=227.469, p<.01))。多重比較の結果は、ブランドとの同 一化とブランド・ロイヤルティの第 2 グループと第 3 グループを除くすべてのグループ間で 有意差がみられた(p<.01)。以上の分析結果は表 4 にまとめられる。次に、分析結果に基づ き各グループの特徴を確認していきたい。なお、道具的行為と表出的行為の分析結果につい ては次項の考察で述べる。 表 3 AVE と因子間の相関係数の平方 IBC IB SI BL EA IA IBC .70 IB .52 .60 SI .67 .55 .66 BL .42 .72 .41 .55 EA .26 .17 .18 .17 .73 IA .32 .34 .27 .34 .24 .73 ※対角成分は AVE、下三角成分は因子間の相関係数の平方である。第 1 グループは、全体の 17.9% を占めるグループである。このグループはコミュニティと の同一化とブランドとの同一化のどちらもが各グループと比較して低水準であるという特徴 がある。同一化のような態度的側面だけでなく、相互作用やブランド・ロイヤルティといっ た行動的側面においても同様の傾向がみられる。本来、ブランド・コミュニティに参加して いるメンバーは当該ブランドとの間にある程度強固な関係性を構築していると考えられてい た。それゆえ、ブランドとの同一化の程度もある程度高いことが予想された。しかし、今回 の分析からは、実際のコミュニティにはそういった関係性をまだ構築していないメンバーも 多くいることが明らかになった。こういった点については McLaughlin(2016)でも指摘さ れており、Facebook のようなソーシャルメディア上のコミュニティでは参加が容易なた め、ブランドとの関係性をまだ十分に構築していないメンバーも参加しているのである。本 稿では、以上の特徴を有するグループ 1 を「低同一化グループ」と命名しておく。低同一化 グループはコミュニティには参加しているものの、相互作用をほとんどしていないため、他 のメンバーからするといるかいないかがわからないような存在である。相互作用という点で は、全体のなかで 2 番目に低い第 2 グループのスコアを大幅に下回っていることがわかる。 彼/彼女らは、ブランドやコミュニティを用いて自己を表現するまではいかないが、ブラン ドにはある程度の関心があり、情報を収集するためにコミュニティへ参加しているといった 要素が強いと予想される。 第 2 グループと第 3 グループは類似している。まず、第 2 グループは全体の 39.5% を占め、 表 4 クラスター分析の結果 グループ 1 低同一化 グループ 2 中低同一化 グループ 3 中高同一化 グループ 4 高同一化 グループ 全体 分散分析 IBC (0.81)1.92 (0.62)2.83 (0.52)4.33 (0.67)5.53 (1.39) F (3,823)=1047.44*3.76 IB (0.62)1.80 (0.70)3.62 (0.70)3.68 (0.63)5.25 (1.24) F (3,823)=657.70*3.62 SI (1.19)2.38 (1.10)3.32 (0.85)4.26 (0.84)5.32 (1.37) F (3,823)=262.29*3.89 BL (1.09)2.7 (0.71)3.78 (0.69)3.96 (0.75)5.08 (1.07) F (3,823)=227.50*3.90 EA (1.40)4.27 (0.99)4.78 (0.96)5.00 (0.85)5.54 (1.11) F (3,823)=80.219*4.92 IA (1.40)3.10 (1.10)3.83 (1.01)4.08 (1.04)5.05 (1.26) F (3,823)=38.908*4.02 男性 (17.9%)87 (38.6%)188 (22.4%)109 (21.1%)103 (100%)487 女性 (17.9%)61 (40.9%)139 (12.9%)44 (28.2%)96 (100%)340 全体 (17.9%)148 (39.5%)327 (18.5%)153 (24.1%)199 (100%)827 *p<.01 カッコ内は標準偏差
全体のなかで最もメンバー数が多いグループであり、第 3 グループは全体の 18.5% を占め る。どちらもコミュニティとの同一化とブランドとの同一化が中水準である。ただし、コ ミュニティとの同一化については多重比較で有意差がみられ、第 3 グループの方が高かっ た。他方で、ブランドとの同一化については有意差がみられなかった。行動面に着目しても 同じ結果が得られた。相互作用では有意差が出たが、ブランド・ロイヤルティでは有意差が みられなかったのである。これは、ブランドとの同一化とブランド・ロイヤルティの相関が 高かったことからも予想できたことである。以上のように、両グループはコミュニティとの 同一化の水準で区別されるのである。また、全体のなかで第 2 グループのみがブランドとの 同一化のスコアがコミュニティとの同一化を上回るという結果になった。以上の結果を受け 本稿では、両者を「中同一化グループ」と位置づけ、そのなかでも前者のコミュニティとの 同一化が低いグループを「中低同一化グループ」、後者のコミュニティとの同一化が高いグ ループを「中高同一化グループ」と呼ぶ。中低同一化グループは態度と行動の双方において他 のメンバーとの関係性よりも当該ブランドとの関係性に重きを置くが、中高同一化グループ は他のメンバーとの関係性をより重視するのである。従来の研究でソフトコア・メンバーや ROM と呼ばれていたのは以上の第 1 から第 3 グループまでの 8 割弱のメンバーと考えて差 し支えないだろう。 最後は、全体の 24.1% を占める第 4 グループである。第 4 グループは、コミュニティとの 同一化とブランドとの同一化のどちらもが高水準であった。行動面でも同じことがいえる。 彼/彼女らはコミュニティ内で極めて重要な働きをしており、当該ブランドの中心顧客であ ろうことが予測できる。ここではこういったメンバーを「高同一化グループ」と命名し、コ ミュニティを内側から熱心に支援するいわゆるロイヤルユーザーであるととらえる。 5-2 考察 コミュニティとの同一化とブランドとの同一化を基準にメンバーを分類すると大きく 4 つ に区分可能であることが明らかになった。Kozinets による理論的分類との大きな違いは、 どちらかが高水準であり、もう一方が低水準であるという区分は実際にはみられないという ことである。先行研究でも示されているように、どちらかが高くなるともう一方も高くなる ため、そういった区分がみられなかったと考えられる。 以上の結果を参考に、コミュニティとの同一化とブランドとの同一化の水準を用いてメン バーを分類した結果を図示化したい(図 1)。コミュニティとの同一化については中低同一化 グループと中高同一化グループの間で有意差がみられたため、中低・中高と差をつけて表記し ている。また、各グループの円の大きさと中心の数値は構成比を示している。 メンバーは常にブランドやコミュニティ(メンバー)と同じ強度の関係性を維持している わけではない。その関係性はさまざまな経験を通じて強化ないしは弱化していく。メンバー が関係性を強化していく過程を時系列的に検討すると、左下に位置する低同一化グループの ような低低から順に右上に位置する高同一化グループの高高へと変化するであろうことが予 想できる。この変化からわかるのが、低同一化グループから中低同一化グループへの移行に はコミュニティとの同一化とブランドとの同一化の双方が、中低同一化グループから中高同 一化グループへの移行にはコミュニティとの同一化のみが重要だということである。そし て、中高同一化グループから高同一化グループへの移行には双方をより 1 つ上の水準へと高
めていくことが求められるのである。 高同一化グループはコミュニティとの同一化とブランドとの同一化が高水準であるだけで なく、行動的側面においても高水準である。換言すると、当該ブランドの継続購買を行う傾 向がある。また、先行研究からもそれらの態度的側面が高水準であればコミュニティ内外で クチコミを積極的に行うことも知られている(Carlson et al. 2008)。それゆえ、企業は高同 一化グループを育成することを目指してブランド・コミュニティを管理しなければならな い。その際、注意すべきことがある。すべてのメンバーが低同一化グループからはじまるわ けではないということである。 通常、メンバーがコミュニティへはじめに参加するのは当該ブランドについての情報収集 を行うためである(Amine and Sitz 2001; Kozinets 1999)。コミュニティで情報収集をする なかで他のメンバーとの関係性を構築していき、次第に他のメンバーと相互作用を行うため にもコミュニティへ参加するようになる(Meek et al. 2019)。それゆえ、コミュニティ参加 当初は他のメンバーとの間に仲間意識は存在していない。つまり、コミュニティ参加当初は コミュニティとの同一化は低水準となる。一方で、メンバーはコミュニティに参加する前か らブランドとの関係性を構築しており、ブランドとの同一化の程度がコミュニティ参加当初 からある程度高いことが考えられる。その場合は最初からコミュニティや同じように当該ブ ランドを好む他のメンバーに対して好意的な感情を有しており、コミュニティを用いて多少 は自己を表現したりすると予想できる。すなわち、中低同一化グループや中高同一化グルー プとしての参加は考えられる。ただし、他のメンバーとの相互作用抜きでコミュニティとの 同一化が高水準になることは先行研究からも考えにくいため(羽藤 2017)、参加したばかり のメンバーが高同一化グループになることはほぼないといえる。以上のように、通常は低同 一化グループからはじまると考えられるが、中低同一化グループや中高同一化グループから はじまることもありうるという点は理解しておきたい。 最後に、メンバーをいかにすれば高同一化グループへ育成できるかを考えたい。ここで は、各メンバーが何を目的にコミュニティへ参加しているのかといった相互作用の種類から 図 1 各グループの特徴 低 高 低 高 コミュニティとの同一化 中 低同一化グループ 高同一化グループ 中高同一化 グループ ブランドとの同一化 中低 中高 中低同一化 グループ 24.1% 18.5% 39.5% 17.9%
考えたい。まず、メンバーが行う相互作用は 2 つ、道具的行為と表出的行為に大別できる (羽藤 2016)。道具的行為とは、コミュニティでの相互作用を自らの目的を達成するための 道具として行う行為である。たとえば、購買を検討している商品についての情報収集などが それにあたる。表出的行為とは、行為それ自体が目的となる行為であり、他のメンバーとの やりとりそのものが楽しいために行う際の相互作用のことである。以下では、各グループ間 でこういった相互作用の種類に差がみられるかを確認する。 両変数を用いて一元配置分散分析を行った結果(表 4)、表出的行為と道具的行為の双方に おいて有意差が確認できた(表出的行為(F(3,823)=80.219, p<.01); 道具的行為(F(3,823) =38.908, p<.01))。TukeyのHSD法による多重比較の結果でも、すべてのグループ間で有意 差がみられ(p<.01)、低同一化グループから高同一化グループへと順に両行為を行う傾向が 高くなっていくことが明らかになった。この結果に基づけば、企業はどちらの行為も行える 場であることをメンバーに訴求しながらコミュニティを管理していく必要があるといえる。 どちらか一方がより重要だというわけではなく、そのどちらもが重要なのである。 久保田(2019)は、ブランドとの関係性を「私のブランド」と「私たちのブランド」とい う視点から考察することが可能であると述べる。前者はブランドとの関係性が個人的なもの であり、後者はブランドとの関係性が自分以外の他者とも共有されていることを意味する。 こういった指摘を受けると、低同一化グループはブランドとの関係性を「私のブランド」と とらえている一方で、高同一化グループに近づくほどブランドとの関係性を「私たちのブラ ンド」ととらえていそうであることが推察できる。久保田(2019)はどちらがより良いといっ た指摘はしていないが、上記の考察を考慮するとブランド・コミュニティでは私たちのブラ ンドととらえてもらうことを目指すべきであろう。企業は道具的行為と表出的行為を行える 場であることをメンバーに訴求しながら私たちのブランドとしてのブランドとの関係性を構 築し、メンバーを高同一化グループへと育てていくことを目標にする必要がある。
Ⅵ おわりに
本稿では、近年のブランド・コミュニティには数多くのメンバーが参加していることに注 目し、いかなる基準でメンバーを分類すべきかについて議論した。コミュニティに参加して いるメンバーは 2 つの関係性、メンバー同士の関係性とブランドとの関係性を同時に維持し ており、そのどちらもを重要視している。それゆえ、本稿ではそれぞれの関係性の強さを示 す代理変数としてコミュニティとの同一化とブランドとの同一化に着目し、両基準を用いて メンバーの分類を試みた。その結果、どちらもが低水準の低同一化グループ、コミュニティ との同一化が中低水準でブランドとの同一化が中水準の中低同一化グループ、コミュニティ との同一化が中高水準でブランドとの同一化が中水準の中高同一化グループ、どちらもが高 水準の高同一化グループの 4 つのグループに分けられることを明らかにした。また、各グ ループのメンバーはコミュニティ内で行う相互作用の種類、表出的行為と道具的行為という 点においても差がみられ、低同一化グループから順に両行為を行う傾向が高まることも発見 している。最後に、本稿における貢献と今後の課題を述べたい。 学術的な貢献は 3 点ある。第 1 は、ブランド・コミュニティのメンバーを 2 つの関係性、ブランドとの関係性とメンバー同士の関係性を考慮しながら分類した点である。従来の研究 の多くはメンバー同士の関係性あるいはブランドとの関係性のどちらかのみに注目したり、 より多くの関係性から検討してきた。ブランド・コミュニティ研究ではブランドとの関係性 とメンバー同士の関係性の双方に着目すべきとされていたにもかかわらず、その双方を考慮 した分類が Özbölük and Dursun(2017)を除くと行えていなかったのである。しかし、 Özbölük and Dursun(2017)には分類基準が明確に示されていないという問題があった。そ れに対し本稿では、分類基準を明確に示しながらブランドとの関係性とメンバー同士の関係 性の双方を考慮した分類を行った。 第 2 は、分類基準として同一化という概念に注目した点である。先行研究の分類基準やそ れを用いた分類結果にはいくつか問題があった。たとえば、メンバーを参加/書き込み頻度 に基づいて 2 つに大別するだけでは大半があまり参加/書き込みしない側にまとめられるこ とや、参加/書き込み頻度に注目するだけではメンバーがブランドとの関係性を強化する過 程を検討するには不十分といったものである。本稿では、そういった課題を解決するため、 ブランドとの関係性とメンバー同士の関係性を考慮するうえでの中核概念である同一化に着 目して分類を行っている。その結果、メンバーを分類する際にはコミュニティとの同一化は 低中低中高高の 4 水準で、ブランドとの同一化は低中高の 3 水準で検討すべきことを明らかに した。消費コミュニティに対して同じように 2 軸(メンバー同士の関係性の強さと消費への 関与)の分類を提案した Kozinets(1999)は、その水準を高低といった 2 水準で考えるべき として、一方が高水準でもう一方が低水準といった組み合わせも考慮してグループ分けをし た。しかし、本稿による分析からは現実のブランド・コミュニティではそういった分類は考 えにくいことがわかった。 第 3 が、ブランド・コミュニティのメンバーは 4 つに分類可能なことを明らかにした点で ある。ブランドとの同一化とコミュニティとの同一化それぞれが高/低水準の高同一化グ ループ/低同一化グループは他の研究でも同じように発見されてきたりその存在を指摘され てきた(e.g. Kozinets 1999; Ouwersloot and Odekerken-Schroder 2008; Özbölük and Dursun 2017)。しかし、それぞれが中水準の中低同一化グループや中高同一化グループのような存在 は指摘されていない。両者の差はコミュニティとの同一化の水準がやや異なる点である。こ ういったメンバーのみでコミュニティの過半数を占めるため、企業のコミュニティ管理にお いてこれらのメンバーを無視すべきではないだろう。 以上の貢献から次の実務的貢献がいえる。企業がブランド・コミュニティを管理するには まず、メンバーをコミュニティとの同一化とブランドとの同一化を軸に 4 つに分類すること である。そして、高同一化グループの育成を目指すことが求められる。そのためには、各グ ループのメンバーがコミュニティへ参加する目的が異なることを前提に、それぞれのメン バーに適した施策を行っていくことが必要である。具体的には、低同一化グループに対して はコミュニティが表出的行為や道具的行為を行ううえで適した場であることを訴求すること が求められよう。とりわけ、中低同一化グループがメンバー同士の関係性よりもブランドと の関係性を重視していることを考慮すると、当該ブランドについてより有益な情報を入手で きることを訴求しなければならない。中低同一化グループになればコミュニティとの同一化 を主に高めて次の中高同一化グループにするために表出的行為を行ううえでの魅力をさらに 訴求し、中高同一化グループから高同一化グループへの移行には双方の魅力を訴求すること が課題となるといった具合である。
以上の貢献の一方で、本稿には課題も残されている。第 1 に、各グループの特徴をより深 く考察することである。そのためにも、本稿で提示したグループを現実のコミュニティのメ ンバーに当てはめて検討することが必要である。具体的には、特定のコミュニティに入り込 み、各グループのメンバーにはどういった特徴があるのかを彼/彼女らの行動を実際に観察 しながら理解を深めていくことが求められる。 第 2 に、メンバーの変化過程についての妥当性である。本稿では、コミュニティとの同一 化とブランドとの同一化の双方が低水準から高水準へと線形的に変化していくことを前提に 議論を進めた。しかし、必ずしも低同一化グループから順番に高同一化グループへと変化す るとも限らない。この点についても、現実のコミュニティに入り込むことで解決していく必 要があろう。 第 3 に、コミュニティの特徴を考慮した分析の必要性である。本稿では、回答者が「最も よく閲覧するコミュニティ」を念頭に回答したデータを区別せず分析したが、今後の研究で は特定の製品カテゴリーや特定のブランドのコミュニティを対象に分析を行っていくことが 求められよう。ブランドとの関係性に関する研究では、製品カテゴリーやブランドによって は強固なブランドとの関係性が構築されていたとしても、ブランドとの同一化の水準が低い 場合があることが指摘されているためである(Sen et al. 2015; 久保田 2018)。こういった点 を考慮すると、本稿で提案した同一化を基準にしたメンバーの分類案が適さないブランドも 存在するかもしれない。コミュニティ内での一体感であったり、相互作用といったものがあ まりみられないようであれば、ブランド・コミュニティではなくブランド・パブリックのよ うな視点からの考察が有効かもしれない。ブランド・パブリックはブランド・コミュニティ とは異なり、相互作用や同質性がみられない集団を指す概念であるため(Arvidsson and Caliandro 2016)、この分野の知見も大いに活用することができよう。以上のように、本稿 にはいくつかの課題があるため、それらを解決していくことでブランド・コミュニティ研究 がさらに進展することが期待できよう。 謝辞 本稿は科学研究費助成事業(JSPS 若手研究 18K12884)の助成を受けています。本稿の執 筆にあたり、エリアエディターと匿名レフェリーの先生方から大変有益なコメントをいただ きました。また、消費者行動研究学会全国大会(2019 年 5 月 12 日、上智大学)での発表を 通じ、青山学院大学の久保田進彦先生から貴著なコメントをいただきました。ここに記し て、感謝申し上げます。 注 (1) ブランドとの関係性に関する詳しい議論は久保田(2018, 2019)を参照されたい。 (2) コミュニティとの同一化とブランドとの関係性に関する詳しい議論は羽藤(2016, 2017, 2019)を参照されたい。 (3) 彼らの分類は Fox(1987)がパンク好きの若者を分類した基準を参考にしている。
(4) 久保田(2018)はブランドとの関係性について、従来の研究ではブランドとの同一化とブ ランド愛着といった概念が注目されてきたと述べている。本研究では、メンバー同士の関 係性をコミュニティとの同一化を用いて測定するため、ブランドとの関係性についても同 じ同一化という概念に注目する。これにより、異なる概念間の分析結果よりも解釈が容易 になると考えた。 参考文献
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