<研究論文>教育基本法体制における義務の概念
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(2) 12. 織田. 成和. は じめ に 一 般 的 に義 務 とは 、 自分 が お か れ た状 況 、 立 場 及 び職 分 に応 じて 、 あ る い は 、 法 的 ・道 徳 的 に 当 然 しな けれ ば な らな い こ とま た は して は な ら な い こ とで あ る。 フ ラ ン ス語 で は あ る が 、 日本 で も よ く 引用 され る ノー ブ レス ・オ ブ リー ジ ェ(noblesse Oblige)が. あ る。 高 い 身 分 に な れ ば そ れ に 伴 う義 務 が 生 じ る意 味 で あ る が 、 現 実 の. 政 治 ・経 済 及 び 一 般 の 公 共 社 会 に 適 用 す べ き ス ロー ガ ン で あ る。 も と も と の義 務 の 意 味 は外 的 要 因 に よ るobligationやdutyと. い う倫 理 学 的 概 念 で 自分 の好 き嫌 い に. 関係 な く しな け れ ば な らな い こ とあ るい は して は な らな い こ とで あ る。 義 務 に は 道 徳 的 強 制 と社 会 的 強 制 が あ る 。 公 的 に社 会 や 国家 的 な もの が 関 わ っ て くる と、 法 律 主 体 た る人 に 法令 や 制 裁 に よ っ て 課 せ られ る拘 束 に な り、 権 利 と表 裏 で扱 わ れ る場 合 が 多 い 。 こ の義 務 に は しな け れ ば な らな い 義 務(作 て は な らな い(不 作 為 義 務)が. 為 義 務)と. 、し. あ る。. 本 小 論 で 扱 う義 務 教 育 は 国や 地 方 自治 体 が 国 民 に 強 制 的 に行 政 ・制 度 と して 就 学 年 齢 の 児 童 ・生 徒 の 教 育 を受 け る権 利 を保 障 す る こ とを 言 う。 一 般 的 に 義 務 と権 利 は 通 常 は 表 裏 一 体 で あ る。 しか し教 育 の 世 界 は 必 ず し もそ うで は な い 。 教 育 権 と受 教 育権 が あ り、 教 育 を受 け させ る義 務 は あ るが 、 日本 の 現 代 一 般 社 会 に は例 外 を 除 い て 教 育 を受 け る 義 務 は な い。 権 利 主 体 と義 務 主 体 が 明 確 で な い場 合 も あ る。 義 務 教 育 の 段 階 で は権 利 は 子 ども に あ り、義 務 は 保 護 者 及 び 行 政 や 国 に あ る。 こ の よ う な状 況 に な るま で 日本 も100年. 近 い 教 育 体 制 を経 て き た 。 こ の点 に 関 して 主 に 新 教. 育 基 本 法 を きっ か け に して論 じる こ と にす る。 教 育 で 義 務 が 問題 に な る場 合 、 就 学 させ る義 務 、 学校 設 置 義 務 、避 止 義 務 の3点 が あ げ られ る。 まず 就 学 させ る 義 務 は保 護 者 、 都 道 府 県 をは じめ とす る 自治 体 や 国 に あ る。 この 就 学 させ る義 務 を保 障 す る学 校 設 置 義 務 は 義 務 教 育 制 度 の 推 進 者 で あ る 国や 地 方 自 治 体 を は じ め とす る行 政 で あ り、 義 務 教 育 を 遺 漏 な くす す め る た め に 、 条 件 整 備 の 義 務 が あ る。 こ れ に は 学 校 を設 置 し た後 の施 設 ・設 備 や 教 職 員 、 教 科 書 、 授 業 料 、 奨 学金 等 の 整 備 が含 ま れ る。 避 止 義 務 は企 業 や 雇 用 主 が 雇 用 及 び 就 業 に よ っ て 、 学 齢 児 童 や 生 徒 の就 学 及 び 学 業 を 妨 げ て は な らな い とい う義 務 で あ る。 以 前 は 生活 困 窮 の た め の 止 む を 得 な い 状 況 か らの 就 労 が 多 か っ た が 、 最 近 で は若 年 タ レ ン トの 積 極 的 な テ レ ビ 出 演 等 が 問題 に な っ て い る。 親 に も周 知 徹 底 す る必 要 が あ る。 以 上 の 義 務 を 念 頭 に お い て こ の 問題 を 考 えて い く。 1.義. 務 の概 念. 日本 国 憲 法 を見 る と第26条. では. す べ て 国 民 は、 法 律 の 定 め る とこ ろ に よ り、 そ の 能 力 に応 じて 、 ひ と し く教 育 を 受 け る権 利 を 有 す る。.
(3) 教 育基 本 法体制 にお ける義務 の概 念. 13. ② す べ て 国 民 は 、 法 律 の定 め る と こ ろ に よ り、 そ の保 護 す る子 女 に 普 通 教 育 を 受 け させ る 義 務 を負 ふ 。 義 務 教 育 は これ を無 償 とす る。 そ の 前 提 と して 日本 国憲 法 第25条[生. 存 権 、 国 の 生 存権 保 障 義 務]で は. す べ て 国 民 は 、 健 康 で文 化 的 な 最 低 限 度 の 生 活 を 営 む権 利 を有 す る。 こ の 条 項 を達 成 す るた め に 教 育 の 力 が期 待 され る と ころ で あ る。 この 規 定 に さ ら に教 育 で 考 え られ る視 点 と して 現 在 の学 校 教 育 の ス ロ ー ガ ン で あ る 「 生 き るカ 」 の 啓 培 が 要 求 され る 。 こ こ で言 う普 通 教 育 とは 人 間 と して 最 低 限知 っ て い な けれ ば な らな い 常 識 あ るい は 一 般 的教 養 で あ る。そ の最 低 限 の もの は 諸 外 国 で はliteracyつ ま り3R`s(writing,reading,arithmetic)で. あ り、 日本 で は読 み 、書 き 、 算(算. 盤)で あ る。 これ は 伝 統 的 に 「 生 き るカ 」 の 源 泉 に な っ て い る。 古賀 に よ る と近 代 な い しは公 教 育 の3原 則 と して 、義 務 化 ・無 償 化 ・中立 化 を 挙 げ て い る。 そ の 中 で 義 務 化 とは 「 そ の保 護 す る子 ども に 教 育 を受 け させ る こ とを す べ て の 保 護 者 の 義 務 と し、 か つ そ れ はす べ て の 国民 の教 育 を受 け る 権 利 を保 障 す べ き 国家 の 義 務 を も含 意 す る も の で あ る」 と述 べ て い る。(市 川p172) 2.義. 務 教育の歴史. 日本 の 教 育 制 度 は 明治5(1872)年. の 「 学 制 」 を 嗜 矢 とす るが 、就 学 に 関 して 法 的 に. 初 め て 規 定 され た の は 明治12(1879)年 年 ヨ リ14年. の 教 育 令 で あ る。 これ に よ る と 「 凡 児 童6. 二 至 ル8箇 年 ヲ 以 テ 学 齢 トス 」(第13条)、. 箇.月ハ 普 通 教 育 ヲ受 クヘ シ」(第14条)、 等 ノ責 任 タ ル ヘ シ」(第15条)と. 「 凡 児 童 学 齢 間少 ク トモ16. 「 学 齢 児 童 ヲ就 学 セ シ ムル ハ 父 母 及 後 見 人. 規 定 され て い た が 、 そ の あ との 明 治13(1880)年. の 改 正 教 育 令 で もほ ぼ 同 じ内容 で あ っ た。 この 当時 は 「 父 母 の責 任 」 で あ り、 どの 程 度 の 責任 で あ るか は 明確 で な い が 、 努 力 す べ き 目標 とい うもの で あ ろ う。 義 務 とい う用 語 が 使 用 され た の は 明 治19年(1886)年 る 「 小 学 校 令 」 で あ る。 「 児 童6年. ヨ リ14年. 二 至ル8箇. の森有礼初代文部 大臣に よ 年 ヲ以 テ 学 齢 トシ 父 母 後 見. 人 等 ハ 其 学 齢 児 童 ヲ シテ 普 通 教 育 ヲ得 セ シ メル ノ義 務 アル モ ノ トス 」(第3条)。. た. だ そ の 趣 旨 は現 在 と異 な り、 国 に 対 す る義 務 の 意 義 が 強 か っ た。 最 小 限 の教 育 を 受 け て い な け れ ば 国 に対 して十 分 な ご奉 公 が で き ない とい う趣 旨で あ った 。 明治22(1889)年. 、 大 日本 帝 国 憲 法 が発 布 され た が 、 教 育 に 関す る規 定 は な か っ. た。 こ れ は 「 教 育 は 国家100年. の 大 計 」 とい う こ とで そ の 時 々 の政 権 や 政 治 体 制 に. 左 右 され ず に天 皇 の 直 接 の 大権 事 項 と され た の で あ る。 しか し、 兵役 や 納 税 の 義 務 と同 じ く、 国家 へ の 義 務 とみ な され て い た 。 ま さに 強 制 的=compulsory(の. 本 来の. 意 味 の)教 育 で あ った 。 続 い て 翌 年 の 明 治23(1890)年. 、改正 「 小学校令 」において 「 学 齢 児 童 ヲ保 護 棲 ス. ヘ キ者 ハ 其 学 齢 児 童 ヲ市 町 村 立 小 学 校 又 ハ 之 二 代 用 スル 私 立 小 学 校 二 出 席 セ シ ム ヘ シ」(第22条)と. な った 。.
(4) 14. 織田. 明治33(1900)年 及 び4年. 成和. 「 小 学 校 令 」 改 正 に よ る と就 学 の 義 務 に 関す る規 定 で6歳. 入学. の 就 学 義 務 が謳 わ れ 、 現 在 の よ うに 学齢 児 童 の 雇 用 禁 止 や 授 業 料 の 不 徴 収. が規 定 され て い る。 尋 常 小 学 校4力. 年 の 義 務 教 育 は改 正 され 、 明 治40(1go7)年. に. 6年 に な る 。 これ に 関 して 結 城 は、 種 々 の歴 史 的 根 拠 を示 し、1912年. 代 に な る と 「学校 教 育 は. 臣 民 の 国 家 に 対 す る義 務 で は な く、権 利 」 で あ り、 「 就 学 は 国 民 の義 務 で あ る と同 時 に 、 子 ど も と親 の 権 利 で も あ る」 と い う こ と を報 告 し、 これ を 「生 存 権 的 基 本 権 」 と して 明 確 に 位 置 付 け て い る。(結 城41ペ. 3.教. ー ジ). 育 基 本 法 にお け る義 務 教 育. 3.1.教 育 基 本 法 は 新 ・旧い ず れ も、 日本 の 教 育 の重 要 な 根 本 法 で あ る。 旧法 に お い て は第7条. の よ うに社 会 教 育 と家 庭 教 育 と を混 同 して い る と こ ろ も あ っ た が 、 い ず. れ に して も憲 法 の 精 神 を受 け て 、 日本 の 教 育 全 体 の あ る べ き姿 や 理 念 を網 羅 して い る。 そ の 中 で 義 務 教 育 と普 通 教 育 に 関 して は 、 旧法(昭. 和22年3月31日)第4条. 国 民 は 、 そ の 保 護 す る子 女 に 、9年 の 普 通 教 育 を受 け させ る義 務 を負 う。 ② 国 又 は 地 方 公 共 団 体 の設 置 す る学 校 に お け る義 務 教 育 に つ い て は 、 授 業 料 は 、 こ れ を徴 収 しな い 。 新 法(平. 成18年12月22日)第5条. 国 民 は 、 そ の 保 護 す る 子 に、 別 に 法 律 で 定 め る と こ ろ に よ り、 普 通 教 育 を 受 け さ せ る義 務 を負 う。 ② 義 務 教 育 と して 行 わ れ る普 通 教 育 は 、 各 個 人 の有 す る 能 力 を伸 ば しつ つ 社 会 に お い て 自立 的 に 生 き る基 礎 を培 い 、 ま た 、 国 家 及 び 社 会 の 形 成 者 と して 必 要 と され る基 本 的 な 資 質 を養 うこ とを 目的 と して 行 わ れ る も の とす る。 と規 定 され て い る。 これ は 普 通 教 育 の 意 義 や 理 念 の 具 現 化 で あ る。 つ ま り普 通 教 育 は 本 人 の人 格 的 発 達 を め ざ し 、社 会 で も生 き る カ を 所 持 し、 引 い て は 国や 社 会 を形 成 す る こ とに 貢 献 で き る 人 物 を育 成 す る教 育 で あ り、国 民 と して最 低 限 の 教 養 を備 え る教 育 で もあ る。 い か な る専 門 に 従 事 して い よ う と も最 低 限備 えて い な け れ ば な らな い 一 般 的 素養 で あ る。 これ は現 在 の 社 会 の有 益 な 文 化 的 事 象 を取 捨 選 択 して 、 明 日を 担 う児 童 ・生 徒 に伝 え て い く制 度 で あ る。 これ ら の文 化 的 事 項 は教 科 、 道 徳 教 育 、 特 別 活 動 等 に 具 体化 され る。 この 内 容 は学 校 教 育 法 や 同施 行 令 及 び 同 施 行 規 則 を根 拠 に小 ・中 学 校 等 の 学 習 指 導 要領 に よ っ て義 務 教 育 諸 学校 に 浸 透 して い く こ とに な る。 学 校 教 育 法 第21条[義 本 法 第5条. 務 教 育 の 目標]に 第2項. よ る と義 務 教 育 と して 行 われ る普 通 教 育 は 、 教 育 基. に規 定す る 目的 を実 現 す る た め 、 次 に 掲 げ る 目標 を達 成 す る よ う.
(5) 教 育基 本 法体制 にお ける義務 の概 念. 15. 行 われ る もの とす る。 ① 学校 内 外 にお け る社 会 的 活 動 を 促 進 し、 自主 、 自律 及 び 協 同 の 精神 、 規 範 意 識 、 公 正 な 判 断 力 並 び に 公 共 の精 神 に基 づ き 主 体 的 に社 会 の 形 成 に 参 画 し、 そ の 発 展 に 寄 与 す る態 度 を養 うこ と ② 学校 内 外 にお け る 自然 体 験 活 動 を促 進 し、 生 命 及 び 自然 を尊 重 す る精 神 並 び に 環 境 の保 全 に 寄 与 す る態 度 を養 う こ と ③ 我 が 国 と郷 土 の 現 状 と歴 史 に つ い て 、 正 しい 理 解 に 導 き 、 伝 統 と文 化 を尊 重 し、 それ ら を は ぐ くん で き た我 が 国 と郷 土 を 愛 す る態 度 を 養 う と と も に、 進 ん で 外 国 の 文 化 の 理 解 を 通 じて 、他 国 を 尊 重 し、 国 際 社 会 の 平 和 と発 展 に 寄 与 す る 態 度 を 養 う こ と。 ④ 家族 と家 庭 の役 割 、 生 活 に 必 要 な 衣 、食 、 住 、 情 報 、 産 業 、 そ の他 の 事 項 に つ い て基 礎 的 な 理 解 と技 能 を養 う こ と。 ⑤ 読 書 に 親 しませ 、 生 活 に必 要 な 国 語 を 正 し く理 解 し、 使 用 す る 基礎 的 な能 力 を 養 う こ と。 ⑥ 生活 に 必 要 な数 量 的 な 関係 を 正 し く理 解 し、 理 解 し、 処 理 す る 基礎 的 な能 力 を 養 う こ と。 ⑦ 生活 に か か わ る 自然 現 象 に つ い て 、観 察 及 び 実 験 を通 じて 、科 学 的 に 理 解 し、 処 理 す る 基礎 的 な 能 力 を養 うこ と。 ⑧ 健 康 、 安 全 で 幸 福 な 生 活 の た め に必 要 な 習 慣 を養 う と と も に 、運 動 を通 じて 体 力 を養 い 、 心 身 の 調 和 的 発 達 を は か る こ と。 ⑨ 生活 を 明 る く豊 か に す る音 楽 、 美 術 、 文 芸 そ の他 の 芸 術 につ い て 基 礎 的 な理 解 と 技 能 を 養 うこ と。 ⑪ 職 業 に つ い て の 基 礎 的 な知 識 と技 能 、 勤 労 を重 んず る 態 度 及 び 個 性 に 応 じて 将 来 の進 路 を 選 択 す る能 力 を養 う こ と。 で あ る。 3.2.こ の よ うな 内容 を規 定す る に あ た って 、 教 育 基 本 法 第17条 画 」は10年. の「 教育振興 基本計. 先 を 見 通 して 、5年 間 の 具 体 的 計 画 を 立 て る とい う趣 旨 で条 文 化 され て い. る の で 、 常 に10年. 先 の 社 会 や 国 の将 来 を 考 慮 に 入 れ て 、 学 習 指 導 要 領 は 作成 され る. 必 要 が あ る。 さ ら に新 法 はつ づ け て 第5条 義 務 教 育 の 項 目で ③ 国及 び 地 方 公 共 団 体 は 、義 務 教 育 の機 会 を 保 障 し、 そ の 水 準 を確 保 す る た め 、 適 切 な役 割 分 担 及 び 相 互 の協 力 の 下 、 そ の 実 施 に責 任 を負 う。 ④ 国 又 は 地 方 公 共 団 体 の設 置 す る学 校 に お け る義 務 教 育 に つ い て は 、 授 業 料 を徴 収 しな い 。 と規 定 して い る。 こ の 項 目 に 関 して は 最 高 裁 の 判 例 「 義 務 教 育 教 科 書 費 国 庫 負 担 請 求 事 件 」(最 高 裁.
(6) 16. 織田. 大 法 廷 判 決 昭 和39年2.月26日)で. 成和. 「 憲 法26条2項. 後 段 に い う義 務 教 育 の無 償 は 国. 公 立 義 務 教 育 学 校 の 授 業 料 不 徴 収 の み を意 味 して い る の で あ っ て 、他 の 教 育 費 の 無 償 は 立 法 政 策 の 問題 で あ る か ら、 教 科 書 代 の 保 護 者 負 担 は 憲 法 に違 反 し ない 」 と さ れ,確. 立 して い る。 つ ま り、 憲 法 の 「 『義 務 教 育 は 無 償 とす る』 との 規 定 は 、 授 業 料. の ほ か に 、 教 科 書 、 学 用 品 そ の 他 教 育 に 必 要 な 一 切 の 費 用 ま で無 償 と し な けれ ば な らな い こ と を定 め た も の と解 す る こ とは で き な い 」 と され た 。 付 け加 えて 、 国 が 保 護 者 の 教 科 書 等 の 費 用 の負 担 に つ い て も 、 これ を で き る だ け軽 減 す る よ う配 慮 、 努 力 す る こ と は望 ま しい と こ ろ で あ る が 、 そ れ は 、 国 の財 政 等 の事 情 を 考 慮 して 立 法 政 策 の 問題 と して 解 決 す べ き事 柄 で あ って 、 憲 法 の(26条. の)規 定 す る と ころ で は. な い と言 っ て い る。 現 在 は 、 義 務 教 育 の 教 科 書 は 「 義務 教 育 諸 学 校 の教 科 用 図 書 の 無 償 に 関 す る 法 律 」及 び 「 義 務 教 育 諸 学 校 の 無 償 措 置 に 関す る法 律 」に よ っ て 無 償 と さ れ て い るが 、 自今 、 日本 経 済 の 行 方 に よ っ て は 教 科 書 が 有 償 と な っ て も憲 法 違 反 で は な い こ と に な る 。 学 校 教 育 の 経 費 に 関 して は 設 置 者 負 担 主 義 で あ るが 、 学 校 は 国 立 学校 や 学 校 法 人 立 を除 い て 大 部 分 は地 方公 共 団 体 が設 立 し て い る。 これ をす べ て 地 方 が 負 担 す る とな る と裕 福 な 自治 体 とそ うで ない 自治 体 の 問 で格 差 が 生 じる 可 能 性 が 大 で あ る。 そ れ を防 ぐた め に こ の義 務 教 育 費 国庫 負 担 法 が制 定 され た の で あ る が 、第2条. に よ る と、公 立 の 小 学 校 、 中学 校 、 中 等教 育 学 校 の 前 期 課 程 並 び に 特 別. 支 援 学 校 の 小 学 部 及 び 中学 部 の 義 務 教 育 諸 学 校 の教 職 員 の 給 与 を 初 め とす る 実 支 出 額 等 の 以 前 は2分. の1で. あ っ た が 、 現 在 は3分. の1を 国 が 負 担 す る こ とに な っ て い. る。. 3.3.次 に 学 齢 児 童 ・生 徒 の権 利 を 妨 げ る2つ. の要 因 を 例 示 す る。 一 つ は経 済 的 困 窮. が理 由 で あ り、 も う一 つ は若 年 者 の 就 労 の 問 題 で あ る。 ①[経. 済 的 就 学 困 難 へ の援 助 義 務]. 第19条. 経 済 的 理 由 に よっ て 、就 学 困難 と認 め られ る学 齢 児 童 又 は学 齢 生 徒 の 保. 護 者 に 対 して は 、 市 町 村 は 、必 要 な 援 助 を 与 え な けれ ば な らな い 。 これ に 対 して は 国 も義 務 教 育 制 度 の 一 環 と して 義 務 教 育 費 国 庫 負 担 法 に よっ て 、 こ の 法 律 の 目 的 と して 第1条. で 「 義 務 教 育 に つ い て 、 義 務 教 育 無 償 の原 則 に 則 り、 国 民 の す べ. て に 対 しそ の妥 当 な 規 模 と内容 と を保 障 す る た め 、 国 が 必 要 な 経 費 を負 担 す る こ とに よ り、 教 育 の機 会 均 等 とそ の 水 準 の維 持 向 上 と を 図 る こ と を 目的 とす る」 と 規 定 され て い る。 ②[学 齢 児 童 ・学 齢 生 徒 の使 用 者 の 義 務] 第20条. 学 齢 児 童 又 は 学齢 生 徒 を 使 用 す る も の は 、そ の 使 用 に よ っ て 、当該 学 齢 児. 童 又 は 学 齢 生 徒 が 、義 務 教 育 を 受 け る こ とを妨 げ て は な らな い 。 これ は 避 止 義 務 と言 われ 、未 成 年 、特 に満15歳. 未 満 の 児 童 ・生 徒 を使 用 す る場. 合 、 特 に タ レン トの 出 演 等 に よっ て 就 学 を 妨 げ て は な らな い 趣 旨 で あ る。 種 々 の 通.
(7) 教 育基 本 法体制 にお ける義務 の概 念. 17. 知 に よ れ ば 、未 成 年 タ レ ン トは 「 心 身 の成 長過 程 に あ る こ とに か ん が み 、 ス ケ ジ ュー ル 作成 に あ た っ て は 、 これ らの 弊 害 を排 除 す る と とも に 、 健 全 な 環境 に お い て 出 演 させ る よ う十 分 に 配 慮 す る こ と。 未 成 年 タ レ ン トの うち 労 働 基 準 法9条. にい う労 働. 者 で あ る と認 め られ る者 に つ い て は 、 労働 基 準 法 を遵 守 し、 適 正 な 労 働 条 件 の も と に就 業 させ る こ と(初 中局 長 通 知他)」に な って い る。 4,そ. の 他 の 法 令 にお け る義 務 教 育. 4,1,学 校 教 育 法 第2章 義 務 教 育[義 務 教 育 年 限] 旧教 育 基 本 法 で は 義 務 教 育 年 限 は9年. と規 定 して あ っ た。 これ が 新 法 で は 削 除 され 、. こ の学 校 教 育 法 に委 ね られ て い る。 つ ま り、 「 第16条. 保護 者(子. に対 して親 権 を 行. う者(親 権 を 行 う者 の ない とき は 、未 成 年 後 見 人)を い う。 以 下 同 じ。)は 、 次 条 に 定 め る と こ ろに よ り、 子 に9年. の普 通 教 育 を 受 け させ る義 務 を負 う。」 これ に よ る と. そ の 立 法 意 志 は 国 の 政 権 や 社 会 変 化 及 び 地 域 の 実 情 に応 じて 柔 軟 な期 間 変 更 が 可 能 に な る とい うこ とで あ ろ う。 そ の就 学 させ る義 務 の具 体 的 内容 は 学 校 教 育 法 第17条 保 護 者 は,子 の 満6歳. に 規 定 して あ り、. に 達 した 日の 翌 日以 後 に お け る最 初 の 学 年 の初 め か ら、 満. 12歳 に 達 した 日の属 す る 学年 の 終 わ りま で 、 これ を 小 学 校 又 は特 別 支 援 学 校 の 小 学 部 に就 学 させ る義 務 を負 う。 た だ し、 子 が 、満12歳. に 達 し た 日の属 す る 学 年 の. 終 わ りま で に 小 学 校 又 は特 別 支 援 学 校 の 小 学 部 の課 程 を修 了 しな い と きは 、 満15 歳 に達 した 日の属 す る 学 年 の終 わ り(そ れ ま で の 間 にお い て 当 該 課 程 を修 了 した とき は 、 そ の 修 了 した 日の属 す る 学 年 の 終 わ り)ま で とす る。 ② 保 護 者 は 、子 が 小 学 校 又 は 特 別 支 援 学 校 の 小 学 部 の課 程 を修 了 した 日の翌 日以 後 にお け る最 初 の 学 年 の初 め か ら、 満15歳. に達 した 日の 属 す る学 年 の終 わ りま で 、. これ を 中学 校 、 中等 教 育 学校 の 前 期 課 程 又 は 特 別 支援 学 校 の 中 学 部 に就 学 させ る 義 務 を 負 う。 ③ 前2項. の 義 務 の履 行 の督 促 そ の 他 これ らの義 務 の履 行 に 関 し必 要 な事 項 は 、 政 令. で 定 め る。」 こ の よ うに 新 法 で9年. が 削 除 され 、 こ の学 校 教 育 法 に 委 ね られ て い る の は 、 各 自. 治 体 の意 志 や 努 力 に委 ね 、弾 力 的 な 運 用 が 可 能 に で き る よ うに とい う趣 旨 で あ ろ う。 これ に 関 して 、2006年5月16日. の 第164回. 衆議 院本会議で小坂文部科 学大臣 も「 義. 務 教 育 年 限 につ い て は 、 将 来 の 延 長 の可 能性 も視 野 に入 れ つ つ 、 そ の 際 の手 続 き が 柔 軟 に行 え る よ う、 学 校 教 育 法 な どに 委 ね る」と述 べ 、現 在 は 学 校 教 育 法 第16条. の. [義務 教 育 年 限]の 条 項 で 、 「 保 護 者(子 に対 して親 権 を 行 う者(親 権 を行 う者 の な い とき は 、 未 成 年 後 見 人)を い う。 以 下 同 じ。)は 次 条 に 定 め る と ころ に よ り、 子 に9 年 の 普 通 教 育 を 受 け させ る義 務 を 負 う」 と謳 わ れ る こ とに な っ た が 、 学 校 教 育 法 は 准 憲 法 的 な 教 育 基 本 法 に比 べ て 、 歴 史 が 示 す ご と く改 正 が 比 較 的容 易 で あ る た め 、.
(8) 18. 織田. 成和. 短 縮 され る こ とは な い に して も都 道 府 県 に よ る格 差 が 生 じな い と も限 ら な い。 現 在 の9年. が 延 長 され る とな る と幼 稚 園 か 高 校 の義 務 化 に な る。 現 在 、 中学 校 に 問題 が. 多 い の は 周 知 の 事 実 で あ る。 集 団 生 活 に な じめ ず 、 ま た 勉 強 の意 義 も理 解 しな い ま ま 、 中 学 校 段 階 は 義 務 教 育 とい うこ とで本 人 か ら見 れ ば 周 りか ら強 制 され て い る と 感 じ るの が 、 問題 の 原 因 に な っ て い る。 そ れ を周 りが ほ とん ど行 くか ら とい う根 拠 だ け で 高 校 を義 務 化 す れ ば,「 荒 れ 」 は 高校 に も延 長 ・波 及 す る こ とに な る。 中 学 校 で不登校や 「 荒 れ 」 た 生 徒 が 、 近 く の 工場 で 職 場 体 験 を した ら、 生 き 生 き と働 き 、 充 実 した 生 活 を お くっ て い る とい う報 告 もな され て い る 。 高 校 レベ ル で あれ ば 生 涯 学 習 の視 点 か らい つ で も本 人 自身 の 意 欲 に 応 じてや り直 しが で き る。 した が って 、9 年 以 上 の 延 長 は幼 稚 園 の方 に 目を 向 け る べ き で あ る。 現 在 の4∼5歳 旧教 育 基 本 法 及 び 学 校 教 育 法制 定 時 の 昭 和20年. は現行憲 法や. 台 の 同 年 齢 と は社 会 性 や 知 識 量 が. 格 段 に 異 な る。 一 般 的 性 格 も悪 く言 え ば 「 世 間 つ れ 」 して い る子 ど も も多 い 。 人 見 知 りは 少 な くマ ス コ ミや 種 々 の 情 報 、 時 に は そ の過 多 に よ っ て 良 く も悪 く も人 間 関 係 の 面 で は 発 達 して い る。 「 小1問 題 」 も幼 児 教 育 の段 階 で の 環 境 に よ る個 性 の 伸 長 の結 果 あ る程 度 確 立 した 性 格 の 副 作 用 で あ る。 こ の よ うに そ れ 以 前 の 柔 軟 な性 格 の 時 に 、 集 団 生 活 の 訓 練 を行 え ば 問 題 行 動 も防 げ る。 した が っ て義 務 教 育 の年 限 の 延 長 は早 期 教 育 の 可 能 な下 位 年 齢 の 幼 稚 園 レベ ル に した 方 が ベ ス トと考 え られ る。 法 令 で は 病 弱 等 に よ る就 学 義 務 の 猶 予 ・免 除 が 規 程 され て い る。 つ ま り、 学 校 教 育 法 第18条. は 既 述 の 第17条. 第1項. 又 は 第2項. の規 定 に よ っ て 、 「 保 護 者 が就 学 させ な. けれ ば な らな い 子(以 下 そ れ ぞれ 「 学 齢 児 童 」又 は 「 学 齢 生 徒 」 とい う。)で 、病 弱 、 発 育 不 全 そ の他 や む を得 な い 事 由 の た め 、就 学 困難 と認 め られ る者 の 保 護 者 に 対 し て は 、 市 町 村 の 教 育 委 員 会 は 、 文 部 科 学 大 臣の 定 め る と ころ に よ り、 同条 第1項 は第2項. 又. の 義 務 を猶 予 又 は免 除 す る こ と が で き る 」 の で あ る。 こ の条 項 の解 釈 の 一. つ と して 、 最 近 の 医 療 の発 達 の お か げ で(超)未. 熟 児 の 存 命 率 が 高 くな っ た が 、6. 歳 に な っ て も 同年 齢 の 子 ども と比 較 して 体 重 や 身 長 が未 発 達 の た め こ ど も の就 学 を 躊 躇 して い る保 護 者 の 場 合 、1年. ぐ らい の就 学 猶 予 は願 い 出 と 医 師 の 診 断 に よ っ て. 認 め る べ き で あ る と考 え る。. 4.2.学 校 教 育 及 び 授 業 にお け る 義務 制 義 務 の テ ー マ を扱 う場 合 、 学 校 教 育 及 び授 業 にお け る義 務 か ら視 点 をひ ろ げ て そ れ を遂 行 す る教 職 員 の職 務 上 の 義 務 に も言 及 す る必 要 が あ る。 こ の テ ー マ で 取 り上 げ な けれ ば な らな い 問 題 と して ま ず 学 習 指 導 要 領 が あ げ られ る。 学 習 指 導 要 領 は1947年 引書 で あ っ た 。1958に. に初 め て 出 され た 。 最 初 は 「 試 案 」 と して 単 な る教 師 の 手 法 的 拘 東 力 が 生 じ 、現 在 で は 学 校 教 育 関係 者 に とっ て 義 務 と. して コ ン プ ライ ア ン ス の対 象 に な っ て い る。学 習 指 導 要 領 は 約10年. ご とに 改訂 され.
(9) 教 育基 本 法体制 にお ける義務 の概 念. 19. て い る が 、 現 在 で は 次 の よ うに 教 育 課 程 の 国 家 基 準 と して位 置 づ け られ て い る。 学 校 教 育 法 施 行 規 則 第52条. 「 教 育 課 程 の基 準 」と して 、 小 学 校 の教 育 課 程 に つ い. て は(中 略)教 育 課 程 の 基 準 と して 文 部 科 学 大 臣 が別 に公 示 す る小 学 校 学 習 指 導 要 領 に よ る もの と され て い る。 同 じ く同 法72条. 及 び74条. 「 教 育 課 程 の基 準」で は 中学 校 の 教 育 課 程 に つ い て は,. (中略)教 育 課 程 の 基 準 と して 、 文 部 科 学 大 臣 が 別 に公 示 す る 中 学校 学 習 指 導 要領 に よ る もの とす る。 同法 第84条. に 同 じ文 章 で 高 校 に関 して 規 定 され 第96条. で 「 校長. は 、 生 徒 の 高 等 学 校 の 全 課 程 の 修 了 を認 め るに 当 た っ て は 、 高 等 学校 学 習 指 導 要 領 の 定 め る と こ ろ に よ り、74単 位 以 上 を修 得 した者 に つ い て 行 わ な けれ ば な らな い 。」 と され 、 第108条. で 中等 教 育 学 校 の 教 育 課 程 に準 用 され て い る。. 4,3,国 旗 ・国 歌(日. の丸 ・君 が 代). 学 習 指 導 要 領 の 一 つ の例 と して 学 校 教 育 に お け る義 務 で あ る 日の 丸 ・君 が 代 の 問 題 を 取 り上 げ る。 昭和52(1977)年. の学 習 指 導 要領 改 訂 で は君 が代 が 国 歌 と され 、 「 国旗 を掲 揚 し、国. 歌 を斉 唱 す る こ とが 望 ま しい 」 とな っ た 。 昭 和60(1985)年. に は 当時 の文 部 省 に よ る. 日の 丸 ・君 が代 に 関 して 全 国 的 な 調 査 が行 わ れ 、 そ れ に 基 づ い て 国旗 掲 揚 と君 が 代 斉 唱 との 実 施 の 徹 底 に 関す る通 知 が 出 され た 。 昭和61(1986)年. に は 当 時 の 首相 に よ. り、 日の 丸 ・君 が 代 が 徹 底 され 、 平 成 元(1989)年 の学 習 指 導 要 領 改 訂 で 学 校 教 育 に お け る 君 が 代 斉 唱 が 義 務 に な っ た。 これ が1989年. の学習指導要領 では 「 君 が 代 ・日の 丸 を 国歌 ・国旗 と して指 導 す る. も の とす る」。 さ らに 学 習 指 導 要 領 第5章. の 第3の3で. は 「 入 学 式 や 卒 業 式 な どに お. い て は 、 そ の意 義 を踏 ま え 、 国 旗 を掲 揚 す る と と も に 、 国 歌 を斉 唱 す る よ う指 導 す る も の とす る。」 この よ うに従 来 の 「 望 ま しい 」 か ら 「 指 導 す る も の とす る」 に 変 更 され 、 義 務 の 意 識 が 強 化 され て い る。 さ らに 文 部 科 学省 発 行 の 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 の 特 別 活 動 編 で は 、 国 際 化 の 視 点 、 日本 人 と して の 自覚 、愛 国 心 の 育 成 に よっ て. 「 国旗 及 び 国歌 に 対 して 一 層 正 し. い 認 識 」 を持 たせ る こ と が義 務 に な っ て く る。 特 に 「 入 学式や卒 業式は、学校 生活 に 有意 義 な 変 化 や 折 り 目を付 け 、 厳 粛 か つ 清 新 な雰 囲気 の 中 で 、新 しい 生 活 の 展 開 へ の動 機 付 け を行 い 、 学 校 、社 会 、 国家 な ど集 団 へ の所 属 感 を深 め る」 うえ で 「 国 旗 を 掲 揚 す る と と もに 、 国 歌 を 斉 唱 す る よ う指 導 」 す る と示 唆 して い る。 ほ か に 、 始 業 式 、 終 業 式 、 運 動 会 等 の機 会 も利 用 す る必 要 が あ る 。 こ の よ うに 儀 式 的 行 事 で の義 務 は も ち ろん 教 科 の社 会 科 で も重 要 視 して お り、 「 国旗 及 び 国歌 の意 義 並 び に そ れ らを 相 互 に尊 重 す る こ とが 国 際 的 な儀 礼 で あ る こ とを 理 解 させ 、 そ れ ら を尊 重 す る 態 度 を 育 て る よ う配 慮 」 す る こ と が義 務 化 され て い る 。 これ らの 経 過 を経 て 、 長 く学 校 現 場 に 混 乱 を も た ら した 君 が 代 、 日の丸 の 問題 は 一 応 決 着 を見 た こ とに な る。.
(10) 20. 織田. 成和. 4.4.法 規 定 に 見 られ る教 育 公 務 員 及 び 教 員 の 義 務 こ の テ ー マ に 言 及 す る た め に は 、 日本 国 憲 法 第15条. ② 「 す べ て公 務 員 は 、 全 体 の. 奉 仕 者 で あ っ て 、 一 部 の奉 仕 者 で は な い 」 か ら 出発 す る こ と に な る。 これ に は職 務 の遂 行 に 伴 う義 務 と職 務 の 内外 を 問 わず 公 務 員 と して の 身 分 の保 有 に 伴 う義 務 と2 種 類 あ る 。 前 者 で は 地 方 公 務 員 法 第32条 後 者 に は 地 方 公 務 員 法 第33条. が あ る。 加 え て禁 止 事 項 に同 法 の第36条 止(37条)及. と第35条. の職 務 専 念 義 務 が あ げ られ る。. の信 用 失 墜行 為 の 禁 止 及 び 第34条. の秘 密 を 守 る 義 務. に 政 治 的 行 為 の 制 限 が あ り、争 議 行 為 の 禁. び 営 利 企 業 等 の 従 事 制 限(38条)も. あ げ られ て い る。 これ らの 服務 義. 務 違 反 に 対 す る罰 則 規 定 と して 地 方 公 務 員 法 の第29条. の第1項. に は懲 戒 処 分 と して. 戒 告 、減 給 、 停 職 又 は免 職 が科 され る こ と に な っ て い る。 国家 公 務 員 法 第96条. は服 務 の 根 本 基 準 を規 定 して お り、 「 す べ て職 員 は 、 国 民 全. 体 の奉 仕 者 と して 、 公 共 の利 益 の た め に 勤 務 し、 且 つ 、 職 務 の遂 行 に 当 っ て は 、 全 力 を挙 げ て これ に専 念 」 す る こ とが 義 務 で あ る が 、 同 じ趣 旨で 地 方 公 務 員 法 の 第35 条 は職 務 専 念 義 務 と して 、職 員 は 、法 律 又 は条 例 に 特別 の 規 定 が あ る場 合 を 除 い て 、 そ の 勤 務 時 間及 び職 務 上 の能 力 及 び 注 意 力 の す べ て を そ の 職 務 遂 行 の た め に用 い 、 当該 地 方 公 共 団 体 が 遂 行 す べ き 責 任 を有 す る職 務 に の み 従 事 す る こ とが 義 務 で あ る。 こ の地 方 公 務 員 法 で は第30条. で 「 す べ て 職 員 は全 体 の 奉 仕 者 と して公 共 の利 益 の た. め に 勤 務 し 、且 つ職 務 の遂 行 に 当 っ て は 全 力 を挙 げ て これ に専 念 しな けれ ば な らな い 」 し、 全 体 の 奉 仕 者 と して不 偏 不 党 で 公 平 ・中正 の 立場 を と る趣 旨で あ る。 地 方 公 務 員 法 の 第32条. で は 法 令 等 及 び 上 司 の職 務 上 の命 令 に従 う義 務 を謳 っ て い. る。 つ ま り職 員 は 法 令 遵 守(コ. ンプ ライ ア ンス)と. して 、 そ の職 務 を 遂 行 す る に 当. っ て 、 ① 法 令 、 条 例 、 地 方 公 共 団 体 の規 則 及 び 地 方 公 共 団 体 の機 関 の 定 め る規 程 に 従 い 、 且 つ 、 ② 上 司 の職 務 上 の命 令 に 忠 実 に従 わ な けれ ば な らな い 。 こ の2つ. の義. 務 が あ り、 公 務 員 と して の 宣 誓 も一 般 に行 わ れ て い る。 同 様 に地 方 の 教 育 行 政 の 役 割 と して 「 地 方 教 育 行 政 の組 織 及 び 運 営 に 関 す る法 律 」 が あ げ られ る。 これ に よ る と第43条. で 市 町 村 教 育委 員 会 は 、 県 費 負 担 教 職 員 の服 務 を監 督 す る義 務 が あ る が 、. そ の 県 費 負 担 教 職 員 は 、 そ の職 務 を遂 行 す るに 当 っ て 、 法 令 、 当該 市 町 村 の条 例 及 び 規 則 並 び に 当 該 市 町 村 教 育 委 員 会 の 定 め る教 育 委 員 会規 則 及 び 規 定 に従 い 、か つ 、 市 町村 委 員 会 そ の 他 職 務 上 の 上 司 の 職 務 上 の 命 令 に 忠 実 に した が う義 務 が あ る。. 4,5,既 述 の ご と く地 方 公 務 員 法 の 身 分 上 の 義 務 と して 第33条 の 信 用 失 墜行 為 の 禁 止 は 当然 で あ るが 、 「 職 員 は 、 そ の 職 の信 用 を 傷 つ け、 又 は 職 員 の職 全 体 の 不名 誉 とな る よ うな 行 為 を して は な らな い。」特 に後 半 の 名 誉 を守 る義 務 は 教職 員 の 職 務 上 、 児 童 、生 徒 の 道 徳 的 模 範 に な る必 要 か ら広 範 囲 の 義 務 が 必 要 で あ る。 同 時 に 教 職 員 が 守 るべ き義 務 と し て守 秘 義 務 等 が あ げ られ よ う。 国 家 公 務 員 法 第 100条 に よ る と職 員 は、職 務 上 知 る こ との で き た 秘 密 を漏 ら して は な らな い 。そ の 職.
(11) 教 育基 本 法体制 にお ける義務 の概 念. を退 い た 後 とい え ど も 同様 とす る。地 方 公 務 員 法 第34条. 21. も この 内容 を規 定 して い る。. 宗 教 的 中立 や 政 治 的 中立 を 守 る義 務 も あ げ られ る。 特 に 政 治 教 育 は 時 の政 権 に も 大 き く左 右 され る が 、 そ の た め 、 代 表 的 法 と して. 「 義 務 教 育 諸 学 校 に お け る教 育 の. 政 治 的 中 立 の 確 保 に 関す る 臨 時 措 置 法 」 が 必 要 と され て い る。 これ は 昭 和29年. に制 定 され 、 臨時 措 置 法 で は あ った が 、 この 法 律 は現 在 の 学 校 現 場. に も依 然 と して 必 要 と され て い る ぐ らい 教 育 と政 治 に 関 す る種 々 の 問 題 が 生 じて き て い る。 こ の法 が 制 定 され る ま で 、 学 校 教 育 現 場 で教 職 員 の 組 織 や 活 動 に よ っ て 特 定 の 政 党 や 候 補 者 へ の 支 援 が行 わ れ て い た とい う反 省 か らで た も の で 、 学 校 の 政 治 的 中 立 を 絶 対 的 な も の と して 、さ らに 教 育 基 本 法 の第14条2、 「 法律 に定める学校は、 特 定 の 政 党 を支 持 し、 又 は これ に 反 対 す る た め の政 治 教 育 そ の他 政 治 的 活 動 を して は な らな い 」 に謳 わ れ て い る こ とを受 け て 、 「 義 務 教 育 諸 学 校 にお け る教 育 を 党 派 的 勢 力 の 不 当 な影 響 又 は 支 配 か ら守 り、 も っ て 義 務 教 育 の 政 治 的 中 立 を 確 保 す る と と も に 、 これ に 従 事 す る教 育 職 員 の 自主性 を 擁 護 す る こ とを 目的 とす る。 」つ ま り、 義 務 教 育 諸 学 校 の社 会 的 に拘 束 され た 組 織 の 中で 政 治 活 動 と し て 、 教職 員 が 自 ら積 極 的 に政 治 活 動 を して は な らな い こ とは 当然 の こ と と して 、 さ ら に他 の教 職 員 を 教 唆 、 煽 動 して は な らな い こ と も規 定 した も の で あ る。 こ の よ うな 政 治 的行 為 の制 限 に 加 え て 、 教 育 公 務 員 は 全 体 の奉 仕 者 で あ る こ とか ら 、 労働 基 本 権 の 団 結 権 、 団体 交 渉 権 、争 議 権 等 は 一 定 の制 限 が あ る。 宗 教 的 中 立 に 関 して は 、国 公 立 学 校 の み 、教 育 基 本 法 第15条. 第2項. で中立を守 る. 義 務 が あ る。 学 校 の 教 職 員 に 絶 対 に欠 か して は な らな い も の と して 研 修 の義 務 が あ る。 教 職 員 は修 養 に 基 づ く高 い 識 見 と平 素 の 研 究 に よ る専 門的 知 識 そ れ に豊 か な 人 間性 と深 い 教 育観 や 使 命 感 を 持 っ て 遵 法精 神 を持 ち な が ら教 育 活 動 に 専 念 す る 義 務 が あ る。 修 養 は 特 に 深 い人 間性 の 磨 き を 目的 と して い る。 これ に 関 す る規 定 と して 「 教 育公 務 員 は そ の 職 責 を 遂 行 す る た め に 絶 えず 研 究 と修 養 に努 め な け れ ば な ら ない 。(教 育 公 務 員 特 例 法 第21条. 第1項)」. が あ る。 研 修 に は種 々 の 形 態 が あ る。 それ を教 育 公 務. 員 の任 命 権 者 は研 修 に 要 す る施 設 、 研 修 を 奨 励 す る た め の 方 途 そ の他 研 修 に 関 す る 計 画 を樹 立 し、 そ の 実 施 に努 め る 義 務 が あ る。. 総括 以 上 、 教 育 基 本 法 の 体 制 下 に お け る義 務 に つ い て論 じて き た が 、 現 実 の学 校 生 活 及 び 教 育 の 世 界 に は 大 局 的 な広 義 の 義 務 と ミ ク ロ な義 務 が あ る。 人 間 の 精 神 の 義 務 は道 徳 や 倫 理 の 分 野 で 論 じ られ る。 これ は 各 個 人 の 立場 に 応 じて好 む と好 ま ざ るに 限 らず す べ き こ とあ るい はす べ き で な い こ とで あ る。 道 徳 的 強 制 あ るい は法 的 強 制 の意 味 もあ る。 義 務 教 育 の義 務 は 保 護 者 や 自治 体 及 び 国 の(子 ど も を 学 校 に行 かせ る)義 務 で あ る。.
(12) 22. 織田. 成和. 既 に 間接 的 に 言 及 は して い る が 、 教 育 基 本 法 第10条. の第2項. で は 家 庭 教 育 と して. 国及 び 地 方 公 共 団体 は 、 家 庭 教 育 の 自主 性 を尊 重 しつ つ 、保 護 者 に対 す る 学 習 の 機 会 及 び 情 報 の提 供 そ の 他 の家 庭 教 育 を支 援 す るた め に必 要 な 施 策 を講 ず る よ う 努 め な け れ ば な らな い 。 と謳 っ て い る。 子 ど もは 学 校 に行 く権 利 が あ り、 保 護 者 は そ れ を保 障 す る義 務 が あ る とい うの は 周 知 の 事 項 で あ る が 、 義 務 教 育 は 子 ども の 権 利 と い う こ と に な る と、 権 利 は本 人 が 望 め ば 放 棄 で き る 。 した が っ て 、 不 登 校 は 学 校 に行 かず に 家 庭 等 に 滞 在 す る の を 選 ん だ権 利 に な る。 最 近 は これ を 根 拠 に した 論 理 で 法 律 に 定 め る学 校 外 の 塾 的 な施 設 が 多 くな っ て き て い るが 、 これ で は 日本 の 教 育 の公 的 ・制 度 的 責 任 は 果 た せ な い 。 そ の た め 、 構 造 改 革 に よ る教 育 特 区 の活 用 が 増 えつ つ あ る。 た だ これ を 当然 の権 利 と して 是認 す る こ と に な っ て は な らな い 。保 護 者 の 義務 を 教 育 基 本 法 の第10条. の第. 1項 で は 家 庭 教 育 と して 父 母 そ の他 の保 護 者 は、 子 の教 育 に つ い て 第1義. 的 責任 を有 す る も の で あ っ て 、. 生 活 の た め に必 要 な 習慣 を身 につ け させ る と と もに 、 自立 心 を 育 成 し、心 身 の 調 和 の とれ た発 達 を図 る よ う努 め る もの とす る。 と謳 っ て い る が 、 純 然 た る個 人 の 躾 の段 階 で は これ で 十 分 で あ る。 しか し。 人 間 は 社 会 の 中 で 生 き な けれ ば な らな い 存 在 で あ る。 ア メ リカ で は宗 教 団 体 の 信 念 と関 わ りの あ る 「ウ ィ ス コ ン シ ン州 対 ヨー ダー 事件 」 の合 衆 国 最 高 裁 判 所 の 判 決 に よ っ て 信 教 の 自 由 が公 教 育 制 度 の義 務 教 育 に優 先 す る こ とが確 立 し て い る。 これ は信 仰 に よ っ て 、 無 条 件 で は な い が公 序 良 俗 に反 しな けれ ば 、公 教 育 に就 学せ ず と も違 法 で は な い と され た の で あ る。 こ れ は 特 例 と して も保 護 者 個 人 の 主 観 に基 づ く教 育 論 で 、 極 端 な 場 合 、保 護 者 の 偏 狭 な 主 義 ・主 張 に よっ て 子 ど もの 健 全 な社 会 的 発 達 が 阻 害 され 、 成 長 して か ら社 会 で 孤 立 化 す る こ とは 、 本 人 に とっ て も社 会 に と っ て も マ イ ナ ス で あ る。 した が っ て 教 育 の 自 由 が保 護 者 や 子 ども に あ る と い っ て も、 教 育 に お け る保 護 者 の義 務 や 子 ど も の権 利 は一 般 社 会 か ら の視 点 で 考 え る こ とが 優 先 され よ う。 ち な み に 日本 で は 宗 教 及 び 宗 教 教 育 は 教 育 基 本 法 で も尊 重 され て い る が 、 国 及 び 地 方 公 共 団体 の 設 立 す る学 校 は 特 定 の 宗 教 教 育 そ の他 の 宗 教 的活 動 を して は な ら な い こ と に な っ て い る。 た だ 学 校 法 人 の設 立 す る学 校 で の 宗 教 的活 動 は 既 述 の ご と く是 認 され て お り、 む しろ道 徳 教 育 の 中心 にお かれ て い る。 教 育 の 問 題 は 常 に 毎 日の新 聞 を に ぎ わ せ て い る。 そ れ だ け 国 民 の 関 心 が深 い わ け で あ るが 、 こ の 小 論 の 執 筆 の ころ も高 校 の授 業 料 無 償 化 が 国 会 レベ ル で 論 議 され て い る。 そ の 適 用 範 囲 が 政 治 的 問 題 に な っ て い る。 明治 時 代 に教 育 は 国 家 百 年 の 大 計 で あ る とい う理 由 で 、 議 会 や 政 府 レベ ル で 審 議 あ る い は 法 令 化 され な か っ た とい う 先 人 の 賢 明 さが 再 認 識 され る。.
(13) 教 育基 本 法体制 にお ける義務 の概 念. 23. 参 考 ・引 用 文 献 市 川 昭 午 、 永 井 憲 一 監 修 、子 ど もの 人 権 大 辞 典 、エ ム テ ィ出 版 、 平 成9年9月 市 川 須 美 子 他 編 、 教 育 小 六 法 、 平成22年. 版. 梶 川 祐 司 、 義 務 教 育 、 教 職 研 修 、 教 育 開 発 研 究 所 、2007年3月 兼子. 仁 編、. 教 育 裁 判 判 例 集 、東 京 大 学 出 版 会 、1969年6.月. 、P.58. 坂 田仰 、 学 校 ・法 ・社 会 、学 事 出版 、2002年5月 細 谷 俊 夫 他 編 、 新 教 育 学 大 辞 典,第. 一 法 規 、 平 成2年. 文 部 科 学省 、 中学 校 学 習 指 導 要 領 解 説. 特 別 活 動 編 、 ぎ ょ うせ い 、 平 成20年9月. 結 城 忠 、 学校 教 育 にお け る親 の権 利,海. 鳴 社 、1994年6月.
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